説明

エア冷却機構およびこれを用いた栽培施設

【課題】きのこ生育室のような、大量に外気を導入して換気する施設における冷房を効率的に行うことを可能にし、省エネルギー化を図ることができるエア冷却機構、およびこのエア冷却機構を用いた栽培施設を提供する。
【解決手段】中空の箱体状に形成され、多孔質ボード20からなる側面を備えた本体10と、前記多孔質ボード20に水を供給する給水手段50、52、53と、前記多孔質ボード20を通過して前記本体10内に外気を導入する外気吸引手段30、40とを備え、前記多孔質ボード20が、セラミック層が多層に積層され、層方向に貫通気孔が形成された二元構造に形成されるとともに、層方向を水平方向に向けて、前記本体20の側面に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の気化熱を利用してエアを冷却するエア冷却機構、およびこのエア冷却機構を用いたきのこ等の栽培施設に関する。
【背景技術】
【0002】
きのこ栽培施設においては、きのこの生育室あるいは培養室等において、室内の二酸化炭素濃度が所定濃度以下になるように、あるいは室内が過度に高温にならないように栽培環境を制御するために、室内を換気し、冷房している。
室内に外気を導入して換気する場合、気温が高い外気を導入すると室内温度が大きく上昇してしまうため、きのこの生育室等には、エアコン等の冷房装置が必須となっており、外気温が高くなる季節においては、冷房装置が頻繁に稼動する状態となる。
【0003】
従来の空調装置を使用して冷房する方法は、必ずしも効率的とはいえず、大きな施設では施設内に何台ものエアコンを設置して冷房しており、大きなエネルギーコストがかかることが問題となっている。
このような空調装置を使用せずに省エネルギー化を図る方法としては、自然エネルギーを利用する方法が考えられる。自然エネルギーを利用して家屋を冷房する方法としては、たとえば、家屋の壁面を多孔質材によって形成し、多孔質材に給水し、多孔質材にエアを接触させ、そのときの気化熱を利用してエアを冷却するといった方法がある(たとえば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2003−83656号公報
【特許文献2】特開2003−328462号公報
【特許文献3】特開平8−319179号公報
【特許文献4】特開2005−239467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、きのこの生育室のように、室内の生育環境を維持するために外気を導入して換気する必要がある施設においては、外気が高温になった場合でも、大量に高温の外気を導入しながら室内を冷房する必要があり、消費エネルギーが莫大になることが避けられない。
多孔質材に給水し、水の気化熱を利用してエアを冷却する方法は、水の気化熱がきわめて大きいことから、エアを冷却する方法として有効な方法ではあるが、きのこ生育室のような施設においては、大きな風量のエアを効率的に冷却できるようにする必要がある。
【0005】
本発明は、きのこ生育室のような、大量に外気を導入して換気する施設における冷房を効率的に行うことを可能にし、省エネルギー化を図ることができるエア冷却機構、およびこのエア冷却機構を用いた栽培施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次の構成を備える。
すなわち、本発明に係るエア冷却機構は、中空の箱体状に形成され、多孔質ボードからなる側面を備えた本体と、前記多孔質ボードに水を供給する給水手段と、前記多孔質ボードを通過して前記本体内に外気を導入する外気吸引手段とを備え、前記多孔質ボードが、セラミック層が多層に積層され、層方向に貫通気孔が形成された二元構造に形成されるとともに、層方向を水平方向に向けて、前記本体の側面に設置されていることを特徴とする。なお、本体の側面とは、本体の鉛直方向に設けられる側面である。場合によっては、多孔質ボードを取り付ける面は、鉛直方向に対して傾斜面となっていてもよい。
【0007】
また、前記多孔質ボードは、セラミック層が多層に積層され、層方向に貫通気孔が形成された二元構造からなるボード体を、厚さ方向に複数枚、積み重ねてボード状に形成されていることによって、多孔質ボードの通気性を確保するとともに、多孔質ボードの保水性を確保することによって、多孔質ボードに給水して外気を冷却する作用を効率的に行うことができる。
【0008】
また、前記本体は、矩形の箱体状に形成され、前記多孔質ボードが、前記本体の少なくとも一つの側面に取り付けられていることによって、所要の外気を冷却する作用をなす。また、前記外気吸引手段は、前記本体に内蔵された吸引ファンと、吸引ファンに連通して設けられた送風ダクトから構成することができる。
また、前記給水手段は、前記多孔質ボードの上部から給水する給水部を備えることにより、給水部から給水するだけで、多孔質ボードの全体に給水することができる。
【0009】
また、栽培室に外気を冷却して導入する外気の導入機構が設けられた栽培施設であって、前記外気の導入機構として、中空の箱体状に形成され、多孔質ボードからなる側面を備えた本体と、前記多孔質ボードに水を供給する給水手段と、前記多孔質ボードを通過して前記本体内に外気を導入する外気吸引手段とを備え、前記多孔質ボードが、セラミック層が多層に積層され、層方向に貫通気孔が形成された二元構造に形成されるとともに、層方向を水平方向に向けて、前記本体の側面に設置されて形成されたエア冷却機構が、前記栽培室と前記本体とを連通して設けられていることを特徴とする。
また、前記エア冷却機構を構成する多孔質ボードは、セラミック層が多層に積層され、層方向に貫通気孔が形成された二元構造からなるボード体を、厚さ方向に複数枚、積み重ねてボード状に形成されていることにより、効果的に外気を冷却して栽培室に冷却エアを送入して栽培室を効率的に冷房することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るエア冷却機構によれば、セラミック層が多層に積層された二元構造の多孔質ボードを用いて外気による水の気化作用を利用することにより、大きな風量をとりながら、きわめて効率的に外気を冷却することが可能となる。また、本発明に係る栽培施設は、本発明に係るエア冷却機構を栽培室に取り付けることによって、栽培室に外気を取り入れる際に外気が冷却されて取り込まれ、これによって栽培室の冷房効果を高めることができて栽培施設の効率的な省エネルギー化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(エア冷却機構)
以下、本発明に係るエア冷却機構の実施の形態について、添付図面とともに詳細に説明する。
図1は、エア冷却機構の一実施形態の全体構成を示す斜視図である。本実施形態のエア冷却機構は、矩形の箱体状に形成された外気導入室としての本体10と、本体10の側面を構成する多孔質ボード20と、本体10の天板14に連結された送風ダクト40と、多孔質ボード20に給水する水道等の給水源50とを備える。
多孔質ボード20は本体10の対向する2つの面を構成し、本体10の他の2つの側面は側板11、12によって閉止され、底面は底板13によって閉止される。
【0012】
図2に、本体10の内部構造を透視した斜視図を示す。
本体10の対向する2つの側面にそれぞれ多孔質ボード20が配置され、本体10内に送風ダクト40に連通して吸引ファン30が配置されていることを示す。吸引ファン30および送風ダクト40が外気吸引手段を構成する。また、多孔質ボード20の上部には、多孔質ボード20の長手方向に沿って給水管52、53が配置され、給水管52、53に給水源50が接続されている。
【0013】
本実施形態のエア冷却機構において特徴的な構成は、本体10の側面を構成する多孔質ボード20の構成にある。すなわち、本実施形態のエア冷却機構においては、多孔質ボード20として、貫通気孔が形成された二元構造の大判のセラミックボードを所定幅に切断して得た細長のボード体20aを、厚さ方向に複数枚積み重ねて形成したものを使用している。多孔質ボード20が設置されている本体10の対向する2つの側面は、鉛直方向に起立する側面であり、多孔質ボード20は鉛直方向に起立するように積み重ねられる。多孔質ボード20を積み重ねやすくするために、ボード体20aの両端をそれぞれガイドするガイド部を設けてもよい。
【0014】
貫通気孔が形成された二元構造のセラミックボードとしては、例えば、アースエンジニアリング社製、商品名「ハイセラボード」がある。このセラミックボードは、珪藻土、鋳鉄スラグ、粘土を混練して円筒状に押し出しした後、円筒長さに切断し、展開して平板生地として、焼結して形成したものである(特開2005-239467)。この貫通気孔が形成された二元構造のセラミックボードは、セラミック層が多層に積層した構造に形成され、層方向(セラミックボードの面と平行方向)にはきわめて通気性が良好である一方、層方向に垂直方向には通気性が面方向(層方向)の10%程度と極端に低くなるという性質がある。
【0015】
図3に、上記セラミックボードを切断して得た細長のボード体20aを積み重ねた状態を端面方向から見た外観を説明的に示す。ボード体20aは、セラミック層がセラミックボードの面方向(図の左右方向)に延び、セラミック層がボード体20aの厚さ方向に層状に積層して形成されている。ボード体20aを、端面あるいは側面方向から見ると多数の空孔が見える。このように、ボード体20aはセラミック層が多層に積層され、貫通気孔が面方向に連通する構造となり、セラミック層と平行な方向には通気性がきわめて良好となる。
【0016】
一方、ボード体20aを平面方向から見ると、外面は緻密であり、空孔はほとんど見えない。ボード体20aの面に垂直方向には通気性が低い理由である。
また、ボード体20aは、ポーラス状に形成されることから透水性を備え、保水性においてもすぐれている。ただし、透水性についてみると、セラミック層に平行な方向への透水性がきわめて良好であるのに対して、セラミック層に垂直な方向への透水性は低くなる。実験によると、ボード体20aをセラミック層を鉛直向きとして(立てて)保水した場合は、セラミック層を水平向きとして保水した場合の12%程度しか保水性がないことがわかった。
【0017】
本実施形態のエア冷却機構は、前述したように、本体10の対向する側面をボード体20aを厚さ方向に積み上げて形成した多孔質ボード20によって形成している。具体的には、厚さ5cm、幅10cm、長さ50cmのボード体20aを10枚積み上げて多孔質ボード20としている。これによって、多孔質ボード20は縦−横の長さが50cmのボード状となる。本体10の側板11、12も、縦−横の長さを約50cmに形成し、本体10は縦−横−高さがそれぞれ50cmの立方体の箱状となる。
【0018】
本実施形態においては、給水管52、53および給水源50が給水手段を構成する。給水管52、53には給水孔が設けられ、水道等の給水源50から、給水管52、53に給水することによって多孔質ボード20に給水することができる。多孔質ボード20に給水する給水手段は本実施形態の構成に限定されるものではなく、多孔質ボード20の外方から多孔質ボード20に水を放射するといった方法であってもよい。また、間欠的に多孔質ボード20に給水するように制御することもできる。
【0019】
前述したように、多孔質ボード20を構成するボード体20aは、多孔質ボード20の面に垂直となる方向には通気性がきわめて良好であるから、本体10内に設置した吸引ファン30を作動させることによって、多孔質ボード20を通過して本体10内に容易に外気が導入される。
本実施形態のエア冷却機構は、給水手段により双方の多孔質ボード20に給水し、多孔質ボード20が吸水した状態において吸引ファン30を作動させ、本体10内に外気を導入することによってエアを冷却する。本体10内にエアを導入する際にエアが冷却される作用は、外気によって多孔質ボード20に吸水されている水が気化され、気化熱によって外気が冷却されることによる。
【0020】
多孔質ボード20を外気が通過する際における外気と多孔質ボード20との接触面積はきわめて広いから、気化熱によって外気が効果的に冷却される。とくに、本実施形態で使用している多孔質ボード20は、厚さ方向(水平方向、多孔質ボードのボード面に垂直方向)に容易に外気が通流するから、吸引ファン30によって外気を導入する際の抵抗が小さく、容易に大量の外気を導入することができる。
【0021】
(実験1)
本実施形態のエア冷却機構を実際に作動させ、外気がどの程度冷却されるかを調べた。多孔質ボード20は、前述した、厚さ10cm、縦横50cm角の大きさのものである。吸引ファン30として60Hz、500Wのシロッコファンを使用し、送風ダクト40の内径は216mmである。この条件により、風速9〜11m/秒の風量を得た。
表1に、本体10に導入された外気が、どの程度冷却されたかを、湿度とともに示した。
【0022】
【表1】

【0023】
表1は、エア冷却機構を使用することによって、25℃の外気が14℃にまで冷却され、21℃の外気が15℃まで冷却されたことを示す。外気温や湿度、風量によって、外気が冷却される程度にはばらつきが生じると考えられるが、表1に示す実験結果は、本実施形態のエア冷却機構によれば、外気がきわめて効率的に冷却されることを示している。
【0024】
本実施形態のエア冷却機構を使用する際は、多孔質ボード20から水が蒸発するから、多孔質ボード20に水を補給しながら使用する。上記例の多孔質ボード20を水中に浸漬して完全に水を吸水させた状態での吸水量は15kgであった。上記測定は、多孔質ボード20に完全に吸水させた後、間欠的に多孔質ボード20に給水しながら測定したものである。
【0025】
実験2、3では、エア冷却機構による作用を時間経過とともに測定した。以下に、実験結果を示す。
(実験2)
エア冷却機構として使用した装置は、実験1において使用した装置と同一の装置である。実験2においては、外気温23.3℃、湿度11.7%の条件でエア冷却機構を作動させ、エア冷却機構から排出される空気の温度、湿度、多孔質ボード20の水分量の変動を測定した。表2は、10分ごとの測定値を示している。外気温23.3℃、湿度11.7%は、測定時間内における平均温度、平均湿度である。
【0026】
【表2】

【0027】
(実験3)
実験1において使用した装置と同一の装置を使用し、外気温30.3℃、湿度17.9%の条件でエア冷却機構を作動させ、エア冷却機構から排出される空気の温度、湿度、多孔質ボード20の水分量の変動を測定した。表3に測定結果を示す。
【0028】
【表3】

【0029】
実験2は、気温23.3℃の外気が、多孔質ボード20を通過したことによって、気温12〜13℃程度にまで冷却されたことを示す。実験3は、気温30.9℃の外気が、気温18℃程度にまで冷却されたことを示す。エア冷却機構による風量は10分間ごとに200立方メートル程度であり、かなり大きな風量といえる。すなわち、本実施形態のエア冷却機構によれば、大きな風量をとりながらきわめて効果的な外気の冷却がなされる。
【0030】
また、表2、3に示すように、吸引ファン30を作動させた直後(1分以内)から外気の冷却がなされることも特徴的である。本実施形態のエア冷却機構は、外気が多孔質ボード20を通過する際に、多孔質ボード20に吸水されている水分を気化させることによって外気温を低下させる作用によるものであり、外気が多孔質ボード20を通過する際に、同時に水分を気化する作用が生じて外気が冷却されるからであると考えられる。
また、多孔質ボード20では、外気を導入している際には連続して、水分の気化作用が生じているから、多孔質ボード20からも蒸発熱が奪われ、多孔質ボード20自体も冷却される。
【0031】
実験2、実験3とも、多孔質ボード20へは水温15℃の水を間欠的に給水したが、外気を冷却する作用は水分の気化作用であるから、多孔質ボード20に供給する給水温度によって影響を受けるものではない。
多孔質ボード20に温水をかけて冷却作用をがどうなるかを実験したが、この場合も、瞬間的に多孔質ボード20が冷却され、多孔質ボード20に水を供給した場合とまったく同様の冷却作用が生じた。
【0032】
表2、3に示す水分減の実測値は、10分間ごとの多孔質ボードにおける水分の減量分を示す。多孔質ボードの水分減の測定値は、装置全体を秤にのせて装置の重量を測定し、多孔質ボード20に供給する給水量によって補正して得たものである。これらの測定値は想定される水分減理論値よりも若干小さくあらわれているようである。本実験は連続運転を行ったものであるが、本実施形態のエア冷却機構においては、1時間あたり5リットルから6リットルの水を補給することによって、的確な冷却作用を行うことができた。この程度の補給水量であれば、間欠的に供給する操作によって簡単に水を補給することができる。また、外気温が高い場合には、エアに含まれる水分量が多くなるから、外気とともにエア冷却機構に水分がもたらされ、補給水量はそれほど多くならない。
【0033】
以上、説明したように、本発明に係るエア冷却機構は、大きな風量を導入しながら、外気を効率的に冷却することができるという作用効果を有する。冷却エアの湿度が高いことから、きのこ栽培や野菜栽培といった、比較的湿度が求められる環境にとくに好適に用いられる。
なお、上記実施形態のエア冷却機構は、本体10の2つの面に多孔質ボード20を配置したが、風量を多くとるような場合には、多孔質ボード20を3面あるいは4面に設けてもよい。また、逆に、風量がさほど必要ない場合には、本体10の1つの面のみに多孔質ボード20を配置する構造とすることもできる。また、多孔質ボード20を設ける面の面積を広くしたり狭くしたりすることによって、必要とする風量に対応させることもできる。多孔質ボード20は、ボード体20aを単に積み重ねて形成するから、多孔質ボード20の面積を変えた設計とするといったことも容易である。
【0034】
また、多孔質ボード20は、セラミックボードを切断して形成したボード体20aを用いて形成するから、セラミックボードを切断する際の切断幅を調節することによって、多孔質ボード20の厚さ、すなわち外気が多孔質ボード20を通過する距離(多孔質体との接触面積)を調節することが可能である。
【0035】
また、多孔質ボード20は、セラミック層に垂直な方向には通気が抑制され、かつ透水性もセラミック層に平行な方向にくらべて極端に低くなることから、セラミック層を水平方向に向けた配置として構成することによって、多孔質ボード20の保水性が向上するという利点もある。
多孔質ボード20の鉛直方向への水の浸透性は、多孔質体の特質によってなんら問題がないから、多孔質ボード20の上部から給水することによって、多孔質ボード20全体に容易に給水することができる。これによって、ボード体20aを厚さ方向に何枚も積み重ねて形成した多孔質ボード20であっても、各々のボード体20aに均等に保水させることができ、多孔質ボード20全体としての冷却作用をより効果的に発揮させることができる。
【0036】
なお、上記実施形態においては、ボード体20aを複数枚、積み重ねて多孔質ボード20を形成したが、これは層方向と平行方向、すなわち多孔質ボード20のボード面と垂直方向(水平方向)への通気性を良好とし、ボード面と平行方向(鉛直方向)への透水性を抑制するためである。セラミック層を多層に積層した形態で、厚さ方向に長手に形成された一枚板状の多孔質ボードが使用できる場合は、上記実施形態のようにボード体20aを複数枚積み重ねることなく多孔質ボードを構成することができる。
【0037】
(栽培施設)
図4は上述したエア冷却機構を、きのこの生育室に設置した例を示す。図4は、栽培瓶が棚60に多数本収容されている状態を示す。生育室内には、冷房用として空調装置70が複数台設けられている。
上述したエア冷却機構は、本体10に連結された送風ダクト40を生育室の壁面に連結し、送風ダクト40から生育室内に冷却エアが送入されるように設ける。
【0038】
きのこの生育室の環境は、きのこの種類にもよるが、一例として、室温14℃、湿度99%、二酸化炭素濃度2000PPM以下となるように管理される。
生育室に外気を導入するのは、栽培瓶から発生する二酸化炭素濃度が所定濃度以下となるように換気するためであり、空調装置70を使用しているのは、生育室内を所定温度に維持するためである。
本実施形態のきのこ栽培施設は、生育室に外気を導入する際に、エア冷却機構を介して外気を導入することによって、生育室を効果的に換気することができ、生育室の温度を効率的に下げることが可能となる。
【0039】
上述したエア冷却機構による作用を確かめるため、従来の空調装置のみが設置されている生育室に本発明に係るエア冷却機構を取り付け、空調装置の作動状態を調べる実験を行った。使用したエア冷却機構は、前述した、本体10の対向する2つの面を50cm×50cmの多孔質ボード20としたものである。実験に使用した生育室は、縦15m、横80m、高さ7mの大きさのものであり、収容されている栽培瓶の本数は数350000本である。既設の空調装置は5台である。
【0040】
実験は、外気温25℃、湿度30%の条件で行った。表4に測定結果を示す。表4は、エア冷却機構を作動させた場合と、作動させない場合とで、空調装置(1号機〜5号機)の稼動時間がどうなったかを示している。
エア冷却機構を作動させたのは、1時間あたり25分、導入外気量は4000立方メートル、外気をエア冷却機構から生育室に導入したときの温度は14℃であった。なお、エア冷却機構を作動させない場合は、外気をそのまま生育室に導入して空調装置を作動させる方法である。
【0041】
【表4】

【0042】
表4に示すように、エア冷却機構を作動させない場合に空調装置が稼動した時間が238分であったのに対して、エア冷却機構を作動させると、空調装置の稼動時間は合計67分となった。生育室に設置したエア冷却機構は、1台のみであったが、エア冷却機構を設置することによって空調装置の稼動時間を大幅に短縮することができ、エア冷却機構による外気取り入れ、冷却作用の有効性、省エネルギー効果が確かめられた。
【0043】
なお、上記例はきのこ栽培施設の生育室に適用した例であるが、きのこの培養室の換気にも利用できる。きのこの培養室は栽培瓶から発熱するから、室内が高温にならないように換気したり冷却したりする必要があるからである。
また、本発明に係るエア冷却機構は、きのこ栽培に利用する場合に限定されるものではなく、野菜ハウスなどの、室内空気の換気や冷房が必要である施設、あるいは湿度が上昇することが歓迎され、許容される施設等において好適に用いることができる。
【0044】
なお、図4においては、生育室の外部にエア冷却機構の本体10を設置し、送風ダクト40を介して本体10と生育室とを連通する配置としたが、エア冷却機構を設置する形態は図4に示す方法に限られるものではない。たとえば、本体10を生育室の壁面に連結し、本体10内に吸引ファン30を設置して多孔質ボード20を通過した外気を生育室内に導入することもできる。また、エア冷却機構の設置位置、設置数等についても適宜選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】エア冷却機構の一実施形態の構成を示す斜視図である。
【図2】エア冷却機構の一実施形態の内部構成を示す透視斜視図である。
【図3】エア冷却機構に用いる多孔質ボードを端面方向から見た説明図である。
【図4】エア冷却機構を設置したきのこ栽培施設の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
10 本体
11、12 側板
13 底板
20 多孔質ボード
20a ボード体
30 吸引ファン
40 送風ダクト
50 給水源
60 棚
70 空調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の箱体状に形成され、多孔質ボードからなる側面を備えた本体と、
前記多孔質ボードに水を供給する給水手段と、
前記多孔質ボードを通過して前記本体内に外気を導入する外気吸引手段とを備え、
前記多孔質ボードが、セラミック層が多層に積層され、層方向に貫通気孔が形成された二元構造に形成されるとともに、層方向を水平方向に向けて、前記本体の側面に設置されていることを特徴とするエア冷却機構。
【請求項2】
前記多孔質ボードは、セラミック層が多層に積層され、層方向に貫通気孔が形成された二元構造からなるボード体を、厚さ方向に複数枚、積み重ねてボード状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のエア冷却機構。
【請求項3】
前記本体は、矩形の箱体状に形成され、
前記多孔質ボードが、前記本体の少なくとも一つの側面に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載のエア冷却機構。
【請求項4】
前記外気吸引手段は、前記本体に内蔵された吸引ファンと、吸引ファンに連通して設けられた送風ダクトからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のエア冷却機構。
【請求項5】
前記給水手段は、前記多孔質ボードの上部から給水する給水部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のエア冷却機構。
【請求項6】
栽培室に外気を冷却して導入する外気の導入機構が設けられた栽培施設であって、
前記外気の導入機構として、
中空の箱体状に形成され、多孔質ボードからなる側面を備えた本体と、前記多孔質ボードに水を供給する給水手段と、前記多孔質ボードを通過して前記本体内に外気を導入する外気吸引手段とを備え、前記多孔質ボードが、セラミック層が多層に積層され、層方向に貫通気孔が形成された二元構造に形成されるとともに、層方向を水平方向に向けて、前記本体の側面に設置されて形成されたエア冷却機構が、前記栽培室と前記本体とを連通して設けられていることを特徴とする栽培施設。
【請求項7】
前記エア冷却機構を構成する多孔質ボードは、
セラミック層が多層に積層され、層方向に貫通気孔が形成された二元構造からなるボード体を、厚さ方向に複数枚、積み重ねてボード状に形成されていることを特徴とする請求項6記載の栽培施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−284876(P2009−284876A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143977(P2008−143977)
【出願日】平成20年5月31日(2008.5.31)
【出願人】(392005997)株式会社ミスズライフ (3)
【Fターム(参考)】