説明

エッジ推定装置およびエッジ推定方法

【課題】簡単かつ確実に、検知面に接触した物体のエッジを推定するエッジ推定装置を提供する。
【解決手段】検知面上に配列された複数の圧力検出部(感圧センサ16b)と、圧力検出部が検出した圧力に基づき、隣接する圧力検出部が検出した圧力の圧力差を演算する圧力差演算手段21と、圧力差演算手段21が算出した圧力差の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定し、超えた場合に、当該圧力差を求めた圧力検出部の位置を、検知面に接触した物体のエッジの位置に対応するエッジ点であると判定するエッジ点判定手段22とを備えてエッジ推定装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知面に接触した物体のエッジの位置を推定するエッジ推定装置およびエッジ推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2足歩行型ロボットの開発は進んできており、近年では、単に平坦な場所で2足歩行を可能とするだけでなく、実際の人間の生活環境に応じた複雑な地形環境においても歩行を可能とすることが求められている。例えば、特許文献1においては、脚部に変位センサを設け、この変位センサの出力に基づいて床反力を算出して、床の状況を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3726058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2足歩行型ロボットが階段を昇降する場合、階段に対する足の載せ方により、階段からの反力が体の前後に対して斜めに加わることがあり、この観点から足の裏面における階段のエッジの位置の検出が求められる。また、このような物体のエッジの検出は、他の装置の分野においても求められることがある。
【0005】
しかし、仮にこのようなエッジを、カメラで物体を撮影して得た画像の画像処理をして求めるのでは、撮影をできない場所のエッジを検出することはできない。また、画像処理では、処理量が多いため、迅速に結果を得るのが困難である。
また、特許文献1の脚式移動ロボットの足首位置に備えるような6軸センサの出力から階段のエッジの位置を推定することも考え得るが、この場合には、エッジの位置の推定精度が悪く、しかも、1つでもセンサが故障すると、エッジの位置の推定ができなくなる、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、簡単かつ確実に、検知面に接触した物体のエッジを推定するエッジ推定装置およびエッジ推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するため、本発明のエッジ推定装置は、検知面上に配列された複数の圧力検出部と、前記圧力検出部が検出した圧力に基づき、隣接する圧力検出部が検出した圧力の圧力差を演算する圧力差演算手段と、前記圧力差演算手段が算出した圧力差の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定し、超えた場合に、当該圧力差を求めた圧力検出部の位置を、前記検知面に接触した物体のエッジの位置に対応するエッジ点であると判定するエッジ点判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような装置によれば、検知面上に配列された複数の圧力検出部で検出した圧力の圧力差を求める演算と、圧力差と閾値の比較演算により、容易かつ正確にエッジ点を検出することができる。
【0009】
前記した装置においては、前記エッジ判定手段が判定した、複数のエッジ点の配列を、最小二乗法により直線に近似することで、前記検知面に接触した物体のエッジ線を推定するエッジ線推定手段をさらに備えることができる。
【0010】
このように、エッジ点の配列を最小二乗法により直線に近似することで、例えば本発明の装置をロボットの足や手に搭載した場合には、階段の縁や壁の縁などの直線的なエッジ線を検出することができる。
【0011】
また、前記した装置においては、前記複数の圧力検出部は、前記検知面において、第1の領域に配列されるとともに、当該第1の領域とは所定の間隔を空けて設けられた第2の領域に配列することが望ましい。
【0012】
このように、第1の領域と第2の領域の間に、圧力検出部を設けない間隔を設けることで、圧力検出部の数を少なくして演算量を低減するとともに、コストダウンおよび小型軽量化を図ることができる。
【0013】
前記した、第1の領域と第2の領域を有するエッジ推定装置においては、前記複数の圧力検出部は、前記第1の領域と前記第2の領域が前記所定の間隔を挟んで対向する方向に直交する方向に沿って、前記第1の領域内および前記第2の領域内で、それぞれ複数列配列されていることが望ましい。
【0014】
このように、第1の領域および第2の領域内で、それぞれ圧力検出部が複数列設けられていることで、それぞれの領域内に1列しか圧力検出部が無い場合に比較して、エッジ線が延びる方向の精度(分解能)を高くすることができる。
【0015】
前記したエッジ線を推定可能な装置においては、前記エッジ線推定手段は、隣接するエッジ点同士を繋いだ方向を算出する方向算出部を有し、前記方向算出部が算出した方向が、隣接する位置において所定値以上異なる方向である場合に、異なる方向のエッジ線が交差していると推定し、同じ方向のエッジ線を形成すると推定したエッジ点の群を用いて最小二乗法により直線の近似を行う構成とすることができる。
【0016】
このように、方向算出部により算出した方向により、エッジ線を形成するエッジ点を群に分けることで、複数のエッジ線を推定することが可能となる。
【0017】
前記した課題を解決する本発明のエッジ推定方法は、検知面上に配列された複数の圧力検出部の検出値に基づいて検知面に接触した物体のエッジを推定する方法であって、前記圧力検出部が検出した圧力に基づき、隣接する圧力検出部が検出した圧力の圧力差を演算するステップと、前記圧力差の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定し、超えた場合に、当該圧力差を求めた圧力検出部の位置を、前記検知面に接触した物体のエッジの位置に対応するエッジ点であると判定するステップとを備えることを特徴とする。
【0018】
このような方法によれば、検知面上に配列された複数の圧力検出部で検出した圧力の圧力差を求める演算と、圧力差と閾値の比較演算のみで、容易かつ正確にエッジ点を検出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエッジ推定装置およびエッジ推定方法によれば、容易かつ正確にエッジ点を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】感圧ユニットの分解斜視図である。
【図2】感圧ユニットの断面図である。
【図3】演算装置のブロック図である。
【図4】エッジ線の算出方法を説明する図である。
【図5】エッジ線の算出処理のフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係る演算装置のブロック図である。
【図7】複数のエッジ線の算出方法を説明する図である。
【図8】複数のエッジ線の算出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係るエッジ推定装置1は、検知面Sを有する感圧ユニット10と、感圧ユニット10の検知出力に基づきエッジ点およびエッジ線を演算により推定する演算装置20とを備えている。
【0022】
感圧ユニット10は、ロボットの足(図示せず)の裏などに、検知面Sを露出させて設けられる。ロボットの足の裏に感圧ユニット10を配置した場合の一例として、図1および図4に、ロボットの前後および左右の方向を示した。
【0023】
感圧ユニット10は、ブロック状シート11と、スポンジ12と、プッシャ13と、プッシャガイド14と、ダイヤフラムアレイ15と、感圧センサアレイ16とを備えて構成されている。
【0024】
図1および図2に示すように、ブロック状シート11は、正方形状の外形を有するゴム状のシートであり、検知面Sとその裏面S′の両方に前後左右に格子状に延びる溝11aが形成されている。溝11aにより区画された各ブロック11c(図1のハッチング参照)は、検知面Sにおける1区画の検知領域であり、この領域に接触した物体からの圧力が、感圧センサアレイ16の後述する各感圧センサ16bに伝えられて検知されるようになっている。溝11aは、各ブロック11cに外部の物体からかかる力を、ブロック11cごとに分離する機能を果たす。つまり、溝11aがあることにより、各ブロック11cは、薄い連結部11bのみにより結合されるので、1つのブロック11cにかかった外力は、隣接するブロック11cには伝わりにくくなっている。各ブロック11cの検知面Sは圧力検出部の一例である。
【0025】
スポンジ12は、発泡樹脂などからなり、ブロック状シート11と同様の正方形状の外形を有する部材である。スポンジ12は、ブロック状シート11の裏面S′に接触するように設けられ、ブロック状シート11の検知面Sに圧力が掛かったときにブロック状シート11が撓むことを許容しつつ、この圧力を適度に分散させてプッシャ13に伝達する機能を果たす。各ブロック11cの検知面Sに掛かった圧力は、スポンジ12を介してプッシャ13に伝わることにより、多少圧力分布がぼやかされて複数のプッシャ13に伝わることになる。これにより、階段のエッジなどが検知面Sに当たって一部のブロック11cのみに大きな圧力が掛かったとしても、この圧力を適度に分散させ、プッシャ13、プッシャガイド14またはダイヤフラムアレイ15の破損を防止することができる。
【0026】
プッシャ13は、スポンジ12に掛かった圧力を感圧センサアレイ16の各感圧センサ16bに伝達する部材である。プッシャ13は、全体として棒状に形成され、感圧センサアレイ16側の円柱部13aと、円柱部13aと一体に形成され、スポンジ12側の端面で正方形(ブロック11cと合致した形状)となる角錐部13bとを備えて構成されている。プッシャ13のスポンジ12側の端面は、各ブロック11cに掛かった圧力をもれなく受け止めるため、各ブロック11cに合致した形状を有している。プッシャ13の感圧センサアレイ16側の端面は円形となっているが、感圧センサ16bの面全体にある程度均一な圧力を掛けられる十分な大きさを有していれば、形状は任意である。
【0027】
プッシャガイド14は、全体として正方形の板状に形成され、およそプッシャ13の形状に合ったガイド穴14aが表裏を貫通して設けられている。ガイド穴14aは、左端および右端の各辺から3列(前後方向に並ぶ配列を「列」とする。)、前後方向には前端から後端にわたって9行(左右方向に並ぶ配列を「行」とする。)、格子点状に配列されている。図1には、プッシャ13を3つのみ代表して図示しているが、プッシャ13は、各ガイド穴14aにそれぞれ1つずつ挿入されて配置されている。
【0028】
ダイヤフラムアレイ15は、プッシャ13に掛かった圧力を感圧センサ16bに安定して伝えるためのゴム状の部品である。ダイヤフラムアレイ15は、プッシャ13の感圧センサ16b側の円柱部13aに被さるカップ形状のダイヤフラム15aと、厚い板状の支持部15bを有し、支持部15bとダイヤフラム15aとが薄肉の接続部15cにより接続されている。各ダイヤフラム15aは、支持部15bにより隔離され、ダイヤフラム15aと支持部15bを接続する接続部15cが薄肉であることで、1つのプッシャ13から1つのダイヤフラム15aに掛かる力は、隣接するダイヤフラム15aには伝わらないようになっている。ダイヤフラム15aは、プッシャガイド14のガイド穴14aに対応して配列されている。
【0029】
感圧センサアレイ16は、感圧センサ16bを格子点状に配置してなるセンサアレイで、回路基板16a上に、外部からの圧力に応じて電気抵抗値が変化する感圧ゴムからなる感圧センサ16bをガイド穴14aおよびダイヤフラム15aに対応させて配列したものである。詳細は図示しないが、回路基板16a上の各感圧センサ16bに対応する部位には、感圧センサ16bの抵抗を測定するための接点が設けられている。各感圧センサ16bは、円板形状をなし、円形面はダイヤフラム15aに対面している。
【0030】
上述のように、各感圧センサ16bと、これに対応するダイヤフラム15a、プッシャ13は、左端から3列と、右端から3列の範囲にのみ設けられおり、検知面Sにおいて、左端から3列に対応する範囲が、複数の圧力検出部が配列された第1の領域11Pであり、右端から3列に対応する範囲が、複数の圧力検出部が配列された第2の領域11Qであり、その間の約3列分に相当する部分が、圧力検出部とならない所定の空間となる第3の領域11Rである。複数の圧力検出部は、第1の領域11Pと第2の領域11Qが第3の領域11Rを挟んで対向する方向(左右方向)に直交する方向(前後方向)に沿って、第1の領域11P内および第2の領域11Q内で、それぞれ複数列(3列)配列されている。
【0031】
このように、右端の第1の領域11Pおよび左端の第2の領域11Qに圧力検出部を設け、その間の第3の領域11Rには圧力検出部を設けなくても、ロボットの足の裏に感圧ユニット10を配置して階段のエッジを検出しようとする場合などは、階段のエッジが略左右方向に接触することが想定できるので、実用上十分な精度で階段のエッジ線を推定することが可能である。そのため、第3の領域11Rに圧力検出部を設けないようにすることで、エッジ線を比較的正確に検出しつつ、コストダウンを図ることができる。
【0032】
演算装置20は、CPU,ROM,RAMなど有する計算機であり、予め用意したプログラムを実行することで、感圧センサ16bが検出した圧力に基づき、エッジ点およびエッジ線を推定するように構成されている。図3に示すように、演算装置20は、圧力差演算手段21と、エッジ点判定手段22と、エッジ線推定手段23と、記憶手段29cを備えている。
【0033】
圧力差演算手段21は、感圧センサ16bの圧力検出値(具体的には回路基板16aからの信号)が入力され、隣接する圧力検出部(感圧センサ16b)が検出した圧力の圧力差を演算する部分であり、図4に示す前後方向(Y方向とする)に隣接する圧力検出部が検出した圧力値の差を演算する。すなわち、図4のX位置がm、Y位置がnの圧力検出部の圧力値をPm n、圧力差をΔPm nとすると、
ΔPm n=Pm n−Pm n+1
により演算する。もちろん、ΔPm n=Pm+1 n−Pm nとしても構わない。
圧力差演算手段21が算出した圧力差ΔPm nは、エッジ点判定手段22に出力される。
【0034】
エッジ点判定手段22は、圧力差演算手段21が算出した圧力差ΔPm nの大きさが所定の閾値Pthを超えたか否かを判定し、超えた場合に、圧力差ΔPm nを求めた圧力検出部の位置(これを「感圧点」とする。)を、検知面Sに接触した物体のエッジの位置に対応するエッジ点であると判定する部分である。所定の閾値Pthは、予め記憶手段29に記憶してある。なお、所定の閾値Pthは、一例として次のように設定することができる。例えば、ロボットの体重の5%〜10%の荷重が足の裏にかかった際に各感圧センサ16bの出力(無負荷時との電位差)が2V以上になるように感圧センサ16bが作られている場合、エッジ点を判定する閾値Pthは電位差2Vとすることができる。
【0035】
エッジ点判定手段22は、所定の閾値Pthを記憶手段29から読み出し、閾値Pthを圧力差ΔPm nと比較する。エッジ点判定手段22は、比較判定の結果、感圧点[m,n]がエッジ点であると判定した場合には、感圧点[m,n]に対応する記憶領域のフラグを立てて感圧点の位置を記録する。なお、この圧力差ΔPm nと閾値Pthとの比較判定は、シュミットトリガを用いてもよい。エッジ点判定手段22により判定された感圧点の位置は、このフラグを介してエッジ線推定手段23に出力される。
【0036】
エッジ線推定手段23は、エッジ点判定手段22が判定した、複数のエッジ点の配列を、最小二乗法により直線に近似することで、検知面Sに接触した物体のエッジ線を推定する部分である。具体的には、図4に示した黒点のように、複数の感圧点[m,n]の座標を用い、最小二乗法により近似直線を求めれば、この近似直線がエッジ線L1と推定することができる。
【0037】
記憶手段29は、閾値Pthの他、演算に必要な係数および演算式を記憶している。
【0038】
このように構成されたエッジ推定装置1によるエッジ点およびエッジ線の推定方法について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
図5に示す処理は、例えば、エッジ推定装置1が搭載されたロボットが歩行している最中に適宜なタイミングで実行される。エッジ推定を行う場合、図5に示すように、まず、圧力差演算手段21が、感圧センサ16bが検出した圧力値Pm nをすべての座標について取得する(S11)。そして、圧力差演算手段21は、Y方向に隣接する感圧点[m,n]同士の圧力差ΔPm nをすべての座標(n=8まで)について算出する(S12)。
【0039】
次に、エッジ点判定手段22は、各感圧点[m,n]について、圧力差ΔPm nの絶対値が閾値Pthより大きいか否かを判定し、大きい場合には(S13,Yes)、感圧点[m,n]をエッジ点と判定して、所定の記憶領域のフラグを立て(S14)、大きくない場合には(S13,No)、フラグを立てずにステップS15に進む。そして、すべての感圧点[m,n]で判定が終了していなければ(S15,No)、ステップS13に戻って次の感圧点[m,n]での判定を続け、すべての感圧点[m,n]で判定が終了していれば(S15,Yes)、ステップS20に進む。
【0040】
そして、エッジ線推定手段23は、エッジ点判定手段22により求めたエッジ点の座標を用い、最小二乗法により近似曲線を算出する(S20)。この近似曲線がエッジ線L1となる。
【0041】
以上のようにして、本実施形態のエッジ推定装置1によれば、圧力差ΔPm nの算出と閾値Pthの大きさの比較という、非常に簡易な処理でエッジ点を正確に求めることができる。そして、最小二乗法による近似直線の算出という、簡易な演算によりエッジ線L1を正確に推定することができる。そして、本実施形態のエッジ推定装置1では、第1の領域11Pと第2の領域11Qに圧力検出部を設け、第3の領域11Rには圧力検出部を設けていないので、比較的正確なエッジ線L1を求めることが可能でありながら、コストダウンを図ることができる。
【0042】
そして、複数の圧力検出部は、前後方向に沿って、第1の領域11P内および第2の領域11Q内で、それぞれ3列ずつ配列されているので、1列ずつのみ配列されている場合に比較して、最小二乗法により算出されるエッジ線L1の方向のバリエーションが多くなり、エッジ線L1の方向についての推定精度(分解能)を高くすることができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、複数のエッジ線の推定を可能とするエッジ推定装置1の実施形態について説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
複数のエッジ線を推定する場合、複数のエッジ線を正確に推定するため、第1実施形態において第3の領域11Rにも圧力検出部を設けるのが望ましい。そのため、ここでは、検知面Sの全面にわたって9列9行の圧力検出部が設けられている構成で説明する。
【0044】
複数のエッジ線を推定する場合、エッジ線推定手段23は、エッジ点から最小二乗法によりエッジ線を算出する前に、最小二乗法によりエッジ線を算出するのに用いるエッジ点を、1本のエッジ線を構成すると推定される群にグループ分けする。そのため、図6に示すように、演算装置20のエッジ線推定手段23は、隣接するエッジ点同士を繋いだ方向を算出する方向算出部23aを有する。そして、エッジ線推定手段23は、方向算出部23aが算出した方向が、隣接する位置において所定値以上異なる方向である場合に、異なる方向のエッジ線が交差していると推定し、同じ方向のエッジ線を形成すると推定したエッジ点の群を用いて最小二乗法により直線の近似を行うように構成されている。
【0045】
具体的に、複数のエッジ線の算出処理について図7および図8を参照しながら説明する。図8において、ステップS11からステップS15までは、エッジ点の算出処理であり、第1実施形態と同じである。ステップS31において、方向算出部23aは、X方向に隣接するエッジ点同士を繋いだ方向Dm(mはX座標)を算出する(図7も参照)。そして、エッジ線推定手段23は、隣接するX位置の感圧点同士の方向Dmの差の絶対値|Dm−Dm-1|が、所定の閾値Dthより大きいか否か判定し、大きい場合には(S32,Yes)、群カウント値jを1だけカウントアップする(S33)。そして、X=mにおけるエッジ点に対応する群番号Gmに群カウント値jの値を代入する(S34)。ステップS32において、|Dm−Dm-1|が、所定の閾値Dthより大きくない場合(S32,No)、X=mにおけるエッジ点は、X=m−1におけるエッジ点と同じエッジ線を構成すると推定されるので、jをカウントアップすることなく群番号Gmに群カウント値jの値を代入する(S34)。
【0046】
そして、群番号Gmの設定が、最大のX位置まで終了していなければ(S35,No)、ステップS32に戻って群番号Gmの設定(ステップS32〜S34)を繰り返し、最大のX位置まで終了していれば(S35,Yes)、ステップS36に進む。
【0047】
そして、ステップS36において、エッジ線推定手段23は、群番号Gmの値が同じエッジ点を1つの群として、この群ごとに最小二乗法で近似曲線を算出する。この計算の過程による処理を、例えば、図7の例で見ていくと、X=1〜4までの方向D1〜D4は、隣接する方向Dmが大きくは変化していないので、X=1〜4のエッジ点を1番目のグループとする。そして、方向D4と方向D5とは、方向が大きく変化しているので、X=5(方向D5)で群カウント値jを2とし、X=5〜9は、2番目のグループとする。そして、エッジ線推定手段23が、X=1〜4のエッジ点の群から、最小二乗法によりエッジ線L2を算出し、X=5〜9のエッジ点の群から、最小二乗法によりエッジ線L3を算出する処理をする。
【0048】
このように、本実施形態のエッジ推定装置1によれば、検知面Sに接触した物体に複数のエッジ線がある場合においても、比較的簡易な処理で、複数のエッジ線を推定することができる。
【0049】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、前記実施形態においては、ロボットの足の裏に本発明のエッジ推定装置を設ける場合を一例に挙げたが、本発明のエッジ推定装置は、ロボットの手に設けてもよいし、タッチパネルや電子ゲームのコントローラのように、人が接触することにより情報を入力する入力デバイスとして用いることもできる。
【0050】
また、前記実施形態においては、エッジ線を推定する過程でエッジ点とエッジ線の両方を推定する装置について例示したが、エッジ点のみを推定する装置として構成することもできる。
【0051】
さらに、第1の領域11Pと第2の領域11Qに、それぞれ1列のみの圧力検出部を設けるように圧力検出部を配列してもよい。
【0052】
また、前記実施形態においては、コンピュータプログラムを用いた演算を行うように説明したが、同様の機能を有する専用のIC回路を構築して演算を行ってもよい。これによれば、より高速な処理が可能である。
【0053】
前記実施形態においては、圧力検出部は、縦横の直交方向に並んで配置されていたが、正六角形の圧力検出部のブロックを密に配列したハニカム状に配列してもよいし、正三角形の圧力検出部のブロックを密に配列することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 エッジ推定装置
10 感圧ユニット
11 ブロック状シート
11P 第1の領域
11Q 第2の領域
11R 第3の領域
11a 溝
11b 連結部
11c ブロック
12 スポンジ
13 プッシャ
14 プッシャガイド
14a ガイド穴
15 ダイヤフラムアレイ
16 感圧センサアレイ
16a 回路基板
16b 感圧センサ
20 演算装置
21 圧力差演算手段
22 エッジ点判定手段
23 エッジ線推定手段
23a 方向算出部
29c 記憶手段
S 検知面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知面上に配列された複数の圧力検出部と、
前記圧力検出部が検出した圧力に基づき、隣接する圧力検出部が検出した圧力の圧力差を演算する圧力差演算手段と、
前記圧力差演算手段が算出した圧力差の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定し、超えた場合に、当該圧力差を求めた圧力検出部の位置を、前記検知面に接触した物体のエッジの位置に対応するエッジ点であると判定するエッジ点判定手段と、
を備えることを特徴とするエッジ推定装置。
【請求項2】
前記エッジ判定手段が判定した、複数のエッジ点の配列を、最小二乗法により直線に近似することで、前記検知面に接触した物体のエッジ線を推定するエッジ線推定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のエッジ推定装置。
【請求項3】
前記複数の圧力検出部は、前記検知面において、第1の領域に配列されるとともに、当該第1の領域とは所定の間隔を空けて設けられた第2の領域に配列されたことを特徴とする請求項2に記載のエッジ推定装置。
【請求項4】
前記複数の圧力検出部は、前記第1の領域と前記第2の領域が前記所定の間隔を挟んで対向する方向に直交する方向に沿って、前記第1の領域内および前記第2の領域内で、それぞれ複数列配列されていることを特徴とする請求項3に記載のエッジ推定装置。
【請求項5】
前記エッジ線推定手段は、隣接するエッジ点同士を繋いだ方向を算出する方向算出部を有し、前記方向算出部が算出した方向が、隣接する位置において所定値以上異なる方向である場合に、異なる方向のエッジ線が交差していると推定し、同じ方向のエッジ線を形成すると推定したエッジ点の群を用いて最小二乗法により直線の近似を行うことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のエッジ推定装置。
【請求項6】
検知面上に配列された複数の圧力検出部の検出値に基づいて検知面に接触した物体のエッジを推定する方法であって、
前記圧力検出部が検出した圧力に基づき、隣接する圧力検出部が検出した圧力の圧力差を演算するステップと、
前記圧力差の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定し、超えた場合に、当該圧力差を求めた圧力検出部の位置を、前記検知面に接触した物体のエッジの位置に対応するエッジ点であると判定するステップと
を備えることを特徴とするエッジ推定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−232124(P2011−232124A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101744(P2010−101744)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】