説明

エスカレーター踏段位置計測装置および方法

【課題】 エスカレーターの運転・停止を繰り返したり途中で運転方向を逆転しても、特定踏段位置を正確に計測する装置を提供する。
【解決手段】 装置は、エスカレーターの1周分の踏段数を入力する入力部24と、踏段の進行方向に関して上流側および下流側に近傍配置され、踏段の踏板金属部を検出する一対の近接センサ10a,10bと、一対の近接センサのセンサ信号に基づいて、これら近接センサ近傍を通過する踏段の数および踏段の通過方向に対応付けたカウント値を算出するカウンタ22と、特定踏段がエスカレーターのレールの基準位置を通過した時点の基準カウント値、現在の特定踏段のカウント値、および入力部を介して入力されたエスカレーターの1周分の踏段数に基づいて、特定踏段の現在の位置を計測する特定踏段位置計測部28と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検・保守の目的でエスカレーターの踏段位置を計測するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターの特定の踏段内に音や振動などの異常を検出するセンサを設け、エスカレーターを運転させながら特定踏段の位置近傍で異常が発生していることを検出し、これにより異常の所在を特定する方法が、例えば特許文献1,2に記載されている。
【特許文献1】特開平7−133088号公報
【特許文献2】特開2002−68657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、特定踏段内に受光素子を設けるとともに発光素子をレールの特定箇所近傍に取り付けることで、特定踏段位置が発光素子近傍に位置することを検出する。エスカレーターが予め決められた運転方向に一定速度で連続していれば、特定踏段の位置を計測できるが、エスカレーターの運転・停止を繰り返したり途中で運転方向を逆転させたりすると、特定踏段の位置を計測できない。
【0004】
なお、特許文献2では、主枠の特定箇所に位置信号受信器、特定踏段内に位置信号発信器を設けて特定踏段の現在位置を測定するとあるが、具体的な測定方法は言及されていない。
【0005】
そこで、本発明は、エスカレーターが運転・停止を繰り返すような場合であっても特定踏段の位置を正確に計測するための装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るエスカレーター踏段位置計測装置の一態様は、
エスカレーターの1周分の踏段数を設定する踏段数設定部と、踏段の進行方向に関して上流側および下流側に近傍配置され、踏段の踏板金属部を検出する一対の近接センサと、一対の近接センサのセンサ信号に基づいて、これら近接センサ近傍を通過する踏段の数および踏段の通過方向に対応付けたカウント値を算出するカウンタと、特定踏段がエスカレーターのレールの基準位置を通過した時点の基準カウント値、現在の特定踏段のカウント値、および踏段数設定部に設定されたエスカレーターの1周分の踏段数に基づいて、特定踏段の現在の位置を計測する計測部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るエスカレーター踏段位置計測方法は、
エスカレーターの1周分の踏段数を設定する設定工程と、踏段の踏板金属部を検出する一対の近接センサを、踏段の進行方向に関して上流側および下流側に近傍配置する配置工程と、一対の近接センサのセンサ信号に基づいて、特定踏段がエスカレーターのレールの基準位置を通過した時点でのこれら近接センサの近傍を通過する踏段の数および踏段の通過方向を検出する第1の検出工程と、一対の近接センサのセンサ信号に基づいて、現在の特定踏段でのこれら近接センサの近傍を通過する踏段の数および踏段の通過方向を検出する第2の検出工程と、第1および第2の検出工程でそれぞれ求めた踏段数および踏段通過方向並びに設定工程で設定されたエスカレーターの1周分の踏段数に基づいて、特定踏段の現在の位置を計測する計測工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定の踏段が基準位置を通過する時点でのカウント値(踏段の数およびその通過方向)を獲得し、この獲得した情報と現在のカウント値(踏段の数およびその通過方向)およびエスカレーター1周分の踏段数とから、現在の特定踏段の位置を計測する。したがって、エスカレーターの運転・停止を繰り返したり途中で運転方向を逆転しても、特定踏段位置を正確に計測できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1,2は、エスカレーターの踏段の位置を計測するための本発明に係る装置の実施の形態1を示す。なお、本願では、エスカレーターの構成は周知であり本発明と関係のあるもののみ適宜説明しそれ以外は省略する。エスカレーター踏段位置計測装置(以下、単に計測装置という。)2は、エスカレーターの乗降口4上に置かれるボックス形状の信号処理装置6と、信号処理装置6から突出したアーム8に支持された一対の近接センサ10a,10bと、信号処理装置6と無線または有線で接続され信号処理装置6からの信号に基づいて踏段の位置の計測などを行うためのホストコンピュータ12とを備える。本実施形態では、乗降口4は、上昇運転で降り側、下降運転で乗り側となる上部乗降口とする。
【0011】
近接センサ10(10a,10b)は、乗降口4の近傍でエスカレーターの踏段14の踏板に対向するように配置される。踏段14の踏板は、金属部16と、上昇運転時の踏段の進行方向に関し先端側に位置し該進行方向に関し所定の幅を有する非金属部(例えばプラスチック)であるデマケーションライン(黄色注意標色帯)18とから構成される。近接センサ10は、誘導型近接スイッチ(コイルを検出素子とし、金属が接近すると電磁誘導作用により金属内に誘導電流が流れ、その結果、検出コイルのインピーダンスが変化したり発振が停止したり発振振幅が低下するのを利用して検出を行う。)である。近接センサ10と踏段14との間隔は、近接センサが金属部16上方に位置する場合にはオン信号を出力し、デマケーションライン18上方に位置する場合にオフ信号を出力するように設定されている。近接センサ10aは、上昇運転時の踏段の進行方向に関し近接センサ10bの下流側に近傍配置されている。近接センサ10aと10bの基準軸(センサの検出面の中心を通り検出面に垂直な軸)の間隔は、デマケーションライン18の幅よりも小さく、例えば1/2に設定されている。これは、後述するように、近接センサ10a,10bのセンサ信号に基づいて近接センサ近傍を通過する踏段の数およびその通過方向を検出するのを可能にするためである。なお、近接センサ10a,10bの大きさの制約上、進行方向と垂直な踏段の幅方向に関しても適当な量だけずらして配置されている。
【0012】
信号処理装置6は、各近接センサ10からのオン・オフ信号に基づいて近接センサの下方近傍(各近接センサ10a,10bの動作領域を包含する領域)を通過する踏段の数および踏段の通過方向を検出するためのものである。詳しくは、信号処理装置6は、各近接センサ10からの信号を離散的あるいは連続的に測定するためのセンサ信号測定部20と、センサ信号測定部20で測定したセンサ信号のパターンに基づいて踏段の通過数をカウントするカウンタ22とを備える。
【0013】
エスカレーターを上昇運転させた場合の近接センサ10a,10bから出力される時系列信号の一例を図3に示す。時刻Pでデマケーションライン18の先端18aが近接センサ10a下方に到達し、近接センサ10aの出力がオンからオフになる。次に、時刻Qでデマケーションライン18の先端18aが近接センサ10b下方に到達し、近接センサ10bの出力もオンからオフになる。時刻Rで、デマケーションライン18の後端18bが近接センサ10a下方に到達し、近接センサ10aの出力がオフからオンになる。最後に、時刻Sで、デマケーションライン18の後端18bが近接センサ10b下方に到達し、近接センサ10bの出力がオフからオンになる。すなわち、上昇運転では、近接センサ10aと10bから出力される信号のパターンは、(OFF,ON)→(OFF,OFF)→(ON,OFF)→(ON,ON)の順に変わり、これを繰り返す。これに対し、エスカレーターを下降運転させた場合の近接センサ10a,10bから出力される信号のパターンは、上昇運転とは逆になり、(ON,ON)→(ON,OFF)→(OFF,OFF)→(OFF,ON)の順に変わり、これを繰り返す。カウンタ22は、信号のパターンの変化に基づいて踏段の通過数をカウントする。また、カウンタ22は、上昇運転と下降運転とで信号のパターンが異なるため、踏段の通過方向を考慮してカウントを行う。すなわち、上昇方向に一段通過すれば踏段の通過数をカウントアップし、下降方向に一段通過すればカウントダウンする。但し、デマケーションライン18の隣の踏段の金属部と隣接している端部18aは、隣の踏段のライザに形成した溝と噛み合うように櫛歯状となっているため、カウンタ22は、測定のばらつきの起きにくい直線状の端部18bを基準としてカウント処理を行うのが好ましい。具体的には、カウンタ22は、近接センサ10a,10bの信号のパターンが(ON,OFF)→(ON,ON)と変化すれば、踏段が上昇方向に一段通過したとしてカウントアップ(+1)し、(ON,ON)→(ON,OFF)と変化すれば、踏段が下降方向に一段通過したとしてカウントダウン(−1)する。カウンタ22は、踏段の通過数および踏段の通過方向に対応付けたカウント値をホストコンピュータ12に出力する。
【0014】
図1に示すように、ホストコンピュータ12は、ユーザが所定の指令を行う入力部24を備えており、入力部24を介してエスカレーター1周分の踏段数を入力できるようになっている。また、ホストコンピュータ12は、ユーザが入力部24を介して所定の指示(以下、カウント指示という。)を行うと、その時点でのカウンタ22から出力されたカウント値(以下、基準カウント値という。)を記録部26に記録させる基準カウンタ値決定部27を備える。これは、特定の踏段の位置とカウント値とを関連付けるためのもので、例えばエスカレーターを運転中特定踏段が近接センサ10の下方に到達した際あるいは特定踏段が近接センサの下方に到達した際にエスカレーターを一旦停止させてカウント指示を行う。カウント指示を行う際の特定踏段の位置(本願では基準位置という。)は、近接センサ10の下方に限らずエスカレーターのどの位置でもよい(言い換えれば、基準位置は踏段14の軌道をなすレールのどの位置でもよい。)
【0015】
ホストコンピュータ12は、特定踏段の位置を計測する計測部28を備える。特定踏段位置計測部28は、基準カウント値記録部26に記録された基準カウント値、カウンタ22からの現在のカウント値、および、入力部24を介して入力されたエスカレーター1周分の踏段数に基づいて、現在の特定踏段の位置を、
(現在のカウント値−基準カウント値)が0以上の場合、
(現在のカウント値−基準カウント値)%踏段数
(現在のカウント値−基準カウント値)が負の場合、
踏段数−{(基準カウント値−現在のカウント値)%踏段数}
として求めるようになっている。ここで、(A%B)はAをBで割った余りを意味する。例えば、踏段数が46で基準カウント値が「10」、現在のカウント値が「70」だとすると、現在の踏段の位置は「14」である。図4を参照して、この値は、カウント指示を行うレール29の基準位置を「0」として、レール1周を踏段数で分割した各エリア(46個)に対し、上昇運転時の進行方向に順に番号(「0」〜「45」)を割り振るとしたときの、「14」のエリア番号に特定踏段が位置することを意味する。現在の特定踏段位置は、表示部30に表示されるようになっている。
【0016】
かかる計測装置2において、まず、ユーザが入力部24を介してエスカレーター1周分の踏段数を入力する。次に、特定の踏段がレールの基準位置、例えば近接センサ10の下方に位置するときにユーザが入力部24を介してカウント指令を行うことで、基準カウント値決定部27は、その時点でカウンタ22から得られたカウント値を基準カウント値として記録部26に記録する。その後、エスカレーターを運転したり停止したりあるいは運転方向を逆転させる間、特定踏段位置計測部28は、基準カウント値記録部26に記録された基準カウント値、カウンタ22からの現在のカウント値、およびエスカレーター1周分の踏段数に基づいて、現在の特定踏段の位置を計測し、表示部30には特定の踏段の現在位置が表示される。
【0017】
このように、本実施形態によれば、エスカレーターの運転・停止を繰り返したり途中で運転方向を逆転しても、特定踏段位置を正確に計測できる。
【0018】
なお、本実施形態では、近接センサ10a,10bを上部乗降口4近傍に設置したが、代わりに下部乗降口近傍に設置してもよい。近接センサを乗降口近傍に設置するのは、現時点で市販されている近接センサの感度(例えば4mm以下)を考慮し、近接センサと(乗降口近傍では同一高さに保たれる)踏段踏板との距離をできるだけ小さくするためである。
【0019】
実施の形態2.
図5,6は、本発明に係る計測装置の実施の形態2を示す。以下、実施の形態1と同一または類似の構成要素は同一の符号または同一の符号に適当な添字を付して表す。本実施形態に係る計測装置2Aでは、以下に示すように、近接センサ10a,10bの少なくとも一方を利用して特定の踏段の通過を検出する。
【0020】
特定の踏段14sの踏板の金属部16Aには、金属部を貫通するスリット40が形成されている。スリット40の大きさ・位置は、踏段の進行方向に関してデマケーションライン18よりも幅が小さく(例えば、デマケーションライン幅の1/2)、且つ、スリット40の通過により近接センサ10aの信号のみが変化し近接センサ10bの信号は変化しないように設定されている。
【0021】
ホストコンピュータ12Aは、センサ信号測定部20からのセンサ信号に基づいて、スリット40したがって特定踏段14sが近接センサ10a下方を通過したことを検出する特定踏段通過検出部42を備える。図7を参照して、特定踏段通過検出部42は、同一方向に一定速度で運転している場合のデマケーションライン18通過時の近接センサ10aのオフ時間T1、スリット通過時の近接センサ10aのオフ時間T2として、閾値(T1+T2)/2を用意している。スリット40は、デマケーションライン18より幅が狭いので、同一方向に一定速度で運転している場合T1>T2となる。そこで、エスカレーターを一定速度で運転させてT1,T2、したがって閾値を予め求めておき、特定踏段14sの通過を検出する際には、上記一定速度でエスカレーターを運転させながら、特定踏段通過検出部42は、近接センサ10aのオフ時間の幅が閾値より小さければ、特定踏段14sが通過したことを示す信号を送出する。基準カウント値決定部27Aは、特定踏段通過検出部42からの信号を受けると、その時点のカウント値を基準カウント値として記録部26に記録するようになっている。したがって、かかる計測装置2Aにおいて、特定踏段通過検出部42により特定踏段が基準位置を通過することを検出した時点でのカウント値が、基準カウント値として自動的に設定されることになる。そして、特定踏段位置計測部28は、基準カウント値記録部26に記録された基準カウント値、カウンタ22からの現在のカウント値、および、入力部24を介して入力されたエスカレーター1周分の踏段数に基づいて、現在の特定踏段14sの位置を計測する。
【0022】
このように、本実施形態によれば、ユーザが基準カウント値を手動で設定する必要がないため、簡便に特定踏段の現在位置を計測できる。
【0023】
スリットを金属部に形成する代わりに、金属部の一部を非金属部に置き換えても同様の効果を得ることができる。
【0024】
なお、スリットとデマケーションライン通過時の近接センサ10aのオフ時間幅が異なるように構成すればよく、スリットの踏段進行方向に関する幅はデマケーションラインより大きくてもよい。また、2つの幅が同じであっても近接センサ10aから出力される隣り合うオフ時間の間隔からどのオフ信号が特定踏段の通過を示す信号であるかを判別することができる(スリット40が踏段金属部に形成された特定踏段が通過する場合、隣り合うオフ時間の間隔が他の踏段の場合に比べて小さくなる。)。
【0025】
特定踏段通過検出部は、ホストコンピュータ12Aの代わりに計測装置2A内に設けてもよい。
【0026】
実施の形態3.
図8,9は、本発明に係る計測装置の実施の形態3を示す。本実施形態に係る計測装置2Bでは、一対の近接センサ10a,10b以外の構成を利用して特定の踏段の通過を検出する。
【0027】
具体的に、特定踏段14s’内には、踏段の進行方向に関して側方に近接センサ(第3の近接センサ)50が配置されている。近接センサ50は、踏段両側面と僅かな隙間をあけて相対するエスカレーターの金属製のスカートガード対の一方52を検出するようになっている。スカートガード52の端部52aは、上昇運転時に踏段が下方に入り込む乗降口4の端部4aよりも下流側に位置する。近接センサ50は、スカートガード52が側方近傍に位置するとオン信号を出力する誘導型近接センサである。代わりに、スカートガードとセンサとの間の静電容量の変化を検出する静電容量型近接センサを用いてもよい。
【0028】
特定踏段14s’内には、近接センサ50からのセンサ信号を離散的あるいは連続的に測定するためのセンサ信号測定部54と、測定されたセンサ信号(近接センサ50からのセンサ情報を含む信号)をホストコンピュータ12Bに無線送信するための無線送信部56とがさらに設けてある。ホストコンピュータ12Bは、無線送信部56からのセンサ信号(センサ情報を含む信号)を受信するための無線受信部58をさらに備える。特定踏段通過検出部42Bは、無線受信部58で受信したセンサ信号(センサ情報を含む信号)に基づいてスカートガード52の端部52aが近接センサ50の側方を通過したことを検出する。特定踏段通過検出部42Bは、上昇運転中であればセンサ信号がオンからオフになった時点で下降運転中であればセンサ信号がオフからオンになった時点で特定踏段14s’が通過したことを示す信号を基準カウント値決定部27Bに送出する。基準カウント値決定部27Bは、特定踏段通過検出部42Bから信号を受けた時点のカウント値を基準カウント値として記録部26に記録する。そして、特定踏段位置計測部28は、基準カウント値記録部26に記録された基準カウント値、カウンタ22からの現在のカウント値、および、入力部24を介して入力されたエスカレーター1周分の踏段数に基づいて、現在の特定踏段14s’の位置を計測する。
【0029】
このように、本実施形態によれば、ユーザが基準カウント値を手動で設定する必要がないため、特定踏段の現在位置をより簡便に計測できる。
【0030】
スカートガード50の端部として上部乗降口4近傍側を利用したが、代わりに下部乗降口近傍側の端部を利用してもよい。
【0031】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限らず種々改変可能である。例えば、実施の形態2,3において、エスカレーター1周分の踏段数を手動で設定する代わりに、特定踏段通過検出部が特定踏段の通過を検出した時点での基準カウント値を利用して踏段数を自動的に算出する踏段数算出手段(踏段数設定手段)を設けてもよい。エスカレーターを上昇運転または下降運転させた状態で、踏段数算出手段は、特定踏段通過検出部が特定踏段を検出した時点のカウント値C1と、さらに運転を継続させて、特定踏段通過検出部が特定踏段を再度検出した時点のカウント値C2とを得て、踏段数を|C2−C1|として算出する。このようにして踏段数を得た後、特定踏段位置計測部28は、基準カウント値(C1またはC2)と現在のカウント値に加え、踏段数算出手段で求めた踏段数に基づいて、現在の特定踏段の位置を求めることになる。この変形例では、ユーザが踏段数を(点検対象のエスカレーター毎に)手動で設定する必要がないため、特定踏段の現在位置をより簡便に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るエスカレーター踏段位置計測装置の実施の形態1を示すブロック図。
【図2】図1の計測装置が適用されたエスカレーターに関し、(a)は部分側面図、(b)は部分上面図を示す。
【図3】図1,2の近接センサから出力されるセンサ信号の一例を示す図。
【図4】図1の計測装置の表示部に出力される値と特定踏段の位置との関係を説明するための図。
【図5】本発明に係るエスカレーター踏段位置計測装置の実施の形態2を示すブロック図。
【図6】図5の計測装置が適用されたエスカレーターの部分上面図。
【図7】図5の近接センサから出力されるセンサ信号の一例を示す図。
【図8】本発明に係るエスカレーター踏段位置計測装置の実施の形態3を示すブロック図。
【図9】図8の計測装置が適用されたエスカレーターに関し、(a)は部分側面図、(b)は部分上面図を示す。
【符号の説明】
【0033】
2,2A,2B エスカレーター踏段位置計測装置
4 乗降口
10a,10b 近接センサ
14 踏段
16 踏板金属部
18 デマケーションライン
24 入力部(踏段数設定部)
28 特定踏段位置計測部(計測部)
29 レール
40 スリット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレーターの1周分の踏段数を設定する踏段数設定部と、
踏段の進行方向に関して上流側および下流側に近傍配置され、踏段の踏板金属部を検出する一対の近接センサと、
一対の近接センサのセンサ信号に基づいて、これら近接センサ近傍を通過する踏段の数および踏段の通過方向に対応付けたカウント値を算出するカウンタと、
特定踏段がエスカレーターのレールの基準位置を通過した時点の基準カウント値と、現在の特定踏段のカウント値と、踏段数設定部に設定されたエスカレーターの1周分の踏段数とに基づいて、特定踏段の現在の位置を計測する計測部と、
を備えたエスカレーター踏段位置計測装置。
【請求項2】
エスカレーターの1周分の踏段数を設定する踏段数設定部と、
踏段の進行方向に関して上流側および下流側に近傍配置され、踏段の踏板金属部を検出する一対の近接センサと、
一対の近接センサのセンサ信号に基づいて、これら近接センサの近傍を通過する踏段の数および踏段の通過方向に対応付けたカウント値を算出するカウンタと、
を備え、
特定踏段の踏板金属部にはスリットが形成され、あるいは、特定踏段の踏板金属部に囲まれるように非金属部が形成され、
少なくとも一方の近接センサのセンサ信号に基づいて該近接センサの近傍を上記スリットまたは非金属部が通過する時点を検出し、これにより上記少なくとも一方の近接センサの近傍を特定踏段が通過する時点を検出する特定踏段通過検出部と、
特定踏段通過検出部により検出された時点のカウンタで算出したカウント値を基準カウント値として決定する基準カウント値決定部と、
基準カウント値決定部で決定された基準カウント値と、現在の特定踏段のカウント値と、踏段数設定部に設定されたエスカレーターの1周分の踏段数とに基づいて、特定踏段の現在の位置を計測する計測部と、
を備えたエスカレーター踏段位置計測装置。
【請求項3】
エスカレーターの1周分の踏段数を設定する踏段数設定部と、
踏段の進行方向に関して上流側および下流側に近傍配置され、踏段の踏板金属部を検出する一対の近接センサと、
一対の近接センサのセンサ信号に基づいて、これら近接センサの近傍を通過する踏段の数および踏段の通過方向に対応付けたカウント値を算出するカウンタと、
特定踏段内に踏段進行方向に関して側方に配置された第3の近接センサと、
特定踏段内に配置され、第3の近接センサからのセンサ情報を示す信号を特定踏段外に無線送信する無線送信手段と、
無線送信手段からの信号を無線受信する無線受信手段と、
無線受信手段で受信した信号に基づいて、第3の近接センサの近傍をエスカレーターのスカートガード端が通過する時点を検出する特定踏段通過検出部と、
特定踏段通過検出部により検出された時点のカウンタで算出したカウント値を基準カウント値として決定する基準カウント値決定部と、
基準カウント値決定部で決定された基準カウント値と、現在の特定踏段のカウント値と、踏段数設定部に設定されたエスカレーターの1周分の踏段数とに基づいて、特定踏段の現在の位置を計測する計測部と、
を備えたエスカレーター踏段位置計測装置。
【請求項4】
踏段数設定手段は、特定踏段通過検出部が特定踏段を検出した時点のカウンタのカウント値と、エスカレーターを1周させたときに特定踏段通過検出部が特定踏段を再度検出した時点のカウンタのカウント値とから踏段数を求めることを特徴とする請求項2または3に記載のエスカレーター踏段位置計測装置。
【請求項5】
一対の近接センサは、それらの基準軸の間隔が踏段の非金属製デマケーションラインの踏段の進行方向に関する幅よりも小さくなるように、上記進行方向に関して上流側および下流側に近傍配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のエスカレーター踏段位置計測装置。
【請求項6】
一対の近接センサは、エスカレーターの乗降口の近傍に配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のエスカレーター踏段位置計測装置。
【請求項7】
エスカレーターの1周分の踏段数を設定する設定工程と、
踏段の踏板金属部を検出する一対の近接センサを、踏段の進行方向に関して上流側および下流側に近傍配置する配置工程と、
一対の近接センサのセンサ信号に基づいて、特定踏段がエスカレーターのレールの基準位置を通過した時点でのこれら近接センサの近傍を通過する踏段の数および踏段の通過方向を検出する第1の検出工程と、
一対の近接センサのセンサ信号に基づいて、現在の特定踏段でのこれら近接センサの近傍を通過する踏段の数および踏段の通過方向を検出する第2の検出工程と、
第1および第2の検出工程でそれぞれ求めた踏段数および踏段通過方向と、設定工程で設定されたエスカレーターの1周分の踏段数とに基づいて、特定踏段の現在の位置を計測する計測工程と、
を含むエスカレーター踏段位置計測方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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