説明

エゼクタ

【課題】 所要の負圧と、十分な吸引容量を確保しながら、小型化を図り得るエゼクタを提供する。
【解決手段】 ノズル26からディフューザー27,28に圧縮流体を吐出することにより、負圧を生成するエゼクタにおいて、ディフューザー27,28のスロート部30,32にスロート軸40を貫通させた

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮流体の供給に基づいて負圧を生成するエゼクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のエゼクタの一例を示す。供給ポート1から供給室2に供給された圧縮流体は、ノズル3から吐出され、さらに第一〜第三のディフューザー4a〜4cを介して排気ポート5から排出される。
【0003】
このとき、ノズル3から吐出される圧縮流体が第一の真空室6a内の外気を巻き込み、第一のディフューザー4aから吐出される圧縮流体が第二の真空室6b内の外気を巻き込み、第二のディフューザー4bから吐出される圧縮流体が第三の真空室6c内の外気を巻き込む。
【0004】
第一〜第三の真空室6a〜6cは吸気室7に連通され、その吸気室7に吸気ポート8が開口されている。従って、圧縮流体の供給に基づいて吸気ポート8に負圧が発生する。このエゼクタでは、吸気ポート8から吸入する外気の流量を確保するために、ディフューザーを3段構成としたマルチステージ型となっている。
【0005】
このようなエゼクタの性能を確保するための設計条件として、次のような条件が知られている。図5に示すエゼクタは、ノズル9から吐出される圧縮流体が、ディフューザー10から排出されるとき、吸気ポート11に負圧が発生する。ディフューザー10は、入口部11と、スロート部12と、拡散部13とからなる。
【0006】
ディフューザー10の入口の角度aは、約25度が望ましい。スロート部12の長さTは、スロート部12の径Dの5倍から10倍、望ましくは7倍程度が最適である。拡散部13の長さRは、スロート径の4〜8倍の長さが必要であり、その角度bは4〜10度とする。
【0007】
特許文献1,2には、所要の負圧と吸引容量を確保するために3段構成としたエゼクタが開示されている。
【特許文献1】特開平7−54800号公報
【特許文献2】登録実用新案公報第3022143号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来のエゼクタでは、各ディフューザーのスロート部の長さは、スロート部の径によりほぼ決定され、吸引容量を確保するためにこのようなディフューザーを多段構成とすると、長さ方向の寸法が増大する。
【0009】
また、多段構成のディフューザーを並列に動作させることにより、吸引容量をさらに増大させる構成とすると、幅方向の寸法が増大する。
従って、所要の負圧と、十分な吸引容量を確保するためには、エゼクタの寸法が増大するという問題点がある。
【0010】
この発明の目的は、所要の負圧と、十分な吸引容量を確保しながら、小型化を図り得るエゼクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、ノズルからディフューザーに圧縮流体を吐出することにより、負圧を生成するエゼクタにおいて、前記ディフューザーのスロート部にスロート軸を貫通させたエゼクタにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所要の負圧と、十分な吸引容量を確保しながら、小型化を図り得るエゼクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化したエゼクタの一実施の形態を図面に従って説明する。図1及び図2に示すエゼクタは、ボディ21の上面にカバー22が取着され、そのカバー22には加圧ポート23が設けられている。
【0014】
前記ボディ21は、図3に示すように、ほぼ直方体状に形成され、その対向する二つの側面には吸気ポート24がそれぞれ設けられている。吸気ポート24は、フィルター、レギュレータ等の他の空気圧機器を介して吸着搬送装置等に接続される。
【0015】
また、ボディ21の吸気ポート24が設けられていない側面には、ゲージポート25がそれぞれ設けられている。ゲージポート25には必要に応じて圧力計が接続され、圧力計が接続されない場合は封止される。
【0016】
前記ボディ21の上面には前記加圧ポート23の下方位置にノズル26が取着され、そのノズル26の下方に形成された空間は、前記吸気ポート24及びゲージポート25に連通されるとともに下方へ開口されている。
【0017】
前記ノズル26の開口部の下方には、第一のディフューザー27が配設され、その第一のディフューザー27の下方に第二のディフューザー28が配設されている。前記第一及び第二のディフューザー27,28は、前記ボディ21の下部に嵌着される円筒状のチューブ29により、各周縁部がボディ21に固定される。
【0018】
そして、前記第一のディフューザー27は前記ボディ21内の空間を上下に区画し、第二のディフューザー28はボディ21とチューブ29内の空間とを区画している。
前記第一のディフューザー27はほぼ円錐状に形成され、その中央に第一のスロート部30が形成されている。前記第一のスロート部30は一定の径で延設される。そして、前記ノズル26から第一のスロート部30に圧縮空気が噴出されると、第一のディフューザー27の上方の空間内の空気が第一のスロート部30内に巻き込まれる。この動作により、第一のディフューザー27の上方の空間に負圧が発生し、第一の真空室31が生成される。
【0019】
前記第一のスロート部30の下方において、前記第二のディフューザー28には前記チューブ29内に突出する第二のスロート部32が形成されている。そして、第一のスロート部30から第二のスロート部32に圧縮空気が噴出されると、第二のディフューザー28の上方の空間内の空気が第二のスロート部32内に巻き込まれる。この動作により、第二のディフューザー28の上方の空間に負圧が発生し、第二の真空室33が生成される。
【0020】
前記第一のディフューザー27の第一のスロート部30の周囲には、前記第一及び第二の真空室31,33を連通する複数の連通孔34が形成され、前記第一のスロート部30の周囲には、その連通孔34を第二の真空室33側から覆うゴム板状のチェックバルブ35が取着されている。
【0021】
前記チェックバルブ35の下方において、前記第一のスロート部30の外周にはバルブストッパ36が嵌着され、前記チェックバルブ35を位置決めしている。このような構成により、第二の真空室33の気圧が第一の真空室31の気圧より低くなったとき、チェックバルブ35が開いて、第一及び第二の真空室31,33が等圧となるようになっている。
【0022】
前記第二のスロート部32の下端部は、圧縮空気を効率よく排出するために、その内径が所定の角度で徐々に拡径されている。
前記チューブ29の下端にはボトムカバー37が嵌着され、そのボトムカバー37の中央部には排気ポート38が形成されている。そして、前記第二のディフューザー28から排出される空気が排気ポート38から排出される。
【0023】
前記第二のディフューザー28の先端部と排気ポート38との間には、筒状の消音器39が設けられる。この消音器は、排気ポート38の外部に取着する構成としてもよい。
前記ノズル26、第一のスロート部30及び第二のスロート部32の中心部には、スロート軸40が挿通されている。このスロート軸40は、その上端がノズル26に設けられた保持部41に保持され、下端が前記ボトムカバー37に設けられた保持部42に保持されている。そして、スロート軸40はノズル26と、第一のスロート部30と、第二のスロート部32の中心部を貫通するように保持されている。
【0024】
従って、ノズル26ではスロート軸40の外周面とノズル孔の内周面との間隙から圧縮空気が噴出され、第一及び第二のスロート部30,32では、圧縮空気がスロート軸40と各スロート部30,32の間を通過するようになっている。
【0025】
前記スロート軸40の半径は、例えば4mmに形成され、そのとき第一のスロート部30の半径は5mmに形成される。すると、第一のスロート部30において圧縮空気が通過する断面積は、半径3mmの内径を備えたスロート部と実質的に等しくなり、すなわち半径3mmの内径を備えたスロート部と実質的に等しい流量を得ることができる。
【0026】
また、第一のスロート部30では、スロート軸40を貫通させたことにより、圧縮空気が通過する流路は、第一のスロート部30の内面とスロート軸40との間で、内径と外径の差が1mmの環状の流路となる。このような流路は、実質的に直径1mmのスロート部を環状に配設した状態に等しい。従って、第一のスロート部30の長さは、直径1mmのスロート径に対応する長さでよいことになる。
【0027】
第二のスロート部32においても、圧縮空気の流路は環状となり、その環状の流路の内径と外径の差を直径としたスロート部に対応する長さとすることが可能となる。
次に、上記のように構成されたエゼクタの作用を説明する。
【0028】
加圧ポート23に圧縮空気が供給されると、その圧縮空気がノズル26から噴出される。すなわち、ノズル26は圧縮空気の圧力を速度に変換して、高速の空気流として吐出する。
【0029】
ノズル26から吐出される空気は、第一のスロート部30に流入し、このとき、その空気流により第一の真空室31内の空気が第一のスロート部30に巻き込まれ、第一の真空室31内に負圧が生成される。そして、その負圧により、吸気ポート24から外気が吸入される。
【0030】
第一のスロート部30から吐出される空気は、第二のスロート部32に流入する。すると、第二の真空室33内の空気が第二のスロート部32に巻き込まれ、第二の真空室33内に負圧が生成される。そして、第二の真空室33内の気圧が第一の真空室31内の気圧より低くなると、チェックバルブ35が開いて、第一の真空室31から第二の真空室33に空気が引き込まれる。
【0031】
第二のスロート部32に流入した空気は、消音器39を経て、排気ポート38から排出される。
このような動作により、第一のディフューザー27により第一の真空室31内に負圧が生成され、その負圧が吸気ポート24に供給される。また、第二のディフューザー28により、第一の真空室31からチェックバルブ35を経て第二の真空室33に空気が引き込まれ、吸気ポート24から吸入する外気の吸入容量が確保される。
【0032】
上記のように構成されたエゼクタでは、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)加圧ポート23に圧縮空気を供給することにより、吸気ポート24に負圧を発生させ、吸気ポート24に外気を吸入することができる。
(2)第一のディフューザー27の第一のスロート部30にスロート軸40を貫通させたことにより、第一のスロート部30の実質的な径を縮小することができる。従って、第一のスロート部30の長さを短縮することができる。
(3)第一のスロート部30の吸入容量を低下させることなく、実質的な径を縮小することができる。
(4)第二のディフューザー28の第二のスロート部32にスロート軸40を貫通させたことにより、第二のスロート部32の実質的な径を縮小することができる。従って、第二のスロート部32の長さを短縮することができる。
(5)第一及び第二のスロート部30,32の長さを縮小することができるので、エゼクタを長さ方向に小型化することができる。
(6)第一及び第二のスロート部30,32にスロート軸40を貫通させればよいので、エゼクタの幅方向の寸法を大きく増大させることはない。
(7)第一及び第二のスロート部30,32にスロート軸40を貫通させればよいので、部品点数を大きく増大させることはなく、コストを増大させることはない。
【0033】
上記実施の形態は、以下の態様で実施してもよい。
・ディフューザーは、任意の段数としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一実施の形態のエゼクタを示す断面図である。
【図2】一実施の形態のエゼクタを示す断面図である。
【図3】一実施の形態のエゼクタを示す平面図である。
【図4】従来例を示す断面図である。
【図5】エゼクタの設計条件を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
23 加圧ポート
24 吸気ポート
26 ノズル
27,28 ディフューザー
30,32 スロート部
37 ボトムカバー
40 スロート軸
41,42 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからディフューザーに圧縮流体を吐出することにより、負圧を生成するエゼクタにおいて、
前記ディフューザーのスロート部にスロート軸を貫通させたことを特徴とするエゼクタ。
【請求項2】
前記スロート軸は、断面円形の丸棒とし、該スロート軸を前記スロート部の中心に貫通させて、スロート部の内面との間で環状の流路を形成することを特徴とする請求項1記載のエゼクタ。
【請求項3】
前記ノズルには、前記スロート軸の一端を支持する保持部を備え、排気ポートを備えたボトムカバーに前記スロート軸の他端を支持する保持部を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のエゼクタ。
【請求項4】
前記ディフューザーを複数備え、該ディフューザーのスロート部に前記スロート軸を貫通させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエゼクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−63843(P2006−63843A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245760(P2004−245760)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】