説明

エッチングレート測定方法およびこれを用いたプリント配線板の製造方法

【課題】従来よりも回路形成時の実態に即したエッチングレートの測定方法を提供すること。また、このエッチングレートの測定方法を用いたプリント配線板の製造方法を提供すること。
【解決手段】基板K上に金属層M、Mが形成された試料Sの端面Tをエッチングした後、基板Kの端面Tからエッチングされた金属層M、Mの端面T、Tまでの距離L、Lを測定し、この距離L、Lに基づいてエッチングレートを求める。また、このエッチングレート測定方法により求めたエッチングレートに少なくとも基づいて製造条件を設定して金属層を形成し、プリント配線板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチングレート測定方法およびこれを用いたプリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器には、多くのプリント配線板が使用されている。この種のプリント配線板は、一般に、基板上に積層された金属層をエッチング液によりエッチングし、所望の回路形状を形成する方法などを用いて製造されている。
【0003】
上記プリント配線板には、NiやCuなどの異種金属の層が複数積層されてなるものがある。その場合、エッチング液によって各層がエッチングされるエッチングレートはそれぞれ異なっており、例えば、同時に各層をエッチングしたい場合には、各層のエッチングレートが一致するように膜質などを設計する必要がある。
【0004】
また例えば、各層のうち、ある層を選択的にエッチングしたい場合には、残りの層のエッチングレートが極めて遅くなるようにエッチング液の組成などを設計する必要がある。
【0005】
このように、プリント配線板の製造において、エッチングレートは、回路設計上非常に重要なパラメータとなっている。近年、電子機器の小型化、高機能化によってプリント配線板の高密度化が進んでおり、この高密度化にともなってファインピッチ回路が要求されるようになってきていることから、特に、その重要性が増大している。
【0006】
従来、エッチングレートの測定方法としては、特許文献1に記載されるように、複数層からなる金属層を構成する各層をそれぞれ基板上に形成した試料、例えば、Ni層のみを基板上に形成した試料、Cu層のみを基板上に形成した試料などを準備し、各々の試料につき、金属層の表面をエッチング液によりエッチングした後、エッチング前後の金属層の重量変化から各金属層のエッチングレートを算出することが一般的に行われてきた。
【0007】
【特許文献1】特開2001−140084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のエッチングレート測定方法は、下記の点で問題があった。すなわち、従来のエッチングレート測定方法は、別々に準備した試料の金属層表面からエッチングを行うので、金属層表面に形成された酸化皮膜の影響や、エッチング液による金属腐食によって生成する不溶成分などの影響を受けやすいといった問題があった。
【0009】
さらに、実際にプリント配線板を製造する場合、複数層からなる金属層をエッチングして配線パターンを形成するため、エッチング液による腐食時には、異種金属同士の接触による局部電池が形成されるが、従来のエッチングレート測定方法では、この局部電池の影響などを何ら加味することができなかった。また、エッチング進行時には、複数層からなる金属層の各層の形状変化に起因して、エッチング液の回り込みなどが生じるが、この影響などについても全く加味することができなかった。
【0010】
つまり、従来のエッチングレート測定方法は、特に、金属層の積層に起因する化学的・物理的な相互作用を全く加味することができないといった問題があった。
【0011】
したがって、従来のエッチングレート測定方法は、必ずしも回路形成時の実態に即しているとは言い難い。また、このような実態にそぐわない測定結果に基づいてエッチング液組成などの製造条件を設定して回路形成を行った場合には、アンダーカットなどの問題が発生するなど、狙い通りの回路形状が得られ難いといった問題があった。
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、従来よりも回路形成時の実態に即したエッチングレートの測定方法を提供することにある。また、他の課題は、このエッチングレートの測定方法を用いたプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係るエッチングレート測定方法は、基板の少なくとも一方面に単層または複数層からなる金属層が形成された試料の端面をエッチングした後、基板の端面からエッチングされた金属層の端面までの距離を測定し、この距離に基づいてエッチングレートを求めることを要旨とする。
【0014】
一方、本発明に係るプリント配線板の製造方法は、上記エッチングレート測定方法により求めたエッチングレートに少なくとも基づいて製造条件を設定して金属層を形成することを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るエッチングレート測定方法によれば、基板の少なくとも一方面に単層または複数層からなる金属層が形成された試料の端面をエッチングするので、金属表面に形成された酸化皮膜の影響や、エッチング液による金属腐食によって生成する不溶成分などの影響を受け難い。また、金属層が複数層からなっている場合であっても、積層状態に起因する化学的・物理的な相互作用を加味したエッチングがなされる。
【0016】
そして、上記エッチング後、従来のように、エッチング前後の金属層の重量変化を測定するのではなく、基板の端面からエッチングされた金属層の端面までの距離を測定し、これに基づき金属層のエッチングレートを算出するので、回路形成時の実態に即したエッチングレートを求めることが可能となる。
【0017】
また、本発明に係るプリント配線板の製造方法によれば、上記エッチングレート測定方法により求めたエッチングレートに少なくとも基づいて製造条件を設定して金属層を形成するので、従来に比較して、狙い通りの回路形状を得やすく、回路形成性に優れるなどの利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本実施形態に係るエッチングレート測定方法、プリント配線板の製造方法について詳細に説明する。なお、以下では、本実施形態に係るエッチングレート測定方法を「本測定方法」と、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法を「本製造方法」ということがある。
【0019】
1.本測定方法
本測定方法は、基板上に金属層が形成された試料の端面をエッチングした後、基板の端面からエッチングされた金属層の端面までの距離を測定し、この距離に基づいてエッチングレートを求める方法である。以下、本測定方法について詳細に説明する。
【0020】
1.1 試料
1.1.1 試料の概略形態
本測定方法において用いる試料は、基板上に金属層が形成された試料である。金属層は、基板の片面に形成されていても良いし、基板の両面に形成されていても良い。また、金属層は、単層からなっていても良いし、複数層からなっていても良い。
【0021】
図1は、本測定方法において用いる試料の一例を示した断面図である。この試料Sは、基板Kの片面に、金属層M、金属層Mの2層が積層されて形成されたものである。以下では、この試料Sを適宜参照して本測定方法を具体的に説明することとする。
【0022】
1.1.2 基板
上記試料おける基板材料は、有機系材料、無機系材料の何れであっても用いることができる。基本的には、本測定方法により求めたエッチングレートを用いて製造するプリント配線板と同種のものを選択すると良い。
【0023】
基板材料として有機系材料を用いる場合、具体的には、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂などを例示することができる。
【0024】
一方、無機系材料を用いる場合、具体的には、例えば、ガラス、アルミナ、ムライトなどのセラミック、金属などを例示することができる。
【0025】
また、基板の厚さなどは、特に限定されるものではない。
【0026】
1.1.3 金属層
上記試料における金属層材料としては、一般に、プリント配線板に適用される金属または合金であれば、何れのものであっても用いることができる。具体的には、例えば、Cu、Ni、Crなどの金属、またはこれらを1種以上含む合金などを例示することができる。
【0027】
上記試料において、金属層が複数層からなる場合には、各層は、2種以上の異なる金属または合金からなっていても良いし、もしくは、同種の金属または合金であるが、組成などの膜質が異なるものからなっていても良い。あるいは、これらの組み合わせであっても良い。膜質の異なる層を「複数層」の概念に含めるのは、同種の金属または合金であっても、組成などの膜質が異なれば、エッチングレートが異なり、本測定方法を好適に適用することができるからである。
【0028】
また、各層は、それぞれ同じ厚さであっても良いし、異なる厚さであっても良い。基本的には、本測定方法により求めたエッチングレートを用いて製造するプリント配線板の金属層の厚さなどを考慮して適宜決定すれば良い。
【0029】
また、上記金属層を基板上に形成する手法としては、具体的には、例えば、無電解めっき法、電解めっき法、スパッタリング法、各金属箔などを接着剤により接着する方法などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用しても良い。
【0030】
なお、基板材料の種類などにもよるが、金属層を基板上に形成するにあたり、基板表面に対して、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射などの各種の処理を施しても良い。さらに、アルカリ金属水酸化物などを用いて活性化処理を施しても良い。
【0031】
1.2 エッチング
本測定方法は、図2に示すように、試料Sの端面Tをエッチングすることをその特徴の一つとしている。
【0032】
本測定方法にいう試料の端面とは、基本的に、基板の端面および金属層の端面を含む面をいう。本測定方法では、試料の端面をエッチングするので、試料の端面に比較して面積の大きな金属層表面をエッチングする場合に比較すると、酸化皮膜や不溶成分の影響を受けにくい。また、積層状態のままで金属層をエッチングすることが可能である。
【0033】
上記試料の端面は、例えば、作製した当初試料の端面を使用しても良いし、当初試料を、その平面部にほぼ垂直に切断し、新たに形成された切断面を端面として使用しても良い。
【0034】
この際、上記試料の端面は、平坦であり、かつ、酸化皮膜などがないことが好ましい。そのため、エッチング処理を施す前に、エメリー紙などによる研磨、ダイヤモンドペーストなどによるバフ研磨など、各種の研磨手段を1または2以上用いて、試料の端面を研磨すると良い。また、酸化皮膜を除去するために酸洗などを行っても良い。
【0035】
また、試料の端面を研磨するにあたっては、エポキシ樹脂などの樹脂を用いて試料を固定するなどしても良い。
【0036】
本測定方法において、試料の端面は、試料の平面部に対して、ほぼ垂直となるように面出しされていると良い。本測定方法では、試料の端面を基準にして、試料の端面と金属層の端面との間の距離を求める(詳しくは後述する)ことから、当該距離の測定誤差が少なくなり、精度の高いエッチングレートを求めることができるからである。
【0037】
また、試料の端面をエッチングするには、基板上に形成された金属層の種類に合わせたエッチング液を試料の端面に接触させれば良い。エッチング液を接触させる手法としては、具体的には、例えば、塗布、浸漬、噴霧などの各種の手法を用いることができる。
【0038】
この場合、試料の端面にエッチング液を接触させる時間、すなわち、エッチング時間は、特に限定されるものではない。もっとも、エッチング時間が過度に短すぎると、エッチングが十分に進行せず、エッチングレートの測定自体が困難になる。また、エッチング時間が過度に長すぎると、測定に時間がかかるなどの問題が懸念される。したがって、エッチング時間は、これらに留意して、一般に、数秒〜数分程度の範囲から選択すると良い。
【0039】
また、用いるエッチング液は、一般に、基板上に形成されている金属層の種類、回路形成法などを考慮して適宜選択すれば良い。具体的には、例えば、塩化第二鉄系、塩化第二銅系、アルカリ系、硫酸−過酸化水素系、有機酸系などのエッチング液を例示することができる。
【0040】
なお、本測定方法では、試料の端面をエッチングした後、このエッチング面の酸化などを防ぐなどの目的で、エッチング面を樹脂などにより被覆しても良い。
【0041】
1.3 距離の測定
本測定方法は、試料の端面をエッチングした後、基板の端面からエッチングされた金属層の端面までの距離を測定することをその特徴の一つとしている。
【0042】
上記距離は、端面をエッチングした試料について、その端面と交わる面、例えば、端面とほぼ垂直な面で切断し、その切断面を観察することなどにより求めることができる。以下、これについて図を用いて、具体的に説明する。
【0043】
図3は、図2に示す試料Sについて、その端面Tをエッチングした後の断面A−Aを示したものである。
【0044】
図3に示すように、端面Tをエッチングした試料Sでは、基板Kはエッチングされないが、金属層M、金属層Mは、試料の平面部に沿ってエッチングされている。
【0045】
そのため、端面Tとほぼ垂直な面で切断した切断面を、光学顕微鏡、電子顕微鏡などを用いて観察すれば、基板Kの端面Tから金属層Mの端面Tまでの距離L、基板Kの端面Tから金属層Mの端面Tまでの距離Lを容易に求めることができる。
【0046】
1.4 エッチングレートの算出
本測定方法において、各金属層のエッチングレートは、上記にて求めた距離に基づいて算出される。
【0047】
すなわち、上記のようにして求めた基板の端面から金属層の端面までの距離を、エッチング時間で割れば、単位時間当たりのエッチング距離、すなわち、金属層のエッチングレートを算出することができる。
【0048】
このようにして算出されるエッチングレートは、例えば、金属層が複数層からなっている場合であっても、積層状態に起因する化学的・物理的な相互作用が加味されて算出されるので、従来よりも回路形成時の実態に即した値となる。
【0049】
2.本製造方法
本製造方法にいうプリント配線板とは、金属層に未だ回路が形成されていないもの、金属層に回路が形成されたものの両方を含んだ概念である。
【0050】
本製造方法で得られるプリント配線板は、基本的には、基板の少なくとも一方面に単層または複数層からなる金属層が形成されている。本製造方法によるプリント配線板としては、具体的には、例えば、ポリイミドフィルム上に無電解Niめっき、スパッタニッケル、電解Cuめっき、スパッタ銅などの金属層が形成されたものなどを例示することができる。
【0051】
なお、その他の基板材料、金属層材料、金属層の形成手法などを用いた場合については、上記試料について説明したものを適宜組み合わせるなどすれば良いため、その詳細な説明は省略する。また、金属層に回路を形成する場合には、サブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いれば良い。
【0052】
ここで、本製造方法において、重要な点は、例えば、上記のような形態のプリント配線板を製造するにあたり、上述したエッチングレート測定方法により求めたエッチングレートに少なくとも基づいて製造条件を設定して金属層を形成し、プリント配線板を製造する点である。
【0053】
上述したエッチングレート測定方法により求めたエッチングレートに少なくとも基づいて製造条件を設定するとは、当該エッチングレートを考慮して、エッチング条件、電解・無電解めっき条件、スパッタ条件などの製造条件を設定することを意味する。
【0054】
エッチングレートに対しては、膜形成条件やエッチング条件における様々な製造条件が関与している。ここで、パターン形状に対しては積層状態におけるエッチングレートの大小関係が係わっている。上述したエッチングレート測定方法においては、試験片(積層状態)の断面に対してエッチング操作を行うだけで、エッチングレートの大小関係が正しく評価できるため、様々な製造条件を設定(調整)して狙いとするエッチングレート比となるようにすれば、結果的に狙いとするパターン形状の得られる製造条件が設定できる。
【0055】
上記エッチング条件としては、具体的には、例えば、エッチング液組成、エッチング時間、エッチング液濃度、エッチング時の温度、エッチング方法などを例示することができる。
【0056】
また、電解・無電解めっき条件としては、具体的には、例えば、めっき液組成、めっき時間、めっき浴種類、めっき時の温度、めっき厚さ、通電する電流密度などを例示することができる。
【0057】
また、スパッタ条件としては、具体的には、例えば、スパッタ時の真空度、用いるターゲット種(金属種、合金種、合金比率など)、用いる希ガスの種類、希ガス導入量、投入電力、電圧、電流などを例示することができる。
【0058】
本製造方法では、回路形成時の実態に即したエッチングレートに基づいて製造条件を設定して金属層を形成するので、得られたプリント配線板は、従来に比較して、狙い通りの回路形状を得やすく、回路形成性に優れている。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0060】
(実施例に係るエッチングレート測定方法)
初めに、20cm×20cm×25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、「カプトン100EN」)を、紫外線表面改質装置(センエンジニアリング(株)製、「低圧水銀ランプEUV200WS」)にセットし、ポリイミドフィルムの表面を紫外線処理した。この際、紫外線処理の条件は、紫外線主波長184.9nm、253.7nm、紫外線照度15mW/cm、出力200W、処理時間30秒とした。
【0061】
次いで、紫外線処理したポリイミドフィルムの表面を50g/リットルの水酸化ナトリウムにて25℃で2分間活性化処理し、触媒(奥野製薬工業(株)製、「OPC−50インデューサー」)を40℃で5分間付与した後、還元剤(奥野製薬工業(株)製、「OPC−150クリスター」)を用いて25℃で5分間還元処理した。
【0062】
次いで、アルカリニッケル液(奥野製薬工業(株)製、「TMP−化学ニッケル」)を用いて40℃で120分間無電解Niめっきを行い、ポリイミドフィルムの表面に厚み5μmの無電解Niめっき層を形成した。
【0063】
次いで、乾燥オーブンを用いて80℃で30分間乾燥させた。
【0064】
次いで、硫酸銅めっき浴を用いて電流密度3A/dmで25分間電気Cuめっきを行い、無電解Niめっき層の表面に厚み10μmの回路形成用の電解Cuめっき層を形成した。なお、上記硫酸銅めっき浴は、硫酸銅70g/リットル、硫酸200g/リットル、塩素イオン50mg/リットル、光沢剤(奥野製薬工業(株)製、「トップルチナSF」)5g/リットルを混合して調製したものである。
【0065】
これにより、ポリイミドフィルム(25μm)上に無電解Niめっき層(5μm)、電解銅めっき層(10μm)が順に積層された金属層を有する回路用基板を作製した。
【0066】
次に、上記回路用基板から10mm×10mmの試料を切り出した。
【0067】
次いで、埋め込み用サンプルカップ内に上記試料をほぼ垂直に保持し、エポキシ主剤(ビューラー(株)製、「エポシン主剤」)、硬化剤(ビューラー(株)製、「エポシン硬化剤」)を100:36の重量比で混合したものを上記カップ内に流し込み、硬化させて樹脂中に試料を埋設した(以下、これを「樹脂埋め試料」という。)。
【0068】
次いで、上記樹脂埋め試料の端面側を、エメリー紙#2000番にて研磨し、さらに、1μmのダイヤモンドペーストにてバフ研磨を行い、図4(a)に示すように、試料Sの端面T(ポリイミドフィルムKの端面T、無電解Niめっき層Mの端面T’および電解Cuめっき層Mの端面T’)が、研磨面F内に含まれる樹脂埋め試料Pを形成した。
【0069】
次いで、図4(b)に示すように、循環ポンプを用いて、樹脂埋め試料Pの研磨面Fに対し、ほぼ垂直にエッチング液(塩化第二鉄を38重量%含む)を40℃で圧力0.05MPaにて噴霧し、30秒間エッチングを行った。
【0070】
次いで、図4(c)に示すように、エッチング面を保護するため、エッチング面を上記と同様の樹脂Pにより被覆した。
【0071】
次いで、図4(d)に示すように、試料Sの平面部に対してほぼ垂直方向に切断した後、切断面Aを、エメリー紙#2000番にて研磨し、1μmのダイヤモンドペーストにてバフ研磨することにより、研磨仕上げを行った。
【0072】
次いで、金属顕微鏡(オリンパス(株)製、「GX51」)にて断面観察を行い、ポリイミドフィルムKの端面Tからエッチングされた無電解Niめっき層Mの端面Tまでの距離、および、ポリイミドフィルムKの端面Tからエッチングされた電解Cuめっき層Mの端面Tまでの距離を測定した。
【0073】
次いで、各金属層M、Mにつき、得られた各距離に基づいてエッチング時間に対するエッチングレートを算出した。
【0074】
(比較例に係るエッチングレート測定方法)
上記実施例1に記載の手順に従い、ポリイミドフィルムの表面に厚み5μmの無電解Niめっき層のみを形成した試料、ポリイミドフィルムの表面に厚み10μmの電解Cuめっき層のみを形成した試料を作製した。次いで、これらそれぞれの試料につき、各めっき層の表面を上記エッチング液により10秒間エッチングし、エッチング前後の各めっき層の重量変化からエッチングレートを算出した。
【0075】
表1に、実施例および比較例に係るエッチングレート測定方法により算出したエッチングレートを示す。また、図5に、実施例に係るエッチングレート測定方法において得られた金属顕微鏡写真を示す。
【0076】
【表1】

【0077】
図5によれば、無電解Niめっき層と電解Cuめっき層とが積層された状態でエッチングされた場合、無電解Niめっき層の方が速くエッチングされることが分かる。
【0078】
ところが、比較例に係るエッチングレート測定方法、すなわち、従来のエッチング前後の重量変化に基づいてエッチングレートを測定する方法により求めた無電解Niめっき層、電解Cuめっき層のエッチングレートは、表1から分かるように、それぞれ11.4[μm/分]、21.9[μm/分]であり、これらエッチングレートの比(=無電解Niめっき層エッチングレート/電解Cuめっき層のエッチングレート)は0.52であった。
【0079】
つまり、比較例に係るエッチングレート測定方法を用いた場合には、電解Cuめっき層の方が速くエッチングされるという結果になっており、回路形成時の実態に即していないことが分かる。
【0080】
これに対し、実施例に係るエッチングレート測定方法、すなわち、試料の端面をエッチングした後、基板の端面からエッチングされた金属層の端面までの距離を測定し、この距離に基づいてエッチングレートを測定する方法により求めた無電解Niめっき層、電解Cuめっき層のエッチングレートは、表1から分かるように、それぞれ34.5[μm/分]、29.1[μm/分]であり、これらエッチングレートの比(=無電解Niめっき層エッチングレート/電解Cuめっき層のエッチングレート)は1.19であった。
【0081】
つまり、実施例に係るエッチングレート測定方法を用いた場合には、無電解Niめっき層の方が速くエッチングされるという結果になっており、回路形成時の実態に即していることが分かる。
【0082】
上記結果となった理由としては、実施例に係るエッチングレート測定方法では、金属層表面に形成された酸化皮膜の影響や、エッチング液による金属腐食によって生成する不溶成分などの影響を受け難く、また、金属層が複数層からなっている場合であっても、積層状態に起因する化学的・物理的な相互作用を加味したエッチングがなされたためであると言える。
【0083】
(プリント配線板の製造)
次に、上記実施例1に記載の手順に準拠して、ポリイミドフィルム(25μm)/無電解Niめっき層(0.5μm)/電解Cuめっき層(5μm)からなる回路用基板を作製した。次いで、上記エッチング液を用いたサブトラクティブ法により、実際に回路を形成してプリント配線板を作製した。
【0084】
次いで、このプリント配線板の一部をミクロトームにより切り出し、切断面を走査型電子顕微鏡により観察した。図6に、実際に回路を形成したプリント配線板の断面写真を示す。
【0085】
図6によれば、無電解Niめっき層の端部(図中、白矢印部分)が、上層の電解Cuめっき層よりも多くエッチングされており、上記実施例に係るエッチングレート測定方法による無電解Niめっき層のエッチングレートの値、電解Cuめっき層エッチングレートの値と同じ傾向を示していることが分かる。
【0086】
したがって、本発明に係るエッチングレート測定方法により求めたエッチングレートを考慮して、エッチング条件、電解・無電解めっき条件などの各種の製造条件を設定し、金属層を形成すれば、アンダーカットなどの問題が発生せず、回路形成性に優れたプリント配線板を製造することが可能であることが分かる。
【0087】
以上、本発明について説明したが、本発明は、上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施形態に係るエッチングレート測定方法において用いる試料の一例を示した断面図である。
【図2】図1に示す試料の端面をエッチングする様子を示した外観斜視図である。
【図3】図2に示す試料について、その端面をエッチングした後の断面A−Aを示した断面図である
【図4】実施例に係るエッチングレート測定方法の手順を示した図である。
【図5】実施例に係るエッチングレート測定方法において得られた、試料の端面にほぼ垂直な面で切断したときの切断面を示す金属顕微鏡写真である。
【図6】実際に回路を形成したプリント配線板の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0089】
S 試料
K 基板
金属層
金属層
T 試料の端面
エッチング後の基板の端面
エッチング後の金属層Mの端面
エッチング後の金属層Mの端面
基板の端面Tと金属層Mの端面との距離
基板の端面Tと金属層Mの端面との距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の少なくとも一方面に単層または複数層からなる金属層が形成された試料の端面をエッチングした後、前記基板の端面からエッチングされた前記金属層の端面までの距離を測定し、この距離に基づいてエッチングレートを求めることを特徴とするエッチングレート測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエッチングレート測定方法により求めたエッチングレートに少なくとも基づいて製造条件を設定して金属層を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−332414(P2006−332414A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155198(P2005−155198)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】