説明

エチレン系共重合体組成物及びそれを用いたターポリン

【課題】柔軟性に優れると共に、耐熱性、高周波ウェルダー加工性に優れるエチレン系共重合体組成物、及びそれを用いたターポリンを提供する。
【解決手段】成分(A)〜(C)を含有するエチレン系共重合体組成物であって、成分(A)〜(C)の含有割合は、成分(A)が5〜50重量%、成分(B)が30〜60重量%及び成分(C)が10〜50重量%であり、且つ、共重合体組成物としてのMFRが0.1〜50g/10分であることを特徴とするエチレン系共重合体組成物、及びそれを用いたターポリンなどを提供した。
成分(A):密度が0.870〜0.920g/cm、MFRが0.1〜50g/10分のエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(B):MFRが0.05〜50g/10分、酢酸ビニル単位の含有量が4〜30重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体
成分(C):スチレン含量が5〜25重量%のスチレン系共重合体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系共重合体組成物及びそれを用いたターポリンに関し、更に詳しくは、柔軟性に優れると共に、耐熱性、高周波ウェルダー加工性に優れ、包装用資材、建材用資材、及び書類ホルダー、テーブルクロス、カーテン等の各種雑貨用資材等に好適に用いられるエチレン系共重合体組成物、並びに、基布表面に該エチレン系共重合体組成物が積層されたターポリンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波によって素材の分子を振動させて、素材を溶着させる熱処理加工のひとつである高周波ウェルダー加工が可能であり、柔軟性、耐熱性に優れた包装用資材、建材用資材、及び各種雑貨用資材等として、軟質塩化ビニル樹脂製のフィルムまたはシートが用いられている。
しかし、軟質塩化ビニル樹脂は、可塑剤を多量に含有していることから、例えば、印刷物との接触において、その印刷がフィルムまたはシート表面に転写してしまうとか、印刷物自体の印刷を汚染するとか、フィルムまたはシートが被接触物の表面に粘着する等という問題が生じ易い。また、当該樹脂製のフィルムまたはシートは、食品と接触させて用いる際の可塑剤の食品への移行や、廃棄・焼却処理する際の環境汚染等の問題を抱えたものである。
【0003】
一方、それに対して、高周波ウェルダー加工が可能で、前記のような問題のない素材として、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−エチルアクリレート共重合体等のエチレン系重合体等も実用化されているが、これらのエチレン系重合体は、柔軟性と、耐熱性、高周波ウェルダー加工性とのバランス性に、劣っており、柔軟性と、耐熱性、高周波ウェルダー加工性との両立が強く求められている。
【0004】
また、従来、ターポリン(シート)としては、繊維編織布を基布とし、その一方の面又は両面に、通常、軟質塩化ビニル樹脂が積層されたものが用いられている。
しかし、廃棄・焼却処理における環境汚染や、例えば、ターポリンを高周波ウェルダー加工して形成したフレキシブルコンテナにおいては、軟質塩化ビニル樹脂中の可塑剤の内容物への移行の問題等が指摘されていた。
このような問題のないターポリンとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のエチレン系重合体が用いられているが、これらの樹脂が積層されたターポリンは、柔軟性に欠け取扱性に劣るといった欠点がある。
【0005】
上記のようなターポリンからなるフレキシブルコンテナは、一般に、その内部に樹脂成形品の原料となる樹脂ペレットや、そば粉、塩、砂糖、米などの粉粒体類を収納し、注入口、排出口を縛って、内部の気密性、水密性等の密閉性を確保しつつ、輸送、保管がなされる。また、内部に収納された内容物を排出した後には、必要であれば、折り畳んで返送されて、再使用される。
しかし、上記のようなエチレン系重合体を原料とするターポリンからなるフレキシブルコンテナは、柔軟性に欠けるため、注入口及び/または排出口の縛り易さに欠け、かつ、折り畳み作業性に問題があるという欠点があった。
それらの欠点を解消するために、軟質の材料を混合する等の提案もなされているが、柔軟性の改良に伴い、耐熱性の低下、及び高周波ウェルダー加工性の低下という問題が生じていた。
【0006】
このような問題を解決するために、繊維織物の基布の少なくとも片面に、特定のエチレン−α−オレフィン共重合体(A)と、特定のエチレン−酢酸ビニル共重合体(B)の混合による樹脂組成物からなる、柔軟性及び耐摩耗性に優れたターポリンが提案されている(特許文献1参照。)。
また、繊維編織布を基布とし、その少なくとも片面に、特定のエチレン−α−オレフィン共重合体(A)と、特定のエチレン−アシル基含有エチレン性不飽和化合物(例えば酢酸ビニル、アクリル酸など)共重合体(B)を含有する組成物が積層された、柔軟性、耐擦傷性に優れ、高周波ウェルダー加工性に優れたターポリンが提案されている(特許文献2参照。)。
さらに、繊維織布を含む基布と、前記基布の少なくとも1面上に形成され、かつポリオレフィン系樹脂ブレンドからなる被覆層とを含み、前記ポリオレフィン系樹脂ブレンド層が、(A)ポリプロピレン系樹脂からなる成分、(B)スチレン系共重合体からなる成分、及び、(C)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及び/又は、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂からなる成分で、構成された、柔軟性、耐摩耗性、印刷性、高周波溶着性、融着部の破壊強度、耐熱クリープ性に優れたフレキシブルコンテナなどの用途に適する軟質ポリオレフィン系樹脂積層シートが提案されている(特許文献3参照。)。
またさらに、特定の直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、特定のエチレン−酢酸ビニル共重合体(B)、官能基含有エチレン性不飽和化合物による変性エチレン系重合体(C)、及び含水無機化合物(D)からなる、柔軟性、耐熱性、高周波ウェルダー加工性に優れたエチレン系重合体組成物、及び、繊維編織布を基布とし、その少なくとも片面にその組成物が積層されたターポリンが提案されている(特許文献4参照。)。
【0007】
これらの提案された技術によるターポリンや、軟質ポリオレフィン系樹脂積層シート、それらからなるフレキシブルコンテナは、エチレン酢酸ビニル共重合体やエチレン−エチルアクリレート共重合体等のエチレン系重合体からなるターポリン、またはターポリン製フレキシブルコンテナよりも、柔軟性に優れ、取り扱い作業性に優れたものになった。
しかし、従来、軟質塩化ビニル樹脂で実現できた柔軟性よりは硬く、前述の取り扱い性に欠けるため、市場では、さらなる柔軟性が求められていた。
上記柔軟性の改良のために、特許文献1、2、4に記載のエチレン−α−オレフィン共重合体において密度が小さいものを選択することや、又は、特許文献1〜4に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体において酢酸ビニル含量の大きいものを選択すること等が考えられる。
しかし、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が小さいものを選択すると、柔軟性は十分改良されるものの、夏季に屋外においておくと、ターポリンどうしが融着し、はがすときに、繊維編織布が外に出てしまう等、耐熱性に関しては、未だ問題があった。
このように、柔軟性と、耐熱性、高周波ウェルダー加工性とのバランスを備えたターポリンは、実現できていなかった。そのために、柔軟性と、耐熱性、高周波ウェルダー加工性とのバランスを備えたターポリン、及びそれに用いる樹脂組成物が強く求められている。
【特許文献1】特開2001−080011号公報
【特許文献2】特開2002−120344号公報
【特許文献3】特開2002−273841号公報
【特許文献4】特開2003−176387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、柔軟性に優れると共に、耐熱性、高周波ウェルダー加工性に優れるエチレン系共重合体組成物、及びそれを用いたターポリンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため、種々の研究を重ねた結果、特定のエチレン−α−オレフィン共重合体(A)と、特定のエチレン−酢酸ビニル共重合体(B)と、特定のスチレン系共重合体(C)とを、特定の割合で含有し、特定のMFRを有する共重合体組成物とすることにより、従来材料に比べて、該共重合体組成物は、柔軟性に優れると共に、耐熱性、高周波ウェルダー加工性に優れることを見出し、さらに、繊維編織布の基布の一方の面又は両面に、該共重合体組成物を積層することにより、柔軟性と、耐熱性、高周波ウェルダー加工性とのバランスを備えたターポリンが得られることを見出し、これらの知見に基き、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有するエチレン系共重合体組成物であって、成分(A)〜(C)の含有割合は、成分(A)〜(C)の合計量を100重量%としたとき、成分(A)が5〜50重量%、成分(B)が30〜60重量%及び成分(C)が10〜50重量%であり、且つ、共重合体組成物としてのメルトフローレート(MFR)(試験条件:190℃、2.16kg荷重)が0.1〜50g/10分であることを特徴とするエチレン系共重合体組成物が提供される。
成分(A):エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとからなり、密度が0.870〜0.920g/cm、MFR(試験条件:190℃、2.16kg荷重)が0.1〜50g/10分のエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(B):MFR(試験条件:190℃、2.16kg荷重)が0.05〜50g/10分、酢酸ビニル単位の含有量が4〜30重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体
成分(C):スチレン含量が5〜25重量%のスチレン系共重合体
【0011】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、数平均分子量をMn、重量平均分子量をMwとしたとき、Mw/Mnが3.5以下であることを特徴とするエチレン系共重合体組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、成分(B)の含有割合は、40〜50重量%であることを特徴とするエチレン系共重合体組成物が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、成分(C)のスチレン系共重合体は、熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体またはその水素添加物であることを特徴とするエチレン系共重合体組成物が提供される。
【0012】
本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、さらに、下記の成分(D)を含有することを特徴とするエチレン系共重合体組成物が提供される。
成分(D):無機化合物
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、成分(D)の含有量は、成分(A)〜(C)の合計量100重量部に対して、3〜30重量部であることを特徴とするエチレン系共重合体組成物が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第5又は6の発明において、成分(D)の無機化合物は、シリカゲル、水和アルミナまたは含水珪酸塩から選ばれる少なくとも一種の含水無機化合物であることを特徴とするエチレン系共重合体組成物が提供される。
一方、本発明の第8の発明によれば、繊維編織布を基布とし、その少なくとも一方の面に、第1〜7のいずれかの発明に係るエチレン系共重合体組成物の層が積層されてなることを特徴とするターポリンが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、柔軟性が優れると共に、耐熱性、高周波ウェルダー加工性に優れるという顕著な効果を奏する。そのため、該エチレン系共重合体組成物を用いることにより、耐熱性、高周波ウェルダー加工性に優れたターポリンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、特定のエチレン−α−オレフィン共重合体(A)と、特定のエチレン−酢酸ビニル共重合体(B)と、特定のスチレン系共重合体(C)とを、特定の割合で含有し、特定のMFRを有することを特徴とするものである。
以下に、項目毎に、詳細に説明する。
【0015】
1.成分(A):エチレン−α−オレフィン共重合体
本発明のエチレン系共重合体組成物を構成する成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、直鎖状であり、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や超低密度ポリエチレン(VLDPE)とも称され、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとからなる。
ここで、炭素数3〜18のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等が挙げられ、中でも、炭素数4〜12であるのが好ましく、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数4〜10であるのが特に好ましい。
【0016】
また、エチレン−α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンの含有量は、10〜50重量%であるのが好ましく、15〜45重量%であるのが特に好ましい。
【0017】
さらに、本発明における成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、JIS K7210−1999の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、試験条件:190℃、21.18N(2.16kg)荷重で測定したメルトフローレイト(MFR)が0.1〜50g/10分であり、好ましくは0.3〜40g/10分であり、より好ましくは0.5〜10g/10分である。
MFRが0.1g/10分未満では、共重合体組成物としてフィルムやシート等への成形加工性が劣ることとなり、一方、MFRが50g/10分超では、共重合体組成物としての機械的強度及び加工性が劣ることとなる。
【0018】
また、本発明において、前記エチレン−α−オレフィン共重合体は、JIS K7112−1999の「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」のD法(密度こうばい管法)に準拠して測定した密度が0.870〜0.920g/cmであり、好ましくは0.880〜0.915g/cmであり、より好ましくは0.890〜0.910g/cmである。
【0019】
さらに、これらのエチレン−α−オレフィン共重合体としては、チーグラー・ナッタ型触媒やフィリップス型触媒等の存在下に共重合されたものより、カミンスキー型触媒の存在下に共重合されたものであるのが好ましい。
カミンスキー型触媒によるエチレン−α−オレフィン共重合体は、例えば、特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭60−35005号、特開昭60−35006号、特開昭60−35007号、特開昭60−35008号、特開昭60−35009号、特開昭61−130314号、特開平3−163088号の各公報、欧州特許公開第420436号公報、米国特許第5055438号明細書、及び国際公開WO91/04257号公報等に記載されている、メタロセン系触媒、特にメタロセン・アルモキサン系触媒を用い、又は例えば、国際公開WO92/07123号公報等に記載されている、メタロセン化合物と該化合物と反応して安定なアニオンとなる化合物からなる触媒を用い、例えば、気相法、スラリー法、溶液法、高圧イオン重合法等の重合法によって製造することができる。
中でも、本発明における前記エチレン−α−オレフィン共重合体は、モノ−、ジ−、又はトリ−シクロペンタジエニル環若しくは置換シクロペンタジエニル環を配位子とした、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、又は白金等の4価の遷移金属化合物をメタロセン化合物とする触媒を用いて重合されたものであるのが好ましい。
【0020】
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体のMw/Mn(Q値)は、3.5以下であり、好ましくは3.0〜1.5であり、より好ましくは2.5〜2.0である。Q値が3.5を超えると、べた付き性が出てくるおそれがある。ここで、Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義されるものである。
Mw/Mnの測定方法は、以下の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本[カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンは、α=0.723、logK=−3.407である。]
測定温度:140℃
注入量:0.2ml
濃度:20mg/10mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
【0021】
本発明に用いるエチレン−α−オレフィン共重合体は、市販品から適宜選択して使用することもできる。市販品としては、例えば、日本ポリエチレン社製の「カーネル」(商標名)などを例示することができる。
【0022】
2.成分(B):エチレン−酢酸ビニル共重合体
本発明のエチレン系共重合体組成物を構成する成分(B)のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、試験条件:190℃、21.18N(2.16kg)荷重で測定したMFRが0.05〜50g/10分であり、好ましくは0.1〜40g/10分であり、より好ましくは0.5〜10g/10分である。MFRが0.05g/10分未満では、共重合体組成物としてフィルムやシート等への成形加工性が劣ることとなり、一方、MFRが50g/10分超では、共重合体組成物としての機械的強度が劣ることとなる。
【0023】
酢酸ビニル単位の含有量が4〜30重量%であり、好ましくは8〜25重量%であり、より好ましくは10〜23重量%である。酢酸ビニル単位の含有量が4重量%未満では、高周波ウェルダー加工性が劣る傾向となり、一方、酢酸ビニル単位の含有量が30重量%超では、耐熱性が劣る傾向となる。
尚、エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFR及び酢酸ビニル含有量は、JIS K6924−2 1997の「プラスチック−エチレン/酢酸ビニル(E/VAC) 成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び諸性質の求め方」の附属書「エチレン・酢酸ビニル樹脂試験方法」に準拠して、測定する。
【0024】
本発明に用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、市販品から適宜選択して使用することもできる。市販品としては、例えば、日本ポリエチレン社製の「ノバテックEVA」(商標名)などを例示することができる。
【0025】
3.成分(C):スチレン系共重合体
本発明のエチレン系共重合体組成物を構成する成分(C)のスチレン系共重合体は、熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体またはその水素添加物であり、そのスチレン含量は5〜25重量%、好ましくは8〜23重量%、より好ましくは10〜20重量%である。スチレン含量が5重量%未満であると、耐熱性が低下するため好ましくない。一方、スチレン含量が25重量%を超えると、柔軟性改良効果が見られないため好ましくない。
なお、スチレン含量は、699〜720cm−1のスチレンのベンゼン核の平面に対するC−H結合の面外変角振動に基づく吸収を基に赤外分析法により測定されるものである。
【0026】
熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体またはその水素添加物とは、熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体またはそれを水添したものである。熱劣化性の観点から、水素添加物が好ましい。
熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体またはその水素添加物は、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。
上記熱可塑性スチレン−ジオレフィンブロック共重合体またはその水素添加物においては、スチレンブロックをSTY、ジオレフィンブロックまたはその水素添加物をDENと表すと、STY−DEN、STY−DEN−STY、DEN−STY−DEN−STY、STY−DEN−STY−DEN−STYなどの構造を有する共重合体が挙げられる。
【0027】
ジオレフィンまたはその水素添加物ブロックを構成する単量体としては、ブタジエン、イソプレン及びその水素添加物等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
また、スチレンブロックとジオレフィンブロックとのブロック共重合体またはその水素添加物の具体例としては、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物、スチレン−ビニル−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物は、クレイトンポリマージャパン(株)より「クレイトンG」として、また、(株)クラレより「セプトン」の商品名で販売されている。
さらに、スチレン−ビニル−イソプレンブロック共重合体の水素添加物は、(株)クラレより「ハイブラー」の商品名で販売されている。これらの商品群より適宜選択して用いてもよい。
【0029】
上記熱可塑性スチレン−ジオレフィンランダム共重合体の水素添加物において、ジオレフィンの水素添加物ブロックを構成する単量体としては、ブタジエン、イソプレン等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
また、スチレンとジオレフィンとのランダム共重合体の水素添加物の具体例としては、スチレンブタジエンランダム共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレンランダム共重合体の水素添加物、スチレン−ビニル−イソプレンランダム共重合の水素添加物が挙げられ、これらは、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
また、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加物は、JSR(株)より「ダイナロン」の商品名で販売されている。
さらに、熱可塑性スチレン−ジオレフィンブロック共重合体またはその水素添加物と熱可塑性スチレン−ジオレフィンランダム共重合体またはその水素添加物を、混合して使用することもできる。
【0030】
4.成分(D):無機化合物
本発明のエチレン系共重合体組成物には、さらに、成分(D)の無機化合物を加えることができる。成分(D)を加えることにより、高周波ウェルダー加工性等を向上させることができる。
成分(D)としては、水が結合している無機化合物である含水無機化合物が好ましく、代表的には、例えば、シリカゲル〔SiO・nHO〕、水和アルミナ〔Al・nHO〕、及び、含水珪酸アルミニウム〔Al・mSiO・nHO〕、含水珪酸カルシウム〔CaO・mSiO・nHO〕、含水珪酸マグネシウム〔MaO・mSiO・nHO〕等の含水珪酸塩等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を併用して使用することができる。また、水分は、高周波ウェルダー加工を行う際に、発熱に寄与するため、熱溶着強度を上げる等、高周波ウェルダー加工性を大きく向上させることができる。
【0031】
5.エチレン系共重合体組成物
本発明のエチレン系共重合体組成物における各成分の組成割合は、成分(A):エチレン−α−オレフィン共重合体、成分(B):エチレン−酢酸ビニル共重合体、成分(C):スチレン系共重合体の合計量を100重量%としたとき、成分(A)は、5〜50重量%であり、好ましくは10〜45重量%であり、より好ましくは15〜40重量%である。また、成分(B)は、30〜60重量%であり、好ましくは35〜55重量%、より好ましくは40〜50重量%である。さらに、成分(C)は、10〜50重量%であり、好ましくは15〜45重量%、より好ましくは20〜40重量%である。
【0032】
成分(A)が5重量%未満であると、耐熱性が劣る傾向となるため好ましくない。一方、成分(A)が50重量%を超えると、柔軟性が劣る傾向となるため好ましくない。
また、成分(B)が30重量%未満であると、高周波ウェルダー成形性が悪くなる傾向となるため、好ましくない。一方、成分(B)が60重量%を超えると、耐熱性、柔軟性に欠ける傾向となるため好ましくない。
さらに、成分(C)が10重量%未満であると、柔軟性改良効果が見られないため好ましくない。一方、50重量%を超えると、耐熱性が劣る傾向となるため好ましくない。
【0033】
本発明のエチレン系共重合体組成物において、成分(A)、成分(B)、成分(C)の合計量を100重量%としたとき、成分(B)のエチレン−酢酸ビニル共重合体に由来する酢酸ビニル単位の含量は、3〜18重量%が好ましく、より好ましくは4〜15重量%、さらに好ましくは5〜12重量%である。酢酸ビニル単位の含量が3重量%より少ないと、高周波ウェルダー加工性に劣る場合があり、一方、酢酸ビニル単位の含量が18重量%より多いと、耐熱性に劣ることがある。
【0034】
また、本発明のエチレン系共重合体組成物において、添加することができる成分(D)の無機化合物の含有量は、成分(A)〜成分(C)の合計量100重量部に対して、3〜30重量部が好ましい。好ましくは、5〜25重量部であり、より好ましくは8〜15重量部である。
成分(D)の含有量が3重量部未満であると、成分(D)を配合する期待効果が不十分である。一方、成分(D)の含有量が30重量部を超えると、柔軟性に欠けるおそれがある。
【0035】
また、本発明のエチレン系共重合体組成物は、前述の条件で測定したMFRが0.1〜50g/10分であり、0.3〜30g/10分であるのが好ましい。MFRが0.1g/10分未満では、エチレン系共重合体組成物としてのフィルムやシートへの成形加工性が劣るため、好ましくなく、一方、MFRが50g/10分を超えると、機械的強度及び加工性が劣るため、好ましくない。
所定のMFRを調整するために、次式:
100×log(MFRcompound)=Wlog(MFRA)+Wlog(MFRB)+Wlog(MFRC)+・・・
を基準に、各成分の割合やMFRを調整することができる。ここで、W、W、Wは、それぞれ、A成分、B成分、C成分の割合(重量%)を表し、MFRcompound、MFRA、MFRB、MFRCはそれぞれ、エチレン系重合体組成物、A成分、B成分、C成分のMFRを表す。
【0036】
また、本発明の前記エチレン系共重合体組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂やゴム、並びに、熱可塑性樹脂に通常用いられる各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、防曇剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤、接着性付与剤、難燃剤、着色剤、及び、前記(D)成分以外の充填材等が添加されていてもよい。これらの成分は、各成分に含まれていても良いし、エチレン系共重合体組成物の製造時に配合しても良い。
【0037】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、前記成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体、前記成分(B)のエチレン−酢酸ビニル共重合体、前記成分(C)のスチレン系重合体、及び、好ましくはさらに前記成分(D)の無機化合物を、必要に応じて用いられる他の樹脂や添加剤等と共に、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等により均一に混合した後、一軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー等により溶融混練することにより調製され、該エチレン系共重合体組成物は、カレンダー加工によるか、Tダイ或いは環状ダイを備えた成形機よりフィルム状若しくはシート状に溶融押出し、冷却させることによりフィルム若しくはシート等に成形される。
【0038】
6.ターポリン
本発明のターポリンは、繊維編織布を基布とし、その少なくとも一方の面に、好ましくは両面に、前記エチレン系共重合体組成物の層が積層されてなるが、その積層方法としては、公知の、例えば、カレンダー加工法、押出ラミネート加工法、ドライラミネート加工法、及び含浸法等を用いることができる。中でも、カレンダー加工法が好ましい。
【0039】
具体的には、本発明のターポリンは、前記で調製されたエチレン系共重合体組成物を、カレンダーロールによりシート状に成形し基布に溶融積層するか、Tダイを備えたシート成形機よりシート状に溶融押出し、基布に押出ラミネートして積層するか、成形したシートと基布とを接着剤を用いてドライラミネートして積層する等により製造される。
尚、その際、基布の一方の面又は両面への溶融積層における共重合体組成物の温度は、例えばカレンダー加工法の場合、通常、140〜160℃程度とされ、また、共重合体組成物層の厚さは、一表面当たり100〜1000μm程度とされる。
【0040】
また、基布の繊維編織布としては、従来、この種の基布に用いられているものが用いられ、具体的には、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアクリル繊維等の合成繊維、或いは、木綿、麻等の天然繊維等の、平織、綾織、朱子織等の織布、或いは編布が挙げられる。
さらに、繊維の太さは、200〜1000デニール程度で、例えば平織の場合、打ち込み本数は、(10〜30)×(15〜35)/インチ程度である。これらの繊維編織布は、幅が0.5〜3m程度、厚さが0.2〜1mm程度のものが一般に使用される。
【0041】
7.用途
本発明のエチレン系共重合体組成物は、フィルムまたはシート等として、高周波ウェルダー加工等して所望の形状とされ、ファッションバッグ、化粧合板用等の表面保護材等の包装用資材、壁紙、内装材等の建材用資材、及び、書類ホルダー、デスクマット、テーブルクロス、カーテン、文具、玩具等の各種雑貨用資材等に好適に用いられる。
また、本発明のターポリンは、必要に応じて、裁断し、高周波ウェルダー加工等して所望の形状として、フレキシブルコンテナ等の物流資材、工事用被覆シート、養生シート等の土木建築用資材、自動車用幌、テント、水槽等の工業用資材等に好適に用いられる。
尚、その際の高周波ウェルダー加工は、通常、周波数10〜100MHzの範囲で、1〜60秒の溶着時間でなされる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、さらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例に用いた成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体、成分(B)のエチレン−酢酸ビニル共重合体、成分(C)のスチレン系共重合体、及び成分(D)の無機化合物を以下に示す。
尚、以下でいう「部」とは、成分(A)、成分(B)、成分(C)の合計量100重量部に対しての重量部のことを言う。例えば、成分(D)として12.5部とは、成分(A)〜(C)の合計量100重量部に対して、12.5重量部である。また、成分(A)〜(C)の含有割合の重量%は、成分(A)〜(C)の合計量を100重量%としたとき、含有割合である。
【0043】
<成分(A)>
A−1;メタロセン触媒の存在下に共重合されたものであり、密度が0.898g/cm 、MFRが2.2g/10分、Mw/Mnが2.2のエチレン系共重合体(日本ポリエチレン社製「カーネル KF261T」)。
【0044】
<成分(B)>
B−1;酢酸ビニル単位の含有量が20重量%、MFRが2.5g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン社製「ノバテックEVA LV541」)。
【0045】
<成分(C)>
C−1;スチレン含量が10重量%である、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体の水素添加物(JSR社製「ダイナロン 1320P」)。
C−2;スチレン含量が13重量%であるスチレンとイソプレンのブロック共重合体の水素添加物(SEPS クラレ社製「セプトン2063」)。
C−3;スチレン含量が30重量%であるスチレンとブタジエンのブロック共重合体の水素添加物(SEBS クラレ社製「セプトン8007」)。
【0046】
<成分(D)>
D−1;シリカゲル(トクヤマ社製「トクシールGU」、化学式:SiO・nHO、含有量:88%以上(乾燥重量基準))。
【0047】
[実施例1〜10、比較例1〜7]
上述の成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)を、ヘンシェルミキサーで混合した後、二軸押出機(神戸製鋼所社製「KTX40」)を用いて、シリンダー温度160℃、スクリュー回転数220rpmで1分間溶融混練して、ストランド状に溶融押出し、冷却固化させカッティングしてエチレン系共重合体組成物のペレットを調製した。
得られた各共重合体組成物ペレットについて、組成物中の酢酸ビニル単位の含有量を成分(A)と成分(B)、成分(C)との配合割合より算出し、また、MFRを測定し、結果を表1に示した。
次いで、前記で得られた各共重合体組成物ペレットを、160℃でプレスして厚み500μmのシートに成形し、得られた各シートについて、以下に示す方法で、高周波ウェルダー加工性、柔軟性、及び耐熱性を測定、評価し、結果を表1に示した。
【0048】
<高周波ウェルダー加工性>
シートから切り出した幅30mm、長さ170mmの短冊状試験片を2枚重ね合わせ、高周波ウェルダー(山本ビニタ社製)を使用し、幅10mm、溝深さ1mmの金型を用いて、電流0.5〜1.0A、溶着時間7秒、冷却時間4秒の条件で溶着したシートについて、シート間を手で剥離したときの剥離性を、以下の基準に従って評価した。
○:完全に溶着し剥離不可。
△:かなりの力を要するが剥離可。
×:容易に剥離。
【0049】
<柔軟性>
引張弾性率:ISO1184−1983に準拠し、引張弾性率を測定した。この値が小さい程、柔軟性に優れていることを示す。尚、引張弾性率が55MPaを超えると、硬いと判断した。
【0050】
<耐熱性>
シートから切り出した幅20mm、長さ30mmの短冊状試験片を2枚重ね合わせ、ガラス板で挟み2kgの荷重をかけ、80℃のオーブンに入れて、1日おいた後の融着性を評価した。融着性は重ねた2枚の試験片を手ではがすことにより評価した。
○:2枚の試験片をほとんど抵抗なく、はがすことができる。
△:2枚の試験片をはがすのに多少抵抗を感じる。
×:2枚の試験片をはがすことができるが、力強くはがさないと、はがれない。
【0051】
(実施例1):
成分(A)としてA−1を30重量%、成分(B)としてB−1を50重量%、成分(C)としてC−1を20重量%、成分(D)としてD−1を12.5部用いて、前述の方法で、シートを作製し、物性を測定した。その結果を表1に示す。
【0052】
(実施例2):
成分(A)としてA−1を20重量%、成分(C)としてC−1を30重量%、を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0053】
(実施例3):
成分(C)としてC−1の替わりにC−2を20重量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0054】
(実施例4):
成分(A)としてA−1を20重量%、成分(C)としてC−2を30重量%、を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0055】
(実施例5):
成分(A)としてA−1を10重量%、成分(C)としてC−2を40重量%、を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
(実施例6):
成分(A)としてA−1を30重量%、成分(B)としてB−1を40重量%、成分(C)としてC−1を30重量%、成分(D)としてD−1を12.5部用いて、前述の方法で、シートを作製し、物性を測定した。その結果を表1に示す。
【0057】
(実施例7):
成分(A)としてA−1を20重量%、成分(C)としてC−1を40重量%、を用いたこと以外は、実施例6と同様にしてシートを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
(実施例8):
成分(A)としてA−1を40重量%、成分(C)としてC−2を20重量%、を用いたこと以外は、実施例6と同様にしてシートを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0059】
(実施例9):
成分(C)としてC−1の替わりにC−2を30重量%を用いたこと以外は、実施例6と同様にしてシートを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0060】
(実施例10):
成分(A)としてA−1を20重量%、成分(C)としてC−2を40重量%、を用いたこと以外は、実施例6と同様にしてシートを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0061】
(比較例1):
成分(A)としてA−1を50重量%、成分(B)としてB−1を50重量%、成分(D)としてD−1を12.5部用いて、前述の方法で、シートを作製し、物性を測定した。その結果を表1に示す。このものは、高周波ウェルダー加工性、耐熱性は良好であるが、柔軟性に劣った。
【0062】
(比較例2):
成分(A)としてA−1を3重量%、成分(C)としてC−1を47重量%、を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し、物性を測定した。その結果を表1に示す。このものは、柔軟性、高周波ウェルダー加工性は良好であるが、耐熱性に劣った。
【0063】
(比較例3):
成分(A)としてA−1を5重量%、成分(C)としてC−1を55重量%、を用いたこと以外は、実施例6と同様にしてシートを作製し、物性を測定した。その結果を表1に示す。このものは、柔軟性、高周波ウェルダー加工性は良好であるが、耐熱性に劣った。
【0064】
(比較例4):
成分(A)としてA−1を55重量%、成分(C)としてC−1を5重量%、を用いたこと以外は、実施例6と同様にしてシートを作製し、物性を測定した。その結果を表1に示す。このものは、高周波ウェルダー加工性、耐熱性は良好であるが、柔軟性に劣った。
【0065】
(比較例5):
成分(A)としてA−1を40重量%、成分(B)としてB−1を20重量%、成分(C)としてC−1を40重量%、成分(D)としてD−1を12.5部用いて、前述の方法で、シートを作製し、物性を測定した。その結果を表1に示す。このものは、柔軟性が良好であり、耐熱性が良いものの、高周波ウェルダー加工性に劣った。
【0066】
(比較例6):
成分(C)として、C−1の替わりにC−3を20重量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し、物性を測定した。その結果を表1に示す。このものは、高周波ウェルダー加工性、耐熱性は良好であるが、柔軟性に劣った。
【0067】
(比較例7):
成分(A)としてA−1を40重量%、成分(C)としてC−3を20重量%、を用いたこと以外は、実施例6と同様にしてシートを作製し、物性を測定した。その結果を表1に示す。このものは、高周波ウェルダー加工性、耐熱性は良好であるが、柔軟性に劣った。
【0068】
【表1】

【0069】
[実施例11、比較例8]
(実施例11):
さらに、実施例2の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の配合割合で得られた組成物ペレットを、150℃に加熱したカレンダーロールを用いて厚み0.4mmのシート状に成形し、ポリエステル平織布(繊維750デニール、打ち込み本数20×21/インチ 帝人社製)の両面に溶融積層し、冷却固化させることにより、厚み0.75mmのターポリンを製造した。得られた各ターポリンについて以下に示す方法で、高周波ウェルダー加工性、及び耐熱性を測定、評価した。結果を表2に示す。
【0070】
<高周波ウェルダー加工性>
前記シートの<高周波ウェルダー加工性>に記載した溶着方法で、溶着した2枚のターポリン間を手で剥離したときの剥離性を以下の基準に従って評価した。
○:十分に溶着し、ターポリン間では剥離不可。尚、織布とシートの間では剥離。
△:かなりの力を要するがターポリン間で剥離。
×:ターポリン間で容易に剥離。
【0071】
<耐熱性>
前記シートの場合と同様にして、耐熱性を以下の基準に従って評価した。
○:2枚の試験片をほとんど抵抗なくはがすことができる。
△:2枚の試験片をはがすのに多少抵抗を感じる。
×:2枚の試験片をはがすことができるが、力強くはがさないと、はがれない。
【0072】
(比較例8)
組成物ペレットとして、比較例2で得られたものを用いたこと以外は、実施例11と同様にして、ターポリンを得、前述の方法で評価した。結果を表2に示す。
比較例8のターポリンは、高周波ウェルダー加工性は良好であるが、耐熱性に劣る。
【0073】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、柔軟性に優れると共に、耐熱性、高周波ウェルダー加工性に優れるので、包装用資材、建材用資材、及び書類ホルダー、テーブルクロス、カーテン等の各種雑貨用資材等に好適に用いることができる。
また、基布表面に該エチレン系共重合体組成物が積層されたターポリンは、柔軟性に優れると共に、耐熱性、高周波ウェルダー加工性に優れるので、可撓性コンテナー等の物流資材、工事用被覆シート、養生シート等の土木建築用資材、及び、自動車用幌、テント、水槽等の工業用資材等、さらには、フレキシブルコンテナ等の物流資材等に好適に用いることができる。特に、本発明のターポリンは、柔軟性に優れるため、折り畳み作業性に優れるので、フレキシブルコンテナの製造用の素材として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有するエチレン系共重合体組成物であって、
成分(A)〜(C)の含有割合は、成分(A)〜(C)の合計量を100重量%としたとき、成分(A)が5〜50重量%、成分(B)が30〜60重量%及び成分(C)が10〜50重量%であり、且つ、
共重合体組成物としてのメルトフローレート(MFR)(試験条件:190℃、2.16kg荷重)が0.1〜50g/10分であることを特徴とするエチレン系共重合体組成物。
成分(A):エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとからなり、密度が0.870〜0.920g/cm、MFR(試験条件:190℃、2.16kg荷重)が0.1〜50g/10分のエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(B):MFR(試験条件:190℃、2.16kg荷重)が0.05〜50g/10分、酢酸ビニル単位の含有量が4〜30重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体
成分(C):スチレン含量が5〜25重量%のスチレン系共重合体
【請求項2】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、数平均分子量をMn、重量平均分子量をMwとしたとき、Mw/Mnが3.5以下であることを特徴とする請求項1に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項3】
成分(B)の含有割合は、40〜50重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項4】
成分(C)のスチレン系共重合体は、熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体またはその水素添加物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項5】
さらに、下記の成分(D)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエチレン系共重合体組成物。
成分(D):無機化合物
【請求項6】
成分(D)の含有量は、成分(A)〜(C)の合計量100重量部に対して、3〜30重量部であることを特徴とする請求項5に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項7】
成分(D)の無機化合物は、シリカゲル、水和アルミナまたは含水珪酸塩から選ばれる少なくとも一種の含水無機化合物であることを特徴とする請求項5または6に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項8】
繊維編織布を基布とし、その少なくとも一方の面に、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエチレン系共重合体組成物の層が積層されてなることを特徴とするターポリン。

【公開番号】特開2008−88418(P2008−88418A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227600(P2007−227600)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【出願人】(000236159)三菱化学産資株式会社 (101)
【Fターム(参考)】