エッチング装置および金型の製造方法
【課題】エッチング量を安定させ、被処理面を再現性よくエッチングできる、エッチング装置を提供する。
【解決手段】エッチング装置は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型用の基材107をエッチングするエッチング装置であって、基材107の被処理面107aとエッチング液122とを接触させる反応槽120と、被処理面107aに向けて投光する投光ファイバ11と、被処理面107aからの反射光を受光する受光ファイバ12f,12gと、受光ファイバ12f,12gが受光する光の強度を検出する検出部20とを備える。
【解決手段】エッチング装置は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型用の基材107をエッチングするエッチング装置であって、基材107の被処理面107aとエッチング液122とを接触させる反応槽120と、被処理面107aに向けて投光する投光ファイバ11と、被処理面107aからの反射光を受光する受光ファイバ12f,12gと、受光ファイバ12f,12gが受光する光の強度を検出する検出部20とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型用の基材をエッチングするエッチング装置、および、金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防眩効果を持たせた製品を製造するためには、製品の表面に微細な凹凸形状を形成することが有効であることが知られている。そのような構成を備える防眩フィルムの一例が特開2006−53371号公報(特許文献1)に記載されている。この文献では、防眩フィルムを得るために、フィルムを成形するための金型の表面に微粒子を衝突させて凹凸形状を予め設けておくこととされている。
【0003】
一方、従来、エッチングに関する種々の技術が提案されている。たとえば、特開平10−36981号公報(特許文献2)には、被エッチング基板に光源より光を照射し、制御手段は、検出手段にて検出した光量又はスペクトルパターンの変化に基づいてエッチングの進行状況をモニターすると共に、エッチングが終了したと判断した時にはエッチング液の吹き付けを停止する、スピンエッチング方法が提案されている。
【0004】
特開2002−151462号公報(特許文献3)には、基板に対し、光源から光ビームを照射し、その正反射光を光検出器で検出し、回路は、光検出器の出力を増幅し、微分し、基準電圧と比較してエッチング終点を検出し、エッチング終点を検出してから設定時間経過後にエッチングを停止させる、ウエットエッチング方法が提案されている。
【0005】
特開2002−99074号公報(特許文献4)には、ドライエッチング装置のチャンバ内にセットされた透明基板の背面に光ファイバを設置し、光源から透明基板を透過して光ファイバに入射する透過光の光量を光量計にて測定し、あらかじめ作成された透明基板の厚さに対する透過率とドライエッチングのエッチング深さとの関係図を用いて、透明基板のエッチング量が所要の深さになった時にドライエッチングを停止する、ドライエッチング方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−53371号公報
【特許文献2】特開平10−36981号公報
【特許文献3】特開2002−151462号公報
【特許文献4】特開2002−99074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形するための金型の表面凹凸形状が不均一になり、凹凸形状のムラが発生すると、金型から転写された製品の表面の凹凸形状にもムラが発生する。特許文献1で提案された金型の表面に微粒子を衝突させて凹凸形状を設ける製法で金型を成形する場合、表面凹凸形状を精密に制御された状態で形成するのが難しい。金型の表面凹凸形状を均一に制御できなければ、表面凹凸形状が転写された製品表面における光の散乱の具合が異なることになる。そのため、一定の防眩効果を奏する製品を製造するのが困難であった。
【0008】
金型表面に微細な凹凸形状を精度よく形成して、高い防眩機能を示す製品の製造に有用な金型を製造するために、金型用の基材の表面に感光性の物質を塗布し、当該表面をフォトリソグラフィ法を使用してパターン状に露光し、エッチング処理を行なうことが考えられる。エッチング処理により基材の表面を加工する深さを制御するために、エッチング処理時間を管理することが考えられる。
【0009】
しかし、エッチング量を一定にするには時間管理だけでは不十分である。エッチング処理時間を一定にしても、エッチング液の濃度および温度などを一定に保つことが困難であるため、エッチング量を安定させることは困難である。その結果、金型表面の凹凸形状を、同等の防眩処理特性が発現するように再現よく加工することができない問題があった。
【0010】
エッチングの終点管理については、特許文献2〜4のような公知文献が存在する。しかし、金型は光を透過しないため、特許文献3のように、透過率測定により被エッチング層の厚み変化を検出することも不可能である。
【0011】
さらに、防眩処理用金型の加工において、エッチングにより形成する凹みの目標深さは常に一定ではなく、目的とする防眩処理特性に応じて調整されるものである。このため、特許文献2,4のようにエッチング処理終了に伴って露出する下地層が存在しない。したがって、ジャストエッチング状態での、反射光量または反射スペクトルの急峻な変化が発生しない。防眩処理用金型のエッチングによる加工では、用いる腐食性液体(エッチング液)による光吸収と、凹凸形成による光散乱の増加との、2つの要素が光反射に影響を与える。表面に付着しているエッチング液量の変動に由来する反射光量の変動は、凹凸形状により生じる反射光量変化よりも大きい。このため、ジャストエッチング状態での反射光量または反射スペクトルの急峻な変化が期待できない防眩処理用金型の加工において、従来公知の技術でエッチング処理の終点を検出することはできなかった。
【0012】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型用の基材の被処理面をエッチングするエッチング装置であって、エッチング量を安定させることができ、被処理面を再現性よくエッチングすることができる、エッチング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るエッチング装置は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型用の基材をエッチングするエッチング装置であって、基材の被処理面とエッチング液とを接触させる反応槽と、被処理面に向けて投光する投光ファイバと、被処理面からの反射光を受光する受光ファイバと、受光ファイバが受光する光の強度を検出する検出部とを備える。
【0014】
好ましくは、エッチング装置は、被処理面からの反射光を受光する複数の受光ファイバを備え、複数の受光ファイバは投光ファイバを取り囲むように配置されている。
【0015】
好ましくは、エッチング装置は、被処理面からの反射光を受光する複数の受光ファイバによる受光ファイバ束を備え、受光ファイバ束は、中心に位置する第1受光ファイバと、第1受光ファイバの周囲を取り囲む複数の第2受光ファイバとを含み、投光ファイバから出射した光が被処理面で正反射したときの光の進路の延長上に第1受光ファイバが位置するように、受光ファイバ束が配置されている。
【0016】
好ましくは、投光ファイバにおいて光を外部へ出射するための開口部の径に比べて、受光ファイバにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっている。
【0017】
好ましくは、被処理面に向けて投光される光は、490nm以上510nm以下のピーク波長を有する。
【0018】
本発明に係る金型の製造方法は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型の製造方法であって、被処理面を有する金型用の基材を準備する工程と、基材の被処理面をエッチングする工程を備える。エッチングする工程は、被処理面に向けて投光ファイバから投光する工程と、被処理面からの反射光を受光ファイバで受光する工程と、受光ファイバが受光する光の強度を検出する工程と、光の強度の変化に基づいて、エッチング処理を終了するか否かを判断する工程と、を含む。
【0019】
好ましくは、投光する工程は、投光ファイバの周りを複数の受光ファイバで取り囲むように配置した光ファイバ束を用いる。投光する工程は、投光ファイバから出射した光が被処理面で正反射したときの光の進路の延長上に複数の受光ファイバのいずれかが位置する第1状態となるように光ファイバ束を配置して投光ファイバからの光の照射を行なう第1工程と、被処理面に対して垂直な第2状態となるように光ファイバ束を配置して投光ファイバからの光の照射を行なう第2工程とを含む。受光する工程は、第1工程を行ないながら受光する第3工程と、第2工程を行ないながら受光する第4工程とを含む。検出する工程は、第3工程で受光した光の強度M1を検出する工程と、第4工程で受光した光の強度m1を検出する工程とを含む。
【0020】
好ましくは、投光する工程は、被処理面に対して垂直でない方向に投光する。受光する工程は、中心に位置する第1受光ファイバの周囲を複数の第2受光ファイバが取り囲むように配置された受光ファイバ束を用いて、投光ファイバから出射した光が被処理面で正反射したときの光の進路の延長上に第1受光ファイバが位置するように受光ファイバ束を配置して被処理面からの反射光を受光する。検出する工程は、第1受光ファイバで受光した光の強度M1を検出する工程と、第2受光ファイバで受光した光の強度m1を検出する工程とを含む。
【0021】
好ましくは、強度M1および強度m1を用いて、m1/(M1+m1)を暫定ヘイズとして求める工程をさらに含む。
【0022】
好ましくは、強度M1および強度m1を用いて、(M1−m1)/(M1+m1)を暫定反射像鮮明度として求める工程をさらに含む。
【0023】
好ましくは、投光ファイバにおいて光を外部へ出射するための開口部の径に比べて、受光ファイバにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっている。
【0024】
好ましくは、被処理面に向けて投光される光は、490nm以上510nm以下のピーク波長を有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のエッチング装置によると、金型用基材の被処理面のエッチング量を安定させることができ、被処理面を再現性よくエッチングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図2】本発明の金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図3】第1エッチング工程においてサイドエッチングが進行する状態を模式的に示す図である。
【図4】第2エッチング工程によって緩やかな表面傾斜を有する第2の表面凹凸形状が形成された状態を模式的に示す図である。
【図5】エッチング工程の詳細を示すフローチャートである。
【図6】エッチング装置の具体的な構成の一例の概念図である。
【図7】投光ファイバ側のコリメートレンズユニットの内部構造の概要を示す模式図である。
【図8】投光ファイバを含む光ファイバ束の端部の拡大図である。
【図9】受光ファイバ側のコリメートレンズユニットの内部構造の概要を示す模式図である。
【図10】受光ファイバ束の端部の拡大図である。
【図11】図6に示すエッチング装置に含まれる検査装置の概念図である。
【図12】反射光が第1受光ファイバに入射する状態に対応する説明図である。
【図13】変形例のエッチング装置に含まれる検査装置の概念図である。
【図14】変形例の検査装置の光ファイバ束の端部の拡大図である。
【図15】第1状態における光の進路を示す図である。
【図16】第2状態における光の進路を示す図である。
【図17】金型用の基材の被処理面を検査する工程の前半部分の一例を示す流れ図である。
【図18】被処理面を検査する工程の前半部分の好ましい一例を示す流れ図である。
【図19】被処理面を検査する工程の前半部分の好ましい他の例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0028】
本発明が対象とする金型は、表面に数μm〜数mm程度の凹凸形状を有し、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型であり、防眩処理用金型と称される。防眩製品の一種として、防眩フィルム(「AG(Anti-Glare)フィルム」ともいう。)を挙げることができる。
【0029】
金型は、通常、フィルムへのUVエンボス法による転写や、成型加工の際に用いられ、加工対象物に防眩処理表面を形成する。防眩処理用金型としては、銅などの基材の表面にエッチングを施した後、硬質クロムメッキで耐擦傷性を持たせた形態のものが用いられる。金型の形状としては、板状やロールトゥロールプロセスで用いられるロール状の金型などがある。
【0030】
図1は、本発明の金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図1には各工程での金型の断面を模式的に示している。本発明の金型の製造方法は、〔1〕第1めっき工程と、〔2〕研磨工程と、〔3〕感光性樹脂膜塗布工程と、〔4〕露光工程と、〔5〕現像工程と、〔6〕第1エッチング工程と、〔7〕感光性樹脂膜剥離工程と、〔8〕第2めっき工程を基本的に含む。以下、図1を参照しながら、本発明の金型の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0031】
〔1〕第1めっき工程
本発明の金型の製造方法ではまず、金型に用いる基材の表面に、銅めっきまたはニッケルめっきを施す。このように、金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施すことにより、後の第2めっき工程におけるクロムめっきの密着性や光沢性を向上させることができる。
【0032】
すなわち、鉄などの表面にクロムめっきを施した場合、またはクロムめっき表面に凹凸を形成してから再度クロムめっきを施した場合には、表面が荒れやすく、細かいクラックが生じて、金型の表面の凹凸形状が制御しにくくなる。これに対して、まず、基材表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施しておくことにより、このような不都合をなくすことができる。これは、銅めっきまたはニッケルめっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いことから、金型用基材の微小な凹凸や鬆などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。
【0033】
これらの銅めっきまたはニッケルめっきの特性によって、後述する第2めっき工程においてクロムめっきを施したとしても、基材に存在していた微小な凹凸や鬆に起因すると思われるクロムめっき表面の荒れが解消され、また、銅めっきまたはニッケルめっきの被覆性の高さから、細かいクラックの発生が低減される。
【0034】
第1めっき工程において用いられる銅またはニッケルとしては、それぞれの純金属であることができるほか、銅を主体とする合金、またはニッケルを主体とする合金であってもよい。したがって、本明細書でいう「銅」は、銅および銅合金を含む意味であり、また「ニッケル」は、ニッケルおよびニッケル合金を含む意味である。銅めっきおよびニッケルめっきは、それぞれ電解めっきで行なっても無電解めっきで行なってもよいが、通常は電解めっきが採用される。
【0035】
銅めっきまたはニッケルめっきを施す際には、めっき層が余り薄いと、下地表面の影響が排除しきれないことから、その厚みは50μm以上であるのが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コストなどに鑑み、一般的にはめっき層厚みの上限は500μm程度までとすることが好ましい。
【0036】
本発明の金型の製造方法において、金型用基材の形成に好適に用いられる金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄などが挙げられる。取扱いの利便性から、軽量なアルミニウムを用いることがより好ましい。ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウムまたは鉄を主体とする合金であってもよい。
【0037】
また、金型用基材の形状は、当該分野において従来採用されている適宜の形状であれば特に制限されず、たとえば、平板状であってもよいし、円柱状または円筒状のロールであってもよい。ロール状の基材を用いて金型を作製すれば、防眩処理を連続的に行なうことができ、防眩フィルムを連続的に製造することができるという利点がある。
【0038】
〔2〕研磨工程
続く研磨工程では、上述した第1めっき工程にて銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する。当該工程を経て、基材表面は、鏡面に近い状態に研磨されることが好ましい。これは、基材となる金属板や金属ロールは、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより基材表面に加工目が残っており、銅めっきまたはニッケルめっきが施された状態でも、それらの加工目が残ることがあるし、また、めっきした状態で、表面が完全に平滑になるとは限らないためである。すなわち、このような深い加工目などが残った表面に後述する工程を施したとしても、各工程を施した後に形成される凹凸よりも加工目などの凹凸の方が深いことがあり、加工目などの影響が残る可能性があり、そのような金型を用いて防眩処理を施したり、防眩フィルムを製造した場合には、光学特性に予期できない影響を及ぼすことがある。
【0039】
図1(a)には、平板状の金型用の基材107が、第1めっき工程において銅めっきまたはニッケルめっきをその表面に施され(第1めっき工程で形成した銅めっきまたはニッケルめっきの層については図示せず)、さらに研磨工程によって鏡面研磨された表面108を有するようにされた状態を、模式的に示している。
【0040】
銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する方法については特に制限されるものではなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法などが例示される。研磨後の表面粗度は、JIS B 0601の規定に準拠した中心線平均粗さRaが0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。研磨後の中心線平均粗さRaが0.1μmより大きいと、最終的な金型表面の凹凸形状に研磨後の表面粗度の影響が残る可能性があるので好ましくない。また、中心線平均粗さRaの下限については特に制限されず、加工時間や加工コストの観点から、おのずと限界があるので、特に指定する必要性はない。
【0041】
〔3〕感光性樹脂膜塗布工程
続く感光性樹脂膜塗布工程では、上述した研磨工程によって鏡面研磨を施した基材107の研磨された表面108に、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液として塗布し、加熱・乾燥することにより、感光性樹脂膜を形成する。図1(b)には、基材107の表面108に感光性樹脂膜109が形成された状態を模式的に示している。
【0042】
感光性樹脂としては従来公知の感光性樹脂を用いることができる。感光部分が硬化する性質をもったネガ型の感光性樹脂としては、たとえば、分子中にアクリル基またはメタアクリル基を有するアクリル酸エステルの単量体やプレポリマー、ビスアジドとジエンゴムとの混合物、ポリビニルシンナマート系化合物等を用いることができる。また、現像により感光部分が溶出し、未感光部分だけが残る性質をもったポジ型の感光性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂系やノボラック樹脂系等を用いることができる。また、感光性樹脂には、必要に応じて、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0043】
これらの感光性樹脂を金型用の基材107の研磨された表面108に塗布する際には、良好な塗膜を形成するために、適当な溶媒に希釈して塗布することが好ましい。溶媒としては、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒等を使用することができる。
【0044】
感光性樹脂溶液を塗布する方法としては、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、およびカーテン塗布等の公知の方法を用いることができる。塗布膜の厚さは乾燥後で1〜6μmの範囲とすることが好ましい。
【0045】
〔4〕露光工程
続く露光工程では、所定のパターンを上述した感光性樹脂膜塗布工程で形成された感光性樹脂膜109上に露光する。露光工程に用いる光源は、塗布された感光性樹脂の感光波長や感度等に合わせて適宜選択すればよく、例えば、高圧水銀灯のg線(波長:436nm)、高圧水銀灯のh線(波長:405nm)、高圧水銀灯のi線(波長:365nm)、半導体レーザ(波長:830nm、532nm、488nm、405nm等)、YAGレーザ(波長:1064nm)、KrFエキシマーレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマーレーザ(波長:193nm)、F2エキシマーレーザ(波長:157nm)、または半導体レーザ等を用いることができる。
【0046】
本発明の金型の製造方法において表面凹凸形状を精度良く形成するためには、露光工程において、所定のパターンを感光性樹脂膜上に精密に制御された状態で露光することが好ましい。本発明の金型の製造方法においては、所定のパターンを感光性樹脂膜上に精度良く露光するために、コンピュータ上で作成したパターンである画像データまたは離散化された情報の二次元配列に基づいて、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザ光によって、感光性樹脂膜上にパターンを描画することが好ましい。このようなレーザ描画を行うに際しては印刷版作成用のレーザ描画装置を使用することができる。このようなレーザ描画装置としては、例えばLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)等が挙げられる。
【0047】
図1(c)には、感光性樹脂膜109にパターンが露光された状態を模式的に示している。感光性樹脂膜をネガ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域111は露光によって樹脂の架橋反応が進行し、後述する現像液に対する溶解性が低下する。よって、現像工程において露光されていない領域110が現像液によって溶解され、露光された領域111のみ基材表面上に残りマスクとなる。一方、感光性樹脂膜をポジ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域111は露光によって樹脂の結合が切断され、後述する現像液に対する溶解性が増加する。よって、現像工程において露光された領域111が現像液によって溶解され、露光されていない領域110のみ基材表面上に残りマスクとなる。
【0048】
露光によって描画されるパターンの形状については特に制限されず、円形、四角形、六角形等のパターンを配列させたものを描画してもよいし、連続的なパターンを描画してもよいし、これらを組み合わせたものを描画してもよい。また、異なる大きさの円形、四角形、六角形等のパターンを配列したものを描画してもよい。また、描画するパターンは規則的に配置されていても構わないし、不規則に配置されていても構わないが、不規則に配置されているほうが好ましい。
【0049】
〔5〕現像工程
続く現像工程においては、感光性樹脂膜109にネガ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光されていない領域110は現像液によって溶解され、露光された領域111のみ金型用基材上に残存し、続く第1エッチング工程においてマスクとして作用する。一方、感光性樹脂膜109にポジ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光された領域111のみ現像液によって溶解され、露光されていない領域110が金型用基材上に残存して、続く第1エッチング工程におけるマスクとして作用する。
【0050】
現像工程に用いる現像液については従来公知のものを使用することができる。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液、および、キシレン、トルエン等の有機溶剤等を挙げることができる。
【0051】
現像工程における現像方法については特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
【0052】
図1(d)には、感光性樹脂膜109にネガ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行った状態を模式的に示している。図1(c)において露光されていない領域110が現像液によって溶解され、露光された領域111のみ基材表面上に残り、マスク112となる。図1(e)には、感光性樹脂膜109にポジ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行った状態を模式的に示している。図1(c)において露光された領域111が現像液によって溶解され、露光されていない領域110のみ基材表面上に残り、マスク112となる。
【0053】
〔6〕第1エッチング工程
続く第1エッチング工程では、上述した現像工程後に金型用基材表面上に残存した感光性樹脂膜をマスクとして用いて、主にマスクの無い箇所の金型用基材をエッチングし、研磨されためっき面に凹凸を形成する。図2は、本発明の金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図2(a)には第1エッチング工程によって、主にマスクの無い箇所113の金型用の基材107がエッチングされる状態を模式的に示している。
【0054】
マスク112の下部の基材107は金型用基材表面からはエッチングされないが、エッチングの進行とともにマスクの無い箇所113からのエッチングが進行する。よって、マスク112とマスクの無い箇所113との境界付近では、マスク112の下部の基材107もエッチングされる。このようなマスク112とマスクの無い箇所113との境界付近において、マスク112の下部の基材107もエッチングされることを、以下ではサイドエッチングと呼ぶ。図3にはサイドエッチングの進行を模式的に示した。図3の点線114は、エッチングの進行とともに変化する金型用の基材107の表面を段階に示している。
【0055】
第1エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2)等を用いて、金属表面を腐食させることによって行われるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した際の金型用基材に形成される凹形状は、下地金属の種類、感光性樹脂膜の種類およびエッチング手法等によって異なるため、一概にはいえないが、エッチング量が10μm以下である場合には、エッチング液に触れている金属表面から略等方的にエッチングされる。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られる基材の厚みである。
【0056】
第1エッチング工程におけるエッチング量は好ましくは1〜50μmである。エッチング量が1μm未満である場合には、金属表面に凹凸形状がほとんど形成されずに、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。また、エッチング量が50μmを超える場合には、金属表面に形成される凹凸形状の高低差が大きくなり、得られた金型を使用して作製した防眩フィルムを適用した画像表示装置において白ちゃけが生じる虞があるため好ましくない。第1エッチング工程におけるエッチング処理は1回のエッチング処理によって行ってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行ってもよい。ここでエッチング処理を2回以上に分けて行う場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が1〜50μmであることが好ましい。
【0057】
〔7〕感光性樹脂膜剥離工程
続く感光性樹脂膜剥離工程では、第1エッチング工程でマスクとして使用した残存する感光性樹脂膜を完全に溶解し除去する。感光性樹脂膜剥離工程では剥離液を用いて感光性樹脂膜を溶解する。剥離液としては、上述した現像液と同様のものを用いることができて、pH、温度、濃度、および浸漬時間等を変化させることによって、ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合には露光部の、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合には非露光部の感光性樹脂膜を完全に溶解して除去する。感光性樹脂膜剥離工程における剥離方法についても特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
【0058】
図2(b)は、感光性樹脂膜剥離工程によって、第1エッチング工程でマスク112として使用した感光性樹脂膜を完全に溶解し除去した状態を模式的に示している。感光性樹脂膜からなるマスク112を利用したエッチングによって、第1の表面凹凸形状115が金型用基材表面に形成される。
【0059】
〔8〕第2めっき工程
続いて、形成された凹凸面(第1の表面凹凸形状115)にクロムめっきを施すことによって、表面の凹凸形状を鈍らせる。図2(c)には、上述したように第1エッチング工程のエッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状115にクロムめっき層116を形成することにより、第1の表面凹凸形状115よりも凹凸が鈍った表面(クロムめっきの表面117)が形成されている状態が示されている。
【0060】
本発明では、平板やロールなどの表面に、光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与え得るクロムめっきを採用する。クロムめっきの種類は特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行われ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO3)と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間とを調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。
【0061】
金型のめっき前の下地とクロムめっきの種類によっては、めっき後に表面が荒れたり、クロムめっきによる微小なクラックが多数発生したりすることが多く、その結果、当該金型を用いて作製される、表面に凹凸形状の形成された透明基材(防眩フィルムを含む)の光学特性が好ましくない方向へと進む。めっき表面が荒れた状態の金型は、透明基材の防眩処理および防眩フィルムの製造に適していない。何故ならば、一般的にざらつきを消すためにクロムめっき後にめっき表面を研磨することが行われているが、後述するように、本発明ではめっき後の表面の研磨が好ましくないからである。本発明では、下地金属に銅めっきまたはニッケルめっきを施すことにより、クロムめっきで生じ易いこのような不都合を解消している。
【0062】
なお、第2めっき工程において、クロムめっき以外のめっきを施すことは好ましくない。何故なら、クロム以外のめっきでは、硬度や耐摩耗性が低くなるため、金型としての耐久性が低下し、使用中に凹凸が磨り減ったり、金型が損傷したりする。そのような金型を用いた防眩処理および金型から得られた防眩フィルムでは、十分な防眩機能が得られにくい可能性が高く、また、透明樹脂フィルムなどの透明基材上に欠陥が発生する可能性も高くなる。
【0063】
また、めっき後の表面を研磨することも、やはり本発明では好ましくない。すなわち、第2めっき工程後に表面を研磨する工程を設けることなく、クロムめっきが施された凹凸面を、そのまま透明基材上に転写される金型の凹凸面として用いることが好ましい。研磨することにより、最表面に平坦な部分が生じるため、光学特性の悪化を招く可能性があること、また、形状の制御因子が増えるため、再現性のよい形状制御が困難になることなどの理由による。
【0064】
このように本発明の金型の製造方法では、微細表面凹凸形状が形成された表面にクロムめっきを施すことにより、凹凸形状が鈍らせられるとともに、その表面硬度が高められた金型が得られる。この際の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、第1エッチング工程より得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚みなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御するうえで最も大きな因子は、やはりめっき厚みである。クロムめっきの厚みが薄いと、クロムめっき加工前に得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルム等の透明基材に転写して得られる防眩処理が施された透明基材(防眩フィルムなど)の光学特性があまり良くならない。一方で、めっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなるうえに、ノジュールと呼ばれる突起状のめっき欠陥が発生してしまうため好ましくない。そこで、クロムめっきの厚みは1〜10μmの範囲内であるのが好ましく、3〜6μmの範囲内であるのがより好ましい。
【0065】
当該第2めっき工程で形成されるクロムめっき層は、ビッカース硬度が800以上となるように形成されていることが好ましく、1000以上となるように形成されていることがより好ましい。クロムめっき層のビッカース硬度が800未満である場合には、金型使用時の耐久性が低下するうえに、クロムめっきで硬度が低下することはめっき処理時にめっき浴組成、電解条件などに異常が発生している可能性が高く、欠陥の発生状況についても好ましくない影響を与える可能性が高いためである。
【0066】
また、本発明の金型の製造方法においては、上述した〔7〕感光性樹脂膜剥離工程と〔8〕第2めっき工程との間に、第1エッチング工程によって形成された凹凸面をエッチング処理によって鈍らせる第2エッチング工程を含むことが好ましい。
【0067】
第2エッチング工程では、感光性樹脂膜をマスクとして用いた第1エッチング工程によって形成された第1の表面凹凸形状115を、エッチング処理によって鈍らせる。この第2エッチング処理によって、第1エッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状115における表面傾斜が急峻な部分がなくなり、得られた金型を用いて製造された防眩フィルム等の防眩処理が施された透明基材の光学特性が好ましい方向へと変化する。図4には、第2エッチング処理によって、基材107の第1の表面凹凸形状115が鈍化し、表面傾斜が急峻な部分が鈍らされ、緩やかな表面傾斜を有する第2の表面凹凸形状118が形成された状態が示されている。
【0068】
第2エッチング工程のエッチング処理も、第1エッチング工程と同様に、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2)などを用い、表面を腐食させることによって行なわれるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した後の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、エッチング手法、および第1エッチング工程により得られた凹凸のサイズと深さなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御する上で最も大きな因子は、エッチング量である。ここでいうエッチング量も、第1エッチング工程と同様に、エッチングにより削られる基材の厚みである。
【0069】
エッチング量が小さいと、第1エッチング工程により得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルム等の透明基材上に転写して得られる防眩処理が施された透明基材(防眩フィルムなど)の光学特性があまり良くならない。一方で、エッチング量が大きすぎると、凹凸形状がほとんどなくなってしまい、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。そこで、エッチング量は1〜50μmの範囲内であることが好ましく、4〜20μmの範囲内であることがより好ましい。
【0070】
第2エッチング工程におけるエッチング処理についても、第1エッチング工程と同様に、1回のエッチング処理によって行なってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行なってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行う場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が1〜50μmであることが好ましい。
【0071】
以下、本発明のエッチング装置および上述した金型の製造方法の一工程であるエッチング工程の、好適な実施形態について詳細に説明する。
【0072】
エッチングは化学薬品等の腐蝕作用等により被処理面を加工する手法であり、広く金属・半導体等の加工に用いられている。方式には大きく腐食性のガスや反応性イオンを用いるドライエッチング、腐食性の液体を用いるウェットエッチング、金属の場合には、電解液に被処理面を接触させ、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングなどがある。いずれの方式でも、本発明に用いることが可能であるが、取扱が容易である点から、ウェットエッチング、もしくは逆電解エッチングを好ましく用いることが出来る。
【0073】
このようなエッチングを実施する装置は、腐蝕ガス・もしくは腐蝕液を被処理面に接触させる反応槽を有し、これ以外には腐食性物質の温度を管理する温度調整装置、腐食性物質を被処理面に接触させる時間長さを制御する手段、被処理面から腐食性物質を除去する手段の全て、もしくは一部を有するものが一般的である。
【0074】
反応槽の内部で被処理面に腐食性液を接触させる手段としては、腐食性液体に被処理対象を浸漬する方法。腐食性液体を被処理対象に吹き付ける方法等があり、いずれの方法も用いることが出来る。腐食性物質が被処理面を侵す深さは、多くの場合、腐食性物質を被処理面に接触させる時間の長さによって制御される。この時、腐食性物質が被処理面を侵す速度は一定である必要がある。
【0075】
腐食性物質が被処理面を侵す速度は、一般的に腐食性物質濃度、および温度、および被処理面の温度に依存する。このため、腐食性物質の温度を制御する手段を有することが一般的である。より精密に制御された装置では、被処理面の温度を制御することが出来る場合もある。しかし、実際には腐食性物質温度・濃度、被処理対象温度を一定にし、腐食性物質が被処理面を侵す速度を一定に保つことは極めて困難である。
【0076】
腐食性物質を接触させる時間長さを制御する手段は、一般にはプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に代表される制御装置に、指定時間経過後に指定された動作を実行するように指示することによって実現される。接触を終了させる方法としては、ウェットエッチングで腐食性液体の内部に被処理体を浸漬していた場合には、腐食性液体で満たされた腐蝕槽を引き下げる、もしくは被処理体を引き上げることにより実現される。腐食性液体を被処理対象に吹き付ける方法をとっていた場合には、吹き付ける動作を終了すればよい。
【0077】
エッチングにより加工する深さをより精密に制御するためには、腐蝕性液体を被処理対象に接触させることを止めると同時に、腐食性物質を除去することが好ましい。一般的には、水を用いて腐食性物質を洗い流す方法が取られる。
【0078】
図5は、エッチング工程の詳細を示すフローチャートである。上述した金型の製造方法における第1エッチング工程および/または第2エッチング工程では、図5に示す各工程に従って、金型用の基材107のエッチング処理が行なわれる。
【0079】
まず工程S1において、金型用の基材107を準備する。第1エッチング工程の場合、図1(d)または図1(e)に示す、被処理面上にマスク112が形成された状態の基材107が準備される。第2エッチング工程の場合、図4(a)に示す、第1エッチング工程によって表面凹凸形状115が形成され、マスク112が除去された状態の基材107が準備される。準備された金型用の基材107は、基材の被処理面とエッチング液とを接触させる反応槽内に設置される。
【0080】
続いて工程S2において、基材107の被処理面に向けてエッチング液の供給を開始し、被処理面のエッチング処理を開始する。続いて工程S3において、被処理面のエッチング処理を行ないながら(すなわちエッチング液を供給しながら)、被処理面の表面状態を検査する。続いて工程S4において、工程S3の検査結果に基づいて、被処理面の表面状態が所定の状態に到達したか否かを判断する。
【0081】
工程S4の判断の結果、被処理面の表面状態が所定の状態に到達しておらず、エッチング処理を終了しないと判断されれば、エッチング処理が続行され、再度工程S3に戻る。工程S4の判断の結果、被処理面の表面状態が所定の状態に到達しており、エッチング処理を終了すると判断されれば、続いて工程S5において、エッチング液の供給が停止され、その後工程S6において、水などの洗浄液により被処理面からエッチング液を洗い流す。このようにして、エッチング処理が終了する。
【0082】
図5に示す被処理面を検査する工程(工程S3)と、被処理面の表面状態を判断する工程(工程S4)とについて、さらに詳細に説明する。図6は、エッチング装置の具体的な構成の一例の概念図である。図6に示すように、エッチング装置は、反応槽120を備える。反応槽120は、その内部に、エッチング液122を供給するシャワーノズル121を有する。金型用の基材107は、反応槽120の内部に設置される。シャワーノズル121は、基材107の設置位置に対して、上方に配置される。これにより、シャワーノズル121から噴出されたエッチング液122が重力の作用を受けて下方へ移動して、反応槽120の内部で基材107の被処理面107aにエッチング液122が接触するような構成とされている。
【0083】
エッチング装置はまた、金型用の基材107の被処理面107aを検査するための、検査装置を備える。この検査装置は、基材107の被処理面107a(検査装置に着目して説明される場合、被検査面107aとも称される)に向けて投光するための投光ファイバ11と、被処理面107aからの反射光を受光するための複数の受光ファイバ12f,12gと、受光ファイバ12f,12gが受光する光の強度を検出する検出部20とを備える。受光ファイバ12f,12gにより伝えられる反射光の強度を検査装置が検出し、この反射光の強度に基づいて、金型用の基材107の被処理面107aの表面形状を分析することが可能とされている。
【0084】
投光ファイバ11は、後述する発光器により発せられた光を導き、1点から被検査面107aに向けて光を照射する役割を果たす光ファイバである。投光ファイバ11は、シングルモードまたはマルチモードの光ファイバの単線であってもよく、複数の光ファイバが束となった形態のものも考えられる。
【0085】
受光ファイバ12f,12gは、被検査面107aから反射された光を、腐食性物質が充満した反応槽120内部から後述するフォトダイオードに導く役割を果たす光ファイバである。受光ファイバ12f,12gは、シングルモードまたはマルチモードの光ファイバの単線であってもよく、複数の光ファイバが束となった形態のものも考えられる。
【0086】
投光ファイバ11または受光ファイバ12f,12gを複数の光ファイバの束によって構成する場合、束の断面形状は、円形であっても楕円形であってもよく、四角形、多角形、環状、線状などであってもよい。光ファイバの位置決めを容易にするために、光ファイバの束の全体としての断面形状は、回転対称性を有する形状が好ましく、特に円形が好ましい。検査対象物である金型用の基材107が円筒形状の場合のように、被検査面107aが何らかの曲率を有する曲面である場合には、その曲面の曲率に応じて、得られる反射光が円形に近くなるように、楕円形に束ねられた光ファイバの束を用いることが好ましい。金型用基材107が円筒形状である場合、その円筒形状の直径方向を長軸とし、円筒形状の中心軸方向を短軸とする楕円形の領域に光を照射すれば、得られる反射光は円形に近くなる。
【0087】
用いる光ファイバの直径に特に制約は無いが、鮮明度と良好な相関が期待される好ましい光ファイバの範囲として、直径0.125mm以上4mm以下、より好ましい範囲として、直径0.125mm以上2mm以下の光ファイバが挙げられる。また、投光ファイバと受光ファイバとが、受光ファイバの直径以下の間隔で、測定の妨げとなる水準のクロストークが生じない程度に近接して、配置されていることが好ましい。さらに、投光ファイバを中心に配置し、受光ファイバを周辺に配置する構成では、投光ファイバの直径よりも小さい受光ファイバを好ましく用いることができる。特に好ましくは、受光ファイバの直径は、投光ファイバの直径の約1/2である。
【0088】
検査装置は、反応槽120の内部に、コリメートレンズユニット10,10iを備える。図6ではコリメートレンズユニット10が斜め上を向き、コリメートレンズユニット10iが斜め下を向いているが、この向きに限らず、いずれの向きであってもよい。コリメートレンズユニット10には、投光ファイバ11が接続されている。コリメートレンズユニット10iには、受光ファイバ12f,12gが接続されている。
【0089】
図7は、投光ファイバ11側のコリメートレンズユニット10の内部構造の概要を示す模式図である。図7に示すように、コリメートレンズユニット10は、容器状の筐体15を有する。投光ファイバ11を含む複数の光ファイバにより構成される光ファイバ束13は、筐体15に連結されている。筐体15の内部に光ファイバ束13の端部が配置されており、この端部に対して焦点が合う位置にコリメートレンズ14が配置されている。コリメートレンズ14は筐体15によって保持されている。
【0090】
図8は、投光ファイバ11を含む光ファイバ束13の端部の拡大図である。光ファイバ束13は、複数の光ファイバを備え、光を出射する投光ファイバ11は光ファイバ束13の中心に配置されている。投光ファイバ11の周囲を取り囲むように環状に配置された光ファイバ18は、被検査面107aに投光するために使用されない。図6においてコリメートレンズユニット10に接続された光ファイバの一部が下方に延在してその先にX印が付されているのは、これらの光ファイバが不使用であることを意味する。コリメートレンズユニット10に保持された複数の光ファイバのうち、光ファイバ束13の中心に配置された投光ファイバ11のみが、被検査面107aに投光するために使用されている。光ファイバ束13は、投光ファイバ11以外の光ファイバも含む。
【0091】
図9は、受光ファイバ12f,12g側のコリメートレンズユニット10iの内部構造の概要を示す模式図である。図9に示すように、コリメートレンズユニット10は、容器状の筐体15を有する。被検査面107aからの反射光を受光するための複数の光ファイバにより構成される受光ファイバ束17は、筐体15に連結されている。筐体15の内部に受光ファイバ束17の端部が配置されており、この端部に対して焦点が合う位置にコリメートレンズ14が配置されている。コリメートレンズ14は筐体15によって保持されている。
【0092】
図10は、受光ファイバ束17の端部の拡大図である。受光ファイバ束17は、複数の光ファイバを備える。図10に示す例では、1本の第1受光ファイバ12fが受光ファイバ束17の中央に位置しており、6本の第2受光ファイバ12gが第1受光ファイバ12fの周囲を取り囲むように配置されている。第2受光ファイバ12gの本数は6本に限らず、他の本数であってもよい。
【0093】
図6に戻って、検査装置は、光を発生する光源(発光器)と、発光器からの光を集光して投光ファイバ11に入射する非球面コンデンサレンズ31を備える。投光ファイバ11は、その一端がコリメートレンズユニット10に接続され、他端は非球面コンデンサレンズ31に接続されている。投光ファイバ11の先端には、コリメートレンズユニット10が設置されている。光源(発光器)の一例であるLED30から発せられた光は、非球面コンデンサレンズ31を介して、投光ファイバ11に入射する。
【0094】
光源としては、ハロゲンランプ、タングステンランプ、水銀灯に代表される電球、発光ダイオード(LED)、レーザ素子など、各種光源を用いることができる。光源としては、特に、ノイズ除去のために必要に応じて変調をかけることが容易であるLED、半導体レーザ素子、半導体励起レーザ素子といった固体光源を用いることが好ましい。
【0095】
また、光源の波長は、エッチング液122などの反応槽120内に充満する腐食性物質、および、レジストの光吸収が弱い波長を選ぶことが好ましい。銅をエッチングする際の腐蝕性物質として広く用いられる塩化第二銅(CuCl2)液は、500nm近辺以外の光を強く吸収する。このことから、波長490nm以上510nm以下の範囲に発光ピークを有するような光源を用い、被処理面107aに向けて投光される光が490nm以上510nm以下の範囲にピーク波長を有するようにすることが、エッチング液122による光吸収の影響を少なくする観点から特に好ましい。このような光源は、該当波長帯域に発光ピークを有するLEDを選定して実現してもよく、白色光源にフィルタを組み合わせることによって実現してもよい。
【0096】
電球やLEDなどを光源として用いた場合には、投光ファイバ11から出射した光は広がりながら進行する。しかし、本発明においては、投光ファイバ11から出射された光は被検査面107aに到達するまでにほぼ平行な光とする必要がある。このため、投光ファイバ11から出射した光が広がりながら進行する光である場合には、適宜レンズを組み合わせて光を平行光に近い形に整えればよい。このような操作は、一般的に、凸レンズ(たとえば図7に示すコリメートレンズ14)または凹面鏡により実現することができる。
【0097】
また、光ファイバから出射した光をほぼ平行な光とすることができるレンズが、ファイバセンサメーカから市販されている。このようなレンズとしては、たとえば、株式会社キーエンス製の型式F−3HAなどがある。このレンズと専用の光ファイバ(株式会社キーエンス製FU−35FZなど)とを組み合わせることによりレンズからおよそ20mm〜40mm前後の範囲において、ほぼ平行な光を実現することができる。
【0098】
コリメートレンズユニットF−3HAは、開口直径約4.3mmの凸レンズから構成されており、レンズ先端から0〜20mmの距離において、スポット径がほぼ4mmの概略平行光になるように設計されている。
【0099】
FU−35FZは、直径約1.1mmの円形領域の中心に直径約0.05mmの多数の光ファイバを直径0.5mmの円形に束ねた光ファイバ束を配置し、この周囲を直径0.265mmの光ファイバ8本が取り囲む配置をとる。すなわち、周辺の光ファイバの直径が、中心に配置された光ファイバ束の直径よりも小さく、中心に配置された光ファイバ束の約1/2の直径を有する。また、以上の情報から計算される中心の光ファイバ束と周辺の光ファイバとの間隙は、0.035mm以下である。
【0100】
検査装置は、受光ファイバ12f,12gにより受光された被処理面107aからの反射光を検出するための、フォトダイオード32f,32gを備える。コリメートレンズユニット10から出射し、被検査面107aで反射した光は、コリメートレンズユニット10iに入射する。コリメートレンズユニット10iの先に接続されている受光ファイバ束17のうち、第1受光ファイバ12fは、フォトダイオード32fに光を伝達する。第2受光ファイバ12gは、フォトダイオード32gに光を伝達する。
【0101】
受光ファイバ12f,12gが受光する光の強度を検出する検出部20は、LEDドライバ33とA/Dコンバータ34とを備える。LEDドライバ33はLED30に指示を送るものであり、A/Dコンバータ34はフォトダイオード32f,32gで検出された光量を信号化処理するものとなっている。図6では、LED30およびフォトダイオード32f,32gは検出部20の外にあるものとして示しているが、LED30およびフォトダイオード32f,32gのうち一部または全部は、検出部20の一部として設けられていてもよい。
【0102】
図11は、図6に示すエッチング装置に含まれる検査装置101の概念図である。図11に示す検査装置101は検出部20を備え、検出部20は、ファイバセンサアンプユニット21とマイクロコントローラ22とを含む。投光ファイバ11と、複数本の受光ファイバである受光ファイバ12f,12gとは、いずれもファイバセンサアンプユニット21に接続されている。ファイバセンサアンプユニット21は、マイクロコントローラ22に接続されている。
【0103】
コリメートレンズユニット10,10iは、投光ファイバ11から出射した光71が被検査面107aで正反射したときの光の進路の延長上に第1受光ファイバ12fが位置するように、配置されている。投光ファイバ11から出射した光71が被検査面107aで正反射した成分である反射光72は、受光ファイバ束17のうちの第1受光ファイバ12fに入射する。投光ファイバ11から出射した光71が被検査面107aで乱反射した成分である散乱光73の一部は、受光ファイバ束17のうちの第2受光ファイバ12gに入射する。光71、反射光72および散乱光73は、実際には一定の断面積を有する光束として進行しているが、図11では光束の中心線を矢印で表示している。
【0104】
図12は、反射光72が第1受光ファイバ12fに入射する状態に対応する説明図である。図12に示すように、投光ファイバ11から出射した光71が被検査面107aで正反射した反射光72は、コリメートレンズ14によって第1受光ファイバ12fの端面に集められ、第1受光ファイバ12fに入射している。第1受光ファイバ12fは、投光ファイバ11の光が照射される面が鏡面であり、照射面からほぼ平行光として光が反射されるときに、レンズによってほぼ平行光が集光される位置に端部が位置するように、設置される。一方、投光ファイバ11から出射した光71が被検査面107aで乱反射した散乱光73は、コリメートレンズ14によって第1受光ファイバ12fの端面以外にも到達する。このため、散乱光73が増加すると、第1受光ファイバ12fの周辺に位置する第2受光ファイバ12gに入射する光量が増加する。
【0105】
これにより、この検査装置101を使用することにより、投光ファイバ11から出射した光71のうち被検査面107aで正反射した成分を、第1受光ファイバ12fで受光することで、光71のうち被検査面107aで正反射した成分の強度を把握することができる。また、投光ファイバ11から出射した光71のうち被検査面107aで乱反射した成分を、第2受光ファイバ12gで受光することで、光71のうち被検査面107aで乱反射した成分の強度を把握することができる。そのため、本実施の形態の検査装置101では、基材107の被検査面107aの表面で正反射する成分の強度と、乱反射する成分の強度とを、1回の測定でそれぞれ別個に検出することができる。
【0106】
図13は、変形例のエッチング装置に含まれる検査装置102の概念図である。図13に示す検査装置102は、基材107の被検査面107aからの反射光を受光するための複数の受光ファイバ12を備える。複数の受光ファイバ12は投光ファイバ11を取り囲むように配置されている。
【0107】
投光ファイバ11と複数の受光ファイバ12とを合わせた光ファイバ束13は、投光ファイバ11から出射した光が被検査面107aで正反射したときの光の進路の延長上に複数の受光ファイバ12のいずれかが位置する第1状態と、被検査面107aに対して垂直な第2状態と、の少なくとも2通りをとりうるように構成されている。検査装置102では、単一のコリメートレンズユニット10によって、金型用の基材107の被検査面107aへの光の照射と、被検査面107aで反射した反射光の受光とを兼ねている。
【0108】
図14は、変形例の検査装置102の光ファイバ束13の端部の拡大図である。光ファイバ束13は、複数の光ファイバを備える。図14に示す光ファイバ束13では、1本の投光ファイバ11が光ファイバ束13の中央に位置しており、6本の受光ファイバ12が投光ファイバ11の周囲を取り囲むように配置されている。受光ファイバ12の本数は6本に限らず、他の本数であってもよい。たとえば、株式会社キーエンス製FU−35FZでは8本である。
【0109】
図13では、光ファイバ束13が被検査面107aに対して垂直となっていることから明らかなように、第2状態を示している。検査装置102は、光ファイバ束13の第1状態と第2状態とを切り替えるための、切替部16を備えている。切替部16は公知技術によって光ファイバ束13の向きを切り替えることができる。切替部16は、図13に示したようにコリメートレンズユニット10の向きを操作することによって光ファイバ束13の状態を切り替えるものであってもよく、光ファイバ束13に直接操作を加えるように接続されていてもよい。
【0110】
図15は、第1状態における光の進路を示す図である。図15に示すように、第1状態においては、光ファイバ束13は被検査面107aに対して垂直からわずかに傾いた姿勢となっている。そのため、投光ファイバ11から出射した光71のうち被検査面107aで正反射した成分は、反射光72となって複数の受光ファイバ12のいずれかに入射している。被検査面107aで正反射した反射光72は、コリメートレンズ14によって受光ファイバ12の端面に集められ、受光ファイバ12に入射している。
【0111】
図16は、第2状態における光の進路を示す図である。図16に示すように、第2状態においては、光ファイバ束13は被検査面107aに対して垂直となっているので、投光ファイバ11から出射した光71のうち被検査面107aで正反射した成分は、反射光72となって再び投光ファイバ11に入射している。第1状態、第2状態においても、光71が被検査面107aに入射した結果として、反射光72の他に、反射光72とは異なる角度で散乱光73が生じている。図16に示す第2状態においては、受光ファイバ12に入射するのは主に散乱光73である。被検査面107aで正反射した反射光72はコリメートレンズ14によって投光ファイバ11の端面に集められている。受光ファイバ12には反射光72の周辺を進んできた散乱光73が入射している。
【0112】
光71および反射光72は、実際には一定の断面積を有する光束として進行しているが、図15、図16では光束の中心線を矢印で表示している。各光束は一定の断面積を有しているので、反射光72が複数の受光ファイバ12のいずれかに入射する第1状態においても、反射光72のうち投光ファイバ11に入射する成分が全くないとは限らない。同様に、反射光72が投光ファイバ11に入射する第2状態においても、反射光72のうち複数の受光ファイバ12のいずれかに入射する成分が全くないとは限らない。
【0113】
図15、図16においては、説明の便宜のため、コリメートレンズ14による屈折を図示省略しているが、コリメートレンズ14によって反射光72が屈折することを考慮に入れても、屈折する角度は微小であるので、光ファイバ束13の傾きの違いによって上述のような2通りの状態の区別をすることができる。
【0114】
これにより、この検査装置102を使用することにより、第1状態と第2状態とでそれぞれ受光ファイバ12に入射する光の強度を検出することができる。すなわち、第1状態では、投光ファイバ11から出射した光71のうち被検査面107aで正反射した成分の強度を把握することができ、第2状態では、投光ファイバ11から出射した光71に起因する散乱光73の一部の成分の強度を把握することができる。そのため、検査装置102では、基材107の被検査面107aで正反射する成分の強度と、乱反射する成分の強度とを、それぞれ別個に検出することができる。
【0115】
以上説明した検査装置101,102では、投光ファイバ11において光71を外部へ出射するための開口部の径に比べて、受光ファイバ12,12f,12gにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっていることが好ましい。この構成を採用することにより、受光ファイバ12,12f,12gは所望の光の成分のみを受光しやすくなり、不所望の光の成分が混入して受光される確率を低くすることができる。また、この構成を採用することにより、受光ファイバ12,12f,12gに対して入射する光の量はわずかな角度の変化によって大きく変動することとなるので、光の強度の変化を敏感に検出することが可能となる。
【0116】
図17は、金型用の基材107の被処理面107aを検査する工程(工程S3)の前半部分の一例を示す流れ図である。図17に示すように、工程S11において、金型用の基材107の被検査面107aに向けて、投光ファイバ11から投光する。工程S12において、被検査面107aからの反射光72を受光ファイバ(受光ファイバ12、または、第1受光ファイバ12fおよび第2受光ファイバ12g)によって受光する。工程S13において、受光ファイバが受光する光の強度を検出部20によって検出する。工程S11〜S13は、工程S11が完了してから工程S12が行なわれるという意味ではなく、工程S11を行ないながら並行して工程S12が行なわれるものであってよい。工程S12と工程S13についても、工程S11と工程S13についても同様である。
【0117】
図18は、上述した検査装置101を用いて実施することができる、被処理面107aを検査する工程(工程S3)の前半部分の好ましい一例を示す流れ図である。図18に示す例においては、投光する工程S11では、被検査面107aに対して垂直でない方向に投光する。
【0118】
受光する工程S12では、中心に位置する第1受光ファイバ12fの周囲を複数の第2受光ファイバ12gが取り囲むように配置された受光ファイバ束17を用いて、投光ファイバ11から出射した光が被検査面107aで正反射したときの光の進路の延長上に第1受光ファイバ12fが位置するように受光ファイバ束17を配置して、被検査面107aからの反射光を受光する。
【0119】
検出する工程S13は、第1受光ファイバ12fで受光した光の強度M1を検出する工程S21と、第2受光ファイバ12gで受光した光の強度m1を検出する工程S22とを含む。工程S11,S12は図18のフローチャートの上では先後関係であるかのように表示しているが、実際には光の照射および受光であるので、ほぼ同時に行なわれるものであってよい。また、工程S11と工程S12とが行なわれる時間帯は、重複してもよい。
【0120】
これにより、金型用基材107の被検査面107aに光を照射したときの、正反射光を主成分とする光の強度に相当するM1と、散乱光を主成分とする光の強度に相当するm1とを得ることができる。こうして得られる光の強度M1,m1に基づけば、製品に得られるであろう光学特性を推定することができる。
【0121】
図19は、上述した検査装置102を用いて実施することができる、被処理面107aを検査する工程(工程S3)の前半部分の好ましい他の例を示す流れ図である。図19に示す例においては、投光する工程S11では、投光ファイバ11の周りを複数の受光ファイバ12で取り囲むように配置した光ファイバ束13を用いる。投光する工程S11は、投光ファイバ11から出射した光が被検査面107aで正反射したときの光の進路の延長上に複数の受光ファイバ12のいずれかが位置する第1状態となるように光ファイバ束13を配置して投光ファイバ11からの光の照射を行なう第1工程S31と、被検査面107aに対して垂直な第2状態となるように光ファイバ束13を配置して投光ファイバ11からの光の照射を行なう第2工程S32とを含む。
【0122】
受光する工程S12は、第1工程S31を行ないながら受光する第3工程S33と、第2工程S32を行ないながら受光する第4工程S34とを含む。
【0123】
検出する工程S13は、第3工程S33で受光した光の強度M1を検出する工程と、第4工程S34で受光した光の強度m1を検出する工程とを含む。第1状態で行なう第1工程S31と、第2状態で行なう第2工程S32とは、いずれを先に行なってもよい。工程S11,S12は図19のフローチャートの上では先後関係であるかのように表示しているが、実際には光の照射および受光であるので、ほぼ同時に行なわれるものであってよい。また、工程S11と工程S12とが行なわれる時間帯は、重複してもよい。
【0124】
これにより、金型用基材107の被検査面107aに光を照射したときの、正反射光を主成分とする光の強度に相当するM1と、散乱光を主成分とする光の強度に相当するm1とを得ることができる。こうして得られる光の強度M1,m1に基づけば、製品に得られるであろう光学特性を推定することができる。
【0125】
金型用の基材107の被処理面107aを検査する工程(工程S3)の後半部分では、強度M1および強度m1を用いて、m1/(M1+m1)を暫定ヘイズとして求めてもよい。このようにすれば、金型から製造される製品を用いて所定の方法で求めることができるパラメータである「ヘイズ(haze)」に近い意義を有するパラメータとして「暫定ヘイズ」を求めることができる。しかもこの暫定ヘイズは、実際に金型から製品を試作しなくても、金型用の基材107の被処理面107aの光学特性に基づいて求めることができるので、好都合である。
【0126】
金型用の基材107の被処理面107aを検査する工程(工程S3)の後半部分では、強度M1および強度m1を用いて、(M1−m1)/(M1+m1)を暫定反射像鮮明度として求めてもよい。このようにすれば、金型から製造される製品を用いて所定の方法で求めることができるパラメータである「反射像鮮明度」に比例することが期待されるパラメータとして「暫定反射像鮮明度」を求めることができる。しかもこの暫定反射像鮮明度は、実際に金型から製品を試作しなくても、金型用の基材107の被処理面107aの光学特性に基づいて求めることができるので、好都合である。
【0127】
「暫定ヘイズ」および「暫定反射像鮮明度」は、金型表面に形成された凹凸による光散乱の大きさを反映するパラメータである。すなわち、これらのパラメータは、エッチングにより形成された凹凸の情報を含んでいる。一方、これらのパラメータは、全反射光量に相当する(M1+m1)を分母に取り入れたことにより、エッチング液量による光吸収変動の影響を受けにくいことが期待される。
【0128】
以上のように、本発明は受光ファイバ12f,12g、または複数の受光ファイバ12を有することにより、被検査面107aの表面で正反射する成分の強度と、乱反射する成分の強度とを、それぞれ別個に推定することができる。この特徴により、本発明は、防眩処理用金型加工におけるエッチング終点管理に好ましく用いることができる。
【0129】
エッチング量を判断する工程(工程S4)では、上記のようにして得られた暫定ヘイズまたは暫定反射像鮮明度を使用して、金型用の基材107の被処理面107aの表面状態を分析し、被処理面107aの表面状態が所定の状態に到達したかを判断することにより、被処理面107aのエッチング量を判断する。異なる複数の基材107について、エッチング処理中の暫定ヘイズまたは暫定反射像鮮明度を求め、暫定ヘイズまたは暫定反射像鮮明度が所定値に到達したときにエッチングを停止するように、エッチング操作を行なうことができる。
【0130】
このようにすれば、異なる基材107の各々について、エッチング処理中の被処理面107aの表面状態を検査しながらエッチング操作を行なうことができるので、異なる基材107についてのエッチング量をほぼ等しくすることができる。したがって、金型用の基材107の被処理面107aのエッチング量を安定させることができ、被処理面107aを再現性よくエッチングすることができる。
【0131】
上述した本発明の金型の製造方法で得られた金型を用いた防眩フィルムの製造方法について説明する。防眩フィルムの製造方法は、本発明の金型の製造方法で製造された金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写する工程と、金型の凹凸面が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がす工程とを含む。このような本発明の防眩フィルムの製造方法によって、好ましい光学特性を示す防眩フィルムが好適に製造される。
【0132】
金型形状のフィルムへの転写は、エンボスにより行うことが好ましい。エンボスとしては、光硬化性樹脂を用いるUVエンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法が例示され、中でも、生産性の観点から、UVエンボス法が好ましい。
【0133】
UVエンボス法は、透明樹脂フィルムの表面に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が光硬化性樹脂層に転写される方法である。具体的には、透明樹脂フィルム上に紫外線硬化型樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化型樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で透明樹脂フィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、その後金型から、硬化後の紫外線硬化型樹脂層が形成された透明樹脂フィルムを剥離することにより、金型の形状を紫外線硬化型樹脂に転写する。
【0134】
UVエンボス法を用いる場合、透明樹脂フィルムとしては、実質的に光学的に透明なフィルムであればよく、たとえばトリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。
【0135】
またUVエンボス法を用いる場合における紫外線硬化型樹脂の種類は特に限定されないが、市販の適宜のものを用いることができる。また、紫外線硬化型樹脂に適宜選択された光開始剤を組み合わせて、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂を用いることも可能である。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能アクリレートをそれぞれ単独で、あるいはそれら2種以上を混合して用い、それと、イルガキュアー907(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー184(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)などの光重合開始剤とを混合したものを好適に用いることができる。
【0136】
一方、ホットエンボス法は、熱可塑性樹脂で形成された透明樹脂フィルムを加熱状態で金型に押し付け、金型の表面形状を透明樹脂フィルムに転写する方法である。ホットエンボス法に用いる透明樹脂フィルムとしては、実質的に透明なものであればいかなるものであってもよく、たとえば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどを用いることができる。これらの透明樹脂フィルムはまた、上で説明したUVエンボス法における紫外線硬化型樹脂を塗工するための基材フィルムとしても好適に用いることができる。
【0137】
上記の防眩フィルムの製造方法により得られる防眩フィルムなどの、防眩処理が施された透明基材は、その微細凹凸表面形状が精度よく制御されて形成される。そのため、十分な防眩性を発現し、かつ、白ちゃけが発生せず、画像表示装置の表面に配置した際にもギラツキが発生せず、高いコントラストを示すものとなる。
【実施例】
【0138】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0139】
エッチング液122として塩化第二銅(CuCl2)液を用い、エッチング液122をシャワーノズル121から吹き付けることにより、銅製の金型用基材107の被処理面107aのエッチング処理を行う装置を例に説明する。
【0140】
まず、投光ファイバ11として株式会社キーエンス製、型式F−3HAと、株式会社キーエンス製FU−35FZを接続し、耐薬品性を持たせるためにフッ素樹脂チューブに封入した上で、被処理面107aに光を投光できる反応槽120内の位置に設置する。なお、投光ファイバ11は、FU−35FZ先端の中心に開口部を有する光ファイバ束とする。
【0141】
この時、投光する光が当たる位置は、シャワーノズル121から吹き付けられたエッチング液122が直接かからない場所とする。
【0142】
次に、第1受光ファイバ12fおよび第2受光ファイバ12gとして、株式会社キーエンス製、型式F−3HAと、株式会社キーエンス製FU−35FZとを接続し、中心に開口部を有するファイバ束を第1受光ファイバ12fとし、周辺部に開口を有するファイバ束を第2受光ファイバ12gとする。第1受光ファイバ12fおよび第2受光ファイバ12gも同様に、耐薬品性を持たせるためにフッ素チューブに封入した上で、反応槽120内の、投光ファイバ11により投射された光が被処理面107aに反射した反射光を受光できる位置に設置する。このとき、F−3HAと被処理面107aとの距離が約20mmになるようにする。
【0143】
光源としては、Philips Lumileds Lighting Company製の発光ダイオードLXHL−LE3Cを用い、エドモンド・オプティクス・ジャパン株式会社から販売されている商品コード43987−K (非球面コンデンサレンズ Outer Diameter =27mm Effective Focal Length =13mm)2枚を用い、投光ファイバ11に光を導入する。
【0144】
次に、感光性樹脂膜が現像されたマスク112が付着している基材107をエッチング装置内に導入し、被処理面107aにエッチング液122を吹き付ける。この際、投光ファイバ11から光を投射し、第1受光ファイバ12fおよび第2受光ファイバ12gにより伝えられる光の強度をOsram Opto Semiconductors Inc製フォトダイオードSFH−213により検出する。
【0145】
第1受光ファイバ12fにより検出部20伝えられる光の強度をM1、第2受光ファイバ12gにより検出部20に伝えられる光の強度をm1とし、m1/(M1+m1)の値が所定値になった時、被処理面107aへのエッチング液122の吹き付けを停止し、水により被処理面107aからエッチング液122を洗い流す。
【0146】
以上の操作によって、光学特性の再現性に優れたエッチング処理を実現することが出来る。
【符号の説明】
【0147】
10,10i コリメートレンズユニット、11 投光ファイバ、12,12f,12g 受光ファイバ、13 光ファイバ束、14 コリメートレンズ、15 筐体、16 切替部、17 受光ファイバ束、20 検出部、71 光、72 反射光、73 散乱光、101,102 検査装置、107 基材、107a 被処理面、120 反応槽、121 シャワーノズル、122 エッチング液。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型用の基材をエッチングするエッチング装置、および、金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防眩効果を持たせた製品を製造するためには、製品の表面に微細な凹凸形状を形成することが有効であることが知られている。そのような構成を備える防眩フィルムの一例が特開2006−53371号公報(特許文献1)に記載されている。この文献では、防眩フィルムを得るために、フィルムを成形するための金型の表面に微粒子を衝突させて凹凸形状を予め設けておくこととされている。
【0003】
一方、従来、エッチングに関する種々の技術が提案されている。たとえば、特開平10−36981号公報(特許文献2)には、被エッチング基板に光源より光を照射し、制御手段は、検出手段にて検出した光量又はスペクトルパターンの変化に基づいてエッチングの進行状況をモニターすると共に、エッチングが終了したと判断した時にはエッチング液の吹き付けを停止する、スピンエッチング方法が提案されている。
【0004】
特開2002−151462号公報(特許文献3)には、基板に対し、光源から光ビームを照射し、その正反射光を光検出器で検出し、回路は、光検出器の出力を増幅し、微分し、基準電圧と比較してエッチング終点を検出し、エッチング終点を検出してから設定時間経過後にエッチングを停止させる、ウエットエッチング方法が提案されている。
【0005】
特開2002−99074号公報(特許文献4)には、ドライエッチング装置のチャンバ内にセットされた透明基板の背面に光ファイバを設置し、光源から透明基板を透過して光ファイバに入射する透過光の光量を光量計にて測定し、あらかじめ作成された透明基板の厚さに対する透過率とドライエッチングのエッチング深さとの関係図を用いて、透明基板のエッチング量が所要の深さになった時にドライエッチングを停止する、ドライエッチング方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−53371号公報
【特許文献2】特開平10−36981号公報
【特許文献3】特開2002−151462号公報
【特許文献4】特開2002−99074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形するための金型の表面凹凸形状が不均一になり、凹凸形状のムラが発生すると、金型から転写された製品の表面の凹凸形状にもムラが発生する。特許文献1で提案された金型の表面に微粒子を衝突させて凹凸形状を設ける製法で金型を成形する場合、表面凹凸形状を精密に制御された状態で形成するのが難しい。金型の表面凹凸形状を均一に制御できなければ、表面凹凸形状が転写された製品表面における光の散乱の具合が異なることになる。そのため、一定の防眩効果を奏する製品を製造するのが困難であった。
【0008】
金型表面に微細な凹凸形状を精度よく形成して、高い防眩機能を示す製品の製造に有用な金型を製造するために、金型用の基材の表面に感光性の物質を塗布し、当該表面をフォトリソグラフィ法を使用してパターン状に露光し、エッチング処理を行なうことが考えられる。エッチング処理により基材の表面を加工する深さを制御するために、エッチング処理時間を管理することが考えられる。
【0009】
しかし、エッチング量を一定にするには時間管理だけでは不十分である。エッチング処理時間を一定にしても、エッチング液の濃度および温度などを一定に保つことが困難であるため、エッチング量を安定させることは困難である。その結果、金型表面の凹凸形状を、同等の防眩処理特性が発現するように再現よく加工することができない問題があった。
【0010】
エッチングの終点管理については、特許文献2〜4のような公知文献が存在する。しかし、金型は光を透過しないため、特許文献3のように、透過率測定により被エッチング層の厚み変化を検出することも不可能である。
【0011】
さらに、防眩処理用金型の加工において、エッチングにより形成する凹みの目標深さは常に一定ではなく、目的とする防眩処理特性に応じて調整されるものである。このため、特許文献2,4のようにエッチング処理終了に伴って露出する下地層が存在しない。したがって、ジャストエッチング状態での、反射光量または反射スペクトルの急峻な変化が発生しない。防眩処理用金型のエッチングによる加工では、用いる腐食性液体(エッチング液)による光吸収と、凹凸形成による光散乱の増加との、2つの要素が光反射に影響を与える。表面に付着しているエッチング液量の変動に由来する反射光量の変動は、凹凸形状により生じる反射光量変化よりも大きい。このため、ジャストエッチング状態での反射光量または反射スペクトルの急峻な変化が期待できない防眩処理用金型の加工において、従来公知の技術でエッチング処理の終点を検出することはできなかった。
【0012】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型用の基材の被処理面をエッチングするエッチング装置であって、エッチング量を安定させることができ、被処理面を再現性よくエッチングすることができる、エッチング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るエッチング装置は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型用の基材をエッチングするエッチング装置であって、基材の被処理面とエッチング液とを接触させる反応槽と、被処理面に向けて投光する投光ファイバと、被処理面からの反射光を受光する受光ファイバと、受光ファイバが受光する光の強度を検出する検出部とを備える。
【0014】
好ましくは、エッチング装置は、被処理面からの反射光を受光する複数の受光ファイバを備え、複数の受光ファイバは投光ファイバを取り囲むように配置されている。
【0015】
好ましくは、エッチング装置は、被処理面からの反射光を受光する複数の受光ファイバによる受光ファイバ束を備え、受光ファイバ束は、中心に位置する第1受光ファイバと、第1受光ファイバの周囲を取り囲む複数の第2受光ファイバとを含み、投光ファイバから出射した光が被処理面で正反射したときの光の進路の延長上に第1受光ファイバが位置するように、受光ファイバ束が配置されている。
【0016】
好ましくは、投光ファイバにおいて光を外部へ出射するための開口部の径に比べて、受光ファイバにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっている。
【0017】
好ましくは、被処理面に向けて投光される光は、490nm以上510nm以下のピーク波長を有する。
【0018】
本発明に係る金型の製造方法は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型の製造方法であって、被処理面を有する金型用の基材を準備する工程と、基材の被処理面をエッチングする工程を備える。エッチングする工程は、被処理面に向けて投光ファイバから投光する工程と、被処理面からの反射光を受光ファイバで受光する工程と、受光ファイバが受光する光の強度を検出する工程と、光の強度の変化に基づいて、エッチング処理を終了するか否かを判断する工程と、を含む。
【0019】
好ましくは、投光する工程は、投光ファイバの周りを複数の受光ファイバで取り囲むように配置した光ファイバ束を用いる。投光する工程は、投光ファイバから出射した光が被処理面で正反射したときの光の進路の延長上に複数の受光ファイバのいずれかが位置する第1状態となるように光ファイバ束を配置して投光ファイバからの光の照射を行なう第1工程と、被処理面に対して垂直な第2状態となるように光ファイバ束を配置して投光ファイバからの光の照射を行なう第2工程とを含む。受光する工程は、第1工程を行ないながら受光する第3工程と、第2工程を行ないながら受光する第4工程とを含む。検出する工程は、第3工程で受光した光の強度M1を検出する工程と、第4工程で受光した光の強度m1を検出する工程とを含む。
【0020】
好ましくは、投光する工程は、被処理面に対して垂直でない方向に投光する。受光する工程は、中心に位置する第1受光ファイバの周囲を複数の第2受光ファイバが取り囲むように配置された受光ファイバ束を用いて、投光ファイバから出射した光が被処理面で正反射したときの光の進路の延長上に第1受光ファイバが位置するように受光ファイバ束を配置して被処理面からの反射光を受光する。検出する工程は、第1受光ファイバで受光した光の強度M1を検出する工程と、第2受光ファイバで受光した光の強度m1を検出する工程とを含む。
【0021】
好ましくは、強度M1および強度m1を用いて、m1/(M1+m1)を暫定ヘイズとして求める工程をさらに含む。
【0022】
好ましくは、強度M1および強度m1を用いて、(M1−m1)/(M1+m1)を暫定反射像鮮明度として求める工程をさらに含む。
【0023】
好ましくは、投光ファイバにおいて光を外部へ出射するための開口部の径に比べて、受光ファイバにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっている。
【0024】
好ましくは、被処理面に向けて投光される光は、490nm以上510nm以下のピーク波長を有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のエッチング装置によると、金型用基材の被処理面のエッチング量を安定させることができ、被処理面を再現性よくエッチングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図2】本発明の金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図3】第1エッチング工程においてサイドエッチングが進行する状態を模式的に示す図である。
【図4】第2エッチング工程によって緩やかな表面傾斜を有する第2の表面凹凸形状が形成された状態を模式的に示す図である。
【図5】エッチング工程の詳細を示すフローチャートである。
【図6】エッチング装置の具体的な構成の一例の概念図である。
【図7】投光ファイバ側のコリメートレンズユニットの内部構造の概要を示す模式図である。
【図8】投光ファイバを含む光ファイバ束の端部の拡大図である。
【図9】受光ファイバ側のコリメートレンズユニットの内部構造の概要を示す模式図である。
【図10】受光ファイバ束の端部の拡大図である。
【図11】図6に示すエッチング装置に含まれる検査装置の概念図である。
【図12】反射光が第1受光ファイバに入射する状態に対応する説明図である。
【図13】変形例のエッチング装置に含まれる検査装置の概念図である。
【図14】変形例の検査装置の光ファイバ束の端部の拡大図である。
【図15】第1状態における光の進路を示す図である。
【図16】第2状態における光の進路を示す図である。
【図17】金型用の基材の被処理面を検査する工程の前半部分の一例を示す流れ図である。
【図18】被処理面を検査する工程の前半部分の好ましい一例を示す流れ図である。
【図19】被処理面を検査する工程の前半部分の好ましい他の例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0028】
本発明が対象とする金型は、表面に数μm〜数mm程度の凹凸形状を有し、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型であり、防眩処理用金型と称される。防眩製品の一種として、防眩フィルム(「AG(Anti-Glare)フィルム」ともいう。)を挙げることができる。
【0029】
金型は、通常、フィルムへのUVエンボス法による転写や、成型加工の際に用いられ、加工対象物に防眩処理表面を形成する。防眩処理用金型としては、銅などの基材の表面にエッチングを施した後、硬質クロムメッキで耐擦傷性を持たせた形態のものが用いられる。金型の形状としては、板状やロールトゥロールプロセスで用いられるロール状の金型などがある。
【0030】
図1は、本発明の金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図1には各工程での金型の断面を模式的に示している。本発明の金型の製造方法は、〔1〕第1めっき工程と、〔2〕研磨工程と、〔3〕感光性樹脂膜塗布工程と、〔4〕露光工程と、〔5〕現像工程と、〔6〕第1エッチング工程と、〔7〕感光性樹脂膜剥離工程と、〔8〕第2めっき工程を基本的に含む。以下、図1を参照しながら、本発明の金型の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0031】
〔1〕第1めっき工程
本発明の金型の製造方法ではまず、金型に用いる基材の表面に、銅めっきまたはニッケルめっきを施す。このように、金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施すことにより、後の第2めっき工程におけるクロムめっきの密着性や光沢性を向上させることができる。
【0032】
すなわち、鉄などの表面にクロムめっきを施した場合、またはクロムめっき表面に凹凸を形成してから再度クロムめっきを施した場合には、表面が荒れやすく、細かいクラックが生じて、金型の表面の凹凸形状が制御しにくくなる。これに対して、まず、基材表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施しておくことにより、このような不都合をなくすことができる。これは、銅めっきまたはニッケルめっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いことから、金型用基材の微小な凹凸や鬆などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。
【0033】
これらの銅めっきまたはニッケルめっきの特性によって、後述する第2めっき工程においてクロムめっきを施したとしても、基材に存在していた微小な凹凸や鬆に起因すると思われるクロムめっき表面の荒れが解消され、また、銅めっきまたはニッケルめっきの被覆性の高さから、細かいクラックの発生が低減される。
【0034】
第1めっき工程において用いられる銅またはニッケルとしては、それぞれの純金属であることができるほか、銅を主体とする合金、またはニッケルを主体とする合金であってもよい。したがって、本明細書でいう「銅」は、銅および銅合金を含む意味であり、また「ニッケル」は、ニッケルおよびニッケル合金を含む意味である。銅めっきおよびニッケルめっきは、それぞれ電解めっきで行なっても無電解めっきで行なってもよいが、通常は電解めっきが採用される。
【0035】
銅めっきまたはニッケルめっきを施す際には、めっき層が余り薄いと、下地表面の影響が排除しきれないことから、その厚みは50μm以上であるのが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コストなどに鑑み、一般的にはめっき層厚みの上限は500μm程度までとすることが好ましい。
【0036】
本発明の金型の製造方法において、金型用基材の形成に好適に用いられる金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄などが挙げられる。取扱いの利便性から、軽量なアルミニウムを用いることがより好ましい。ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウムまたは鉄を主体とする合金であってもよい。
【0037】
また、金型用基材の形状は、当該分野において従来採用されている適宜の形状であれば特に制限されず、たとえば、平板状であってもよいし、円柱状または円筒状のロールであってもよい。ロール状の基材を用いて金型を作製すれば、防眩処理を連続的に行なうことができ、防眩フィルムを連続的に製造することができるという利点がある。
【0038】
〔2〕研磨工程
続く研磨工程では、上述した第1めっき工程にて銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する。当該工程を経て、基材表面は、鏡面に近い状態に研磨されることが好ましい。これは、基材となる金属板や金属ロールは、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより基材表面に加工目が残っており、銅めっきまたはニッケルめっきが施された状態でも、それらの加工目が残ることがあるし、また、めっきした状態で、表面が完全に平滑になるとは限らないためである。すなわち、このような深い加工目などが残った表面に後述する工程を施したとしても、各工程を施した後に形成される凹凸よりも加工目などの凹凸の方が深いことがあり、加工目などの影響が残る可能性があり、そのような金型を用いて防眩処理を施したり、防眩フィルムを製造した場合には、光学特性に予期できない影響を及ぼすことがある。
【0039】
図1(a)には、平板状の金型用の基材107が、第1めっき工程において銅めっきまたはニッケルめっきをその表面に施され(第1めっき工程で形成した銅めっきまたはニッケルめっきの層については図示せず)、さらに研磨工程によって鏡面研磨された表面108を有するようにされた状態を、模式的に示している。
【0040】
銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する方法については特に制限されるものではなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法などが例示される。研磨後の表面粗度は、JIS B 0601の規定に準拠した中心線平均粗さRaが0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。研磨後の中心線平均粗さRaが0.1μmより大きいと、最終的な金型表面の凹凸形状に研磨後の表面粗度の影響が残る可能性があるので好ましくない。また、中心線平均粗さRaの下限については特に制限されず、加工時間や加工コストの観点から、おのずと限界があるので、特に指定する必要性はない。
【0041】
〔3〕感光性樹脂膜塗布工程
続く感光性樹脂膜塗布工程では、上述した研磨工程によって鏡面研磨を施した基材107の研磨された表面108に、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液として塗布し、加熱・乾燥することにより、感光性樹脂膜を形成する。図1(b)には、基材107の表面108に感光性樹脂膜109が形成された状態を模式的に示している。
【0042】
感光性樹脂としては従来公知の感光性樹脂を用いることができる。感光部分が硬化する性質をもったネガ型の感光性樹脂としては、たとえば、分子中にアクリル基またはメタアクリル基を有するアクリル酸エステルの単量体やプレポリマー、ビスアジドとジエンゴムとの混合物、ポリビニルシンナマート系化合物等を用いることができる。また、現像により感光部分が溶出し、未感光部分だけが残る性質をもったポジ型の感光性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂系やノボラック樹脂系等を用いることができる。また、感光性樹脂には、必要に応じて、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0043】
これらの感光性樹脂を金型用の基材107の研磨された表面108に塗布する際には、良好な塗膜を形成するために、適当な溶媒に希釈して塗布することが好ましい。溶媒としては、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒等を使用することができる。
【0044】
感光性樹脂溶液を塗布する方法としては、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、およびカーテン塗布等の公知の方法を用いることができる。塗布膜の厚さは乾燥後で1〜6μmの範囲とすることが好ましい。
【0045】
〔4〕露光工程
続く露光工程では、所定のパターンを上述した感光性樹脂膜塗布工程で形成された感光性樹脂膜109上に露光する。露光工程に用いる光源は、塗布された感光性樹脂の感光波長や感度等に合わせて適宜選択すればよく、例えば、高圧水銀灯のg線(波長:436nm)、高圧水銀灯のh線(波長:405nm)、高圧水銀灯のi線(波長:365nm)、半導体レーザ(波長:830nm、532nm、488nm、405nm等)、YAGレーザ(波長:1064nm)、KrFエキシマーレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマーレーザ(波長:193nm)、F2エキシマーレーザ(波長:157nm)、または半導体レーザ等を用いることができる。
【0046】
本発明の金型の製造方法において表面凹凸形状を精度良く形成するためには、露光工程において、所定のパターンを感光性樹脂膜上に精密に制御された状態で露光することが好ましい。本発明の金型の製造方法においては、所定のパターンを感光性樹脂膜上に精度良く露光するために、コンピュータ上で作成したパターンである画像データまたは離散化された情報の二次元配列に基づいて、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザ光によって、感光性樹脂膜上にパターンを描画することが好ましい。このようなレーザ描画を行うに際しては印刷版作成用のレーザ描画装置を使用することができる。このようなレーザ描画装置としては、例えばLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)等が挙げられる。
【0047】
図1(c)には、感光性樹脂膜109にパターンが露光された状態を模式的に示している。感光性樹脂膜をネガ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域111は露光によって樹脂の架橋反応が進行し、後述する現像液に対する溶解性が低下する。よって、現像工程において露光されていない領域110が現像液によって溶解され、露光された領域111のみ基材表面上に残りマスクとなる。一方、感光性樹脂膜をポジ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域111は露光によって樹脂の結合が切断され、後述する現像液に対する溶解性が増加する。よって、現像工程において露光された領域111が現像液によって溶解され、露光されていない領域110のみ基材表面上に残りマスクとなる。
【0048】
露光によって描画されるパターンの形状については特に制限されず、円形、四角形、六角形等のパターンを配列させたものを描画してもよいし、連続的なパターンを描画してもよいし、これらを組み合わせたものを描画してもよい。また、異なる大きさの円形、四角形、六角形等のパターンを配列したものを描画してもよい。また、描画するパターンは規則的に配置されていても構わないし、不規則に配置されていても構わないが、不規則に配置されているほうが好ましい。
【0049】
〔5〕現像工程
続く現像工程においては、感光性樹脂膜109にネガ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光されていない領域110は現像液によって溶解され、露光された領域111のみ金型用基材上に残存し、続く第1エッチング工程においてマスクとして作用する。一方、感光性樹脂膜109にポジ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光された領域111のみ現像液によって溶解され、露光されていない領域110が金型用基材上に残存して、続く第1エッチング工程におけるマスクとして作用する。
【0050】
現像工程に用いる現像液については従来公知のものを使用することができる。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液、および、キシレン、トルエン等の有機溶剤等を挙げることができる。
【0051】
現像工程における現像方法については特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
【0052】
図1(d)には、感光性樹脂膜109にネガ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行った状態を模式的に示している。図1(c)において露光されていない領域110が現像液によって溶解され、露光された領域111のみ基材表面上に残り、マスク112となる。図1(e)には、感光性樹脂膜109にポジ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行った状態を模式的に示している。図1(c)において露光された領域111が現像液によって溶解され、露光されていない領域110のみ基材表面上に残り、マスク112となる。
【0053】
〔6〕第1エッチング工程
続く第1エッチング工程では、上述した現像工程後に金型用基材表面上に残存した感光性樹脂膜をマスクとして用いて、主にマスクの無い箇所の金型用基材をエッチングし、研磨されためっき面に凹凸を形成する。図2は、本発明の金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図2(a)には第1エッチング工程によって、主にマスクの無い箇所113の金型用の基材107がエッチングされる状態を模式的に示している。
【0054】
マスク112の下部の基材107は金型用基材表面からはエッチングされないが、エッチングの進行とともにマスクの無い箇所113からのエッチングが進行する。よって、マスク112とマスクの無い箇所113との境界付近では、マスク112の下部の基材107もエッチングされる。このようなマスク112とマスクの無い箇所113との境界付近において、マスク112の下部の基材107もエッチングされることを、以下ではサイドエッチングと呼ぶ。図3にはサイドエッチングの進行を模式的に示した。図3の点線114は、エッチングの進行とともに変化する金型用の基材107の表面を段階に示している。
【0055】
第1エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2)等を用いて、金属表面を腐食させることによって行われるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した際の金型用基材に形成される凹形状は、下地金属の種類、感光性樹脂膜の種類およびエッチング手法等によって異なるため、一概にはいえないが、エッチング量が10μm以下である場合には、エッチング液に触れている金属表面から略等方的にエッチングされる。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られる基材の厚みである。
【0056】
第1エッチング工程におけるエッチング量は好ましくは1〜50μmである。エッチング量が1μm未満である場合には、金属表面に凹凸形状がほとんど形成されずに、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。また、エッチング量が50μmを超える場合には、金属表面に形成される凹凸形状の高低差が大きくなり、得られた金型を使用して作製した防眩フィルムを適用した画像表示装置において白ちゃけが生じる虞があるため好ましくない。第1エッチング工程におけるエッチング処理は1回のエッチング処理によって行ってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行ってもよい。ここでエッチング処理を2回以上に分けて行う場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が1〜50μmであることが好ましい。
【0057】
〔7〕感光性樹脂膜剥離工程
続く感光性樹脂膜剥離工程では、第1エッチング工程でマスクとして使用した残存する感光性樹脂膜を完全に溶解し除去する。感光性樹脂膜剥離工程では剥離液を用いて感光性樹脂膜を溶解する。剥離液としては、上述した現像液と同様のものを用いることができて、pH、温度、濃度、および浸漬時間等を変化させることによって、ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合には露光部の、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合には非露光部の感光性樹脂膜を完全に溶解して除去する。感光性樹脂膜剥離工程における剥離方法についても特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
【0058】
図2(b)は、感光性樹脂膜剥離工程によって、第1エッチング工程でマスク112として使用した感光性樹脂膜を完全に溶解し除去した状態を模式的に示している。感光性樹脂膜からなるマスク112を利用したエッチングによって、第1の表面凹凸形状115が金型用基材表面に形成される。
【0059】
〔8〕第2めっき工程
続いて、形成された凹凸面(第1の表面凹凸形状115)にクロムめっきを施すことによって、表面の凹凸形状を鈍らせる。図2(c)には、上述したように第1エッチング工程のエッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状115にクロムめっき層116を形成することにより、第1の表面凹凸形状115よりも凹凸が鈍った表面(クロムめっきの表面117)が形成されている状態が示されている。
【0060】
本発明では、平板やロールなどの表面に、光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与え得るクロムめっきを採用する。クロムめっきの種類は特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行われ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO3)と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間とを調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。
【0061】
金型のめっき前の下地とクロムめっきの種類によっては、めっき後に表面が荒れたり、クロムめっきによる微小なクラックが多数発生したりすることが多く、その結果、当該金型を用いて作製される、表面に凹凸形状の形成された透明基材(防眩フィルムを含む)の光学特性が好ましくない方向へと進む。めっき表面が荒れた状態の金型は、透明基材の防眩処理および防眩フィルムの製造に適していない。何故ならば、一般的にざらつきを消すためにクロムめっき後にめっき表面を研磨することが行われているが、後述するように、本発明ではめっき後の表面の研磨が好ましくないからである。本発明では、下地金属に銅めっきまたはニッケルめっきを施すことにより、クロムめっきで生じ易いこのような不都合を解消している。
【0062】
なお、第2めっき工程において、クロムめっき以外のめっきを施すことは好ましくない。何故なら、クロム以外のめっきでは、硬度や耐摩耗性が低くなるため、金型としての耐久性が低下し、使用中に凹凸が磨り減ったり、金型が損傷したりする。そのような金型を用いた防眩処理および金型から得られた防眩フィルムでは、十分な防眩機能が得られにくい可能性が高く、また、透明樹脂フィルムなどの透明基材上に欠陥が発生する可能性も高くなる。
【0063】
また、めっき後の表面を研磨することも、やはり本発明では好ましくない。すなわち、第2めっき工程後に表面を研磨する工程を設けることなく、クロムめっきが施された凹凸面を、そのまま透明基材上に転写される金型の凹凸面として用いることが好ましい。研磨することにより、最表面に平坦な部分が生じるため、光学特性の悪化を招く可能性があること、また、形状の制御因子が増えるため、再現性のよい形状制御が困難になることなどの理由による。
【0064】
このように本発明の金型の製造方法では、微細表面凹凸形状が形成された表面にクロムめっきを施すことにより、凹凸形状が鈍らせられるとともに、その表面硬度が高められた金型が得られる。この際の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、第1エッチング工程より得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚みなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御するうえで最も大きな因子は、やはりめっき厚みである。クロムめっきの厚みが薄いと、クロムめっき加工前に得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルム等の透明基材に転写して得られる防眩処理が施された透明基材(防眩フィルムなど)の光学特性があまり良くならない。一方で、めっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなるうえに、ノジュールと呼ばれる突起状のめっき欠陥が発生してしまうため好ましくない。そこで、クロムめっきの厚みは1〜10μmの範囲内であるのが好ましく、3〜6μmの範囲内であるのがより好ましい。
【0065】
当該第2めっき工程で形成されるクロムめっき層は、ビッカース硬度が800以上となるように形成されていることが好ましく、1000以上となるように形成されていることがより好ましい。クロムめっき層のビッカース硬度が800未満である場合には、金型使用時の耐久性が低下するうえに、クロムめっきで硬度が低下することはめっき処理時にめっき浴組成、電解条件などに異常が発生している可能性が高く、欠陥の発生状況についても好ましくない影響を与える可能性が高いためである。
【0066】
また、本発明の金型の製造方法においては、上述した〔7〕感光性樹脂膜剥離工程と〔8〕第2めっき工程との間に、第1エッチング工程によって形成された凹凸面をエッチング処理によって鈍らせる第2エッチング工程を含むことが好ましい。
【0067】
第2エッチング工程では、感光性樹脂膜をマスクとして用いた第1エッチング工程によって形成された第1の表面凹凸形状115を、エッチング処理によって鈍らせる。この第2エッチング処理によって、第1エッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状115における表面傾斜が急峻な部分がなくなり、得られた金型を用いて製造された防眩フィルム等の防眩処理が施された透明基材の光学特性が好ましい方向へと変化する。図4には、第2エッチング処理によって、基材107の第1の表面凹凸形状115が鈍化し、表面傾斜が急峻な部分が鈍らされ、緩やかな表面傾斜を有する第2の表面凹凸形状118が形成された状態が示されている。
【0068】
第2エッチング工程のエッチング処理も、第1エッチング工程と同様に、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2)などを用い、表面を腐食させることによって行なわれるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した後の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、エッチング手法、および第1エッチング工程により得られた凹凸のサイズと深さなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御する上で最も大きな因子は、エッチング量である。ここでいうエッチング量も、第1エッチング工程と同様に、エッチングにより削られる基材の厚みである。
【0069】
エッチング量が小さいと、第1エッチング工程により得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルム等の透明基材上に転写して得られる防眩処理が施された透明基材(防眩フィルムなど)の光学特性があまり良くならない。一方で、エッチング量が大きすぎると、凹凸形状がほとんどなくなってしまい、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。そこで、エッチング量は1〜50μmの範囲内であることが好ましく、4〜20μmの範囲内であることがより好ましい。
【0070】
第2エッチング工程におけるエッチング処理についても、第1エッチング工程と同様に、1回のエッチング処理によって行なってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行なってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行う場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が1〜50μmであることが好ましい。
【0071】
以下、本発明のエッチング装置および上述した金型の製造方法の一工程であるエッチング工程の、好適な実施形態について詳細に説明する。
【0072】
エッチングは化学薬品等の腐蝕作用等により被処理面を加工する手法であり、広く金属・半導体等の加工に用いられている。方式には大きく腐食性のガスや反応性イオンを用いるドライエッチング、腐食性の液体を用いるウェットエッチング、金属の場合には、電解液に被処理面を接触させ、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングなどがある。いずれの方式でも、本発明に用いることが可能であるが、取扱が容易である点から、ウェットエッチング、もしくは逆電解エッチングを好ましく用いることが出来る。
【0073】
このようなエッチングを実施する装置は、腐蝕ガス・もしくは腐蝕液を被処理面に接触させる反応槽を有し、これ以外には腐食性物質の温度を管理する温度調整装置、腐食性物質を被処理面に接触させる時間長さを制御する手段、被処理面から腐食性物質を除去する手段の全て、もしくは一部を有するものが一般的である。
【0074】
反応槽の内部で被処理面に腐食性液を接触させる手段としては、腐食性液体に被処理対象を浸漬する方法。腐食性液体を被処理対象に吹き付ける方法等があり、いずれの方法も用いることが出来る。腐食性物質が被処理面を侵す深さは、多くの場合、腐食性物質を被処理面に接触させる時間の長さによって制御される。この時、腐食性物質が被処理面を侵す速度は一定である必要がある。
【0075】
腐食性物質が被処理面を侵す速度は、一般的に腐食性物質濃度、および温度、および被処理面の温度に依存する。このため、腐食性物質の温度を制御する手段を有することが一般的である。より精密に制御された装置では、被処理面の温度を制御することが出来る場合もある。しかし、実際には腐食性物質温度・濃度、被処理対象温度を一定にし、腐食性物質が被処理面を侵す速度を一定に保つことは極めて困難である。
【0076】
腐食性物質を接触させる時間長さを制御する手段は、一般にはプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に代表される制御装置に、指定時間経過後に指定された動作を実行するように指示することによって実現される。接触を終了させる方法としては、ウェットエッチングで腐食性液体の内部に被処理体を浸漬していた場合には、腐食性液体で満たされた腐蝕槽を引き下げる、もしくは被処理体を引き上げることにより実現される。腐食性液体を被処理対象に吹き付ける方法をとっていた場合には、吹き付ける動作を終了すればよい。
【0077】
エッチングにより加工する深さをより精密に制御するためには、腐蝕性液体を被処理対象に接触させることを止めると同時に、腐食性物質を除去することが好ましい。一般的には、水を用いて腐食性物質を洗い流す方法が取られる。
【0078】
図5は、エッチング工程の詳細を示すフローチャートである。上述した金型の製造方法における第1エッチング工程および/または第2エッチング工程では、図5に示す各工程に従って、金型用の基材107のエッチング処理が行なわれる。
【0079】
まず工程S1において、金型用の基材107を準備する。第1エッチング工程の場合、図1(d)または図1(e)に示す、被処理面上にマスク112が形成された状態の基材107が準備される。第2エッチング工程の場合、図4(a)に示す、第1エッチング工程によって表面凹凸形状115が形成され、マスク112が除去された状態の基材107が準備される。準備された金型用の基材107は、基材の被処理面とエッチング液とを接触させる反応槽内に設置される。
【0080】
続いて工程S2において、基材107の被処理面に向けてエッチング液の供給を開始し、被処理面のエッチング処理を開始する。続いて工程S3において、被処理面のエッチング処理を行ないながら(すなわちエッチング液を供給しながら)、被処理面の表面状態を検査する。続いて工程S4において、工程S3の検査結果に基づいて、被処理面の表面状態が所定の状態に到達したか否かを判断する。
【0081】
工程S4の判断の結果、被処理面の表面状態が所定の状態に到達しておらず、エッチング処理を終了しないと判断されれば、エッチング処理が続行され、再度工程S3に戻る。工程S4の判断の結果、被処理面の表面状態が所定の状態に到達しており、エッチング処理を終了すると判断されれば、続いて工程S5において、エッチング液の供給が停止され、その後工程S6において、水などの洗浄液により被処理面からエッチング液を洗い流す。このようにして、エッチング処理が終了する。
【0082】
図5に示す被処理面を検査する工程(工程S3)と、被処理面の表面状態を判断する工程(工程S4)とについて、さらに詳細に説明する。図6は、エッチング装置の具体的な構成の一例の概念図である。図6に示すように、エッチング装置は、反応槽120を備える。反応槽120は、その内部に、エッチング液122を供給するシャワーノズル121を有する。金型用の基材107は、反応槽120の内部に設置される。シャワーノズル121は、基材107の設置位置に対して、上方に配置される。これにより、シャワーノズル121から噴出されたエッチング液122が重力の作用を受けて下方へ移動して、反応槽120の内部で基材107の被処理面107aにエッチング液122が接触するような構成とされている。
【0083】
エッチング装置はまた、金型用の基材107の被処理面107aを検査するための、検査装置を備える。この検査装置は、基材107の被処理面107a(検査装置に着目して説明される場合、被検査面107aとも称される)に向けて投光するための投光ファイバ11と、被処理面107aからの反射光を受光するための複数の受光ファイバ12f,12gと、受光ファイバ12f,12gが受光する光の強度を検出する検出部20とを備える。受光ファイバ12f,12gにより伝えられる反射光の強度を検査装置が検出し、この反射光の強度に基づいて、金型用の基材107の被処理面107aの表面形状を分析することが可能とされている。
【0084】
投光ファイバ11は、後述する発光器により発せられた光を導き、1点から被検査面107aに向けて光を照射する役割を果たす光ファイバである。投光ファイバ11は、シングルモードまたはマルチモードの光ファイバの単線であってもよく、複数の光ファイバが束となった形態のものも考えられる。
【0085】
受光ファイバ12f,12gは、被検査面107aから反射された光を、腐食性物質が充満した反応槽120内部から後述するフォトダイオードに導く役割を果たす光ファイバである。受光ファイバ12f,12gは、シングルモードまたはマルチモードの光ファイバの単線であってもよく、複数の光ファイバが束となった形態のものも考えられる。
【0086】
投光ファイバ11または受光ファイバ12f,12gを複数の光ファイバの束によって構成する場合、束の断面形状は、円形であっても楕円形であってもよく、四角形、多角形、環状、線状などであってもよい。光ファイバの位置決めを容易にするために、光ファイバの束の全体としての断面形状は、回転対称性を有する形状が好ましく、特に円形が好ましい。検査対象物である金型用の基材107が円筒形状の場合のように、被検査面107aが何らかの曲率を有する曲面である場合には、その曲面の曲率に応じて、得られる反射光が円形に近くなるように、楕円形に束ねられた光ファイバの束を用いることが好ましい。金型用基材107が円筒形状である場合、その円筒形状の直径方向を長軸とし、円筒形状の中心軸方向を短軸とする楕円形の領域に光を照射すれば、得られる反射光は円形に近くなる。
【0087】
用いる光ファイバの直径に特に制約は無いが、鮮明度と良好な相関が期待される好ましい光ファイバの範囲として、直径0.125mm以上4mm以下、より好ましい範囲として、直径0.125mm以上2mm以下の光ファイバが挙げられる。また、投光ファイバと受光ファイバとが、受光ファイバの直径以下の間隔で、測定の妨げとなる水準のクロストークが生じない程度に近接して、配置されていることが好ましい。さらに、投光ファイバを中心に配置し、受光ファイバを周辺に配置する構成では、投光ファイバの直径よりも小さい受光ファイバを好ましく用いることができる。特に好ましくは、受光ファイバの直径は、投光ファイバの直径の約1/2である。
【0088】
検査装置は、反応槽120の内部に、コリメートレンズユニット10,10iを備える。図6ではコリメートレンズユニット10が斜め上を向き、コリメートレンズユニット10iが斜め下を向いているが、この向きに限らず、いずれの向きであってもよい。コリメートレンズユニット10には、投光ファイバ11が接続されている。コリメートレンズユニット10iには、受光ファイバ12f,12gが接続されている。
【0089】
図7は、投光ファイバ11側のコリメートレンズユニット10の内部構造の概要を示す模式図である。図7に示すように、コリメートレンズユニット10は、容器状の筐体15を有する。投光ファイバ11を含む複数の光ファイバにより構成される光ファイバ束13は、筐体15に連結されている。筐体15の内部に光ファイバ束13の端部が配置されており、この端部に対して焦点が合う位置にコリメートレンズ14が配置されている。コリメートレンズ14は筐体15によって保持されている。
【0090】
図8は、投光ファイバ11を含む光ファイバ束13の端部の拡大図である。光ファイバ束13は、複数の光ファイバを備え、光を出射する投光ファイバ11は光ファイバ束13の中心に配置されている。投光ファイバ11の周囲を取り囲むように環状に配置された光ファイバ18は、被検査面107aに投光するために使用されない。図6においてコリメートレンズユニット10に接続された光ファイバの一部が下方に延在してその先にX印が付されているのは、これらの光ファイバが不使用であることを意味する。コリメートレンズユニット10に保持された複数の光ファイバのうち、光ファイバ束13の中心に配置された投光ファイバ11のみが、被検査面107aに投光するために使用されている。光ファイバ束13は、投光ファイバ11以外の光ファイバも含む。
【0091】
図9は、受光ファイバ12f,12g側のコリメートレンズユニット10iの内部構造の概要を示す模式図である。図9に示すように、コリメートレンズユニット10は、容器状の筐体15を有する。被検査面107aからの反射光を受光するための複数の光ファイバにより構成される受光ファイバ束17は、筐体15に連結されている。筐体15の内部に受光ファイバ束17の端部が配置されており、この端部に対して焦点が合う位置にコリメートレンズ14が配置されている。コリメートレンズ14は筐体15によって保持されている。
【0092】
図10は、受光ファイバ束17の端部の拡大図である。受光ファイバ束17は、複数の光ファイバを備える。図10に示す例では、1本の第1受光ファイバ12fが受光ファイバ束17の中央に位置しており、6本の第2受光ファイバ12gが第1受光ファイバ12fの周囲を取り囲むように配置されている。第2受光ファイバ12gの本数は6本に限らず、他の本数であってもよい。
【0093】
図6に戻って、検査装置は、光を発生する光源(発光器)と、発光器からの光を集光して投光ファイバ11に入射する非球面コンデンサレンズ31を備える。投光ファイバ11は、その一端がコリメートレンズユニット10に接続され、他端は非球面コンデンサレンズ31に接続されている。投光ファイバ11の先端には、コリメートレンズユニット10が設置されている。光源(発光器)の一例であるLED30から発せられた光は、非球面コンデンサレンズ31を介して、投光ファイバ11に入射する。
【0094】
光源としては、ハロゲンランプ、タングステンランプ、水銀灯に代表される電球、発光ダイオード(LED)、レーザ素子など、各種光源を用いることができる。光源としては、特に、ノイズ除去のために必要に応じて変調をかけることが容易であるLED、半導体レーザ素子、半導体励起レーザ素子といった固体光源を用いることが好ましい。
【0095】
また、光源の波長は、エッチング液122などの反応槽120内に充満する腐食性物質、および、レジストの光吸収が弱い波長を選ぶことが好ましい。銅をエッチングする際の腐蝕性物質として広く用いられる塩化第二銅(CuCl2)液は、500nm近辺以外の光を強く吸収する。このことから、波長490nm以上510nm以下の範囲に発光ピークを有するような光源を用い、被処理面107aに向けて投光される光が490nm以上510nm以下の範囲にピーク波長を有するようにすることが、エッチング液122による光吸収の影響を少なくする観点から特に好ましい。このような光源は、該当波長帯域に発光ピークを有するLEDを選定して実現してもよく、白色光源にフィルタを組み合わせることによって実現してもよい。
【0096】
電球やLEDなどを光源として用いた場合には、投光ファイバ11から出射した光は広がりながら進行する。しかし、本発明においては、投光ファイバ11から出射された光は被検査面107aに到達するまでにほぼ平行な光とする必要がある。このため、投光ファイバ11から出射した光が広がりながら進行する光である場合には、適宜レンズを組み合わせて光を平行光に近い形に整えればよい。このような操作は、一般的に、凸レンズ(たとえば図7に示すコリメートレンズ14)または凹面鏡により実現することができる。
【0097】
また、光ファイバから出射した光をほぼ平行な光とすることができるレンズが、ファイバセンサメーカから市販されている。このようなレンズとしては、たとえば、株式会社キーエンス製の型式F−3HAなどがある。このレンズと専用の光ファイバ(株式会社キーエンス製FU−35FZなど)とを組み合わせることによりレンズからおよそ20mm〜40mm前後の範囲において、ほぼ平行な光を実現することができる。
【0098】
コリメートレンズユニットF−3HAは、開口直径約4.3mmの凸レンズから構成されており、レンズ先端から0〜20mmの距離において、スポット径がほぼ4mmの概略平行光になるように設計されている。
【0099】
FU−35FZは、直径約1.1mmの円形領域の中心に直径約0.05mmの多数の光ファイバを直径0.5mmの円形に束ねた光ファイバ束を配置し、この周囲を直径0.265mmの光ファイバ8本が取り囲む配置をとる。すなわち、周辺の光ファイバの直径が、中心に配置された光ファイバ束の直径よりも小さく、中心に配置された光ファイバ束の約1/2の直径を有する。また、以上の情報から計算される中心の光ファイバ束と周辺の光ファイバとの間隙は、0.035mm以下である。
【0100】
検査装置は、受光ファイバ12f,12gにより受光された被処理面107aからの反射光を検出するための、フォトダイオード32f,32gを備える。コリメートレンズユニット10から出射し、被検査面107aで反射した光は、コリメートレンズユニット10iに入射する。コリメートレンズユニット10iの先に接続されている受光ファイバ束17のうち、第1受光ファイバ12fは、フォトダイオード32fに光を伝達する。第2受光ファイバ12gは、フォトダイオード32gに光を伝達する。
【0101】
受光ファイバ12f,12gが受光する光の強度を検出する検出部20は、LEDドライバ33とA/Dコンバータ34とを備える。LEDドライバ33はLED30に指示を送るものであり、A/Dコンバータ34はフォトダイオード32f,32gで検出された光量を信号化処理するものとなっている。図6では、LED30およびフォトダイオード32f,32gは検出部20の外にあるものとして示しているが、LED30およびフォトダイオード32f,32gのうち一部または全部は、検出部20の一部として設けられていてもよい。
【0102】
図11は、図6に示すエッチング装置に含まれる検査装置101の概念図である。図11に示す検査装置101は検出部20を備え、検出部20は、ファイバセンサアンプユニット21とマイクロコントローラ22とを含む。投光ファイバ11と、複数本の受光ファイバである受光ファイバ12f,12gとは、いずれもファイバセンサアンプユニット21に接続されている。ファイバセンサアンプユニット21は、マイクロコントローラ22に接続されている。
【0103】
コリメートレンズユニット10,10iは、投光ファイバ11から出射した光71が被検査面107aで正反射したときの光の進路の延長上に第1受光ファイバ12fが位置するように、配置されている。投光ファイバ11から出射した光71が被検査面107aで正反射した成分である反射光72は、受光ファイバ束17のうちの第1受光ファイバ12fに入射する。投光ファイバ11から出射した光71が被検査面107aで乱反射した成分である散乱光73の一部は、受光ファイバ束17のうちの第2受光ファイバ12gに入射する。光71、反射光72および散乱光73は、実際には一定の断面積を有する光束として進行しているが、図11では光束の中心線を矢印で表示している。
【0104】
図12は、反射光72が第1受光ファイバ12fに入射する状態に対応する説明図である。図12に示すように、投光ファイバ11から出射した光71が被検査面107aで正反射した反射光72は、コリメートレンズ14によって第1受光ファイバ12fの端面に集められ、第1受光ファイバ12fに入射している。第1受光ファイバ12fは、投光ファイバ11の光が照射される面が鏡面であり、照射面からほぼ平行光として光が反射されるときに、レンズによってほぼ平行光が集光される位置に端部が位置するように、設置される。一方、投光ファイバ11から出射した光71が被検査面107aで乱反射した散乱光73は、コリメートレンズ14によって第1受光ファイバ12fの端面以外にも到達する。このため、散乱光73が増加すると、第1受光ファイバ12fの周辺に位置する第2受光ファイバ12gに入射する光量が増加する。
【0105】
これにより、この検査装置101を使用することにより、投光ファイバ11から出射した光71のうち被検査面107aで正反射した成分を、第1受光ファイバ12fで受光することで、光71のうち被検査面107aで正反射した成分の強度を把握することができる。また、投光ファイバ11から出射した光71のうち被検査面107aで乱反射した成分を、第2受光ファイバ12gで受光することで、光71のうち被検査面107aで乱反射した成分の強度を把握することができる。そのため、本実施の形態の検査装置101では、基材107の被検査面107aの表面で正反射する成分の強度と、乱反射する成分の強度とを、1回の測定でそれぞれ別個に検出することができる。
【0106】
図13は、変形例のエッチング装置に含まれる検査装置102の概念図である。図13に示す検査装置102は、基材107の被検査面107aからの反射光を受光するための複数の受光ファイバ12を備える。複数の受光ファイバ12は投光ファイバ11を取り囲むように配置されている。
【0107】
投光ファイバ11と複数の受光ファイバ12とを合わせた光ファイバ束13は、投光ファイバ11から出射した光が被検査面107aで正反射したときの光の進路の延長上に複数の受光ファイバ12のいずれかが位置する第1状態と、被検査面107aに対して垂直な第2状態と、の少なくとも2通りをとりうるように構成されている。検査装置102では、単一のコリメートレンズユニット10によって、金型用の基材107の被検査面107aへの光の照射と、被検査面107aで反射した反射光の受光とを兼ねている。
【0108】
図14は、変形例の検査装置102の光ファイバ束13の端部の拡大図である。光ファイバ束13は、複数の光ファイバを備える。図14に示す光ファイバ束13では、1本の投光ファイバ11が光ファイバ束13の中央に位置しており、6本の受光ファイバ12が投光ファイバ11の周囲を取り囲むように配置されている。受光ファイバ12の本数は6本に限らず、他の本数であってもよい。たとえば、株式会社キーエンス製FU−35FZでは8本である。
【0109】
図13では、光ファイバ束13が被検査面107aに対して垂直となっていることから明らかなように、第2状態を示している。検査装置102は、光ファイバ束13の第1状態と第2状態とを切り替えるための、切替部16を備えている。切替部16は公知技術によって光ファイバ束13の向きを切り替えることができる。切替部16は、図13に示したようにコリメートレンズユニット10の向きを操作することによって光ファイバ束13の状態を切り替えるものであってもよく、光ファイバ束13に直接操作を加えるように接続されていてもよい。
【0110】
図15は、第1状態における光の進路を示す図である。図15に示すように、第1状態においては、光ファイバ束13は被検査面107aに対して垂直からわずかに傾いた姿勢となっている。そのため、投光ファイバ11から出射した光71のうち被検査面107aで正反射した成分は、反射光72となって複数の受光ファイバ12のいずれかに入射している。被検査面107aで正反射した反射光72は、コリメートレンズ14によって受光ファイバ12の端面に集められ、受光ファイバ12に入射している。
【0111】
図16は、第2状態における光の進路を示す図である。図16に示すように、第2状態においては、光ファイバ束13は被検査面107aに対して垂直となっているので、投光ファイバ11から出射した光71のうち被検査面107aで正反射した成分は、反射光72となって再び投光ファイバ11に入射している。第1状態、第2状態においても、光71が被検査面107aに入射した結果として、反射光72の他に、反射光72とは異なる角度で散乱光73が生じている。図16に示す第2状態においては、受光ファイバ12に入射するのは主に散乱光73である。被検査面107aで正反射した反射光72はコリメートレンズ14によって投光ファイバ11の端面に集められている。受光ファイバ12には反射光72の周辺を進んできた散乱光73が入射している。
【0112】
光71および反射光72は、実際には一定の断面積を有する光束として進行しているが、図15、図16では光束の中心線を矢印で表示している。各光束は一定の断面積を有しているので、反射光72が複数の受光ファイバ12のいずれかに入射する第1状態においても、反射光72のうち投光ファイバ11に入射する成分が全くないとは限らない。同様に、反射光72が投光ファイバ11に入射する第2状態においても、反射光72のうち複数の受光ファイバ12のいずれかに入射する成分が全くないとは限らない。
【0113】
図15、図16においては、説明の便宜のため、コリメートレンズ14による屈折を図示省略しているが、コリメートレンズ14によって反射光72が屈折することを考慮に入れても、屈折する角度は微小であるので、光ファイバ束13の傾きの違いによって上述のような2通りの状態の区別をすることができる。
【0114】
これにより、この検査装置102を使用することにより、第1状態と第2状態とでそれぞれ受光ファイバ12に入射する光の強度を検出することができる。すなわち、第1状態では、投光ファイバ11から出射した光71のうち被検査面107aで正反射した成分の強度を把握することができ、第2状態では、投光ファイバ11から出射した光71に起因する散乱光73の一部の成分の強度を把握することができる。そのため、検査装置102では、基材107の被検査面107aで正反射する成分の強度と、乱反射する成分の強度とを、それぞれ別個に検出することができる。
【0115】
以上説明した検査装置101,102では、投光ファイバ11において光71を外部へ出射するための開口部の径に比べて、受光ファイバ12,12f,12gにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっていることが好ましい。この構成を採用することにより、受光ファイバ12,12f,12gは所望の光の成分のみを受光しやすくなり、不所望の光の成分が混入して受光される確率を低くすることができる。また、この構成を採用することにより、受光ファイバ12,12f,12gに対して入射する光の量はわずかな角度の変化によって大きく変動することとなるので、光の強度の変化を敏感に検出することが可能となる。
【0116】
図17は、金型用の基材107の被処理面107aを検査する工程(工程S3)の前半部分の一例を示す流れ図である。図17に示すように、工程S11において、金型用の基材107の被検査面107aに向けて、投光ファイバ11から投光する。工程S12において、被検査面107aからの反射光72を受光ファイバ(受光ファイバ12、または、第1受光ファイバ12fおよび第2受光ファイバ12g)によって受光する。工程S13において、受光ファイバが受光する光の強度を検出部20によって検出する。工程S11〜S13は、工程S11が完了してから工程S12が行なわれるという意味ではなく、工程S11を行ないながら並行して工程S12が行なわれるものであってよい。工程S12と工程S13についても、工程S11と工程S13についても同様である。
【0117】
図18は、上述した検査装置101を用いて実施することができる、被処理面107aを検査する工程(工程S3)の前半部分の好ましい一例を示す流れ図である。図18に示す例においては、投光する工程S11では、被検査面107aに対して垂直でない方向に投光する。
【0118】
受光する工程S12では、中心に位置する第1受光ファイバ12fの周囲を複数の第2受光ファイバ12gが取り囲むように配置された受光ファイバ束17を用いて、投光ファイバ11から出射した光が被検査面107aで正反射したときの光の進路の延長上に第1受光ファイバ12fが位置するように受光ファイバ束17を配置して、被検査面107aからの反射光を受光する。
【0119】
検出する工程S13は、第1受光ファイバ12fで受光した光の強度M1を検出する工程S21と、第2受光ファイバ12gで受光した光の強度m1を検出する工程S22とを含む。工程S11,S12は図18のフローチャートの上では先後関係であるかのように表示しているが、実際には光の照射および受光であるので、ほぼ同時に行なわれるものであってよい。また、工程S11と工程S12とが行なわれる時間帯は、重複してもよい。
【0120】
これにより、金型用基材107の被検査面107aに光を照射したときの、正反射光を主成分とする光の強度に相当するM1と、散乱光を主成分とする光の強度に相当するm1とを得ることができる。こうして得られる光の強度M1,m1に基づけば、製品に得られるであろう光学特性を推定することができる。
【0121】
図19は、上述した検査装置102を用いて実施することができる、被処理面107aを検査する工程(工程S3)の前半部分の好ましい他の例を示す流れ図である。図19に示す例においては、投光する工程S11では、投光ファイバ11の周りを複数の受光ファイバ12で取り囲むように配置した光ファイバ束13を用いる。投光する工程S11は、投光ファイバ11から出射した光が被検査面107aで正反射したときの光の進路の延長上に複数の受光ファイバ12のいずれかが位置する第1状態となるように光ファイバ束13を配置して投光ファイバ11からの光の照射を行なう第1工程S31と、被検査面107aに対して垂直な第2状態となるように光ファイバ束13を配置して投光ファイバ11からの光の照射を行なう第2工程S32とを含む。
【0122】
受光する工程S12は、第1工程S31を行ないながら受光する第3工程S33と、第2工程S32を行ないながら受光する第4工程S34とを含む。
【0123】
検出する工程S13は、第3工程S33で受光した光の強度M1を検出する工程と、第4工程S34で受光した光の強度m1を検出する工程とを含む。第1状態で行なう第1工程S31と、第2状態で行なう第2工程S32とは、いずれを先に行なってもよい。工程S11,S12は図19のフローチャートの上では先後関係であるかのように表示しているが、実際には光の照射および受光であるので、ほぼ同時に行なわれるものであってよい。また、工程S11と工程S12とが行なわれる時間帯は、重複してもよい。
【0124】
これにより、金型用基材107の被検査面107aに光を照射したときの、正反射光を主成分とする光の強度に相当するM1と、散乱光を主成分とする光の強度に相当するm1とを得ることができる。こうして得られる光の強度M1,m1に基づけば、製品に得られるであろう光学特性を推定することができる。
【0125】
金型用の基材107の被処理面107aを検査する工程(工程S3)の後半部分では、強度M1および強度m1を用いて、m1/(M1+m1)を暫定ヘイズとして求めてもよい。このようにすれば、金型から製造される製品を用いて所定の方法で求めることができるパラメータである「ヘイズ(haze)」に近い意義を有するパラメータとして「暫定ヘイズ」を求めることができる。しかもこの暫定ヘイズは、実際に金型から製品を試作しなくても、金型用の基材107の被処理面107aの光学特性に基づいて求めることができるので、好都合である。
【0126】
金型用の基材107の被処理面107aを検査する工程(工程S3)の後半部分では、強度M1および強度m1を用いて、(M1−m1)/(M1+m1)を暫定反射像鮮明度として求めてもよい。このようにすれば、金型から製造される製品を用いて所定の方法で求めることができるパラメータである「反射像鮮明度」に比例することが期待されるパラメータとして「暫定反射像鮮明度」を求めることができる。しかもこの暫定反射像鮮明度は、実際に金型から製品を試作しなくても、金型用の基材107の被処理面107aの光学特性に基づいて求めることができるので、好都合である。
【0127】
「暫定ヘイズ」および「暫定反射像鮮明度」は、金型表面に形成された凹凸による光散乱の大きさを反映するパラメータである。すなわち、これらのパラメータは、エッチングにより形成された凹凸の情報を含んでいる。一方、これらのパラメータは、全反射光量に相当する(M1+m1)を分母に取り入れたことにより、エッチング液量による光吸収変動の影響を受けにくいことが期待される。
【0128】
以上のように、本発明は受光ファイバ12f,12g、または複数の受光ファイバ12を有することにより、被検査面107aの表面で正反射する成分の強度と、乱反射する成分の強度とを、それぞれ別個に推定することができる。この特徴により、本発明は、防眩処理用金型加工におけるエッチング終点管理に好ましく用いることができる。
【0129】
エッチング量を判断する工程(工程S4)では、上記のようにして得られた暫定ヘイズまたは暫定反射像鮮明度を使用して、金型用の基材107の被処理面107aの表面状態を分析し、被処理面107aの表面状態が所定の状態に到達したかを判断することにより、被処理面107aのエッチング量を判断する。異なる複数の基材107について、エッチング処理中の暫定ヘイズまたは暫定反射像鮮明度を求め、暫定ヘイズまたは暫定反射像鮮明度が所定値に到達したときにエッチングを停止するように、エッチング操作を行なうことができる。
【0130】
このようにすれば、異なる基材107の各々について、エッチング処理中の被処理面107aの表面状態を検査しながらエッチング操作を行なうことができるので、異なる基材107についてのエッチング量をほぼ等しくすることができる。したがって、金型用の基材107の被処理面107aのエッチング量を安定させることができ、被処理面107aを再現性よくエッチングすることができる。
【0131】
上述した本発明の金型の製造方法で得られた金型を用いた防眩フィルムの製造方法について説明する。防眩フィルムの製造方法は、本発明の金型の製造方法で製造された金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写する工程と、金型の凹凸面が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がす工程とを含む。このような本発明の防眩フィルムの製造方法によって、好ましい光学特性を示す防眩フィルムが好適に製造される。
【0132】
金型形状のフィルムへの転写は、エンボスにより行うことが好ましい。エンボスとしては、光硬化性樹脂を用いるUVエンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法が例示され、中でも、生産性の観点から、UVエンボス法が好ましい。
【0133】
UVエンボス法は、透明樹脂フィルムの表面に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が光硬化性樹脂層に転写される方法である。具体的には、透明樹脂フィルム上に紫外線硬化型樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化型樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で透明樹脂フィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、その後金型から、硬化後の紫外線硬化型樹脂層が形成された透明樹脂フィルムを剥離することにより、金型の形状を紫外線硬化型樹脂に転写する。
【0134】
UVエンボス法を用いる場合、透明樹脂フィルムとしては、実質的に光学的に透明なフィルムであればよく、たとえばトリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。
【0135】
またUVエンボス法を用いる場合における紫外線硬化型樹脂の種類は特に限定されないが、市販の適宜のものを用いることができる。また、紫外線硬化型樹脂に適宜選択された光開始剤を組み合わせて、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂を用いることも可能である。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能アクリレートをそれぞれ単独で、あるいはそれら2種以上を混合して用い、それと、イルガキュアー907(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー184(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)などの光重合開始剤とを混合したものを好適に用いることができる。
【0136】
一方、ホットエンボス法は、熱可塑性樹脂で形成された透明樹脂フィルムを加熱状態で金型に押し付け、金型の表面形状を透明樹脂フィルムに転写する方法である。ホットエンボス法に用いる透明樹脂フィルムとしては、実質的に透明なものであればいかなるものであってもよく、たとえば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどを用いることができる。これらの透明樹脂フィルムはまた、上で説明したUVエンボス法における紫外線硬化型樹脂を塗工するための基材フィルムとしても好適に用いることができる。
【0137】
上記の防眩フィルムの製造方法により得られる防眩フィルムなどの、防眩処理が施された透明基材は、その微細凹凸表面形状が精度よく制御されて形成される。そのため、十分な防眩性を発現し、かつ、白ちゃけが発生せず、画像表示装置の表面に配置した際にもギラツキが発生せず、高いコントラストを示すものとなる。
【実施例】
【0138】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0139】
エッチング液122として塩化第二銅(CuCl2)液を用い、エッチング液122をシャワーノズル121から吹き付けることにより、銅製の金型用基材107の被処理面107aのエッチング処理を行う装置を例に説明する。
【0140】
まず、投光ファイバ11として株式会社キーエンス製、型式F−3HAと、株式会社キーエンス製FU−35FZを接続し、耐薬品性を持たせるためにフッ素樹脂チューブに封入した上で、被処理面107aに光を投光できる反応槽120内の位置に設置する。なお、投光ファイバ11は、FU−35FZ先端の中心に開口部を有する光ファイバ束とする。
【0141】
この時、投光する光が当たる位置は、シャワーノズル121から吹き付けられたエッチング液122が直接かからない場所とする。
【0142】
次に、第1受光ファイバ12fおよび第2受光ファイバ12gとして、株式会社キーエンス製、型式F−3HAと、株式会社キーエンス製FU−35FZとを接続し、中心に開口部を有するファイバ束を第1受光ファイバ12fとし、周辺部に開口を有するファイバ束を第2受光ファイバ12gとする。第1受光ファイバ12fおよび第2受光ファイバ12gも同様に、耐薬品性を持たせるためにフッ素チューブに封入した上で、反応槽120内の、投光ファイバ11により投射された光が被処理面107aに反射した反射光を受光できる位置に設置する。このとき、F−3HAと被処理面107aとの距離が約20mmになるようにする。
【0143】
光源としては、Philips Lumileds Lighting Company製の発光ダイオードLXHL−LE3Cを用い、エドモンド・オプティクス・ジャパン株式会社から販売されている商品コード43987−K (非球面コンデンサレンズ Outer Diameter =27mm Effective Focal Length =13mm)2枚を用い、投光ファイバ11に光を導入する。
【0144】
次に、感光性樹脂膜が現像されたマスク112が付着している基材107をエッチング装置内に導入し、被処理面107aにエッチング液122を吹き付ける。この際、投光ファイバ11から光を投射し、第1受光ファイバ12fおよび第2受光ファイバ12gにより伝えられる光の強度をOsram Opto Semiconductors Inc製フォトダイオードSFH−213により検出する。
【0145】
第1受光ファイバ12fにより検出部20伝えられる光の強度をM1、第2受光ファイバ12gにより検出部20に伝えられる光の強度をm1とし、m1/(M1+m1)の値が所定値になった時、被処理面107aへのエッチング液122の吹き付けを停止し、水により被処理面107aからエッチング液122を洗い流す。
【0146】
以上の操作によって、光学特性の再現性に優れたエッチング処理を実現することが出来る。
【符号の説明】
【0147】
10,10i コリメートレンズユニット、11 投光ファイバ、12,12f,12g 受光ファイバ、13 光ファイバ束、14 コリメートレンズ、15 筐体、16 切替部、17 受光ファイバ束、20 検出部、71 光、72 反射光、73 散乱光、101,102 検査装置、107 基材、107a 被処理面、120 反応槽、121 シャワーノズル、122 エッチング液。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型用の基材をエッチングするエッチング装置であって、
前記基材の被処理面とエッチング液とを接触させる反応槽と、
前記被処理面に向けて投光する投光ファイバと、
前記被処理面からの反射光を受光する受光ファイバと、
前記受光ファイバが受光する光の強度を検出する検出部とを備える、エッチング装置。
【請求項2】
前記被処理面からの反射光を受光する複数の受光ファイバを備え、前記複数の受光ファイバは前記投光ファイバを取り囲むように配置されている、請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記被処理面からの反射光を受光する複数の受光ファイバによる受光ファイバ束を備え、前記受光ファイバ束は、中心に位置する第1受光ファイバと、前記第1受光ファイバの周囲を取り囲む複数の第2受光ファイバとを含み、
前記投光ファイバから出射した光が前記被処理面で正反射したときの光の進路の延長上に前記第1受光ファイバが位置するように、前記受光ファイバ束が配置されている、請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項4】
前記投光ファイバにおいて光を外部へ出射するための開口部の径に比べて、前記受光ファイバにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっている、請求項1から請求項3のいずれかに記載のエッチング装置。
【請求項5】
前記被処理面に向けて投光される光は、490nm以上510nm以下のピーク波長を有する、請求項1から請求項4のいずれかに記載のエッチング装置。
【請求項6】
表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型の製造方法であって、
被処理面を有する前記金型用の基材を準備する工程と、
前記基材の前記被処理面をエッチングする工程を備え、
前記エッチングする工程は、前記被処理面に向けて投光ファイバから投光する工程と、
前記被処理面からの反射光を受光ファイバで受光する工程と、
前記受光ファイバが受光する光の強度を検出する工程と、
前記光の強度の変化に基づいて、エッチング処理を終了するか否かを判断する工程と、を含む、金型の製造方法。
【請求項7】
前記投光する工程は、前記投光ファイバの周りを複数の受光ファイバで取り囲むように配置した光ファイバ束を用い、
前記投光する工程は、
前記投光ファイバから出射した光が前記被処理面で正反射したときの光の進路の延長上に前記複数の受光ファイバのいずれかが位置する第1状態となるように前記光ファイバ束を配置して前記投光ファイバからの光の照射を行なう第1工程と、
前記被処理面に対して垂直な第2状態となるように前記光ファイバ束を配置して前記投光ファイバからの光の照射を行なう第2工程とを含み、
前記受光する工程は、前記第1工程を行ないながら受光する第3工程と、前記第2工程を行ないながら受光する第4工程とを含み、
前記検出する工程は、前記第3工程で受光した光の強度M1を検出する工程と、前記第4工程で受光した光の強度m1を検出する工程とを含む、請求項6に記載の金型の製造方法。
【請求項8】
前記投光する工程は、前記被処理面に対して垂直でない方向に投光し、
前記受光する工程は、中心に位置する第1受光ファイバの周囲を複数の第2受光ファイバが取り囲むように配置された受光ファイバ束を用いて、前記投光ファイバから出射した光が前記被処理面で正反射したときの光の進路の延長上に前記第1受光ファイバが位置するように前記受光ファイバ束を配置して前記被処理面からの反射光を受光し、
前記検出する工程は、前記第1受光ファイバで受光した光の強度M1を検出する工程と、前記第2受光ファイバで受光した光の強度m1を検出する工程とを含む、請求項6に記載の金型の製造方法。
【請求項9】
前記強度M1および前記強度m1を用いて、m1/(M1+m1)を暫定ヘイズとして求める工程をさらに含む、請求項7または請求項8に記載の金型の製造方法。
【請求項10】
前記強度M1および前記強度m1を用いて、(M1−m1)/(M1+m1)を暫定反射像鮮明度として求める工程をさらに含む、請求項7または請求項8に記載の金型の製造方法。
【請求項11】
前記投光ファイバにおいて光を外部へ出射するための開口部の径に比べて、前記受光ファイバにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっている、請求項6から請求項10のいずれかに記載の金型の製造方法。
【請求項12】
前記被処理面に向けて投光される光は、490nm以上510nm以下のピーク波長を有する、請求項6から請求項11のいずれかに記載の金型の製造方法。
【請求項1】
表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型用の基材をエッチングするエッチング装置であって、
前記基材の被処理面とエッチング液とを接触させる反応槽と、
前記被処理面に向けて投光する投光ファイバと、
前記被処理面からの反射光を受光する受光ファイバと、
前記受光ファイバが受光する光の強度を検出する検出部とを備える、エッチング装置。
【請求項2】
前記被処理面からの反射光を受光する複数の受光ファイバを備え、前記複数の受光ファイバは前記投光ファイバを取り囲むように配置されている、請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記被処理面からの反射光を受光する複数の受光ファイバによる受光ファイバ束を備え、前記受光ファイバ束は、中心に位置する第1受光ファイバと、前記第1受光ファイバの周囲を取り囲む複数の第2受光ファイバとを含み、
前記投光ファイバから出射した光が前記被処理面で正反射したときの光の進路の延長上に前記第1受光ファイバが位置するように、前記受光ファイバ束が配置されている、請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項4】
前記投光ファイバにおいて光を外部へ出射するための開口部の径に比べて、前記受光ファイバにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっている、請求項1から請求項3のいずれかに記載のエッチング装置。
【請求項5】
前記被処理面に向けて投光される光は、490nm以上510nm以下のピーク波長を有する、請求項1から請求項4のいずれかに記載のエッチング装置。
【請求項6】
表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形する金型の製造方法であって、
被処理面を有する前記金型用の基材を準備する工程と、
前記基材の前記被処理面をエッチングする工程を備え、
前記エッチングする工程は、前記被処理面に向けて投光ファイバから投光する工程と、
前記被処理面からの反射光を受光ファイバで受光する工程と、
前記受光ファイバが受光する光の強度を検出する工程と、
前記光の強度の変化に基づいて、エッチング処理を終了するか否かを判断する工程と、を含む、金型の製造方法。
【請求項7】
前記投光する工程は、前記投光ファイバの周りを複数の受光ファイバで取り囲むように配置した光ファイバ束を用い、
前記投光する工程は、
前記投光ファイバから出射した光が前記被処理面で正反射したときの光の進路の延長上に前記複数の受光ファイバのいずれかが位置する第1状態となるように前記光ファイバ束を配置して前記投光ファイバからの光の照射を行なう第1工程と、
前記被処理面に対して垂直な第2状態となるように前記光ファイバ束を配置して前記投光ファイバからの光の照射を行なう第2工程とを含み、
前記受光する工程は、前記第1工程を行ないながら受光する第3工程と、前記第2工程を行ないながら受光する第4工程とを含み、
前記検出する工程は、前記第3工程で受光した光の強度M1を検出する工程と、前記第4工程で受光した光の強度m1を検出する工程とを含む、請求項6に記載の金型の製造方法。
【請求項8】
前記投光する工程は、前記被処理面に対して垂直でない方向に投光し、
前記受光する工程は、中心に位置する第1受光ファイバの周囲を複数の第2受光ファイバが取り囲むように配置された受光ファイバ束を用いて、前記投光ファイバから出射した光が前記被処理面で正反射したときの光の進路の延長上に前記第1受光ファイバが位置するように前記受光ファイバ束を配置して前記被処理面からの反射光を受光し、
前記検出する工程は、前記第1受光ファイバで受光した光の強度M1を検出する工程と、前記第2受光ファイバで受光した光の強度m1を検出する工程とを含む、請求項6に記載の金型の製造方法。
【請求項9】
前記強度M1および前記強度m1を用いて、m1/(M1+m1)を暫定ヘイズとして求める工程をさらに含む、請求項7または請求項8に記載の金型の製造方法。
【請求項10】
前記強度M1および前記強度m1を用いて、(M1−m1)/(M1+m1)を暫定反射像鮮明度として求める工程をさらに含む、請求項7または請求項8に記載の金型の製造方法。
【請求項11】
前記投光ファイバにおいて光を外部へ出射するための開口部の径に比べて、前記受光ファイバにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっている、請求項6から請求項10のいずれかに記載の金型の製造方法。
【請求項12】
前記被処理面に向けて投光される光は、490nm以上510nm以下のピーク波長を有する、請求項6から請求項11のいずれかに記載の金型の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−214052(P2011−214052A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82222(P2010−82222)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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