説明

エアロゾル消火装置

【課題】燃焼速度を緩やかにすると同時に噴出速度を上げることを可能とする。
【解決手段】内容器20と外容器22の2重容器構造を持つ収納容器に固形消火剤14を収納し、固形消火剤14の燃焼により消火用のエアロゾルを発生する。収納容器となる外容器22の開口フランジ部69には、容器開口部を密閉して固形消火剤14の燃焼で発生したエアロゾルによる圧力増加で破砕して容器開口部を開放する封止構造が設けられる。封止構造は開口フランジ部69に破砕用の切り込み溝を形成した難燃樹脂性の封止板70を固定して封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形消火剤の燃焼により消火用エアロゾルを発生して火災を消火抑制するエアロゾル消火装置に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、エンジンルーム、ケーブルダクト、制御盤、機器筐体内などの閉鎖された密閉空間で発生した火災を消火抑制するため、固形消火剤に点火して燃焼させることで消火用エアロゾルを発生するエアロゾル消火装置が知られている。
【0003】
このようなエアロゾル消火装置にあっては、火災が発生した際に、エアロゾル消火装置の点火装置に電気信号を送り、固形消火剤に点火して燃焼させるようにしている。固形消火剤の燃焼により発生するエアロゾルは例えば塩化カリウムや臭化カリウムなどを主成分とし、それ以外に水、二酸化炭素及び窒素を含み、燃焼抑制作用により消火抑制を果たすことができる。
【0004】
またエアロゾル装置の構造としては、一端に開口した収納容器に固形消火剤を収納しているが、エンジンルームなどの消火対象空間に設置した状態で内部に塵、埃などが付着するのを防止するため、収納容器の開口を例えば可燃性の封止シートで封止することが必要と考えられる。可燃性シートを採用した場合は固形消火剤を燃焼した時に発生するエアロゾルを含む火炎を受けて燃えることで除去され、発生したエアロゾルを消火対象空間に放出させることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3766685号公報
【特許文献2】特開2005−503853号公報
【特許文献3】特開平6−269513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような一般的な封止シートにより収納容器の開口を封止した構造にあっては、封止シートは薄いシートであるため十分な強度を有しておらず、エンジンルームなどの消火対象空間に設置する施工時に、尖った工具などがぶつかると封止シートが破れたり傷ついたりし、封止構造を維持できない問題が発生する。
【0007】
この問題を解決するため、例えば収納容器の開口部を小さくして封止シートに強度を持たせることが考えられるが、開口部を小さくしたことで燃焼により発生したエアロゾルの放出を妨げる問題が発生する。また、封止シートが固形消火剤の燃焼による火炎を受けて燃焼した場合、封止シートの燃焼による残渣が放出穴を塞ぎ、エアロゾルの放出を妨げる問題もある。
【0008】
本発明は、充分な封止強度を確保すると共に固形消火剤の燃焼時に確実に除去されてエアロゾルの放出を妨げないようにするエアロゾル消火装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はエアロゾル消火装置を提供するものであり、
燃焼により消火用のエアロゾルを発生する固形消火剤と、
固形消火剤を収納する一端に開口した筒状の収納容器と、
収納容器の開口部を密閉し、固形消火剤の燃焼で発生したエアロゾルによる圧力増加で破砕して開口部を開放する封止構造と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、封止構造は、収納容器の開口フランジ部に、破砕用の切り込み溝を形成した難燃樹脂性の封止板を固定する。
【0011】
封止板の切り込み溝は、
開口縁に沿って形成した外側リング溝と、
中心部分に形成した内側リング溝と、
外側リング溝と内側リング溝を連結するように径方向に形成された複数本の直線溝と、
を備える。
【0012】
封止構造は、封止板の外側にフランジ部に相対する金属製の押えリングを配置して固定する。
【0013】
封止構造は、樹脂板の内側と開口フランジ部の間にシールパッキンを配置して密閉固定する。
【0014】
収納容器は、固形消火剤を収納した内容器と、内容器の外側に断熱空気層を介して配置された外容器とを備えた2重容器構造であり、外容器に開口フランジ部を形成して封止板により密閉固定する。

【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、固形消火剤を収納した収納容器の開口部の封止構造として、固形消火剤の燃焼で発生したエアロゾルによる所定圧力の増加で破裂して開口部を開放する封止構造としたことで、封止構造は燃焼による所定の破裂圧力を超えない力が加わっても破損したり傷ついたりしない充分な封止強度を有し、エアロゾル消火装置をエンジンルームなどの消火対象空間に設置する施工作業の際に工具があたっても確実に密閉状態を維持することができる。
【0016】
このような封止構造としては、収納容器の開口フランジ部に、破砕用の切り込み溝を形成した難燃樹脂性の封止板を固定することで実現しており、封止板の強度は板厚、材質などで変え、フタに溝の切り込みを入れることで、任意の放出圧力で破壊される封止板を作ることができる。
【0017】
また封止板を固定するフランジ面に相対した反対側に金属製の押さえリングを配置して封止板の周囲をフランジ面に挟み付けた状態で固定することで、押えリングを支点に中心から外側に向かうよう封止板を破裂させ、これによって破裂した封止板を確実に飛散させて一部が残ってエアロゾルの放出を妨げることを確実に防止できる。
【0018】
またシールパッキンを封止板と収納容器のフランジ面との間に入れることで、密閉性を高めると共に防水性能も確保できる。更に封止版を樹脂板にすることで耐腐食性を向上させ、また難燃性とすることで、封止板が燃焼して残渣が発生することを防止できる。
【0019】
また固形消火剤の開放側端面に配置した燃焼制御板の上部に多孔ノズルを配置することで、固形消火剤の燃焼で放出される火炎をより確実に分断し、火炎高さを充分に抑制することができる。
【0020】
また固形消火剤の燃焼で発生したエアロゾルは燃焼制御板の中心の放出穴から放出されるため、発生ガスの内部圧力を上昇させ、エアロゾルの放出速度を上げることができ、発生したエアロゾルが消火対象物内での拡散効果に繋がるため、消火性能の向上が期待でき、さらには燃焼時に発生する未燃性ガスも拡散させるため、放出穴付近の火炎の発生を抑制できる。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるエアロゾル消火装置の実施形態を示した説明図
【図2】図1の実施形態の組立分解状態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明によるエアロゾル消火装置の実施形態を示した説明図であり、図1(A)に平面を、図1(B)に断面を示している。
【0023】
図1において、本実施形態のエアロゾル消火装置10は、消火剤容器12の中に固形消火剤14を収納しており、固形消火剤14の開口側となる上面には燃焼制御板16が面接触して固定配置されている。
【0024】
消火剤容器12は放出側となる上部に開口した円筒体であり、金属ケースなどが使用される。固形消火剤14は中心軸方向に貫通穴15を形成した円柱形状をもち、燃焼により粉末エアロゾルを発生するものである。
【0025】
固形消火剤14に使用する消火剤組成物としては、特に制限がないが、アルカリ金属塩を主成分とする発煙消火剤組成物を使用することが好ましい。アルカリ金属塩として具体的には、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、重クロム酸カリウム、硝酸セシウム、および硝酸カリウムからなる群より選択されたアルカリ金属塩が好ましく、入手のしやすさ、コスト等の面からより好ましくは塩素酸カリウム、過塩素酸カリウムである。
【0026】
また、アルカリ金属塩に還元剤として作用する反応物を含んだものが好ましい。還元剤は、特に限定されることはないが、ゴム、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の高分子材料を好ましく用いることができる。
【0027】
さらに、本発明に用いる消火剤組成物には、別途、燃焼調整剤、金属還元剤がそれぞれ配合されていてもよい。該燃焼調整剤としては、塩化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、タルク、珪藻土、硝子粉等の塩を用いることができる。また、該金属還元剤としてはマグネシウム、アルミニウム、シリコン等を挙げることができる。
【0028】
これらの消火剤組成物は、過塩素酸カリウムに代表される酸化剤を主成分とし、樹脂等の還元剤及び適宜、燃焼調整剤、金属還元剤を混合し、成型したものを使用することができる。
【0029】
固形消火剤14の燃焼により発生するエアロゾルは1μm以下の粒子径を持つ超微粒子であり、その成分には炭酸塩、塩化物、あるいは酸化物、もしくはその混合物を含有している。
【0030】
具体的には、エアロゾルは塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸カリウム、酸化カリウムなどの凝集粒子であり、これ以外に窒素、二酸化炭素、水蒸気などを含んでいる。エアロゾルは火災が発生した監視エリアに充満することで、火災発生場所における燃焼の火災中心を抑制消滅させることで消火を行う。またエアロゾルはその主成分が炭酸塩、塩化物、あるいは酸化物などであることから、毒性がなく環境に対し優しい性状を有する。
【0031】
エアロゾルを燃焼により発生する固形消火剤14の重量としては、1立方メートルの監視エリアに必要な量が80〜200グラムであり、これに基づき、本実施形態のエアロゾル消火装置10を設置する監視エリア、例えば車両のエンジンルームの容積に対応した量の固形消火剤14を収納している。
【0032】
燃焼制御板16は貫通穴15に対応する中心位置に放出穴18を開口した金属製の薄い円板であり、固形消火剤14の放出側の上面に接触固定され、上面の燃焼を抑制すると共に、放出穴18から燃焼により発生したエアロゾルを含む燃焼ガスを外部に放出させる。
【0033】
ここで燃焼制御板16の中心に設けた放出穴18の穴径は、エアロゾルの放出時間や放出速度を決める役割を果たし、必要に応じて任意に変更する。例えば貫通穴15の初期の径と同じであっても良いし、貫通穴15よりも小さい径でも良い。また燃焼制御板16の放出穴18としては円形の穴としているが、これ以外に、多角形や星形といった任意の形状及び個数とすることができる。
【0034】
また消火剤容器12に対する燃焼制御板16の固定は、消火剤容器12に対し燃焼制御板16を圧入することにより抜止めし、上端面に接触固定している。燃焼制御板16の消火剤容器12内での固定構造としては、圧入以外に、固形消火剤の上面に対する接着固定、消火剤容器12内へのCリングの嵌合による抜止め固定、若しくは消火剤容器12の内面に形成した爪又は突起による抜止め固定などにより、固形消火剤14の上端面に接触固定しても良い。
【0035】
消火剤容器12は上部の放出側に開口した収納容器としての内容器20に底部のスペーサプレート29を介して収納される。内容器20は更に上部の放出側に開口した外容器22に収納され、両者の間に断熱空気層25を形成した2重容器構造としている。
【0036】
この2重容器構造は、内容器20の底部から下向きに3本のボルト26を延在し、ボルト26に円筒状のスペーサ28を挿入することで両者の間隔を設定し、外容器22の底部から取り出したボルト26に間にフッ素系ゴムを使用したシール40を介して底板24を配置し、ナット30のねじ込みで締め付け固定している。
【0037】
消火剤容器12に収納した固形消火剤14の貫通穴15には点火装置32が設けられる。点火装置32は内容器20の底部に耐熱ソケットとしてセラミックソケット34を配置してシール38を介して底板24により固定し、固形消火剤14の貫通穴15の中にヒータコイル36を穴の内面に接触するように配置している。
【0038】
点火装置32は外部からの信号線接続による通電でヒータコイル36を加熱し、貫通穴15の部分で固形消火剤14に点火して中から燃焼を始めるようにしている。点火装置32のヒータコイル36にはニクロム線やタンタル線を使用する。
【0039】
内容器20の開口側の途中にはビス66により多孔ノズル60が配置される。多孔ノズル60は上下方向に小さな複数のノズル孔62を略均一に分布するように形成し、また火炎の噴き出しを抑制するノズル孔62の長さを確保するため、充分な厚さとしており、ステンレスなどの金属円板から作られている。
【0040】
多孔ノズル60は、固形消火剤14の燃焼により燃焼制御板16の放出穴18から噴き出すエアロゾルを含む火炎を受け、分散した複数のノズル孔62を通して外部に放出させることで、火炎を分断して外部への噴き出しを抑制する。
【0041】
またノズル孔62からエアロゾルを含む火炎が勢い良く噴き出す場合、多孔ノズル60の噴き出し側の空間が負圧となり、開口側から周囲の空気を巻き込み、高温のエアロゾルを冷却する作用を果たす。
【0042】
この外部からの空気の巻き込みによるエアロゾルの冷却効率を高めるため、本実施形態にあっては、内容器20の開口径をAとした場合、多孔ノズル60を開口部から開口径Aの半分となるA/2だけ奥まった位置に配置しており、更に、開口側となる内容器20の側壁の複数個所に空気孔64を形成している。
【0043】
このような開口径Aに対しA/2となる奥まった位置に多孔ノズル60を配置したことで、ノズル孔62からエアロゾルの噴き出しにより発生する負圧を高くし、更に、側壁の空気孔64から高い負圧により充分な量の空気を導入し、高温状態で噴き出してくるエアロゾルを効率良く冷却して消火対象空間に放出することができる。
【0044】
外容器22の開口部にはフランジ部69が形成され、ここに容器を密閉する封止構造として難燃樹脂性の封止板70を固定している。封止板70とフランジ部69の間にはシールパッキン72が配置され、また封止板70の上には金属製の押えリング74が配置され、押えリング74、封止板70及びシールパッキン72を重ねた状態でフランジ部69に複数本のビス75でネジ込み固定している。シールパッキン72は容器内部の密閉を確保すると同時に防水構造を実現している。
【0045】
封止板70の表面には固形消火剤14の燃焼による圧力増加で破裂させるための切り込み溝が形成されている。封止板70の切り込み溝は、開口縁に沿って形成した外側リング溝76a、中心部分に形成した内側リング溝76b、及び外側リング溝76aと内側リング溝76bを連結するように径方向に放射状に形成された8本の直線溝76cで形成されている。
【0046】
封止板70の強度は、封止板70の厚さ、材質、及び切り込み溝の深さを調整することで、必要とする所定の強度に設定することができ、これによって固形消火剤14の燃焼による増加した内部圧力が封止板70の設定強度に対応した圧力を超えた時に、封止板70を破裂させて収納容器の密閉を解除して開放させることができる。
【0047】
外側リング溝76a、内側リング溝76b、及び8本の放射配置された直線溝76cは、固形消火剤14の燃焼による内部圧力の急激な増加を受けて外側に押され、封止板70の強度を越える圧力が加わると、外側リング溝76a、内側リング溝76b、及び8本の放射配置された直線溝76cの部分から割れることで破裂し、外部に飛散する。
【0048】
このとき封止板70の外側については外側リング溝76aの部分で割れ、また封止板70の中心側については内側リング溝76bの部分で割れ、更に直線溝76cの部分出割れることで、封止板70の容器開口に相対した部分を確実に分離飛散できる。
【0049】
本願発明者の実験によれば、中心部分に内側リング溝76bを設けなかった場合には、中心部分の強度が低いことで、直線溝76cが集まった中心部分が先に破裂し、その結果、外側リング溝76aの部分が充分に割れず、直線溝76cにより割れた三角径の部分が前方に飛び出した状態で残り、分離飛散が適正にできない。しかし、内側リング溝76bを更に設けたことで、この問題が解消し、封止板70の容器開口に相対した部分を確実に分離飛散することができる。
【0050】
更に、封止板70の外側に金属製の押えリング74を配置することによって、封止板70が燃焼による圧力増加で破裂する際に、押えリング74の内縁の部分が封止板70の外側リング溝76aの部分で外側に折れるときの支点となり、外側リング溝76aの部分が内部圧力の増加による押し出しで確実に折れることで割れ、封止板70の容器開口に相対した部分を確実に分離飛散することができる。封止板70を多孔ノズル60よりも外側に配置したことで、多孔ノズル60の目詰まりも防止できる。
【0051】
図2は図1のエアロゾル消火装置の実施形態を組立分解状態として示した説明図である。図2において、上部に開口した円筒体である消火剤容器12には、中心軸方向に燃焼を開始するための貫通穴15を形成した固形消火剤14が収納され、その上に中心に放出穴18を開口した燃焼制御板16を例えば圧入し、固形消火剤14の上面に接触させている。従って、固形消火剤14の外表面は消火剤容器12で覆われると共に、上面が燃焼制御板16に接触して覆われた収納構成となり、貫通穴15に対応する燃焼制御板16の放出穴18でのみ外部と連通している。
【0052】
固形消火剤14及び燃焼制御板16を組み込んだ消火剤容器12は、上部に開口した円筒状の内容器20に収納される。内容器20は底部から下向きに延在した3本のボルト26にスペーサ28を嵌め入れた状態で外容器22に収納し、ボルト26の先端を底部の通し穴46から取り出し、そこにシール38を介して底板24の通し穴54を嵌め入れ、その下側でナット30のネジ込みにより、内容器20を外容器22の中に浮動状態で支持固定している。
【0053】
点火装置32は内容器20の底部のソケット挿入穴44にヒータコイル36を挿入して固形消火剤14の貫通穴15の中に配置している。ヒータコイル36はセラミックソケット34の上面に設けた一対の端子間にコイル部36aとコイル戻り部36bを接続している。
【0054】
コイル部36aは、ヒータ線を細かいピッチで巻き回して固形消火剤14との接触面積を確保する。コイル戻り部36bは、固形消火剤14の貫通穴15の中に下側から嵌め入れる際に、貫通穴15に押し当てながら挿入することにより、コイル部36aを貫通穴15の反対側に押圧接触させ、通電加熱時にコイル部36aの熱を効率良く伝えて確実に着火できるようにしている。
【0055】
固形消火剤14及び燃焼制御板16を組み込んだ消火剤容器12を収納した内容器20の開口側の途中には、ビス66を通し孔68からノズル側のネジ穴にねじ込むことで、ノズル孔62を複数設けた多孔ノズル60を配置している。
【0056】
外容器22の開口に形成したフランジ部69には8個のネジ穴78が形成され、ここにシールパッキン72、封止板70及び押えリング74を重ね合わせた状態で8本のビス75によりネジ込み固定することで、封止構造を実現している。
【0057】
次に図1の実施形態における固形消火剤の燃焼によるエアロゾルの放出を説明する。点火装置32のヒータコイル36に通電すると、ヒータコイル36の発熱によりコイル部36aが接触している貫通穴15の部分から固形消火剤14の燃焼が始まる。固形消火剤14の燃焼で発生したエアロゾルは燃焼による炎と共に貫通穴15から燃焼制御板16の放出穴18を通って噴出され、更に多孔ノズル60のノズル孔62から封止板70により密閉された容器内に噴出する。
【0058】
このような固形消火剤14の燃焼によるエアロゾルの発生で密閉状態にある内部圧力は急激に増加し、封止板70にその強度を越える圧力が加わると、封止板70は内部圧力による押し広げを受けて切り込み溝を形成する外側リング溝76a、内側リング溝76b、及び直線溝76cの部分で割れて破裂し、封止板70による密閉状態を解除して開放させる。
【0059】
封止板70の破裂開放が行われると、燃焼制御板16の放出穴18から噴き出したエアロゾルを含む火炎は、多孔ノズル60に当たって外部に対する直接的な火炎の噴き出しが抑制され、火炎が分断される。多孔ノズル60の下側に噴き付けた火炎は、複数のノズル孔62で絞り込まれた噴出量となり、破裂飛散した封止板70の開口から外部の消火対象空間に放出される。
【0060】
このときノズル出口部分の空間がエアロゾルの噴き出しで負圧となり、内容器20の側壁に設けた空気孔64から空気を導入し、放出される高温のエアロゾルを空気の巻き込みで効率良く冷却して消火対象空間に放出させることができる。
更に空気を巻き込むことで燃焼時に発生する未燃性ガスも拡散させるため、外部への火炎の発生を充分に抑制できる。
【0061】
また、固形消火剤14の上側の表面には燃焼制御板16が接触固定されているため、貫通穴15による固形消火剤14の中から燃焼を開始しても、固形消火剤14の表面に燃焼が拡大することがなく、矢印で示すように、貫通穴15から外側に向かって緩やかに燃焼が進む。消火剤容器12の内面も固形消火剤14の側面及び底面に接触していることから、消火剤の燃焼時の火炎が固形消火剤14の表面に延焼することを防止して燃焼を制御していることから、燃焼制御板16と同様の機能も果たしている。
【0062】
更に固形消火剤14の放出側の上面に接触配置した燃焼制御板16は中心に放出穴18を開口しているため、貫通穴15から外側に向かう燃焼で発生したエアロゾルで内部圧力が上昇し、放出穴18から外部に勢い良くエアロゾルを放出する。
【0063】
これによって固形消火剤14の燃焼速度を緩やかに抑えながら、同時にエアロゾル60の噴出速度を高めることができ、放出したエアロゾルの消火対象物内での拡散効果を高めることで消火性能の向上が期待できる。
【0064】
また固形消火剤14の燃焼によって内容器20が加熱されて温度が上昇するが、内容器20と外容器22の間には断熱空気層25が形成されているため、外容器22に対する熱伝導を抑制し、外容器22の温度が安全な範囲を超えて上昇しないようすることができる。
【0065】
なお、上記の実施形態にあっては、封止板70の切り込み溝を、外側リング溝76a、内側リング溝76b、及び8本の放射配置された直線溝76cからなるパターンとした場合を例にとっているが、内部圧力の増加を受けて残ることなく破裂して分離飛散することができれば、適宜の切り込み溝のパターンとすることができる。
【0066】
また上記の実施形態は、内容器と外容器を用いた2重容器構造の開口を密閉する封止構造を例とっているが、1つの容器に収納した場合の封止構造についても、そのまま適用することができる。
【0067】
また上記の実施形態にあっては、点火装置としてヒータコイルを使用した場合を例にとっているが、機械的な摩擦で点火する点火装置や、2物質の接触による反応熱で点火する点火装置を使用しても良い。
【0068】
また、上記の実施形態においては、固形消火剤14を収納する容器として、一端を開口した筒状の消火剤容器12に、一端を塞ぐ燃焼制御板16、62を装着することで固形消火剤14の外表面を接触させて覆った構成としているが、これに限らず、内部から燃焼開始した固形消火剤14が火炎によって表面に燃え広がらないように面接触して覆う構成であればよく、例えば、消火剤容器と燃焼制御板がともに側面を有する筒形状で、互いの筒部材を上下に組み合わせることで固形消火剤14の側面を分担して覆う構成であっても良い。
【0069】
貫通穴15は必ずしも固形消火剤14の中心軸と一致させて開口する必要はない。
【0070】
また、上記の実施形態においては、固形消火剤14に貫通穴を設け、貫通穴に点火装置を収納して内部から燃焼させるようにしているが、固形消火剤の内部から燃焼して外方向へ燃焼させていく構成であれば良く、必ずしも貫通させる必要はなく、固形消火剤の表面に貫通しないエアロゾル放出穴を備え、貫通せずに消火剤内部方向に伸びて、その放出穴に発火装置を収納する一端のみ開放した収納穴構造であってもよい。
【0071】
消火剤容器12と内容器20は同一部材で構成しても良い。収納容器の形状は円筒形状に限らない。
【0072】
固形消火剤14は円柱形状に限らず円錐、角柱や角錐であってもよく、エアロゾル放出穴周辺表面に併せて燃焼制御板の形状を設定すればよい。
【0073】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。

【符号の説明】
【0074】
10:エアロゾル消火装置
12:消火剤容器
14:固形消火剤
25:断熱空気層
32:点火装置
38,40:シール
46,54:通し穴
52:プラグ挿入穴
60:多孔ノズル
62:ノズル孔
64:空気孔
66:ビス
68:通孔
70:封止板
72:シールパッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼により消火用のエアロゾルを発生する固形消火剤と、
前記固形消火剤を収納する一端に開口した筒状の収納容器と、
前記収納容器の開口部を密閉し、前記固形消火剤の燃焼で発生したエアロゾルによる圧力増加で破砕して前記開口部を開放する封止構造と、
を備えたことを特徴とするエアロゾル消火装置。

【請求項2】
請求項1記載のエアロゾル消火装置に於いて、前記封止構造は、前記収納容器の開口フランジ部に、破砕用の切り込み溝を形成した難燃樹脂性の封止板を固定したことを特徴とするエアロゾル消火装置。

【請求項3】
請求項2記載のエアロゾル消火装置に於いて、前記封止板の切り込み溝は、
開口縁に沿って形成した外側リング溝と、
中心部分に形成した内側リング溝と、
前記外側リング溝と内側リング溝を連結するように径方向に形成された複数本の直線溝と、
を備えたことを特徴とするエアロゾル消火装置。

【請求項4】
請求項1記載のエアロゾル消火装置に於いて、前記封止構造は、前記封止板の外側に前記フランジ部に相対する金属製の押えリングを配置して固定したことを特徴とするエアロゾル消火装置。

【請求項5】
請求項1記載のエアロゾル消火装置に於いて、前記封止構造は、前記封止板の内側とに前記開口フランジ部の間にシールパッキンを配置して密閉固定したことを特徴とするエアロゾル消火装置。

【請求項6】
請求項1記載のエアロゾル消火装置に於いて、
前記収納容器は、前記固形消火剤を収納した内容器と、前記内容器の外側に断熱空気層を介して配置された外容器とを備えた2重容器構造であり、
前記外容器に開口フランジ部を形成して前記封止板により密閉固定したことを特徴とするエアロゾル消火装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−62341(P2011−62341A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215420(P2009−215420)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】