説明

エッチングマスク用樹脂及びエッチングマスク用コート材並びにサファイア基板のパターン形成方法

【課題】エッチング耐性及びサファイア基板への密着性に優れた被膜を与えるエッチングマスク用樹脂及びそのエッチングマスク用樹脂を含有するエッチングマスク用コート材並びにそのエッチングマスク用コート材を用いたサファイア基板のパターン形成方法を提供する。
【解決手段】本発明のエッチングマスク用樹脂は、サファイア基板の表面に配設されるエッチングマスクの形成に用いるエッチングマスク用樹脂であって、極性基(酸素原子を有する極性基)を有し、且つ、下記式(1)から算出される値が3以下の樹脂(環状オレフィンの開環(共)重合体)である。
/(N−N) (1)
〔式(1)中、Nは樹脂を構成する全原子の数であり、Nは樹脂を構成する炭素原子の合計数であり、Nは樹脂を構成する酸素原子の合計数である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチングマスク用樹脂及びエッチングマスク用コート材並びにサファイア(α−Al)基板のパターン形成方法に関する。更に詳しくは、本発明は、エッチングによりサファイア基板の表面に凹凸パターンを形成させる際に、サファイア基板の表面に配設されるエッチングマスクの形成に用いられ、エッチング耐性及びサファイア基板への密着性に優れるエッチングマスク用樹脂、及びそのエッチングマスク用樹脂を含有するエッチングマスク用コート材、並びに、そのエッチングマスク用コート材を用いたサファイア基板のパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDの高輝度化に伴い、優れた電気的特性及び光学特性を有するサファイア基板が、高輝度LED搭載用基板として使用されている。
サファイア基板を用いた高輝度LEDとしては、サファイア基板の上にバッファー層やコンタクト層等が積層され、それらの積層体の上に、電極層等を備える発光層が搭載されている。このような高輝度LEDにおいて、サファイア基板を用いる場合、サファイア基板の表面に凹凸パターンを形成させて、サファイア基板とバッファー層等との層間の屈折率の差をグラデーション化させて、光の取出し効率を向上させることにより、LEDの輝度を増大させることが行われている。このサファイア基板の表面への凹凸の形成としては、通常、g線アライナーによるパターニングが行われているが、パターン形成の精度が高くなく、焦点調製の許容範囲を超える場合がある。
また、基板の表面に凹凸を形成させるその他の方法としては、パターン化したエッチングマスクを基板の表面に形成させ、エッチング処理を施すことにより、基板の表面に凹凸パターンを形成させることが行われている。
このエッチングマスクの形成方法としては、熱ナノインプリント法及びUV−ナノインプリント法等がある。このうち、熱ナノインプリント法は、基板上の塗膜をガラス転移温度以上に加熱し、金型を押圧させた後に、冷却して金型に由来する凹凸パターンを備えるエッチングマスクを形成させるものであり、簡便であり汎用性の広い方法である。この熱ナノインプリント法に用いる樹脂としては、押圧時に金型の凹部内に樹脂が十分充填されて凹凸形状が転写される転写性(熱インプリント性)を有することが必要であるが、更に、得られるエッチングマスクが、エッチング耐性及びサファイア基板との密着性を備えることも必要である。
これに対して、熱インプリント性及びエッチング耐性を有するエッチングマスクとして、下記特許文献1には、特定の環状オレフィン化合物由来の構成単位を有する熱可塑性樹脂からなるエッチングマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−119694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のエッチングマスクは、熱インプリント性及びエッチング耐性を備えるエッチングマスクである。しかしながら、このエッチングマスクは、基板との密着性については、未だ十分であるとはいえない。特に、特許文献1に記載のエッチングマスクは、サファイア基板に用いた場合には、基板との密着性を十分有しているエッチングマスクには至っていない。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、エッチング耐性及びサファイア基板への密着性に優れた被膜を与えるエッチングマスク用樹脂及びエッチングマスク用コート材並びにそのエッチングマスク用コート材を用いたサファイア基板のパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の通りである。
1.サファイア基板の表面に配設されるエッチングマスクの形成に用いるエッチングマスク用樹脂であって、
極性基を有し、且つ、下記式(1)から算出される値が3以下の樹脂であることを特徴とするエッチングマスク用樹脂。
/(N−N) (1)
〔式(1)中、Nは樹脂を構成する全原子の数であり、Nは樹脂を構成する炭素原子の合計数であり、Nは樹脂を構成する酸素原子の合計数である。〕
2.上記樹脂が、環状オレフィンの開環重合により得られたものである上記1.に記載のエッチングマスク用樹脂。
3.上記樹脂が、下記一般式(2)で表される構成単位を有する上記1.又は上記2.に記載のエッチングマスク用樹脂。
【化1】

〔式(2)中、mは0又は1〜3の整数であり、nは0又は正の整数であり、A〜Aは、それぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f)又は(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換もしくは非置換の炭素原子数が1〜30の炭化水素基、
(e)エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基から選ばれる極性基、
(f)AとA、又は、AとAが、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、上記結合に関与しないA〜Aは相互に独立に上記(a)〜(e)より選ばれるものを表す、
(g)AとA、AとA、又は、AとAが、相互に結合して形成された芳香環あるいは非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、上記結合に関与しないA〜Aは相互に独立に上記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。〕
4.上記極性基が、−COOR基(Rは炭素原子数が1〜6の炭化水素基)である上記1.乃至3.のいずれか1項に記載のエッチングマスク用樹脂。
5.上記樹脂のガラス転移温度が、100℃〜200℃である上記1.乃至4.のいずれか1項に記載のエッチングマスク用樹脂。
6.上記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載のエッチングマスク用樹脂を、固形分濃度が0.5〜20%となるように、1atmでの沸点が80℃以上の溶媒に溶解してなることを特徴とするエッチングマスク用コート材。
7.上記6.に記載のコート材を、サファイア基板上に塗工して、塗膜を形成させた後、該塗膜を乾燥させて、上記サファイア基板上に被膜を形成させる被膜形成工程と、
上記被膜を、上記エッチングマスク用樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱した後、金型を押し付け、次いで、上記被膜を上記エッチングマスク用樹脂のガラス転移温度未満に冷却し、その後、上記金型を開放して、該金型の凹凸パターンを反映させたエッチングマスクを形成させるプリント工程と、
上記エッチングマスク付き基板をドライエッチングし、上記サファイア基板の表面に凹凸を形成させるエッチング工程と、を備えることを特徴とするサファイア基板のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のエッチングマスク用樹脂は、極性基を有することにより、サファイア基板との密着性に優れ、エッチングマスクにしたときにサファイア基板からの剥がれを抑制して、サファイア基板の表面における凹凸パターンの形成を良好に行うことができる。更に、本発明のエッチングマスク用樹脂は、上記式(1)から算出される値が3以下の樹脂であることから、エッチング耐性に優れ、サファイア基板の表面における凹凸パターンの形成において、金型に由来する凹凸パターンのアスペクト比が低いエッチングマスクであっても、サファイア基板の表面により深い凹部を形成することができる。
本発明のエッチングマスク用樹脂が、環状オレフィンの開環重合により得られたものである場合には、サファイア基板との密着性及びエッチング耐性のバランスがより優れる。
本発明のエッチングマスク用樹脂が有する極性基が、−COOR基である場合には、サファイア基板との密着性により優れる。
本発明のエッチングマスク用樹脂のガラス転移温度が、100℃〜200℃である場合には、金型に由来する凹凸パターンを有するエッチングマスクを良好に形成することができる。
また、本発明のエッチングマスク用コート材は、サファイア基板への塗工性に優れ、密着性に優れたエッチングマスクを良好に形成することができる。
また、本発明のサファイア基板のパターン形成方法によれば、サファイア基板の表面に形成されるエッチングマスクが、サファイア基板との密着性及びエッチング耐性に優れることから、サファイア基板の表面における凹凸(凹凸パターン)の形成を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のサファイア基板のパターン形成方法におけるプリント工程を説明する模式図である。
【図2】本発明のサファイア基板のパターン形成方法により得られた、表面に凹凸(凹凸パターン)が形成されたサファイア基板を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0009】
[1]エッチングマスク用樹脂
本発明のエッチングマスク用樹脂は、サファイア基板の表面に配設されるエッチングマスクの形成に用いるエッチングマスク用樹脂であって、極性基を有し、且つ、下記式(1)から算出される値が3以下の樹脂であることを特徴とする。
/(N−N) (1)
〔式(1)中、Nは樹脂を構成する全原子の数であり、Nは樹脂を構成する炭素原子の合計数であり、Nは樹脂を構成する酸素原子の合計数である。〕
【0010】
本発明の樹脂は、構造中に極性基を有する。この極性基の具体例は、後述されるが、この極性基を有する樹脂を含むエッチングマスクは、サファイア基板との密着性が得られる。
上記極性基としては、その極性基を介して、上記樹脂を含有するエッチングマスクコート材から形成されるエッチングマスクとサファイア基板の表面との密着性を奏する性質を有する限り、その種類は特に限定されない。上記極性基としては、具体的には、エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基、ニトリル基、チオール基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基等が挙げられる。上記極性基は1種のみでもよく、あるいは2種以上の異なる極性基でもよい。
これらの極性基のうち、好ましくはエステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基等の、酸素原子を有する極性基であり、より好ましくはエステル基である。上記極性基が、エステル基である場合、得られるエッチングマスクとサファイア基板との密着性が優れ、エッチングマスク用コート材とするときに溶剤への溶解性、コート材のサファイア基板への塗工性にも優れ、効率的にエッチングマスクを形成することができる。
【0011】
また、極性基がエステル基である場合、−COOR(Rは炭素原子数が1〜6の炭化水素基)で表される基が好ましい。上記極性基が、−COOR(Rは炭素原子数が1〜6の炭化水素基)で表される基である場合、上記効果をより確実に得ることができる。
上記Rとしては、直鎖状又は分枝状の飽和又は(2重結合又は3重結合の)不飽和脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基及び芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらのうち、直鎖状又は分枝状の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)、脂環族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が好ましい。具体的には、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルプロピル基、n−ヘキシル基及びイソヘキシル基等が挙げられる。
また、上記脂環族炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基等が挙げられる。
【0012】
また、本発明の樹脂は、上記式(1)から算出される値が3以下の樹脂である。また、式(1)から算出される値の下限値は特に限定されないが、通常、2以上であり、好ましくは2.2以上である。上記式(1)から算出される値が小さい方がドライエッチング速度が遅くなり、耐エッチング性が向上する。
本発明の樹脂は、上記式(1)から算出される値が3以下の樹脂であることから、耐エッチング性に優れる樹脂とすることができる。
【0013】
上記式(1)におけるN、N及びNの数値は、全自動元素分析装置等を用いて、樹脂を構成する炭素の原子数、酸素の原子数及び水素の原子数等を測定して、得ることできる。
また、上記式(1)の値は、樹脂を形成する単量体の原子構成及び仕込み量等から算出することができる。尚、この算出方法については、後述する。
【0014】
また、本発明の樹脂は、環状オレフィンの開環重合により得られたものとすることができる。上記環状オレフィンは、二重結合を有する環構造を備えた炭化水素系化合物であり、具体的には、下記一般式(3)及び(4)に表される化合物等が挙げられる。
【0015】
【化2】

〔式(3)中、mは0又は1〜3の整数であり、nは0又は正の整数であり、A〜Aは、それぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f)又は(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換もしくは非置換の炭素原子数が1〜30の炭化水素基、
(e)エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基から選ばれる極性基、
(f)AとA、又は、AとAが、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、上記結合に関与しないA〜Aは相互に独立に上記(a)〜(e)より選ばれるものを表す、
(g)AとA、AとA、又は、AとAが、相互に結合して形成された芳香環あるいは非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、上記結合に関与しないA〜Aは相互に独立に上記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。〕
【0016】
【化3】

〔式(4)中、mは0又は1〜3の整数であり、nは0又は正の整数であり、A及びAは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくはエステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基から選ばれる極性基、又はハロゲン原子及び/又は上基の極性基により置換された基よりなる郡より選ばれた原子もしくは基を示し、それぞれ同一でもよく、また異なっていてもよい。〕
【0017】
また、上記一般式(3)で表される環状オレフィン化合物としては、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルネン)、
5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニルカルボニルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヒドロキシエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8,9−トリメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−メチル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
8−フェニル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ブロモ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8,9−トリクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ジクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−トリクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ヒドロキシ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シアノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−アミノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、
テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.18,11.07,12]ペンタデカ−3−エン、
ヘキサシクロ[8.4.0.12,5.17,14.19,12.08,13]ヘプタデカ−3−エン、
8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−(4−ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェニルカルボニルオキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,9−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フルオロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−クロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ブロモ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,9−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8,9,9−テトラクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ヒドロキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−アミノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの環状オレフィン化合物のうち、工業的に入手しやすいビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルネン)、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(DNM)が好適に用いられる。
【0018】
また、上記一般式(4)で表される環状オレフィン化合物としては、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン(DCP)、
トリシクロペンタジエン、
ペンタシクロ[8.3.0.12,9.14,7.03,8]ペンタデカ−5,12−ジエン、
ヘプタシクロ[12.3.0.12,13.14,11.16,9.03,12.05,10]イコサン−7,16−ジエン、
8−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−フェノキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−メトキシカルボニルエチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−メトキシカルボニルエチルオキシ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−メチル−9−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8,9−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8−ブロモ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン、
8,9−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの環状オレフィン化合物のうち、工業的に入手しやすく安価なトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,8−ジエン(DCP)が好適に用いられる。
【0019】
本発明の樹脂が、環状オレフィン化合物の開環重合により得られたものである場合、一般式(3)で表される環状オレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種、及び/又は、一般式(4)で表される環状オレフィン化合物から選ばれる少なくとも1種、を単量体として用いるのが好ましい。尚、上記環状オレフィン化合物を開環重合させて得られる樹脂の製造方法については後述する。
【0020】
本発明において、開環重合に供する単量体の種類や配合割合は、エッチングマスクとしたときのサファイア基板に対するエッチング条件等による、得られる樹脂に求められる特性に応じて適宜選択できるが、上記式(1)で示される値が3以下となるように選択する。
本発明の樹脂における上記式(1)により算出される値は、樹脂を形成する単量体の原子構成及び仕込み量等から算出することができる。即ち、重合に用いる単量体を構成する炭素の原子数、酸素の原子数及び水素の原子数等の単量体の構成原子数、並びに、単量体の配合割合(モル比)、水素添加反応等がされる場合、得られる重合体が有する不飽和結合に付加される水素原子数等から算出することができる。
【0021】
例えば、樹脂を形成する単量体の仕込み量から上記式(1)の算出方法としては、本発明の樹脂が、環状オレフィン化合物の開環重合により得られたものである場合、具体的には、以下のとおりに算出される。
(1)8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(C1520)を開環重合させて、水素添加反応がされた水添樹脂とする場合、水素原子数は水添により2増加し、炭素原子数:15、水素原子数:22、酸素原子数:2となる。
従って、N/(N−N)=39/(15−2)=3.0となる。
(2)ジシクロペンタジエン(C1012)を開環重合させて、水素添加反応がされた水添樹脂とする場合、水素原子数は水添により4増加し、炭素原子数:10、水素原子数:16となる。
従って、N/(N−N)=26/(10−0)=2.6となる。
(3)8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(C1520)8モルと、ジシクロペンタジエン(C1012)2モルと、を開環共重合させて、水素添加反応がされた水添樹脂とする場合、
炭素原子数は、15×0.8+10×0.2=14、
水素原子数は、22×0.8+16×0.2=20.8、
酸素原子数は、2×0.8=1.6となる。
従って、N/(N−N)=36.4/(14−1.6)=2.94となる。
【0022】
また、本発明の樹脂は、その構造中に極性基を有するものであることから、少なくとも上記極性基を有している環状オレフィン系化合物を含む単量体を使用することが好ましい。もちろん、極性基を有する単量体のみを用いてもよいし、極性基を有さない単量体と併用してもよい。
【0023】
更に、上述の通り、本発明においては、上記極性基としては、−COOR基(Rは炭素原子数が1〜6の炭化水素基)が好ましいことから、上記−COOR基を有する環状オレフィン系化合物を用いることがより好ましい。
上記式−COOR基を有し、上記一般式(3)で表される環状オレフィン化合物としては、具体的には、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン等が挙げられる。これらのうち、工業的に入手しやすい8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(DNM)が好適に用いられる。
【0024】
本発明の樹脂が、環状オレフィン化合物に由来する場合、その樹脂の態様は、以下に例示される。
(1)環状オレフィン化合物により得られた開環(共)重合体(p1)
(2)上記開環(共)重合体(p1)の水素添加物(p2)、即ち、開環(共)重合体が有する脂肪族不飽和結合(エチレン系二重結合)の一部又は全部に、水素添加して得られる水添樹脂(p2)
上記(2)の態様において、水添樹脂(p2)とする場合の水添率は、通常、脂肪族不飽和結合の10%以上、好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは95%以上である。本発明の樹脂が水添樹脂(p2)である場合は、コート材塗工後の溶媒除去工程において、加熱乾燥による樹脂の劣化を抑制することができる。また、上記(p1)と上記(p2)とを組み合わせて用いてもよい。
【0025】
また、本発明の樹脂は、好ましくは下記一般式(2)で表される構成単位を有する樹脂である。下記一般式(2)で表される構成単位は、上記一般式(3)で表される環状オレフィン化合物由来の構成単位である。本発明の樹脂が、下記一般式(2)で表される構成単位を有する樹脂である場合、上記一般式(3)で表される化合物を含む環状オレフィンを開環重合した後に、更に水素添加反応させて得られた水添樹脂であることが好ましい。
【0026】
【化4】

〔式(2)中、mは0又は1〜3の整数であり、nは0又は正の整数であり、A〜Aは、それぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f)又は(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換もしくは非置換の炭素原子数が1〜30の炭化水素基、
(e)エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基から選ばれる極性基、
(f)AとA、又は、AとAが、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、上記結合に関与しないA〜Aは相互に独立に上記(a)〜(e)より選ばれるものを表す、
(g)AとA、AとA、又は、AとAが、相互に結合して形成された芳香環あるいは非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、上記結合に関与しないA〜Aは相互に独立に上記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。〕
【0027】
上記一般式(2)におけるA〜Aのうちの少なくとも1つは、(e)エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基から選ばれる極性基であることが好ましい。これらのうち、上記A〜Aのうちの少なくとも1つは、より好ましくはエステル基であり、更に好ましくは、上記の−COOR基(Rは炭素原子数が1〜6の炭化水素基)である。
【0028】
本発明の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、使用態様により適宜選択されるが、通常、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の分子量として、好ましくは1.0×10〜1.0×10であり、より好ましくは5.0×10〜5.0×10である。また、分子量分布(Mw/Mn)としては、好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5であり、更に好ましくは1〜4である。
【0029】
本発明の樹脂のガラス転移温度は、好ましくは100℃〜200℃であり、より好ましくは110℃〜190℃であり、更に好ましくは120℃〜180℃である。このガラス転移温度が100℃より低い場合、本発明の樹脂を用いて、熱ナノインプリント法によりエッチングマスクを形成させる場合に、エッチングマスクの成型時に樹脂の強度が不足してエッチングマスクに形成される凹凸パターンの倒壊等が現れることがある。一方、200℃を超える場合、熱ナノインプリント法によるエッチングマスクの成型時に金型の凹部内に樹脂が充填されるための十分な流動性が得られず転写が困難となることがある。尚、このガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)及び示差熱分析計(DTA)等で測定することができる。
【0030】
次に、本発明の樹脂が、環状オレフィンとして、上記一般式(3)及び/又は(4)に示される環状オレフィン化合物を使用した、開環(共)重合体からなる樹脂である場合の製造方法について、説明する。
【0031】
開環重合においては、通常、重合触媒が用いられる。その重合触媒としては、公知のものが適用可能であり、例えば、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の白金族化合物を用いることができる。また、(a)タングステン(W)、モリブデン(Mo)及びレニウム(Re)等の化合物から選ばれる少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素、IIA族元素、IIB族元素、IIIA族元素、IVA族元素又はIVB族元素を含む化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれる少なくとも1種の組合せからなる化合物も、好ましく用いられる。このような(a)成分と(b)成分とからなる触媒は、更に、活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。
【0032】
上記(a)成分におけるW、Mo及びReの化合物としては、具体的には、WCl、MoCl、ReOCl等の特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。また、上記(b)成分の具体例としては、n−CLi、(CAl、(CAlCl、LiHなど特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0033】
上記添加剤(c)成分としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類等を好適に用いることができるが、更に特開平1−240517号公報に示された化合物を使用することができる。
【0034】
上記重合触媒の使用量は、単量体全量1モルに対して、好ましくは0.00001〜0.001モルであり、より好ましくは0.0005〜0.005モルである。触媒の使用量が単量体全量1モルに対して、0.00001モルより少ないと、重合反応が進行しない場合があり、0.001モルより多いと触媒の除去が困難となる場合がある。
【0035】
上記重合反応においては、反応溶媒を用いることができる。この反応溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリール等の化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
【0036】
上記重合反応において、反応溶媒を用いる場合、その使用量としては、全単量体と溶媒との質量比で、好ましくは、全単量体:溶媒=(5:1)〜(1:15)であり、より好ましくは(2:1)〜(1:8)であり、更に好ましくは(1:1)〜(1:6)の範囲である。
【0037】
上記重合反応においては、分子量調節剤を使用することもできる。この分子量調節剤としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類等が挙げられる。
【0038】
上記のように、本発明の樹脂は、水添樹脂とすることができるので、その製法、即ち、上記重合反応により得られた開環(共)重合体を、更に水素添加反応(水添処理)する方法を説明する。
【0039】
上記水素添加反応においては、水素添加触媒を用いることができる。この水素添加触媒としては、通常のオレフィン性不飽和結合を水素添加する際に用いられる公知の化合物を使用することができる。例えば、チタン、コバルト、ニッケル等の有機酸塩またはアセチルアセトン塩と、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、スズ等の有機金属化合物とを組み合わせたいわゆるチグラータイプの均一系触媒;パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム等の貴金属を、カーボン、アルミナ、シリカアルミナ、シリカマグネシア、ケイソウ土等の担体に担持した担持型貴金属系触媒;ロジウム、レニウム、ルテニウム等の貴金属錯体触媒等が挙げられる。これらのうち、水素添加の反応性に優れることから、金属元素がルテニウムである金属ヒドリド錯体化合物が好ましい。
【0040】
上記の金属元素がルテニウムである金属ヒドリド錯体化合物としては、具体的には、
RuH(OCOPh)(CO)(PPh)
RuH(OCOPh-CH)(CO)(PPh)
RuH(OCOPh-C)(CO)(PPh)
RuH(OCOPh-C11)(CO)(PPh)
RuH(OCOPh-C17)(CO)(PPh)
RuH(OCOPh-OCH)(CO)(PPh)
RuH(OCOPh-OC2)(CO)(PPh)
RuH(OCOPh)(CO)(P(cyclohexyl))
RuH(OCOPh-NH)(CO)(PPh)
RuHF(CO)(PPh)
RuHCl(CO)(PPh)
RuHBr(CO)(PPh)
RuHI(CO)(PPh)、等が挙げられる。尚、これらの式中のPhはフェニル基(−C)、又はフェニレン基(−C−)を示す。
これらの化合物のうち、特に好ましいのは、RuH(OCOPh-C11)(CO)(PPh)、及び、RuHCl(CO)[P(Cである。
【0041】
上記水素添加触媒の使用量は、原料として用いられる単量体全量を100質量%(1000000質量ppm)としたときに、好ましくは5〜200質量ppmであり、より好ましくは10〜100質量ppmである。
【0042】
水素添加反応に用いられる溶媒としては、上記重合反応に用いられる溶媒を用いることができ、しかもそれ自体が水素添加されないものであれば特に限定されない。具体的には、上記重合反応溶媒と同様のものを挙げることができる。従って、単量体の重合で得られた環状オレフィン系開環(共)重合体溶液を、そのまま水素添加反応に供することができる。水素添加反応に供される溶液中の環状オレフィン系開環(共)重合体と溶媒との質量比は、好ましくは、重合体:溶媒=(5:1)〜(1:20)であり、より好ましくは(2:1)〜(1:15)であり、更に好ましくは(1:1)〜(1:10)である。溶媒の量が上記範囲より多いと溶媒の回収にコストが高くなる。また、溶媒の量が上記範囲より少ないと溶液の粘度が高くなり移液に時間がかかるため生産効率が悪くなる。
【0043】
水素添加反応においては、一般に、開環(共)重合体の水素添加では、開環(共)重合体を適当な溶媒に溶解した溶液に、水素添加触媒と水素ガスとを加えて水素添加反応を行うことができる。この場合、開環(共)重合体を含む溶液の温度を水素の接触開始段階、及び、その後の反応段階の反応過程に応じて制御することができる。
【0044】
溶液に含まれる開環(共)重合体と水素ガスとの接触開始時においては、開環(共)重合体を含む溶液の温度は、好ましくは10℃〜40℃、より好ましくは15℃〜40℃、更に好ましくは15℃〜35℃に制御する。開環(共)重合体を含む溶液の温度を上記範囲内にすると、開環(共)重合体の水素化物の色相がより透明になる。その理由としては、開環(共)重合体と水素の接触開始前に、開環(共)重合体を含む溶液の温度を上昇させないことにより、開環(共)重合体中が有する二重結合に対する水素添加触媒を介した酸化が抑制されるためと考えられる。
【0045】
水素接触開始後、開環(共)重合体を含む溶液を必要に応じて加熱して温度調整し、溶液の温度を、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは120〜200℃、更に好ましくは140〜180℃に昇温し、その温度に保ち水素添加反応を行う。水素接触開始後の開環(共)重合体を含む溶液の温度をこの範囲にすると、開環(共)重合体が有する脂肪族不飽和結合への水素化率を高めることができる。
【0046】
ここで、水素接触開始時とは、開環(共)重合体を含む溶液が入れられている反応器に水素ガスの導入を開始した時期をいい、水素接触開始後とは、それ以降から水素供給終了時までの時間をいう。
【0047】
水素ガスの供給量としては、好ましくは0.0001〜0.01MPa/sであり、より好ましくは0.001〜0.005MPa/sである。上記範囲内で水素ガスを供給すると、反応熱による系内温度上昇速度を抑制することができる。
また、水素添加反応における反応系の圧力は、好ましくは50〜220kg/cmであり、より好ましくは70〜150kg/cmであり、更に好ましくは90〜120kg/cmである。反応系の圧力が低すぎると水素添加反応に長時間を要し生産性に問題が生じる場合があり、一方、圧力を高くすると大きい反応速度が得られるが、装置として高価な耐圧装置が必要になるので経済効率が低くなる場合がある。
また、反応系内温度を目的の反応温度に保ち、水素ガスの圧力が目的の圧力に達してから反応が終了するまでの時間は、通常1〜9時間であり、好ましくは2〜5時間である。上記範囲の時間であれば、十分な水素化を行うことが可能であるとともに、時間が長すぎることにより生じる副反応も抑制できる。
【0048】
上記のようにして得られた開環(共)重合体の水添樹脂(水素化物)の水添率は、通常、脂肪族不飽和結合の80%以上とすることができ、好ましくは95%以上、より好ましくは100%とすることができる。上記水添率が上記範囲内であると、被膜形成工程での、コート材塗工後の塗膜乾燥(溶媒除去)において、加熱乾燥による樹脂の劣化を抑制することができる。
【0049】
尚、本発明でいう水素添加(水素化)とは、開環(共)重合体分子中の脂肪族不飽和結合(オレフィン性不飽和結合)に対する反応であって、それ以外の不飽和結合は水素化されなくてもよい。
例えば、重合体が芳香族基を有する場合、係る芳香族基は必ずしも水素化される必要はない。芳香族基が分子内に存在することにより、得られる環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の耐熱性や屈折率などの光学特性に対して有利な場合もあるので、所望の特性によっては、芳香族基が実質的に水素化されない条件を選択することが好ましい場合もある。
【0050】
また、上記開環重合反応により得られる環状オレフィン化合物由来の構成単位を含む、開環(共)重合体(p1)及び水添樹脂(p2)の重量平均分子量(Mw)としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の分子量として、いずれも、好ましくは1.0×10〜1.0×10であり、より好ましくは5.0×10〜5.0×10である。また、分子量分布(Mw/Mn)としては、両者共に、好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5であり、更に好ましくは1〜4である。
【0051】
本発明の樹脂は、極性基を有することにより、この極性基を介してサファイア基板との密着性の作用を向上させる。その一方で、本発明の樹脂は、上記式(1)から算出される値を3以下とすることによりエッチング耐性の効果を奏するものである。
一般に、樹脂に含まれる極性基が、エステル基等の酸素原子を含有する基である場合には、上記式(1)から算出される値は上昇し、樹脂のエッチング耐性は低下する。
本発明の樹脂においては、酸素原子を含有する基を有しても、この密着性及びエッチング耐性のバランスを備える。
【0052】
本発明の樹脂は、ドライエッチング等により、サファイア基板の表面に凹凸パターンを形成させる際に、サファイア基板の表面に配設されるエッチングマスクを形成するエッチングマスクコート材に含有される、エッチングマスク用樹脂として好適に用いられる。本発明の樹脂は、エッチング耐性及びサファイア基板との密着性に優れた被膜を与え、サファイア基板の表面における凹凸の形成に好適であり、凹凸(凹凸パターン)を有するサファイア基板を効率的に製造することができる。
【0053】
[2]エッチングマスクコート材
本発明のエッチングマスク用コート材(以下、単に「コート材」ともいう)は、上記のエッチングマスク用樹脂を、固形分濃度が0.5〜20%となるように、1atmでの沸点が80℃以上の溶媒に溶解してなることを特徴とする。
【0054】
上記溶媒は、上記樹脂を溶解することができる物質である。上記溶媒の沸点は、1atmでの沸点が80℃以上であり、好ましくは85℃以上であり、より好ましくは90℃以上であり、通常250℃以下である。1atmでの沸点が上記範囲内の溶媒を用いることにより、作業性に優れるコート材とすることができる。
【0055】
上記溶媒としては、芳香族系化合物、脂肪族炭化水素系化合物、脂環族炭化水素系化合物、含酸素炭化水素系化合物、含窒素炭化水素系化合物及びハロゲン化炭化水素系化合物等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。尚、下記の溶媒において、カッコ(括弧)内の温度は1atmでの沸点を示す。
上記芳香族系溶媒としては、ベンゼン(80℃)、トルエン(111℃)、プロピルベンゼン(159℃)、キシレン(オルト;144℃、メタ;139℃、パラ;138℃)、シメン(177℃)、エチルベンゼン(136℃)、メシチレン(165℃)及びクメン(152℃)等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素系溶媒としては、オクタン(125℃)、ノナン(151℃)、デカン(174℃)及びドデカン(215℃)等が挙げられる。
上記脂環族炭化水素系溶媒としては、シクロヘキサン(81℃)及びメチルシクロヘキサン(101℃)、デカヒドロナフタレン(cis体;193℃、trans体;185℃)等が挙げられる。
上記含酸素炭化水素系溶媒としては、メチルエチルケトン(80℃)、ジエチルケトン(101℃)、メチルイソブチルケトン(118℃)、シクロヘキサノン(155℃)等のケトン類;2−プロパノール(83℃)、1−ブタノール(117℃)、イソブタノール(108℃)、シクロペンタノール(140℃)、1−ヘキサノール(157℃)、シクロヘキサノール(161℃)等のアルコール類等が挙げられる。
上記含窒素炭化水素系溶媒としては、N−Nジメチルホルムアミド(153℃)、N−メチルピロリドン(202℃)等が挙げられる。
上記ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、1,2−ジクロロエタン(84℃)及びクロロベンゼン(131℃)、ジクロロベンゼン(オルト;180℃、メタ;174℃、パラ;174℃)等が挙げられる。
また、これらの溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
本発明のコート材は、上記樹脂を溶媒に溶解して得られた溶液である。コート材における樹脂の濃度としては、固形分濃度(質量%)が0.5〜20%であり、好ましくは0.8〜15%であり、より好ましくは1〜10%である。樹脂の固形分濃度が、上記範囲にあると、上記樹脂が均一でむらのない状態でエッチングマスクを形成することができる。
【0057】
また、本発明のコート材は、上記樹脂以外に、その他の添加剤を更に含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、離型剤や無機フィラー等が挙げられる。
上記離型剤としては、シリコーン系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、フッ素含有樹脂等のフッ素含有化合物からなるフッ素系離型剤等が挙げられる。上記離型剤を含有する場合、その含有量としては、全量を100質量%としたときに1〜5質量%である。
また、上記無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等が挙げられる。上記無機フィラーを含有する場合、その含有量としては、全量を100質量%としたときに1〜20質量%である。
【0058】
[3]サファイア基板のパターン形成方法
本発明のサファイア基板のパターン形成方法は、上記のコート材を、サファイア基板上に塗工して、塗膜を形成させた後、該塗膜を乾燥させて、上記サファイア基板上に被膜を形成させる被膜形成工程と、上記被膜を、上記エッチングマスク用樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱した後、金型を押し付け、次いで、上記被膜を上記エッチングマスク用樹脂のガラス転移温度未満に冷却し、その後、上記金型を開放して、該金型の凹凸パターンを反映(転写)させたエッチングマスクを形成させるプリント工程と、上記エッチングマスク付き基板をドライエッチングし、上記サファイア基板の表面に凹凸(凹凸パターン)を形成させるエッチング工程と、を備えることを特徴とする。
【0059】
上記被膜形成工程は、サファイア基板の表面に上記のコート材により塗膜を形成させて、サファイア基板上に被膜を形成する工程である。この工程では、塗膜を得た後、通常、乾燥させて被膜を得る。
サファイア基板に塗膜を形成させる方法は、特に限定されず、公知の塗工方法を適用することができる。例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディッピング、ロールコーティング及びバーコーティング等が挙げられる。
【0060】
上記塗膜の乾燥方法としては、公知の乾燥方法を使用することができる。具体的には、真空乾燥(減圧乾燥)、熱風乾燥及びホットプレート乾燥等の加熱乾燥が挙げられる。これらの方法は組み合わせて行ってもよい。
【0061】
上記被膜形成工程で得られる被膜の膜厚は、使用目的等に応じて適宜選択できる。被膜の膜厚は、例えば、0.01μm〜1μmとすることができる。また、本発明のエッチングマスク用樹脂は、エッチング耐性に優れることから、0.5μm以下とすることもできる。
【0062】
上記プリント工程は、図1に示す要領で、凹凸パターン12を有する金型10を用いて、本発明の樹脂を含むエッチングマスク32を形成する工程であり、従来、公知の熱ナノインプリント法等を適用することができる。そして、得られるエッチングマスク32は、被膜30に押し付けた金型10の表面の凹凸パターン12を反映するパターンを有する。
【0063】
上記プリント工程としては、例えば、図1に示されるように、(a)基板20の表面に形成された被膜30がエッチングマスク用樹脂のガラス転移温度以上の温度条件となるように加熱され、そして、その被膜30に、凹凸パターン12を有する金型10を押圧(圧接)する押圧工程PR1と、(b)上記金型10を上記被膜30に押圧した状態で、被膜30をエッチングマスク用樹脂のガラス転移温度未満に冷却して、硬化膜32を形成させる被膜硬化工程PR2と、(c)上記金型10と、金型の凹凸パターンを反映させた形状である凹凸パターン34を有するエッチングマスク32とを分離し、エッチングマスク34から金型10を開放する分離工程PR3と、を備えることができる。
【0064】
上記押圧工程PR1において、被膜30を、エッチングマスク用樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱した後、被膜30への金型10の押圧を行われる。この場合、被膜30への金型10の押圧は、基板20表面の被膜30を形成するエッチングマスク用樹脂のガラス転移温度以上の温度条件で行われることが好ましい。エッチングマスク用樹脂のガラス転移温度以上の温度条件とは、金型10及び基板20上の被膜30が、エッチングマスク用樹脂のガラス転移温度以上の温度であることをいう。上記温度は、エッチングマスクを構成するエッチングマスク用樹脂のガラス転移温度以上であればよく、上限としては、通常、ガラス転移温度に加えて100℃以下である。
【0065】
上記温度条件としては、上記温度に加熱された雰囲気下で上記押圧工程PR1を行うことができる。また、金型10及び基板20上の被膜30をそれぞれ加熱しても良い。金型10の加熱はヒーター等により行うことができる。また、上記被膜30の加熱としては、例えば、ホットプレート、オーブン及びファーネス等が挙げられる。これらのうち、温度管理が容易なことから、ホットプレートによる加熱が好ましい。ホットプレートによる加熱を行う場合、被膜が形成されていない基板の表面をホットプレート上に載置し、ホットプレートを加熱することにより、基板を加熱させて、基板における熱伝導により、基板表面の被膜をガラス転移温度以上の温度とすることができる。
【0066】
上記金型10は、モールド又はスタンパとも称され、被膜30に凹凸パターン34を転写するための凹凸パターン12が形成されている。金型10を被膜30に押圧することにより、被膜30に金型10の凹凸パターン12を反映させた相補的形状の凹凸パターン34を、被膜30に形成させることができる。
上記金型10の材質としては、通常の熱ナノインプリント等に用いられるものを、特に限定されることなく使用できる。具体的には、金属シリコン、ニッケル及び石英等が挙げられる。また、使用される温度以上の耐熱性を有していれば樹脂製の金型を使用しても良い。
【0067】
金型10の凹凸パターン12の形状は、使用される基板の用途により適宜選択される。凹凸パターン12(凹凸)の形状としては、例えば、ラインアンドスペース形状、ホール形状、ドット形状及びピラー形状等が挙げられる。
また、凹凸パターン12による凹部と凸部との高さの差は、使用される基板の用途及び被膜30の膜厚等により適宜選択されるが、通常10μm以下であり、5μm以下のものも使用できる。また、凹凸パターン12のアスペクト比としては、通常1以上であるが、本発明においては、2以上又は3以上とすることもできる。
【0068】
また、金型10を被膜30に押圧する場合に、被膜30と接する凹凸パターン12の表面部分には、離型処理を施すことができる。この離型処理としては、上記金型の被膜30と接する凹凸パターン12の表面部分に液状の離型剤を付着させる方法が挙げられる。この離型剤を付着させる方法は特に限定されず、スピンコーティング、塗布(スプレー塗布等)、ディッピング、ロールコーティング及びバーコーティング等の方法を用いることができる。これらの方法は1種のみを用いてもよく2種以上を併用することができる。また、この離型剤付着工程には、金型に付着された離型剤を定着させるために金型及び/又は離型剤に対して加熱や放射線照射等を施す定着処理を含むことができる。
【0069】
上記離型剤としては、具体的には、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤及びカルナバ系離型剤等が挙げられる。これらの離型剤は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0070】
上記押圧工程PR1において、金型10の押圧の際の圧力は、金型10の凹凸パターン12の形状を転写できれば特に限定されないが、通常、0.1MPa以上(100MPa以下)であり、好ましくは1〜10MPaであり、より好ましくは2〜8MPaである。
【0071】
上記被膜硬化工程PR2は、上記金型10を上記被膜30に押圧した状態で、被膜30をエッチングマスク用樹脂のガラス転移温度未満に冷却して、被膜30を硬化させた硬化膜であるエッチングマスク32を形成させる工程である。金型10を被膜30に押圧した状態で冷却することにより、効率的に、金型10の凹凸パターン12を反映させた相補的形状の凹凸パターン34を有するエッチングマスク32を形成させることができる。冷却方法は、被膜30を硬化させた硬化膜であるエッチングマスク32を形成できれば、特に限定されない。この冷却方法としては、具体的には、冷却装置を用いた冷却及び自然放熱による冷却等が挙げられる。
【0072】
上記分離工程PR3は、エッチングマスク32から金型10を開放する工程である。開放(分離)に際する各種条件等も特に限定されない。即ち、例えば、基板20を固定して金型10を基板20から遠ざかるように移動させて分離し、開放してもよく、金型10を固定して基板20を金型10から遠ざかるように移動させて分離し、開放してもよく、これらの両方を逆方向へ引っ張って開放してもよい。この分離工程PR3により、金型10の凹凸パターン12を反映させた凹凸パターン32が形成されたエッチングマスク34付き基板20を得ることが得ることができる。
【0073】
上記エッチング工程は、上記エッチングマスク34付き基板20をドライエッチングすし、上記エッチングマスク34を耐エッチング用のマスクとして、基板20にエッチングマスク34のパターン34を顕在化させて、基板20の表面に凹凸(凹凸パターン)を形成させる工程である。このエッチング工程により、例えば、図2に示されるように、表面に凹凸(凹凸パターン)が形成されたサファイア基板20を得ることができる。
基板20の表面に形成される凹凸(凹凸パターン)の形状としては、例えば、ラインアンドスペース形状、ホール形状、ドット形状及びピラー形状等が挙げられる。
また、基板20の表面に付与される凹凸(凹凸パターン)は、基板20表面の全面に形成されてもよく、一部に形成されてもよい。
【0074】
上記ドライエッチングには、公知のドライエッチング装置が用いられる。また、このドライエッチングの手法としては、プラズマによりガスをイオン化・ラジカル化してエッチングする反応性イオンエッチング、及び反応性ガスを用いる反応性ガスエッチング等が挙げられる。上記反応性イオンエッチングのガスとしては、四フッ化炭素(CF)、六フッ化硫黄(SF)、トリフロルメタン(CHF)等のガスが用いられる。
また、上記反応性ガスエッチングのガスとしては、二フッ化キセノン(XeF)等のガスが用いられる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0076】
1.物性の測定方法及び評価方法
各種物性の測定方法及び各種評価項目の評価方法を以下に示す。
【0077】
1−1.ガラス転移温度(Tg)
セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計「DSC6200」(型式名)を用いて、昇温速度を毎分20℃、窒素気流下で、樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定を行った。Tgは、微分示差走査熱量の最大ピーク温度(A点)および最大ピーク温度より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求めた。
【0078】
1−2.重量平均分子量(Mw)
東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC―8020」(型式名)を用いて、テトラヒドロフラン(THF)溶媒で、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0079】
1−3.N/(N−N)値
樹脂を形成する単量体(環状オレフィン)の原子構成及び仕込み量から算出した。即ち、開環重合に用いる単量体を構成する炭素の原子数、酸素の原子数及び水素の原子数等の単量体の構成原子数、並びに、単量体の配合割合(モル比)、水素添加反応により付加される水素原子数から算出した。
【0080】
1−4.耐エッチング性
半径4インチのサファイア基板の表面に、エッチングマスク用コート材を乾燥後の膜厚が300nmとなるようにスピンコート(塗布)した後、80℃で3分間乾燥させ、さらに200℃で30分間真空乾燥を行い、溶媒を揮発させて、サファイア基板上に膜厚が300nmのエッチングマスクを形成させた。その後、ドライエッチング装置を用いて、CF(CFの流量:50cc/分、交流電力:200W、温度:室温(約20℃))により、サファイア基板上にエッチングマスクにエッチング処理を施した。
エッチング処理前後のエッチングマスクの膜厚をJ.A.Woollam社製分光エリプソメータ−「M2000D」(型式名)により測定し、エッチング試験による膜厚減少幅(ΔL)を下記式(10)より算出して評価した。得られたΔLの値が、小さいほど耐エッチング性が良好である。
ΔL[nm]=L−L (10)
〔但し、式(10)中、Lは、エッチング処理前の膜厚であり、L:エッチング処理後の膜厚である〕
【0081】
1−5.基板への密着性
上記耐エッチング性の評価と同様の手法によりサファイア基板へエッチングマスク用コート材を塗布した後、乾燥を行って、サファイア基板上に膜厚が300nmのエッチングマスクを形成させた。その後、得られたエッチングマスクを、カッターにて5×5の25マスになるようにクロスカットし、カプトンテープにて剥離試験を実施した。全25マス中剥離しなかったマスの数をXとし、そのXの値を密着性の指標として評価した。Xが高いほど基板への密着性が良好である。
【0082】
2.エッチングマスク用樹脂及びエッチングマスク用コート材の調製
[実施例1]
環状オレフィンとして8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(DNM)90部、2−ノルボルネン(NB)10部、分子量調節剤として1−ヘキセン17.7部、及び溶媒としてトルエン150部を窒素置換した反応容器に投入し、反応容器内を80℃に加熱した。その後、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.22部、及びメタノール変性WClのトルエン溶液(0.025mol/l)0.89部を反応容器内に加え、80℃で1時間反応させることにより開環(共)重合体を得た。
得られた開環(共)重合体の反応溶液を水添反応用容器に移液し、トルエン110部を加えた後、撹拌して均一溶液とした。次いで、溶液温度を30℃まで下げ、水素添加反応触媒であるRuHCl(CO)[P(Cを0.04部を溶液に添加し、水素ガスを7MPaまで導入した。水素ガスを7MPaまで導入後、160℃〜165℃まで昇温し、その温度に保ち、最終的に導入水素ガス圧を9〜10MPaとして3時間反応させた。反応終了後、80℃まで冷却した後、トルエン100部を加えて希釈し、脱触助剤として乳酸0.12部、メタノール144部を加え、60℃で3時間攪拌して脱触媒操作を実施した。得られた溶液(水添樹脂を含む生成物)を多量のメタノールに添加して、水添樹脂を沈殿させることにより、水添樹脂を回収した。この水添樹脂を、真空乾燥してエッチングマスク用樹脂(1)を得た。上記の通りGPCにより重量平均分子量(Mw)を測定したところ、47000であった。
次いで、得られたエッチングマスク用樹脂(1)を固形分濃度が5%となるようにキシレンに溶解させた後、孔径0.45μmフィルターにてろ過を行い、エッチングマスク用コート材(1)を得た。
【0083】
[実施例2]
環状オレフィンとして8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(DNM)70部、ジシクロペンタジエン(DCP)20部、2−ノルボルネン(NB)10部、分子量調節剤として1−ヘキセン14部、及び溶媒としてトルエン150部を窒素置換した反応容器に投入し、反応容器内を107℃に加熱した。その後、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.22部、及びメタノール変性WClのトルエン溶液(0.025mol/l)0.89部を反応容器内に加え、107℃で1時間反応させることにより開環(共)重合体を得た。
得られた開環(共)重合体の反応溶液を水添反応用容器に移液し、トルエン110部を加えた後、攪拌して均一溶液とした。次いで、水素添加反応触媒であるRu[4−CH(CHCO]H(CO)[P(Cを0.04部を溶液に添加した。そして、溶液温度を90℃まで上げてから、水素ガスを7MPaまで導入した。最終的に160〜165℃まで溶液温度を上げ、その温度に保ち、導入水素ガス圧を9〜10MPaとして3時間反応させた。反応終了後、80℃まで冷却した後、トルエン100部を加えて希釈し、脱触助剤として乳酸0.12部、メタノール144部を加え、60℃で3時間攪拌して脱触媒操作を実施した。得られた溶液(水添樹脂を含む生成物)を多量のメタノールに添加して、水添樹脂を沈殿させることにより、水添樹脂を回収した。この水添樹脂を、真空乾燥してエッチングマスク用樹脂(2)を得た。上記の通りGPCにより重量平均分子量(Mw)を測定したところ、42000であった。
更に、得られたエッチングマスク用樹脂(2)を固形分濃度が5%となるようにキシレンに溶解させた後、孔径0.45μmフィルターにてろ過を行い、エッチングマスク用コート材(2)を得た。
【0084】
[実施例3]
環状オレフィンとして、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(DNM)20部、ジシクロペンタジエン(DCP)70部、2−ノルボルネン(NB)10部、溶媒としてトルエン150部、及び分子量調節剤として1−ヘキセン0.9部を窒素置換した反応容器に投入し、反応容器内を80℃に加熱した。更に、イソブチルアルコール0.18部、ジイソプロピルエーテル0.2部、トリイソブチルアルミニウム0.48部、六塩化タングステン(WCl)のトルエン溶液(0.025mol/l)5部加え、80℃で1時間反応させることにより開環(共)重合体を得た。
その後、得られた開環(共)重合体から、実施例2と同様の方法で、エッチングマスク用樹脂(3)、及びエッチングマスク用コート材(3)を得た。また、エッチングマスク用樹脂(3)について、上記の通りGPCにより重量平均分子量(Mw)を測定したところ、40000であった。
【0085】
[実施例4]
実施例3で用いた環状オレフィンに代えて、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(DNM)20部、トリシクロペンタジエン(TCP)70部、及び2−ノルボルネン(NB)10部を単量体として用いた以外は、実施例3と同様にして、エッチングマスク用樹脂(4)、及びエッチングマスク用コート材(4)を得た。また、エッチングマスク用樹脂(4)について、上記の通りGPCにより重量平均分子量(Mw)を測定したところ、45000であった。
【0086】
[比較例1]
実施例3で用いた環状オレフィン及び溶媒に代えて、環状オレフィンとしてジシクロペンタジエン(DCP)100部を用い、溶媒として脱水したシクロヘキサン300部を用いた以外は、実施例3と同様にして、エッチングマスク用樹脂(5)、及びエッチングマスクコート材(5)を得た。また、エッチングマスク用樹脂(5)について、上記の通りGPCにより重量平均分子量(Mw)を測定したところ、40000であった。
【0087】
[比較例2]
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)(三菱レイヨン製「アクリペットVH001」(商品名))を固形分が5%となるようにキシレンに溶解し、孔径0.45μmフィルターにてろ過を行い、エッチングマスク用コート材(6)を得た。
【0088】
上記実施例1〜4及び比較例1〜2により得られたエッチングマスク用樹脂及びエッチングマスクコート材について、上述の物性の測定方法及び評価方法に従って、各種物性及び各種評価項目の評価について検討した。その結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のエッチングマスク用樹脂は、エッチング耐性及びサファイア基板への密着性に優れ、エッチングによりサファイア基板の表面に凹凸パターンを形成させる際に、サファイア基板の表面に配設されるエッチングマスク等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0092】
10;金型(モールド)、20;サファイア基板、30;塗膜、32;硬化膜(エッチングマスク)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア基板の表面に配設されるエッチングマスクの形成に用いるエッチングマスク用樹脂であって、
極性基を有し、且つ、下記式(1)から算出される値が3以下の樹脂であることを特徴とするエッチングマスク用樹脂。
/(N−N) (1)
〔式(1)中、Nは樹脂を構成する全原子の数であり、Nは樹脂を構成する炭素原子の合計数であり、Nは樹脂を構成する酸素原子の合計数である。〕
【請求項2】
上記樹脂が、環状オレフィンの開環重合により得られたものである請求項1に記載のエッチングマスク用樹脂。
【請求項3】
上記樹脂が、下記一般式(2)で表される構成単位を有する請求項1又は2に記載のエッチングマスク用樹脂。
【化1】

〔式(2)中、mは0又は1〜3の整数であり、nは0又は正の整数であり、A〜Aは、それぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f)又は(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換もしくは非置換の炭素原子数が1〜30の炭化水素基、
(e)エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、カーボネート基、スルホン基及びイミド基から選ばれる極性基、
(f)AとA、又は、AとAが、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、上記結合に関与しないA〜Aは相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す、
(g)AとA、AとA、又は、AとAが、相互に結合して形成された芳香環あるいは非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、上記結合に関与しないA〜Aは相互に独立に上記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。〕
【請求項4】
上記極性基が、−COOR基(Rは炭素原子数が1〜6の炭化水素基)である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエッチングマスク用樹脂。
【請求項5】
上記樹脂のガラス転移温度が、100℃〜200℃である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエッチングマスク用樹脂。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のエッチングマスク用樹脂を、固形分濃度が0.5〜20%となるように、1atmでの沸点が80℃以上の溶媒に溶解してなることを特徴とするエッチングマスク用コート材。
【請求項7】
請求項6に記載のコート材を、サファイア基板上に塗工して、塗膜を形成させた後、該塗膜を乾燥させて、上記サファイア基板上に被膜を形成させる被膜形成工程と、
上記被膜を、上記エッチングマスク用樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱した後、金型を押し付け、次いで、上記被膜を上記エッチングマスク用樹脂のガラス転移温度未満に冷却し、その後、上記金型を開放して、該金型の凹凸パターンを反映させたエッチングマスクを形成させるプリント工程と、
上記エッチングマスク付き基板をドライエッチングし、上記サファイア基板の表面に凹凸を形成させるエッチング工程と、を備えることを特徴とするサファイア基板のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−149151(P2012−149151A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8255(P2011−8255)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】