説明

エアドライヤ

乗物のエアブレーキシステム用のエアドライヤであって、当該エアドライヤが装着部(20)と、回転軸線(25)を中心にしてこの装着部(20)にねじ留めされている取り外し可能な乾燥剤キャニスタ(10)とを有し、この乾燥剤キャニスタは周辺の封止リング(13、14)を有している当該エアドライヤにおいて、前記装着部が前記回転軸線(25)から径方向に離間された直立突起部(28)を有し、この直立突起部は前記封止リング内で前記乾燥剤キャニスタ(10)の環状凹所(17)に係合するようになっており、前記直立突起部(28)は中空であり、この直立突起部(28)の内部がエアブレーキシステムにおける圧縮空気用の放圧用開口へ連通しているエアドライヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型商用乗物(ビークル)のブレーキシステム用エアドライヤに関するものである。
【0002】
一般に、大型トラック及びバスなどの商用乗物は、ホイールブレーキを作動させる媒体として圧縮空気を用いている。エンジン駆動されるコンプレッサが圧縮空気を貯蔵器へ送給し、この圧縮空気が貯蔵器から、運転士が作動させるフットバルブを介して、ホイールブレーキアクチュエータへ向けられる。ブレーキシステムにおいて、腐食作用を起こすおそれのある湿気を取り除くために、一般にエアドライヤが貯蔵器の上流に設けられている。
【0003】
代表的なエアドライヤはコンプレッサの下流に乾燥剤キャニスタを具えており、圧縮空気がこの乾燥剤キャニスタを通って貯蔵器へ向けられる。乾燥剤には次第に湿気が付着するものであり、少量の圧縮乾燥空気を乾燥剤キャニスタに逆方向で通して乾燥剤を周期的に再生させている。推奨サービス期間で乾燥剤の交換を可能とするためには、交換式の乾燥剤キャニスタが好ましい。
【0004】
乾燥剤の所要量は周囲空気の湿気量や乗物の空気消費率によっていくらか影響を受ける。従って、種々の容積の乾燥剤キャニスタを製造し、その中から乗物の製造業者が最も使用条件にあったものを選択する。更に、乾燥剤キャニスタはオイルトラップのような特殊機構を具えうる。
【0005】
しかし、経済性及び交換性の理由のため、製造業者は乾燥剤キャニスタに対し一般に共通の装着部を使用することを望んでおり、特に点検による交換時に、適切な乾燥剤キャニスタを乗物にいかに確実に取り付けるかという問題が生じる。
【0006】
適切な部品の取り付けを確実にするために、代表的にプラグとソケットとの適切な連結による特別なはめ合わせ処置を使うことが知られている。しかし、雄の構成部を除去したにも関わらず、雌の構成部を意図する位置にしておく場合には、このはめ合わせ処置は不適切になるおそれがある。
【0007】
従って、乾燥剤キャニスタ上の従来のねじは中心にねじ山を具えている。このねじ山からある距離の位置で装着部側に直立の柱状部が設けられている場合には、この柱状部に対応する環状凹所が乾燥剤キャニスタにないと、この乾燥剤キャニスタの取り付けが阻害される。しかし、例えば切断によって、柱状部を除去すれば、いかなる乾燥剤キャニスタをも取り付けることができる。
【0008】
従って、共通の装着部に取り付けることができるとともに、不適切な組み立てを示す簡単な装置が必要となるものである。
【0009】
本発明によれば、乗物のエアブレーキシステム用のエアドライヤであって、当該エアドライヤが装着部と、回転軸線を中心にしてこの装着部にねじ留めされている取り外し可能な乾燥剤キャニスタとを有し、この乾燥剤キャニスタは周辺の封止リングを有している当該エアドライヤにおいて、前記装着部が前記回転軸線から径方向に離間された直立突起部を有し、この直立突起部は前記封止リング内で前記乾燥剤キャニスタの環状凹所に係合するようになっており、前記直立突起部は中空であり、この直立突起部の内部がエアブレーキシステムにおける圧縮空気用の放圧用開口へ連通しているエアドライヤを提供する。
【0010】
このような構成によれば、突起部と環状凹所とが共同して正確な乾燥剤キャニスタのはめ合わせを確実に達成する。突起部をいかに除去しようとも乾燥剤キャニスタの内部空間を圧縮空気にさらすものであり、この圧縮空気は直接放圧されるか、又はこの圧縮空気がシステムの通気バルブを作動させることができる。これらのいずれの場合にも、圧縮空気はシステムから漏れ、騒音をたてる。更にその漏れはブレーキシステムの加圧を防止しうる。
【0011】
好適例においては、前記装着部が放圧用通路を有し、この放圧用通路の一端が前記突起部によって封止され、この放圧用通路の他端が外気へ開放されているようにする。又、前記突起部が、出口のない孔を有する円筒状のピンより成っており、このピンは前記放圧用通路の端ぐり内に圧入されるようになっているようにすることができる。
【0012】
他の好適例においては、前記放圧用通路の前記他端が前記エアブレーキシステムにおける通気バルブの操作室へ開口しているようにすることができる。この例においては、前記放圧用通路における空気圧力が前記通気バルブ用のパイロット信号として作用するようにすることができ、この通気バルブは、例えばピストンの形態にしうる。
【0013】
前記通気バルブは、例えば、エアブレーキシステムを排気するように開放するようになっているドレーンバルブにすることができ、又は前記エアドライヤの入口が外気へ通じている間中コンプレッサを分離する再生バルブにすることができる。
【0014】
本発明の他の特徴は、添付図面に参考のためのみに示す好適実施例の以下の説明から明らかとなるであろう。
【0015】
図面を参照するに、図1は従来の交換式乾燥剤キャニスタ(容器)10を示す。このキャニスタの内部構造は重要ではないが、内部の隔壁と端板12(図2)とによって入口から出口までの流路が規定されている。
【0016】
図3はバルブ本体20の一部を示し、このバルブ本体は、中空の雄ねじ山21を有するキャニスタ10用の装着部を具えている。
【0017】
バルブ本体20の装着部はほぼ平坦な環状面22を具えており、この環状面から雄ねじ山21が突出して排気通路23を規定している。雄ねじ山の軸線25を同心的に囲む環状の凹所24が、吸気通路26へ連通している。放圧用通路27は、出口のない内部孔を有する直立の円筒プラグ28が図示されているようにこの放圧用通路27の端ぐり内に圧入されることによって環状面22で封止されている。
【0018】
端板12は中心の雌ねじ山孔を有しており、乾燥剤キャニスタが軸線25を中心としてバルブ本体20の装着部上で回転するようにする手段を構成する。
【0019】
同軸の環状溝が封止リング13、14を保持し、これら封止リングが圧接して吸気通路26を排気通路23から、且つ外部から密閉する。乾燥剤キャニスタの排気口15は雌ねじ山孔によって規定され、乾燥剤キャニスタの吸気口は、凹所24と整列するように適合された1つ以上の貫通通路16によって規定されている。
【0020】
円筒プラグ28には図示のように他の同軸溝17が整列されており、この同軸溝17は逃げ溝18によって貫通吸気通路16へ連通している。
【0021】
図面は幾分線図的に描いてあり、ある部分の大きさ及び形状は本発明を最も良く示すように誇張してあることを理解すべきである。
【0022】
使用に際しては、乾燥剤キャニスタ10をバルブ本体20の装着部上で完全に回転させ、封止リング13、14が気密に連結を行うようにする。圧縮空気を乾燥剤に通過させて空気を乾燥させる。又、乾燥空気を周期的に用いることにより乾燥剤を再生するようにする。この逆流が、従来のバルブ(図示せず)を通り外気へ通じる。
【0023】
乾燥剤キャニスタ10の交換は、使用部品を回して外し、新しい部品を装着するだけでよい。
【0024】
溝17は適正な交換を確認する特性を有する。溝17が設けられていないとすると、プラグ28が乾燥剤キャニスタの完全なねじ留めを阻害し、又吸気通路26が密閉されなくなる。従って、ブレーキシステムは加圧されず、通常の警告ブザーが運転室内で鳴る。更に、操作者はカートリッジ付近の多量の空気漏れの音によって警告される。
【0025】
操作者がプラグ28を除去すると、乾燥剤キャニスタは完全にねじ留めされるが、吸気通路16が逃げ溝18を介して放圧用通路27と連通する。
【0026】
放圧用通路27は外気と連通しうるため、ブレーキシステムは十分に又は全く加圧されず、上述したとおり、ブザーが鳴り、空気漏れしていることがわかる。放圧用通路27は警笛又はそれと同等なものへ直接連結しうる。
【0027】
或いは又、放圧用通路27は通常の再生バルブを動作させるように連結でき、又は吸気通路26を外気へ開くようにピストンを動かすドレーンバルブへ連結しうる。
【0028】
このように、直立のプラグ28は誤った乾燥剤キャニスタの装着を防ぎ、不正変更の場合の安全指示を提供する。
【0029】
図示した実施例は線図的なものであり、種々の直立プラグが使用可能である。このようなプラグはねじ山付きとするか、又はバルブ本体20の装着部と一体化しうる。プラグの半径を調節することによって、又は複数のそのようなプラグを設けることによって、種々の大きさ又は種類の乾燥剤キャニスタに合った共通の装着を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は従来の円筒型乾燥剤キャニスタの正面図である。
【図2】図2は本発明のための乾燥剤キャニスタの端板の軸線方向断面図である。
【図3】図3は本発明の乾燥剤キャニスタ用装着部の部分的な軸線方向断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物のエアブレーキシステム用のエアドライヤであって、当該エアドライヤが装着部と、回転軸線を中心にしてこの装着部にねじ留めされている取り外し可能な乾燥剤キャニスタとを有し、この乾燥剤キャニスタは周辺の封止リングを有している当該エアドライヤにおいて、前記装着部が前記回転軸線から径方向に離間された直立突起部を有し、この直立突起部は前記封止リング内で前記乾燥剤キャニスタの環状凹所に係合するようになっており、前記直立突起部は中空であり、この直立突起部の内部がエアブレーキシステムにおける圧縮空気用の放圧用開口へ連通しているエアドライヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアドライヤにおいて、前記装着部が放圧用通路を有し、この放圧用通路の一端が前記突起部によって封止され、この放圧用通路の他端が外気へ開放されているエアドライヤ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアドライヤにおいて、前記突起部が、出口のない孔を有する円筒状のピンより成っており、このピンは前記放圧用通路の端ぐり内に圧入されるようになっているエアドライヤ。
【請求項4】
請求項2に記載のエアドライヤにおいて、前記放圧用通路の前記他端が前記エアブレーキシステムにおける通気バルブの操作室へ開口しているエアドライヤ。
【請求項5】
請求項4に記載のエアドライヤにおいて、前記放圧用通路における空気圧力が前記通気バルブ用のパイロット信号として作用するようになっているエアドライヤ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のエアドライヤにおいて、前記通気バルブが、前記エアブレーキシステムを排気するように開放するようになっているドレーンバルブであるエアドライヤ。
【請求項7】
請求項4又は5に記載のエアドライヤにおいて、前記通気バルブが、前記エアドライヤの入口が外気へ通じている間中コンプレッサを分離する再生バルブであるエアドライヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−537925(P2007−537925A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517395(P2007−517395)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001744
【国際公開番号】WO2005/113309
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(501079071)ワブコ オートモーティブ ユーケー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】