説明

エナンチオマーの分離用組成物及び方法

サンプル中に存在するエナンチオマー分子を分離するために使用されるキラル移動相を含む液体クロマトグラフィーシステムが、本明細書に開示されている。一つの側面において、移動相にはキラル溶媒が含まれる。他の側面において、移動相には、キラル溶媒が含まれるが、緩衝剤も含まれる。本明細書に記載された液体クロマトグラフィーシステムには、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)及び高圧毛細管液体クロマトグラフィー(CapLC)の両方が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エナンチオマーの分離に関する。更に詳細に、本発明は、エナンチオマーの分離を達成するキラル移動相を使用する組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エナンチオマーの分離は、分析化学の実務者によって取り組まれる一層困難な仕事の一つであると考えられる。キラル分離は、ラセミ混合物中の2種の成分の間の極端な類似性のために、精製の最も厄介な種類の一つである。それぞれの成分は、他方の鏡像である。これらのキラル成分は、非キラル環境において同一の物理的性質を示す。この結果、一般的な分離技術、例えば、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー及び毛細管電気泳動は、キラル環境を与えるように修正されてきた。
【0003】
キラル環境を与えるための異なったアプローチが試みられた。キラル固定相が開発された。これらは、分析物(analyte)と相互作用するキラル官能基を有するクロマトグラフィーカラムである。キラル選択性を有する移動相を作るために、添加物を移動相に添加することができる。時には、これらのキラル固定相は、混合された結果を有するキラル移動相と結びつけて使用される。このようなアプローチでの一つの問題点は、カラムの不安定性である。更に、商業的添加物は、特に分析的規模で、コストが非常に高いであろう。
【0004】
キラル分離は、種々の技術を使用して達成されてきた。過去30年間にわたって、研究者らは、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、ゲル電気泳動、濾紙電気泳動及び毛細管電気泳動(CE)を使用して、キラル分離が可能であることを示してきた。これらの分離は、分離システムの一部であるキラル相と差別的に相互作用する、サンプルのエナンチオマーの能力に基づいている。
【0005】
キラル相は、種々の方法で具体化することができる。クロマトグラフィーにおいて、キラル相は、一般的に、固定相又はカラムの一部である。GC及びLCの両方において、広範囲の種々のキラルカラムが利用可能である。固定相によるエナンチオマーの吸着は、アキラル相互作用及びキラル相互作用の両方の合計である。アキラル相互作用には、イオン吸着、水素結合吸着及び疎水性吸着が含まれるであろう。キラル相互作用は、アキラル相互作用の空間的関係から誘導される。このキラル相互作用によって寄与されるエネルギー差が、キラル分離のための基礎である。
【0006】
キラルクロマトグラフィーシステムの現在世代の効率は一般的に低く、したがって、キラル改質剤とエナンチオマーとの間の相互作用の自由エネルギーにおける差は、適切な分離度を得るために相対的に大きくなくてはならない。この大きいエネルギー差必要条件は、多くのキラルHPLCシステム(5000から10000段)の低い効率及び多くのキラルカラムで観察されるテーリングピークの原因になる。この大きいエネルギー差必要条件は、また、キラルHPLCカラムを一般的に使用することを妨げる。現在、キラルHPLCカラムは、小さい種類の化合物について選択的であり、これで50以上のキラル相が商品化されている。この環境において、方法開発は非常に経験的であり、非常に面倒である。より大きい種類のエナンチオマーを分離するシステムを創出するための又はより容易な方法開発を提供するための要求が存在している。
【0007】
現在、エナンチオマーの分離を効率的に容易化することができる、費用効率的キラル移動相を開発するための要求が存在している。最適には、これらの移動相には、キラル溶媒であって、単なる添加物ではないものが含まれる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エナンチオマーの分離に関する。更に詳細に、本発明は、エナンチオマーの分離を達成するキラル移動相を使用する組成物及び方法に関する。
【0009】
本発明にしたがって、固定相及びキラル移動相を含む分離システムが、エナンチオマー混合物中に含有されている分析物を分離するために使用される。この実施態様において、固定相は一般的なクロマトグラフィーカラムであってよい。この実施態様において、キラル移動相にはキラル溶媒が含まれる。一つの側面において、キラル移動相には、また、緩衝剤が含まれている。一つの側面において、分離システムは、液体クロマトグラフィーシステムである。本発明の液体クロマトグラフィーシステムには、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)及び高圧毛細管液体クロマトグラフィー(CapLC)の両方が含まれる。
【0010】
本発明にしたがって、分離システム及びキラル移動相を含む方法が、エナンチオマーサンプル中に存在する分析物を分離するために使用される。この実施態様において、分離システムは液体クロマトグラフィーシステムであってよい。このシステムには、HPLC及びCapLCの両方が含まれる。この方法には、固定相と一緒にキラル移動相を使用することが含まれる。固定相は、一般的なクロマトグラフィーカラムであってよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、エナンチオマーの分離に関する。更に詳細に、本発明は、エナンチオマーの分離を達成するキラル移動相を使用する組成物及び方法に関する。
【0012】
本発明の一つの実施態様において、固定相及びキラル移動相を含む分離システムが、エナンチオマー混合物中に含有されている分析物を分離するために使用される。この実施態様において、固定相は一般的なクロマトグラフィーカラムであってよい。この実施態様において、キラル移動相にはキラル溶媒が含まれる。一つの側面において、キラル移動相には、また、緩衝剤が含まれている。一つの側面において、分離システムは、液体クロマトグラフィーシステムである。本発明の液体クロマトグラフィーシステムには、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、極端に又は非常に高い圧力HPLC(>5000psiで50,000psiまで及びこれを超える)及び高圧毛細管液体クロマトグラフィー(CapLC)の両方が含まれる。
【0013】
本発明の他の実施態様において、分離システム及びキラル移動相を含む方法が、エナンチオマーサンプル中に存在する分析物を分離するために使用される。この実施態様において、分離システムは液体クロマトグラフィーシステムであってよい。このシステムには、HPLC及びCapLCの両方が含まれる。この方法には、固定相と一緒にキラル移動相を使用することが含まれる。固定相は、一般的なクロマトグラフィーカラムであってよい。
【0014】
キラル分離のために、分離技術、特に液体クロマトグラフィーを使用するとき、典型的に、固定相(又はカラム)はキラル選択性を有する。しかしながら、キラル選択性は、固定相の独占的領域ではない。添加物又は改質剤を添加することによって、移動相がキラル選択性を有することができる。Mazzeoらに付与された米国特許第6,090,250号明細書(この全教示が、参照により本明細書に組み込まれる)参照。
【0015】
本発明は、キラル選択性を有する移動相に関する。一つの側面において、移動相にはキラル溶媒が含まれる。これは、これに添加されたキラル添加物を有することによって、これらのキラル選択性を得る従来のキラル移動相とは顕著に異なる。本発明において、移動相自体がキラル選択性を有する。この移動相は、pHを維持するために、これに添加された1種又は2種以上の緩衝剤を有していてよい。
【0016】
キラル添加物を使用することとは反対に、キラル移動相を使用することの幾つかの利点が存在する。例えば、キラル移動相を使用することによって、関心のある分析物を検出する際に感度がもたらされる。低いノイズ対信号比は、検出のためのより大きい感度を促進する。また、典型的に、キラル移動相を使用することに付随する、より低い粘度が存在し、したがって、より速い流量、より高い処理量、より良い効率、より高いピーク容量及び分離度が可能である。更に、キラル移動相の使用には、単一分離機構が含まれ、添加物を使用することと比較したとき相互作用が1つ少なく、より良い分離度及びピーク効率になる。また、両方のエナンチオマーは、ピーク順序逆転に応じられ、これはキラル添加物を使用するとき、常にはそうであるとは限らない。
【0017】
本発明のキラル移動相は、一般式:
【0018】
【化3】

[式中、RからRは、全て異なっていて、キラル中心を与える、即ち、Cは、非対称炭素であり、これらのR基群は、C炭素が、唯一のキラル中心のままであるという制限付きで、全ての他の化学的部分の組合せであってよく、R基群の例には、これらに限定されないが、水素、アルカン、アルケン、アルキル基例えばC−C24以上、アリール、アリールアルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、エステル、エーテル、アルコール、飽和及び/又は不飽和炭化水素、枝分かれした及び/又は枝分かれしていない炭化水素、アミン、アミジン、アミド、ケトン、アセトン、ジエン、カルボキシル、スルフヒドラール(sulfhydral)、スルファート、スルホナート、硫黄、エノールなど並びにこれらの組合せが含まれる]
を有するキラル分子に係る。
【0019】
全てのキラル化合物は少なくとも1個のキラル中心を有していなくてはならない。キラル分子は、偏光の面を回転するものである。キラル分子は、この鏡像の上に重ね合わせることができないとして定義される。本発明についての一つの重要な側面は、「R」移動相又は「S」移動相を選択することによって、キラル分析物の溶離順序を操作できることである。「R」及び「S」用語は、単純に、特別の分子立体配置が、光をそれぞれ右又は左に回転するかどうかを指す。好ましくは、キラル移動相は、約70%から約100%の「R」又は「S」を含む。更に好ましくは、キラル移動相は、約85%から約100%の「R」又は「S」を含む。なお更に好ましくは、キラル移動相は、約90%から約100%の「R」又は「S」を含む。最も好ましくは、キラル移動相は、約95%から約100%の「R」又は「S」を含む。
【0020】
キラル移動相の例には、これらに限定されないが、2−ブタノール、2−ブチルアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、1,2−プロパンジオール、炭酸プロピレン、1,2−ジアミノプロパン二塩酸塩、1−メチル−2−ピロリドン、メチル−2−ピロリドン−5−カルボキシラート、1,2−ジクロロプロパン、2−ブロモプロピオン酸、2−ブロモプロピオニトリル、2−クロロプロピオン酸、2−クロロプロピオニトリル、エピクロロヒドリン、3−クロロ−2−メチルプロピオニトリル、1−ブロモ−3−クロロ−2−メチルプロパン、プロピレンオキシド、1,2−プロパンジオールジアセタート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールアセタート、1,2−ジアミノプロパン、3−アミノピロリジン、4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、1−クロロ−2−プロパノール、2−クロロ−1−プロパノール、メチル−2,3−ジクロロプロピオナート、2−ブタノール、1,2,4−ブタントリオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、3−クロロ−2−ブタノン、4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、1−クロロ−2−メチルブタン、メチル−2−クロロプロピオナート及び3−ヒドロキシピロリジン並びにこれらの組合せが含まれる。
【0021】
キラル試薬に加えて、本発明のキラル移動相には、また、緩衝剤が含まれてよい。緩衝塩は移動相のキラル選択性に寄与するのではなくて、これは移動相のための緩衝能を与える。したがって、本発明のキラル移動相は、キラル選択性を有するのみならず、この緩衝能によってpHを維持することができる。
【0022】
本発明は、キラル分離のために、どの液体クロマトグラフィーカラムを使用するかを選択する際の融通性を増加させる。移動相自体がキラル選択性を有するので、カラムの選択は、キラルカラムを越えて広がる。したがって、実務者は、通常、非キラル分離に関係するカラム、例えば、C18逆相カラムを使用することができる。
【0023】
クロマトグラフィー分離及び分析は、毛細管カラムを使用する周辺の領域で発達してきている。このようなカラムは、典型的には、30から800ミクロンの内径の範囲内の直径を有する。これらのカラムには、微粒子充填材料を充填することができるか又は最小直径範囲内で、カラム壁自体により若しくはこの壁に適用された皮膜により、固定相を設けることができる。このような微粒子充填毛細管カラムのための移動相流量は、典型的に、約1ナノリットル/分から10マイクロリットル/分以上の範囲であってよい。これらの形状は、例えば、広く市販されている4ミリメートル内径カラムで現在実施されているものから、流量における3から6桁の減少及びこの結果、分離の体積における同様の減少を表す。
【0024】
毛細管カラムの周りに設計されたHPLCシステムは、HPLC分離を、大量のHPLC移動相を容易に許容しない下流工程と結合させるとき又は格別に高価な移動相の使用が望まれる場合、特別の有用性を有する。このような工程の例は、(1)エナンチオマーのキラル分離、(2)赤外分光法(ここでHPLCのために使用される有機溶媒は、これらは電磁スペクトルの赤外領域において分析物検出に対する妨害を表すので、除去しなくてはならない)、(3)ミクロ画分収集(これは、分析物が、HPLC移動相からの最少付随バックグラウンド汚染を有する収集基体上に、最小体積で堆積されることを必要とする)、(4)核磁気共鳴分光法(NMR)(これは、幾らかエキゾチック(exotic)な移動相、例えば、プロトンNMRの場合に重水素置換移動相の使用による、顕著なシグナルバックグラウンド減少から利益を得るであろう)及び(5)質量分析法(これは、サンプルが、質量分析の前に、高真空条件で気相中に滞留することを必要とする)である。
【0025】
実質的に、大規模クロマトグラフィーについてと同じ、溶媒組成及び流量付与(delivery)の精度及び正確さについての必要条件が存在するが、付与を制御するための機構は、従来の体積規模の約千分の一以下で機能しなくてはならない。特に、より大きい体積規模で無視され得る、ある種の実施の理想的でない性質は、毛細管HPLCの規模のシステムに、圧倒的に大きい摂動を起こす。
【0026】
下記のような充填粒子で充填された床を通して液体を駆動するために必要とされる、付随する高い移動相圧力をともなう、極めて小さい直径、即ち、3ミクロンよりも小さい直径の充填材料を使用するHPLC分離を実施するための能力についての関心が増した。HPLCの増強された分離特性が示され、特に、分離の絶対ピーク容量又は単位時間当たりの溶離されたピークで表されるような分離の処理量は、小さい充填粒子及び高いシステム圧力の正しい使用により、実質的に改良することができる。1ミクロン直径のように小さい粒子及び10,000から100,000PSIGの範囲内のシステム圧力の有用性が示された。
【0027】
このような小さい直径のカラム(30から75ミクロンの内径)を使用する際に、移動相流量が、典型的には、5から200ナノリットル/分の範囲内であるならば、分離の実際の体積は非常に小さくなる。勾配形成は、移動相の個々の成分が、全システム流量の0.1%のように低いレベルで付与されるべきであることを必要とする。更に、高圧勾配形成ポンプは、摂動無しに、全システム運転圧力に対して、一応再現可能である方式で、成分流を付与しなくてはならない。上記の分析必要条件は、100,000PSIGのように高い圧力に対して、10ピコリットル/分のように小さい成分流量を定量的に付与するための能力を意味する。
【0028】
本発明は、また、サンプル内に含有されている分析物を分離するための方法を提供する。一つの側面において、サンプルの分析物には、1種又は2種以上のエナンチオマー分子が含まれている。本発明の方法には、本発明のキラル移動相を含む水性相が含まれる。この水性相には、また、水性相のpH制御を与えるために緩衝剤が含有されていてよい。
【0029】
典型的に、サンプルを、有機溶媒、例えば、メタノール又はアセトニトリルと混合する。次いで、この混合物を、分離のための手段の中に導入する。分離のための手段には、これらに限定されないが、液体クロマトグラフィー、毛細管液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどが含まれる。
【0030】
分離のための手段は、本発明のキラル移動相を使用して平衡化される。分析物が分離手段の中に導入されたとき、これらは、分離システムを移動する移動相との混合物を形成するであろう。
【0031】
分離のための手段には、典型的には、多分クロマトグラフィーカラムの形での固定相が含まれる。カラムは、通常、官能性化学基から作られた固定相を含む内部チャンバーを有する。例えば、これらの官能基は、C18カラムにおけるように疎水性環境を与えるアルキル基であってよい。全ての分子は疎水性プロフィールを有する。典型的には、より高い疎水性プロフィールを有する分子は、順に、固定相の疎水性官能性のための、より高い親和性を有するであろう。次いで、これは、分析物の溶離順序に寄与する。しかしながら、関心の分析物がエナンチオマーである場合、これらの溶離プロフィールは、また、移動相のキラル選択性に依存性である。
【0032】
分析物が固定相から溶離するとき、溶離した分析物を確認するために、1個又は2個以上の検出システムを使用することができる。これらの検出システムには、これらに限定されないが、質量分析法、核磁気共鳴、紫外、屈折率、赤外分光法、蛍光、ホトダイオードアレー、蒸発性光散乱、コンダクタンス及び窒素/硫黄特異検出器が含まれる。
【0033】
一つの側面において、分析物の溶離順序は、移動相を操作することによって変えることができる。一つの側面において、エナンチオマー分析物の溶離順序は、移動相の選択性を変えることによって変えることができる。例えば、約95%の「R」を含む移動相を、約95%の「S」を含むように切り替え、これによってキラル移動相の選択性を変えることができる。移動相組成を操作することにより溶離順序を切り替えるための能力は、全ての微量のエナンチオマー性不純物が、反対のエナンチオマーのしばしばテーリングした、より大きいピークの前に溶離し、これを検出でき、一層正確に定量できるようにすることが望ましいので、重要である。反対に、フロンティングしたピークの場合に、微量のエナンチオマーが最後に溶離することが望ましい。利用可能な「R」移動相及び「S」移動相の両方を有することによって、移動相を、望ましい溶離順序のために「チューニング」することができる。
【0034】
本発明には、アイソクラチック方法及び勾配方法の両方が含まれる。アイソクラチック方法において、平衡化移動相及び溶離移動相は同じものであり、分離の全工程を通して一定なままである。勾配プロフィールを含む分離方法では、2種又は3種以上の移動相が使用される。例えば、メタノールのような溶媒中に含有されているサンプルを、分離のための手段の中に時間の経過につれて導入することができ、本発明のキラル移動相を時間の経過につれて導入し、増加させることができ、これによって水性相内のキラル移動相の存在を増加させることができる。また、単一の分離手順の間に、アイソクラチック溶離プロフィールと勾配溶離プロフィールとの組合せが存在してよい。水性相プロフィール(即ち、アイソクラチック、勾配又はこれらの組合せ)の最適化は、当業者によって容易に達成することができる。
実施例
図1は、本発明のキラル移動を使用するエナンチオマー分子、(d,l)プソイドエフェドリン(pseudoephedrine)及び(d,l)エフェドリンの分離から得られたクロマトグラムを示す。この分離のために使用したカラムは、3.5μm、0.32mm×150mmエックステラ(Xterra)RP18(逆相C18カラム)であった。流量を5.0μL/分に設定した。カラム温度を25℃に設定した。注入したサンプル体積は、1.0μL(20ng)であった。2種の溶媒を使用した。溶離剤Aには、5%のTHFを有する25mMのs−ドデシルカルボニルバリン(s−DDCV)(pH7.0)が含まれ、溶離剤Bは、5%のTHFを有する25mM s−DDCV(pH11.0)であった。初期条件が15%溶離剤Bであり、30分間経過して溶離剤Bが85%である、勾配方法を使用した。
【0035】
図1において、2種のエナンチオマー対の分離が、キラル移動溶媒を使用して明瞭に識別可能である。
【0036】
本発明を、特定の実施態様を参照して、具体的に示し、説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明において形式及び詳細における種々の変更を行うことができることが、当業者によって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の組成物を使用する、エナンチオマー、即ち(D,L)プソイドエフェドリン及び(D,L)エフェドリンの分離を示すクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中に含有されている1種又は2種以上の分析物を単離するための液体クロマトグラフィー試薬であって、前記サンプルを受け入れ、前記分析物の溶液を形成するための水性相を含み、前記水性相が、式:
【化1】

[式中、RからRは全て異なっており、個々のR基は、水素、アルカン、アルケン、アルキル基例えばC−C24以上、アリール、アリールアルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、エステル、エーテル、アルコール、飽和及び/又は不飽和炭化水素、枝分かれした及び/又は枝分かれしていない炭化水素、アミン、アミジン、アミド、ケトン、アセトン、ジエン、カルボキシル、スルフヒドラール、スルファート、スルホナート、硫黄、エノール並びにこれらの組合せからなる群から選択される]
を有するキラル移動相である試薬。
【請求項2】
前記サンプルが2種又は3種以上のエナンチオマー分析物を有する、請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
緩衝剤を更に含有する、請求項1に記載の試薬。
【請求項4】
前記キラル移動相が、2−ブタノール、2−ブチルアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、1,2−プロパンジオール、炭酸プロピレン、1,2−ジアミノプロパン二塩酸塩、1−メチル−2−ピロリドン、メチル−2−ピロリドン−5−カルボキシラート、1,2−ジクロロプロパン、2−ブロモプロピオン酸、2−ブロモプロピオニトリル、2−クロロプロピオン酸、2−クロロプロピオニトリル、エピクロロヒドリン、3−クロロ−2−メチルプロピオニトリル、1−ブロモ−3−クロロ−2−メチルプロパン、プロピレンオキシド、1,2−プロパンジオールジアセタート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールアセタート、1,2−ジアミノプロパン、3−アミノピロリジン、4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、1−クロロ−2−プロパノール、2−クロロ−1−プロパノール、メチル−2,3−ジクロロプロピオナート、2−ブタノール、1,2,4−ブタントリオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、3−クロロ−2−ブタノン、4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、1−クロロ−2−メチルブタン、メチル−2−クロロプロピオナート及び3−ヒドロキシピロリジンからなる群から選択される、請求項1に記載の試薬。
【請求項5】
前記キラル移動相に、約70%から約100%の「R」エナンチオマー又は「S」エナンチオマーが含まれる、請求項1に記載の試薬。
【請求項6】
前記キラル移動相に、約85%から約100%の「R」エナンチオマー又は「S」エナンチオマーが含まれる、請求項1に記載の試薬。
【請求項7】
前記キラル移動相に、約90%から約100%の「R」エナンチオマー又は「S」エナンチオマーが含まれる、請求項1に記載の試薬。
【請求項8】
前記キラル移動相に、約95%から約100%の「R」エナンチオマー又は「S」エナンチオマーが含まれる、請求項1に記載の試薬。
【請求項9】
サンプル中に含有されている分析物の分離方法であって、前記サンプルが1種又は2種以上のエナンチオマー分析物を有し、
式:
【化2】

[式中、RからRは全て異なっており、個々のR基は、水素、アルカン、アルケン、アルキル基例えばC−C24以上、アリール、アリールアルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、エステル、エーテル、アルコール、飽和及び/又は不飽和炭化水素、枝分かれした及び/又は枝分かれしていない炭化水素、アミン、アミジン、アミド、ケトン、アセトン、ジエン、カルボキシル、スルフヒドラール、スルファート、スルホナート、硫黄、エノール並びにこれらの組合せからなる群から選択される]
を有するキラル移動相を有する試薬を用意する工程、
前記サンプルを分離のための手段の中に導入する工程及び
前記サンプルを前記キラル移動相と接触させて、混合物にする工程
を含む方法。
【請求項10】
1種又は2種以上の関心のある分析物を検出する工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記検出を、質量分析法、核磁気共鳴、紫外、屈折率、赤外分光法、蛍光、ホトダイオードアレー、蒸発性光散乱、コンダクタンス及び窒素/硫黄特異検出器を使用して達成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記キラル移動相が、2−ブタノール、2−ブチルアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、1,2−プロパンジオール、炭酸プロピレン、1,2−ジアミノプロパン二塩酸塩、1−メチル−2−ピロリドン、メチル−2−ピロリドン−5−カルボキシラート、1,2−ジクロロプロパン、2−ブロモプロピオン酸、2−ブロモプロピオニトリル、2−クロロプロピオン酸、2−クロロプロピオニトリル、エピクロロヒドリン、3−クロロ−2−メチルプロピオニトリル、1−ブロモ−3−クロロ−2−メチルプロパン、プロピレンオキシド、1,2−プロパンジオールジアセタート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールアセタート、1,2−ジアミノプロパン、3−アミノピロリジン、4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル、1−クロロ−2−プロパノール、2−クロロ−1−プロパノール、メチル−2,3−ジクロロプロピオナート、2−ブタノール、1,2,4−ブタントリオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、3−クロロ−2−ブタノン、4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、1−クロロ−2−メチルブタン、メチル−2−クロロプロピオナート及び3−ヒドロキシピロリジンからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記分析物溶離順序を、前記キラル移動相を操作することによって逆転させる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記水性相に、緩衝剤が更に含有されている、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記分離のための手段が、液体クロマトグラフィー及び毛細管液体クロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記分析物を分離するために、アイソクラチック溶離方法を使用する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記分析物を分離するために、勾配溶離方法を使用する、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−532880(P2007−532880A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507444(P2007−507444)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/011526
【国際公開番号】WO2005/099855
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)
【Fターム(参考)】