説明

エアーバッグ用コーティング剤組成物及びエアーバッグ

【解決手段】 硬化物の引裂き強度が25kN/m以上、ピール接着力が30N/cm以上であることを特徴とする織りにより袋部を形成したエアーバッグ用のシリコーンゴムコーティング剤組成物。
【効果】 本発明のコーティング剤組成物によれば、シリコーンゴムコーティング層の剥がれがなく、インフレータガスの漏れが生じ難く、膨張時間の持続性に優れた袋織りタイプエアーバッグを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、織りにより袋部を形成したエアーバッグ用のシリコーンゴムコーティング剤組成物及び該エアーバッグに関する。
【0002】
【従来の技術】従来のエアーバッグは、内面にゴムコーティングされた2枚の平織り基布の外周部同士を接着剤で張り合わせ、且つその接着剤層を縫い合わせて作成されていた(以後、平織りタイプと略す)。しかし、フロントピラー部、ルーフサイドレール部、センターピラー部、クウォターピラー部などの狭部に、エアーバッグをよりコンパクトに収納したい場合、従来の平織りタイプのエアーバッグは、縫合部の厚みによりコンパクト性に欠けていた。
【0003】この問題を解消する方法として、特開平2−158442号公報では、接着剤による張り合わせの必要がない、織りにより袋部を形成したエアーバッグを開示している(以後、袋織りタイプと略す)。しかし、袋織りタイプエアーバッグは、コンパクト性に優れる反面、次のような課題も生まれた。即ち、袋織りタイプは、構造上、ゴムコーティング層が平織りタイプとは異なりエアーバッグ外面に施されるため、膨脹時のインフレータガスは基布面より掛かり、ゴムコーティング面から掛かる平織りタイプとは大きく異なる。このため、エアーバッグの一定膨脹時間を維持しようとした場合、従来平織りタイプで使用されていたゴムコーティング剤では同じ膨脹時間を維持できないという問題が生じた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、膨脹時間の持続性に優れた袋織りタイプのエアーバッグ用のシリコーンゴムコーティング剤組成物及びそのコーティング層を有する袋織りタイプのエアーバッグを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本発明者は、上記目的を達成するべく、インフレータガス洩れの要因解析を行った結果、25kN/m以上の引裂き強度と30N/cm以上のピール接着力を有するシリコーンゴムを与えるコーティング剤組成物、特に付加反応硬化型のシリコーンゴム組成物を塗布することで、膨脹時間の持続性に優れることが判明し、本発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明は、硬化物の引裂き強度が25kN/m以上、ピール接着力が30N/cm以上であることを特徴とする織りにより袋部を形成したエアーバッグ用シリコーンゴムコーティング剤組成物及びこの組成物によるゴムコーティング層を有する、織りによる袋部を形成したエアーバッグを提供する。
【0007】以下、本発明につき更に詳しく説明する。本発明に係る袋織りタイプのシリコーンゴムコーティング剤組成物としては、付加反応硬化型のものが好ましく、特に下記(A)〜(E)成分を含有してなるものが好ましい。
(A)1分子中に平均2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100重量部、(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対し、ケイ素原子結合水素原子が1〜7モルの範囲となる量、(C)付加反応触媒:触媒量、(D)比表面積(BET法)が50m2/g以上である微粉末状シリカ:1〜50重量部、(E)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10重量部。
【0008】ここで、(A)成分のオルガノポリシロキサンは、この組成物の主剤であり、1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する。(A)成分のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等の通常、炭素数2〜8、好ましくは2〜4程度のものが挙げられ、特に、ビニル基であることが好ましい。
【0009】(A)成分中におけるケイ素原子に結合したアルケニル基の結合位置としては、例えば、分子鎖末端及び/又は分子鎖側鎖が挙げられる。(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などの、通常、炭素数1〜12、好ましくは1〜10程度の、非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基が挙げられ、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。なお、(A)成分中のアルケニル基の含有量は、ケイ素原子に結合した1価の有機基(又は非置換又は置換一価炭化水素基)全体に対して0.001〜10モル%、特に0.01〜5モル%程度であることが好ましい。
【0010】このような(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状が挙げられるが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい(なお、オルガノ基にはアルケニル基も包含し得る。)。(A)成分の25℃における粘度は、得られるシリコーンゴムの物理的特性が良好であり、また、組成物の取扱作業性が良好であることから、100〜500000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、300〜100000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0011】このような(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフエニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、式:R13SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R12SiOで示される単位と少量の式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R13SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R12SiOで示されるシロキサン単位と少量の式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R12SiOで示されるシロキサン単位と少量の式:R1SiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:R2SiO1.5で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上からなる混合物が挙げられる。
【0012】上記式中のR1はアルケニル基以外の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。また、上記式中のR2はアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基が挙げられる。
【0013】(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、シリコーンゴム硬化物の引裂き強度が25kN/m以上、ピール接着力が30N/cm以上の要件を満足するという観点から、分子鎖両末端アルケニルジオルガノシロキシ基で封鎖された(主鎖中にアルケニル基を含有しない)ジオルガノポリシロキサン(例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のジメチルポリシロキサン)と、分子鎖両末端がアルケニルジオルガノシロキシ基又はトリオルガノシロキシ基で封鎖されたジオルガノシロキサン・アルケニルオルガノシロキサン共重合体(例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖、あるいは分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖の、ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン共重合体)とを併用したものであることが好ましい(但し、ここでいうオルガノ基にはアルケニル基は含有されない。)。
【0014】次に、本発明に用いられる(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分と反応し、架橋剤として作用するものであり、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている例えば線状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等各種のものが使用可能であるが、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上のケイ素原子に結合した水素原子(SiHで表されるヒドロシリル基)を有する必要があり、通常、3〜500個、好ましくは3〜200個、より好ましくは3〜100個程度のSiH基を有することが望ましい。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)で示されるものが用いられる。
3bcSiO(4-b-c)/2 (1)
【0015】上記式(1)中、R3は、脂肪族不飽和結合を除く、好ましくは炭素数1〜10の、ケイ素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基であり、このR3における非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等が挙げられる。R3の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cが0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくはbは1.0〜2.0、cは0.01〜1.0、b+cが1.5〜2.5である。
【0016】1分子中に2個以上、好ましくは3個以上含有されるSiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、得られるシリコーンゴムの物理特性、組成物の取扱い作業性の点から、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は通常2〜1000個、好ましくは3〜300個、より好ましくは4〜150個程度のものが望ましく、25℃における粘度が、通常、0.1〜5000mPa・s、好ましくは0.5〜1000mPa・s、より好ましくは5〜500mPa・s程度の、室温(25℃)で液状のものが使用される。
【0017】このような(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジエンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:R13SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R12HSiO0.5で示されるシロキサン単位と少量の式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R12HSiO0.5で示されるシロキサン単位と少量の式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R1HSiOで示されるシロキサン単位と少量の式:R1SiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:HSiO1.5で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上からなる混合物が挙げられる。なお、上記式中のR1はアルケニル基以外の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示される。
【0018】(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、シリコーンゴム硬化物の引裂き強度が25kN/m以上、ピール接着力が30kN/cm以上であるという要件を満足するという観点から、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン等の分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖あるいは分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖のジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等の分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖あるいは分子鎖両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖のジオルガノシロキサン・オルガノハイドロジェンシロキサン共重合体とを併用したものであることが好ましい(但し、ここでいうオルガノ基にはアルケニル基は含有されない。)。
【0019】(B)成分の配合量は、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が1〜7モル、好ましくは2〜5モルの範囲内となる量である。これは(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が1モル未満であると、コーティング膜の強度が十分に得られず、また、これが7モルを超えると、コーティング膜の耐熱性が極端に劣るためである。
【0020】本発明に用いられる(C)成分は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のSiH基との付加反応を促進するものであればいかなる触媒を使用してもよい。例えば、白金、パラジウム、ロジウム等や塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属又はこれらの化合物が使用されるが、特に好ましくは白金系化合物である。(C)成分は、通常、(A)、(B)の合計量に対して、触媒金属元素の量として1〜500ppmの割合で配合され、好ましくは10〜100ppmの範囲で用いられる。配合量が1ppm未満では付加反応が著しく遅くなるか、もしくは硬化しなく、500ppmを超えると硬化後のポリシロキサン組成物の耐熱性が低下する。
【0021】本発明に用いられる(D)成分の微粉末状シリカは補強剤として作用する。即ち、本発明の組成物に高引裂き性を付与するもので、微粉末状シリカを補強剤として使用することにより、本発明に必要な引裂き強度特性を満足するコーティング膜を形成することが可能となる。かかる微粉末状シリカは、比表面積(BET法)が50m2/g以上、好ましくは50〜400m2/g、特に好ましくは100〜300m2/gであることが必要であり、比表面積が50m2/g未満では、満足するような引裂き強度特性を付与することができない。
【0022】本発明において、このような微粉末シリカとしては、比表面積が上記範囲内であることを条件として、従来からシリコーンゴムの補強性充填剤として使用されている公知のものでよく、例えば、煙霧質シリカ、沈降シリカなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用して用いることができる。このような微粉末状シリカはそのまま使用してもよいが、本発明組成物に良好な流動性を付与させるため、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のメチルクロロシラン類、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のヘキサオルガノジシラザンなどの有機ケイ素化合物で処理したものを使用することが好ましい。
【0023】本発明に用いられる(D)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100重量部に対して1〜50重量部、特に5〜15重量部とすることが好ましい。配合量が少なすぎると、本発明に必要な引裂き強度が得られない。配合量が多すぎると、組成物の流動性が低下してコーティング作業が悪くなる場合がある。
【0024】本発明に用いられる(E)成分は、エアーバッグ用の合成繊維織物基材、不織布基材、或いは熱可塑性樹脂シート状又はフィルム状基材に対する接着性を向上させるために用いられる成分であり、付加反応型シリコーンゴム組成物に自己接着性を付与する観点から、接着性を付与する官能基を含有するケイ素化合物とするものである。該官能基の具体例としては、ケイ素原子に結合したビニル基、アリル基のようなアルケニル基、炭素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基(例えば、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基など)や(メタ)アクリロキシ基(例えば、γ−アクリロキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基など)、アルコキシシリル基(例えば、エステル構造、ウレタン構造、エーテル構造を1〜2個含有してもよいアルキレン基を介してケイ素原子に結合したトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等のアルコキシシリル基など)、SiH基を有するオルガノシラン及びケイ素原子数3〜50、特に5〜20の直鎖状又は環状構造のシロキサンオリゴマーやトリアリルイソシアヌレートの(アルコキシ)シリル変性物やそのシロキサン誘導体などが挙げられる。本発明には特に、1分子中にこれらの官能基を2種類以上含有するものが好ましい。このような官能基を含有するケイ素化合物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0025】
【化1】


【0026】(E)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100重量部に対して0.1〜10重量部とするもので、より好ましくは0.5〜5重量部であることが望ましい。配合量が少なすぎると、本発明に必要な十分なピール接着力が得られない場合があり、配合量が多すぎると、コスト的に高いものとなり不経済となる場合がある。
【0027】この組成物において、上記の(A)〜(E)成分以外の任意の成分として、付加反応触媒に対して硬化抑制効果を持つ化合物とされている従来公知の制御剤化合物はすべて使用することができる。このような化合物としては、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物、トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物、硫黄含有化合物、アセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上含む化合物、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが例示される。制御剤化合物による硬化遅延効果の度合は、制御剤化合物の化学構造によって大きく異なる。従って、制御剤化合物の添加量は、使用する制御剤化合物の個々について最適な量に調整すべきであるが、一般には、その添加量が少なすぎると室温での長期貯蔵安定性が得られず、逆に多すぎるとかえって硬化が阻害される。
【0028】また、その他の任意の成分として、例えば、結晶性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機質充填剤、及び、これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面処理した充填剤が拳げられる。またシリコーンゴムパウダーやシリコーンレジンパウダーなども挙げられる。
【0029】更に、この組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、その他任意の成分として、例えば、一分子中に1個のケイ素原子結合水素原子又はアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、ケイ素原子結合水素原子又はアルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、有機溶剤、クリープハードニング防止剤、可塑剤、チクソ性付与剤、顔料、染料、防かび剤が挙げられる。
【0030】上記コーティング剤組成物は、上記成分を混合することによって製造することができ、このようにして得られた組成物は、袋織りタイプのエアーバッグのコーティング剤として使用される。この場合、本発明のコーティング剤組成物は、液状であることが好ましく、特に25℃の粘度として50〜200Pa・s程度であることが好ましい。
【0031】上記コーティング剤組成物の硬化方法、条件としては、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物としての公知の硬化方法、条件を採用することができ、通常、120〜180℃において1〜10分の硬化条件とすることができる。
【0032】この場合、本発明においては、このように硬化して得られた硬化物(シリコーンゴム)の引裂き強度が25kN/m以上、通常、25〜50kN/m、好ましくは27〜50kN/m、より好ましくは30〜40kN/mであり、また、ピール接着力が30N/cm以上、通常、30〜60N/cm、好ましくは35〜50N/cm、より好ましくは40〜50N/cmであることが必要である。引裂き強度が小さいと、エアーバッグ膨張時に接合部のコーティング層に亀裂が入り、膨張時間が維持できない。また、ピール接着力が小さいと、エアーバッグ膨張時に接合部のコーティング層が基布より剥離して膨張時間が維持できない。
【0033】なお、引裂き強度は、JIS K 6249に従った測定法による値であり、また、ピール接着力は、組成物をエアーバッグ用ナイロン66(420デニール)織物2枚の間に厚みが0.5mmになるように挟んで、170℃で1分間、5kgf/cm2の圧力で硬化させた幅2.5cm×長さ20cmに切断して、ピール角度180度、引張り速度50mm/分の条件でピール接着力試験を行った場合の値である。
【0034】本発明において、上記組成物によるシリコーンゴムのコーティング層が形成される袋織りタイプのエアーバッグとしては、公知の構成のものが用いられ、具体的にはナイロン66、ナイロン6、ポリエステル繊維、アラミド繊維、各種ポリアミド繊維、各種ポリエステル繊維などの各種合成繊維の織生地を基布とする袋織りタイプのエアーバッグが挙げられる。
【0035】このような袋織りタイプエアーバッグに対し、上記組成物をコーティングする方法は常法を採用することができるが、コーティング層の厚さ(又は表面塗布量)は、例えば15〜150g/m2、好ましくは15〜80g/m2、より好ましくは20〜40g/m2程度とすることが好ましい。
【0036】
【実施例】以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例で部は重量部を示し、粘度は25℃の値である。また、下記例で使用した接着付与成分(A)〜(C)は下記の通りである。
【0037】
【化2】


【0038】[実施例1]分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が10Pa・sのジメチルポリシロキサン80部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、ビニルメチルシロキサン単位を主鎖のジオルガノシロキサン単位中に5モル%とジメチルシロキサン単位を95モル%を含有し、粘度が0.7Pa・sのジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体4部、トリメチルシリル基で処理された比表面積120m2/gの疎水性シリカ17部、粘度が5mPa・sである分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.45重量%)1.0部、粘度が12mPa・sの分子鎖両末端及び分子鎖側鎖にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.54重量%)2.2部(H/Vi(即ち、(A)成分のビニル基含有オルガノポリシロキサン中の合計のビニル基量に対する(B)成分中の合計のSiH基のモル比、以下同様);3.9モル/モル)、1−エチニルシクロヘキサノール0.05部、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を白金金属として成分の合計量に対して30ppm、接着性付与剤(A)1.5部、接着性付与剤(B)0.5部、チタン酸オクチル0.5部を混合して組成物Aを調製した。
【0039】この組成物を150℃/5分で硬化させ、JIS K 6249に従ってシートを作製し、一般物性を測定した。
【0040】この組成物をエアーバッグ用ナイロン66(420デニール)織物2枚の間に、厚みが0.5mmになるように挟んで、170℃で1分間、5kgf/cm2の圧力で硬化させた。幅2.5cm×長さ20cmに切断してピール接着力試験を行った。
【0041】袋織りエアーバッグへのコーティング方法は、コーターでシリコーンゴム組成物が塗りむらなく均一にコーティング可能な最小量になるようにコーティングし、オーブン中で170℃で1分間加熱硬化させて袋織りエアーバッグを作成した。このエアーバッグのインフレーション試験を行った。空気圧7kg/cm2を3秒で吹き込むことにより瞬間的に膨らませ、気密性を肉眼で観察した。結果を表1にまとめた。
【0042】[実施例2]分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が100Pa・sのジメチルポリシロキサン17部、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が10Pa・sのジメチルポリシロキサン33部、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が1Pa・sのジメチルポリシロキサン30部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、ビニルメチルシロキサン単位を主鎖のジオルガノシロキサン単位中に10モル%とジメチルシロキサン単位90モル%を含有し、粘度が0.7Pa・sのジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体3部、(CH33SiO1/2単位39.5モル%、(CH32(CH2=CH)SiO1/2単位6.5モル%、SiO2単位54モル%からなるオルガノポリシロキサン樹脂5部、トリメチルシリル基で処理された比表面積170m2/gの疎水性シリカ22部、粘度が45mPa・sである分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.14重量%)1.8部、粘度が12mPa・sの分子鎖両末端及び分子鎖側鎖にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.54重量%)5.3部(H/Vi;3.4モル/モル)、1−エチニルシクロヘキサノール0.03部、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を白金金属として成分の合計量に対して15ppm、接着性付与剤(A)0.4部、接着性付与剤(C)0.2部、チタン酸オクチル0.2部を混合して組成物Bを調製した。
【0043】実施例1と同様にして、硬化物物性、ピール接着力試験、インフレーション試験を行った。結果を表1にまとめた。
【0044】[比較例1]分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が100Pa・sのジメチルポリシロキサン17部、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が10Pa・sのジメチルポリシロキサン33部、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が1Pa・sのジメチルポリシロキサン37部、トリメチルシリル基で処理された比表面積170m2/gの疎水性シリカ22部、粘度が45mPa・sである分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.14重量%)1部、粘度が12mPa・sの分子鎖両末端及び分子鎖側鎖にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.54重量%)3部(H/Vi;4.1モル/モル)、1−エチニルシクロヘキサノール0.06部、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を白金金属として成分の合計量に対して15ppm、接着性付与剤(A)1.5部、接着性付与剤(C)0.5部を混合して組成物Cを調製した。実施例1と同様にして、硬化物物性、ピール接着力試験、インフレーション試験を行った。結果を表1にまとめた。
【0045】[比較例2]分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が10Pa・sのジメチルポリシロキサン50部、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が1Pa・sのジメチルポリシロキサン67部、トリメチルシリル基で処理された比表面積170m2/gの疎水性シリカ33部、(CH33SiO1/2単位39.5モル%、(CH32(CH2=CH)SiO1/2単位6.5モル%、SiO2単位54モル%からなるオルガノポリシロキサン樹脂13部、粘度が45mPa・sである分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.14重量%)2.7部、粘度が12mPa・sの分子鎖両末端及び分子鎖側鎖にケイ素原子結合水素原子を有するジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量=0.54重量%)8.3部(H/Vi;3.3モル/モル)、1−エチニルシクロヘキサノール0.05部、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を白金金属として成分の合計量に対して20ppm、接着性付与剤(A)1.5部、接着性付与剤(B)0.5部、チタン酸オクチル0.5部を混合して組成物Dを調製した。
【0046】実施例1と同様にして、硬化物物性、ピール接着力試験、インフレーション試験を行った。結果を表1にまとめた。
【0047】
【表1】


【0048】
【発明の効果】本発明のコーティング剤組成物によれば、シリコーンゴムコーティング層の剥がれがなく、インフレーターガスの漏れが生じ難く、膨張時間の持続性に優れた袋織りタイプエアーバッグを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 硬化物の引裂き強度が25kN/m以上、ピール接着力が30N/cm以上であることを特徴とする織りにより袋部を形成したエアーバッグ用のシリコーンゴムコーティング剤組成物。
【請求項2】 (A)1分子中に平均2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100重量部(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対し、ケイ素原子結合水素原子が1〜7モルの範囲となる量(C)付加反応触媒:触媒量(D)比表面積(BET法)が50m2/g以上である微粉末状シリカ:1〜50重量部(E)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1〜10重量部を含有する請求項1記載のコーティング剤組成物。
【請求項3】 (A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンが、分子鎖両末端アルケニルジオルガノシロキシ基封鎖のジオルガノポリシロキサンと、分子鎖両末端アルケニルジオルガノシロキシ基封鎖又はトリオルガノシロキシ基封鎖のジオルガノシロキサン・アルケニルオルガノシロキサン共重合体とを含有するものである、請求項2に記載のコーティング剤組成物。
【請求項4】 (B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖又はジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖のジオルガノシロキサン・オルガノハイドロジェンシロキサン共重合体とを含有するものである、請求項2又は3記載のコーティング剤組成物。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコーティング剤組成物によるゴムコーティング層を有する、織りにより袋部を形成したエアーバッグ。

【公開番号】特開2003−327910(P2003−327910A)
【公開日】平成15年11月19日(2003.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−134968(P2002−134968)
【出願日】平成14年5月10日(2002.5.10)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】