説明

エアーカーテン付き送風式薬液散布装置

【課題】
作物内部への薬液の付着効果の向上と薬液の飛散を防止する送風式薬液散布装置の提供。
【解決手段】
農作物の間を走行しながら送風機2の高速気流によって薬液を下向きに散布する防除機の薬液供給配管として、薬液タンク10内に取り付けた低圧水中ポンプ6と分配管9を連結し、かつ、分配管9と調量弁8を経て各送風ダクト枝管4先端に取り付けた薬液吐出管7へ、薬液を送液する配管構成とし、送風ダクト枝管4への薬液吐出圧を低圧にするとともに、かつ、送風ダクト枝管4の後方に、エアーを下向きにエアー吹出管5を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用の走行式防除機において散布液滴の粒径を制御するとともに、散布液滴の飛散を防止する送風式薬液散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、茶樹及び野菜で用いられる走行式防除機には、20〜50kg/平方cmの高圧ポンプで薬液を加圧し、ノズルから分散微細化するブームスプレーヤが知られている。また、前記ブームスプレーヤには、ノズルの両側から風を送り薬液の到達性を高めたエアーアシスト方式のブームスプレーヤも知られている。一方、特許文献1に示すように高圧ポンプを用いず送風ファンの送風経路上へ防除用薬液を注入し、農薬を霧状にして散布する方法がある。
【特許文献1】特開2003−310132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の高圧ポンプや高速気流を用いた薬液の散布液滴は微粒化されているため、散布対象物の作物表面の葉層への付着は優れるが、作物内部の葉層への到達力が小さく散布むらが生じ、薬液の多量散布が必要になる。また、自然風による散布対象物以外への漂流飛散が生じ、近接する圃場の農作物や周辺河川等への汚染が問題になる。さらに、作業中の散布者の農薬被爆の危険性がある。
【0004】
薬液の飛散を防止するためのエアーアシスト方式では、高圧ポンプ以外にエアーを発生させる送風機を必要とし、装置が複雑、高価になる欠点がある。
【0005】
したがって、本発明は薬液の散布対象物への到達性を高め、散布むらをなくすとともに、農薬の飛散を防止する送風式薬液散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、農作物の間を走行しながら多数の送風ダクト吹出枝管から高速気流によって薬液を下向きに散布する防除用薬液散布機において、薬液タンク内に低圧の水中ポンプを設置し、該水中ポンプと分配管を連結し、かつ、分配管と調量弁を経て、該各送風ダクト吹出枝管先端に取り付けた薬液吐出管へ薬液を送液する配管を構成し、薬液吐出圧を低圧にするという手段をとる。この発明では、薬液吐出圧は低圧であり、高速気流による薬液の粒径を粗粒化できる。したがって、散布液滴の散布対象物内部への高い到達性が得られ、散布量を低減して防除効果を上げることができる。
【0007】
請求項2では、送風ダクト枝管の後方に、エアーを下向きに吹出すエアー吹出管を設けるという手段をとる。この発明では、散布液滴の散布方向にエアーカーテンを形成するため、自然風の影響を受けず散布できる。また、作物への衝突による空中飛散を抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明により、散布液滴の粒径を比較的大きくして、散布対象物内部への薬液到達性を高め、散布むらがなくなることで、散布量の低減と防除効果の増大を図ることができる。また、自然風による漂流飛散を抑えることにより、農薬散布における作業者の農薬被爆や散布対象以外の周辺環境への汚染を防止できる。また、薬液タンク内へ低圧の水中ポンプを設置することにより分配管への配管を簡単で安価に製作することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態を、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は請求項1及び請求項2の詳細図の断面図であり、図2は平面図である。図1ないし図2において、符合3は送風ダクトであり、複数の送風ダクト枝管4を供えている。送風ダクト枝管4は、散布対象作物12の内部への散布を目的として傾けている。送風ダクト3および送風ダクト枝管4の後方には、複数のエアー吹出口17があるエアー吹出管5を取り付ける。送風ダクト3及びエアー吹出管5は送風機2a、2bと接続されており、送風機2a、2bで発生した高速気流は、送風ダクト枝管4及びエアー吹出管5から吹出される。
【0010】
複数の送風ダクト枝管4のそれぞれには、薬液吐出管7を取り付ける。薬液タンク10内に設置した低圧水中ポンプ6(2.0kg/平方cm 以下)から送液される薬液は、配管18および送水コック11を経て分配管9に達する。分配管9と薬液吐出管7は、配管19および調量弁8を介して連結される。したがって、調量弁8で調量された薬液の吐出圧は低圧であり、高速気流による微粒化が抑えられて比較的粗粒な液滴として薬液を散布できる。
【0011】
エアー吹出管5のエアー吹出口17から下方に吹出されるエアーは、送風ダクト枝管4の周囲にエアーカーテンを形成するため、自然風によって散布液滴の方向を妨げられることはない。また、作物への衝突後の跳ね返り液滴もエアーカーテンにより下方に誘導されるので、空中飛散が抑えられる。
【0012】
図3及び図4は、請求項1及び請求項2について、茶うね16を挟んで走行できる茶園用走行台車13の後部に取り付けて、茶園用防除機として使用する実施例を示す。エアーカーテン付き送風式薬液散布装置1は、上下する昇降装置14に固定されており、作物の高さに合わせて散布高さを調節できる。また、該エアーカーテン付き送風式薬液散布装置1は、リンク機構15で散布角度が調節できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるエアーカーテン付き送風式薬液散布装置の断面図。
【図2】同平面図。
【図3】本発明によるエアーカーテン付き送風式薬液散布装置を茶園用走行台車に取り付けた断面図。
【図4】本発明によるエアーカーテン付き送風式薬液散布装置を茶園用走行台車に取り付けた後面図。
【符号の説明】
【0014】
1 エアーカーテン付き送風式薬液散布装置
2a、2b 送風機
3 送風ダクト
4 送風ダクト枝管
5 エアー吹出管
6 低圧水中ポンプ
7 薬液吐出管
8 調量弁
9 分配管
10 薬液タンク
11 送水コック
12 散布対象作物
13 茶園用走行台車
14 昇降装置
15 リンク機構
16 茶うね
17 エアー吹出口
18 配管
19 配管
20 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物の間を走行しながら多数の送風ダクト吹出枝管から高速気流によって薬液を下向きに散布する防除用薬液散布機において、薬液タンク内に低圧の水中ポンプを設置し、該水中ポンプと分配管を連結し、かつ、分配管と調量弁を経て、該各送風ダクト吹出枝管先端に取り付けた薬液吐出管へ薬液を送液する配管を構成し、薬液吐出圧を低圧にすることを特徴とするエアーカーテン付き送風式薬液散布装置。
【請求項2】
送風ダクト吹出枝管の後方に、エアーを下向きに吹出す吹出管を設けることを特徴とする請求項1記載のエアーカーテン付き送風式薬液散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−25650(P2006−25650A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206624(P2004−206624)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000145116)株式会社寺田製作所 (90)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 (827)
【Fターム(参考)】