説明

エチレンアクリレート(AEM)、ポリアクリレート(ACM)および/または水素化アクリロニトリル(HNBR)ベースのゴム化合物を含有する改善された加硫可能なグアニジンを含まない混合物、この加硫可能な混合物を架橋させることによって製造される加硫物ならびにそれらの使用

【課題】エチレンアクリレート(AEM)、ポリアクリレート(ACM)および/または水素化アクリロニトリル(HNBR)ベースのゴム化合物を含有する改善された加硫可能なグアニジンを含まない混合物、この加硫可能な混合物を架橋させることによって製造される加硫物ならびにそれらの使用を提供する。
【解決手段】本発明は、改善された耐スコーチ性を有するエチレンアクリレート(AEM)、ポリアクリレート(ACM)および/または水素化アクリロニトリル(HNBR)ベースのゴム化合物を含有する加硫可能なグアニジンを含まない混合物に、この加硫可能な混合物を架橋させることによって製造される加硫物ならびに自動車、油田および/または海洋用途でのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された耐スコーチ性を有するエチレンアクリレート(AEM)、ポリアクリレート(ACM)および/または水素化アクリロニトリル(HNBR)ベースのゴム化合物を含有する加硫可能なグアニジンを含まない混合物に、この加硫可能な混合物を架橋させることによって製造される加硫物ならびに自動車、油田(oil-field)および/または海洋(off-shore)用途でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車および工業用途における高性能エラストマーに対する需要は、自動車の構成部品の複雑なデザインだけでなく特殊な要件のために大幅に増大してきている。改善された耐スコーチ性だけでなくこれらの要件を満たす、新規材料が強く求められている。
【0003】
少量のブテン二酸モノアルキルエステル硬化部位モノマーを含むエチレンアクリレート(AEM)エラストマーおよびポリアクリレート(ACM)エラストマーは、それらの優れた耐潤滑油性および耐グリース性、耐熱性および耐圧縮永久歪み性、機械的靱性ならびにそれらの低い脆化温度のために自動車工業で広く使用されている。したがって、それらは、ガスケットおよびシール、様々なタイプの自動車ホース、スパークプラグブーツおよび類似のエンジン室ゴム構成部品用に好適である。
【0004】
典型的にはそれらの製品は、未架橋(すなわち未加硫ゴム状物質)コポリマーと様々なフィラーおよび他の添加剤と一緒にジアミン硬化剤とのブレンドをプレス硬化ステップで十分な時間、温度および圧力で架橋させて共有化学結合を達成することによって製造される。
【0005】
AEMターポリマー、促進剤としてのグアニジンと組み合わせて硬化剤としてのヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる硬化系が十分に確立されている。異なるグアニジン誘導体が、意図される用途に応じて使用されている。これは、すなわち良好な耐屈曲性および伸びが必要とされる場合には、ジフェニルグアニジン(DPG)が、または最良の圧縮永久歪みが求められる場合には、ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)が好ましいことを意味する。
【0006】
HNBR−ポリマーは、すなわち(特許文献1)に従って加硫することができる。AEMまたはACMベースのポリマーは、促進剤としてのグアニジンと組み合わせて硬化剤としてヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)を使用することによって加硫することができる。
【0007】
促進剤としてグアニジンを含有する系はよく知られているが、これらのグアニジンは、それらの危険性についてずっと国民的論議の対象であった。グアニジンは、仕事場区域における医学的および毒性学的側面に関して疑問を提起した。グアニジン促進剤での加硫メカニズムに関して行われた幾つかの研究は、加硫中の高められた温度では、芳香族アミン(例えばアニリンまたはo−トルイジン)などの反応生成物が考慮されねばならないことを示した。
【0008】
(特許文献2)は、良好な圧縮永久歪み特性を達成するために加硫剤としてのヘキサメチレンジアミンまたはヘキサメチレンジアミンカルバメートおよび促進剤としての4,4’−メチレンジアニリンをアクリル酸エステル/ブテンジオン酸モノエステル二元重合体またはエチレン/アクリル酸エステル/ブテンジオン酸モノエステル三元重合体と混合することによって得られるエラストマー組成物を提案している。芳香族アミン促進剤4,4’−メチレンジアニリンはそれ自体、アニリンまたはo−トルイジンのように、その発癌性および毒性学的潜在性のために問題がある。これらの芳香族アミンの幾つかは、明白に発癌性として分類されてきたし、それ故このため危険性物質リストの第1カテゴリーに含められている。例えばo−トルイジンは、(非特許文献1)でカテゴリー1発癌物質として分類された。このリスト記載は、それらのリスク潜在性に従って物質を分類する立法プロセスの根拠である。発癌物質クラス1としてリストされている、または使用中に副生物としてかかる物質を放出することを知られている物質は、それらがヒトの健康へ悪影響を有する可能性があり、かつ、それらがREACH下の特別承認を必要とする物質のリストに含められるであろう高い可能性があるので、避けられるべきである。ヒトの健康へのo−トルイジンの有害影響に焦点を合わせた広範な研究は、この促進剤に代わる危険性がより少ない代替品の開発の必要性を強調してきた。o−トルイジンは、少量でのみジ−o−トルイルグアニジン(DOTG)を促進剤として含有するゴムからもまた放出される。
【0009】
グアニジンベースの促進剤系でのヒトの健康に関する前述のリスクのために、ジアミン硬化を加速するための代替の系が導入されてきた。加硫促進剤の一つの代替の系は、(特許文献3)に記載されている。これは、
(1)アミン、その塩、アミジン、その塩およびそれらの混合物からなる群から選択される第1加硫促進剤、
(2)ベンゾチアゾール誘導体またはその亜鉛塩、メルカプト−ベンズイミダゾール誘導体またはその亜鉛塩、ジチオホスフェート(C〜C32)誘導体または亜鉛−ジチオホスフェート(C〜C32)誘導体、チウラム誘導体、亜鉛−ジチオカルバメート誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される第2加硫促進剤
を含む、加硫促進剤の組成物に関する。
【0010】
しかしながら、加硫促進剤の上述の組成物を含む全てのグアニジン代替品は、格段に低いスコーチ安全性を示す。これは、その一方で、生産プラントでの配合物の加工において望まれない影響を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−56793号公報
【特許文献2】特開昭50−45031号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第A2033989号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】2006 MAK and BAT Value List of the Deutsche Forschungsgemeinschaft(German Research Foundation)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的はそれ故、グアニジンを含有しない、かつ−同時に−高いスコーチ安全性をもたらす、ゆえに管理可能な加硫プロセスをもたらす、ジアミン架橋系のための代替促進剤系を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、エチレンアクリレート(AEM)、ポリアクリレート(ACM)および/または水素化アクリロニトリル(HNBR)ベースのゴムと、ある種の促進剤および加硫遅延剤の混合物とを含有するグアニジンを含まない加硫可能な混合物がこの目的を達成することが今見いだされた。
【0015】
本発明はそれ故、エチレンアクリレート(AEM)、ポリアクリレート(ACM)および/または水素化アクリロニトリル(HNBR)ベースのゴムと、C〜C12非芳香族アミン、アミジンならびにそれらの塩および任意の混合物から選択される少なくとも1種の加硫促進剤と、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、無水フタル酸および/またはC〜C24ジカルボン酸(a)、および/またはカルボジイミド(b)および/またはポリカルボジイミド(c)ならびに上述の加硫遅延剤の任意の混合物を含む少なくとも1種の加硫遅延剤系とを含有する、グアニジンを含まない加硫可能な混合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ポリマーAEM、ACMおよび/またはHNBRは、当該技術分野ではよく知られており、商業的に入手可能であるか、文献に十分に記載される方法に従って当業者によって製造されてもよいかのどちらかである。
【0017】
これらの公知のAEM系および/またはACM系は、例えば、本発明へ参照により援用される、欧州特許出願公開第1 378 539 A号明細書(ACMゴム系)、米国特許第2,599,123号明細書(AEMゴム系)および欧州特許出願公開第1 499 670 A号明細書(AEMゴム系)に開示されている。
【0018】
さらに、それぞれのACMゴムは、商標Noxtite(登録商標)でUnimatecからまたは商標HY Temp(登録商標)AR PolymerでZeonから商業的に入手可能であり、それぞれのAEMゴムは、商標Vamac(登録商標)PolymerでDuPontから商業的に入手可能である。
【0019】
本発明による水素化アクリロニトリル(HNBR)ベースのゴムは、欧州特許第08022135.1号明細書および欧州特許第09164539.0号明細書に記載されている。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態では、水素化アクリロニトリル(HNBR)ベースのポリマー系は、本発明へ参照により援用される、欧州特許第08022135.1号明細書および欧州特許第09164539.0号明細書に開示されているような、
(ia)ポリマーを基準として、少なくとも25%〜95重量%、好ましくは25〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは45〜75重量%の少なくとも1種のジエンモノマー、すなわち1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、および1,3−ペンタジエンのようなジエンモノマーと、
(ib)ポリマーを基準として、0.1〜74.9重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲のα,β−エチレン系不飽和ニトリルモノマー、すなわちアクリロニトリル、アルキル=C〜C12アルキルの、α−アルキルアクリロニトリル、および/またはハロ=F、Cl、BrおよびIの、α−ハロアクリロニトリルのようなニトリルモノマーと、
(ic)第3モノマーとして0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1.5〜10重量%の範囲の少なくとも1種のα,β−エチレン系不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン系不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン系不飽和ジカルボン酸無水物モノマーまたはα,β−エチレン系不飽和ジカルボン酸ジエステルと
から誘導される主ポリマー鎖を有するポリマーであって、
(ia)、(ib)および(ic)下で言及された全モノマー単位の合計が100重量%であるポリマーを含む加硫可能なポリマー組成物である。
【0021】
本発明による特に好ましいポリマー組成物は、
(i)(ia)少なくとも1種の共役ジエンと、
(ib)少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルと、
(ic)少なくとも1種のα,β−エチレン系不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン系不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン系不飽和ジカルボン酸無水物モノマーまたはα,β−エチレン系不飽和ジカルボン酸ジエステルと
から誘導される任意選択的に水素化されたニトリルポリマー
を含む。
【0022】
水素化ニトリルゴムは、様々な前記のモノマー単位と、すなわちおよび特にジエンモノマー、α,β−エチレン系不飽和ニトリルモノマー、α,β−エチレン系不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマーと共重合できるそれらの(ia)、(ib)および(ic)以外の他のモノマー単位の繰り返し単位を含有してもよい。かかる他のモノマーとして、α,β−エチレン系不飽和カルボン酸エステル(α,β−エチレン系不飽和ジカルボン酸モノエステル以外の)、芳香族ビニル、フッ素含有ビニル、α,β−エチレン系不飽和モノカルボン酸、および共重合可能な老化防止剤が使用されてもよい。
【0023】
追加のα,β−エチレン系不飽和カルボン酸エステルモノマー(α,β−エチレン系不飽和ジカルボン酸モノエステル以外の)として、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなどの、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキルアクリレートエステルおよびアルキルメタクリレートエステル;メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレートなどの、アルコキシアルキルの炭素数が2〜12であるアルコキシアルキルアクリレートおよびアルコキシアルキルメタクリレート;α−αシアノエチルアクリレート、β−シアノエチルアクリレート、シアノブチルメタクリレートなどの、シアノアルキル基の炭素数が2〜12であるシアノアルキルアクリレートおよびシアノアルキルメタクリレート;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレートなどの、ヒドロキシアルキル基の炭素数が1〜12であるヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレート;フルオロベンジルアクリレート、フルオロベンジルメタクリレートなどのフッ素置換ベンジル基含有アクリレートおよびフッ素置換ベンジル基含有メタクリレート;トリフルオロエチルアクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレートなどのフルオロアルキル基含有アクリレートおよびフルオロアルキル基含有メタクリレート;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチルなどの不飽和ポリカルボン酸ポリアルキルエステル;ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレートなどのアミノ基含有α,β−エチレン系不飽和カルボン酸エステルなどが提案されてもよい。
【0024】
コポリマーの水素化は、当業者に公知の方法で行うことができる。ニトリルゴムの好適な水素化方法は、例えば米国特許第3,700,637号明細書、DE−PS 2 539 132、欧州特許出願公開第A 134023号明細書、独国特許出願公開第A 35 40 918号明細書、欧州特許出願公開第A 298386号明細書、独国特許出願公開第A 35 29 252号明細書、独国特許出願公開第A 34 33 392号明細書、米国特許第4,464,515号明細書および米国特許第4,503,196号明細書に記載されている。
【0025】
前記のニトリルゴムの製造方法は特に限定されない。一般に、α,β−エチレン系不飽和ニトリルモノマー、α,β−エチレン系不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、ジエンモノマーまたはα−オレフィンモノマー、および要求に従って加えられるものと共重合することができる他のモノマーが共重合させられる方法が便利であり、かつ、好ましい。重合法として、周知の乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法および溶液重合法のいずれかを用いることができるが、乳化重合法が、重合反応の制御の簡単さから好ましい。共重合によって得られるコポリマー中の残存炭素−炭素二重結合の含有率が前記範囲より上である場合、コポリマーの水素化(水素添加反応)が行われてもよい。かかる水素化方法は特に限定されず、周知の方法が採用されてもよい。
【0026】
AEM、ACMおよびHNBRポリマーは全て、さらなる成分として任意選択的に少なくとも1種の酸化防止剤、フィラーおよび/または架橋剤を含有する。
【0027】
本発明による促進剤は、C〜C12非芳香族アミン、アミジンならびにそれらの塩および任意の混合物のような加硫反応を加速する化学試剤である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態として、促進剤混合物は、アミジンとして1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)または1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセン−5(TBD)および/または7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセン−5(MTBD)およびその誘導体を含む。これらから、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7が最も好ましい。全てのこれらのアミジンは商業的に入手可能な製品である。
【0029】
これらの化合物はよく知られており、商業的に入手可能である、すなわち1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)は、商標Lupragen(登録商標)N700でBASFから商業的に入手可能である。
【0030】
本発明に従って使用することができる、C〜C12非芳香族アミンは、すなわちジエチルアミンおよびジシクロヘキシルアミン;ブチルアミンおよびシクロヘキシルアミンおよび/またはジシクロヘキシルアミンのような、全ての第一級、第二級または第三級アルキルアミンである。安全な製造プロセスの観点から、ジシクロヘキシルアミンのような、100℃より高い引火点を有するアミンが最も好ましい。アミンは全て商業的に入手可能な製品である。
【0031】
加硫促進剤は、各場合に本発明による組成物中のポリマーの総量に関して、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜8重量%、最も好ましくは1.0〜5.0重量%の量で本発明による組成物に含有されてもよい。
【0032】
加硫遅延剤は、段階的な化学反応の律速段階を減速する化学試剤である。例えば、加硫遅延剤は、硫黄架橋(硬化または加硫としても知られる)の開始を遅らせるために使用される。任意の種類の硬化系に2、3分の加工安全性を加える(Mooneyスコーチ時間を増やす)ための既存調合物への添加剤だけでなく加硫遅延剤も配合物調製中に有用でありうる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、加硫遅延剤は、本発明による組成物中のポリマーの総量を基準として、0.1〜7重量%、好ましくは0.3〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%の量で使用される。
【0034】
本発明の好ましい一実施形態では、酸が本発明による加硫遅延剤として使用される。本発明による酸(a)は、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、無水フタル酸および/またはC〜C24ジカルボン酸である。これらの酸は商業的に入手可能な製品である。
【0035】
本発明のさらに好ましい実施形態では、加硫遅延剤はカルボジイミド(b)である。
【0036】
カルボジイミドが例えばアクリルポリマー中で前述の促進剤と組み合わせて使用される場合、加硫は遅らされ、配合物は改善された耐スコーチ性を示す。
【0037】
本発明に使用されるカルボジイミド化合物は、一般に周知の方法によって合成することができるか、または商業的に入手可能である。化合物は、例えば、いかなる溶媒も不活性溶媒も使用することなく、約70℃以上の温度で触媒として有機リン化合物または有機金属化合物を使用して様々なポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応を行うことによって得ることができる。
【0038】
上記のカルボジイミド化合物に含められるモノカルボジイミド化合物の例は、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、第三ブチルイソプロピルカルボジイミド、2,6−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−第三ブチルカルボジイミドおよびジ−β−ナフチルカルボジイミドであり、それらの中で、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたはジイソプロピルカルボジイミドが工業的規模での入手可能性を考慮して特に好ましい。
【0039】
本発明の別の実施形態では、ポリカルボジイミド(c)が使用される。これらのポリカルボジイミドは、商業的に入手可能であるかまたはポリカルボジイミドの従来の製造方法[例えば、米国特許第2,941,956号明細書;特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28(1963),2069−2075ページおよびChemical Review、Vol.81(1981)、No.4、619−621ページに開示されている方法]によって製造することができる。
【0040】
カルボジイミド化合物は、特に4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=2〜20)、テトラメチルキシリレンカルボジイミド(重合度=2〜20)、N,N−ジメチルフェニルカルボジイミド(重合度=2〜20)およびN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド(重合度=2〜20)などを含み、化合物が少なくとも1個のカルボジイミド基を分子中に有する限り特に限定されない。
【0041】
本発明の意味内で、好適なカルボジイミドは、特に単量体、二量体または高分子カルボジイミドである。
【0042】
以下に、好ましいカルボジイミド化合物の幾つかの態様が詳細に記載される。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の立体障害のあるカルボジイミドが加硫遅延剤として使用される。
【0044】
本発明の別の実施形態では、加硫遅延剤は少なくとも1種の単量体または二量体カルボジイミドである。
【0045】
好ましくは式(II)
R’−(N=C=N−R)−R” (I)
(式中
− Rは、芳香族、脂肪族、脂環式またはアラルキレン基を表し、芳香族またはアラルキレン残基の場合に、カルボジイミド基を有する芳香族炭素原子に対して少なくとも1つのオルト位に、好ましくは両オルト位に、少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族および/または脂環式置換基、好ましくは少なくとも3個の炭素原子を有する分岐もしくは環状の脂肪族基を有していてもよく、
− R’は、アリール、アラルキルまたはR−NCO、R−NHCONHR、R−NHCONRおよびR−NHCOORを表し、
− R”は、−N=C=N−アリール、−N=C=N−アルキル、−N=C=N−シクロアルキル、−N=C=N−アラルキル、−NCO、−NHCONHR、−NHCONRまたは−NHCOORを表し、ここで、R’およびR”において、互いに独立して、RおよびRは同じものかまたは異なるものであり、アルキル、シクロアルキルまたはアラルキル基を表し、RはRの意味の1つを有するかまたはポリエステルもしくはポリアミド基を表し、
nは、2〜5,000、好ましくは2〜500の整数を表す)
の少なくとも1種の二量体カルボジイミドまたはポリカルボジイミドが使用される。
【0046】
このモードの第1の好ましい実施形態では、Rは、芳香族またはアラルキレン残基の場合に、カルボジイミド基を有する芳香族炭素原子に対して少なくとも1つのオルト位に、好ましくは両オルト位に、少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族および/または脂環式置換基、好ましくは少なくとも3個の炭素原子を有する分岐もしくは環状の脂肪族基、より好ましくはイソプロピル残基を有する芳香族またはアラルキレン基を表す。
【0047】
特に、カルボジイミド基を有する芳香族炭素原子に対してオルト位がイソプロピル基で置換されている、およびカルボジイミド基を有する芳香族炭素原子に対してパラ位もまたイソプロピル基で置換されている、一般式(I)または(II)のそれらのカルボジイミドが好ましい。
【0048】
高分子カルボジイミドのさらに好ましい実施形態では、Rは、C〜Cアルキル部分、好ましくはC〜C部分によってカルボジイミド基と結合している、芳香族残基を表す。
【0049】
さらに、例えば日清紡によって商業的に入手可能である例えばイソホロンジアミンに基づく、高分子脂肪族カルボジイミドを使用することができる。
【0050】
本発明のこのモードでは、カルボジイミドは好ましくは一般式(II)
【化1】

(式中、残基R〜Rは互いに独立して、線状分岐のC〜C20シクロアルキル残基、C〜C15アリール残基またはC〜C15アラルキル残基を表す)
で表される。
【0051】
残基R〜RはC〜C20アルキルまたはC〜C20シクロアルキル残基であることが好ましい。
【0052】
残基R〜RはC〜C20アルキル残基であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明では、C〜C20アルキルおよびC〜C20シクロアルキルは好ましくは、エチル、プロピル、イソプロピル、第二ブチル、第三ブチル、シクロヘキシルおよび/またはドデシルを表し、それによって残基イソプロピルが特に好ましい。
【0054】
本発明では、C〜C15アリールおよびC〜C15アラルキルは好ましくは、フェニル、トリル、ベンジルまたはナフチルを表す。
【0055】
式(III)
【化2】

による1つの単量体カルボジイミドの使用が特に好ましい。
【0056】
加硫遅延剤として使用されるポリカルボジイミド(c)は、商品名Stabaxol(登録商標)P、Stabaxol(登録商標)P100、Stabaxol(登録商標)P200およびStabaxol(登録商標)P400で例えばRhein Chemie Rheinau GmbHから、商業的に入手可能な製品である。さらに、それぞれのカルボジイミドは、商品名Stabilisator 2000、9000および11000でRaschigから商業的に入手可能である。
【0057】
あるいはまた、それらは、当業者によってよく知られる方法に従って製造することができる。一般式(I)〜(III)のカルボジイミドおよび/またはポリカルボジイミドを製造するために、そのモノ−またはジイソシアネートは、二酸化炭素の放出と共に触媒の存在下に、高められた温度で、例えば40〜200℃で出発化合物として縮合させることができる。好適な方法は、独国特許出願公開第A−11 30 594号明細書におよび仏国特許第1 180 370号明細書に記載されている。
【0058】
一般式(II)の高分子カルボジイミドは、イソシアネート化合物と末端反応させられてもよい。
【0059】
カルボジイミドはまた、異なるカルボジイミドの混合物として使用されてもよい。
【0060】
本発明のさらなる実施形態では、異なるカルボジイミドの混合物が使用されることもまた可能である。異なるカルボジイミドの混合物が使用される場合、使用されるカルボジイミドは、単量体、二量体および高分子カルボジイミドからなる群から選択されてもよい。単量体、二量体および高分子カルボジイミドについて、上の説明が参照される。
【0061】
さらに、使用されるカルボジイミドは遊離イソシアネートの低下した含有率を有することが好ましい。好ましいカルボジイミドは、1重量%より低い遊離イソシアネートの低下した含有率を有する。
【0062】
本発明による系は、古典的な理解の方法での組成物として理解されるのみならず、本発明による系の定義として、ゴムの加硫プロセス中の任意の時点でポリマーの製造における促進剤の系および加硫遅延剤の系の併用または別個の使用を更に含む。
【0063】
本発明の好ましい一実施形態では、カルボジイミドは、加硫遅延剤として少なくとも2種の異なるカルボジイミドの混合物として使用される。
【0064】
上述の本発明による加硫促進剤は、沈澱および溶融シリカ、カーボンブラックもしくは他の無機材料などの少なくとも1種の微粒子フィラー上に沈着されてもよいし、またはポリマー結合材料として使用されてもよい。
【0065】
本発明の別の好ましい実施形態では、加硫可能な混合物は、シリカ、カーボンブラック、粘土、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウムからなる群から選択されるフィラーをさらに含む。
【0066】
本発明の別の好ましい実施形態では、加硫可能な混合物は、分散剤および可塑剤からなる群から選択される添加剤をさらに含む。
【0067】
任意選択的に、本発明による加硫可能なポリマー組成物は、ジアミン架橋剤に加えて1種以上の追加の加硫剤をさらに含んでもよい。かかる追加の加硫系は当該技術分野でよく知られており、その選択は当業者の理解範囲内にある。
【0068】
一実施形態では、有機過酸化物(例えば、ジクミルペルオキシドまたは2,2’−ビス(第三ブチルペルオキシジイソプロピルベンゼン))が本発明によるポリマー組成物に追加の加硫剤として使用されてもよい。
【0069】
別の実施形態では、硫黄または別の通常の硫黄含有加硫剤またはそれらの混合物でさえも、本発明によるポリマー組成物に追加の加硫剤として使用されてもよい。好適な追加の硫黄含有加硫剤、例えばVulkacit(登録商標)DM/C(ベンゾチアジルジスルフィド)、Vulkacit(登録商標)Thiuram MS/C(テトラメチルチウラムモノスルフィド)、およびVulkacit(登録商標)Thiuram/C(テトラメチルチウラムジスルフィド)は商業的に入手可能である。例えば過酸化亜鉛のようなさらなる過酸化物をかかる硫黄ベースの加硫剤に添加することさえも好適である可能性がある。
【0070】
本発明の別の好ましい実施形態では、加硫可能な混合物は、アクリレートゴム(ACM)、エチレンアクリレートゴム(AEM)、エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)、エチレンプロピレンコポリマー(EPM)、エチレン酢酸ビニル(EVM)、エチレンメチルアクリレート(EMA)、アクリロニトリル−ジエンコポリマー(NBR)、水素化アクリロニトリル−ジエンコポリマー(HNBR)およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の追加のポリマーを結合剤としてさらに含む。
【0071】
本発明は、エチレンアクリレート(AEM)、ポリアクリレート(ACM)および/または水素化アクリロニトリル(HNBR)ベースのゴムと、アミン、アミジンならびに上述の促進剤の塩および任意の混合物から選択される少なくとも1種の加硫促進剤と、(a)酸、好ましくは安息香酸、サリチル酸、フタル酸、無水フタル酸および/またはC〜C24ジカルボン酸、および/または(b)カルボジイミド、および/または(c)ポリカルボジイミドならびに上述の加硫遅延剤の任意の混合物を含む少なくとも1種の加硫遅延剤とが、すなわち
・ ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン−桂皮アルデヒド付加体、またはヘキサメチレンジアミン−ジベンゾエート塩および/または
・ 芳香族ポリアミン、好ましくは2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン
などの、ポリアミン、好ましくはジアミンまたはジアミンカルバメートをベースとする硬化系を使用することによって架橋されることを特徴とする、本発明による加硫物の製造方法をさらに提供する。
【0072】
これらの中で、脂肪族ポリアミンが好ましく、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが特に好ましい。
【0073】
架橋可能なポリマー組成物中のポリアミン架橋剤の含有率は、ポリマーの100重量部を基準として0.2〜20重量部の範囲に、好ましくは0.5〜10重量部の範囲に、より好ましくは1.0〜5重量部にある。
【0074】
ポリマー加硫物のかかる製造方法において、エチレンアクリレート(AEM)、ポリアクリレート(ACM)および/または水素化アクリロニトリル(HNBR)ベースのゴムと、ポリアミン架橋剤と、非芳香族アミン、アミジン、ならびにそれらの塩および任意の混合物から選択される少なくとも1種の加硫促進剤と、(a)安息香酸、サリチル酸、フタル酸、無水フタル酸および/またはC〜C24ジカルボン酸、および/または(b)カルボジイミド、および/または(c)ポリカルボジイミドを含む少なくとも1種の加硫遅延剤系と、任意選択的に酸化防止剤、フィラーおよび他の通常の添加剤との混合は、当該技術分野で公知の任意の従来法で行われてもよい。例えば、全ての成分は、2ロールゴムミルでまたは内部ミキサーで混合されてもよい。
【0075】
従って、ポリマー組成物は従来法で混合され、製造され、混合中の温度は、当該技術分野で公知であるように維持される。使用されるゴムおよび選択される他の成分の具体的な種類に常に依存して、80〜130℃の範囲の温度が典型的には適用可能であることが分かった。
【0076】
本方法の典型的な実施形態では、当該技術分野でまたよく知られている従来手順を用いてポリマー組成物を加熱してゴム加硫物を形成することがその結果として好ましい。好ましくは、加硫可能なゴム組成物は約130℃〜約200℃、好ましくは約140℃〜約190℃、より好ましくは約150℃〜約180℃の範囲の温度に加熱される。好ましくは、この加熱は約1分〜約15時間、より好ましくは約5分〜約30分の期間行われる。
【0077】
さらなる実施形態では、本発明は、先に述べられた方法によって得られるポリマー加硫物に関する。
【0078】
本発明の別の好ましい実施形態では、ジアミンまたはジアミンカルバメートが硬化系として使用される。
【0079】
本発明は、自動車、油田分野および/または海洋用途向けの本発明加硫物の使用をさらに提供する。
【0080】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、それらに限定されることなく、より詳細に説明される。
【実施例】
【0081】
実施例1:
表1に提示される加硫可能な混合物は、加硫剤と、ヘキサメチレンジアミンカルバメートと、加硫遅延剤としてのStabaxol(登録商標)Iと組み合わせて、またはそれなしで群から選択される異なる促進剤としてのRhenogran(登録商標)DOTG(ジ−オルト−トリル−グアニジン)またはRhenogran(登録商標)XLA(欧州特許出願公開第A 2033989号明細書による)を含む加硫系を使って製造された、一連の3配合物の比較評価を示す。
【0082】
phr単位での配合物A、B、CおよびDのための原料を表1にまとめる。
【0083】
【表1】

【0084】
Hy Temp(登録商標)ACM−AR 12:Zeon Chemicals L.P.から商業的に入手可能なアクリルポリマー(ACM)
Corax(登録商標)N−550:Evonik Degussaから商業的に入手可能なカーボンブラック
Vanfre(登録商標)VAM:界面活性剤/加工剤としてC.H.Erbsloehから商業的に入手可能なホスフェートエステル
ステアリン酸:オクタデカン酸は、界面活性剤/加工剤としてFaci、Italyから商業的に入手可能な飽和脂肪酸である。
Aflux(登録商標)18:界面活性剤として、Rhein Chemie Rheinau GmbHから商業的に入手可能な第一級脂肪C18アミン
Naugard(登録商標)445:Chemturaから商業的に入手可能な酸化防止剤としてのp−クミル化ジフェニルアミン
Rhenogran(登録商標)HMDC−70/AEMD:Rhein Chemie Rheinau GmbHから商業的に入手可能なアクリル−およびエチレン−アクリルゴム用のヘキサメチレンジアミンカルバメート架橋剤マスターバッチ
Rhenogran(登録商標)DOTG−70:Rhein Chemie Rheinau GmbHから商業的に入手可能な天然および合成ゴムの加硫用のジ−オルト−トリルグアニジンマスターバッチ
Rhenogran(登録商標)XLA−60:Rhein Chemie Rheinau GmbHから商業的に入手可能な1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7含有促進剤マスターバッチ
Stabaxol(登録商標)I:Rhein Chemie Rheinau GmbHから入手可能な、加硫遅延剤としての2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド
安息香酸:IMCD Deutschland GmbHから商業的に入手可能な
【0085】
配合物試験
それぞれのポリマー組成物を、アップサイドダウン手順を用いて、実験室内部ミキサーGUMIX 2 IM型Banburryで、40RPMおよび70%充填率でブレンドした。登録ダンプ温度は100℃であった。良好な均一ミックスを得るために、混合プロセスを、40℃で6分間1:1.25の擦れの実験室オープンミルRubicon(ロール距離:150mm、ロール幅:320mm)でさらに続行した。ポリマー組成物を、100バールで、油圧プレスAgila、型PE 100にて180℃で13.5cm×13.5cmの厚板でプレス硬化させ、次に周囲圧力で4時間175℃でポスト硬化させた。
【0086】
配合物のMooney(ムーニー)粘度は100℃で測定したが、Mooneyスコーチ測定は120℃で行った。両研究はDIN 53523に従って行った。加硫過程はDIN 53529に従って180℃で測定した。配合物A〜Cの加工および加硫特性を表2に報告する。
【0087】
【表2】

【0088】
本発明に従うブレンドCおよびDがブレンドAに匹敵する結果を示すことを試験結果から明らかに理解することができる。ブレンドAは危険なジ−o−トリル−グアニジンを含有する。
【0089】
配合物CのMooneyスコーチは、配合物B(単量体カルボジイミド使用)と比較して著しく改善され、それは、配合物の幾つかの通常の用途において重要な実用面での利点である。配合物Dもまた幾らかの改善を示すが、配合物Cほど著しくない。
【0090】
促進剤Rhenogran(登録商標)XLA−60と加硫遅延剤Stabaxol(登録商標)Iまたはあるいは安息香酸との組み合わせが、速いが管理可能な硬化時間(t90−t10)をもたらすことがかなり明確にまた理解することができ、それはゴム物品の生産のコスト低減のための機会を提供する。
【0091】
全てがRhenogran(登録商標)XLA−60を促進剤として含有する、配合物BとC、またはDとの直接比較は、加硫遅延剤として実施例CではStabaxol(登録商標)Iを添加することによって、および実施例Dでは安息香酸を添加することによって達成された、T5[分]でのスコーチ安全性に関してかなりの改善を明らかにする。
【0092】
実施例2:
表3は、phr単位で配合物E、FおよびGについて原料を示す(実施例3)。
【0093】
【表3】

【0094】
Diplast(登録商標)TM 8−10/ST:Lonza SpA、Italyから入手可能な、メリト酸トリオクチル
EDENOR(登録商標)C 18 98−100:Oleo Chemicalsから入手可能な、ステアリン酸
LUVOMAXX(登録商標)CDPA:Lehmann & Vossから入手可能な、p−ジクミルジフェニルアミン
DIAK(登録商標)NO.1:ヘキサメチレンジアミンカルバメート
HNBR1:0.4%の残存二重結合含有率および4.5%のマレイン酸モノエチルエステル含有率ならびに101のMooney粘度(100℃でのML 1+4)の、本明細書で後に記載されるように製造される水素化ニトリルブタジエンターポリマー。
【0095】
「HNBR1」を得るために水素化用の出発基礎原料として使用されるニトリルゴム「NBR1」は、アクリロニトリル、ブタジエンおよび次の表Aに示される量のターモノマーの繰り返し単位を含有し、表Aにまた述べられるMooney粘度を有した。さらなる詳細は、欧州特許第09164539.0号明細書に開示されている。
【0096】
【表4】

【0097】
溶媒としてのモノクロロベンゼン(「MCB」)中のNBR1の12%全固形分溶液を高圧反応器へ装入し、600rpmでかき混ぜながら138℃に加熱した。温度が安定したらすぐに、Wilkinson触媒と助触媒としてのトリフェニルホスフィン(「TPP」)との溶液を導入し、水素を85バールの圧力に達するために容器へ導入した。反応物を4時間かき混ぜ、その時に水素圧力を放出し、反応器を室温(約22℃)に冷却した。ポリマー溶液を次に反応器から取り出し、当該技術分野で公知のスチーム法かアルコール法かのどちらかを用いて凝固させた。単離ポリマーを次に乾燥させた。
【0098】
【表5】

【0099】
表4に示されるMoving−Die−Rheometer(移動ダイ流動計)結果から推測できるように、加硫動力学は、Stabaxol(登録商標)の適用によって減速する。この測定は180℃で行われるので、測定が120℃で実施された前の試験におけるほど差は顕著ではない。それにもかかわらず、結果は、Stabaxol I.TS 2の加硫遅延剤機能を再び明らかに示し、T50はより長い加硫時間にシフトする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンアクリレート(AEM)、ポリアクリレート(ACM)および/または水素化アクリロニトリル(HNBR)ベースのゴムと、
非芳香族アミン、アミジン、ならびにそれらの塩および任意の混合物から選択される少なくとも1種の加硫促進剤と、
(a)安息香酸、サリチル酸、フタル酸、無水フタル酸および/またはC〜C24ジカルボン酸、および/または
(b)カルボジイミドおよび/または
(c)ポリカルボジイミド
および/または化合物(a)、(b)および(c)の任意の混合物
を含む少なくとも1種の加硫遅延剤系と、
を含有する、グアニジンを含まない加硫可能な混合物。
【請求項2】
前記アミジンが、
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)または1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、
1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセン−5(TBD)、
7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセン−5(MTBD)およびその誘導体
であることを特徴とする請求項1に記載のグアニジンを含まない加硫可能な混合物。
【請求項3】
前記アミンがジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ブチルアミンおよび/またはシクロヘキシルアミンであることを特徴とする請求項1または2に記載のグアニジンを含まない加硫可能な混合物。
【請求項4】
前記酸が安息香酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のグアニジンを含まない加硫可能な混合物。
【請求項5】
前記加硫遅延剤が少なくとも1種の立体障害のあるカルボジイミドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のグアニジンを含まない加硫可能な混合物。
【請求項6】
前記加硫遅延剤が少なくとも1種の単量体または二量体カルボジイミドであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のグアニジンを含まない加硫可能な混合物。
【請求項7】
前記加硫遅延剤が式(II)
R’−(N=C=N−R)−R” (I)
(式中、
− Rは、芳香族、脂肪族、脂環式またはアラルキレン基を表し、芳香族またはアラルキレン残基の場合に、カルボジイミド基を有する芳香族炭素原子に対して少なくとも1つのオルト位に、好ましくは両オルト位に、少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族および/または脂環式置換基、好ましくは少なくとも3個の炭素原子を有する分岐もしくは環状の脂肪族基を有していてもよく、
− R’は、アリール、アラルキルまたはR−NCO、R−NHCONHR、R−NHCONRおよびR−NHCOORを表し、
− R”は、−N=C=N−アリール、−N=C=N−アルキル、−N=C=N−シクロアルキル、−N=C=N−アラルキル、−NCO、−NHCONHR、−NHCONRまたは−NHCOORを表し、ここで、R’およびR”において、互いに独立して、RおよびRは同じものかまたは異なるものであり、アルキル、シクロアルキルまたはアラルキル基を表し、RはRの意味の1つを有するかまたはポリエステルもしくはポリアミド基を表し、
nは2〜5,000の整数を表す)
の少なくとも1種の二量体カルボジイミドまたはポリカルボジイミドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のグアニジンを含まない加硫可能な混合物。
【請求項8】
前記加硫遅延剤が式(III)
【化1】

に従う少なくとも1種の単量体カルボジイミドであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のグアニジンを含まない加硫可能な混合物。
【請求項9】
カルボジイミドが、加硫遅延剤として、少なくとも2種の異なるカルボジイミドの混合物として使用されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のグアニジンを含まない加硫可能な混合物。
【請求項10】
シリカ、カーボンブラック、粘土、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウムからなる群から選択されるフィラーをさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のグアニジンを含まない加硫可能な混合物。
【請求項11】
前記促進剤が、アクリレートゴム(ACM)、エチレンアクリレートゴム(AEM)、エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)、エチレンプロピレンコポリマー(EPM)、エチレン酢酸ビニル(EVM)、エチレンメチルアクリレート(EMA)、アクリロニトリル−ジエンコポリマー(NBR)、水素化アクリロニトリル−ジエン(HNBR)コポリマーおよびそれらの任意の混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の追加のポリマーをバインダー材料としてさらに含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のグアニジンを含まない加硫可能な混合物。
【請求項12】
分散剤および可塑剤からなる群から選択される添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のグアニジンを含まない加硫可能な混合物。
【請求項13】
ジアミンまたはジアミンカルバメートをベースとする硬化系を使用することにより請求項1〜12のいずれか一項に記載の加硫可能な混合物を架橋させることによって製造される加硫物。
【請求項14】
エチレンアクリレート(AEM)、ポリアクリレート(ACM)および/または水素化アクリロニトリル(HNBR)ベースのゴムと、アミン、アミジンならびに上述の促進剤の塩および任意の混合物から選択される少なくとも1種の加硫促進剤と、(a)酸、(b)カルボジイミド、(c)ポリカルボジイミドおよび上述の加硫遅延剤の任意の混合物を含む少なくとも1種の加硫遅延剤系とが、ポリアミンまたはジアミンカルバメートをベースとする硬化系を使用して架橋されることを特徴とする請求項13に記載の加硫物の製造方法。
【請求項15】
自動車、油田および/または海洋用途向けの請求項1〜12のいずれか一項に記載の加硫物の使用。

【公開番号】特開2011−52217(P2011−52217A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−196572(P2010−196572)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(509286422)ライン・ケミー・ライノー・ゲーエムベーハー (13)
【Fターム(参考)】