説明

エスカレータの踏段

【課題】スカートガードとの間に挟まれた異物を容易に引き抜くことができるエスカレータの踏段を得る。
【解決手段】踏面110が形成された踏面部111を有し、側面がスカートガード4に対向しながら移動する踏段本体1と、踏面部111とスカートガード4との間に配置されるように踏段本体1に支持され、踏面110の縦方向に延びた軸部材22と、軸部材22に設けられ、軸部材22を中心に回転する円筒形状のブラシ23とを備え、ブラシ23は、軸部材22よりもスカートガード4側にあるブラシ23の部分が軸部材22の上方を通って軸部材22よりも踏面部111側の位置に移動する方向にのみ回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗降口間を循環移動するエスカレータの踏段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、踏板を有し、側面がスカートガードに対向しながら移動する踏段本体と、踏板の側面に固定され、踏板の側面からスカートガードに向かって延びたブラシとを備えたエスカレータの踏段が知られている。ブラシは、異物が踏段本体とスカートガードとの間に上方から進入することを抑制する。これにより、踏段本体とスカートガードとの間に異物が挟まれることが抑制される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−44720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ブラシが踏板の側面に固定されているので、ブラシとスカートガードとの間に異物が挟まれた場合に、ブラシとスカートガードとの間から異物を上方へ引き抜くには大きな力が必要となってしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は、スカートガードとの間に挟まれた異物を容易に引き抜くことができるエスカレータの踏段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエスカレータの踏段は、踏面が形成された踏面部を有し、側面がスカートガードに対向しながら移動する踏段本体と、前記踏面部と前記スカートガードとの間に配置されるように前記踏段本体に支持され、前記踏面の縦方向に延びた軸部材と、前記軸部材に設けられ、前記軸部材を中心に回転する回転部材とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエスカレータの踏段によれば、踏面が形成された踏面部を有し、側面がスカートガードに対向しながら移動する踏段本体と、踏面部とスカートガードとの間に配置されるように踏段本体に支持され、踏面の縦方向に延びた軸部材と、軸部材に設けられ、軸部材を中心に回転する回転部材とを備えているので、回転部材とスカートガードとの間に異物が挟まれた場合に、回転部材とスカートガードとの間に挟まれた異物を乗客が引き抜こうとすると、異物が引き抜かれる方向に回転部材が回転する。これにより、エスカレータの踏段とスカートガードとの間に挟まれた異物を容易に引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエスカレータの踏段を示す側面図である。
【図2】図1のエスカレータの踏段を示す平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った矢視断面図である。
【図4】図3のエスカレータの踏段がスカートガードに沿って移動する様子を示す断面図である。
【図5】図3のデマケーション部材を示す側面図である。
【図6】エスカレータの踏段とスカートガードとの間に乗客のスカートが挟まった状態を示す正面図である。
【図7】乗客の足がブラシに載った状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエスカレータの踏段を示す側面図、図2は図1のエスカレータの踏段を示す平面図、図3は図2のIII−III線に沿った矢視断面図である。図において、エスカレータの踏段は、踏段本体1と、踏段本体1の幅方向両端部であって踏段本体1の上部に設けられた一対のデマケーション部材2と、踏段本体1の下部に設けられた一対の追従ローラ3とを備えている。
【0010】
踏段本体1は、踏板11と、踏板11の後段側端部に設けられたライザ12と、踏板11およびライザ12に接続されたブラケット13とを有している。踏板11は、踏面110が形成された踏面部111と、踏面部111の両側面に形成され各デマケーション部材2を支持する一対のデマケーション部材支持部112とを有している。踏面部111は、一対のデマケーション部材2の間に配置されている。
【0011】
踏面110には、踏段本体1が乗降口にあるときに、乗降口のランディングプレート(図示せず)に取り付けられている櫛板(図示せず)と噛み合う複数本の溝113が形成されている。溝113は、踏面110の縦方向に延びて形成されている。なお、この例では、踏面110の縦方向とは、踏面110の幅方向に直交する方向であって、踏面110に水平な方向とする。また、溝113は、踏面110の幅方向について等間隔に並べて配置されている。
【0012】
図4は図3のエスカレータの踏段がスカートガード4に沿って移動する様子を示す断面図、図5は図3のデマケーション部材2を示す側面図である。デマケーション部材2は、デマケーション部材支持部112に支持されたブラシ台21と、ブラシ台21に回転自在に支持された軸部材22と、軸部材22に設けられた円筒形状のブラシ(回転部材)23と、ブラシ23の回転を規制するラチェット装置24とを有している。ブラシ台21は、ボルト(図示せず)を用いて踏板11に対して着脱可能となっている。ブラシ台21を踏板11に着脱することにより、デマケーション部材2全体が踏板11に対して着脱される。したがって、デマケーション部材2のみを交換することができる。
【0013】
ブラシ台21は、デマケーション部材支持部112の上に載せられた基部211と、基部211から上方に延びて踏面部111の側面に隣り合う側壁部212と、基部211から上方に延びて軸部材22を回転自在に支持する一対の軸部材支持部213とを有している。軸部材支持部213は、基部211における踏面110の縦方向についての両端部に配置されている。側壁部212および軸部材支持部213のそれぞれの上端面は、踏面110と同一平面上に配置されている。側壁部212および軸部材支持部213は、基部211に固定されている。基部211には、上方に開口した凹部214が形成されている。基部211とスカートガード4との間の距離は、デマケーション部材支持部112とスカートガード4との間の距離と同一となっている。
【0014】
軸部材22は、ブラシ台21を介して踏段本体1に支持されている。軸部材22は、踏面110の縦方向に延びて配置されている。軸部材22は、踏面部111とスカートガード4との間に配置されている。軸部材22は、ブラシ台21に対して着脱可能となっている。軸部材22をブラシ台21に着脱することにより、ブラシ23も同時にブラシ台21に対して着脱される。したがって、軸部材22およびブラシ23のみを交換することができる。
【0015】
ブラシ23は、ブラシ23の中心を軸部材22が通るように、軸部材22に固定されている。ブラシ23は、踏面部111とスカートガード4との間に配置されている。ブラシ23の毛は、軸部材22を中心に放射状に延びている。ブラシ23は、軸部材22およびブラシ台21を介して、踏段本体1に回転可能に支持されている。ブラシ23は、軸部材22が回転することにより、軸部材22を中心に回転する。
【0016】
ブラシ23は、ブラシ23の上部が踏面110よりも上方に位置するように配置されている。ブラシ23は、踏面110よりも上方に位置するブラシ23の部分が下方に押圧された場合に踏面110よりも下方に位置するように容易に弾性変形するようになっている。ブラシ23は、基部211およびデマケーション部材支持部112とスカートガード4との間の距離がブラシ23とスカートガード4との間の距離よりも僅かに大きくなるように配置されている。ブラシ23は、スカートガード4から離れて配置されている。つまり、ブラシ23は、スカートガード4と非接触となっている。
【0017】
ラチェット装置24は、軸部材22に固定されたラチェット歯車241と、基部211に設けられラチェット歯車241と係合するラチェット爪242と、凹部214に収容されたスプリング243とを有している。
【0018】
ラチェット爪242は、ラチェット歯車241と係合可能となる係合可能位置と、ラチェット歯車241との係合が不能となる係合不能位置との間で変位する。スプリング243は、ラチェット爪242の位置が係合可能位置となるように、ラチェット爪242を付勢する。
【0019】
係合可能位置にあるラチェット爪242は、軸部材22よりも下方にあるラチェット歯車241の部分が軸部材22よりも踏面部111側の領域を通って軸部材22よりも上方の位置に移動する方向にラチェット歯車241が回転しようとする場合に、ラチェット歯車241と係合する。ラチェット爪242がラチェット歯車241と係合することにより、ラチェット歯車241の回転が防止される。これにより、軸部材22よりもスカートガード4側にあるブラシ23の部分が軸部材22の下方を通って軸部材22よりも踏面部111側の位置に移動する方向にブラシ23が回転することが規制される。
【0020】
一方、ラチェット爪242は、軸部材22よりも下方にあるラチェット歯車241の部分が軸部材22よりもスカートガード4側の領域を通って軸部材22よりも上方の位置に移動する方向にラチェット歯車241が回転しようとする場合に、ラチェット歯車241と係合しない。この場合、ラチェット歯車241は、スプリング243の付勢力に逆らって、ラチェット爪242を下方へ押圧する。したがって、ラチェット爪242の位置が係合不能位置となり、ラチェット歯車241が回転可能となる。これにより、軸部材22よりもスカートガード4側にあるブラシ23の部分が軸部材22の上方を通って軸部材22よりも踏面部111側の位置に移動する方向、つまり、図4の矢印Aの方向にブラシ23が回転可能となる。ラチェット爪242は、ラチェット歯車241による下方への押圧力がなくなると、スプリング243の付勢力により上方へ移動して、ラチェット歯車241の位置が係合可能位置となる。
【0021】
次に、動作について説明する。図6はエスカレータの踏段とスカートガード4との間に乗客のスカートが挟まった状態を示す正面図である。エスカレータを利用する乗客は、移動手摺(図示せず)を把持しようとして、踏段の踏面110の幅方向端部に乗る。エスカレータが上昇運転中に、例えば、乗客のスカートがブラシ23とスカートガード4との間に進入すると、乗客のスカートがブラシ23とスカートガード4との間に挟まれる。このとき、乗客は、自分のスカートをブラシ23とスカートガード4との間から引き抜こうと、スカートを上方に持ち上げる。
【0022】
乗客のスカートへの引き抜き力により、ブラシ23は、ブラシ23のスカートガード4側の部分が軸部材22の上方を通って軸部材22よりも踏面部111側の位置に移動する方向に回転する。これにより、乗客は、自分のスカートをブラシ23とスカートガード4との間から容易に引き抜くことができる。
【0023】
図7は乗客の足がブラシ23に載った状態を示す正面図である。乗客の靴がブラシ23の上に載った場合には、ブラシ23が弾性変形する。これにより、ブラシ23の上に載っている乗客の靴の部分が踏面110よりも下方へ移動する。これにより、乗客に対して、踏段の幅方向端部に乗客の靴が載せられていることについての注意喚起を行うことができる。したがって、乗客は、自分の靴を踏段の幅方向端部から幅方向中央部に向かって移動させる。その結果、踏段とスカートガード4との間に靴が挟まれてしまうことを予防することができる。
【0024】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るエスカレータの踏段によれば、踏面110が形成された踏面部111を有し、側面がスカートガード4に対向しながら移動する踏段本体1と、踏面部111とスカートガード4との間に配置されるように踏段本体1に支持され、踏面110の縦方向に延びた軸部材22と、軸部材22に設けられ、軸部材22を中心に回転するブラシ23とを備えているので、ブラシ23とスカートガード4との間に異物が挟まれた場合に、ブラシ23とスカートガード4との間に挟まれた異物を乗客が引き抜こうとすると、異物が引き抜かれる方向にブラシ23が回転する。これにより、エスカレータの踏段とスカートガード4との間に挟まれた異物を容易に引き抜くことができる。
【0025】
また、ブラシ23は、軸部材22よりもスカートガード4側にあるブラシ23の部分が軸部材22の上方を通って軸部材22よりも踏面部111側の位置に移動する方向にのみ回転するので、異物がブラシ23とスカートガード4との間に引き込まれる方向にブラシ23が回転することが防止される。その結果、ブラシ23とスカートガード4との間に乗客のスカート等の異物が挟まることをさらに抑制することができる。
【0026】
また、円筒形状のブラシ23が、軸部材22に設けられて、軸部材22を中心に回転するので、乗降口のランディングプレートや櫛板を変更する必要がなく、従来のエスカレータに簡単に適用することができる。また、乗客の靴がブラシ23の上に載った場合には、ブラシ23が弾性変形して、乗客に対して、踏段の幅方向端部に乗客の靴が載せられていることについての注意喚起を行うことができる。
【0027】
また、ブラシ23は、踏段本体1に対して着脱可能となっているので、ブラシ23の長期間の使用によりブラシ23が消耗した場合に、踏段本体1を交換することなく、ブラシ23を交換することができる。これにより、エスカレータの踏段の保守の作業性や経済性を向上させ、また、省資源化を図ることができる。
【0028】
また、ブラシ23は、スカートガード4から離れて配置されているので、ブラシ23がスカートガード4に接触することが防止される。これにより、ブラシ23がスカートガード4に接触することにより発生する摺動音の発生を防止することができる。
【0029】
なお、上記実施の形態1では、回転部材として、ブラシ23を例に説明したが、ブラシ23に限らず、その他の部材であってもよい。回転部材として、スポンジ等の弾性部材を用いる場合には、ランディングプレートや櫛板を変形させる必要がない。
【0030】
また、上記実施の形態1では、デマケーション部材支持部112にブラシ台21が支持される構成について説明したが、デマケーション部材支持部112を削除して、踏面部111にブラシ台21を固定する構成であってもよい。
【0031】
また、上記実施の形態1では、ブラシ23の回転を規制するラチェット装置24を備えたエスカレータの踏段の構成について説明したが、ラチェット装置24を備えなくてもよい。また、ラチェット装置24に限らず、その他の装置により、ブラシ23の回転を規制してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 踏段本体、2 デマケーション部材、3 追従ローラ、4 スカートガード、11 踏板、12 ライザ、13 ブラケット、21 ブラシ台、22 軸部材、23 ブラシ(回転部材)、24 ラチェット装置、110 踏面、111 踏面部、112 デマケーション部材支持部、113 溝、211 基部、212 側壁部、213 軸部材支持部、214 凹部、241 ラチェット歯車、242 ラチェット爪、243 スプリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏面が形成された踏面部を有し、側面がスカートガードに対向しながら移動する踏段本体と、
前記踏面部と前記スカートガードとの間に配置されるように前記踏段本体に支持され、前記踏面の縦方向に延びた軸部材と、
前記軸部材に設けられ、前記軸部材を中心に回転する回転部材とを備えたことを特徴とするエスカレータの踏段。
【請求項2】
前記回転部材は、前記軸部材よりも前記スカートガード側にある前記回転部材の部分が前記軸部材の上方を通って前記軸部材よりも前記踏面部側の位置に移動する方向にのみ回転することを特徴とする請求項1に記載のエスカレータの踏段。
【請求項3】
前記回転部材は、円筒形状のブラシであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエスカレータの踏段。
【請求項4】
前記回転部材は、前記踏段本体に対して着脱可能となっていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のエスカレータの踏段。
【請求項5】
前記回転部材は、前記スカートガードから離れて配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のエスカレータの踏段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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