説明

エアゾール容器用ネックイン溶接缶

【課題】溶接缶胴部材を用いて耐圧容器を構成したエアゾール缶に関し、溶接缶胴部材の一端にネックイン加工を施すことにより缶胴部と缶蓋部とを連続形成し、部材点数及び製造コストを低減する。
【解決手段】エアゾール容器用ネックイン溶接缶Xが、溶接缶胴部材1の一端にネックイン加工(スムーズネックイン成形)を施すことにより缶胴部12と缶蓋部13とを連続形成する。ここで、缶蓋部13とは、加工後のネックイン部(13)であり、所謂円錐蓋に相当する。そして、溶接缶胴部材1の一端をテーパ状に連続的に縮径形成してバルブ部品3〔閉鎖部材31を含むバルブアセンブリ〕を取付け可能な口部14をカール形成するとともに、他端には缶底部材2を二重巻締め(4)により接合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接缶胴部材を用いて耐圧容器を構成したエアゾール缶に係り、詳しくは、溶接缶胴部材の一端にネックイン加工を施すことにより缶胴部と缶蓋部とを連続形成したエアゾール容器用ネックイン溶接缶に関する。なお、缶とは金属缶を指称し、「製缶」は「製罐」又は「製鑵」と同義である。
【背景技術】
【0002】
従来より、気化した液化ガス又は圧縮ガス(以下、作動ガス。)とともに内容物を密封収容し、口部に設けたバルブ部品を開操作することにより、作動ガスの圧力で内容物を容器外に霧状や泡状にして自力放出させるようにしたエアゾール缶が知られている(例えば、特許文献1、2、3及び4を参照)。なお、ここでは溶接缶かシームレス缶(後述のDI缶)かは問わない。
【特許文献1】特開2005−22715号公報
【特許文献2】特開平8−145298号公報
【特許文献3】特開2004−276068号公報
【特許文献4】特開平10−15632号公報
【0003】
エアゾール缶は、その形態から3ピース缶〔概して溶接缶〕と2ピース缶〔絞りしごき缶(DI缶)〕に大別される。3ピース缶とは、缶蓋部、缶胴部、缶底部の3部品を接合して構成された缶を言い、2ピース缶とは、通常、缶胴部と缶底部とが一体部品(単一部材)となっている缶を言うものである。
【0004】
3ピース缶の缶胴部は、平板を円筒形に曲げ加工し、向かい合った端部を接合して作られ、その接合方法から半田缶、接着缶、溶接缶に分けられる。近年は、鋼板をシーム溶接した溶接缶が主流である。上記特許文献1及び2はこれに該当する。
【0005】
2ピース缶の缶胴部と缶底部は、円形の平板からプレス加工によって一体成形される。このプレス加工の種類によって、DWI缶(Drawn and Wall-Ironed Can) とDRD缶(Drawn and ReDrawn Can) とに分けられる。近年は、アルミニウム板が主流である。ここで、缶胴部と缶蓋部は巻締めによって接合されるのが一般的である。
【0006】
なお、DI缶には、缶胴部(の開口端)をネックイン加工(縮径加工に同じ)してトップドームないしは円錐蓋(上蓋又は目金蓋に相当し、本発明の缶蓋部に相当する)を形成したものもある〔ネックイン缶〕。上記特許文献3及び4はこれに該当する。
【0007】
しかしながら、溶接缶についてDI缶にみられる縮径率の大きいネックイン加工を施し、トップドームないしは円錐蓋を形成したものは見当たらない。溶接缶とDI缶では製缶工程(巻締めによる缶部材の接合を除く)が全く異なるからであると推認される。
【0008】
本発明者は、長らく溶接缶の製造に携わってきており、近年、溶接缶を用いてDI缶の形状にみられるスムーズネックイン缶の研究開発を推進し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
なお、スムーズネック成形は、通常は、比較的短いネック長でドーム形に成形したネックイン部を指称するようであるが、本発明では、薄肉製缶における連続的かつなだらかな縮径を施すネックイン加工をいうものとする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする課題は、溶接缶についてDI缶にみられる縮径率の大きいネックイン加工を施し、トップドーム(缶蓋部に相当)を形成し、3ピース缶における缶蓋接合を省略可能とする点にある。
【0011】
具体的な技術解決課題は、缶胴部材のシーム溶接部が障害とならないようなスムーズネック成形を施す点にある(その加工方法については技術的説明を省略する)。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、上記課題を解消し、溶接缶胴部材の一端にネックイン加工を施すことにより缶胴部と缶蓋部とを連続形成したエアゾール容器用ネックイン溶接缶を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
課題を解決するために本発明は、溶接缶胴部材を用いて耐圧容器を構成したエアゾール缶において、
溶接缶胴部材の一端にネックイン加工を施すことにより缶胴部と缶蓋部とを連続形成したエアゾール容器用ネックイン溶接缶であって、
溶接缶胴部材の一端をテーパ状に連続的に縮径形成してバルブ部品を取付け可能な口部をカール形成するとともに、他端には缶底部材を二重巻締めしてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、溶接缶胴部材の一端にネックイン加工を施すことにより缶胴部と缶蓋部とを連続形成しているので、従来の3ピース缶(溶接缶)に比べ部材点数を低減できる。
【0015】
製缶技術に関し、従来の2ピース缶にみられるようなプレス加工はおこなわず、3ピース缶(溶接缶)の製缶工程における缶蓋接合工程をネックイン加工工程(DI工程)に代替すればよく(缶胴製造に係るシーム溶接及び缶底接合に係る二重巻締めに変更はないので)、既存設備を改造することなく本発明の製缶工程を導入できる。なお、プレス加工によらない製缶の利点は、ロット数がコストにさほど影響しない点である。
【0016】
当然のことながら、エアゾール容器の安全基準に問題はなく、美観の点でもDI缶と比べて遜色はなく、スチール缶であるので強度は格段に優れており、全体として製造コストを大幅に低減可能である。
【0017】
特に、溶接缶について成形不良を発生させることなくスムーズネック成形を施している(可能とした)点は特筆される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の最良形態(以下、実施例溶接缶。)について添付図面を参照して以下説明する。
【0019】
図1は、実施例溶接缶の半断面図である。
【0020】
図示するように、実施例溶接缶Xは、溶接缶胴部材1の一端にネックイン加工(スムーズネックイン成形)を施すことにより缶胴部12と缶蓋部13とを連続形成したエアゾール容器用ネックイン溶接缶である。缶蓋部13とは、加工後のネックイン部(13)であり、所謂円錐蓋に相当する。
【0021】
ここで、溶接缶胴部材1の一端をテーパ状に連続的に縮径形成してバルブ部品3(閉鎖部材31を含むバルブアセンブリ)を取付け可能な口部14を外向きにカール形成するとともに、他端には缶底部材2を二重巻締め(4)により接合している。
【0022】
なお、ネックイン加工の方法については説明を省略するが、技術的要点はシーム溶接部11が加工性に影響を及ぼさない(成形不良が発生しない)絞りしごき加工を施す点にある。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、ネックイン溶接缶を斯界で初めて開発した点で、製缶技術に向上に寄与し、その利用先の広さからも産業上の利用価値が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例溶接缶の半断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 溶接缶胴部材
11 シーム溶接部
12 缶胴部
13 缶蓋部(ネックイン部)
14 口部
2 缶底部材
3 バルブ部品(バルブアセンブリ)
31 閉鎖部材
4 二重巻締め部
X 実施例溶接缶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接缶胴部材を用いて耐圧容器を構成したエアゾール缶において、
溶接缶胴部材の一端にネックイン加工を施すことにより缶胴部と缶蓋部とを連続形成したエアゾール容器用ネックイン溶接缶であって、
溶接缶胴部材の一端をテーパ状に連続的に縮径形成してバルブ部品を取付け可能な口部をカール形成するとともに、他端には缶底部材を二重巻締めしてなることを特徴とするエアゾール容器用ネックイン溶接缶。

【図1】
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【公開番号】特開2007−319906(P2007−319906A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154415(P2006−154415)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(504199242)光工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】