説明

エチレン−酢酸ビニルコポリマーに基づくグラフトコポリマーを含む、低硫黄鉱油蒸留物用の添加剤

【課題】 適当な低温用添加剤を加えることによって鉱油及び鉱油蒸留物の低温条件下における流動性及び特にパラフィン分散を改善すること。
【解決手段】 本発明は、エチレンの他に酢酸ビニルを3.5〜21モル%の割合で含むコポリマーb)に、C8〜C22アルコールとアクリル酸とのエステルをグラフトすることによって得ることができるグラフトコポリマー、及びそれらを燃料油に低温用添加剤として使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフトコポリマーを含む、向上した低温流動性及びパラフィン分散性を有する低硫黄鉱油蒸留物用添加剤、それを配合した燃料油、及びこの添加剤の使用に関する。
【0002】
エネルギーの需要が着実に大きくなる一方で鉱油備蓄量が減少していることから、より問題の多い原油が採掘及び加工されつつある。加えて、ディーゼル油及び加熱油などのそれらから生産される燃料油に対する要求は、とりわけ法的要求事項の結果として、より一層厳しくなっている。これらの例は、中間蒸留物の硫黄含有率の減少、終点の制限、並びに芳香族類含有率の制限であり、そのため、製油所では、常に加工技術の適合を強いられている。中間蒸留物では、これは、多くの場合に、パラフィン、特にC18〜C24の鎖長範囲のパラフィンの割合を高め、その結果、これらの燃料油の低温流動性に悪影響を及ぼす。
【0003】
原油、並びに原油を蒸留することによって得られる軽油、ディーゼル油及び加熱油などの中間蒸留物は、原油の起源に依存して、様々な量でn−パラフィンを含む。これらのn−パラフィンは、温度が下がると小さな板状の結晶として晶出しそして時折、油を中に含んで集塊する。この結晶化及び集塊化は、これらの油もしくは蒸留物の流動性を劣化させ、その結果、鉱油及び鉱油蒸留物の採掘、輸送、貯蔵及び/または使用の際に障害となる恐れがある。パイプラインを通して鉱油を輸送する際は、上記結晶化現象は、特に冬季において、パイプの壁に堆積物を生じさせる恐れや、または個々の特定の場合、例えばパイプラインの休止の際には、それの完全な閉塞を招く恐れすらある。鉱油を貯蔵しそして二次加工する場合には、冬季には鉱油を加熱タンク中に貯蔵する必要もあり得る。鉱油蒸留物の場合は、結晶化の結果として、ディーゼルエンジン及びボイラーのフィルターが閉塞する恐れがあり、それにより、燃料の安定した計量供給が阻害され、更に環境によっては、燃料もしくは加熱媒体の供給が完全に中断される。
【0004】
既に生じた析出物を単に除去することによる、結晶化したパラフィンを(熱により、もしくは機械もしくは溶剤を用いて)除去する昔からの方法の他、近年では化学的な添加剤(流動性向上剤として知られる)が開発されている。これらは、析出するパラフィン結晶と物理的に相互作用することによって、それらの形状、大きさ及び粘着性を変化させる。これらの添加剤は、追加的な結晶種として働き、そしてそれの一部はパラフィンと一緒に晶出して、変形した結晶形状を有するより小さなパラフィン結晶を多数生じさせる。この変質パラフィン結晶は、集塊する傾向が小さいために、これらの添加剤が混合された油は、添加剤未配合油の場合よりもしばしば20℃以上低い温度においてもなおポンプ輸送及び加工が可能である。
【0005】
原油及び中間蒸留物用の典型的な流動性改善剤は、エチレンと、ビニルアルコールのカルボン酸エステルからなるコポリマー及びターポリマーである。
【0006】
流動性改善剤の更に別の役割は、パラフィン結晶の分散である。すなわち、パラフィン結晶の沈降(貯蔵容器の床でのパラフィンリッチな層の発生)を遅らせるかもしくは防止することである。
【0007】
従来技術には、低温用添加剤として鉱油蒸留物に添加される或る種のグラフトコポリマーも開示されている。
【0008】
DE-A-37 25 059は、
a) エステルアルキル基中の炭素原子数が8〜15のアルキルメタクリレート20〜80重量%、及び
b) エチレン−酢酸ビニルコポリマー(好ましくは酢酸ビニルを28〜40重量%の割合で含む)であって、元々の粘度ηspec/c(キシレン中25℃)が好ましくは6〜50ml/g、特に6〜30ml/gであり、分枝度が、好ましくは、100個のCH2当たりCH3基3〜15個である前記エチレン酢酸ビニルコポリマー80〜20重量%、及び
c) 圧力(1013hPa/760mm)下に少なくとも50℃、好ましくは>100℃の沸点を有する溶剤S、
を含む、エチレン−ビニルエステルコポリマーにポリアルキルメタクリレートをグラフトしたグラフトポリマーに基づく流動性改善剤を開示している。
【0009】
従来技術のパラフィン分散剤の上記流動性改善作用及び/またはパラフィン分散作用は、常に満足なものではなく、そのため、油の冷却時には、大きなパラフィン結晶が時折生じてフィルターの閉塞を招き、また、それらの高い密度の故に、時間が経つにつれて沈降して、貯蔵容器の床にパラフィンリッチな層を形成する。20〜90体積%が120℃未満、特に100℃未満の沸点範囲を有するパラフィンリッチ留分及びナローカット留分の添加剤配合において特に問題が生ずる。曇り点が−5℃未満の低硫黄冬季用品の場合における状況が特に問題である。この場合には、既存の添加剤の配合は、しばしば、十分なパラフィン分散を達成することができない。
【特許文献1】DE-A-37 25 059
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それゆえ、本発明の課題の一つは、適当な低温用添加剤を加えることによって鉱油及び鉱油蒸留物の低温条件下における流動性及び特にパラフィン分散を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、アルキルアクリレートをエチレン−酢酸ビニルコポリマーにグラフトすることによって得ることができるグラフトコポリマーを含む低温用添加剤が、メタクリル酸エステルに基づく従来のグラフトコポリマーと比べて、パラフィンの分散のためには明らかにより適していることがここに見出された。
【0012】
それゆえ、本発明は、C8〜C22アルコールとアクリル酸とのエステル(a)を、エチレンの他に、酢酸ビニルを3.5〜21モル%及び炭素原子数3〜30の少なくとも一種のアルケン0.5〜16モル%を含むコポリマー(b)にグラフトすることによって得ることができるグラフトコポリマーを提供する。
【0013】
このようにして得られるグラフトコポリマーは、好ましくは1000〜10000g/モル、特に1500〜8000g/モルの分子量(Mn)を有する。
【0014】
本発明は更に、上記のグラフトコポリマーを含む中間蒸留物燃料油を提供する。
【0015】
本発明は更に、燃料油、好ましくは中間蒸留物に上記のグラフトコポリマーをパラフィン分散剤として使用する方法も提供する。
【0016】
本発明は更に、燃料油に上記のグラフトコポリマーを加えることを含む、燃料油の低温流動性を改善する方法も提供する。
【0017】
グラフトのための基本ポリマー(b)として適当なエチレンコポリマーは、特に、エチレンの他に、酢酸ビニルを7.5〜15モル%の割合で含むものである。これらのコポリマーは、好ましくは、140℃において、20〜10000mPas、特に30〜5000mPas、とりわけ50〜2000mPasの溶融粘度を有する。
【0018】
グラフトのための基本ポリマー(b)として好適なエチレンコポリマーは、酢酸ビニルの他、更に別のオレフィン性不飽和モノマーを16モル%まで、好ましくは1〜15モル%、とりわけ2〜10モル%の割合で含んでいてもよい。
【0019】
グラフトのための基本ポリマー(b)として好適なエチレンコポリマーは、好ましくは、1〜10、特に1.5〜4の分子量分布Mw/Mnを有する。
【0020】
上記オレフィン性不飽和モノマーは、好ましくは、ビニルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アルキルビニルエーテル及び/またはアルケンであり、そしてこれらの化合物はヒドロキシル基によって置換されていてもよい。これらのコモノマーの一種またはそれ以上の種のものが、上記ポリマー中に存在することができる。
【0021】
上記ビニルエステルは、好ましくは、以下の式1で表されるものである。
【0022】
CH2=CH-OCOR1 (1)
[式中、R1は、C2〜C30アルキル、好ましくはC4〜C16アルキル、特にC6〜C12アルキルである]
更に別の態様の一つでは、上記アルキル基は、一つまたはそれ以上のヒドロキシル基によって置換されていてもよい。
【0023】
更に別の好ましい態様の一つでは、R1は、炭素原子数7〜11、特に8、9もしくは10の分枝状アルキル基もしくはネオアルキル基である。特に好ましいビニルエステルは、分枝鎖がカルボニル基に対してアルファ位置にある第二級及び特に第三級カルボン酸から誘導される。適当なビニルエステルとしては、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、オクタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、及びバーサティック酸エステル(Versatic esters)、例えばネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ネオウンデカン酸ビニルなどが挙げられる。
【0024】
更に別の好ましい態様の一つでは、これらのエチレンコポリマーは、酢酸ビニルと、上記式1中、R1がC4〜C30アルキル、好ましくはC4〜C16アルキル、とりわけC6〜C12アルキルである同式で表される更に別のビニルエステルとを含む。
【0025】
上記アクリル酸エステルは、好ましくは、次式2で表されるものである。
【0026】
CH2=CR2-COOR3 (2)
[式中、R2は水素もしくはメチルであり、R3はC1〜C30アルキル、好ましくはC4〜C16アルキル、とりわけC6〜C12アルキルである]
適当なアクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−もしくはイソブチル、(メタ)アクリル酸のヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルエステル、及びこれらのコモノマーの混合物などが挙げられる。更に別の態様の一つでは、上記のアルキル基は、一つまたはそれ以上のヒドロキシル基で置換されていてもよい。このようなアクリル酸エステルの例の一つは、ヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0027】
上記アルキルビニルエーテルは、好ましくは、以下の式3で表される化合物である。
【0028】
CH2=CH-OR4 (3)
[式中、R4は、C1〜C30アルキル、好ましくはC4〜C16アルキル、特にC6〜C12アルキルである]
これの例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどが挙げられる。好ましい態様の一つでは、上記のアルキル基は、一つまたはそれ以上のヒドロキシル基によって置換されていてもよい。
【0029】
上記アルケンは、好ましくは、炭素原子数3〜30、特に3〜16、とりわけ5〜12のモノ不飽和炭化水素である。適当なアルケンには、プロペン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテン、ジイソブチレン及びノルボルネン並びにこれらの誘導体、例えばメチルノルボルネンなどが挙げられる。更に別の好ましい態様の一つでは、上記アルキル基は、一つまたはそれ以上のヒドロキシル基によって置換されていてもよい。
【0030】
特に好ましいターポリマーは、エチレンの他に、ネオノナン酸ビニルもしくはネオデカン酸ビニルを0.1〜12モル%、特に0.2〜10モル%の割合で、及び酢酸ビニルを3.5〜21モル%、特に8〜15モル%の割合で含み、コモノマー含有量の合計は8〜21モル%、好ましくは12〜18モル%である。更に別の特に好ましいコポリマーは、エチレン及び8〜18モル%のビニルエステルの他に、プロペン、ブテン、イソブチレン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテン、ジイソブチレン及び/またはノルボルネンなどのオレフィンも0.5〜10モル%の割合で含む。
【0031】
上記グラフト成分のモノマーa)は、アルキル基中の炭素原子数が8〜22、特に10〜15のアクリル酸アルキルエステルである。これらはイソアルキルまたはn−アルキルエステルであることができる。特に好ましいものは、イソ−C10−アルキルアクリレート及びC12〜C14−アルキルアクリレートである。上記アクリル酸アルキルエステルの混合物をグラフトさせてもよい。
【0032】
グラフト成分a)と基本ポリマーb)との重量比は、好ましくは1:4〜4:1、特に1:1〜3:1である。グラフト反応は好ましくは次のように行われる。先ず、基本ポリマーを適当な重合容器中に仕込み、そして溶剤、例えばケロシン中に溶解する。使用される溶剤Sの量はそれの性質に依存する。溶解は、攪拌しながら加熱することによって促進することができる。この際、加熱は、例えば90±10℃に行われる。その後、有利には使用する開始剤の分解温度を考慮しながら高められた温度下に(例えば90℃までの高められた温度下に)及び窒素もしくはアルゴンなどの保護ガス下において、モノマー及び開始剤を例えば混合物として計量添加する。この計量添加は、有利には計量供給ポンプを用いて、所定の期間、例えば2±1/2時間の期間内に行われる。有用な開始剤としては、それ自体慣用の遊離基開始剤、特にパーエステル類、例えば過オクタン酸tert−ブチルなどの化合物が挙げられる。一般的に、開始剤の添加量は、モノマーを基準にして0.5〜5重量%、好ましくは1〜4重量%の範囲である。
【0033】
有利には、原料供給の終わりに開始剤をもう一度加える。例えば、既に使用された量の約15重量%を加える。全重合時間は約8〜16時間である。
【0034】
通常、a)の重合で生ずるホモポリマーがバッチ中に残り得るが、これはそのまま、すなわち特に精製することなく使用することができる。
【0035】
本発明のグラフトコポリマー(以下、添加剤とも言う)は、好ましくは10〜500ppmの量で、中間蒸留物に加えられる。
【0036】
本発明の添加剤は、上記グラフトコポリマーの他に、更に別の成分を共添加剤として含むことができる。
【0037】
好ましい態様の一つでは、これらは、更に別の成分(成分II)としてアルキルフェノール−アルデヒド樹脂を含む。アルキルフェノール−アルデヒド樹脂は原則公知であり、例えばRoempp Chemie Lexikon, 第9版, Thieme Verlag 1988-92, 第4巻, 第3351頁以降に記載されている。本発明において好適なものは、特に、OH基に対してオルト−及び/またはパラ位置に一つもしくは二つのアルキル基を有するアルキルフェノールから誘導されるアルキルフェノール−アルデヒド樹脂である。特に好ましい原料は、アルデヒドと縮合することができる少なくとも二つの水素原子を芳香族環上に有するアルキルフェノール、及び特に、アルキル基がパラ位にあるモノアルキル化フェノールである。上記アルキル基(これは成分Iに関しては、一般的に、以下に定義する炭化水素基を指す)は、本発明の方法で有用なアルキルフェノール−アルデヒド樹脂において同一かもしくは異なるものであることができ、これらは、飽和もしくは不飽和であることができ、そして1〜200、好ましくは1〜20、特に4〜12個の炭素原子を有することができ; これらは、好ましくはn−、iso−もしくはtert−ブチル、n−もしくはiso−ペンチル、n−もしくはiso−ヘキシル、n−もしくはiso−オクチル、n−もしくはiso−ノニル、n−もしくはiso−デシル、n−もしくはiso−ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、トリプロペニル、テトラプロペニル、ポリ(プロペニル)及びポリ(イソブテニル)基である。
【0038】
アルキルフェノール−アルデヒド樹脂に好適なアルデヒドは、炭素原子数1〜12、好ましくは1〜4のものであり、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、2−エチルヘキサナール、ベンズアルデヒド、グリオキサル酸、及びこれらの反応性等価物、例えばパラホルムアルデヒド及びトリオキサンである。特に好ましいものは、パラホルムアルデヒド及び特にホルマリンの形のホルムアルデヒドである。
【0039】
分子量は、全て、THF中でポリスチレン標準を用いてゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって測定した。
【0040】
上記アルキルフェノール−アルデヒド樹脂の分子量は好ましくは400〜20000g/モル、特に400〜5000g/モルである。これに関連しての前提条件の一つは、少なくとも0.001〜1重量%の実際の使用濃度において、アルキルフェノール−アルデヒド樹脂が油溶性であることである。
【0041】
本発明の好ましい態様の一つでは、上記アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、次式4の繰り返し構造単位を有するオリゴマーもしくはポリマーを含む。
【0042】
【化1】

【0043】
[式中、R5はC1〜C200アルキルもしくはC1〜C200アルケニルであり、そしてnは2〜100である]
5は、好ましくは、C4〜C20アルキルもしくはC4〜C20アルケニル、特にC6〜C16アルキルもしくはC6〜C16アルケニルである。nは、好ましくは、2〜50、特に3〜25、例えば5〜15である。
【0044】
ディーゼル油及び加熱油などの中間蒸留物中に使用するためには、特に好ましいものは、アルキルフェノール中のアルキル基がC2〜C40アルキル基、好ましくはC4〜C20アルキル基、例えばC6〜C12アルキル基であるアルキルフェノール−アルデヒド樹脂である。上記アルキル基は線状もしくは分枝状であることができるが、好ましくは線状である。特に好ましいアルキルフェノール−アルデヒド樹脂は、炭素原子数が8及び9の線状アルキル基から誘導される。GPCによって測定した平均分子量は、好ましくは700〜20000、特に800〜10000、例えば1000〜2500g/モルである。
【0045】
これらのアルキルフェノール−アルデヒド樹脂は、公知方法、例えば適当なアルキルフェノールとホルムアルデヒドとの縮合、すなわちアルキルフェノール1モル当たり0.5〜1.5モル、好ましくは0.8〜1.2モルのホルムアルデヒドとの縮合によって得ることができる。上記縮合は、溶剤を用いずに行うことができるが、好ましくは、水と不混和性の不活性有機溶剤または部分的にのみ水と混和性の不活性有機溶剤、例えば鉱油、アルコール、エーテル及びこれらの類似物などの有機溶剤の存在下に行われる。特に好ましいものは、水と共沸混合物を形成することができる溶剤である。有用なこのような溶剤は、特に、芳香族化合物、例えばトルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、及び比較的高沸点の市販の溶剤混合物、例えば(R)Shellsol AB及びソルベントナフサである。縮合は好ましくは70〜200℃、例えば90〜160℃の温度で行われる。これは、典型的には、0.05〜5重量%の量の塩基もしくは酸によって触媒する。例えば、アミン、好ましくは第三級アミン、例えばトリエチルアミンによって触媒して縮合し、次いで有機スルホン酸によって中和すると、本発明の混合物が得られる。本発明では、アミンとの縮合の完了時に本発明の油溶性アンモニウムスルホネート類に転化される、有機スルホン酸による触媒作用が好ましい。
【0046】
共添加剤としてのアルキルフェノール−アルデヒド樹脂と本発明のグラフトコポリマーとの混合比は、一般的には20:1〜1:20、好ましくは1:10〜10:1である。
【0047】
好ましい態様の一つでは、中間蒸留物用の本発明の添加剤は、上記グラフトコポリマーの他、成分IIIとしてエチレンとオレフィン性不飽和化合物とからなるコポリマーを一種もしくはそれ以上含む。適当なエチレンコポリマーは、特に、エチレンに加えて、コモノマーを6〜21モル%、特に10〜18モル%含むものである。これらのコポリマーは、好ましくは、140℃において、20〜10000mPas、特に30〜5000mPas、とりわけ50〜2000mPasの溶融粘度を有する。
【0048】
好ましい態様の一つでは、上記コポリマーは、エチレンと6〜21モル%の不飽和エステルからなる。好ましい不飽和エステルは、C2〜C12カルボン酸のビニルエステルである。更に別の好ましい態様の一つでは、上記コポリマーは、エチレンの他に、C2〜C4カルボン酸のビニルエステルを3.5〜20モル%、及びC6〜C12カルボン酸を0.1〜12モル%の割合で含み、かつこの際、コモノマーの全含有率が6〜21モル%、好ましくは10〜18モル%であるものである。
【0049】
上記オレフィン性不飽和化合物は、好ましくは、ビニルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アルキルビニルエーテル及び/またはアルケンであり、そしてこれらの化合物はヒドロキシル基によって置換されていてもよい。一種もしくは二種以上のコモノマーが該ポリマー中に存在することができる。
【0050】
上記ビニルエステルは、好ましくは、次式5で表されるものである。
CH2=CH-OCOR1 (5)
[式中、R1はC1〜C30アルキル、好ましくはC4〜C16アルキル、特にC6〜C12アルキルである]
更に別の好ましい態様の一つでは、上記アルキル基は、一つもしくはそれ以上のヒドロキシル基によって置換されていることができる。
【0051】
更に別の好ましい態様の一つでは、R1は、炭素原子数7〜11、特に8、9もしくは10の分枝状アルキル基もしくはネオアルキル基である。特に好ましいビニルエステルは、分枝鎖がカルボニル基に対してアルファ位置にある第二級カルボン酸及び特に第三級カルボン酸から誘導される。適当なビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、オクタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、及びバーサティック酸エステル、例えばネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ネオウンデカン酸ビニルなどがある。
【0052】
更に別の好ましい態様の一つでは、これらのエチレンコポリマーは、酢酸ビニルと、式5中、R1がC4〜C30アルキル、好ましくはC4〜C16アルキル、特にC6〜C12アルキルである同式で表される少なくとも一種の更に別のビニルエステルとを含む。
【0053】
上記アクリル酸エステルは、好ましくは次式6で表されるものである。
CH2=CR2-COOR3 (6)
[式中、R2は水素もしくはメチルであり、そしてR3はC1〜C30アルキル、好ましくはC4〜C16アルキル、特にC6〜C12アルキルである]
適当なアクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−もしくはイソブチル、(メタ)アクリル酸のヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルエステル、並びにこれらのコモノマーの混合物などが挙げられる。更に別の態様の一つでは、上記のアルキル基は、一つまたはそれ以上のヒドロキシル基によって置換されていてもよい。このようなアクリル酸エステルの例の一つは、ヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0054】
上記アルキルビニルエーテルは、好ましくは次式7の化合物である。
CH2=CH-OR4 (7)
[式中、R4は、C1〜C30アルキル、好ましくはC4〜C16アルキル、特にC6〜C12アルキルである]
これの例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどが挙げられる。更に別の態様の一つでは、上記アルキル基は、一つまたはそれ以上のヒドロキシル基によって置換されていてもよい。
【0055】
上記アルケンは、好ましくは、炭素原子数が3〜30、特に4〜16、とりわけ5〜12のモノ不飽和炭化水素である。適当なアルケンとしては、例えばプロペン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテン、ジイソブチレン及びノルボルネン並びにこれらの誘導体、例えばメチルノルボルネン及びビニルノルボルネンなどが挙げられる。更に別の好ましい態様の一つでは、上記アルキル基は、一つまたはそれ以上のヒドロキシル基によって置換されていることができる。
【0056】
特に好ましいターポリマーは、エチレンの他に、ネオノナン酸ビニルもしくはネオデカン酸ビニルを0.1〜12モル%、特に0.2〜5モル%、及び/または酢酸ビニルを3.5〜20モル%、特に8〜15モル%の割合で含み、かつこの際、コモノマーの全含有率が6〜21モル%、好ましくは12〜18モル%であるものである。更に別の特に好ましいコポリマーは、エチレン及び8〜18モル%のビニルエステルの他に、プロペン、ブテン、イソブチレン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテン、ジイソブチレン及び/またはノルボルネンなどのオレフィンを0.5〜15モル%の割合で含む。
【0057】
好ましくは、上記のエチレンコポリマーの二種もしくはそれ以上のものの混合物を使用する。より好ましくは、上記混合物が基づくそれぞれのポリマーは少なくとも一つの特徴の点で異なるものである。例えば、これらは、異なるコモノマー、異なるコモノマー含有率、分子量及び/または分枝度を有することができる。
【0058】
本発明の添加剤と成分IIIとしてのエチレンコポリマーとの混合比は、用途に依存して広い範囲で変えることができる。この際、エチレンコポリマーIIIはしばしば主割合を占める。このような添加剤混合物は、好ましくは、本発明の添加剤を2〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、及びエチレンコポリマーを30〜98重量%、好ましくは50〜95重量%の割合で含む。
【0059】
本発明において、本発明添加剤の更に別の成分(成分IV)として好適な油溶性極性窒素化合物は、好ましくは、脂肪アミンと、アシル基を含む化合物との反応生成物である。好ましいアミンは、式NR678で表される化合物である。前記式中、R6、R7及びR8は、同一かもしくは異なることができ、そしてこれらの基の中で少なくとも一つはC8〜C36アルキル、C6〜C36シクロアルキルもしくはC8〜C36アルケニル、特にC12〜C24アルキル、C12〜C24アルケニルもしくはシクロヘキシルであり、そして残りの基は、水素、C1〜C36アルキル、C2〜C36アルケニル、シクロヘキシル、または式−(A−O)x−Eもしくは−(CH2n−NYZの基(式中、Aはエチルもしくはプロピル基であり、xは1〜50の数であり、EはH、C1〜C30アルキル、C5〜C12シクロアルキルもしくはC6〜C30アリールであり、そしてnは2、3もしくは4であり、そしてY及びZは、それぞれ独立して、H、C1〜C30アルキルもしくは−(A−O)xである)のいずれかである。上記アルキル及びアルケニル基は、それぞれ線状もしくは分枝状であることができ、そして二つまでの二重結合を含むことができる。これらは、好ましくは線状でかつ実質的に飽和状である。すなわち、これらは、75gI2/g未満、好ましくは60gI2/g未満、特に1〜10gI2/gのヨウ素価を有する。特に好ましいものは、R6、R7及びR8基のうちの二つがそれぞれC8〜C36アルキル、C6〜C36シクロアルキル、C8〜C36アルケニル、特にC12〜C24アルキル、C12〜C24アルケニルもしくはシクロヘキシルである第二級脂肪アミンである。適当な脂肪アミンは、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、エイコシルアミン、ベヘニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジエイコシルアミン、ジベヘニルアミン及びこれらの混合物である。これらのアミンは、特に、天然原料に基づく鎖分を含むものであり、例えばヤシ脂肪アミン、獣脂肪アミン、水素化獣脂肪アミン、ジヤシ脂肪アミン、ジ獣脂肪アミン及びジ(水素化獣脂肪アミン)である。特に好ましいアミン誘導体は、アミン塩、イミド及び/またはアミド、例えば第二級脂肪アミンのアミド−アンモニウム塩、特にジヤシ脂肪アミン、ジ獣脂肪アミン及びジステアリルアミンのアミド−アンモニウム塩である。
【0060】
本明細書においてアシル基とは、次の式で表される官能基を指す。
> C = O
アミンとの反応に好適なカルボニル化合物は、一つもしくはそれ以上のカルボキシル基を有する低分子量もしくは高分子量化合物のいずれかである。好ましいものは、カルボニル基数が2、3もしくは4の低分子量カルボニル化合物である。これらは、酸素、硫黄及び窒素などのヘテロ原子を含むこともできる。適当なカルボン酸は、例えば、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、コハク酸、C1〜C40アルケニルコハク酸、アジピン酸、グルタール酸、セバシン酸、及びマロン酸、並びに安息香酸、フタル酸、トリメリト酸及びピロメリト酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸及びこれらの反応性誘導体、例えばエステル、酸無水物及び酸ハロゲン化物である。有用な高分子量カルボニル化合物は、特に、エチレン性不飽和酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸のコポリマーであることが判明した。特に好ましいものは無水マレイン酸のコポリマーである。適当なコモノマーは、コポリマーに油溶性の性質を与えるものである。ここで油溶性とは、脂肪アミンとの反応の後のコポリマーが、実施の際の使用量において、添加剤配合される中間蒸留物中に残渣を残さず溶解することを意味する。適当なコモノマーは、例えば、オレフィン、アクリル酸及びメタクリル酸のアルキルエステル、アルキルビニルエステル、アルキルビニルエーテルである。これらは、アルキル基中の炭素原子数が2〜75、好ましくは4〜40、特に8〜20である。オレフィンの場合は、二重結合に結合しているアルキル基がこれに該当する。上記高分子量カルボニル化合物の分子量は、好ましくは400〜20000、より好ましくは500〜10000、例えば1000〜5000である。
【0061】
脂肪族もしくは芳香族アミン、好ましくは長鎖脂肪族アミンと、脂肪族もしくは芳香族モノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラカルボン酸もしくはこれらの酸無水物との反応によって得られる油溶性極性窒素化合物が特に有用であることが判明した(US 4 211 534参照)。また、アミノアルキレンポリカルボン酸、例えばニトリロトリ酢酸もしくはエチレンジアミンテトラ酢酸と第二級アミンとのアミド及びアンモニウム塩も同じく油溶性極性窒素化合物として好適である(EP 0 398 101参照)。他の油溶性極性窒素化合物は、無水マレイン酸とα,β−不飽和化合物とのコポリマー(これは、場合によっては、第一級モノアルキルアミン及び/または脂肪族アルコールと反応させてもよい)(EP-A-0 154 177、EP 0 777 712参照)、アルケニル−スピロ−ビスラクトン類とアミンとの反応生成物(EP-A-0 413 279 B1参照)及び、EP-A-0 606 055 A2に従い、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物、α,β−不飽和化合物、及び低級不飽和アルコールのポリオキシアルキレンエーテルに基づくターポリマーの反応生成物である。
【0062】
本発明の添加剤と、成分IVとしての油溶性極性窒素化合物との混合比は用途に応じて変えることができる。このような添加剤混合物は、好ましくは、本発明の添加剤を10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、及び油溶性極性窒素化合物を10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%の割合で含む。
【0063】
本発明の添加剤に共添加剤として適当な櫛状ポリマー(成分V)は、例えば次の式によって表すことができる。
【0064】
【化2】

【0065】
前記式中、
Aは、R'、COOR'、OCOR'、R''-COOR'、OR'であり;
Dは、H、CH3、AまたはR''であり;
Eは、H、Aであり;
Gは、H、R''、R''-COOR'、アリール基または複素環式基であり;
Mは、H、COOR''、OCOR''、OR''、COOHであり;
Nは、H、R''、COOR''、OCOR、アリール基であり;
R'は、炭素原子数8〜50の炭化水素鎖であり;
R''は、炭素原子数1〜10の炭化水素鎖であり;
mは、0.4〜1.0であり; そして
nは、0〜0.6である。
【0066】
本発明の添加剤に共添加剤として適当なポリオキシアルキレン化合物(成分VI)は、例えば、炭素原子数が12〜30のアルキル基を少なくとも一つ有するエステル、エーテル及びエーテル/エステルである。アルキル基が酸に由来する場合には、残りは多価アルコールに由来し、他方、アルキル基が脂肪アルコールに由来する場合には、その化合物の残りの部分はポリ酸に由来する。
【0067】
適当なポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、及び約100〜約5000、好ましくは200〜2000の分子量を有するこれらのコポリマーである。また、ポリオールのアルコキシレート、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、並びにこれらを縮合することによって得ることができるモノマー単位数2〜10のオリゴマー、例えばポリグリセロールのアルコキシレートも好適である。好ましいアルコキシレートは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/またはブチレンオキシドをポリオール1モル当たり1〜100モル、特に5〜50モル有するものである。エステルが特に好ましい。
【0068】
エステル添加剤を形成するためのポリオールとの反応には、炭素原子数12〜26の脂肪酸が好ましい。特に好ましくは、C18〜C24脂肪酸、特にステアリン酸及びベヘン酸を使用する。これらのエステルは、ポリオキシアルキル化したアルコールをエステル化することによっても製造することができる。好ましいものは、分子量が150〜2000、好ましくは200〜600の完全にエステル化されたポリオキシアルキル化ポリオールである。特に好適なものは、PEG−600ジベヘネート及びグリセロールエチレングリコールトリベヘネートである。
【0069】
本発明の添加剤のための共添加剤として好適なオレフィンコポリマー(成分VII)は、モノエチレン性不飽和モノマーから直接誘導することもできるし、またはポリ不飽和モノマー、例えばイソプレンもしくはブタジエンから誘導されるポリマーを水素化することによって間接的に製造することもできる。好ましいコポリマーは、エチレンの他に、炭素原子数3〜24のα−オレフィンから誘導される構造単位を含み、そして120000g/モルまでの分子量を有する。好ましいα−オレフィンは、プロピレン、ブテン、イソブテン、n−ヘキセン、イソヘキセン、n−オクテン、イソオクテン、n−デセン、イソデセンである。オレフィンのコモノマー含有率は、好ましくは、15〜50モル%、より好ましくは20〜35モル%、特に30〜45モル%である。これらのコポリマーは、少量(例えば10モル%まで)の更に別のコモノマー、例えば非末端オレフィンもしくは非共役オレフィンも含むことができる。好ましいものは、エチレン−プロピレンコポリマーである。これらのオレフィンコポリマーは、公知方法、例えばチィグラーもしくはメタロセン触媒を用いて製造することができる。
【0070】
更に別の好適なオレフィンコポリマーは、オレフィン性不飽和芳香族モノマーAから構成されるブロック、及び水素化ポリオレフィンBから構成されるブロックを含む、ブロックコポリマーである。特に好適なブロックコポリマーは、(AB)nA及び(AB)mの構造を有する。ここでnは1〜10であり、mは2〜10である。
【0071】
上記グラフトコポリマーから組成される本発明の添加剤と、上記更に別の成分V、VI及びVIIとの混合比は、各々の場合において一般的には1:10〜10:1、好ましくは各々の場合につき1:5〜5:1である。この際、成分V、VI及びVIIはそれらのうちの一種もしくは二種、または全てが存在することができる。
【0072】
本発明の添加剤は、単独で、または他の添加剤と一緒に使用することができる。このような他の添加剤としては、例えば、他の流動点降下剤もしくは脱蝋助剤、酸化防止剤、セタン価向上剤、曇り除去剤(dehazers)、解乳化剤、界面活性剤、潤滑性添加剤、分散剤、消泡剤、染料、腐蝕防止剤、スラッジ防止剤、臭気剤、及び/または曇り点を下げるための添加剤などである。
【0073】
本発明の添加剤は、動物、植物もしくは鉱物起源の燃料油の低温流動性を向上させるために好適である。
【0074】
加えて、これらは、曇り点未満の温度で中間蒸留物中に析出するパラフィンを分散させる。特に、これらは、芳香族分が25重量%未満、特に22重量%未満、例えば20重量%未満の低芳香族類含有率を有し、そのためにn−パラフィンの溶解性がより低い問題のある油中において、従来の添加剤よりも優れている。中間蒸留物とは、特に、原油を蒸留することによって得られ、そして120〜450℃の範囲で沸騰する鉱油、例えばケロシン、ジェット燃料、ディーゼル油及び加熱油のことを指す。芳香族化合物とは、DIN EN 12916(2001年度版)に従いHPLCを用いて測定することができる、モノ−、ジ−及びポリ環式芳香族化合物の全体を指す。本発明の添加剤は、硫黄を350ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満、特殊なケースでは10ppm未満の量で含む中間蒸留物に特に有利である。これらは、一般的には、水素化条件下に精製に付され、それゆえポリ芳香族及び極性化合物を少量しか含まない中間蒸留物である。これらは、好ましくは、90%留出点が360℃未満、特に350℃未満、特殊なケースでは340℃未満の中間蒸留物である。
【0075】
減少する世界的な鉱油備蓄量や、化石及び鉱油燃料の使用による環境破壊についての議論を背景に、再生可能な原料に基づく代替エネルギー源に対する関心が益々高まっている。これらには、特に、植物もしくは動物起源の天然の油脂が挙げられる。これらは、一般的には、炭素原子数が10〜24の脂肪酸のトリグリセリドであり、そして慣用の燃料に匹敵する発熱量を有する上に、それと同時に、生分解性及び環境適合物とも分類される。
【0076】
動物もしくは植物材料から得られる油は、主に、次の式に相当する、モノカルボン酸、例えば炭素原子数が10〜25の酸のトリグリセリドを含む代謝生成物である。
【0077】
【化3】

【0078】
[式中、Rは、炭素原子数10〜25の脂肪族基であり、飽和もしくは不飽和であることができる]
一般的に、このような油は、その数及び種類が油の起源に応じて様々な一連の酸から構成されるグリセリドを含む。これらはまた、追加的に、ホスホグリセリドも含み得る。このような油は、従来技術から公知の方法によって得ることができる。
【0079】
上記トリグリセリドの物理的性質は時折満足なものではないため、天然に生ずるトリグリセリドを、メタノールもしくはエタノールなどの低級アルコールの脂肪酸エステルに変えることに工業的に力が注がれてきた。また従来技術には、中間蒸留物と、植物もしくは動物起源の油(以下、“生物燃料油”とも言う)との混合物も開示されている。
【0080】
好ましい態様の一つでは、しばしばバイオディーゼルもしくはバイオ燃料とも称される上記生物燃料油は、炭素原子数が12〜24の脂肪酸と炭素原子数が1〜4のアルコールから組成される脂肪酸アルキルエステルを含む。典型的には、脂肪酸のうちの比較的多くのものが、一つ、二つもしくは三つの二重結合を含む。バイオ燃料は、より好ましくは、例えばナタネ油メチルエステルであり、特に、ナタネ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油脂肪酸メチルエステル、パーム油脂肪酸メチルエステル、廃油脂肪酸メチルエステル及び/または大豆油脂肪酸メチルエステルを含む混合物である。
【0081】
動物もしくは植物材料から誘導されかつ本発明の組成物に使用することができる油の例は、ナタネ油、コエンドロ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、ヒマシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、マイズ油、アーモンド油、パーム核油、ヤシ油、カラシナ種油、牛脂、骨油及び魚油である。更に別の例としては、コムギ、ジュート、ゴマ、シアノキの実(Shea tree nut)、ラッカセイ油及びアマニ油などから誘導される油が挙げられる。これらは、前記の油から従来公知の方法によって誘導することができる。また、廃油、例えばフライに使用した油(deep fat fryer oil)から得られた油も使用することができる。好ましいものは、グリセロールで部分的にエステル化された脂肪酸の混合物であるナタネ油である。なぜならば、これは多量に入手すること及び菜種を圧搾することによる簡単な方法で得ることができるからである。加えて、同様に広い地域で入手することができるヒマワリ及び大豆の油、並びにそれらとナタネ油との混合物も好ましい。
【0082】
有用な脂肪酸低級アルキルエステルは、例えば商業的な混合物としては、次のもの、すなわち、炭素原子数が12〜22の脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトール酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸、ガドレイン酸、ドコサン酸もしくはエルカ酸のエチル、プロピル、ブチル、特にメチルエステルである。上記の酸は、各々、好ましくは50〜150、特に90〜125のヨウ素価を有する。特に有利な性質を有する混合物は、炭素原子数が16〜22でかつ1、2もしくは3個の二重結合を有する脂肪酸のメチルエステルを主たる割合(すなわち少なくとも50重量%の割合)で含む混合物である。好ましい脂肪酸低級アルキルエステルは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びエルカ酸のメチルエステルである。
【0083】
上記の種の商業的な混合物は、例えば、動物性もしくは植物性の油脂を水素化及びエステル化するかまたはエステル交換することによって、あるいはこれらを低級脂肪族アルコールとエステル交換することによって得られる。脂肪酸の低級アルキルエステルを製造するためには、ヨウ素価の高い油脂、例えばヒマワリ油、ナタネ油、コエンドロ油、ヒマシ油、大豆油、綿実油、ピーナッツ油もしくは牛脂を原料とすることが有利である。好ましいものは、脂肪酸成分がそれの80重量%を超える割合で炭素原子数18の不飽和脂肪酸から誘導されたものである新しいタイプのナタネ油に基づく脂肪酸低級アルキルエステルである。
【0084】
鉱油起源の中間蒸留物(A)とバイオ燃料(B)との混合物を使用する場合は、これらの成分のA:B混合比は所望の通りに変えることができる。A:Bが99.9:0.1〜0.1:99.9、特に99:1〜1:99、とりわけ95:5〜5:95、例えば85:15〜15:85または80:20〜20:80であることが好ましい。
【0085】
また、合成燃料、例えばフィッシャートロプシュ方法から得ることができるもののような合成燃料と、鉱油起源の中間蒸留物A及び/またはバイオ燃料Bとの混合物を燃料油組成物として使用することもできる。
【実施例】
【0086】
表1:試験油の特徴:
使用した試験油は、ヨーロッパの製油所からの現在一般に流通している油である。CFPP値はEN 116に従い測定し、そして曇り点はISO3015に従い測定した。芳香族炭化水素群は、DIN EN 12916(2001年11月版)に従い測定した。
【0087】
【表1】

【0088】
次の添加剤を使用した:
流動性改善剤として使用したエチレンコポリマー(成分III)の特徴
使用したエチレンコポリマーは、表2に記載の性質を有する商業製品である。これらの製品は、ケロシン中65%及び50%希釈物の形で使用した。
【0089】
粘度は、プレート−コーン測定システムを備えた回転式粘度計(Haake RV20)を用いて140℃で、ISO 3219/Bに従い測定した。
表2: 使用したエチレンコポリマー(成分III)の特徴
【0090】
【表2】

【0091】
使用したアルキルフェノール−アルデヒド樹脂(成分II)の特徴:
B1)ノニルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂,Mw 2000 g/モル
B2)ドデシルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂,Mw 4000 g/モル
B3)C20/24アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂,Mw 3000 g/モル

表3:アクリレートをグラフトしたグラフトコポリマーの特徴:
記載のK値は、トルエン中5重量%濃度溶液を用いて25℃でウベローデに従い測定した。
【0092】
【表3】

【0093】
表4: メタクリレートをグラフトしたグラフトコポリマーの特徴(比較例)
記載のK値は、トルエン中5重量%濃度の溶液を用いて25℃でウベローデに従い測定した。
【0094】
【表4】

【0095】
低温流動性改善剤としての添加剤の効果
中間蒸留物の低温流動性に対する本発明の添加剤の効果を評価するために、本発明の添加剤を、短期沈降試験(short sediment test)で次のように中間蒸留物中で試験した。
【0096】
表に記載の添加剤成分を混合した中間蒸留物150mlを、冷却室内において200mlメスシリンダー中で、−2℃/時(h)の速度で−13℃に冷却し、そしてこの温度で16時間保置した。次いで、沈降したパラフィン相及びそれの上の油相の両方の体積及び外観を、測定及び視覚評価した。少量の沈降物及び不透明な油相は、優れたパラフィン分散性を示す。
【0097】
加えて、容器下方の20体積%分を取り分け、そしてISO3015に従い曇り点を測定する。この下相の曇り点(CPcc)と油の空値との差が僅かであることが優れたパラフィン分散性を示す。
【0098】
記載したグラフトポリマーは100〜150ppmの量で使用する。分散剤は、一般的に、低温流動性改善剤の存在下に使用される。それゆえ、グラフトポリマーの他、適当な低温流動性改善剤が使用された。
試験油1における結果
本発明のグラフトポリマー(成分I)のCFPP効果及び分散作用を、成分III:II:Iの組成を3:0.5:1(重量部)として測定した。
アルキルフェノール−アルデヒド樹脂:(成分II):B1
流動性改善剤(成分III):A1
【0099】
【表5】

【0100】
試験2における結果
本発明のグラフトポリマー(成分I)のCFPP効果及び分散作用を、成分III:II:Iの組成を3:0.5:1(重量部)として測定した。
アルキルフェノール−アルデヒド樹脂:(成分II):B2
流動性改善剤(成分III): 10%のA1と25%のA2との混合物
【0101】
【表6】

【0102】
試験油3における結果
本発明のグラフトポリマー(成分I)のCFPP効果及び分散作用を、成分III:II:Iの組成を4:0.5:1(重量部)として測定した。
アルキルフェノール−アルデヒド樹脂:(成分II):B1
流動性改善剤(成分III):10%のA2と15%のA3との混合物
【0103】
【表7】

【0104】
試験油4における結果
本発明のグラフトポリマー(成分I)のCFPP効果及び分散作用を、成分III:II:Iの組成を3:0.5:1(重量部)として測定した。
アルキルフェノール−アルデヒド樹脂:(成分II):B1
流動性改善剤(成分III):A3
【0105】
【表8】

【0106】
試験油5における結果
本発明のグラフトポリマー(成分I)のCFPP効果及び分散作用を、成分III:II:Iの組成を4:0.5:1(重量部)として測定した。
アルキルフェノール−アルデヒド樹脂:(成分II):B1
流動性改善剤(成分III):A2
【0107】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンの他に酢酸ビニルを3.5〜21モル%及び炭素原子数3〜30の少なくとも一種のアルケンを0.5〜16モル%の割合で含むコポリマー(b)に、C8〜C22アルコールとアクリル酸とのエステル(a)をグラフトすることによって得ることができる、グラフトコポリマー。
【請求項2】
1000〜10000g/モルの分子量(Mn)を有する、請求項1のグラフトコポリマー。
【請求項3】
1〜10の分子量分布Mw/Mnを有する、請求項1または2のグラフトコポリマー。
【請求項4】
エチレンの他に酢酸ビニルを7.5〜15モル%の割合で含む基本ポリマーb)から製造された、請求項1〜3のいずれか一つのグラフトコポリマー。
【請求項5】
エチレン、アルケン及び酢酸ビニルの他に更に別のオレフィン性不飽和モノマーも1〜16モル%の割合で含む基本ポリマーb)から製造された、請求項1〜4のいずれか一つのグラフトコポリマー。
【請求項6】
アルケンが、プロペン、ブテン、イソブチレン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテン、ジイソブチレンまたはノルボルネンから選択される、請求項5のグラフトコポリマー。
【請求項7】
グラフト成分a)と基本ポリマーb)の重量比が4:1〜1:4である、請求項1〜6のいずれか一つのグラフトコポリマー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載のグラフトコポリマーを含む他、かつそれに加えて、エチレンの他にC2〜C4カルボン酸のビニルエステル3.5〜20モル%及びC6〜C12カルボン酸0.1〜12モル%を含むが、この際コモノマーの全含有率が6〜21モル%であるコポリマーを含む組成物。
【請求項9】
前記コポリマーが、エチレンの他に、酢酸ビニル3.5〜20モル%及び/またはネオノナン酸ビニルもしくはネオデカン酸ビニル0.1〜12モル%を含み、かつ全コモノマー含有率が6〜21モル%である、請求項8の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つのグラフトコポリマーを含む他、それに加えて、エチレン及び8〜18モル%のビニルエステルの他、プロペン、ブテン、イソブチレン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテン、ジイソブチレンまたはノルボルネンから選択されるオレフィンも0.5〜15モル%の割合で含むコポリマーを含む組成物。
【請求項11】
上記コポリマーが、20〜10000mPasの溶融粘度を有する、請求項8、9または10の組成物。
【請求項12】
更に追加的に、次式で表される少なくとも一種のアルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を含む、請求項1〜11のいずれか一つの組成物。
【化1】

[式中、R5はC4〜C30アルキルまたはC4〜C30アルケニルであり、そしてnは2〜50である]
【請求項13】
更に追加的に、炭素原子数8〜36の第一級及び/または第二級脂肪アミンのアミン塩、イミドまたはアミドの少なくとも一種を含む、請求項1〜12のいずれか一つの組成物。
【請求項14】
更に追加的に、マレイン酸、フマル酸及び/またはイタコン酸のアミド、イミド及び/またはエステルから誘導される少なくとも一種のコポリマーを含む、請求項1〜13のいずれか一つの組成物。
【請求項15】
更に追加的に、次式の櫛状ポリマーを含む、請求項1〜14のいずれか一つの組成物。
【化2】

[式中、
Aは、R'、COOR'、OCOR'、R"-COOR'またはOR'であり;
Dは、H、CH3、AまたはRであり;
Eは、HまたはAであり;
Gは、H、R"、R"-COOR'、アリール基または複素環式基であり;
Mは、H、COOR"、OCOR"、OR"またはCOOHであり;
Nは、H、R"、COOR"、OCOR、COOHまたはアリール基であり;
R'は、炭素原子数8〜150の炭化水素鎖であり;
R"は、炭素原子数1〜10の炭化水素鎖であり;
mは、0.4〜1.0であり; そして
nは、0〜0.6である]
【請求項16】
F1 鉱物起源の燃料油、及び/または
F2 動物及び/または植物起源の燃料油、及び/または
F3 フィッシャートロプシュ方法により製造される燃料油、及び
請求項1〜15のいずれか一つの添加剤、
を含む燃料油組成物F。
【請求項17】
成分F2が、炭素原子数12〜24のモノカルボン酸と炭素原子数1〜4のアルコールとの一種または二種以上のエステルを含む、請求項16の燃料油組成物。
【請求項18】
アルコールがメタノールまたはエタノールである、請求項17の燃料油組成物。
【請求項19】
成分F2が、飽和脂肪酸のエステルを5重量%を超える割合で含む、請求項16〜18のいずれか一つの燃料油組成物。
【請求項20】
成分F2が2体積%を超える割合で存在する、請求項16〜19のいずれか一つの燃料油組成物。
【請求項21】
成分F3が2体積%を超える割合で存在する、請求項16〜20のいずれか一つの燃料油組成物。
【請求項22】
燃料油の低温流動性及びパラフィン分散性を向上するための、請求項1〜7のいずれか一つのグラフトコポリマーの使用。

【公開番号】特開2006−183051(P2006−183051A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368937(P2005−368937)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(597109656)クラリアント・プロドゥクテ・(ドイチュラント)・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (115)
【Fターム(参考)】