説明

エアレスポンプ式噴出器、その噴出器用容器、およびその噴出器用容器の底部キャップ

【課題】エアレスポンプ式噴出器において、使用時に通気孔が塞がれることにより内容物の吐出不良を生ずるおそれをなくす。
【解決手段】エアレスポンプ式噴出器の容器100を、容器本体101と、それに組み付ける底部キャップ102とで構成する。底部キャップは、底部102aに、2つの通気孔103を有する。また、それらの通気孔に各々連通してそれらを結ぶように、底部外面に通気通路40を設ける。通気通路は、底部外面に指を当ててエアレスポンプ式噴出器のポンプ200を作動するとき、その指が入り込まない大きさとし、例えば溝状で、径方向に外面の周縁までのばして形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気に触れさせたくない液体、粘性が高いクリームや乳液などの内容物を吐出する、点鼻用・洗鼻用・喉用・化粧用などのエアレスポンプ式噴出器に関する。および、そのようなエアレスポンプ式噴出器において、ポンプを口部に取り付けて内容物を収容する噴出器用容器に関する。および、通気孔を有し、容器本体に取り付けてエアレスポンプ式噴出器の容器の底部を形成する底部キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアレスポンプ式噴出器では、例えば図6に示す点鼻用噴出器のように、噴出器用容器1の口部1aにポンプ2を取り付けてなる。噴出器用容器1は、容器本体3内にスライド栓4を液密にスライド自在に挿入してから、容器本体3に底部キャップ5を組み付けて構成している。これにより、スライダ栓4により容器1内を内容物収容室6と空気室7とに区画する。空気室7は、底部キャップ5にあけた1または複数の通気孔5aを通して外部と連通し、大気圧となっている。
【0003】
そして、使用時は、図7に示すように、ポンプ2のノズル部分2aを挟んで鍔状の指掛け部2bに人差し指と中指を掛けて容器1の底部外面に親指を当て、指掛け部2bを引き下げてポンプ2を作動し、ポンプ2の内容物を先端の噴口2cから吐出すると同時に、内容物収容室6の内容物である点鼻薬をポンプ2内に吸い上げる。これにより、内容物収容室6を負圧化して、大気圧である空気室7との圧力差からスライダ栓4を上昇していた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−212262号公報
【特許文献2】特開2006−044710号公報
【特許文献3】特開2006−123913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような噴出器では、使用時に、図7に示すように容器1の底部外面に親指を当てたとき、図8(A)や(B)に鎖線で示すように親指で通気孔5aを塞いでしまい、空気室7を密閉し、指掛け部2bを押し下げてポンプ2を作動したときにスライダ栓4の上昇を妨げ、噴口2cから内容物が吐出されないことがある問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、エアレスポンプ式噴出器において、使用時に通気孔が塞がれることにより噴口からの内容物の吐出不良を生ずるおそれをなくすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、請求項1ないし5に記載の発明は、1または複数の通気孔を有し、容器本体に組み付けてエアレスポンプ式噴出器の容器の底部を形成する噴出器用容器の底部キャップにおいて、
前記容器の底部外面に指を当てて前記エアレスポンプ式噴出器のポンプを作動するとき、指が入り込まない通気通路を前記通気孔に連通して前記底部外面に形成する、ことを特徴とする。
【0008】
通気通路は、底部キャップの底部外面に溝状に形成するとよく、好ましくは指で塞がれるおそれの少ない底部外面の周縁までのばして形成するとよい。1つの通気通路に連通して通気孔を複数設けるとよく、また複数の通気通路を交叉して設けるとよい。
【0009】
請求項6に記載の発明は、通気孔を有し、容器本体に組み付けてエアレスポンプ式噴出器の容器の底部を形成する噴出器用容器の底部キャップにおいて、
前記容器の底部外面に指を当てて前記エアレスポンプ式噴出器のポンプを作動するとき、指によってすべてが同時に塞がれるおそれのない位置に、前記通気孔を前記底部外面に複数有する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1に記載の底部キャップを噴出器用容器に備えることを特徴とする。請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の噴出器用容器をエアレスポンプ式噴出器に備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1ないし5に記載の発明によれば、容器の底部外面に指を当ててエアレスポンプ式噴出器のポンプを作動するとき、指が入り込まない通気通路を通気孔に連通して底部外面に形成するので、エアレスポンプ式噴出器の使用時に通気孔を介して連通して通気孔が指で塞がれる心配がなく、スライダ栓の上昇が妨げられて噴口からの内容物の吐出不良を生ずるおそれをなくすことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、通気通路を底部外面に溝状に形成するので、通気通路を底部キャップの底部外面に沿ってのばして通気孔を広範囲に開口し、容器の底部外面に指を当ててエアレスポンプ式噴出器のポンプを作動するとき、底部の外面に押し当てた指から外れる開口をつくって通気孔を塞ぐおそれを少なくすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、通気通路を底部外面の周縁までのばして形成するので、容器の底部外面に指を当ててエアレスポンプ式噴出器のポンプを作動するとき、底部外面の周縁までのばした通気通路部分を底部の外面に押し当てた指から外れるようにして通気孔を塞ぐおそれを少なくすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、1つの通気通路に連通して通気孔を複数設けるので、1つの通気通路で複数の通気孔が底部の外面に押し当てた指によって塞がれることを防止することができる。また、通気通路の数を少なくして、底部キャップの形状を単純化することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、複数の通気通路を交叉して設けるので、交叉するところで他方の通気通路とも連通して底部の外面に押し当てた指によって通気孔が塞がれるおそれを一層少なくすることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、容器の底部外面に指を当ててエアレスポンプ式噴出器のポンプを作動するとき、指によってすべてが同時に塞がれるおそれのない位置に、通気孔を底部外面に複数有するので、エアレスポンプ式噴出器の使用時にすべての通気孔が指で同時に塞がれる心配がなく、スライダ栓の上昇が妨げられて噴口からの内容物の吐出不良を生ずるおそれをなくすことができる。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、噴出器用容器に、請求項1ないし6のいずれか1に記載の底部キャップを備えるので、エアレスポンプ式噴出器の使用時に指で塞いで通気孔を通しての通気が阻害される心配がなく、スライダ栓の上昇が妨げられて噴口からの内容物の吐出不良を生ずるおそれをなくすことができる。
【0018】
請求項8に記載の発明によれば、エアレスポンプ式噴出器に、請求項7に記載の噴出器用容器を備えるので、エアレスポンプ式噴出器の使用時に指で塞いで通気孔を通しての通気が阻害される心配がなく、スライダ栓の上昇が妨げられて噴口からの内容物の吐出不良を生ずるおそれをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図1には、この発明によるエアレスポンプ式噴出器の縦断面を示す。
【0020】
図中符号100は、エアレスポンプ式噴出器の噴出器用容器である。噴出器用容器100は、プラスチック材料を用いて、外周に雄ねじを有する口部100aを設ける容器本体101と、それに組み付けて容器100の底部を形成する底部キャップ102とでボトル形状につくる。図2に示すように、底部キャップ102は、底板部102aのまわりに外筒部102bと内筒部102cとを立ち上げてなり、底板部102aに、この例では2つの通気孔103を設ける。また、外筒部102bの内周面に環状突部104を形成し、容器本体101の下部に被せて組み付けたときその環状突部104を掛け止めて噴出器用容器100を構成する。
【0021】
図1に示すように、容器100の容器本体101内には、スライダ栓105を液密にスライド自在に挿入してなる。そして、容器100内を内容物収容室106と空気室107とに区画する。内容物収容室106には、この例では、内容物として液状の点鼻薬が収容されて密閉されている。他方、空気室107は、底部キャップ102の通気孔103を通して外部と連通し、大気圧に保持されている。
【0022】
容器100の口部100aには、ポンプ200を取り付ける。ポンプ200は、そのネジキャップ10を容器100の口部100aに取り付ける。ネジキャップ10は、内部にシリンダ12を取り付ける。シリンダ12は、内周に下から順に、弁座13、ピストン突当部14、開閉弁突当部15を形成する。外周には、パッキン17を取り付ける。そして、シリンダ12の先端を口部100a内に入れて底部に向けてのばし、ネジキャップ10を、口部100aにねじ付けてパッキン17を圧縮し、口部100aにポンプ200を取り付ける。
【0023】
シリンダ12内には、ボール弁18を入れて弁座13上に載せて後、コイルスプリング19を入れ、そのコイルスプリング19の上に載せてピストン20の下部を収納する。ピストン20には内部に吐出通路21を形成し、またその吐出通路21と外部とを連通して横孔22をあける。そして、その横孔22位置のまわりに樹脂製の開閉弁23を取り付け、その開閉弁23の上に、ラバー部材等よりなるリング状の弾性部材24を取り付ける。
【0024】
ピストン20は、ネジキャップ10の中心孔を貫通して上方へと突出し、先端にスパウト25を取り付ける。スパウト25には、中心にセンターポスト26を入れ、先端にノズル部材27を取り付ける。スパウト25の下部まわりには、鍔状の指掛部28を形成する。ノズル部材27は、内面に渦溝を形成し、中心に噴口30を形成する。
【0025】
いま、この噴出器を使用するときは、手で持って、図7に示すと同様にスパウト25を挟んで指掛部28に人差し指と中指を掛けて容器100の底部外面、すなわち底板部102aの外面に親指を当て、スパウト25の先端を鼻孔内に入れてスパウト25を押し下げる。すると、ピストン20を押し込んでシリンダ室S内の圧力を上昇するとともに、ピストン20とともに押し下げる弾性部材24を変形して開閉弁23を開き、ポンプ200のシリンダ室S内の点鼻薬を横孔22を通してピストン20内に入れ、吐出通路21を通してスパウト25内に入れ、センターポスト26まわりを通してノズル部材27の渦溝で霧状として噴口30から外部へと吐出し、鼻腔に向けて吹き付ける。
【0026】
そして、スパウト25の押し下げとともにピストン20を押し込んだとき、やがてその下死点近くで開閉弁23を開閉弁突当部15に突き当て、以降ピストン20のみさらなる押し込みを可能とし、ピストン20のみを押し込んでピストン突当部14に突き当てる。これにより、シリンダ室S内の圧力を横孔22からピストン20内に逃がし、吐出通路21を通してスパウト25内に入れ、スパウト25内を通して噴口30から外部へと排出し、完全に除去することができる。
【0027】
そして、使用後、スパウト25の押し下げを解除すると、コイルスプリング19でピストン20を押し上げてスパウト25を復帰するとともに、弾性部材24の変形を戻すことにより開閉弁23を閉じてシリンダ室S内を負圧化し、ボール弁18を開いて容器100の内容物収容室106の点鼻薬をシリンダ室S内に吸い上げる。これにより、内容物収容室106を負圧化して、大気圧である空気室107との圧力差からスライダ栓105を上昇する。内容物収容室106の内容物がなくなると、図3に示すようにスライダ栓105は、容器100内を上死点まで上昇する。
【0028】
ところで、この例では、図4(A)および(B)に示すように、底部キャップ102に設ける2つの通気孔103に各々連通してそれらを結ぶように、底部102aの外面に通気通路40を設ける。通気通路40は、溝状で、径方向に容器100の底部外面の周縁までのばして形成し、図7に示すと同様に容器100の底部の外面に指を当ててエアレスポンプ式噴出器のポンプ200を作動するとき、図4(A)および(B)に鎖線で示すように指が入り込まない大きさとする。例えば、底部キャップ102の径をφ26.3とし、通気孔103の径をφ1.2とするとき、通気通路40の溝幅を1.7とする。
【0029】
この例では、底部キャップ102に、2つの連通孔103に連通する1つの通気通路40を設けたが、図5(A)に示すようにそれぞれ2つの連通孔103に連通する2つの通気通路41、42を交叉するように設けてもよい。このようにすると、交叉するところで他方の通気通路とも連通して底部102aの外面に押し当てた指によって通気孔103が塞がれるおそれを一層少なくすることができる。
【0030】
もちろん、図5(B)に示すように、底部キャップ102に、1つの連通孔103に連通する1つの通気通路43を設けるようにしてもよい。
【0031】
また、上述した例では、容器100の底部外面に指を当ててエアレスポンプ式噴出器のポンプ200を作動するとき、指が入り込まない通気通路40を通気孔103に連通して底部外面に形成した。しかし、例えば図5(C)や(D)に示すように、通気通路を設けなくても、容器の底部外面に指を当ててエアレスポンプ式噴出器のポンプを作動するとき、指によってすべてが同時に塞がれるおそれのない位置に、通気孔103を底部キャップ102の底部外面に複数設けるようにしてもよい。
【0032】
図5(C)に示す例では4つの通気孔103を底部外面の周縁近くに90度間隔で形成し、図5(D)に示す例では3つの通気孔103を底部外面の周縁近くに120度間隔で形成してなる。このようにすると、エアレスポンプ式噴出器の使用時にすべての通気孔103が指によって同時に塞がれて通気孔103を通しての通気が阻害される心配がなく、スライダ栓の上昇が妨げられて噴口からの内容物の吐出不良を生ずるおそれをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明によるエアレスポンプ式噴出器の縦断面図である。
【図2】その噴出器の容器を構成する底部キャップの部分拡大図である。
【図3】その噴出器において、内容物を吐出し終わった状態の縦断面図である。
【図4】(A)は底部キャップの縦断面図、(B)はその底面図である。
【図5】(A)は底部キャップの他例の底面図、(B)はさらに他例の底面図、(C)はまたさらに他例の底面図、(D)はさらにまた他例の底面図である。
【図6】従来のエアレスポンプ式の噴出器を片側縦断面にして示す正面図である。
【図7】その噴出器の使用状態図である。
【図8】(A)はその噴出器の容器を構成する底部キャップの縦断面図、(B)はその底面図である。
【符号の説明】
【0034】
40 通気通路
41 通気通路
42 通気通路
43 通気通路
100 噴出器用容器
101 容器本体
102 底部キャップ
102a 底部キャップの底部
103 通気孔
200 ポンプ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気孔を有し、容器本体に組み付けてエアレスポンプ式噴出器の容器の底部を形成する噴出器用容器の底部キャップにおいて、
前記容器の底部外面に指を当てて前記エアレスポンプ式噴出器のポンプを作動するとき、指が入り込まない通気通路を前記通気孔に連通して前記底部外面に形成することを特徴とする噴出器用容器の底部キャップ。
【請求項2】
前記通気通路を前記底部外面に溝状に形成することを特徴とする、請求項1に記載の噴出器用容器の底部キャップ。
【請求項3】
前記通気通路を前記底部外面の周縁までのばして形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の噴出器用容器の底部キャップ。
【請求項4】
1つの前記通気通路に連通して前記通気孔を複数設けることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1に記載の噴出器用容器の底部キャップ。
【請求項5】
複数の前記通気通路を交叉して設けることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1に記載の噴出器用容器の底部キャップ。
【請求項6】
通気孔を有し、容器本体に組み付けてエアレスポンプ式噴出器の容器の底部を形成する噴出器用容器の底部キャップにおいて、
前記容器の底部外面に指を当てて前記エアレスポンプ式噴出器のポンプを作動するとき、指によってすべてが同時に塞がれるおそれのない位置に、前記通気孔を前記底部外面に複数有することを特徴とする噴出器用容器の底部キャップ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1に記載の底部キャップを備えることを特徴とする、噴出器用容器。
【請求項8】
請求項7に記載の噴出器用容器を備えることを特徴とする、エアレスポンプ式噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−44649(P2008−44649A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222253(P2006−222253)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】