説明

エアバッグとその製造方法

【課題】流入口部のインフレーターとの接続作業が容易となるとともに、嵩張ることなく、整流部とともに、流入口部を形成できるエアバッグを提供すること。
【解決手段】エアバッグ34は、流入口部41と整流部45とを備える。流入口部は、膨張用ガスを供給するインフレーターの先端部を挿入させて、インフレーターと接続させる挿入口部42と、挿入口部から屈曲するように延びる連通部43と、を備える。整流部は、連通部を経たエアバッグの内部側に配置され、膨張用ガスの流れ方向を調整する。エアバッグ34は、ガス導入口49を開口させたエアバッグ本体35と、整流部と流入口部とを形成可能なガス導入筒部51と、を備えて構成される。ガス導入筒部51は、エアバッグ本体35のガス導入口49から流入口部41側を突出させ、ガス導入口49の周縁に、整流部45の連通部43側の周縁を、結合させて、形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置に使用されて、膨張完了時に歩行者や乗員等の保護を図ることができるエアバッグとその製造方法に関し、詳しくは、膨張用ガスを流入させるためのインフレーターと接続される筒状の流入口部と、流入口部から連通して、流入してくる膨張用ガスの流れを調整するための整流部と、を備えて構成されるエアバッグとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、頭部保護エアバッグ装置のエアバッグでは、膨張用ガスを供給するためのインフレーターと接続される流入口部を有したエアバッグ本体と、エアバッグ内に流入する膨張用ガスの流れを調整するための整流布と、を備えて構成されるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
流入口部は、インフレーターの先端部を挿入させて、クランプを使用して、周壁をインフレーター側に押圧することにより、インフレーターと接続可能な挿入口部と、挿入口部から屈曲するように延びる連通部と、を備えて構成される筒状としていた。また、整流布は、エアバッグ本体の流入口部における挿入口部から連通部を経て、エアバッグ本体内に侵入するように形成され、エアバッグ本体内では、前後方向に沿うように二又状に分岐されて、前後両端に、膨張用ガスのガス流出口を開口させていた。
【特許文献1】特開2003−146174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のエアバッグでは、整流布が、平らに展開した状態で、二つ折りし、外周縁相互を縫合して、製造したものであり、外周縁相互の縫合部位が、エアバッグ本体の流入口部における挿入口部内に配置されることとなって、インフレーターとの接続部位となる挿入口部が嵩張ることとなっていた。
【0005】
そのため、インフレーターの先端部の挿入時、整流布の挿入口部側の部位が、めくれ易く、インフレーターとの接続作業が行い難かった。
【0006】
この場合、エアバッグ本体の挿入口部の寸法を大きくして、対処することができるが、流入口部付近が、不必要に、パッケージボリュームを大きくさせてしまう。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、流入口部のインフレーターとの接続作業が容易となるとともに、嵩張ることなく、整流部とともに、流入口部を形成できるエアバッグとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエアバッグは、膨張用ガスを供給するインフレーターの先端部を挿入させて、周壁をインフレーター側に押圧することにより、インフレーターと接続させる挿入口部と、挿入口部から屈曲するように延びる連通部と、を備えて構成される膨張用ガスの流入用の筒状の流入口部、を有するとともに、
連通部を経た内部側に、連通部からの膨張用ガスの流れ方向を略直交方向に変更する円筒状の整流部を、配設させて構成されるエアバッグであって、
エアバッグが、流入口部の位置に配置されるガス導入口を開口させたエアバッグ本体と、エアバッグ本体に結合されて、整流部と流入口部とを形成可能なガス導入筒部と、を備えて構成され、
ガス導入筒部が、エアバッグ本体のガス導入口から流入口部側を突出させ、ガス導入口の周縁に、整流部の連通部側の周縁を、結合させて、形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るエアバッグでは、エアバッグ本体自体が、インフレーターと接続される流入口部を備えておらず、ガス導入筒部が、整流部とともに、流入口部を構成している。そして、ガス導入筒部は、エアバッグ本体のガス導入口から流入口部側を突出させ、ガス導入口の周縁に、整流部の連通部側の周縁を、結合させて、配設されているだけであって、インフレーターを挿入させる挿入口部は、ガス導入筒部だけで形成されていることから、嵩張らず、かつ、めくれることなく、インフレーターを挿入させることができる。
【0010】
さらに、ガス導入口の周縁に、ガス導入筒部における整流部の連通部側の周縁を、結合させるだけで、エアバッグ本体に整流部と挿入口部とを設けることができることから、ガス導入口を、エアバッグ本体の所定位置に、適宜、形成するだけで、容易に、エアバッグ本体内に膨張用ガスを流入させる流入口部と整流部とを、配設することができて、エアバッグに対するインフレーターの配置位置が変更となっても、容易に、対処することができる。
【0011】
したがって、本発明に係るエアバッグは、流入口部のインフレーターとの接続作業が容易となるとともに、嵩張ることなく、整流部とともに、流入口部を形成でき、さらに、エアバッグに対するインフレーターの配置位置が変更となっても、容易に、対処することができる。
【0012】
そして、上記のエアバッグの製造では、エアバッグ本体を、複数枚の可撓性を有した基布相互を縫合して形成する縫製タイプとして、
基布に、ガス導入口を形成し、
ガス導入筒部を、流入口部の挿入口部におけるエアバッグ本体から離れた端部側を、折目として、二つ折りし、インフレーターの先端部を挿入させる挿入口部と整流部のガス流出口とを開口させた状態で、重ねた外周縁相互を縫合して、整流部と流入口部とを形成可能な展開形状の筒部用布材から、形成し、
平らに展開した筒部用布材を、挿入口部側の折目で二つ折りして、重ねた流入口部と整流部の連通部側の周縁との外周縁相互を縫合して、流入口部を形成し、
基布のガス導入口から、筒部用布材の挿入口部を突出させた状態で、ガス導入口の周縁に、筒部用布材における整流部の連通部側の周縁を、縫合させ、
ついで、筒部用布材における整流部側の重ねた外周縁相互を縫合して整流部を形成し、その後、基布相互を縫合して、エアバッグ本体を形成することにより、エアバッグを製造すればよい。
【0013】
このような製造方法では、エアバッグ本体が縫製タイプとしており、ガス導入筒部における流入口部側を形成した筒部用布材を、エアバッグ本体のガス導入口の周縁に、縫合させ、かつ、整流部自体を縫合して形成する際、ガス導入口の周囲を、他の基布で塞ぐことなく、表裏を露出可能な状態で、縫合作業を行えることから、迅速かつ効率的に行え、エアバッグの製造が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のエアバッグ34は、図1〜3に示すように、歩行者用エアバッグ装置Mに使用されるもので、歩行者用エアバッグ装置Mは、車両Vのフードパネル8の後部8a側に搭載されて、エアバッグ34、エアバッグ34に膨張用ガスを供給するインフレーター25、折り畳まれたエアバッグ34とインフレーター25とを収納するケース21、及び、エアバッグ34に押されて開くカバー16、を備えて構成されている。
【0015】
なお、本明細書では、前後と上下の方向は、それぞれ、車両Vの前後と上下と一致する方向を基準とし、左右の方向は、車両Vの前方側から後方側を見た際の左右の方向を基準とする。
【0016】
また、車両Vには、図1に示すように、フロントバンパ5に、歩行者との衝突を検知若しくは予知可能なセンサ6が配設され、図示しないエアバッグ作動回路が、歩行者との衝突を検知した信号をセンサ6から入力させた際、インフレーター25を作動させて、インフレーター25から吐出される膨張用ガスによって、エアバッグ34を展開膨張させるように、構成されている。
【0017】
さらに、フードパネル8は、図1〜3に示すように、曲げ塑性変形可能なアルミニウム(アルミニウム合金)等から形成される板金製として、上面側のアウタパネル13と、下面側に位置して、アウタパネル13より強度を向上させたインナパネル9と、を備えて構成されている。このフードパネル8は、後縁8bの左右両縁付近に配設される図示しないヒンジ部を介して、車両Vのボディ(車体)1側に連結支持されており、前開きタイプとしている。
【0018】
アウタパネル13には、略長方形形状に上下方向に貫通した配設孔14が開口され、インナパネル9には、配設孔14の開口に対応して、エアバッグ装置Mのケース21を収納する箱形状の配設凹部10が、形成されている。配設孔14の周縁は、配設凹部10の周縁とともに、下方に下がる段差13bを設けて、形成され、段差13bにカバー16の外周縁を嵌挿させた際に、カバー16の上面16aがアウタパネル13の上面13aと連なるように、構成されている。
【0019】
配設凹部10の底面は、取付座11として構成され、取付座11には、インフレーター25やリテーナ30から延びるボルト27・31を挿通させる図示しない複数の取付孔が、上下方向に貫通されている。
【0020】
カバー16は、板金製として、外周縁の下面には、複数の係止脚17を下方へ突設させるとともに、後縁の下面側には、複数の可撓性を有した連結片18を連結させている。各係止脚17は、ケース21のフランジ部22aに設けられた係止孔22bに挿入されて、フランジ部22aに係止され、連結片18は、下端側を、ケース21の周壁部22の後壁部22c側に、止めねじ19によって、取り付けられている。このカバー16は、膨張するエアバッグ34に押された際に、エアバッグ34の押圧力によって各係止脚17を係止孔22bから引き抜いて、ケース21の開口21aを開けることとなる。その際、連結片18が、ケース21からのカバー16の離脱を、防止することとなる。
【0021】
ケース21は、図3・4に示すように、板金製として、略四角筒形状の周壁部22と、周壁部22の下方を塞ぐ底壁部23と、を備えて構成され、周壁部22の上端の開口21aが、カバー16によって、覆われるように、配設されている。周壁部22の上端側の開口21aは、インナパネル9の配設凹部10やアウタパネル13の配設孔14と対応して、フードパネル8の後縁8bに沿うように、左右方向の中央部位を前方側へ突出させるように、湾曲した形状としている。
【0022】
周壁部22の上端には、アウタパネル13の配設孔14の内周面に突き合わせるようなフランジ部22aが、外方へ突設され、フランジ部22aには、既述したように、係止脚17を挿入係止させる複数の係止孔22bが形成されている。また、周壁部22の後部側の後壁部22cには、既述したように、連結片18の下端が止めねじ19によって固定されている。なお、実施形態の場合、係止孔22bは、係止脚17と対応して、フランジ部22aの前後で、左右の両端付近と左右方向の中央付近との五箇所ずつに、形成され、止めねじ19の固定部位は、連結片18の数に対応して、後壁部22cの四箇所、としている。
【0023】
底壁部23には、インフレーター25やリテーナ30のボルト27・31を挿通させる複数の取付孔23a・23bが、上下方向に貫通されている。なお、実施形態の場合、各ボルト27・31は、底壁部23だけでなく、インナパネル9の取付座11も貫通して、ナット28・32止めされることとなる。
【0024】
インフレーター25は、図2〜4に示すように、シリンダタイプとして、二本使用され、それぞれ、ガス吐出口26を配設させた先端部25a側を、左右の外方側に配置させて、底壁部23の中央付近から左右に分かれるように、配設されている。各インフレーター25には、下方へ突出する複数の段差付きの取付ボルト27が配設され、各取付ボルト27を、ケース21の底壁部23の取付孔23aを経て、インナパネル9を貫通させ、ナット28止めすることにより、インフレーター25が、ケース21に取り付けられるとともに、インナパネル9に対しても、ケース21とともに、取り付けられることとなる。また、各インフレーター25は、エアバッグ34の流入口部41における挿入口部42の挿入口42aに挿入されて(図7参照)、挿入口部42の周壁をクランプ68によって締め付けることにより、エアバッグ34における流入口部41の挿入口部42に、接続されることとなる。
【0025】
エアバッグ34は、図1・2・6・7・15に示すように、インフレーター25から吐出される膨張用ガスGを内部に流入させて展開膨張するもので、ポリエステル糸やポリアミド糸等を使用した織布から形成され、基布47・48や布材52・57a・59を縫合して形成した縫製タイプとしている。エアバッグ34は、膨張用ガスGを流入可能なガス流入部36を備えたエアバッグ本体35、インフレーター25とエアバッグ本体35とを接続するガス導入筒部51、及び、エアバッグ本体35をケース21に保持させるための複数の取付片部59と、から構成されている。
【0026】
エアバッグ本体35のガス流入部36は、膨張用ガスGの流入時、折り畳まれた状態から膨張する膨張部37を備えて構成され、膨張部37には、膨張用ガスを流入させるためのガス導入筒部51が、連通するように配設されている。膨張部37は、図1・2の二点鎖線に示すように、膨張完了時の形状を、正面から見て、左右方向に幅広とした略U字形状に形成されるもので、左右方向に沿って配設される横膨張部38と、横膨張部38の左右両端からフロントピラー4・4の前面側を覆うように後方側に延びて、ピラーカバー部の役目を果たす縦膨張部39・39と、を備えて構成されている。
【0027】
横膨張部38は、図1・2・12に示すように、エアバッグ34の膨張完了時において、フードパネル8の後部8a付近の上面からフロントウィンドシールド3の下部3a付近までの領域を、左右方向の略全長にわたって覆うように、構成されている。そして、フードパネル8とフロントウィンドシールド3との間には、カウルパネル2aと、カウルパネル2aの上方に配設されるカウルルーバ2bと、から構成されるカウル2が、配設されている。そのため、エアバッグ34の横膨張部38は、カウルカバー部としての作用を果たし、膨張完了時に、フードパネル8の後部8aとカウル2との上方側とを略全面にわたって覆い可能な構成とされている。
【0028】
ガス導入筒部51は、エアバッグ本体35から突出してインフレーター25と接続される流入口部41と、エアバッグ本体35内に配設される整流部45と、を備えて構成されている。そして、流入口部41は、図5〜8に示すように、横膨張部38の後部側の下面側の左右両側付近に、それぞれ、配設され、インフレーター25の先端部25aを挿入させる挿入口部42と、挿入口部42の挿入口42aから離れた端部から横膨張部38側に、略直交方向に屈曲する連通部43と、を備えたL字状の筒形状として、構成されている。なお、左右の流入口部41は、挿入口42aを相互に対向させるとともに、各挿入口部42の軸方向を略左右方向に沿わせて、配設されている。
【0029】
また、エアバッグ本体35における横膨張部38の各流入口部41の内部側には、連通部43に連通して、軸方向を略左右方向に沿わせた円筒状の整流部45が、配設されている。整流部45は、流入口部41側からの膨張用ガスGを、左右両端のガス流出口45a・45aから、左右方向両側へ流出させることとなる。
【0030】
そして、流入口部41と整流部45とからなるガス導入筒部51は、図10・11に示すように、平らに展開した筒部用布材52を、挿入口部42におけるエアバッグ本体35の膨張部36から離れる端部側を折目F0として、二つ折りし、エアバッグ本体35側と縫合しつつ、かつ、挿入口部42の挿入口42aと整流部45のガス流出口45a・45aとを開口させつつ、外周縁相互を縫合して、形成されている。さらに、実施形態の場合には、筒部用布材52は、図6・7に示すように、ポリエステル糸等を使用した織布から形成され、本体布53と、本体布53における流入口部41と整流部45の流入口部41の近傍部位との内周面側に配置される補強布54と、の二枚から形成されている。
【0031】
一方、エアバッグ本体35は、図4・6・7・10に示すように、ガス流入部36の周壁36aを形成する部材が、二枚の基布47・48から形成されている。基布47・48は、ポリエステル糸等を使用した織布から形成されて、相互に外形を略同一形状として、基布47が、エアバッグ本体35の膨張完了時に、上面側に位置する上壁部47を構成し、基布48が、エアバッグ本体35の膨張完了時に、下面側に位置して、車体側のカウル2やピラー4等の上面側に接するように配置される下壁部48を構成することとなる。
【0032】
そして、下壁部48には、各ガス導入筒部51の流入口部41をエアバッグ本体35内から突出させるためのガス導入口49が、形成されている。なお、各ガス導入筒部51は、整流部45の流入口部41近傍の部位を、ガス導入口49の周縁に縫合して、エアバッグ本体35の膨張部37と接続されている。
【0033】
また、エアバッグ本体35の横膨張部38には、ガス導入口49の前方側における横膨張部38の前後方向の中央部位に、左右方向に沿うように、厚さ規制部56が、配設されている。厚さ規制部56は、膨張時の横膨張部38を、フードパネル8の後縁8b側で、厚さ方向を上下方向に沿うように配置させた板状(長方形板状)に、膨張させるために、配設されている。実施形態の場合、厚さ規制部56は、上・下壁部47・48相互を縫合糸56aにより縫合して、形成されている。なお、厚さ規制部56は、左右の縦膨張部39と横膨張部38との境界部位付近まで、延びている。
【0034】
さらに、実施形態の場合、各縦膨張部39・39の部位にも、厚さを規制した板状としてフロントピラー4を覆えるように、厚さ規制部57が形成されている。各厚さ規制部57は、上・下壁部47・48に縫合した帯状の布材57aの先端相互を縫合して、形成されている。
【0035】
エアバッグ本体35をケース21に保持させるための取付片部59は、図5・6・8・9に示すように、ポリエステル糸等を使用した織布から形成され、エアバッグ本体35の横膨張部38側に連結される基部59aと、ケース21側に取り付けられる取付端部59bと、を備えて構成され、実施形態の場合には、左右の流入口部41付近の前後に、配設されている。
【0036】
そして、各取付片部59は、二つ折りした帯状として形成され、取付端部59bが、断面U字状のループ部61として構成されるとともに、基部59aが、ループ部61のケース21への取付位置から二又状に延びて、エアバッグ本体35の横膨張部38側に連結される二つのベルト部60・60から構成されている。各ベルト部60は、先端を、横膨張部38の下壁部48に、縫合して、連結されている。
【0037】
また、実施形態の場合、各ループ部61の先端は、ケース21に固定される固定手段としてのリテーナ30により、ケース21の底壁部23に取り付けられている。
【0038】
リテーナ30は、図2〜4に示すように、上方から見て、横向きのU字形状として形成され、左右方向に延びる二本の横棒部30a・30aと、横棒部30a・30aの端部相互を連結する縦棒部30bと、を備えて構成されている。各横棒部30aの左右両端付近には、下方へ突出するボルト31が突設されている。そして、各横棒部30aを、各流入口部41の前後のループ部61に挿入して、ループ部61を各横棒部30aのボルト31・31間に配置させ、各ボルト31を、ケース21の底壁部23の取付孔23bを貫通させるとともに、インナパネル9から突出させ、ナット32止めすることにより、各取付片部59が、ケース21に取り付けられ、さらに、ケース21とともに、インナパネル9に固定されることとなる。
【0039】
そして、各取付片部59は、図13に示すように、エアバッグ34の膨張時に、横膨張部38がケース21の周壁部22の上端付近より上方に、突出するように、基部59aと取付端部59bとの長さ寸法が、設定されている。
【0040】
なお、エアバッグ34の流入口部41における連通部43の上下方向の長さ寸法は、横膨張部38のケース21からの突出時、連通部43と横膨張部38との連結部位、すなわち、ガス導入口49の周縁におけるガス導入筒部51との縫合部位55に、大きな引張力が作用しないような長さ寸法に、設定されている。換言すれば、ガス導入口49の周縁におけるガス導入筒部51との縫合部位55に、破損を招くような大きな引張力が作用しないように、エアバッグ34の膨張時における横膨張部38のケース底壁部23からの離隔距離が、各取付片部59によって、規制されている。
【0041】
このエアバッグ34の製造について述べると、予め、所定形状に裁断した上・下壁部(基布)47・48に、それぞれ、各厚さ規制部57を形成する布材57a・57aを縫合しておき、また、下壁部48に、各ガス導入口49を形成するとともに、各取付片部59のベルト部60・60を縫合させておく。
【0042】
さらに、筒部用布材52の本体布53に補強布54を重ねて、折目F0で二つ折りして、図11のA・Bに示すように、外周縁相互の一点鎖線で示すエリア52aの部位を縫合して、流入口部41を筒状に形成するとともに、整流部45の下縁側(流入口部41側)となる部位相互を、縫合する。なお、縫合には、ポリエステル糸等の縫合糸Sを使用して、行う。
【0043】
そして、図11のB・Cに示すように、エアバッグ本体53の内周面側となる方向から外周面側に流入口部41を突出させるように、下壁部48の各ガス導入口49に流入口部41を挿入させ、各ガス導入口49の周縁に、筒部用布材52の整流部45を形成する側における流入口部41の近傍を重ね、筒部用布材52の二点鎖線で示すエリア52bとガス導入口49の周縁とを縫合する。
【0044】
その後、図11のC・Dに示すように、筒部用布材52における整流部45を形成する側の端縁のエリア52c相互を重ねて縫合すれば、整流部45を形成して、ガス導入筒部51を製造することができる。
【0045】
その後、布材57aの端末相互を縫合するとともに、下壁部48の上に上壁部47を重ねて、上・下壁部47・48の外周縁相互を縫合し、さらに、厚さ規制部56の部位で、縫合糸56aを使用して、上・下壁部47・48相互を縫合すれば、エアバッグ34を製造することができる。なお、各取付片部59は、上・下壁部47・48の外周縁相互の縫合直前に、下壁部48に結合させてもよい。
【0046】
このように製造したエアバッグ34は、ケース21に収納可能に折り畳んだ後、インフレーター25と接続させて、リテーナ30を使用して、ケース21に取り付けることとなる。
【0047】
エアバッグ34の折り畳みは、上壁部47と下壁部48とを相互に重ねて平らに展開させた状態から、ケース21に収納可能に、前後方向の幅寸法を狭めるように、左右方向の折目を付ける横折り工程と、左右方向の幅寸法を狭めるように、前後方向の折目を付ける縦折り工程と、を経て折り畳む。実施形態の場合に、横折り工程を経た後、縦折り工程で折り畳んで、折り畳み工程を完了させている。
【0048】
そして、横折り工程では、図12のA・Bに示すように、上壁部47と下壁部48とを相互に重ねて平らに展開させた状態から、まず、横膨張部38における左右の流入口部41・41の前方側となる前部側部位63を、横膨張部38の前縁38aを流入口部41に接近させるように下壁部48の側で巻いて、ロール折りするとともに、左右の流入口部41・41の後方側における横膨張部38及び左右の縦膨張部39からなる後部側部位64を、左右の縦膨張部39の後縁39aを流入口部41に接近させるように下壁部48の側で巻いて、ロール折りする。ついで、図12のB・Cに示すように、ロール折りした後部側部位64を流入口部41・41の上方に配置させ、さらに、図12のC・Dに示すように、後部側部位64の上方に、ロール折りした前部側部位63を載せて、前後方向の幅寸法をケース21の開口21aにおける前後方向の幅寸法に対応させるように、ロール折り完了体66を形成して、横折り工程を完了させる。
【0049】
ついで、ケース21の開口21aの左右方向の幅寸法に対応させて、ロール折り完了体66の左右方向の幅寸法を狭めるように、図12のD・Eに示すように、左右の端部66b・66bを、上方側から中央66a側に折り畳んで、縦折り工程を完了させれば、エアバッグ34の折り畳み工程を終了させることができる。
【0050】
エアバッグ34を折り畳んだ後には、折り崩れ防止用のラッピング材で、折り畳んだエアバッグ34をくるみ、その後、各インフレーター25・25の先端部25aを、エアバッグ34の各流入口部41における挿入口部42の挿入口42aに挿入させて、クランプ68の止め輪68aをボルト68b・ナット68c止めして、挿入口部42の周壁をインフレーター25の先端部25aに押圧して、エアバッグ34と各インフレーター25・25とを連結する。そして、各連結片部59のループ部61にリテーナ30の横棒部30aを挿入し、エアバッグ34とインフレーター25とをケース21に収納させて、インフレーター25やリテーナ30の各ボルト27・31をケース21の底壁部23の取付孔23a・23bから突出させ、各ボルト27・31に、底壁部23からの抜け防止用の図示しないスプリングワッシャを嵌め、さらに、予め、ケース21の後壁部22cに各連結片18をねじ19止めしておいたカバー16を、各係止脚17を係止孔22bに挿入係止させて、ケース21に組み付ければ、歩行者用エアバッグ装置Mを、組み立てることができる。
【0051】
そして、車両Vのボディ1側に組み付けられているフードパネル8のインナパネル9に対し、各ボルト27・31をインナパネル9の取付座11に貫通させて、各ボルト27・31にナット28・32を締結すれば、歩行者用エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0052】
なお、車両Vへの歩行者用エアバッグ装置Mの搭載時、図示しないエアバッグ作動回路からの作動信号入力用のリード線を、インフレーター25側に接続させておく。
【0053】
そして、この実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、車両搭載状態において、エアバッグ作動回路からインフレーター25・25に作動信号が入力されれば、各インフレーター25から膨張用ガスGが吐出され、エアバッグ34が、膨張用ガスGを流入させて膨張する。そして、図13に示すように、ケース21の開口21aを覆っていたカバー16が、エアバッグ34に押されて、係止脚17を係止孔22bから引き抜かせて、開口21aを開口させ、エアバッグ34は、開口21aから上方に向かって突出し、膨張を完了させることとなる。
【0054】
そして、実施形態のエアバッグ34では、エアバッグ本体35自体が、インフレーター25と接続される流入口部41を備えておらず、ガス導入筒部51が、整流部45とともに、流入口部41を構成している。そして、ガス導入筒部51は、エアバッグ本体34のガス導入口49から流入口部41側を突出させ、ガス導入口49の周縁に、整流部35の連通部43側の周縁を、結合させて、配設されているだけであって、インフレーター25を挿入させる挿入口部42は、ガス導入筒部51だけで形成されていることから、嵩張らず、かつ、めくれることなく、インフレーター25を挿入させることができる。
【0055】
さらに、ガス導入口49の周縁に、ガス導入筒部51における整流部45の連通部43側の周縁を、結合させるだけで、エアバッグ本体35に整流部45と挿入口部42とを設けることができることから、ガス導入口49を、エアバッグ本体34の所定位置に、適宜、形成するだけで、容易に、エアバッグ本体35内に膨張用ガスGを流入させる流入口部41と整流部45とを、配設することができて、エアバッグ34に対するインフレーター25の配置位置が変更となっても、容易に、対処することができる。
【0056】
したがって、実施形態のエアバッグ34は、流入口部41のインフレーター25との接続作業が容易となるとともに、嵩張ることなく、整流部45とともに、流入口部41を形成でき、さらに、エアバッグ34に対するインフレーター25の配置位置が変更となっても、容易に、対処することができる。
【0057】
そして、実施形態のエアバッグ34の製造方法では、エアバッグ本体35が縫製タイプとしており、ガス導入筒部51における流入口部41側を形成した筒部用布材52を、エアバッグ本体35の基布48側のガス導入口49の周縁に、縫合させ、かつ、整流部45自体を縫合して形成する際、ガス導入口49の周囲を、他の基布47・57aで塞ぐことなく、表裏を露出可能な状態で、縫合作業を行えることから、迅速かつ効率的に行える。そしてその後に、整流部45を覆うように、基布47を被せて、基布47・48の外周縁相互を縫合して、エアバッグ本体35を製造できることから、エアバッグ34の製造が容易となる。
【0058】
なお、実施形態では、エアバッグ34の整流部45が、両側にガス流出口45aを開口させたものを示したが、片側だけに、ガス流出口を配設させるように、整流部45を構成してもよい。
【0059】
また、実施形態では、縫製タイプのエアバッグ本体35を例示したが、接着等を利用して、エアバッグ本体35を製造する結合タイプとしていれば、ガス導入筒部51も、接着を利用する結合タイプとして、エアバッグ本体35と結合させるようにしてもよい。勿論、エアバッグ本体35が接着等を利用して製造する結合タイプとしていても、ガス導入筒部51をエアバッグ本体35に対して縫合して、結合させてもよい。あるいは、逆に、エアバッグ本体35が縫製タイプとしていても、ガス導入筒部51を、接着を利用する結合タイプとして、エアバッグ本体35と結合させるようにしてもよい。
【0060】
さらに、実施形態では、エアバッグを使用するエアバッグ装置として、歩行者用エアバッグ装置Mを例示したが、歩行者用エアバッグ装置Mの搭載箇所は、フードパネル8でなく、カウル2の前部側等のボディ1側の部位に、搭載してもよく、さらに、本発明のエアバッグは、歩行者用エアバッグ装置に限定されず、インフレーターと接続される流入口部と整流部とを備えたものであれば、頭部保護エアバッグ装置等のエアバッグに適用できる。
【0061】
さらにまた、実施形態では、インフレーター25の先端部25aと挿入口部42との接続に、ボルト68bを利用したタイプのクランプ68を例示したが、ボルトを利用せずに、塑性変形させるようにかしめて、挿入口部42を先端部25aの外周に押圧して接続するかしめタイプ等のクランプ等の種々の接続手段を使用して、インフレーター25の先端部25aと挿入口部42とを接続してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態のエアバッグを使用する歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の側面図である。
【図2】実施形態の歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の平面図である。
【図3】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の車両前後方向に沿った概略縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】実施形態の歩行者用エアバッグ装置におけるエアバッグ、インフレーター、リテーナ、及び、ケースの分解斜視図である。
【図5】実施形態の歩行者用エアバッグ装置に使用するエアバッグを単体で膨張させた状態の平面図である。
【図6】実施形態のエアバッグの縦断面図であり、図5のVI−VI部位に対応する。
【図7】実施形態のエアバッグの部分縦断面図であり、図5のVII−VII部位に対応する。
【図8】実施形態のエアバッグの下方側から見た部分斜視図であり、流入口部付近を示す。
【図9】実施形態のエアバッグの上方側から見た部分破断斜視図であり、整流部付近を示す。
【図10】実施形態のエアバッグを構成する部材を示す平面図である。
【図11】実施形態の筒部用布材をエアバッグ本体に結合させる工程を、順に説明する図である。
【図12】実施形態のエアバッグの折り畳み工程を順に説明する図である。
【図13】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の作動状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
25…インフレーター、
25a…先端部、
34…エアバッグ、
35…エアバッグ本体、
41…流入口部、
42…挿入口部、
42a…挿入口、
43…連通部、
45…整流部、
45a…ガス流出口、
47・48…基布、
49…ガス導入口、
51…ガス導入筒部、
52…筒部用布材、
68…クランプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張用ガスを供給するインフレーターの先端部を挿入させて、周壁を前記インフレーター側に押圧することにより、前記インフレーターと接続させる挿入口部と、該挿入口部から屈曲するように延びる連通部と、を備えて構成される膨張用ガスの流入用の筒状の流入口部、を有するとともに、
前記連通部を経た内部側に、前記連通部からの膨張用ガスの流れ方向を略直交方向に変更する円筒状の整流部を、配設させて構成されるエアバッグであって、
前記エアバッグが、前記流入口部の位置に配置されるガス導入口を開口させたエアバッグ本体と、該エアバッグ本体に結合されて、前記整流部と前記流入口部とを形成可能なガス導入筒部と、を備えて構成され、
前記ガス導入筒部が、前記エアバッグ本体の前記ガス導入口から前記流入口部側を突出させ、前記ガス導入口の周縁に、前記整流部の前記連通部側の周縁を、結合させて、形成されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
膨張用ガスを供給するインフレーターの先端部を挿入させて、周壁を前記インフレーター側に押圧することにより、前記インフレーターと接続させる挿入口部と、該挿入口部から屈曲するように延びる連通部と、を備えて構成される膨張用ガスの流入用の筒状の流入口部、を有するとともに、
前記連通部を経た内部側に、前記連通部からの膨張用ガスの流れ方向を略直交方向に変更する円筒状の整流部を、配設させて構成されるエアバッグの製造方法であって、
前記エアバッグが、前記流入口部の位置に配置されるガス導入口を開口させたエアバッグ本体と、該エアバッグ本体に結合されて、前記整流部と前記流入口部とを形成可能なガス導入筒部と、を備えて構成されるとともに、前記エアバッグ本体の前記ガス導入口から、前記ガス導入筒部の前記流入口部側を突出させ、前記ガス導入口の周縁に、前記整流部の前記連通部側の周縁を、結合させて、形成される構成として、
前記エアバッグ本体が、複数枚の可撓性を有した基布相互を縫合して形成する縫製タイプとして、
前記基布に、前記ガス導入口が形成され、
前記ガス導入筒部が、前記流入口部の挿入口部における前記エアバッグ本体から離れた端部側を、折目として、二つ折りし、前記インフレーターの先端部を挿入させる前記挿入口部と前記整流部のガス流出口とを開口させた状態で、重ねた外周縁相互を縫合して、前記整流部と前記流入口部とを形成可能な展開形状の筒部用布材から、形成し、
平らに展開した前記筒部用布材を、前記挿入口部側の前記折目で二つ折りして、重ねた前記流入口部と前記整流部の前記連通部側の周縁との外周縁相互を縫合して、前記流入口部を形成し、
前記基布のガス導入口から、前記筒部用布材の前記挿入口部を突出させた状態で、前記ガス導入口の周縁に、前記筒部用布材における前記整流部の前記連通部側の周縁を、縫合させ、
ついで、前記筒部用布材における前記整流部側の重ねた外周縁相互を縫合して前記整流部を形成し、その後、前記基布相互を縫合して、前記エアバッグ本体を形成することにより、製造することを特徴とするエアバッグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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