説明

エアシャワー室用の塵埃吸着シート

【課題】表面に塵埃が付着したときには、洗浄した上で、繰り返し再使用することができるようにしたエアシャワー室用の塵埃吸着シートを提供する。
【解決手段】自己粘着性を有する洗浄可能なシート本体1の裏面1bには裏打ちシート9を該シート本体における裏面の一部を露出部11として露出させた状態で取り付け、該シート本体の裏面における該露出部により該シート本体をエアシャワー室内の壁面13に着脱自在に粘着させ、該エアシャワー室内に舞い上がった塵埃を該シート本体の表面に吸着させるようにしたことを特徴とする、エアシャワー室用の塵埃吸着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアシャワー室用の塵埃吸着シートに関するものであり、更に詳しくは、エアシャワー装置のエア噴射部よりエアシャワー室内の人又は物に対しエアを噴射することにより該人又は物から吹き飛ばされて該エアシャワー室内に舞い上がった塵埃を吸着させるために該エアシャワー室内の壁面に取り付けられるエアシャワー室用の塵埃吸着シートに係るものである。
【0002】
本出願における「塵埃」にはチリ、ホコリ、ムシ等の異物が含まれる。また、本出願において、「表面」とはエアシャワー室の内部に臨む面をいい、「裏面」とは「表面」と反対側の面をいうものとする。更に、本出願における「洗浄」は拭き取りを含む。
【背景技術】
【0003】
半導体、液晶パネル、精密機器、医薬品、化粧品、食品等の製造は、塵埃のない清浄空間での作業が求められるため、好ましい空気清浄度が確保されたクリーンルーム内で行われている。しかして、外部から人又は物がクリーンルーム内に入ると、該人又は物に付着していた塵埃が該クリーンルーム内に持ち込まれることになり、クリーンルーム内の空気清浄度が低下する。そこで、外部からの塵埃の持ち込みを防止するために、クリーンルームへの入口にエアシャワー室を設け、該エアシャワー室内に入った人又は物に対しエアを噴射することにより該人又は物から吹き飛ばされて該エアシャワー室内に舞い上がった塵埃を該エアシャワー室内の壁面に取り付けられた塵埃吸着シートに吸着させるという手法が採られている。
【0004】
このような塵埃吸着シートとして、特許第4290523号公報に示すものが知られている。以下、当該特許第4290523号公報に示す塵埃吸着シートを「従来の塵埃吸着シート」という。
【0005】
上記従来の塵埃吸着シートは、エアシャワー装置のエア噴射部に対応した形状の切り抜き部が形成されたシート状の基材と、該基材の表面に配設され、塵埃を吸着可能な粘着剤を含有する粘着層と、該基材の裏面に配設され、該基材をエアシャワー室の壁面に貼り付けるための貼り付け手段とを備えてなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4290523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、上記従来の塵埃吸着シートは、基材の表面に塵埃を吸着する粘着剤を含有する粘着層を設け、該基材の裏面に該基材をエアシャワー室の壁面に貼り付けるための貼り付け手段を備えてなるものであるため、一旦粘着層に塵埃が付着したときには該塵埃吸着シートを洗浄して再使用することができないものである。
【0008】
本発明は、上記従来の塵埃吸着シートにおける上述の如き問題を解決し、表面に塵埃が付着したときには、洗浄した上で、繰り返し再使用することができるようにしたエアシャワー室用の塵埃吸着シートを提供しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、下記のエアシャワー室用の塵埃吸着シートを提供する。
【0010】
(1)自己粘着性を有する洗浄可能なシート本体の裏面には裏打ちシートを該シート本体における裏面の一部を露出部として露出させた状態で取り付け、該シート本体の裏面における該露出部により該シート本体をエアシャワー室内の壁面に着脱自在に粘着させ、該エアシャワー室内に舞い上がった塵埃を該シート本体の表面に吸着させるようにしたことを特徴とする、エアシャワー室用の塵埃吸着シート(請求項1)。
【0011】
(2)前記シート本体の裏面における前記露出部上には塵埃吸着シートをエアシャワー室内の壁面に粘着させるための粘着層を設ける(請求項2)。
【0012】
(3)自己粘着性を有する洗浄可能なシート本体の裏面には裏打ちシートを取り付け、該裏打ちシートの裏面には塵埃吸着シートをエアシャワー室内の壁面に粘着させるための粘着層を設け、該エアシャワー室内に舞い上がった塵埃を該シート本体の表面に吸着させるようにしたことを特徴とする、エアシャワー室用の塵埃吸着シート(請求項3)。
【0013】
(4)前記シート本体にはエアシャワー室内にエアを噴射するエアシャワー装置のエア噴射部に対応する透孔を備えさせ、前記裏打ちシートには該シート本体の透孔に対応する透孔を備えさせる(請求項4)。
【発明の効果】
【0014】
[請求項1の発明]
シート本体は自己粘着性を有するため、裏面の露出部により該シート本体をエアシャワー室内の壁面に着脱自在に粘着させることができると共に、エアシャワー室内に舞い上がった塵埃を該シート本体の表面に吸着させることができる。
【0015】
シート本体は洗浄可能であるため、シート本体の表面が塵埃により汚れたときには、塵埃吸着シートは洗浄し、再び使用することができる。すなわち、塵埃吸着シートは繰り返し再使用することができ、経済的である。塵埃吸着シートは、必要に応じて、エアシャワー室内の壁面から取り外して洗浄することができる。
【0016】
自己粘着性を有するシート本体が強い粘着力を有し、かつ、柔らかい場合でも、該シート本体は裏面に裏打ちシートを備えているため、塵埃吸着シートを壁面から剥がす作業と水洗する作業とが容易になると共に、当該作業時にシート本体が伸びすぎて破損するおそれが解消する。
【0017】
[請求項2の発明]
シート本体の裏面における露出部上には塵埃吸着シートをエアシャワー室内の壁面に粘着させるための粘着層を設けたため、塵埃吸着シートを該壁面に長期間にわたり強力に固定することができる。
【0018】
[請求項3の発明]
裏打ちシートの裏面には塵埃吸着シートをエアシャワー室内の壁面に粘着させるための粘着層を設けたため、塵埃吸着シートを該壁面に長期間にわたり強力に固定することができる。
【0019】
[請求項4の発明]
塵埃吸着シートは、シート本体と裏打ちシートとの各透孔にエアシャワー装置のエア噴射部を貫通させた状態でエアシャワー室内の壁面に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、塵埃吸着シートをエアシャワー室内の壁面に粘着させた状態を示す断面図である。
【図2】図2は、同上塵埃吸着シートの背面図である。
【図3】図3は、剥離フィルムを備えた塵埃吸着シートを示す断面図である。
【図4】図4は、塵埃吸着シートの別の一例を示す断面図である。
【図5】図5は、塵埃吸着シートの更に別の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、透孔を有しない塵埃吸着シートを示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
符号1に示すものは、自己粘着性を有する洗浄可能なシート本体である。
【0022】
シート本体1は、例えば、ウレタンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム等により形成する。シート本体1は、表面1aに付着した塵埃を水、アルコール等により拭き洗いして繰り返し再使用することができる。
【0023】
シート本体1の形状は、好ましくは長方形又は正方形とする。シート本体1の厚さは、一例として約2mmとする。
【0024】
塵埃吸着シートには、エアシャワー室内にエアを噴射するエアシャワー装置のエア噴射部3を貫通させた状態でエアシャワー室内の壁面13に取り付けるものと、壁面13における該エア噴射部3がない部分に取り付けるもの(図6参照)とがある。
【0025】
以下、エアシャワー装置のエア噴射部3を貫通させた状態でエアシャワー室内の壁面13に取り付ける塵埃吸着シートについて説明する。
【0026】
シート本体1には、エアシャワー室内にエアを噴射するエアシャワー装置のエア噴射部3に対応する透孔5を備えさせる。図2に示す事例においては、シート本体1は円形の透孔5を有する。
【0027】
シート本体1の裏面1bには該シート本体1の透孔5に対応する透孔7を備えた裏打ちシート9を該シート本体1の一部を露出部11として露出させた状態で取り付ける。裏打ちシート9は、一例としてPET(ポリエチレンテレフタラート)により形成し、離型処理を施さないものとする。裏打ちシート9の厚さは、一例として約0.1mmとする。
【0028】
裏面1bに裏打ちシート9を備えたシート本体1は、相互に連通する透孔5、7にエアシャワー装置のエア噴射部3を貫通させた状態でエアシャワー室内の壁面13に取り付ける。すなわち、シート本体1の裏面1bにおける露出部11により該シート本体1をエアシャワー室内の壁面13に着脱自在に粘着させる。図示の事例においては、露出部11はシート本体1の裏面1bにおける一対の相対向する縁部に設けられている。シート本体1は自己粘着性を有するため、シート本体1の裏面1bにおける露出部11により該シート本体1をエアシャワー室内の壁面13に粘着させた後、該壁面13を破壊することなく、かつ、該壁面13を汚すことなく、該壁面13から容易に剥離することができる。
【0029】
エアシャワー室内に舞い上がった塵埃は、自己粘着性を有するシート本体1の表面1aにより吸着される。
【0030】
シート本体1の表面1aに付着した塵埃を見易くするために、シート本体1を白色、黒色等に着色し、あるいはシート本体1を透明とすると共に裏打ちシート9を着色してもよい。
【0031】
図4に示す事例においては、シート本体1の裏面1bにおける露出部11には塵埃吸着シートをエアシャワー室内の壁面13に粘着させるための粘着層15を設けている。この事例においては、シート本体1の表面1aに付着した塵埃を見易くするために、シート本体1を着色することが望ましい。
【0032】
図5に示す事例においては、裏打ちシート9における一対の相対向する縁部には塵埃吸着シートをエアシャワー室内の壁面13に粘着させるための粘着層16を設けている。この事例においては、シート本体1の表面1aに付着した塵埃を見易くするために、シート本体1を透明とすると共に裏打ちシート9を着色することが望ましい。
【0033】
図3における符号17、19に示すものは、剥離フィルム(保護フィルム)である。剥離フィルム17、19は、一例としてPET(ポリエチレンテレフタラート)により形成し、離型処理を施す。剥離フィルム17、19の厚さは、一例として約30μmとする。
【符号の説明】
【0034】
1 シート本体
1a 表面
1b 裏面
3 エア噴射部
5 透孔
7 透孔
9 裏打ちシート
11 露出部
13 壁面
15 粘着層
16 粘着層
17 剥離フィルム
19 剥離フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己粘着性を有する洗浄可能なシート本体の裏面には裏打ちシートを該シート本体における裏面の一部を露出部として露出させた状態で取り付け、該シート本体の裏面における該露出部により該シート本体をエアシャワー室内の壁面に着脱自在に粘着させ、該エアシャワー室内に舞い上がった塵埃を該シート本体の表面に吸着させるようにしたことを特徴とする、エアシャワー室用の塵埃吸着シート。
【請求項2】
前記シート本体の裏面における前記露出部上には塵埃吸着シートをエアシャワー室内の壁面に粘着させるための粘着層を設けたことを特徴とする請求項1に記載のエアシャワー室用の塵埃吸着シート。
【請求項3】
自己粘着性を有する洗浄可能なシート本体の裏面には裏打ちシートを取り付け、該裏打ちシートの裏面には塵埃吸着シートをエアシャワー室内の壁面に粘着させるための粘着層を設け、該エアシャワー室内に舞い上がった塵埃を該シート本体の表面に吸着させるようにしたことを特徴とする、エアシャワー室用の塵埃吸着シート。
【請求項4】
前記シート本体にはエアシャワー室内にエアを噴射するエアシャワー装置のエア噴射部に対応する透孔を備えさせ、前記裏打ちシートには該シート本体の透孔に対応する透孔を備えさせたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエアシャワー室用の塵埃吸着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−47391(P2012−47391A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189577(P2010−189577)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(596169635)一進産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】