説明

エキシマ光照射による接着体の解体方法

【課題】接着体を容易に解体できる、接着体の解体方法の提供。
【解決手段】1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを含有してなる接着剤組成物を用いて基材同士を貼り合わせ、該接着剤組成物を硬化させることにより形成した接着体に対して、中心波長が172nm又は193nmのエキシマ光を照射する工程を含み、少なくとも一方の基材は該エキシマ光に対して透過性である接着体の解体方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマ光照射による接着体の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学レンズ、プリズム、アレイ、シリコンウエハ、半導体実装部品等の固定は、ねじやボルトにより機械的に固定されてきた。しかしながら、近年、部材の縮小、薄膜化の潮流により、歩留まり等の生産性の向上、歪みの改善を目的として、接着剤により部品を固定することが増加している。
【0003】
接着剤による部品固定の増加に伴い、接着強度が強く、熱や湿度等に対し耐性のある、高信頼性の接着剤が市場にラインナップされてきている。その一方で、そのような接着剤は一度接着してしまうと解体し難いという課題が近年クローズアップされてきている。特に光学レンズ、プリズム、アレイ、シリコンウエハ、半導体実装部品等は、一つ一つの部品が高価であるため、接着時に位置ズレを生じると、大幅な歩留まり低下に繋がってしまう。接着体を解体するために、有機溶剤、強酸、強アルカリといった溶剤を用いる例が知られているが、これらは大量の溶剤を長時間使用するために、人体及び環境への負荷が大きいという問題があった。
【0004】
このような背景から、加熱やUV光の照射により接着体を解体する方法及びそのための接着剤(特許文献1〜5)が開示されている。
【0005】
特開2006−188586号公報(特許文献1)には、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマーなどの光硬化性樹脂、光重合開始剤及び刺激によりガスを発生させるガス発生剤を含有することを特徴とする刺激剥離型接着剤組成物が記載されている。該文献によれば、当該組成物はガラス、プラスチック、金属などでできた様々な形状の部材に対する優れた接着性を示す一方、必要に応じて容易に剥離することができるとされる。具体的には、当該接着剤組成物を2つの部材の間に塗布して光を照射することで、部材を強固に接着することができ、その後、接着剤組成物に光や熱等の刺激を付与することで、ガス発生剤からガスが発生し、この発生したガスは、硬化した接着剤組成物を発泡させることなく部材との界面へ放出され、2つの部材を容易に剥離することができることが記載されている。実施例にはUV光を照射して剥離したことが記載されている。
【0006】
特開平6−264033号公報(特許文献2)には、アルコキシ基を有するアクリル酸エステル系重合体を含む特有の成分を使用し、更に重合禁止剤を併用することにより、耐薬品性に優れ、且つ高い温度に加熱されても重合せずに接着力を維持し、光照射により初めて接着力が大きく低下して被接着面に転着することなく剥離しやすくなることが記載されている。実施例では紫外線を照射したことが記載されている。
【0007】
特開2001−212900号公報(特許文献3)には、(A):基材(B):発泡剤を含有する架橋性ポリマー(C):架橋性ポリマーを順次積層してなることを特徴とする積層体が記載されている。そして、この積層体にエネルギーを照射することにより、(B)が発泡し、基材が積層体から容易に剥離、回収され、再利用に供し得ること、そして、積層体に照射せしめるエネルギーとしては、例えば、紫外線、可視光、赤外線、レーザー光等の光エネルギー、マイクロ波、超音波、衝撃波、電波、磁場等の電磁気エネルギー、加熱、冷却等の熱エネルギー等が挙げられ、中でも光エネルギーおよび熱エネルギーが好ましく、とりわけ、加熱が好適であることが記載されている。
【0008】
特開2003−286464号公報(特許文献4)には、エポキシ系接着剤に対して、(B)離型剤及び(C)発泡剤を配合してなるエポキシ系接着剤組成物が記載されている。当該組成物は接着体製造時の初期接着力を有し、90℃で168時間放置しても接着力の低下は確認されない一方で、エネルギー照射することにより、容易に剥離でき、糊残りも極めて少ないとされる。照射するエネルギーとしては、例えば紫外線、可視光、赤外線、レーザー光線等の光エネルギー、マイクロ波、超音波、電波、磁場等の電磁気エネルギー、加熱、冷却等の熱エネルギー等が挙げられ、中でも光エネルギー、熱エネルギー照射が好ましく、とりわけ加熱が好適であることが記載されている。
【0009】
特開2006−111716号公報(特許文献5)には、所定の官能基を有するエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを含有することを特徴とする易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物が記載されている。そして、このエポキシ樹脂組成物は剥離性を発揮させることを目的とした発泡剤、離型剤などを一切使用しなくても使用後にエネルギーを照射することにより十分な剥離性を有し、さらに初期接着性が極めて優れるとされている。接着体に照射するエネルギーとしては、例えば紫外線、可視光、赤外線、レーザー光線等の光エネルギー、マイクロ波、超音波、電波、磁場等の電磁気エネルギー、加熱、冷却等の熱エネルギー等が挙げられ、中でも光エネルギー、熱エネルギー照射が好ましく、とりわけ加熱が好適であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−188586号公報
【特許文献2】特開平6−264033号公報
【特許文献3】特開2001−212900号公報
【特許文献4】特開2003−286464号公報
【特許文献5】特開2006−111716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の技術は、解体性を付与するために、接着剤の信頼性を犠牲にしており、近年の部品固定に要求される耐熱性、耐湿性、耐光性を十分には満足することができない。より具体的には加熱やUVによる解体・剥離では、接着剤中に加熱やUVにより発泡する発泡剤が配合されたり、熱や光に弱い官能基が導入されたりしているため、耐熱性や耐光性を大きく犠牲にする。水や温水で解体・剥離できる接着剤は、高温多湿の条件下では容易に剥離してしまうので、接着体の耐熱性や耐湿性が低下する。
【0012】
本発明は、耐熱性、耐湿性、及び耐光性に優れた接着剤を用いて接合された接着体を容易に解体できる方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、所定構造をもつアクリル接着剤により基材を接着してなる接着体に中心波長172nm又は193nmのエキシマ光を照射することにより、接着体が容易に解体できることを見出した。
【0014】
従って、本発明は一側面において、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを含有してなる接着剤組成物を用いて基材同士を貼り合わせ、該接着剤組成物を硬化させることにより形成した接着体に対して、中心波長が172nm又は193nmのエキシマ光を照射する工程を含み、少なくとも一方の基材は該エキシマ光に対して透過性である接着体の解体方法である。
【0015】
本発明に係る接着体の解体方法の更に別の一実施形態においては、前記接着剤組成物は、貯蔵弾性率が1000MPa以上である。
【0016】
本発明に係る接着体の解体方法の更に別の一実施形態においては、前記接着剤組成物は、引張剪断接着強さが5MPa以上である。
【0017】
本発明に係る接着体の解体方法の更に別の一実施形態においては、前記接着剤組成物は、耐熱性剥離試験による剥離率が10%以下である。
【0018】
本発明に係る接着体の解体方法の更に別の一実施形態においては、前記接着剤組成物は、耐湿性剥離試験による剥離率が10%以下である。
【0019】
本発明に係る接着体の解体方法の更に別の一実施形態においては、前記接着剤組成物は、耐光性剥離試験による剥離率が10%以下である。
【0020】
本発明に係る接着体の解体方法の更に別の一実施形態においては、前記(メタ)アクリレートはイソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、並びに主鎖骨格がポリブタジエンの水素添加物及びポリブタジエンの水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が500〜5000である(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される。
【0021】
本発明に係る接着体の解体方法の更に別の一実施形態においては、エキシマ光の積算照射量が1J/cm2以上1000J/cm2以下である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、耐熱性、耐湿性、及び耐光性に優れ、解体が困難なアクリル接着剤を用いた接着体を、容易に解体することが可能となる。そのため、光学レンズ、プリズム、アレイ、シリコンウエハ、半導体実装部品等を固定する時の歩留まり向上に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.接着体
本発明の解体方法が対象とする接着体は、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを含有してなる接着剤組成物(以下、「アクリル接着剤」ともいう)を用いて基材同士を貼り合わせ、該接着剤組成物を硬化させることにより形成されたものである。
【0024】
本発明の解体方法に用いられる基材としては、エキシマ光が硬化した接着剤に到達しやすいように、少なくとも一方の基材は照射されるエキシマ光(172nm又は193nmの波長の光)に対して透過性である透明基材が好ましい。
「透過性」とは、透過率1%以上100%以下の基材のことを言う。そのような透明基材としては、ガラス、石英、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、サファイヤ等が挙げられるが、エキシマ光照射により劣化しにくい点で、ガラス、石英、及びフッ化カルシウムからなる群から選択される1種又は2種以上からなる無機基材が好ましい。
【0025】
透過率の測定は市販の分光光度計を用いて測定可能である。具体的には、島津製作所社製型式UV−2550、UV−2450や、日立ハイテクノロジーズ社製型式U−3900、U−7000や、日本分光社製型式V−1000等が挙げられる。尚、200nm以下の透過率を測定する場合は、酸素が光を吸収してしまうため雰囲気を窒素、アルゴン等のガスでパージするのが好ましい。
【0026】
本発明において、アクリル接着剤を使用することとしたのは、耐熱性、耐湿性、耐光性に優れ、熱、水、光などを与える従来方法では容易に解体できない接着体を形成可能だからである。アクリル接着剤は、高信頼性構造用接着剤として幅広く用いられている。
【0027】
従って、本発明において使用するアクリル接着剤は、例えば、弾性率、接着強度が高く、耐熱、耐湿、耐光等の耐久試験で接着強度低下が少ない。具体的には、貯蔵弾性率が好ましくは1000MPa以上、より好ましくは1500MPa以上であり、典型的には1000〜9000MPaである。引張剪断接着強さは好ましくは5MPa以上であり、より好ましくは10MPa以上であり、典型的には5〜50MPaである。
【0028】
また、耐熱性試験による剥離率が好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下である。耐湿性試験による剥離率は好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下である。耐光性試験による剥離率は好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下である。
【0029】
本発明においては、貯蔵弾性率は以下の方法で測定する。
貯蔵弾性率E’は、縦20mm×横20mm×厚1mmの硬化物試験片を下記の硬化条件で作製し、動的粘弾性測定装置により、周波数1Hz、測定温度23℃で測定する。ここでいう動的粘弾性とは、物体に周期的に変化する歪みまたは応力を加えたときに観測される粘弾性をいう。また、貯蔵弾性率E’とは、弾性率の定義に従い応力と歪みの比は複素弾性率E*で表され、ここで、E*=E’+iE”とかくときの実数部E’を意味する。尚、虚数部は損失弾性率E”といい、一周期の間に粘弾性体に貯えられる弾性エネルギーがE’に比例し、粘弾性体が熱として失うエネルギーE”に比例するために、それぞれ貯蔵弾性率、損失弾性率とよばれる。
【0030】
本発明において用いられる動的粘弾性測定装置は、一般に市販されている、公知の動的粘弾性スペクトルメーターを用いることができる。具体的には、RSAIII(ティー・エイ・インスツルメンツ社製)や、DMS210、DMS6100(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)等が例示される。
【0031】
<硬化条件>
(1)紫外線硬化型アクリル接着剤
基板に塗布後、水銀キセノンUV照射ランプ装置により、波長365nm光が積算光量4000mJ/cm2となる条件にて照射して硬化させる。
(2)2液常温硬化型アクリル接着剤
A剤:B剤を1:1(質量比)でテフロン(登録商標)棒を用いて2液が混合するまで十分撹拌した後基板に塗布し、23℃、相対湿度50%の雰囲気下24時間静置の条件にて硬化させる。
(3)その他の接着剤
湿気硬化型アクリル接着剤、アクリルエマルジョン接着剤、ホットメルト型接着剤などのその他の接着剤においては、基板に塗布後、温度23℃、相対湿度50%で1日静置する。
【0032】
なお、貯蔵弾性率のように接着剤の硬化体単体を用いた特性評価を行う場合は硬化後に硬化体を剥離することが必要である。そのような場合は、基板上に離型フィルム(例えば、PETフィルム)を一枚敷くか、又は、基板上に離型剤を塗布しておく。
【0033】
本発明においては、引張剪断接着強さは以下の方法で測定する。
ガラス試験片(縦25mm×横25mm×厚2mm)の片方に樹脂組成物を塗布する。その後、もう一枚の試験片を重ね合わせて、接着厚みが80μmとなるように貼り合わせ、上述した硬化条件で硬化させたものを試験体とする。尚、引張剪断接着強さ(単位:MPa)は、温度23℃、相対湿度50%の環境下において、引張速度10mm/分で測定する。その他、特に明示のない条件はJIS K 6850に従う。
【0034】
本発明においては、耐熱性試験による剥離率は以下の手順で測定する。
(手順1)
石英基板(直径30mmφ×厚3mm)上に、樹脂組成物を上述した硬化条件にて硬化して形状が直径20mmφ×厚80μmの接着試験体(試験片)を作製する。
(手順2)
作製した試験片を、基材側を下にして200℃のホットプレート上に置き、3時間加熱する。
(手順3)
温度23℃、相対湿度50%の環境下で、樹脂硬化物層に縦2mm×横2mm×25マスになるようにカットラインを入れた後、セロファンテープ(幅24mm、粘着力23N/10mm)を貼り付けて180°剥離を実施する。碁盤目剥離試験の結果は下記式(1)に従い、剥離率として計算する。「剥離した」とは、完全に剥がれた状態を指す。その他、特に明示のない条件はJIS K 5600−5−6に従う。
(式1)
剥離率(%)={(剥離した枚数)÷(全枚数)}×100
【0035】
本発明においては、耐湿性試験による剥離率は以下の方法で測定する。
(手順1)
耐熱性試験と同様である。
(手順2)
作製した試験片を、プレッシャークッカー(PCT)に入れ、温度121℃、相対湿度100%、2気圧の条件下に24時間暴露する。
(手順3)
耐熱性試験と同様である。
【0036】
本発明においては、耐光性試験による剥離率は以下の方法で測定する。
(手順1)
耐熱性試験と同様である。
(手順2)
作製した試験片を、耐光試験機(フェードメーター、カーボンアークランプ)に入れ、100時間暴露する。(中心波長:388nm、照射強度:50mW/cm2
(手順3)
耐熱性試験と同様である。
【0037】
本発明で使用するアクリル接着剤としては、紫外線硬化型アクリル接着剤、常温硬化型アクリル接着剤、湿気硬化型アクリル接着剤、アクリルエマルジョン接着剤、ホットメルト型接着剤等が挙げられる。アクリル接着剤の中では、良好な接着信頼性を得ることができる、紫外線硬化型アクリル接着剤及び/又は常温硬化型アクリル接着剤が好ましい。
【0038】
紫外線硬化型アクリル接着剤は、(メタ)アクリレートと光重合開始剤を含有することが好ましい。(メタ)アクリレートの中では、接着信頼性の効果が大きい点で、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0039】
1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートの具体例を下記挙げるがこれに限定されない。
【0040】
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ブチルヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が例示される。これらは単独で使用することも2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの中では、接着信頼性の効果が大きい点で、イソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートからなる群のうちの1種又は2種以上が好ましい。
【0041】
さらに本発明における(メタ)アクリレートとして、主鎖骨格が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びこれらの水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が500〜5000である(メタ)アクリレートオリゴマーを含有することが好ましい。なお、ここで言う数平均分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量を指す。
【0042】
(メタ)アクリレートオリゴマーの主鎖骨格は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物、及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。好ましくは、ポリブタジエン、又はポリブタジエンの水素添加物が選択される。
【0043】
ポリブタジエンのミクロ構造についても特に制限はなく、1,4−cis体ユニット割合の少ないlow−cisポリブタジエン骨格、1,4−cis体ユニット割合の多いhigh−cisポリブタジエン骨格、1,2−ポリブタジエン骨格等いずれでも構わないが、本発明者の検討によれば、1,2−ポリブタジエン骨格が好ましく選択される。
【0044】
ポリブタジエンの水素添加物又はポリイソプレンの水素添加物を用いる場合、耐熱性や耐候性の点から、これらの水素添加率は好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。なお、ここで水素添加率は、ポリブタジエンの水素添加物又はポリイソプレンの水素添加物中の全ジエンモノマーユニット数に対する水素が付加したモノマーユニット数の割合をいう。
【0045】
(メタ)アクリレートオリゴマーは数平均分子量が500〜5000であり、好ましくは800〜2500、特に好ましくは1100〜2200である。数平均分子量が500未満では、本発明の樹脂組成物の硬化体の硬度が低すぎて、接着剤層が形成し難くなることがある。一方数平均分子量が5000を越える場合には、得られる樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、製造過程での混合等における作業性、或いは実用用途において当該樹脂組成物を用いる際の作業性に問題が生じるようになり、やはり好ましくない。
【0046】
主鎖骨格が、ポリブタジエン、及びポリブタジエンの水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が500〜5000である(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、日本曹達社製NISSO−PB TEAI−1000(両末端アクリレート変性水素添加ブタジエン系オリゴマー)、日本曹達社製NISSO−PB TE−2000(両末端メタクリレート変性ブタジエン系オリゴマー)等を例示することができる。
【0047】
紫外線硬化型アクリル接着剤の(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリレート100質量部中、イソボルニル(メタ)アクリレート25〜75質量部、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート1〜25質量部、主鎖骨格が、ポリブタジエン及びポリブタジエンの水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が500〜5000である(メタ)アクリレートオリゴマー20〜70質量部が好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート30〜50質量部、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート5〜15質量部、主鎖骨格が、ポリブタジエン、及びポリブタジエンの水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が500〜5000である(メタ)アクリレートオリゴマー45〜55質量部がより好ましい。二剤常温硬化型アクリル接着剤の(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリレート100質量部中、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート5〜40質量部、主鎖骨格が、ポリブタジエン、及びポリブタジエンの水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が500〜5000である(メタ)アクリレートオリゴマー40〜80質量部、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート5〜40質量部が好ましく、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート10〜30質量部、主鎖骨格が、ポリブタジエン、及びポリブタジエンの水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が500〜5000である(メタ)アクリレートオリゴマー50〜70質量部、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート10〜30質量部がより好ましい。
【0048】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1―プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、カンファーキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイド、2−メチル―1―(4−(メチルチオ)フェニル)―2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル―2−ジメチルアミノ−1―(4−モルフォリノフェニル)―1−ブタノン−1、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)―2,4,4―トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられ、単独で使用することも2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの中では、反応性が高く硬化が速い、ベンジルジメチルケタールが好ましい。
【0049】
光重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.05〜2質量部が好ましく、0.2〜1質量部がより好ましい。
【0050】
常温硬化型アクリル接着剤は、(メタ)アクリレート、ラジカル重合開始剤及び分解促進剤を含有することが好ましい。
【0051】
(メタ)アクリレートの具体例は紫外線硬化型アクリル接着剤と同様である。
【0052】
ラジカル重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物が好ましく、これらの1種又は2種以上が使用できる。これらの中では、効果が大きい点で、クメンハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0053】
ラジカル重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1〜7質量部がより好ましい。
【0054】
分解促進剤は、常温にてラジカル重合開始剤と反応し、ラジカルを発生するものが好ましい。分解促進剤としては、第3級アミン、チオ尿素誘導体及び金属塩等が挙げられる。第3級アミンとしては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン及びN,N−ジメチルパラトルイジン等が挙げられる。チオ尿素誘導体としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、メチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素及びエチレンチオ尿素等が挙げられる。金属塩としては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅及びバナジルアセチルアセトネート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を使用してもよい。これらの中では、硬化が速い、金属塩が好ましく、バナジルアセチルアセトネートがより好ましい。
【0055】
分解促進剤の使用量は、(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜2質量部がより好ましい。
【0056】
常温硬化型アクリル接着剤は、二剤常温硬化型アクリル接着剤として使用することが好ましい。二剤常温硬化型アクリル接着剤の実施態様としては、二剤型の接着剤として使用することが挙げられる。二剤型については、本発明の接着剤の必須成分全てを貯蔵中は混合せず、接着剤をA剤及びB剤に分け、A剤に少なくともラジカル重合開始剤を、B剤に少なくとも分解促進剤を別々に貯蔵する。この場合、両剤を同時に又は別々に被着体に塗布して接触、硬化することにより、二剤型の常温硬化型アクリル接着剤として使用できる。
【0057】
<その他の成分>
本発明で使用するアクリル接着剤には、その貯蔵安定性向上のため少量の重合禁止剤を添加することができる。例えば重合禁止剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジターシャリーブチル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール、2−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール等が挙げられる。
【0058】
これらの重合禁止剤の使用量は、少なすぎると貯蔵安定性の効果が十分に得られないが多すぎると硬化性や接着性が低下することから、アクリル接着剤の合計質量を100質量部としたとき、0.001質量部以上3質量部以下であることが好ましい。更に、0.01質量部以上2質量部以下であることがより好ましい。
【0059】
本発明で使用するアクリル接着剤には、粘度・流動性・チキソ性を調整する目的として、硬化時間や保存安定性に影響を与えない無機充填材や有機充填材を1種又は2種以上添加してもよい。無機充填材としては、珪砂、シリカ、カ−ボンブラック、フォラストナイト、クレ−、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、ベントナイト、マイカ、クロム酸鉛、ニッケルスラグ、水酸化アルミニウム、球状のものを含むアルミナ粉、ステンレス粉、炭化珪素粉、窒化珪素粉、窒化ホウ素粉、タルク粉、炭酸カルシウム粉、ガラスビーズ、シラスバルーン、アルミニウム粉、並びに、チタン粉等が挙げられる。有機充填材としては、ポリエチレン粉末、コールタール、ウレタン樹脂粉、(メタ)アクリル樹脂粉、シリコーン樹脂粉、フッ素樹脂粉、フェノール樹脂粉、木粉及び再生ゴム粉等が挙げられる。
【0060】
これら充填材の使用量は少なすぎるとその効果が十分に得られないが多すぎると硬化性や接着性が低下することから、アクリル接着剤の合計質量を100質量部としたとき、1質量部以上500質量部以下であることが好ましい。更に、10質量部以上300質量部以下であることがより好ましい。
【0061】
本発明で使用するアクリル接着剤には、接着性改良の目的としてカップリング剤を添加することが好ましい。カップリング剤としては、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等が挙げられる。カップリング剤は単独で使用することも2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0062】
上記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
上記チタネートカップリング剤としては、特に限定されないが、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルバイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシ−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルイソトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート及びジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0064】
良好な接着信頼性を得るために、カップリング剤の使用量は、アクリル接着剤の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0065】
その他、本発明で使用するアクリル接着剤には、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に使用されている溶剤、増量材、補強材、可塑剤、増粘剤、チクソトロピー付与剤、キレート化剤、染料、顔料、難燃剤及び界面活性剤等の添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【0066】
2.エキシマ光による接着体の解体
本発明では、接着体に172nm又は193nmの中心波長のエキシマ光を照射し、接着性を低下させる。これにより接着体が容易に解体できるようになる。本発明おいて、「解体」は接着剤によって接合していた基材同士が分離する如何なる態様をも含む概念であり、剥離することによって解体される場合を当然に含む。
【0067】
接着体への照射光をエキシマ光としたのは、単一波長であるため基材の発熱を抑え、熱による基材の変形を抑制できることによる。
【0068】
照射するエキシマ光の波長は、短すぎると基材への透過率が低くなる一方で、長すぎるとエネルギーが低くなり、接着体が剥離し難くなる。そこで、照射するエキシマ光の波長は172nm又は193nmに設定することが好ましく、172nmに設定することがより好ましい。172nm又は193nmであれば、実用上要求される350nmを超え780nm以下の光、例えば、可視光に対する耐光性が低下することもない。
【0069】
照射光源は、発光波長が172nm又は193nmであれば、ランプ光源、レーザー光源等、特に限定されないが、照射面積が広い点でランプ光源が特に好ましい。照射光源としては、キセノン(中心波長172nm、193nm)が挙げられる。
【0070】
エキシマ光が接着剤に到達する限りエキシマ光の照射方向は特に制限はないが、エキシマ光に対して透過性基材側から照射することが照射効率の点で好ましい。良好な剥離性が得られる場合は、手で容易に接着体を剥離できる。
【0071】
エキシマ光の照射エネルギーは1〜1000J/cm2が好ましく、10〜500J/cm2がより好ましい。1J/cm2以上であれば剥離しやすくなるし、1000J/cm2以下であれば非生産性になることもない。
【0072】
エキシマ光照射の雰囲気は、大気中でも構わないがエキシマ光が空気中の酸素が光を吸収してしまう場合は、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスでパージして照射することが好ましい。
【0073】
本発明は、光学レンズ、プリズム、アレイ、シリコンウエハ、半導体実装部品等の接着体の解体に好適に用いることができ、さらに本発明の方法を部品加工の仮固定方法に適用することもできる。
【実施例】
【0074】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0075】
(I.接着剤の作製)
下記に記す手順により接着剤1及び2を作製した。
【0076】
接着剤(1)紫外線硬化型アクリル接着剤
(メタ)アクリレートとして、イソボルニルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルIB」)40質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルHO」)10質量部、両末端アクリレート変性水素添加ブタジエン系オリゴマー(日本曹達社製「NISSO−PB TEAI−1000」、GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量1200、水素添加した1,2−ポリブタジエン構造を有する、水素添加率97%)50質量部、密着性付与剤として、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ社製「シルクエストA−174」)2.5質量部、光ラジカル重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール(チバジャパン社製「イルガキュアー651」)0.5質量部を各々溶解するまで十分に攪拌し、樹脂組成物を作製した。
【0077】
接着剤(2)二剤常温硬化型アクリル接着剤
〔A剤〕(メタ)アクリレートとして、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(ロームアンドハース社製「QM−652」)20質量部、両末端メタクリレート変性ブタジエン系オリゴマー(日本曹達社製「NISSO−PB TE−2000」、GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量2100、1,2−ポリブタジエン構造を有する)57.5質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルHO」)20質量部、重合開始剤として、クメンハイドロパーオキサイド(日本油脂社製「パークミルH−80」)2.5質量部を各々溶解するまで十分に攪拌し、樹脂組成物を作製した。
〔B剤〕(メタ)アクリレートとして、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(ロームアンドハース社製「QM−652」)20質量部、両末端メタクリレート変性ブタジエン系オリゴマー(日本曹達社製「NISSO−PB TE−2000」、GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量2100)57.5質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルHO」)20質量部、分解促進剤として、バナジルアセチルアセトネート(新興化学工業社製「バナジルアセチルアセトネート」)0.6質量部を各々溶解するまで十分に攪拌し、樹脂組成物を作製した。
【0078】
(硬化条件)
評価試験II、III、及びIVにおいては、次の硬化条件を採用した。
接着剤(1)紫外線硬化型アクリル接着剤
基板に塗布後、水銀キセノンUV照射ランプ装置(ウシオ電機社製「SP−7」)により、波長365nm光が積算光量4000mJ/cm2となる条件にて照射して硬化させる。
【0079】
接着剤(2)2液常温硬化型アクリル接着剤
A剤:B剤を1:1(質量比)でテフロン(登録商標)棒を用いて2液が混合するまで十分撹拌した後基板に塗布し、23℃、相対湿度50%の雰囲気下24時間静置の条件にて硬化させる。
【0080】
(II.貯蔵弾性率)
上記接着剤(1)及び(2)につき、貯蔵弾性率E’を、先述した測定手順に従い動的粘弾性スペクトルメーター(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DMS210)により測定した。
【0081】
(III.引張剪断接着強さ)
上記接着剤(1)及び(2)につき、引張剪断接着強さを、先述した測定手順に従い、引っ張り試験機(インストロン社製型式4467)を用いて測定した。
【0082】
(IV.エキシマ光照射前の碁盤目剥離試験)
(常態での評価)
石英(直径30mmφ×厚3mm)基板上に、樹脂組成物を上記硬化条件にて硬化して形状が直径20mmφ×厚80μmの接着試験体(試験片)を作製した。
このようにして得られた各試験片に対して、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、樹脂硬化物層に縦2mm×横2mm×25マスになるようにカットラインを入れた後、セロファンテープ(ニチバン社製型式CT−405AP:幅24mm、粘着力23N/10mm)を貼り付けて180°剥離を実施した。碁盤目剥離試験の結果は下記式(1)に従い、剥離率として計算し、剥離率90%以上のものを剥離可能として評価した。結果を表1に示す。ここで、「剥離した」とは、完全に剥がれた状態を指す。その他、特に明示のない条件はJIS K 5600−5−6に従った。
(式1)
剥離率(%)={(剥離した枚数)÷(全枚数)}×100
【0083】
(耐熱性評価)
前記と同じ試験片を作製し、基材側を下にして200℃のホットプレート上に試験片を置き、3時間加熱した。室温まで空冷した後の試験片を用いて、常態での評価と同様に碁盤目剥離試験を実施した。評価結果を表1に示す。
【0084】
(耐湿性評価)
前記と同じ試験片を作製し、プレッシャークッカー(PCT)(平山製作所社製型式PC−362M)に入れて、温度121℃、相対湿度100%、2気圧の条件下に24時間暴露した。暴露後の試験片を用いて、常態での評価と同様に碁盤目剥離試験を実施した。評価結果を表1に示す。
【0085】
(耐光性評価)
前記と同じ試験片を作製し、耐光試験機(フェードメーター、カーボンアークランプ:スガ試験機社製型式U48)に入れて、100時間暴露した(中心波長:388nm、照射強度:50mW/cm2)。暴露後の試験片を用いて、常態での評価と同様に碁盤目剥離試験を実施した。評価結果を表1に示す。
【0086】
(V.エキシマ光照射後の碁盤目剥離試験)
前記と同じ試験片を作製し、エキシマ光照射ランプ装置(ウシオ電機社製「SCS−02」、中心波長:172nm又は193nm、照度:20mW/cm2)を用いて試験片の石英基板側から表1に示す照射量でエキシマ光を暴露した。暴露後の試験片を用いて、常態での評価と同様に碁盤目剥離試験を実施した。また比較として、水銀キセノンUV照射ランプ装置(ウシオ電機社製「SP−7」、波長:365nm、照度:20mW/cm2)を用いた試験を実施した。評価結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1から以下のことが判る。本発明によれば、耐熱性、耐湿性、及び耐光性に優れた接着剤であっても、所定波長のエキシマ光を照射することにより、その接着体を容易に解体することができる。本発明によれば、発泡剤等を必要としなくても、接着体を容易に解体することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する1種又は2種以上の(メタ)アクリレートを含有してなる接着剤組成物を用いて基材同士を貼り合わせ、該接着剤組成物を硬化させることにより形成した接着体に対して、中心波長が172nm又は193nmのエキシマ光を照射する工程を含み、少なくとも一方の基材は該エキシマ光に対して透過性である接着体の解体方法。
【請求項2】
前記接着剤組成物は、貯蔵弾性率が1000MPa以上である請求項1に記載の解体方法。
【請求項3】
前記接着剤組成物は、引張剪断接着強さが5MPa以上である請求項1又は2に記載の解体方法。
【請求項4】
前記接着剤組成物は、耐熱性剥離試験による剥離率が10%以下である請求項1〜3何れか一項に記載の解体方法。
【請求項5】
前記接着剤組成物は、耐湿性剥離試験による剥離率が10%以下である請求項1〜4何れか一項に記載の解体方法。
【請求項6】
前記接着剤組成物は、耐光性剥離試験による剥離率が10%以下である請求項1〜5何れか一項に記載の解体方法。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレートはイソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、並びに主鎖骨格がポリブタジエンの水素添加物及びポリブタジエンの水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が500〜5000である(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される請求項1〜6何れか一項に記載の解体方法。
【請求項8】
エキシマ光の積算照射量が1J/cm2以上1000J/cm2以下である請求項1〜7何れか一項に記載の解体方法。

【公開番号】特開2012−1601(P2012−1601A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136236(P2010−136236)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】