説明

エアゾール型制汗剤

【課題】制汗、防臭効果が高く、また、バルブが目詰まりすることなく、実用上充分な使用性が安定して得られるエアゾール型制汗剤を提供する。
【解決手段】制汗成分が可溶化されてなる組成物が、気体状態の噴射剤の導入口(VT:ベーパータップ孔)と、液体状態の噴射剤と原液の導入口(UT:アンダータップ孔)とを有するハウジングと、少なくとも1、又は2のステム孔が設けられたステムとを有するバルブが備えられたエアゾール容器に充填されてなるエアゾール型制汗剤であって、前記気体状態の噴射剤の導入口(VT:ベーパータップ孔)の内径が0.3〜1.0mmの範囲とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制汗、防臭効果が高く、かつ安定した使用性が得られるエアゾール型制汗剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、制汗成分を可溶化してなる組成物は、皮膚に塗布した際に、組成物中に含有される水あるいはエタノールが揮発して皮膚上に皮膜を形成することにより、高い制汗、防臭効果が得られる。
また、このような制汗成分を可溶化してなる組成物を、エアゾール容器に充填してエアゾール製剤とし、皮膚に向けて噴射する使用形態とすることにより、高い使用性を得ることができる。このようなエアゾール製剤を腋の下等の皮膚に向けて噴射する場合、容器を正立させた状態での正立噴射と、倒立させた状態での倒立噴射との両方を使い分けながら噴射する方法が用いられることがある。
【0003】
しかしながら、上述のような制汗成分は、皮膚の表面に皮膜を形成して制汗効果を発揮するものであるため、このような組成物をエアゾール容器に充填してエアゾール製剤とした場合、バルブに設けられたハウジング孔やステム孔等において組成物が析出することにより、詰まりが発生しやすいという問題がある。
【0004】
上述のような制汗剤としては、例えば、特許文献1に記載のような、制汗成分としてクロルヒドロキシアルミニウム(ACH)が含有されてなる制汗剤がある。
また、組成物がエアゾール容器に充填されたエアゾール製剤として、例えば、特許文献2〜7に記載されたものがある。
しかしながら、特許文献2〜7に記載されたようなエアゾール容器に、特許文献1に記載されたようなクロルヒドロキシアルミニウム(ACH)を可溶化した組成物を充填して用いた場合、組成物が乾燥した際に皮膜を形成するため、ハウジング孔やステム孔等の目詰まりを起こしやすいとう問題がある。
【0005】
また、特許文献8には、制汗成分、水、及び噴射剤を含有するエアゾール型制汗剤組成物に、さらにポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルリン酸を含有してなる組成物が記載されている。
特許文献8に記載のエアゾール型制汗剤組成物は、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルリン酸を含有することで可溶化力が向上され、制汗成分等が澱として析出することが無く、安定して皮膚への噴射を行なうことができるというものである。
【0006】
しかしながら、特許文献8に記載のエアゾール型制汗剤組成物も、前記ACHを可溶化した組成であるため、上述したように、皮膚表面において乾燥した際に皮膜を形成する性質がある。このため、エアゾール容器に備えられたバルブのハウジング孔やステム孔に皮膜が形成され、目詰まりを起こしてしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2000−229826号公報
【特許文献2】特開2002−309241号公報
【特許文献3】特開平6−317541号公報
【特許文献4】特開平11−349933号公報
【特許文献5】特開平11−228943号公報
【特許文献6】特開平11−71264号公報
【特許文献7】特開平10−57849号公報
【特許文献8】特開2002−3356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようなエアゾール製剤の詰まりの問題を解決する方法として、ハウジング孔やステム孔等の孔径を大きくするという方法が考えられる。
しかしながら、単にハウジング孔やステム孔等の孔径を大きくした場合には、上述の正立噴射と倒立噴射との噴射バランスが崩れ、正立時と倒立時の噴射量に差が生じてしまい、実用に充分な使用性を安定して得るのが困難になる虞がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、制汗、防臭効果が高く、また、バルブが目詰まりすることなく、実用上充分な使用性が安定して得られるエアゾール型制汗剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を改善するため鋭意検討したところ、制汗成分を可溶化した組成物が充填されるエアゾール容器に備えられたバルブに関し、気体状態の噴射剤の導入口(VT:ベーパータップ孔)の内径を適正な範囲に規定することにより、制汗成分の皮膜による目詰まりが防止できることを見出した。
【0010】
本発明は、制汗成分が可溶化されてなる組成物が、気体状態の噴射剤の導入口(VT:ベーパータップ孔)と、液体状態の噴射剤と原液の導入口(UT:アンダータップ孔)とを有するハウジングと、少なくとも1、又は2のステム孔が設けられたステムとを有するバルブが備えられたエアゾール容器に充填されてなるエアゾール型制汗剤であって、前記気体状態の噴射剤の導入口(VT:ベーパータップ孔)の内径が0.3〜1.0mmの範囲とされていることを特徴とする。
また、本発明のエアゾール型制汗剤は、前記ベーパータップ孔の内径が0.5〜0.8mmの範囲とされていることが好ましく、0.5〜0.7mmの範囲とされていることがより好ましい。
また、本発明のエアゾール型制汗剤は、前記制汗成分が、クロルヒドロキシアルミニウム(ACH)、及び/又は、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコールである構成とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエアゾール型制汗剤によれば、ベーパータップ孔(VT)の内径を上記範囲に規定することにより、エアゾール容器に備えられたバルブに目詰まりが生じるのを防止することができ、安定した噴射状態で使用することができる。
従って、制汗、防臭効果が高く、また、バルブが目詰まりすることなく、実用上充分な使用性が安定して得られるエアゾール型制汗剤が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るエアゾール型制汗剤の実施の形態について、図1(a)、(b)及び2(a)、(b)を適宜参照しながら説明する。
本実施形態のエアゾール型制汗剤1は、制汗成分が可溶化されてなる組成物10が、気体状態の噴射剤の導入口であるベーパータップ孔(VT)61と、液体状態の噴射剤と原液の導入口であるアンダータップ孔(UT)62とを有するハウジング6と、少なくとも1、又は2のステム孔51が設けられたステム5とを有するバルブ3が備えられたエアゾール容器2に充填され、概略構成されている。
また、本実施形態では、ベーパータップ孔61の内径が、0.3〜1.0mmの範囲とされている。
【0013】
[エアゾール容器の構成]
図1(a)、(b)、及び図2(a)、(b)は、本実施形態のエアゾール容器2の基本構造を説明する図である。本実施形態のエアゾール容器2は、図1(a)に示すように、有底筒状の容器本体21の上部にバルブ3が備えられてなる。また、詳細な図示を省略するが、本実施形態のエアゾール容器2は、略円筒状に形成されている。
【0014】
容器本体21は、制汗成分が可溶化されてなる組成物10を内部に収容する容器であり、図示例では細長筒状に形成されている。
容器本体21は、使用者がエアゾール型制汗剤1を使用する際の把持部としても機能することから、図示例のような細長筒状とし、持ち易く、且つ、操作しやすい略円筒形状とすることが好ましいが、この形状には限定されず、使用性を考慮しながら適宜決定することができる。
【0015】
バルブ3は、上述したように、エアゾール容器2の上部に備えられており、バルブヘッド4、ステム5、ステムガスケット5a、ハウジング6、ディップチューブ7の各々を有している。また、図2に示すように、バルブ3には、容器本体21の上部(図1(a)の上方向)にバルブ3を取り付けるための、カップ状のマウンテンカップ32が備えられている
本実施形態のバルブ3は、エアゾール型制汗剤1において、エアゾール容器2に充填された内容物10を外部へ噴射するための噴射バルブである。
【0016】
バルブヘッド4は、詳細を後述するステム5の上部に取り付けられており、エアゾール容器2内部に収容された組成物10が、噴射剤として外部に向けて噴射される墳口41が側面に設けられている。バルブヘッド4は、使用者が、図2(a)に示す状態から、図2(b)に示す状態のようにバルブヘッド4を押下げる操作を行うことにより、バルブ3の操作部として機能する。
また、バルブヘッド4は、図1(a)に示すように、容器本体21の上部から突出するように取り付けられている。
【0017】
ステム5は、パイプ状に形成され、バルブヘッド4を押下げて操作した際に共に押下げられ、後述する噴射動作によってバルブヘッド4(墳口41)に組成物10を噴射剤として送り込むものである。
ステム5は、内部に噴射剤が通過する流路52を有し、ステム5の外周面から流路52に連通するように、ステム孔51が形成されており、図2(a)、(b)に示す例ではステム孔51が1箇所に形成されている。
【0018】
ステム孔51の形成数としては、少なくとも1、又は2個形成されていれば良い。
ステム孔51は1個でも良いが、2個であるほうが、例えば、一方のステム孔51において制汗成分が可溶化された組成物10が乾燥した状態となっても、組成物10は他方のステム孔51を通過することができ、詰まりが発生するのを最大限、抑制することができる点からより好ましい。
【0019】
また、ステム孔51の内径は、0.3〜0.6mmの範囲であることが好ましい。
ステム孔51の内径がこの範囲であれば、ステム孔51において組成物10が乾燥した状態となっても、詰まりが発生するのを抑制することができる。
ステム孔51の内径が0.3mm未満だと、組成物10が乾燥した際に詰まりが発生しやすくなる虞がある。
ステム孔51の内径が0.6mmを超えると、エアゾール型制汗剤1の噴射量が多くなり過ぎる虞がある。
【0020】
ステムガスケット5aは、図2(a)、(b)に示すように、ステム5の周囲を囲むようにして設けられている。
ステムガスケット5aは、図2(a)に示す待機位置では、ステム5外周面のステム孔51を塞ぐように配置されているが、図2(b)に示すように、アクチュエータ4を押下げるのに伴ってステム5が降下した際に、ステム孔51と上下方向(図2(a)、(b)の上下方向)にずれて離れることにより、ステム5内部の流路52と後述のハウジング6の内部とが連通するように構成されている。
【0021】
ハウジング6は、図2(a)、(b)に示すように、マウンテンカップ32に嵌め込まれるように取り付けられ、ステム5の下部に接続されており、ベーパータップ孔(VT)61と、アンダータップ孔(UT)62とを有している。また、ハウジング6内部には、バルブヘッド4及びステム5が押下げられた際に、該バルブヘッド4及びステム5を上方(図2(a)の上方向)に上げ戻すためのスプリング63が備えられている。
【0022】
ベーパータップ孔(VT)61は、図示例では、ハウジング6とマウンテンカップ32の壁面との隙間に開口するように設けられており、アンダータップ孔(UT)62は、ハウジング6の下端に開口して設けられている。
本実施形態のエアゾール型制汗剤1を、図1(a)に示すような正立噴射で使用する場合には、ベーパータップ孔61が気体状態の噴射剤の導入口として機能し、アンダータップ孔62が液体状態の噴射剤と原液の導入口として機能する。
一方、エアゾール型制汗剤1を、図1(b)に示すような倒立噴射で使用する場合には、ベーパータップ孔61を液体状態の噴射剤の導入口として機能させることができ、この際、アンダータップ孔62を気体状態の噴射剤の導入口として機能させることができる。
【0023】
ベーパータップ孔61の内径は、0.3〜1.0mmの範囲であることが好ましい。
ベーパータップ孔61の内径がこの範囲であれば、該ベーパータップ孔61において制汗成分が可溶化された組成物10が乾燥した状態となっても、詰まり等を起こすことが無く、また、エアゾール型制汗剤1の噴射量を、制汗作用を得るのに適正な量とすることができる。
ベーパータップ孔61の内径が0.3mm未満だと、組成物10が乾燥した際に詰まりやすくなったり、また、エアゾール型制汗剤1を倒立噴射で使用した際に、組成物の噴射量が少なくなってしまう虞がある。
ベーパータップ孔61の内径が1.0mmを越えると、エアゾール型制汗剤1を倒立噴射で使用した際に、組成物の噴射量が多くなりすぎる虞がある。
ベーパータップ孔61の内径は、0.5〜0.8mmの範囲であることがより好ましく、0.5〜0.7mmの範囲であることがさらに好ましい。
【0024】
また、アンダータップ孔62の内径は、0.5〜1.6mmの範囲であることが好ましい。
アンダータップ孔62の内径がこの範囲であれば、該アンダータップ孔62において制汗成分が可溶化された組成物10が乾燥した状態となっても、詰まり等を起こすことが無く、また、エアゾール型制汗剤1の、正立噴射時と倒立噴射時の噴射量のバランスが適正化される。
アンダータップ孔62の内径が0.5mm未満だと、組成物10が乾燥した際に詰まりやすくなったり、また、エアゾール型制汗剤1を正立噴射で使用した際に、組成物の噴射量が少なくなってしまう虞がある。
アンダータップ孔62の内径が1.6mmを越えると、エアゾール型制汗剤1を正立噴射で使用した際に、組成物の噴射量が多くなりすぎる虞がある。
アンダータップ孔62の内径は、0.7〜1.5mmの範囲であることがより好ましく、0.8〜1.3mmの範囲であることがさらに好ましい。
【0025】
また、本発明に係るエアゾール型制汗剤では、ベーパータップ孔(VT)61と、アンダータップ孔(UT)との内径の比(VT/UT)が、0.3〜1の範囲とされていることが好ましい。
上記VT/UTがこの範囲であれば、エアゾール型制汗剤を、正立噴射で使用した場合と、倒立噴射で使用した場合との、噴射量のバランスが適正化される。
上記VT/UTが0.3未満だと、ベーパータップ孔61の内径が、アンダータップ孔62の内径に比べて小さすぎるため、倒立噴射で使用した場合の噴射量が少なくなり過ぎる虞がある。
上記VT/UTが1を超えると、ベーパータップ孔61の内径が、アンダータップ孔62の内径に比べて大きくなるため、倒立噴射で使用した場合の噴射量が多く成り過ぎる虞がある。
また、上記VT/UTは、0.3〜0.8の範囲であることがより好ましい。
【0026】
ディップチューブ7は、ハウジング6の下部(図2(a)、(b)の下方向)に、アンダータップ孔62と連通するように取り付けられるチューブであり、ハウジング6の内部とエアゾール容器2内の液相部とを連通させるように配されている。
ディップチューブ7は、図2(a)に示す例のように、ハウジング6と反対側の端部71が容器本体21の底部付近に配された構成とすることにより、正立状態で使用した際に、エアゾール容器2内に収容された組成物を、効率良くアンダータップ孔62に導くことが可能となる。
【0027】
本発明に係るエアゾール型制汗剤は、上記構成とすることにより、特に、制汗成分として、乾燥時に皮膜を形成しやすいクロルヒドロキシアルミニウム(ACH)が可溶化されたものを組成物10として用い、該組成物10をエアゾール容器2に充填して使用した場合であっても、詰まり等が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0028】
[エアゾール型制汗剤(エアゾール容器)の噴射形態]
以下、エアゾール型制汗剤1を使用する際のバルブ3の動作について、エアゾール型制汗剤1を、図1(a)に示すような正立噴射で使用する形態を例に説明する。
【0029】
まず、使用者が指等でバルブヘッド4を押し下げると、図2(b)に示すように、ステム5が下げられ、ステム孔51がステムガスケット5aから離れることによって、ステム5の内部とハウジング6の内部とが連通する。また、ハウジング6内部とエアゾール容器2の内部とは、ハウジング6に形成されたベーパータップ孔61及びアンダータップ孔62により連通されている。
【0030】
この際、ベーパータップ孔61を通じてハウジング6の内部とエアゾール容器2内の気相部とが連通され、また、アンダータップ孔62を通じ、ディップチューブ7を介してハウジング6の内部とエアゾール容器2内の液相部とが連通される。
これにより、ベーパータップ孔61及びアンダータップ孔62を通じてハウジング6内に導入された液体又は気体状態の組成物が、ステム5を通じて墳口41を通じて外部に噴射される。
そして、使用者がバルブヘッド4から指を離した際、ハウジング6内に設けられたスプリング63によってステム5及びバルブヘッド4が押し上げられ、バルブ3は、図2(a)に示すような待機状態に戻る。
【0031】
なお、エアゾール型制汗剤1を、図1(b)に示すような倒立噴射で使用する形態においても、正立噴射で使用する場合と同様の操作で組成物を噴射することができる。この場合には、ベーパータップ孔61からハウジング6内に液体状態の組成物が導入される。また、図1(b)に示す例のように、エアゾール型制汗剤1を倒立させることにより、ディップチューブ7の端部71周辺が気相部の状態となった場合には、アンダータップ孔62から気体状態の組成物が導入される。
【0032】
[制汗成分が可溶化された組成物]
本発明に係るエアゾール型制汗剤の組成物に用いられる制汗成分は、特に限定はされないが、例えば、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物などの制汗剤物質が挙げられる。具体的には、アルミニウムヒドロキシクロライド(ACH)、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、水酸化アルミニウム、乳酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、酸化アルミニウム、無水ケイ酸アルミニウム、ブロムヒドロキシアルミニウム、フェノールスルホン酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウムジルコニウム等が挙げられる。また、前記アルミニウム化合物と、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはグリシンとの塩が挙げられる。このなかで好ましいのは、クロルヒドロキシアルミニウム、及び/又は、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコールである。
その他、制汗成分として、クロルヒドロキシジルコニウム、硫酸亜鉛、フェノールスルホン酸亜鉛等が挙げられる。
制汗成分は、上記の内、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、同じ種類の制汗成分であっても、市販品においては、各種のグレードがあり、一つのグレードを単独使用しても良く、複数のグレードを併用しても良い。
【0033】
制汗成分の配合量は、原液中(エアゾール型制汗剤組成物において、噴射剤を除いたものであり、以下同様)において、0.05〜50重量%の範囲が好ましく、より好ましくは1.0〜25重量%の範囲である。
0.05重量%未満では十分な制汗効果を発揮しにくい。また、50重量%以上では安定配合することが難しく、塗布時に皮膚上での白化も引き起こしやすくなり、使用感も低下する。
【0034】
上記制汗成分は、極性の溶媒に溶けやすい塩であるため、製剤化の際には適当な極性溶媒を添加して可溶化することにより、制汗効果が向上する。その際の極性溶媒としては、水、低級アルコール、ポリオール類などが挙げられるが、これらの内、水、エタノール、イソプロピルアルコールを用いることが、使用感が良く安全性も高いことから好ましい。
これらの極性溶媒の配合量としては、0.1重量%以上であることが好ましい。0.1重量%未満では、制汗有効成分を十分に溶解し、安定配合することが困難となる。
【0035】
本実施形態で用いる噴射剤としては、特に制限はなく、例えば プロパン、n−ブタン、イソブタン、イソペンタン、ジメチルエーテル、LPG等が挙げられ、このなかでもLPG、ジメチルエーテル、イソペンタンを用いることが好ましい。また、これらの噴射剤の内の1種を単独か、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、環境面および安全面から、炭酸ガスや窒素ガス等を使用することもできる。
【0036】
本実施形態のエアゾール型制汗剤は、基本的には制汗成分、極性溶媒、噴射剤を含む組成物をエアゾール容器に収容することにより構成されるが、上記配合成分と共に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、化粧料に用いられる他の成分の1種を単独か、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
例えば、他の成分として、消臭成分、殺菌成分、抗菌剤、清涼化剤、包接化合物、粉末成分、水溶性成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、低級アルコール、高級アルコール、多価アルコール、エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、赤外線遮断剤、金属イオン封鎖剤、糖、糖アルコール、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、生薬、酸化防止剤、酸化防止助剤、抗炎症剤、香料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
以上、説明したように、本実施形態のエアゾール型制汗剤1によれば、ベーパータップ孔(VT)61の内径を上記範囲で規定することにより、このベーパータップ孔61において制汗成分が乾燥した場合であっても、目詰まりが生じるのを防止することができる。
【0038】
また、本実施形態のエアゾール型制汗剤では、さらに、アンダータップ孔(UT)62の内径を上述した範囲で規定すれば、このアンダータップ孔62において制汗成分が乾燥した場合であっても、目詰まりが生じるのを防止することができる。
本実施形態のエアゾール容器2に、制汗成分としてACHが可溶化された組成物を充填してエアゾール型制汗剤とした場合には、バルブの目詰まり防止の面で特に効果的である。
【0039】
また、本実施形態のエアゾール型制汗剤1では、さらに、ベーパータップ孔(VT)61の内径とアンダータップ孔(UT)62の内径との比(VT/UT)を上述した範囲で規定すれば、正立噴射時及び倒立噴射時での噴射量のバランスがより向上し、何れの使用形態においても、安定した噴射状態で使用することができる。
従って、制汗、防臭効果が高く、また、バルブが目詰まりすることなく、実用上充分な使用性が安定して得られるエアゾール型制汗剤が実現できる。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明のエアゾール型制汗剤を実証するための実施例について説明するが、本発明は本実施例によって限定されるものではない。
【0041】
[エアゾール型制汗剤の作成]
まず、制汗成分が可溶化された組成物として、下記表1に示すような成分組成を有する組成物を合成した。なお、下記表1中、香料組成物としては、特開2003−73249号公報(表23〜35を参照)に開示された香料A〜Eの組成の内、任意に選択したものをそれぞれ使用した。
また、エアゾール容器として、ベーパータップ孔(VT)の内径、アンダータップ孔(UT)内径、ベーパータップ孔(VT)の内径とアンダータップ孔(UT)の内径との比(VT/UT)、ステム孔の数及び内径の各々が、下記表2に示す数値とされたエアゾール容器を作製した(図1(a)、(b)及び図2(a)、(b)も参照)。
そして、前記組成物を前記エアゾール容器に充填して、試験例1〜12のエアゾール型制汗剤を作製し、以下に説明する方法で評価した。
【0042】
[評価方法]
<噴射状態の評価(正立噴射及び倒立噴射での使用性)>
上記試験例1〜12のエアゾール型制汗剤を用い、正立噴射(図1(a)参照)及び倒立噴射(図1(b)参照)の各々の状態で、前腕内側部(腋の下)に対して肌から10cm離れた距離から2秒間噴射して噴射状態を評価した。
なお、使用者(パネル)数は、n=20(人)とした。
【0043】
そして、噴射状態の評価について、正立噴射及び倒立噴射の各々の状態において、以下に示す4段階の基準で判定した。
(1)◎:20人中、15〜20人がバランスよく噴霧されたと答えた。
(2)○:20人中、10〜14人がバランスよく噴霧されたと答えた。
(3)△:20人中、5〜9人がバランスよく噴霧されたと答えた。
(4)×:20人中、4人以下がバランスよく噴霧されたと答えた。
【0044】
<目詰まり防止の評価>
上記試験例1〜12のエアゾール型制汗剤を、45℃の雰囲気温度中において、正立状態に対して180°の角度で倒立させた状態で保存し、1回/週の割合で噴霧動作(上記倒立状態において、バルブヘッドを半押しして2秒間噴射)を行い、この保存及び噴射のサイクルを4週間連続で行なった。
なお、サンプル数は、上記試験例1〜12の各々において、n=20(本)とした。
【0045】
そして、目詰まり防止の評価について、以下に示す3段階の基準で判定した。
(1)○:20本中、1本も目詰まりが発生しなかった。
(2)△:20本中、1〜5本において目詰まりが発生した。
(3)×:20本中、6本以上において目詰まりが発生した。
【0046】
<制汗作用(汗を抑える効果感)の評価>
上記試験例1〜9のエアゾール型制汗剤を用い、使用者(パネル)数を、n=20(人)として、制汗作用(汗を抑える効果感)を評価した。
まず、各使用者が、30℃、80%RH環境下において20分間安静状態を保ち、体を環境に馴化させた。その後、同環境下において、各実施例及び比較例のエアゾール型制汗剤を、前腕内側部(腋の下)に対して肌から10cm離れた距離から2秒間噴射した。
【0047】
そして、噴射1時間後の汗を抑える効果感の評価について、以下に示す4段階の基準で判定した。
(1)◎:20人中、15〜20人が制汗効果を感じると答えた。
(2)○:20人中、10〜14人が制汗効果を感じると答えた。
(3)△:20人中、5〜9人が制汗効果を感じると答えた。
(4)×:20人中、4人以下が制汗効果を感じると答えた。
【0048】
表1に、各試験例で用いた組成物の成分組成を示すとともに、表2に、各試験例のエアゾール容器の寸法条件及び評価結果の一覧を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
[評価結果]
表2に示すように、ベーパータップ孔(VT)の内径が本発明で規定した寸法とされたエアゾール容器に、制汗成分が可溶化された組成物を充填した試験例1〜5のエアゾール型制汗剤は、噴射状態の評価が何れも◎か○、あるいは△であり、平均して高い評価結果が得られた。また、試験例1〜5のエアゾール型制汗剤は、目詰まり防止の評価が何れも○の評価であるとともに、制汗作用の評価が何れも◎或いは○の評価であり、高い評価結果が得られた。
【0052】
なお、VT/UTの比が1.250と大きな試験例5のエアゾール型制汗剤では、上述のように平均して良好な評価結果が得られたものの、噴射状態の評価が△と、試験例1〜4の評価に比べて若干低くなっている。これは、アンダータップ孔の内径がベーパータップ孔の内径に比べて小さめであるためと考えられる。
【0053】
これら試験例1〜5のエアゾール型制汗剤に対し、試験例6のエアゾール型制汗剤は、ベーパータップ孔が設けられていない(内径:0.0mm)ため、倒立状態での噴射特性に劣ることから、噴射状態の評価が×となった。
また、ベーパータップ孔の内径は本発明で規定する範囲内とされているものの、VT/UTの比が0.20と低い試験例7のエアゾール型制汗剤は、噴射状態の評価、及び目詰まり防止の評価が×となった。
また、ベーパータップ孔の内径は本発明で規定する範囲内とされているものの、アンダータップ孔が設けられていない(内径:0.0mm)試験例8のエアゾール型制汗剤は、正立状態での噴射が困難であるため、噴射状態の評価が×となった。
また、ベーパータップ孔の内径は本発明で規定する範囲内とされているものの、ステム孔の内径が0.2mmと小さい試験例9のエアゾール型制汗剤は、目詰まり防止の評価が×となった。
【0054】
また、ベーパータップ孔の内径が1.2mmと、本発明で規定する上限値を超えている試験例10のエアゾール型制汗剤は、倒立状態での噴射量が多くなりすぎ、噴射状態の評価が×となった。
また、ベーパータップ孔の内径が0.2mmと、本発明で規定する下限値を下回っている試験例11のエアゾール型制汗剤は、倒立状態での噴射量が少なく、噴射状態の評価が×であるとともに、目詰まりの評価が×となった。
また、ベーパータップ孔の内径は本発明で規定する範囲内とされているものの、アンダータップ孔の内径が1.7mmと大きく、VT/UTの比が0.294と低い試験例12のエアゾール型制汗剤では、倒立噴射で使用した場合の噴射量が少なく、噴射状態の評価が×となった。
【0055】
なお、上記試験例6〜9、及び試験例11のエアゾール型制汗剤は、目詰まり防止の評価において、4週間連続での継続試験を行うことにより、徐々に目詰まりが生じてくるのが確認され、特に、試験例7及び9では、目詰まりを生じるサンプルが多くなる結果となった。
【0056】
以上の結果により、本発明のエアゾール型制汗剤が、制汗、防臭効果が高く、また、バルブが目詰まりすることなく、実用上充分な使用性が安定して得られることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るエアゾール型制汗剤の一例を説明する概略図であり、(a)正立噴射の状態、(b)倒立噴射の状態を示す図である。
【図2】本発明に係るエアゾール型制汗剤の一例を説明する概略図であり、(a)待機時、(b)噴射操作時のバルブの状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…エアゾール型制汗剤、2…エアゾール容器、3…バルブ、5…ステム、51…ステム孔、6…ハウジング、61…、ベーパータップ孔(VT)、62…アンダータップ孔(UT)、10…組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制汗成分が可溶化されてなる組成物が、気体状態の噴射剤の導入口(VT:ベーパータップ孔)と、液体状態の噴射剤と原液の導入口(UT:アンダータップ孔)とを有するハウジングと、少なくとも1、又は2のステム孔が設けられたステムとを有するバルブが備えられたエアゾール容器に充填されてなるエアゾール型制汗剤であって、
前記気体状態の噴射剤の導入口(VT:ベーパータップ孔)の内径が0.3〜1.0mmの範囲とされていること、を特徴とするエアゾール型制汗剤。
【請求項2】
前記気体状態の噴射剤の導入口(VT:ベーパータップ孔)の内径が0.5〜0.8mmの範囲とされていること、を特徴とするエアゾール型制汗剤。
【請求項3】
前記気体状態の噴射剤の導入口(VT:ベーパータップ孔)の内径が0.5〜0.7mmの範囲とされていること、を特徴とするエアゾール型制汗剤。
【請求項4】
前記制汗成分が、クロルヒドロキシアルミニウム(ACH)、及び/又は、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコールであること、を特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のエアゾール型制汗剤。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−314488(P2007−314488A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148319(P2006−148319)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】