説明

エキスパンションジョイント用防火装置

【課題】 エキスパンションジョイントの下方に配設される防火装置であって、火災時には躯体間の間隙から火炎や煙等がエキスパンションジョイント側に侵入するのを確実に防止すると共に、地震時には躯体間の水平方向及び垂直方向の相対変位にもかかわらず、破損などが生じることなく躯体と一体に変動する防火装置を提供する。
【解決手段】
間隙3を介して対向している躯体1、2の対向壁面に上下に一定間隔を存して耐火板5、6を水平方向に片持ち状に突設すると共に下側の耐火板5の上面に発泡性耐火形成材7を配設してなり、地震時には、耐火板5、6の先端が対向する躯体1、2の壁面に当接することなく、さらには発泡性耐火形成材7と上方の耐火板6とが当接することなく、躯体1、2と一体に変動させ、火災時には、加熱により発泡性耐火形成材7を膨脹させて上側の耐火板6の下面に圧着させて上方への火炎や煙の移動を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する建築物躯体間に配設されたエキスパンションジョイント用防火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、集合住宅建物における隣接する棟間を床等の躯体によって連結する場合に、躯体間に地震による相対変位を吸収するためのエキスパンションジョイントが配設されているが、火災が発生した場合に、躯体間の間隙を通じて火炎や煙等がエキスパンションジョイントに伝達するのを阻止することによって延焼を防止する必要があり、そのため、上記エキスパンションジョイントと共にこのエキスパンションジョイントの下方の躯体間隙部分に耐火部材が配設されている。
【0003】
このような耐火部材としては、例えば特許文献1に記載されているように、ガラス繊維ヤロックウール繊維等の不燃性繊維よりなる織布又は不織布、或いは、金属製薄板を基体として、この基体の表裏面に、加熱時に膨脹して耐火層を生成する発泡性耐火形成層(コーティング層)を層着してなる耐火帯を形成し、この耐火帯を断面U字状に湾曲してエキスパンションジョイントの下方近傍部の躯体間隙部分に配設し、その両端を隣接する躯体の対向面に固着している取付部材にピン等を介して取付けた構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−158491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された耐火帯によれば、その両端を隣接する躯体の対向面に取付部材を介して連結しているために、地震時に躯体間に発生する相対変位による変動力が耐火帯に直接伝達して耐火帯が変形すると共に、その変形によってピン等を介して取付部材に連結しているこの耐火帯の端部に引張りや圧縮、拗れ、捩れ等の種々な歪み力が発生し、その歪み力によって耐火帯の端部が破損して耐火帯としての機能を発揮することができなくなるといった問題点があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、地震時における躯体間の相対変位による変動力の影響を受けないように隣接する躯体間の間隙部に配設可能にし、且つ、火災発生時には、エキスパンションジョイント側への延焼を確実に防止することができるエキスパンションジョイント用防火装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のエキスパンションジョイント用防火装置は、建築物躯体間に配設されたエキスパンションジョイントの下方近傍部における対向する躯体の対向壁面間の間隙部に配設する防火装置であって、一方の躯体に、この躯体の壁面から他方の躯体に向かって水平状に突出し、且つ、その突出端と他方の躯体の壁面との間に地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けてなる一定幅を有する金属製の耐火板を突設すると共に、他方の躯体に、一方の躯体の壁面から突出した上記耐火板から上下方向に一定の間隔を存して、該躯体の壁面から一方の躯体に向かって水平状に突出し、且つ、その突出端と一方の躯体の壁面との間に地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けてなる一定幅を有する金属製の耐火板を突設してあり、さらに、上記いずれかの耐火板に、加熱によって膨脹して他方の耐火板に圧着する発泡性耐火形成材を設けている構造としている。
【0008】
一方、上記エキスパンションジョイント用防火装置において、一方の躯体の壁面から突設している耐火板と、他方の躯体の壁面から突設している耐火板との一部を地震時に生じる躯体間の垂直方向の相対変位を許容する間隔を存して上下に対向させてあり、この対向面のいずれか一方に、加熱膨脹時に他方の面に圧着する発泡性耐火形成材を設けている構成としている。
【0009】
また、上記エキスパンションジョイント用防火装置において、一方の躯体の壁面から突設している耐火板と、他方の躯体の壁面から突設している耐火板との突出端面を略同一垂直面上で上下に対向させていると共に、いずれか一方の耐火板に、加熱膨脹時に他方の耐火板の突出端面に圧着する発泡性耐火形成材を設けている構成としている。
【0010】
そして、本発明のエキスパンションジョイント用防火装置は、建築物躯体間に配設されたエキスパンションジョイントの下方近傍部における対向する躯体の対向壁面間の間隙部に配設する防火装置であって、一方の躯体に、この躯体の壁面から他方の躯体に向かって水平状に突出し、且つ、その突出端と他方の躯体の壁面との間に地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けてなる金属製の耐火板を突設すると共に、他方の躯体に、一方の躯体の壁面から突出している上記耐火板から上方に地震時に生じる躯体間の垂直方向の相対変位を許容する間隔を存して、その壁面から一方の躯体に向かって水平状に突出し、且つ、その突出端と一方の躯体の壁面との間に地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けてなる発泡性耐火形成材を突設してなり、この発泡性耐火形成材が加熱によって膨脹した際に、上記耐火板の上面に圧着するように構成している。
【0011】
また、本発明のエキスパンションジョイント用防火装置は、隣接する躯体における対向する壁面から一定幅を有する厚板形状の発泡性耐火形成材を突設してなるものである。即ち、建築物躯体間に配設されたエキスパンションジョイントの下方近傍部における対向する躯体の対向壁面間の間隙部に配設する防火装置であって、一方の躯体の壁面から他方の躯体に向かって突設し、且つ、その突出端と他方の躯体の壁面との間に地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けてなる発泡性耐火形成材と、この発泡性耐火形成材から上方に地震時に生じる躯体間の垂直方向の相対変位を許容する間隔を存して他方の躯体の壁面から一方の躯体に向かって突設し、且つ、その突出端と一方の躯体の壁面との間に地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けてなる発泡性耐火形成材とからなり、これらの発泡性耐火形成材が加熱によって膨脹した際に、互いにその対向面を圧着させるように構成している。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、エキスパンションジョイントを配設している建築物躯体間の間隙部に設けた防火装置は、隣接する躯体の対向面から互いに上下方向に間隔を存してそれぞれ片持ち状に突設してなる金属製の耐火板と、これらの耐火板の上下対向面における一方の面に設けられ、加熱によって膨脹して他方の耐火板に圧着する発泡耐火層を生成する発泡性耐火形成材とから構成しているので、構造が簡単で且つ施工が容易に行えるのは勿論、一方の躯体から突設している耐火板と他方の躯体から突設している耐火板との先端間が連続することなく上下に間隔を存した縁切り状態となっているため、地震時に躯体間が相対変位しても、一方の耐火板が他方の躯体の変動に関係なく一方の躯体と一体に変動し、他方の耐火板は一方の躯体の変動に関係なく他方の躯体と一体に変動することができ、従って、躯体壁面に取付けている耐火板基端部に歪み応力等を殆ど生じさせることなく長期の使用に供することができる。
【0013】
さらに、一方の躯体壁面から片持ち状に突設している耐火板の先端と他方の躯体壁面との間、及び、他方の躯体壁面から片持ち状に突設している耐火板の先端と一方の躯体壁面との間に、それぞれ地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けていると共に、これらの耐火板の対向面における一方の面に設けられた発泡性耐火形成材と他方の耐火板との間に、地震時に生じる躯体間の垂直方向の相対変位を許容する間隔を設けているので、地震によって隣接する躯体が水平方向、垂直方向に相対的に変動しても、耐火板の先端が対向する躯体壁面に衝突したり、耐火板と発泡性耐火形成材とが当接したりすることなく、上記間隔部で相対変位量を吸収しながらその変動に自由に対応することができる。
【0014】
また、火災が発生した場合には、いずれか一方の耐火板に設けている発泡性耐火形成材が加熱によって膨脹して火炎がこれらの耐火板に達する前に他方の耐火板に圧着し、上方に配しているエキスパンションジョイント側に通じる耐火板間の空間部を確実に閉塞することができると共に発泡性耐火形成材が加熱発泡によって断熱機能及び耐火機能を備えた発泡耐火層を形成して火炎や煙等がエキスパンションジョイント側に回り込むのを防止することができ、建築物の延焼を防ぐことができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、上記請求項1に記載の防火装置において、他方の躯体から突設している耐火板に代えて発泡性耐火形成材を設けてなるものであるから、装置全体の構造を一層簡素化することができるものであり、また、一方の躯体から突設している耐火板と他方の躯体から突設している発泡性耐火形成材との先端間が連続することなく上下に間隔を存した縁切り状態となっているため、上記請求項1に記載の防火装置と同様に、地震時に躯体間が相対変位しても、耐火板や発泡性耐火形成材がそれぞれの躯体と一体に独立的に変動して相対変位による変動の影響を受けることはなく、従って、躯体壁面に取付けている耐火板や発泡性耐火形成材の基端部に歪み応力等が生じることなく長期の使用に供することができる。
【0016】
さらに、一方の躯体壁面から片持ち状に突設している耐火板の先端と他方の躯体壁面との間、及び、他方の躯体壁面から片持ち状に突設している発泡性耐火形成材の先端と一方の躯体壁面との間に、それぞれ地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けていると共に、これらの耐火板と発泡性耐火形成材との対向面間に地震時に生じる躯体間の垂直方向の相対変位を許容する間隔を設けているので、地震によって隣接する躯体が水平方向、垂直方向に相対的に変動しても、耐火板の先端が対向する躯体壁面に衝突したり、耐火板と発泡性耐火形成材とが当接したりすることなく、上記間隔部で相対変位量を吸収しながらその変動に自由に対応することができる。
【0017】
また、火災が発生した場合には、他方の躯体から片持ち状に突設している上記発泡性耐火形成材が加熱によって膨脹して一方の躯体から片持ち状に突設している上記耐火板上に圧着し、従って、請求項1に記載の防火装置と同様に、上方に配しているエキスパンションジョイント側に通じる耐火板間の空間部を確実に閉塞することができると共に発泡性耐火形成材が加熱発泡によって断熱機能及び耐火機能を備えた発泡耐火層を形成して火炎や煙等がエキスパンションジョイント側に回り込むのを防止することができ、建築物の延焼を防ぐことができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、隣接する躯体における対向する壁面から発泡性耐火形成材を突設してなり、一方の躯体から突設している発泡性耐火形成材と他方の躯体から突設している発泡性耐火形成材との先端間が連続することなく上下に間隔を存した縁切り状態となっているため、上記請求項1、4に記載の防火装置と同様に、地震時に躯体間が相対変位しても、発泡性耐火形成材がそれぞれの躯体と一体に独立的に変動して相対変位による変動の影響を受けることはなく、従って、躯体壁面に取付けている発泡性耐火形成材の基端部に歪み応力等が生じることなく長期の使用に供することができる。
【0019】
さらに、隣接する躯体壁面からそれぞれ片持ち状に突設している発泡性耐火形成材の先端と、この先端に対向する躯体壁面との間に、それぞれ地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けていると共に、これらの発泡性耐火形成材の上下対向面間に地震時に生じる躯体間の垂直方向の相対変位を許容する間隔を設けているので、地震によって隣接する躯体が水平方向、垂直方向に相対的に変動しても、発泡性耐火形成材の先端が対向する躯体壁面に衝突したり、発泡性耐火形成材同士が当接したりすることなく、上記間隔部で相対変位量を吸収しながらその変動に自由に対応することができる。
【0020】
また、火災が発生した場合には、発泡性耐火形成材が加熱によって膨脹して互いに圧着し、従って、上記請求項1、4に記載の防火装置と同様に、上方に配しているエキスパンションジョイント側に通じる空間部を確実に閉塞することができると共に発泡性耐火形成材が加熱発泡によって断熱機能及び耐火機能を備えた発泡耐火層を形成して火炎や煙等がエキスパンションジョイント側に回り込むのを防止することができ、建築物の延焼を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明防火装置の簡略縦断正面図。
【図2】発泡性耐火形成材が加熱膨脹した状態の簡略縦断正面図。
【図3】本発明防火装置の別な実施例を示す簡略縦断正面図。
【図4】本発明防火装置の別な実施例を示す簡略縦断正面図。
【図5】本発明防火装置の別な実施例を示す簡略縦断正面図。
【図6】本発明防火装置の別な実施例を示す簡略縦断正面図。
【図7】本発明防火装置の別な実施例を示す簡略縦断正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1において、1、2は一定の間隙3を介して建築されている建築物の躯体であって、これらの躯体1、2の床面1a、2a間にエキスパンションジョイント10を架設状態に配設してこのエキスパンションジョイント10により上記間隙3を覆っていると共に、エキスパンションジョイント10の下方近傍部における上記間隙3内に、火災発生時にエキスパンションジョイント10側に火炎や煙が侵入するのを防止するための防火装置4が配設されている。なお、躯体1、2は、互いに独立していても或いはエキスパンションジョイント10以外の部分で接続されていてもよい。
【0023】
この防火装置4は、一方の躯体1の垂直な壁面1bから他方の躯体2の垂直な壁面2bに向かって水平に突設している一定幅を有する耐火板5と、この耐火板5から上方に一定間隔を存して他方の躯体2の垂直な壁面から一方の躯体1の垂直な壁面1bに向かって水平に突設している一定幅を有する耐火板6と、この耐火板6の先端側下面に先端側の上面を対向させている上記一方の躯体1の上面における上記他方の躯体2と一定の間隔を存して重なりあう部分に全長に亘って設けている一定厚みを有する発泡性耐火形成材7とから構成されている。
【0024】
具体的には、上記耐火板5、6は、鉄やアルミ、ステンレスなどの金属製の帯板材からなり、一定の厚みと上記間隙3の幅よりも短い一定幅を有していると共に、その長さ方向をそれぞれ躯体1、2の幅方向に向けた状態にして一方の耐火板5においては、その一方の長辺側の端部を一方の躯体1の壁面1bにネジ等により固着してこの躯体1から他方の躯体2に向かって水平片持ち状に突設してあり、他方の耐火板6においては、その他方の長辺側の端部を他方の躯体2の壁面2bにネジ等によって固着してこの躯体2から一方の躯体1に向かって水平片持ち状に突設してある。
【0025】
さらに、一方の躯体1の壁面1bから突出している上記一方の耐火板5の突出端(自由端)と他方の躯体2の壁面2bとの間には、地震時に発生する躯体1、2間の水平方向の相対変位を許容する間隔3aを設けて、躯体1、2間の間隙3が大きく狭まっても該耐火板5の突出端が対向する他方の躯体2の壁面2bに当接しないように構成してあり、同様に、他方の躯体2の壁面2bから突出している上記他方の耐火板6の突出端(自由端)と一方の躯体1の壁面1bとの間には、地震時に発生する躯体1、2間の水平方向の相対変位を許容する間隔3bを設けて、躯体1、2間の間隙3が大きく狭まっても該耐火板6の突出端が対向する一方の躯体1の壁面1bに当接しないように構成している。
【0026】
また、これらの耐火板5、6の幅は同一幅に形成されていると共に、一方の耐火板5の先端(突出端)から一方の躯体1の壁面1bに支持されている基端に向かって1/2幅部分の上方に、他方の耐火板6の先端(突出端)から基端に向かって1/2幅部分が一定の間隔を存して重なり合った状態で互いに平行に対向してあり、この重なり合った部分における下方に配設されている一方の耐火板5の上面に上記発泡性耐火形成材7を積層状態に取付けている。なお、上下に対向している耐火板5、6の重なり合う幅寸法は、これらの耐火板5、6の1/2幅部分に限定されることなく、それぞれの先端から1/3幅部分を間隔を存して重なり合わせていてもよく、要するに、火災発生時における加熱により、発泡性耐火形成材7が加熱膨脹した際に、上記耐火板5、6の上下対向面間を確実に閉塞し、且つ火炎等によって破壊し難い発泡耐火層を形成できればよい。
【0027】
一方の耐火板5の上面に設けているこの発泡性耐火形成材7の上面と他方の耐火板6の下面との間には、地震時に生じる躯体1、2間の垂直方向の相対変位を許容する間隔3cが設けられている。なお、発泡性耐火形成材7は他方の耐火板6の下面に配設しておいてもよいが、上記のように一方の耐火板5の上面に配設しておく方が安定した取付構造となり好ましい。
【0028】
発泡性耐火形成材7としては、加熱によって膨脹して難燃性を有する発泡耐火層を生成する材料が使用される。発泡性耐火形成材7としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び無機充填材を含有する樹脂組成物(A)、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び無機充填材を含有する樹脂組成物(B)が挙げられる。
【0029】
先ず、樹脂組成物(A)について説明する。エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、基本的にはエポキシ基をもつモノマーと硬化剤とを反応させることにより得られる。エポキシ樹脂の硬化方法は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。エポキシ基をもつモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、多官能のグリシジルエーテル型等のモノマーが用いられる。
【0030】
2官能のグリシジルエーテル型のモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型等のモノマーが用いられる。グリシジルエーテル型のモノマーとしては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のモノマーが用いられる。多官能のグリシジルエーテル型のモノマーとしては、例えば、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン・フェノール型等のモノマーが用いられる。これらのエポキシ基をもつモノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記硬化剤としては、重付加型又は触媒型のものが用いられる。重付加型の硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が用いられる。触媒型の硬化剤としては、例えば、三級アミン、イミダゾール類、ルイス酸、ルイス塩基等が用いられる。エポキシ樹脂は、加熱時に形成された炭化層(燃焼残渣)が発泡耐火層として機能する上に、架橋構造をとるため熱膨張後の形状保全性に優れている。
【0032】
リン化合物としては特に限定されず、例えば、赤リンや;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;以下に示す化学式(化1)で示される化合物等が用いられる。これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、及び、化学式(化1)で示される化合物が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0033】
【化1】

【0034】
式中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜16のアリール基を示す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を示す。
【0035】
赤リンは少量の添加で難燃効果を向上する。赤リンとしては、市販の赤リンを用いることもできるが、耐湿性、混錬時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。
【0036】
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「EXOLIT AP422」、「EXOLIT AP462」、住友化学工業社製「スミセーフP」、チッソ社製「テラージュC60」、「テラージュC70」、「テラージュC80」等が挙げられる。
【0037】
上記化学式(1)で表される化合物としては、特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルニチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィジ酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。なかでも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。上記リン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理することにより生成するグラファイト層間化合物であり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。上記のように酸処理された熱膨張性黒鉛は、更に、アンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和することによって、中和処理された熱膨張性黒鉛とする。
【0039】
上記脂肪族低級アミンとしては、特に限定されず、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。上記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、特に限定されず、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0040】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、所定の発泡耐火層が得られず、粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、後述の樹脂分と混練する際に分散性が悪くなり、物性の低下が避けられない。中和処理された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「フレームカットGREP−EG」、UCAR Carbon社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
【0041】
上記無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ等が挙げられる。
【0042】
上記無機充填剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記無機充填剤のうち、特に含水無機物と金属炭酸塩の併用が好ましい。含水無機物と金属炭酸塩は、骨材的な働きをするところから、燃焼残渣の強度向上や熱容量の増大に寄与するものと考えられる。
【0043】
上記水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、及び、加熱残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで残渣強度が向上する点で特に好ましい。水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広がり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0044】
上記炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩は、上記リン化合物との反応で膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0045】
上記無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。そして、この無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm未満になると二次凝集が起こり、分散性が悪くなる。上記無機充填剤の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましい。また、粒径が100μmを超えると、樹脂組成物の力学的物性が低下する。
【0046】
また、上記無機充填剤は、粒径の大きいものと粒径の小さいものを組み合わせて使用することがより好ましく、組み合わせて用いることによって、発泡性耐火形成材7の力学的性能を維持したまま、高充填化することが可能となる。無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムである粒径1μmの「ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、及び、炭酸カルシウムである粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工社製)等が挙げられる。
【0047】
上記樹脂組成物(A)において、リン化合物の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して50〜150重量部が好ましい。配合量が、50重量部未満になると燃焼残渣に十分な形状保持性が得られず、多くなると機械的物性の低下が大きくなり、使用に耐えられなくなる。
【0048】
上記樹脂組成物(A)において、中和処理された熱膨張性黒鉛の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して15〜100重量部が好ましい。配合量が、15重量部未満では、十分な厚さの発泡耐火層が形成されないため耐火性能が低下し、100重量部を超えると、機械的強度の低下が大きく、使用に耐えられなくなる。
【0049】
上記樹脂組成物(A)において、無機充填剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して30〜500重量部が好ましい。配合量が、30重量部未満では、熱容量の低下に伴い十分な耐火性が得られず、500重量部を超えると、機械的強度の低下が大きく、使用に耐えられなくなる。
【0050】
上記樹脂組成物(B)としては、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛並びに無機充填剤を含有するものが用いられる。熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質としては特に限定されず、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリブテン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ニトリルゴム、水添石油樹脂等が挙げられる。
【0051】
上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質の溶融粘度、柔軟性、粘着性等を調整するため、2種以上をブレンドしたものをベース樹脂として使用してもよい。
【0052】
上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質には、性能を阻害しない範囲で、架橋や変性が施されてもよい。熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質の架橋や変性を行う時期については特に限定されず、予め架橋、変性した熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質を用いてもよく、後述のリン化合物や無機充填剤等の他の成分を配合する際に同時に架橋や変性してもよい。また、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質に他の成分を配合した後に架橋や変性してもよく、この架橋や変性は、いずれの段階で行ってもよい。
【0053】
上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質の架橋方法については特に限定されず、通常行われる架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物等を使用する架橋方法、電子線照射による架橋方法等が挙げられる。上記樹脂組成物(B)で用いられるリン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛及び無機充填剤は、上記樹脂組成物(A)で用いられるものと同様である。
【0054】
上記樹脂組成物(B)において、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛の配合量(両者の合計量)は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して20〜500重量部が好ましい。両者の合計量が、20重量部未満になると十分な熱膨張性が得られず、500重量部を超えると均一な分散が困難となるため、均一な厚さに成形することが困難となる。
【0055】
また、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との重量比(熱膨張性黒鉛/リン化合物)は、0.01〜9が好ましい。熱膨張性黒鉛の比率が多くなると、燃焼時に膨張した黒鉛が飛散して十分な発泡耐火層が形成され難くなり、リン化合物の比率が多くなると十分な発泡耐火層が形成されなくなるため、十分な断熱性が得られなくなる。
【0056】
上記樹脂組成物(B)において、無機充填剤の配合量は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して50〜500重量部が好ましい。配合量が、50重量部未満になると十分な耐火性が得られず、500重量部を超えると機械的強度が低下する。この樹脂組成物(B)に粘着性が不足する場合は、例えば、上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質に粘着付与剤を添加することにより、粘着性を付与することができる。粘着付与剤としては特に限定されず、例えば、粘着付与樹脂、可塑剤、油脂類、高分子低重合物等が挙げられる。
【0057】
上記樹脂組成物(A)及び(B)には、その物性を損なわない範囲で、難燃剤、酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等が添加されてもよい。また、樹脂組成物(A)及び(B)は、上記各成分を、例えば、押出機、ニーダーミキサー、二本ロール、バンバリーミキサー等、公知の混練装置を用いて溶融混練することにより得ることができる。これらの樹脂組成物は、公知の方法で成形することにより、所定形状の発泡性耐火形成材7とすることができる。
【0058】
躯体1、2の床面1a、2a間に架設状態に配設される上記エキスパンションジョイント10の構造としては特に限定されないが、図に示すエキスパンションジョイント10は、上記間隙3を介して対向している隣接する躯体1、2の床面1a、2aにおける間隙3に臨む対向端部を断面L字状に切除して、その切除部に上端が全面的に開口している矩形枠状の支持部材11、12を嵌め込み状態に配設、固定すると共に、これらの支持部材11、12の対向する内側壁部11a 、12a の上端間にジョイントカバー13を幅方向に摺動移動可能に架設し、支持部材11、12の開口上端部を蓋板14、15によってそれぞれ閉止してこれらの蓋板14、15の外側端部を支持部材11、12の外側壁部11b 、12b の上端部にそれぞれ固着する一方、内側端部を支持部材11、12の内側壁部11a 、12a に固着することなく、これらの蓋板14、15の内側端部と、支持部材11、12の内側壁部11a 、12a の上端に装着した支持片11c 、12c とに
よって上記ジョイントカバー13を幅方向に摺動自在に挟持してなる構造としている。
【0059】
ジョイントカバー13は、図においては両端から上方に向かって緩やかな凸円弧状に湾曲しているが、支持片11c 、12c 間に架設している中央部分を水平板部に、支持片11c 、12
c から支持部材11、12内にそれぞれ突出している両側端部を斜め下方に向かって屈折した傾斜端部に形成しておいてもよい。なお、支持部材11、12の内側壁部11a 、12a の下端部に、上記間隙3内に配設した断面U字状に湾曲している樋状止水板16の両側端部をそれぞれ支持している取付凹部17、18を設けている。
【0060】
このように構成したエキスパンションジョイント10は、地震時において隣接する躯体1、2間が水平方向に相対的に変動した場合には、躯体1、2間の間隙3の変化に追随してその両側端部が支持片11c 、12c と蓋板14、15とによる挟持部を介して支持部材11、12の空間部内に出入りすることにより水平方向の変動を吸収し、隣接する躯体1、2間が上下方向に相対的に変動した場合には、支持片11c 、12c と蓋板14、15とによる挟持部を介して上下方向に移動することにより、上下方向の変動に自由に対応することができる。
【0061】
一方、このエキスパンションジョイント10の下方近傍部における隣接する躯体1、2の対向面間の間隙3内に配設されている上記防水装置4においては、地震時に、一方の躯体1の壁面1bから他方の躯体2に向かって水平状に突設している耐火板5は、他方の躯体2の壁面2bから一方の躯体1に向かって水平状に突設している耐火板6に関係なく一方の躯体1と一体に変動し、同様に、他方の躯体2の壁面2bから一方の躯体1に向かって水平状に突設している耐火板6は、一方の躯体1の壁面1bから他方の躯体2に向かって水平状に突設している上記耐火板5に関係なく他方の躯体2と一体に変動し、さらに、一方の躯体1の壁面1bから突設している上記耐火板5の先端と他方の躯体2の壁面2bとの間、及び、他方の躯体2の壁面2bから突設している上記耐火板6の先端と一方の躯体1壁面1bとの間に、それぞれ地震時に生じる躯体1、2間の水平方向の相対変位を許容する間隔3a、3bを設けているので、耐火板5、6が対向する躯体1、2の壁面1b、2bに当接することなく躯体1、2間の水平方向の相対変位による間隙3の寸法変化に対応させることができる。
【0062】
さらに、一方の耐火板5の上面における先部側に設けている発泡性耐火形成材7とこの発泡性耐火形成材7の上方に設けている他方の耐火板6との間に、地震時に生じる躯体1、2間の垂直方向の相対変位を許容する間隔3cを設けているので、この間隔3cによって垂直方向の相対変位量を吸収しながらその変動に自由に対応することができる。
【0063】
また、火災が発生した場合には、上記一方の耐火板5の上面に設けている発泡性耐火形成材7が図2に示すように、加熱により発泡、膨脹して断熱性、密閉性に優れた発泡耐火層7'を生成すると共にこの発泡耐火層7'が上記他方の耐火板6の下面に圧着して上方に配している上記エキスパンションジョイント10側に通じる上記間隔3cを閉塞し、火炎や煙がエキスパンションジョイント10側に侵入するのを防止することができる。
【0064】
図3は、別なエキスパンションジョイント用防火装置4Aを示すもので、上記実施例においては、隣接する躯体1、2の対向する壁面1b、2bに上下に一定間隔を存して一定幅を有する耐火板5、6をそれぞれ突設して、これらの耐火板5、6が上記間隔を存して互いに重なり合う先部における一方の耐火板5に、他方の耐火板6に対向させて発泡性耐火形成材7を設けているが、この実施例においては、隣接する躯体1、2の対向する壁面1b、2bからそれぞれ水平片持ち状に突設している耐火板5A、6Aにおいて、一方の躯体1の壁面1bから他方の躯体2の壁面2bに向かって突設した下側の耐火板5Aの先端を上方に屈曲させて上向き突片部5aに形成している一方、他方の躯体2の壁面2bから一方の躯体1の壁面1bに向かって突設した上側の耐火板6Aの先端を下方に屈曲させて下向き突片部6aに形成し、この下向き突片部6aの内面に一定厚みを有する帯板形状の発泡性耐火形成材7Aを全長に亘って取付けてなるものである。
【0065】
さらに、上記一方の耐火板5Aの突片部5aと他方の躯体2の壁面2bとの間、及び、上記他方の耐火板6Aの突片部6aと一方の躯体1の壁面1bとの間には、地震時に発生する躯体1、2間の水平方向の相対変位を許容する間隔3a、3bをそれぞれ設けていると共に、上向き突片部5aを有する一方の耐火板5Aと下向き突片部5aを有する他方の耐火板6Aとの間には、地震時に生じる躯体1、2間の垂直方向の相対変位を許容する間隔3cが設けられている。その他の構成については上記実施例と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0066】
このように構成したので、地震時に、水平方向の震動に対しては、一方の躯体1の壁面1bから他方の躯体2に向かって水平状に突設している耐火板5Aと、他方の躯体2の壁面2bから一方の躯体1に向かって水平状に突設している耐火板6Aは、対向する躯体1、2の壁面に当接することなく躯体1、2間の水平方向の相対変位による間隙3の寸法変化に対応して、それぞれ躯体1、2と一体に変動する。さらに、上下震動に対しては、耐火板5A、6Aとの間に、地震時に生じる躯体1、2間の垂直方向の相対変位を許容する間隔3cを設けているので、この間隔3cによって上下方向の相対変位量を吸収しながらその変動に自由に対応することができる。
【0067】
また、火災が発生した場合には、上記他方の耐火板6Aの下向き突片部6aの内面に設けている発泡性耐火形成材7Aが加熱により発泡、膨脹して断熱性、密閉性に優れた発泡耐火層(図示せず)を生成すると共にこの発泡耐火層の下端部が一方の耐火板5Aの上面に圧着して上記エキスパンションジョイント10側に通じる上記間隔3cを閉塞して火炎や煙がエキスパンションジョイント10側に侵入するのを防止することができる。なお、この発泡性耐火形成材7Aを一方の耐火板5Aの上向き突片部5aの内面に取付けておいてもよい。また、いずれにしても、発泡性耐火形成材7Aを取付けていない耐火板は、その先端部に突片部を必ずしも形成しておく必要はない。
【0068】
図4は、本発明エキスパンションジョイント用防火装置のさらに別な実施例を示すもので、図1に示した上記実施例においては、隣接する躯体1、2の対向する壁面1b、2bに上下に一定間隔を存して一定幅を有する耐火板5、6をそれぞれ突設して、これらの耐火板5、6が上記間隔を存して互いに重なり合う先部における一方の耐火板5に、他方の耐火板6に対向させて発泡性耐火形成材7を設けているが、この実施例においては、隣接する躯体1、2の対向する壁面1b、2bにおいて、一方の躯体1の壁面1bから耐火板5Bを突設しているが、他方の躯体2の壁面2bからは、耐火板を突設することなく、一定幅を有する厚板形状(肉厚)の発泡性耐火形成材7Bを突設し、この発泡性耐火形成材7Bの先部を上記耐火板5Bの先部に一定の間隔を存して対向させてなるものである。
【0069】
この防火装置4Bの構成をさらに詳しく説明すると、躯体1、2間に配設されている上記エキスパンションジョイント10の下方近傍部における躯体1、2の対向壁面1b、2b間の間隙3内において、一方の躯体1の壁面1bから他方の躯体2の壁面2bに向かって金属製の耐火板5Bを水平方向に片持ち状に突設する一方、この耐火板5Bから上方に一定間隔を存して他方の躯体2の壁面2bから一方の躯体1の壁面1bに向かって一定幅と厚みを有する発泡性耐火形成材7Bを突設してなり、上記耐火板5Bの突出端(先端)と他方の躯体2の壁面2bとの間に、地震時に発生する躯体1、2間の水平方向の相対変位を許容する間隔3aを設けてあり、同様に、他方の躯体2の壁面2bから突出している上記発泡性耐火形成材7Bの突出端(先端)と一方の躯体1の壁面1bとの間には、地震時に発生する躯体1、2間の水平方向の相対変位を許容する間隙3bを設けている。
【0070】
さらに、耐火板5Bの先部とこの先部上面に一定の間隙を存して重なっている発泡性耐火形成材7Bの先部下面の間の間隙3cは、地震時に生じる躯体1、2間の垂直方向の相対変位を許容する間隔、即ち、躯体1、2が相対的に変動しても発泡性耐火形成材7Bが耐火板5Bに当接することがない間隔に設定している。なお、この発泡性耐火形成材7Bを他方の躯体2の壁面2bから突設するには、発泡性耐火形成材7Bを接着剤によって壁面2bに固着してもよいが、壁面2bに水平凹溝を設けてこの凹溝に発泡性耐火形成材7Bの基部を挿嵌することにより、一方の躯体1の壁面1bに向かって水平方向に片持ち状に突設してもよく、或いは、壁面2bに取付けた適宜な支持金具によって発泡性耐火形成材7Bを固定、支持させておいてもよい。その他の構成については上記実施例と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0071】
このように構成したので、地震時に、水平方向の震動に対しては、一方の躯体1の壁面1bから他方の躯体2に向かって水平状に突設している耐火板5Bと、他方の躯体2の壁面2bから一方の躯体1に向かって水平状に突設している発泡性耐火形成材7Bは、対向する躯体1、2の壁面に当接することなく躯体1、2間の水平方向の相対変位による間隙3の寸法変化に対応して、それぞれ躯体1、2と一体に変動する。さらに、上下震動に対しては、耐火板5Bと発泡性耐火形成材7Bとの間に、地震時に生じる躯体1、2間の垂直方向の相対変位を許容する間隔3cを設けているので、この間隔3cによって上下方向の相対変位量を吸収しながらその変動に自由に対応することができる。
【0072】
また、火災が発生した場合には、上記他方の躯体2の壁面2bから突設している発泡性耐火形成材7Bが加熱により発泡、膨脹して断熱性、密閉性に優れた発泡耐火層(図示せず)を生成すると共にこの発泡耐火層が一方の躯体1の壁面1bから突設している上記耐火板5B上に圧着し、上記エキスパンションジョイント10側に通じる上記間隔3cを閉塞して火炎や煙がエキスパンションジョイント10側に侵入するのを防止することができる。
【0073】
図5は、上記図4で示したエキスパンションジョイント用防火装置を変形した実施例を示すもので、この防火装置4Cは、耐火板を使用することなく隣接する躯体1、2における対向する壁面1b、2bからそれぞれ一定幅を有する厚板形状の発泡性耐火形成材7C、7Dを突設してなるものである。
【0074】
具体的には、一方の躯体1の壁面1bから他方の躯体2の壁面2bに向かって発泡性耐火形成材7Cを水平方向に片持ち状に突設する一方、この発泡性耐火形成材7Cから上方に一定間隔を存して他方の躯体2の壁面2bから一方の躯体1の壁面1bに向かって一定幅と厚みを有する発泡性耐火形成材7Dを突設してなり、これらの発泡性耐火形成材7C、7Dと、該発泡性耐火形成材7C、7Dの先端面が対向する躯体1、2の壁面1b、2bとの間に地震時に発生する躯体1、2間の水平方向の相対変位を許容する間隔3a、3bをそれぞれを設けている。
【0075】
さらに、一方の発泡性耐火形成材7Cの先部とこの先部上面に一定の間隙を存して重なっている他方の発泡性耐火形成材7Dの先部下面の間には、地震時に生じる躯体1、2間の垂直方向の相対変位を許容する間隔、即ち、躯体1、2が垂直方向に相対的に変動しても発泡性耐火形成材7C、7Dの対向面同士が当接することがない間隔3cに設定している。その他の構成については上記実施例と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0076】
このように構成したので、地震時に、水平方向の震動に対しては、隣接する躯体1、2の対向する壁面1b、2bからそれぞれ水平片持ち状に突設している上記発泡性耐火形成材7C、7Dの先端が対向する対向する躯体1、2の壁面に当接することなく躯体1、2間の水平方向の相対変位による間隙3の寸法変化に対応して、それぞれ躯体1、2と一体に変動する。さらに、上下震動に対しては、上下に重なりあったこれらの発泡性耐火形成材7C、7Dとのとの間に、地震時に生じる躯体1、2間の垂直方向の相対変位を許容する間隔3cを設けているので、この間隔3cによって上下方向の相対変位量を吸収しながらその変動に自由に対応することができる。
【0077】
また、火災が発生した場合には、上下に間隔3cを介して重なりあっているこれらの発泡性耐火形成材7C、7Dが加熱により発泡、膨脹して断熱性、密閉性に優れた発泡耐火層を生成すると共にこれらの発泡耐火層の上下面が互いに圧着して上記エキスパンションジョイント10側に通じる間隔を閉塞し、火炎や煙がエキスパンションジョイント10側に侵入するのを防止することができる。なお、以上のいずれの実施例においても、耐火板5、6や発泡性耐火形成材7を躯体の壁面から水平状に突設しているが、やや斜め方向に向けた状態で突設しておいてもよく、要するに、地震時に隣接する躯体1、2の水平方向、垂直方向の変動を許容することができればよい。
【0078】
図6は、別なエキスパンションジョイント用防火装置4Dを示すもので、図1の実施例においては、隣接する躯体1、2の対向する壁面1b、2bに上下に一定間隔を存して一定幅を有する耐火板5、6をそれぞれ突設して、これらの耐火板5、6の先端部同士を上下方向に重なり合った構造をとっていたが、一方の躯体1の壁面1bから突出している一方の耐火板5Cの突出端面(先端面)と、他方の躯体2の壁面2bから突出している他方の耐火板6Cの突出端面(先端面)とが同一垂直面上に位置した状態とし、耐火板5Cと耐火板6Cとが上下方向に重なり合わないようにし、下方の耐火板5Cの先端側の上面に発泡性耐火形成材7Dを積層状態に取り付けてなるものである。即ち、耐火板5Cと耐火板6Cとが上下方向に重なり合わないように構成されている以外は、図1の耐火板5Cと耐火板6Cと同様の構成を有している。
【0079】
さらに、一方の躯体1の壁面1bから突出している上記一方の耐火板5Cの突出端(自由端)と他方の躯体2の壁面2bとの間には、地震時に発生する躯体1、2間の水平方向の相対変位を許容する間隔3aを設けて、躯体1、2間の間隙3が大きく狭まっても耐火板5Cの突出端が対向する他方の躯体2の壁面2bに当接しないように構成してあり、同様に、他方の躯体2の壁面2bから突出している上記他方の耐火板6Cの突出端(自由端)と一方の躯体1の壁面1bとの間には、地震時に発生する躯体1、2間の水平方向の相対変位を許容する間隔3bを設けて、躯体1、2間の間隙3が大きく狭まっても該耐火板6Cの突出端が対向する一方の躯体1の壁面1bに当接しないように構成している。
【0080】
一方の耐火板6Cの上面に設けているこの発泡性耐火形成材7Dの上面と他方の耐火板6の下面との間には、地震時に生じる躯体1、2間の垂直方向の相対変位を許容する間隔3cが設けられている。なお、発泡性耐火形成材7Dは他方の耐火板6の下面に配設しておいてもよいが、上記のように一方の耐火板6Cの上面に配設しておく方が安定した取付構造となり好ましい。
【0081】
このように構成したので、地震時に、水平方向の震動に対しては、一方の躯体1の壁面1bから他方の躯体2に向かって水平状に突設している耐火板5Cと、他方の躯体2の壁面2bから一方の躯体1に向かって水平状に突設している耐火板6Cは、対向する躯体1、2の壁面に当接することなく躯体1、2間の水平方向の相対変位による間隙3の寸法変化に対応して、それぞれ躯体1、2と一体に変動する。さらに、上下震動に対しては、耐火板5C、6Cとの間に、地震時に生じる躯体1、2間の垂直方向の相対変位を許容する間隔3cを設けているので、この間隔3cによって上下方向の相対変位量を吸収しながらその変動に自由に対応することができる。
【0082】
また、火災が発生した場合には、上記一方の耐火板5Cの先端部の上面に設けている発泡性耐火形成材7Dが加熱により発泡、膨脹して断熱性、密閉性に優れた発泡耐火層(図示せず)を生成すると共にこの発泡耐火層の他端面が他方の耐火板6Cの先端面6C’に圧着して上記エキスパンションジョイント10側に通じる上記間隔3cを閉塞して火炎や煙がエキスパンションジョイント10側に侵入するのを防止することができる。なお、この発泡性耐火形成材7Dを他方の耐火板6Cの先端側の下面に取付けておいてもよい。発泡耐火層の他端面が他方の耐火板6Cの先端面6C’に圧着するとは、発泡耐火層の他端面が他方の耐火板6Cの先端面6C’に当接している場合や、発泡耐火層が他方の耐火板6Cの先端部に食い込んでいる場合を含む。
【0083】
図6に示した防火装置4Dでは、一方の耐火板5Cの突出端面(先端面)と、他方の耐火板6Cの突出端面(先端面)とが同一垂直面上に位置した状態を示したが、図7に示したように、耐火板5Cの先端部5C’が躯体2に向かって延びて発泡性耐火形成材7Dの他端面から躯体2に向かって突出していてもよい。
【0084】
また、耐火板5C、6Cの先端部に取り付けられた発泡性耐火形成材7Dが加熱によって発泡、膨張してなる発泡耐火層が、発泡性耐火形成材7Dを取り付けている耐火板5C、6Cとは別の耐火板6C、5Cの突出端面に圧着すれば、一方の耐火板5C又は他方の耐火板6Cの何れか一方或いは双方の突出幅が短く形成されて、耐火板5Cの突出端面(先端面)と耐火板6Cの突出端面(先端面)との間に上下方向に隙間が形成されていてもよい。
【0085】
上記エキスパンションジョイント用防火装置では、火災時に耐火板から放射される輻射熱がエキスパンションジョイント10に伝達されることがある。この耐火板からのエキスパンションジョイント10への輻射熱の伝達を防止するために、耐火板が露出した部分、即ち、耐火板における発泡性耐火形成材を設けていない表面に、好ましくは、耐火板が露出した部分の全面、即ち、耐火板における発泡性耐火形成材を設けていない表面全面に、被覆層を形成しておいてもよい。また、躯体からの耐火板の突出方向に対して交差する方向、好ましくは直交する方向から見たとき、耐火板の上下面の何れかの面に被覆層が形成されていることが好ましい。
【0086】
このような被覆層は、例えば、エマルジョン系塗料又は接着剤にリン化合物、窒素含有化合物及び低融点ガラスを含有させてなるコート剤、発泡性耐火形成材を溶剤に溶解又は分散させてなるコート剤などを耐火板の表面に汎用の要領で塗布、乾燥させて形成し、又は、耐火板の表面に耐火シートを貼付することによって形成することができる。なお、耐火シートとしては、例えば、上記発泡性耐火形成材をシート状に成形加工してなるシートなどが挙げられる。
【0087】
先ず、エマルジョン系塗料又は接着剤にリン化合物、窒素含有化合物及び低融点ガラスを含有させてなるコート剤について説明する。エマルジョン系塗料としては、例えば、ポリエステル系塗料、アクリル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料、酢酸ビニル系塗料、ポリブタジエン系塗料、アルキッド樹脂系塗料、塩化ビニル系塗料、メラミン樹脂系塗料などが挙げられ、ポリエステル系塗料、アクリル系塗料、エポキシ系塗料が好ましい。
【0088】
接着剤としては、例えば、クロロプレンゴム系、SBR系、アイオノマー系、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系の粘着剤が挙げられ、クロロプレンゴム系粘着剤が好ましい。
【0089】
リン化合物は、発泡剤としての役割及び脱水炭化促進の役割を有する。リン化合物としては、例えば、リン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、リン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ポリリン酸アミド、トリフェニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェートなどが挙げられ、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミンが好ましい。
【0090】
リン化合物は、窒素含有樹脂によりマイクロカプセル化されていることが、エマルジョン系塗料又は粘着剤に含有させる上でリン化合物の耐水性を高めるという点で好ましい。
【0091】
窒素含有化合物は、炭化発泡剤としての役割を有する。窒素含有化合物としては、1つ以上の水酸基を有するものが好ましく、このような化合物として、例えば、メラミンシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ニトリロトリスメチレンホスホン酸メラミン塩、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素などが挙げられ、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが好ましい。
【0092】
低融点ガラスは、炭化物安定化の役割を有する。低融点ガラスとしては、例えば、B23系、Na2O系、K2O系、P25系、Al23系、BaO系、CaO系、MgO系、Li2O系、SrO系、CuO系低融点ガラスなどが挙げられ、B23系、Na2O系、P25系低融点ガラスが好ましい。
【0093】
低融点ガラスの屈伏点は300〜750℃が好ましく、500〜650℃がより好ましく、また、低融点ガラスとしては、屈伏点における体積膨張係数の大きいものが好ましい。低融点ガラスは、フレーク状または粉末状のガラスフリットの形態でコート剤に配合することが好ましい。
【0094】
コート剤中におけるリン化合物の含有量は、エマルジョン系塗料又は粘着剤の固形分100重量部に対して20〜300重量部が好ましく、100〜200重量部がより好ましい。
【0095】
コート剤中における窒素含有化合物の含有量は、エマルジョン系塗料又は粘着剤の固形分100重量部に対して5〜300重量部が好ましく、50〜200重量部がより好ましい。
【0096】
コート剤中における低融点ガラスの含有量は、エマルジョン系塗料又は粘着剤の固形分100重量部に対して5〜100重量部が好ましく、40〜80重量部がより好ましい。
【0097】
コート剤には、必要に応じて炭化触媒などの任意成分を含有させてもよい。炭化触媒としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硼酸亜鉛、硫酸マンガン、酢酸マンガン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0098】
次に、発泡性耐火形成材を溶剤に溶解又は分散させてなるコート剤について説明する。発泡性耐火形成材を溶媒に溶解又は分散させてなるコート剤は、上述した発泡性耐火形成材を溶剤に公知の混練装置又は攪拌装置を用いて溶解又は分散させることによって得られる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、水などが挙げられる。
【0099】
また、上述したエキスパンションジョイント用防火装置は、水平方向に所定間隔を存して配設された躯体間に形成されたエキスパンションジョイントの防火装置を説明したが、本発明のエキスパンションジョイント用防火装置は、壁などに形成された通気孔の上下縁部などのような上下方向に所定間隔を存して配設された躯体間に形成されたエキスパンションジョイントの近傍部における躯体の対向面間の隙間部に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1、2 躯体
1b、2b 壁面
3 間隙
3a、3b、3c 間隔
4 防火装置
5、6 耐火板
7 発泡性耐火形成材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物躯体間に配設されたエキスパンションジョイントの下方近傍部における対向する躯体の対向壁面間の間隙部に配設する防火装置であって、一方の躯体に、この躯体の壁面から他方の躯体に向かって水平状に突出し、且つ、その突出端と他方の躯体の壁面との間に地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けてなる金属製の耐火板を突設すると共に、他方の躯体に、一方の躯体の壁面から突出した上記耐火板から上下方向に一定の間隔を存して、該躯体の壁面から一方の躯体に向かって水平状に突出し、且つ、その突出端と一方の躯体の壁面との間に地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けてなる金属製の耐火板を突設してあり、さらに、上記いずれかの耐火板に、加熱によって膨脹して他方の耐火板に圧着する発泡性耐火形成材を設けていることを特徴とするエキスパンションジョイント用防火装置。
【請求項2】
一方の躯体の壁面から突設している耐火板と、他方の躯体の壁面から突設している耐火板との一部を地震時に生じる躯体間の垂直方向の相対変位を許容する間隔を存して上下に対向させてあり、この対向面のいずれか一方に、加熱膨脹時に他方の面に圧着する発泡性耐火形成材を設けていることを特徴とする請求項1に記載のエキスパンションジョイント用防火装置。
【請求項3】
一方の躯体の壁面から突設している耐火板と、他方の躯体の壁面から突設している耐火板とのいずれか一方の耐火板に、加熱膨脹時に他方の耐火板の突出端面に圧着する発泡性耐火形成材を設けていることを特徴とする請求項1に記載のエキスパンションジョイント用防火装置。
【請求項4】
建築物躯体間に配設されたエキスパンションジョイントの下方近傍部における対向する躯体の対向壁面間の間隙部に配設する防火装置であって、一方の躯体に、この躯体の壁面から他方の躯体に向かって水平状に突出し、且つ、その突出端と他方の躯体の壁面との間に地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けてなる金属製の耐火板を突設すると共に、他方の躯体に、一方の躯体の壁面から突出している上記耐火板から上方に地震時に生じる躯体間の垂直方向の相対変位を許容する間隔を存して、その壁面から一方の躯体に向かって水平状に突出し、且つ、その突出端と一方の躯体の壁面との間に地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けてなる発泡性耐火形成材を突設してなり、この発泡性耐火形成材が加熱によって膨脹した際に、上記耐火板の上面に圧着するように構成したことを特徴とするエキスパンションジョイント用防火装置。
【請求項5】
建築物躯体間に配設されたエキスパンションジョイントの下方近傍部における対向する躯体の対向壁面間の間隙部に配設する防火装置であって、一方の躯体に、この躯体の壁面から他方の躯体に向かって水平状に突出し、且つ、その突出端と他方の躯体の壁面との間に地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けてなる発泡性耐火形成材を突設すると共に、他方の躯体に、一方の躯体の壁面から突設している上記発泡性耐火形成材から上方に地震時に生じる躯体間の垂直方向の相対変位を許容する間隔を存してその壁面から一方の躯体に向かって水平状に突出し、且つ、その突出端と一方の躯体の壁面との間に地震時に生じる躯体間の水平方向の相対変位を許容する間隔を設けてなる発泡性耐火形成材を突設してなり、これらの発泡性耐火形成材が加熱によって膨脹した際に、互いにその対向面を圧着させるように構成したことを特徴とするエキスパンションジョイント用防火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−58346(P2011−58346A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238125(P2009−238125)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】