エネルギー消散ワイヤケーブルを有するシートベルトプリテンショナ
シートベルトプリテンショナは、湾曲したケーブルガイド(82)と、ケーブルガイド(82)の周りに位置しケーブルガイド(82)に対して移動可能である可とう性で金属製のケーブル(200)を有する。ケーブル(200)の一方の端部は、ケーブルを移動させるピストン、または静止した固定部材に連結され、ケーブルの反対側の端部はシートベルトバックルに連結されている。ケーブルの一部(200a)が、ケーブルの剛性を高める材料(204)によって被覆されている。ケーブル(200)は、ケーブルガイド(82)内に引き込まれ、そのように移動させられるに従ってエネルギーを消散するように構成されている。ケーブル補強材料(204)は、ケーブル(200)の外側を覆っていてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択された部分が、ケーブルの剛性を高める材料によって被覆されており、ケーブルガイドの周りを引っ張られ、そのように移動させられるに従ってエネルギーを消散するように構成されたワイヤケーブルを有するシートベルトプリテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
図1および2は、代表的な従来技術のワイヤケーブル20の構成を示している。ワイヤケーブル20は、ソリッドワイヤ、または小径の複数のワイヤからなるマルチストランドとすることができるコア22を通常含んでいる。コア22は、金属、樹脂ベースの材料、または、木材や綿などのような天然の材料とすることができる。ワイヤケーブル20は、コア22の周りに巻かれた複数の外側ストランド24をさらに含んでいる。多くの用途において、各外側ストランド24は、複数の細いワイヤ26、または単一のワイヤから形成することができる。図1および2に示されているワイヤケーブル20は、在来の構成を有しており、マルチワイヤストランドからなるコア22と、コア22の周りに撚られた、マルチワイヤからなる6本の外側ストランド24を有している。各ストランドに対するワイヤの撚り方も、コア22に対する各ストランド24の撚り方も、用途に応じて変化させることができる。所与のストランド内のワイヤの数は、当技術分野において知られているように、通常約3本から約19本の範囲で変化させることができる。
【0003】
各外側ストランド24および各ワイヤ26は、一般に、図2に示されているように円形断面を有するが、本発明では、個々のワイヤおよびストランドの他の断面形状が許容される。
【0004】
図2を参照すると、一般に、小さなストランド間空間27が、互いに隣接するストランド間に存在し、また、より小さいワイヤ間空間27aが、互いに隣接する個々のワイヤ26間に存在している。この空間は、通常、各ストランド24内の個々のワイヤ26の周囲が非直線的であり、また、各ストランド24の周囲が非直線的であるために生じている。個々の各ワイヤ26の直径を短くした場合、ストランド24全体の形状はより円形に近くなる。図2におけるマルチワイヤからなる各外側ストランド24は、明確にするために、線32によって囲まれている。一例において、線32は、複数のワイヤ26を用いて形成された各ストランド24の、円形の外側を近似している。ワイヤケーブル20が、マルチワイヤストランドではなく単一のワイヤのストランドによって囲まれたソリッドコアから構成されている場合、線32は、もちろん、各ワイヤ/ストランドの実際の外形を示している。非直線的な周囲を有する、単一のワイヤのストランドを使用する場合でも、ストランド間空間27は依然として存在している。
【0005】
図1を参照すると、ワイヤケーブル20の任意のセグメントは、長さに拘わらず、互いに協働する様々な機構または継手に様々な方法で連結することができる第1の端部34および第2の端部36を有している。
【0006】
図3は、シートベルトシステムの一部としての、より具体的にはシートベルトバックル42用の固定機構またはシートベルトバックル差し出し機構の一部としての、ワイヤケーブル20の公知の使用法を示している。この用途において、一方の端部36が、フェルールまたは他の何らかの連結部、すなわち終端機構40を介してバックル固定部材に連結されており、この終端機構40は、シートベルトバックル42に連結されるか、またはシートベルトバックル42の一部である。ワイヤケーブル20のセグメントの、反対側の端部34は、他のフェルール44を含んでいてよいフロア固定機構46に連結されている。この構成によって、ワイヤケーブル20を乗物の床48またはシート50のような、乗物の構成部材に固定することができる。シートベルトバックル42は、乗物のシート50に隣接して取り付けられ、好ましい向きに位置させられ、すなわち保持されている。ワイヤケーブルを使用することの1つの利点は、ワイヤケーブルは軽量であり、細いケーブルであっても、張力を受けたときに極めて強靭であることである。シートベルトの用途において、ワイヤケーブル20全体の太さが比較的細い場合、ワイヤケーブルが可とう性であるのが明らかであり、ワイヤケーブルは、代表的なシートベルトバックルによって荷重をかけられた時でも湾曲する。シートベルトバックルは、湾曲しやすい傾向を示す、2.0〜4.0〜6.0mmの範囲の直径を有するワイヤケーブルによって固定されることが多い。
【0007】
図3に示されている構成において、シートベルトバックル42は、支持されていない細いワイヤケーブル20がバックルの重量を受けて湾曲した時に、破線51によって示されている位置まで下降する。シートベルトバックルをシート50に対して所望の向きに維持し、ワイヤケーブル20が湾曲するのを防止するには、他の点線52によって示されている半剛性のプラスチックスリーブ、すなわち被覆物によってケーブルを囲むのが一般である。プラスチックスリーブ52は、シートベルトバックル42を所望の向きに向けている。本発明の1つの利点は、バックルを所望の向きに向ける能力を保持しつつスリーブ52の必要性を無くすことである。図1および2の従来技術のワイヤケーブルの他の欠点は、ワイヤケーブルが、湾曲した後その元の形状に戻る「復元性(memory)」を有していることである。
【0008】
図4は、公知の種類のシートベルトプリテンショナ70に組み込まれたワイヤケーブル組立体60の、公知の他の使用法を示している。広義には、プリテンショニング機構もシートベルトバックルを固定している。このワイヤケーブル組立体60は、一方の端部36が、シートベルトバックル42のフレームに連結されるかまたはこのフレームの一部として形成されているバックル固定部材、すなわち終端機構40の所で終わっているワイヤケーブル20を有している。ケーブル20の、他方の端部34はピストン68に取り付けられている。公知の構成のシートベルトプリテンショナ70は、発生剤ハウジング74およびブラケット部75から延びピストンを支持している管状ハウジング72を有している。ブラケット部は発生剤ハウジング74に固定されている。取り付け用のブラケット部75が発生剤ハウジング74に連結されている。ガス発生剤76が、ガス発生剤が燃焼した時に、発生したガスがピストン68をチューブ、すなわち管状ハウジング72の下流側に急速に動かし、ワイヤケーブル20を管状ハウジング72に強力に引き込み、それによってシートベルトバックル42がプリテンショナの方へ引っ張られるように、発生剤ハウジング74内に配置されている。バックルが下方に動くことによって、乗員の周りのシートベルト(不図示)の弛みが小さくされる。
【0009】
多くのバックルプリテンショナ、すなわちシートベルトプリテンショナ70は、全て参照符号82によって示されているプーリ、プーリホイール、またはプーリセグメントのような方向変更機構80を含んでいる。プーリ82は、ブラケット部75に取り付けられるかまたはブラケット部の一部である。ワイヤケーブル20の中央部84がプーリ82と交差している。シートベルトプリテンショナ70は、ケーブルがプーリ82から外れるのを防止する少なくとも1つのガード86を含んでいる。幾つかのプリテンショナにおいて、ガード86は、ブラケット部75の一部として、またはプーリ82の一部として、しばしば湾曲した複数のタブのように形成される複数の隔離部、すなわち止め部によって実現されている。これらの隔離部、すなわちガード86は、プーリ82と協働して、ワイヤケーブル20が中に位置する溝を形成し、かつ隔離部、すなわちガードは、可とう性のケーブルをプーリの表面に近接するように維持している。従来の1つのバックルプリテンショナが特許文献1に開示されている。ストランド86をプーリの周りに配置することによって、ワイヤケーブル20がプーリとの間になす離脱角度が形成される。最初は真っ直ぐであるが可とう性のケーブルは、プーリ内で使用される際、手で容易に曲げられ、プーリの周りに位置させられる。ケーブル用の溝は、特許文献2に示されているように、プリテンショナの係合部品として機械加工することもできる。
【0010】
70のような代表的なプリテンショナは、バックルを数ミリ秒以内に100mmまでの距離だけ移動させる。シートベルトバックルは、バックルが動き始める時に極めて高いレベルの加速を受け、その後、ピストンが移動を停止し、またはバックルがブラケット部75に係合してバックルが急に停止する時に高いレベルの減速を受ける。プリテンショナのストロークの終了時にバックルが受ける減速の大きさを小さくするために、エネルギー吸収機構、すなわちエネルギー消散機構を使用することが従来技術によって提案されている。これらの機構は、バックルが受ける速度、したがって、加速の最終的なレベルを下げるよう働く。
【0011】
図4のシートベルトプリテンショナ70は、フェルール45の一体部分として作られた、薄い壁のチューブ90の形態の、そのようなエネルギー吸収機構の1つを含んでいる。このチューブは、ケーブルの周りに緩く配置された別個の部品とすることができ、フェルール、すなわち終端機構40から離れた位置に配置してよい。フェルール、すなわち終端機構40が引き込まれてプーリ82およびプーリハウジング/ブラケット部75に接触すると、チューブ90は変形する。
【特許文献1】米国特許第5911440号明細書
【特許文献2】カナダ特許第2158901号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
所定の領域に沿ってベローズのように湾曲するが、ガード86、タブ、すなわち隔離部とプーリ82(またはプーリハウジング80)の間の空間、すなわち溝87には入らない薄い壁のチューブ90が従来技術によって示されている。他の提案によれば、90のような薄い壁のチューブが、ブラケット部75内の湾曲した溝87内に引き込まれ、チューブがブラケット部75とプーリ82の間の、より狭くなった溝に入るにつれ、チューブが挟みつぶされ、すなわち径方向に歪むに従ってエネルギーを消散することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、未処理のワイヤケーブル20の剛性を調節可能に高め、補強されたワイヤケーブルを、図4の状況におけるエネルギー吸収スリーブ、すなわち破壊可能なスリーブを用いることを必要とせずに、図3に示されているような固定機構に用いることができるようにする手段を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図5は、従来の金属ケーブルのセグメントを、改良されたワイヤケーブル200が得られるように処理する方法を示している。未処理の、ある長さの、すなわちセグメントのケーブルを獲得し、少なくとも、ケーブルの、ケーブル補強材料204として働く充填材料または被覆材料によって覆う部分をクリーニングし、次に、ワイヤケーブル200またはその一部に1層または2層以上のケーブル補強材料を付与することが本発明によって意図される。本発明では、はんだであるケーブル補強材料は、ワイヤケーブル200を被覆するだけでなく、ワイヤ間空間およびストランド間空間を満たす。はんだは、毛管作用によってワイヤ間空間およびストランド間空間に引き込まれる。ワイヤ間空間およびストランド間空間は、一旦満たされると、ケーブル補強材料をワイヤケーブル200の外側に何回付与しても影響されなくなる。ケーブル補強材料204は、ワイヤケーブル200の外側を覆い、ケーブルを汚染から保護する。さらに、ケーブル補強材料はストランド間空間27およびワイヤ間空間27aを満たす。本発明の好ましい実施形態において、ワイヤケーブル200は、選択された種類のはんだが付着することができる材料から構成されている。基本的に、ケーブルは主として金属製である。本発明では、ケーブルを補強するケーブル補強材料204である充填材料と被覆材料は同一の材料であるが、そうでなくてもよい。ワイヤは、公知の融点を有する第1の種類のはんだに浸漬させ、冷却することができる。この第1の種類のはんだは、ワイヤ間空間およびストランド間空間を満たし、ストランド24の外側部分に薄いコーティングを付加することができる。その後、第2の種類のはんだをケーブルに付与することができ、この第2の種類のはんだは、より低い融点を有し、ワイヤ間空間およびストランド間空間内の第1のはんだを乱さない。この第2のはんだは、主として、ケーブルの外側を被覆する。被覆されたワイヤケーブル200の、新しい機械的特性は、ケーブルを補強するのに用いられる様々な充填材料および/または被覆材料の特性を選択することによって調整することができる。
【0015】
ケーブル補強材料204であるはんだを、被覆材料として用いる場合、ワイヤケーブル20の、ある長さのセグメントは、洗浄剤として働く融剤によって前処理を施される。本発明では、所望の長さのワイヤケーブル20のセグメントを洗浄剤(融剤)に浸漬するか、あるいは洗浄剤をワイヤまたはケーブルセグメントに噴霧するか、洗浄剤をワイヤケーブルに塗りつけることができることが意図されている。他のケーブル補強材料およびケーブル材料は、他の種類の表面処理も必要とすることがある。
【0016】
図5に示されている実施形態において、長さAの、200のような未処理の、すなわち手を加えていないワイヤケーブルセグメントは、材料を補強可能な液体、この場合は、ケーブル補強材料204である溶融はんだの、1つまたは2つ以上の容器、すなわち処理タンク202または202nに1回または2回以上浸漬させられ、ワイヤケーブル200の、浸漬させられた部分が被覆される。はんだ、および一般に他のケーブル補強材料は、ワイヤケーブル200またはその選択された部分を、空気、水、および他の汚染物質を透過させない薄く概ね可とう性のコーティングによって被覆する。ワイヤケーブル200を覆うケーブル補強材料204に用いられるはんだ、および/または混合物の量に応じて、ケーブルは、場合に応じて、湾曲させたり、真っ直ぐにしたり、撚ったりされにくくなる。湾曲に対する抵抗力が比較的強いワイヤケーブル200を、図3に示されている用途に用いることができ、湾曲可能な未処理のワイヤケーブル20用の支持機構として従来働いていたプラスチックスリーブを不要にすることができる。本発明の他の利点は、被覆されたワイヤケーブル200を様々な形状に形作ることができ、かつ選択された形状を保持できることである。これに対して、未処理のワイヤケーブル20は一般に真っ直ぐな構成に戻る。ワイヤケーブル20の物性および塗布されるはんだ、すなわちケーブル補強材料204の量および/または混合物に応じて、処理済みのワイヤケーブルは、ワイヤケーブル200の端部に配置された様々な重量の物品を支持することができる。
【0017】
被覆されたワイヤケーブル200は、例えばシートベルトプリテンショナ内で使用される時により多くの利点も有する。ほぼ全ての種類の、天然素材または合成素材のケーブル、金属ワイヤ(単一ストランドを含む)、またはソリッドケーブル、またはソリッドワイヤも、より複雑な複合束のワイヤ、またはケーブルも本発明と一緒に使用することができ、やはり本発明から利点が得られる。複数のストランドから作られているか単純なソリッドワイヤから作られているかにかかわらず、そのワイヤケーブルの剛性を高くするのにはんだ以外の材料を用いることもできる。
【0018】
はんだ(ケーブル補強材料204)は、処理タンク202内に液体の形態で維持され、ワイヤ間空間27内に(ストランド間空間27a内にも)入り、処理すべきワイヤケーブル20のセグメントの外側を被覆する。その後、ケーブル補強材料204(はんだ)は冷却され硬化させられてその半固体形態になる。被覆されていないワイヤケーブル20を作るのに用いられている材料に応じて、様々なはんだを使用することができる。はんだは、鉛、すず、銀、ビスマス、または、すず/銀、すず/アンチモン、または、すず/銅/セレンのような材料の組合せを含む1つまたは2つ以上の材料から作ることができる。各はんだは、様々な強度と様々な融点を有している。
【0019】
好ましい実施形態は、ケーブル補強材料204であるはんだを使用しているが、ワイヤケーブルを被覆し、ワイヤ間空間27aおよびストランド間空間27を満たして、ワイヤケーブル200の、処理された部分を、場合に応じて、湾曲させられたり、撚られたり、真っ直ぐにされたりするのに対する抵抗力が強くなるようにするのに、プラスチック樹脂、エポキシ、銅、アンチモンのような他の樹脂材料を用いることもできる。(図1および2に示されているような)マルチストランドケーブルの中央ストランド、すなわちコアは、金属ワイヤではなく合成繊維または天然繊維を用いて作ることもできる。したがって、選択されるケーブル補強材料としては、繊維のコアおよび周囲のストランド(またはワイヤ)に付着することができるものが意図される。
【0020】
ワイヤケーブル200のセグメントは、液体が、図6に示されているように、ストランド間空間またはワイヤ間空間27を満たすことができるように十分な時間、液体(はんだ)204(または他のケーブル補強材料)内に入れたままにされる。その後、ワイヤケーブル200は液体、すなわちケーブル補強材料204から取り出される。ケーブルを、必要に応じて、揺り動かして余分な液体(はんだ)を除去することができ、使用されているケーブル補強材料の特性に応じて乾燥または冷却することができる。はんだは、冷却されると、その常温の、可とう性の、半固体の状態に戻る。はんだが「硬化する」といってもよく、これは、樹脂材料、エポキシ材料の特性でもある。これで、ワイヤケーブル200のセグメントの、はんだで処理された部分は、今や、未処理の部分より剛性が著しく高くなっている。はんだの具体的な1つのの利点は、硬化した時にもろくなく、ケーブルを湾曲させた時に欠けたり破壊したりする影響を受けにくいことである。
【0021】
ワイヤケーブル200は、ケーブル補強材料の複数の層によって被覆することができる。図7は、複数のケーブル補強材料層C1〜C7を有する処理済みのワイヤケーブル200を示している。各被覆層の数および特性は、被覆済みのワイヤケーブル200の所望の剛性に応じて様々にすることができる。例えば、被覆されていないワイヤケーブル205を同じケーブル補強材料に繰り返し浸漬し、冷却してよい(または複数の浸漬ステップの間に硬化を行ってもよい)。ワイヤケーブルに塗布された各被覆層によって、処理済みのワイヤケーブル200の、場合に応じて、湾曲させられたり、撚られたり、真っ直ぐにされたりするのに対する抵抗力が高められる。例えば、ある程度一様な被覆厚さが望まれる場合、ワイヤケーブルセグメントの全体を端から端までケーブル補強材料204内に浸漬することができる。被覆済みのワイヤケーブル200の様々な部分が、様々な厚さの被覆層を有することもできる。複数の、場合によっては一様ではない被覆層によってワイヤケーブル200のセグメントを被覆するのが有利である場合がある。
【0022】
好ましいケーブル補強材料は溶融はんだである。後のはんだ層についてワイヤケーブル200の浸漬時間を短縮することによって同じはんだの複数の層を得ることができる。様々な溶融はんだの様々な処理タンク202n内にケーブルを浸漬することによって複数のはんだ層を得ることもできる。例えば、最初に、使用されるはんだのうちで最高の融点を有するはんだに、被覆されていないワイヤケーブル205を浸漬する。第1のはんだを凝固させることができ、次に、より低い融点を有する第2のはんだにケーブルを浸漬する。この工程を必要に応じて何度も繰り返すことができる。さらに、公知のように、はんだに用いられる混合物の選択によって、これらの合金の融点が影響を受け、はんだの強度も影響を受けるので、それによって、被覆済みワイヤケーブル200の性能をカスタマイズできるという追加の利点が得られる。さらに、第2の、およびその後のケーブル補強材料層を第1のケーブル補強材料層とは異なる方法で付与することができ、例えば、各層を噴霧したり塗りつけたりしてよい。
【0023】
図5は、長さAのワイヤケーブル200のセグメントを示している。このワイヤケーブル200のセグメントの頂部は、ワイヤケーブル200のセグメントを1つまたは複数の処理タンク202,202nに搬送するのに用いられる処理機構の一部とすることができるクランプ、すなわち搬送クリップ206によって保持されている。被覆工程は、搬送クリップ206をプライアあるいは他の把持または固定工具によって置き換えて手動で行うこともできる。ワイヤケーブル200のセグメントは、例えば選択された長さA1まで浸漬させることができる。ワイヤケーブルセグメントをこの選択された長さA1まで任意の回数だけ浸漬し、ワイヤケーブル200のセグメントの、有効な全長の周りに一様なコーティングを施すことができる。その後の各被覆時に、セグメント全体が被覆されるようにワイヤセグメントを上下ひっくり返して保持クリップ、すなわち搬送クリップ206内に再挿入することもできる。
【0024】
ワイヤケーブルまたはそのセグメントを、シートベルトバックルフレームが一例であるフェルールや協働する連結部品のような様々な種類のケーブル終端部材と一緒に使用することができる。当技術分野においてよく知られているように、大部分の金属は時間が経過するにつれて腐食し始める。自動車製品の場合、この製品の各部品は、部品が腐食する可能性を最小限に抑えることを含む厳格な仕様に従って作られる。したがって、このような部品は、通常の鋼製の部品が錆びるのを防ぐために腐食防止コーティングを用いて処理されることが多い。例えば、自動車部品は、約96時間にわたって続けられる塩水噴霧試験を受けることが多い。現在、金属部品は、リン酸マグネシウムまたはリン酸亜鉛によって被覆され、一方、他の部品は、ニッケルやクロムのような在来のメッキ材料によって被覆されている。各ケーブル補強材料層は、部品のコストを高くするが、部品の有効寿命も延ばす。大部分のケーブルは(金属製フェルールや他の同様のケーブル終端部材のような)金属製終端部材と一緒に使用されるため、これらの金属終端部材も被覆しなければならない。
【0025】
本発明によって、ケーブルおよびケーブルに関連する部品の製造の融通性が高められる。例えば、各ケーブル終端機構を、ケーブルに取り付ける前に被覆するコストを被る代わりに、最初に、被覆されていないケーブル終端部材を、未処理のワイヤケーブル20の端部にクリンプするなどして取り付けることができる。その後、ワイヤケーブル20とその終端機構40の両方をはんだ内、すなわち処理タンク202内に浸漬する。
【0026】
図5および7を再び参照する。ある用途では、ワイヤケーブルセグメントを非一様に被覆するのが望ましい場合がある。例えば、上述の方法でワイヤセグメントの長さA1の部分をケーブル補強材料に浸漬することによってワイヤケーブルセグメントに第1のコーティングC1を施すのが有益である場合がある。被覆されていないワイヤケーブル205の一部のみを処理することによって、残りの未処理の部分は、その元々の可とう性を保持し、それによって、まだ、ケーブルの未処理の可とう性の部分をプーリ82のような曲面の周り、曲面内、または曲面上に容易に挿入し、または配置することができる。次にワイヤケーブル200のセグメントを浸漬する際は、ワイヤケーブル200のセグメントを、コーティングC2が得られる長さA2までだけ浸漬する。各層の相対的な厚さの位置は、図示のために大幅に誇張されている。ケーブルセグメントの頂端部は1つのケーブル補強材料層のみを有し、一方、セグメントの残りの部分は複数の被覆を含んでいる。様々な厚さのコーティングC3〜CNを、連続的である必要のない様々な部分に塗布して各被覆層をセグメントの長さにわたって少しずつずらして配置することができる。層C3,C4におけるように、ある複数の層を同じように塗布することもできる。コーティングの厚さを、ワイヤケーブル200のセグメントの一方の端部の所で厚くすることができ、または、中央部で厚くして一方または両方の端部に向かって先細りにしてもよい。
【0027】
被覆されていないワイヤケーブル20のセグメントではなく、(上述のように)被覆されたワイヤケーブル200を用いた、図4に示されているようなプリテンショナの動作において、ピストン68がチューブ72の下流側に押し込まれると、ワイヤケーブル200が管状部材内に引き込まれ、前述のように、シートベルトバックル42がシートベルトプリテンショナ70のより近くに引っ張られる。こうして、ワイヤケーブル200の、処理され補強された部分が、湾曲したプーリ82(プーリホイール、湾曲した通路など)上に引っ張られる。処理されたワイヤケーブル200は、プーリ82の周りに強力に引っ張られると湾曲する。ワイヤケーブル200の補強された部分は、プーリ上で湾曲する際、エネルギーを消散し、その結果、シートベルトバックルが受ける減速のレベルが低くなる。破壊可能なチューブ90を使用せずにエネルギーの消散が達成される。
【0028】
最初にプーリ82に隣接するコーティングの、増大させた、または設定された厚さを、シートベルトバックル42にかけられる最初の加速を調節するのに用いることができ、一方、バックルの近くの、被覆されたセグメントによってバックルの減速が制御される。
【0029】
図8Aは、シートベルトプリテンショナ70のプーリ82の周りに位置する、ワイヤケーブル200の、被覆されたセグメントの一使用法を示している。この実施形態において、ワイヤセグメントは部分的にのみ被覆されている。ワイヤケーブルの、プーリホイール、すなわちプーリ82の下方の部分205は被覆されないままになっている。ワイヤケーブルセグメントは、被覆層C1〜CNの層が、ガイド86とプーリホイール、すなわちプーリ82の間に位置する溝87の入口、すなわち始まりの概ね近くに配置されるように、プーリホイールの周りに配置されている。この構成では、ピストン68を少量だけ移動させる(矢印34a参照)ことによって、被覆されたワイヤケーブル200が狭い溝内に(またはさらに奥に)、プーリの周りに引っ張られ、複数の被覆層の層、被覆されたワイヤ、およびストランドが変形させられるにつれてエネルギーが吸収され、すなわち消散される。
【0030】
図8Bに示されている実施形態は、ワイヤケーブルの、被覆された長さ部分がシートベルトバックル42の近くにあり、大部分が、図4に示されているのと同様に被覆されていないワイヤケーブル205を用いている。この実施形態では、コーティングC1〜CNが、ガイド86とプーリホイール、すなわちプーリ82の間の溝87に接触し、またはこの溝内に引き込まれるまでエネルギーの、追加の消散は生じない。各被覆層C1〜CNの厚さを(バックルに近くなるほど厚く)変化させて、ピストン34の動作範囲の最後の部分の所、またはその近くで起こる、バックルの減速の程度の変化を生じさせることができる。被覆されるはんだの代表的な厚さは0.15μmから約100μmの範囲内にある。
【0031】
上記の説明では、ある長さの真っ直ぐなワイヤが本発明に従って処理されている。この実施形態では、処理済みのワイヤセグメントが、予め設定された弧状の形状に形成され、70のような代表的なシートベルトプリテンショナの、モジュール式の構成となっているのを利用している。予め設定された構成の利点は、被覆されたワイヤケーブル200をプーリホイール、すなわちプーリ82の周りに、予備成形された部材として配置して、組立て時間を短縮できることである。
【0032】
図9Aは、被覆されていないワイヤケーブル205を、予備成形された形状に形作るのに用いられる固定具300を模式的に示している。被覆されていないワイヤケーブル205は、図9Aに破線で示されており、固定具の様々な部材の間に位置している。固定具は、ピボット、すなわち柱302と止め部304,306を含んでいる。止め部は、柱302から離して配置することができ、また、ワイヤセグメント60の各端部34,36を指定された角度に保持するフックまたはクランプを有するように構成することができる。止め部304,306と柱302の相対的な角度位置は、(図4に示されている)シートベルトプリテンショナ70内のワイヤケーブル20の向きを再現するように配置されている。止め部304,306は、被覆されていないワイヤケーブル205が(プリテンショナ70aの)プーリ82の周りを延びてプーリ82から出るように、柱から接線方向に延びる線上に配置されている。柱と止め部は、プレート301のような保持機構に固定することができ、被覆されていないワイヤケーブル205は処理の前に保持機構に取り付けられる。止め部は柱302に物理的に連結することもできる(例えば、図9Cの実施形態)。
【0033】
柱302の曲率はプーリ82の曲率と同じであり、ワイヤケーブル200は、柱の曲率にぴったり合うように柱302の周りに配置され、被覆されていないワイヤケーブル205の両端部は、止め部304,306によって向きを定められ、所定の位置に保持されている。固定具300は、所定の位置にある被覆されていないワイヤケーブル205のセグメントと共に、ケーブル補強材料のタンク内に下降させられる。上記の例では、はんだが、選択されたケーブル補強材料であり、柱および止め部を含む固定具300は、はんだが付着しないセラミックまたは他の材料から作ることができる。その後、固定具とケーブルはケーブル補強材料から取り外される。ケーブル補強材料が凝固した(はんだが十分に冷えた)後、被覆済みのワイヤケーブルセグメント200aが固定具300から取り外される。ケーブル補強材料は、ワイヤケーブルセグメント200aを予備成形された形状に維持することができる(図9B参照)。処理済みの今や予備成形されたワイヤケーブルセグメント200aをケーブル補強材料内に再び浸漬してケーブル補強材料の厚さを厚くし、および/または被覆率を高めることができる。追加の複数のケーブル補強材料層を、ケーブルが固定具300内にある状態で、または(ケーブルが今や予備成形された形状になっているので)固定具から取り外された状態でケーブルに付加することができる。前述のように、ケーブル補強材料をケーブルに噴霧し、塗りつけ、または他の方法でケーブルに付与することもできる。
【0034】
未処理のワイヤケーブル205のセグメントの全体を材料内に浸漬する必要はない。例えば、被覆済みのワイヤケーブル200のセグメントが湾曲形状を保持するには、固定具300および被覆されていないワイヤケーブル205の、柱302の近くの部分のみを被覆すればよい。ワイヤケーブル200の湾曲部にのみ付与されたはんだによって、その曲線形状を保持することができる。
【0035】
図9Cは、ケーブル用の、成形のための他の固定具300aを示している。この実施形態では、固定具300aは、所望の形状に形成されたある長さのケーブル303から作られており、それによってプレート301が不要になっている。ケーブル300の中央部は、少なくとも1つの円形のループ303aが形成された少なくとも1つの弧状形部になるように形成されており、ケーブル303の両端部は、ケーブル303の、少なくとも1つのループ303aから接線方向に延びる脚部303b,303cのように形成されている。脚部303b,303cは、ケーブルがシートベルトプリテンショナ70内にある時にとる向きによって決められた所望の角度間隔だけ恒久的に離されて配置されている。ループ303aの半径はプーリ82の半径に対応している。各脚部303b,303cは、止め部304,306の1つをそれぞれ形成する、内側を向いたタブを含んでいる。
【0036】
使用時には、ケーブルのセグメントの中央部200aがループ303a上の中央に揃えられ、ケーブルの、延びている端部200b,200cが湾曲させられ、止め部303b,303cの一方にそれぞれ隣接して位置させられる。この構成では、ケーブルの中央部200aをループ303aの曲率半径に合わせることができ、各端部200b,200cが各止め部304,306によって所定の位置に保持されるので、被覆済みのケーブルの端部200b,200cが外側に跳ね返らないように保持することができる。この代替の固定具303aを形成しているケーブル303は、セラミック材料、または、使用するはんだと密着しない他の材料によって覆うことができる。その後、被覆済みのワイヤケーブル205は、上述のようにケーブル補強材料(はんだなど)によって処理され、次に、取り出されて、予備成形された部材として、70のようなプリテンショナ内に設置される。
【0037】
図10は、シートベルトプリテンショナ70の一部を、より具体的には、ブラケット部75(プーリハウジング)を示している。プーリはブラケット部75から取り外されているが、その位置が破線82によって示されている。(上述の)ケーブル200aの、処理済みの、予備成形され湾曲させられたセグメントが、ブラケット部75上に嵌められ、止め部、すなわちガード86に接して配置されており、曲線の頂上点が、プーリ82の所望の位置に配置されている。ケーブル200aがブラケット上の所定の位置に配置された状態で、プーリ82がブラケット部75に取り付けられ、ケーブルが所定の位置に保持される。この実施形態において、ケーブル補強材料204(はんだ)は、プーリの下方へ(ピストンの方向に)、およびシートベルトバックル42(不図示)に向かって十分に上方に延び、エネルギー吸収に必要な被覆長を生じさせている。
【0038】
図11Aは、被覆されていないワイヤケーブル205のセグメントを被覆する他の方法を示している。この実施形態では、ワイヤケーブル205の被覆されていないセグメントをU字形状に湾曲させ、固定具220内に挿入し、すなわち保持してこの形状を保持する。その後、ワイヤケーブル205、および必要ならば固定具220を液体、すなわちケーブル補強材料204内に移動させる。ケーブルの、処理済みの、すなわち被覆済みの部分が参照番号200bによって示されており、被覆層は記号C1によって示されている。ケーブルセグメントを処理するこの方法では、ケーブルの、被覆されたこの部分200bのみが補強され、この場合、セグメントの中央部250が、ワイヤケーブル20の概ね中央に位置している。上記の工程を使用すると、ワイヤセグメントの端部34,36は、固定具もケーブル補強材料内に浸漬しないかぎり、被覆材料、すなわちケーブル補強材料204内に埋め込まれることはない。
【0039】
図11Bは、U字形のワイヤセグメント200bの一使用法を示している。図11Bは、シート背もたれ362およびシートクッション364を有する、乗物の後部のシート組立体360を示している。シート組立体360は2つの着座位置365a,365bを形成している。シート組立体360はベンチシートとすることも複数のバケットシートとすることもできる。200bのようなケーブルの未処理の一セグメント上に2つのシートベルトバックル42を取り付けることが通常受け入れられている。この代替の実施形態において、ワイヤケーブル200bの、処理済みの部分を、固定部材370を介して乗物の床に取り付け、シートベルトバックル42をワイヤセグメント200bの両端部に固定することができる。被覆されたケーブルセグメント200bの、被覆された中心部201aは、乗物の床に合うように構成されており、直線状とすることも、曲線状とすることもでき、一方、ケーブルセグメント200bの、延びている被覆された脚部201b,201cは、シートベルトバックル42を乗員のために所望の向きに向け、すなわち方向付けるように所望の形状に湾曲している。ケーブル200bの、被覆されたセグメントを所望の形状に湾曲させることができ、このセグメントはこの形状を保持することができる。さらに、従来技術においてプラスチック製スリーブによって行われている,バックルを支持するセグメント201b,201cの追加の支持は必要ない。乗物の後部シート用の、代表的なシートベルトのように、シートベルトバックル42は、シートクッションとシート背もたれの間の空間から外側に延びている。
【0040】
図12は、被覆されていないワイヤケーブル205の一部を被覆液体、すなわちケーブル補強材料204にさらす他の方法を示している。この液体、加熱されたはんだ、または他の液体材料は、複数のノズル、すなわちスプレーヘッド380を通され、ワイヤケーブル205の、処理すべきセグメント上に噴霧され、または噴射される。ケーブルまたはスプレーヘッドの一方または他方を、互いに移動可能とすることができる。この被覆方法の1つの利点は、ワイヤケーブルの、被覆可能な長さに実質的に制限がなく、ケーブルが切断時に裂ける(ストランドまたはワイヤが解ける)ことが無くなることである。
【0041】
図13は、シートベルトバックル42が、ある長さの可とう性のシートベルトウェビング400によって固定部材44に連結される、本発明の他の実施形態を示している。シートベルトウェビング400の頂部は、開口部を通って、シートベルトバックル42またはバックルフレームに結合されたバー404の周りに、従来の方法でループ状にされた第1のループ402になるように形成されており、このループは、閉じるように縫われている。シートベルトウェビングの他方の端部は、他の開口部を通って、固定部材44に結合されたバー408の周りに受け入れられ、閉じるように縫われた他のループ406になるように形成されている。上記の構成は、当該産業界の標準であり、図3に示されているように、バックルを、ワイヤケーブル20を介して固定部材に取り付ける方法の代替の方法を示している。さらに、この構成では、シートベルト400は可とう性が非常に高く、シートベルトは、固定部材とバックルの両方に取り付ける前の全体形状を補強するために、52(図3参照)のようなスリーブに通されることが多い。シートベルトは、互いに交差する縦繊維と横繊維からなる織られた構成から作られている。小さな複数の開口部410がこれらの各繊維の交差点に存在している。本発明では、シートベルト400は、シートベルトバックル42の下部412、および固定部材44の上部414が、可とう性のシリコンゴム、ウレタン樹脂、または、PlastiDip(登録商標)のようなビニルを含む耐久性の高い可とう性の材料420によって被覆され、剛性が高められ、すなわち、シートベルトの可とう性が低くされている。シートベルト400は、それ自体の重量、およびバックルと固定部材の重量を支持することができ、湾曲しないことができるが、より大きな力の作用によって湾曲しねじれるのに十分な可とう性を有するように、選択された材料によって剛性を十分に高められている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来技術のワイヤケーブル/組立体を示す図である。
【図2】従来技術のワイヤケーブル/組立体を示す図である。
【図3】シートベルトの、代表的な従来技術の取り付けを示す図である。
【図4】在来のワイヤケーブルを用いた、従来技術のシートベルトプリテンショナを示す図である。
【図5】改良されたワイヤケーブルを製造する方法のステップを示す図である。
【図6】改良された一例のワイヤケーブルの断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図8A】被覆されたワイヤセグメントの、シートベルトプリテンショナ内での使用法を示す図である。
【図8B】被覆されたワイヤセグメントの、シートベルトプリテンショナ内での使用法を示す図である。
【図9A】ワイヤケーブルを処理する他の方法を示す図である。
【図9B】ワイヤケーブルを処理する他の方法を示す図である。
【図10】予備成形されたワイヤケーブルセグメントを示す図である。
【図11A】ベルトプリテンショナの一部内の本発明を示す図である。
【図11B】ベルトプリテンショナの一部内の本発明を示す図である。
【図12】ワイヤケーブルを被覆する他の方法を示す図である。
【図13】シートベルトウェビングに適用した、本発明の他の実施形態を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択された部分が、ケーブルの剛性を高める材料によって被覆されており、ケーブルガイドの周りを引っ張られ、そのように移動させられるに従ってエネルギーを消散するように構成されたワイヤケーブルを有するシートベルトプリテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
図1および2は、代表的な従来技術のワイヤケーブル20の構成を示している。ワイヤケーブル20は、ソリッドワイヤ、または小径の複数のワイヤからなるマルチストランドとすることができるコア22を通常含んでいる。コア22は、金属、樹脂ベースの材料、または、木材や綿などのような天然の材料とすることができる。ワイヤケーブル20は、コア22の周りに巻かれた複数の外側ストランド24をさらに含んでいる。多くの用途において、各外側ストランド24は、複数の細いワイヤ26、または単一のワイヤから形成することができる。図1および2に示されているワイヤケーブル20は、在来の構成を有しており、マルチワイヤストランドからなるコア22と、コア22の周りに撚られた、マルチワイヤからなる6本の外側ストランド24を有している。各ストランドに対するワイヤの撚り方も、コア22に対する各ストランド24の撚り方も、用途に応じて変化させることができる。所与のストランド内のワイヤの数は、当技術分野において知られているように、通常約3本から約19本の範囲で変化させることができる。
【0003】
各外側ストランド24および各ワイヤ26は、一般に、図2に示されているように円形断面を有するが、本発明では、個々のワイヤおよびストランドの他の断面形状が許容される。
【0004】
図2を参照すると、一般に、小さなストランド間空間27が、互いに隣接するストランド間に存在し、また、より小さいワイヤ間空間27aが、互いに隣接する個々のワイヤ26間に存在している。この空間は、通常、各ストランド24内の個々のワイヤ26の周囲が非直線的であり、また、各ストランド24の周囲が非直線的であるために生じている。個々の各ワイヤ26の直径を短くした場合、ストランド24全体の形状はより円形に近くなる。図2におけるマルチワイヤからなる各外側ストランド24は、明確にするために、線32によって囲まれている。一例において、線32は、複数のワイヤ26を用いて形成された各ストランド24の、円形の外側を近似している。ワイヤケーブル20が、マルチワイヤストランドではなく単一のワイヤのストランドによって囲まれたソリッドコアから構成されている場合、線32は、もちろん、各ワイヤ/ストランドの実際の外形を示している。非直線的な周囲を有する、単一のワイヤのストランドを使用する場合でも、ストランド間空間27は依然として存在している。
【0005】
図1を参照すると、ワイヤケーブル20の任意のセグメントは、長さに拘わらず、互いに協働する様々な機構または継手に様々な方法で連結することができる第1の端部34および第2の端部36を有している。
【0006】
図3は、シートベルトシステムの一部としての、より具体的にはシートベルトバックル42用の固定機構またはシートベルトバックル差し出し機構の一部としての、ワイヤケーブル20の公知の使用法を示している。この用途において、一方の端部36が、フェルールまたは他の何らかの連結部、すなわち終端機構40を介してバックル固定部材に連結されており、この終端機構40は、シートベルトバックル42に連結されるか、またはシートベルトバックル42の一部である。ワイヤケーブル20のセグメントの、反対側の端部34は、他のフェルール44を含んでいてよいフロア固定機構46に連結されている。この構成によって、ワイヤケーブル20を乗物の床48またはシート50のような、乗物の構成部材に固定することができる。シートベルトバックル42は、乗物のシート50に隣接して取り付けられ、好ましい向きに位置させられ、すなわち保持されている。ワイヤケーブルを使用することの1つの利点は、ワイヤケーブルは軽量であり、細いケーブルであっても、張力を受けたときに極めて強靭であることである。シートベルトの用途において、ワイヤケーブル20全体の太さが比較的細い場合、ワイヤケーブルが可とう性であるのが明らかであり、ワイヤケーブルは、代表的なシートベルトバックルによって荷重をかけられた時でも湾曲する。シートベルトバックルは、湾曲しやすい傾向を示す、2.0〜4.0〜6.0mmの範囲の直径を有するワイヤケーブルによって固定されることが多い。
【0007】
図3に示されている構成において、シートベルトバックル42は、支持されていない細いワイヤケーブル20がバックルの重量を受けて湾曲した時に、破線51によって示されている位置まで下降する。シートベルトバックルをシート50に対して所望の向きに維持し、ワイヤケーブル20が湾曲するのを防止するには、他の点線52によって示されている半剛性のプラスチックスリーブ、すなわち被覆物によってケーブルを囲むのが一般である。プラスチックスリーブ52は、シートベルトバックル42を所望の向きに向けている。本発明の1つの利点は、バックルを所望の向きに向ける能力を保持しつつスリーブ52の必要性を無くすことである。図1および2の従来技術のワイヤケーブルの他の欠点は、ワイヤケーブルが、湾曲した後その元の形状に戻る「復元性(memory)」を有していることである。
【0008】
図4は、公知の種類のシートベルトプリテンショナ70に組み込まれたワイヤケーブル組立体60の、公知の他の使用法を示している。広義には、プリテンショニング機構もシートベルトバックルを固定している。このワイヤケーブル組立体60は、一方の端部36が、シートベルトバックル42のフレームに連結されるかまたはこのフレームの一部として形成されているバックル固定部材、すなわち終端機構40の所で終わっているワイヤケーブル20を有している。ケーブル20の、他方の端部34はピストン68に取り付けられている。公知の構成のシートベルトプリテンショナ70は、発生剤ハウジング74およびブラケット部75から延びピストンを支持している管状ハウジング72を有している。ブラケット部は発生剤ハウジング74に固定されている。取り付け用のブラケット部75が発生剤ハウジング74に連結されている。ガス発生剤76が、ガス発生剤が燃焼した時に、発生したガスがピストン68をチューブ、すなわち管状ハウジング72の下流側に急速に動かし、ワイヤケーブル20を管状ハウジング72に強力に引き込み、それによってシートベルトバックル42がプリテンショナの方へ引っ張られるように、発生剤ハウジング74内に配置されている。バックルが下方に動くことによって、乗員の周りのシートベルト(不図示)の弛みが小さくされる。
【0009】
多くのバックルプリテンショナ、すなわちシートベルトプリテンショナ70は、全て参照符号82によって示されているプーリ、プーリホイール、またはプーリセグメントのような方向変更機構80を含んでいる。プーリ82は、ブラケット部75に取り付けられるかまたはブラケット部の一部である。ワイヤケーブル20の中央部84がプーリ82と交差している。シートベルトプリテンショナ70は、ケーブルがプーリ82から外れるのを防止する少なくとも1つのガード86を含んでいる。幾つかのプリテンショナにおいて、ガード86は、ブラケット部75の一部として、またはプーリ82の一部として、しばしば湾曲した複数のタブのように形成される複数の隔離部、すなわち止め部によって実現されている。これらの隔離部、すなわちガード86は、プーリ82と協働して、ワイヤケーブル20が中に位置する溝を形成し、かつ隔離部、すなわちガードは、可とう性のケーブルをプーリの表面に近接するように維持している。従来の1つのバックルプリテンショナが特許文献1に開示されている。ストランド86をプーリの周りに配置することによって、ワイヤケーブル20がプーリとの間になす離脱角度が形成される。最初は真っ直ぐであるが可とう性のケーブルは、プーリ内で使用される際、手で容易に曲げられ、プーリの周りに位置させられる。ケーブル用の溝は、特許文献2に示されているように、プリテンショナの係合部品として機械加工することもできる。
【0010】
70のような代表的なプリテンショナは、バックルを数ミリ秒以内に100mmまでの距離だけ移動させる。シートベルトバックルは、バックルが動き始める時に極めて高いレベルの加速を受け、その後、ピストンが移動を停止し、またはバックルがブラケット部75に係合してバックルが急に停止する時に高いレベルの減速を受ける。プリテンショナのストロークの終了時にバックルが受ける減速の大きさを小さくするために、エネルギー吸収機構、すなわちエネルギー消散機構を使用することが従来技術によって提案されている。これらの機構は、バックルが受ける速度、したがって、加速の最終的なレベルを下げるよう働く。
【0011】
図4のシートベルトプリテンショナ70は、フェルール45の一体部分として作られた、薄い壁のチューブ90の形態の、そのようなエネルギー吸収機構の1つを含んでいる。このチューブは、ケーブルの周りに緩く配置された別個の部品とすることができ、フェルール、すなわち終端機構40から離れた位置に配置してよい。フェルール、すなわち終端機構40が引き込まれてプーリ82およびプーリハウジング/ブラケット部75に接触すると、チューブ90は変形する。
【特許文献1】米国特許第5911440号明細書
【特許文献2】カナダ特許第2158901号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
所定の領域に沿ってベローズのように湾曲するが、ガード86、タブ、すなわち隔離部とプーリ82(またはプーリハウジング80)の間の空間、すなわち溝87には入らない薄い壁のチューブ90が従来技術によって示されている。他の提案によれば、90のような薄い壁のチューブが、ブラケット部75内の湾曲した溝87内に引き込まれ、チューブがブラケット部75とプーリ82の間の、より狭くなった溝に入るにつれ、チューブが挟みつぶされ、すなわち径方向に歪むに従ってエネルギーを消散することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、未処理のワイヤケーブル20の剛性を調節可能に高め、補強されたワイヤケーブルを、図4の状況におけるエネルギー吸収スリーブ、すなわち破壊可能なスリーブを用いることを必要とせずに、図3に示されているような固定機構に用いることができるようにする手段を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図5は、従来の金属ケーブルのセグメントを、改良されたワイヤケーブル200が得られるように処理する方法を示している。未処理の、ある長さの、すなわちセグメントのケーブルを獲得し、少なくとも、ケーブルの、ケーブル補強材料204として働く充填材料または被覆材料によって覆う部分をクリーニングし、次に、ワイヤケーブル200またはその一部に1層または2層以上のケーブル補強材料を付与することが本発明によって意図される。本発明では、はんだであるケーブル補強材料は、ワイヤケーブル200を被覆するだけでなく、ワイヤ間空間およびストランド間空間を満たす。はんだは、毛管作用によってワイヤ間空間およびストランド間空間に引き込まれる。ワイヤ間空間およびストランド間空間は、一旦満たされると、ケーブル補強材料をワイヤケーブル200の外側に何回付与しても影響されなくなる。ケーブル補強材料204は、ワイヤケーブル200の外側を覆い、ケーブルを汚染から保護する。さらに、ケーブル補強材料はストランド間空間27およびワイヤ間空間27aを満たす。本発明の好ましい実施形態において、ワイヤケーブル200は、選択された種類のはんだが付着することができる材料から構成されている。基本的に、ケーブルは主として金属製である。本発明では、ケーブルを補強するケーブル補強材料204である充填材料と被覆材料は同一の材料であるが、そうでなくてもよい。ワイヤは、公知の融点を有する第1の種類のはんだに浸漬させ、冷却することができる。この第1の種類のはんだは、ワイヤ間空間およびストランド間空間を満たし、ストランド24の外側部分に薄いコーティングを付加することができる。その後、第2の種類のはんだをケーブルに付与することができ、この第2の種類のはんだは、より低い融点を有し、ワイヤ間空間およびストランド間空間内の第1のはんだを乱さない。この第2のはんだは、主として、ケーブルの外側を被覆する。被覆されたワイヤケーブル200の、新しい機械的特性は、ケーブルを補強するのに用いられる様々な充填材料および/または被覆材料の特性を選択することによって調整することができる。
【0015】
ケーブル補強材料204であるはんだを、被覆材料として用いる場合、ワイヤケーブル20の、ある長さのセグメントは、洗浄剤として働く融剤によって前処理を施される。本発明では、所望の長さのワイヤケーブル20のセグメントを洗浄剤(融剤)に浸漬するか、あるいは洗浄剤をワイヤまたはケーブルセグメントに噴霧するか、洗浄剤をワイヤケーブルに塗りつけることができることが意図されている。他のケーブル補強材料およびケーブル材料は、他の種類の表面処理も必要とすることがある。
【0016】
図5に示されている実施形態において、長さAの、200のような未処理の、すなわち手を加えていないワイヤケーブルセグメントは、材料を補強可能な液体、この場合は、ケーブル補強材料204である溶融はんだの、1つまたは2つ以上の容器、すなわち処理タンク202または202nに1回または2回以上浸漬させられ、ワイヤケーブル200の、浸漬させられた部分が被覆される。はんだ、および一般に他のケーブル補強材料は、ワイヤケーブル200またはその選択された部分を、空気、水、および他の汚染物質を透過させない薄く概ね可とう性のコーティングによって被覆する。ワイヤケーブル200を覆うケーブル補強材料204に用いられるはんだ、および/または混合物の量に応じて、ケーブルは、場合に応じて、湾曲させたり、真っ直ぐにしたり、撚ったりされにくくなる。湾曲に対する抵抗力が比較的強いワイヤケーブル200を、図3に示されている用途に用いることができ、湾曲可能な未処理のワイヤケーブル20用の支持機構として従来働いていたプラスチックスリーブを不要にすることができる。本発明の他の利点は、被覆されたワイヤケーブル200を様々な形状に形作ることができ、かつ選択された形状を保持できることである。これに対して、未処理のワイヤケーブル20は一般に真っ直ぐな構成に戻る。ワイヤケーブル20の物性および塗布されるはんだ、すなわちケーブル補強材料204の量および/または混合物に応じて、処理済みのワイヤケーブルは、ワイヤケーブル200の端部に配置された様々な重量の物品を支持することができる。
【0017】
被覆されたワイヤケーブル200は、例えばシートベルトプリテンショナ内で使用される時により多くの利点も有する。ほぼ全ての種類の、天然素材または合成素材のケーブル、金属ワイヤ(単一ストランドを含む)、またはソリッドケーブル、またはソリッドワイヤも、より複雑な複合束のワイヤ、またはケーブルも本発明と一緒に使用することができ、やはり本発明から利点が得られる。複数のストランドから作られているか単純なソリッドワイヤから作られているかにかかわらず、そのワイヤケーブルの剛性を高くするのにはんだ以外の材料を用いることもできる。
【0018】
はんだ(ケーブル補強材料204)は、処理タンク202内に液体の形態で維持され、ワイヤ間空間27内に(ストランド間空間27a内にも)入り、処理すべきワイヤケーブル20のセグメントの外側を被覆する。その後、ケーブル補強材料204(はんだ)は冷却され硬化させられてその半固体形態になる。被覆されていないワイヤケーブル20を作るのに用いられている材料に応じて、様々なはんだを使用することができる。はんだは、鉛、すず、銀、ビスマス、または、すず/銀、すず/アンチモン、または、すず/銅/セレンのような材料の組合せを含む1つまたは2つ以上の材料から作ることができる。各はんだは、様々な強度と様々な融点を有している。
【0019】
好ましい実施形態は、ケーブル補強材料204であるはんだを使用しているが、ワイヤケーブルを被覆し、ワイヤ間空間27aおよびストランド間空間27を満たして、ワイヤケーブル200の、処理された部分を、場合に応じて、湾曲させられたり、撚られたり、真っ直ぐにされたりするのに対する抵抗力が強くなるようにするのに、プラスチック樹脂、エポキシ、銅、アンチモンのような他の樹脂材料を用いることもできる。(図1および2に示されているような)マルチストランドケーブルの中央ストランド、すなわちコアは、金属ワイヤではなく合成繊維または天然繊維を用いて作ることもできる。したがって、選択されるケーブル補強材料としては、繊維のコアおよび周囲のストランド(またはワイヤ)に付着することができるものが意図される。
【0020】
ワイヤケーブル200のセグメントは、液体が、図6に示されているように、ストランド間空間またはワイヤ間空間27を満たすことができるように十分な時間、液体(はんだ)204(または他のケーブル補強材料)内に入れたままにされる。その後、ワイヤケーブル200は液体、すなわちケーブル補強材料204から取り出される。ケーブルを、必要に応じて、揺り動かして余分な液体(はんだ)を除去することができ、使用されているケーブル補強材料の特性に応じて乾燥または冷却することができる。はんだは、冷却されると、その常温の、可とう性の、半固体の状態に戻る。はんだが「硬化する」といってもよく、これは、樹脂材料、エポキシ材料の特性でもある。これで、ワイヤケーブル200のセグメントの、はんだで処理された部分は、今や、未処理の部分より剛性が著しく高くなっている。はんだの具体的な1つのの利点は、硬化した時にもろくなく、ケーブルを湾曲させた時に欠けたり破壊したりする影響を受けにくいことである。
【0021】
ワイヤケーブル200は、ケーブル補強材料の複数の層によって被覆することができる。図7は、複数のケーブル補強材料層C1〜C7を有する処理済みのワイヤケーブル200を示している。各被覆層の数および特性は、被覆済みのワイヤケーブル200の所望の剛性に応じて様々にすることができる。例えば、被覆されていないワイヤケーブル205を同じケーブル補強材料に繰り返し浸漬し、冷却してよい(または複数の浸漬ステップの間に硬化を行ってもよい)。ワイヤケーブルに塗布された各被覆層によって、処理済みのワイヤケーブル200の、場合に応じて、湾曲させられたり、撚られたり、真っ直ぐにされたりするのに対する抵抗力が高められる。例えば、ある程度一様な被覆厚さが望まれる場合、ワイヤケーブルセグメントの全体を端から端までケーブル補強材料204内に浸漬することができる。被覆済みのワイヤケーブル200の様々な部分が、様々な厚さの被覆層を有することもできる。複数の、場合によっては一様ではない被覆層によってワイヤケーブル200のセグメントを被覆するのが有利である場合がある。
【0022】
好ましいケーブル補強材料は溶融はんだである。後のはんだ層についてワイヤケーブル200の浸漬時間を短縮することによって同じはんだの複数の層を得ることができる。様々な溶融はんだの様々な処理タンク202n内にケーブルを浸漬することによって複数のはんだ層を得ることもできる。例えば、最初に、使用されるはんだのうちで最高の融点を有するはんだに、被覆されていないワイヤケーブル205を浸漬する。第1のはんだを凝固させることができ、次に、より低い融点を有する第2のはんだにケーブルを浸漬する。この工程を必要に応じて何度も繰り返すことができる。さらに、公知のように、はんだに用いられる混合物の選択によって、これらの合金の融点が影響を受け、はんだの強度も影響を受けるので、それによって、被覆済みワイヤケーブル200の性能をカスタマイズできるという追加の利点が得られる。さらに、第2の、およびその後のケーブル補強材料層を第1のケーブル補強材料層とは異なる方法で付与することができ、例えば、各層を噴霧したり塗りつけたりしてよい。
【0023】
図5は、長さAのワイヤケーブル200のセグメントを示している。このワイヤケーブル200のセグメントの頂部は、ワイヤケーブル200のセグメントを1つまたは複数の処理タンク202,202nに搬送するのに用いられる処理機構の一部とすることができるクランプ、すなわち搬送クリップ206によって保持されている。被覆工程は、搬送クリップ206をプライアあるいは他の把持または固定工具によって置き換えて手動で行うこともできる。ワイヤケーブル200のセグメントは、例えば選択された長さA1まで浸漬させることができる。ワイヤケーブルセグメントをこの選択された長さA1まで任意の回数だけ浸漬し、ワイヤケーブル200のセグメントの、有効な全長の周りに一様なコーティングを施すことができる。その後の各被覆時に、セグメント全体が被覆されるようにワイヤセグメントを上下ひっくり返して保持クリップ、すなわち搬送クリップ206内に再挿入することもできる。
【0024】
ワイヤケーブルまたはそのセグメントを、シートベルトバックルフレームが一例であるフェルールや協働する連結部品のような様々な種類のケーブル終端部材と一緒に使用することができる。当技術分野においてよく知られているように、大部分の金属は時間が経過するにつれて腐食し始める。自動車製品の場合、この製品の各部品は、部品が腐食する可能性を最小限に抑えることを含む厳格な仕様に従って作られる。したがって、このような部品は、通常の鋼製の部品が錆びるのを防ぐために腐食防止コーティングを用いて処理されることが多い。例えば、自動車部品は、約96時間にわたって続けられる塩水噴霧試験を受けることが多い。現在、金属部品は、リン酸マグネシウムまたはリン酸亜鉛によって被覆され、一方、他の部品は、ニッケルやクロムのような在来のメッキ材料によって被覆されている。各ケーブル補強材料層は、部品のコストを高くするが、部品の有効寿命も延ばす。大部分のケーブルは(金属製フェルールや他の同様のケーブル終端部材のような)金属製終端部材と一緒に使用されるため、これらの金属終端部材も被覆しなければならない。
【0025】
本発明によって、ケーブルおよびケーブルに関連する部品の製造の融通性が高められる。例えば、各ケーブル終端機構を、ケーブルに取り付ける前に被覆するコストを被る代わりに、最初に、被覆されていないケーブル終端部材を、未処理のワイヤケーブル20の端部にクリンプするなどして取り付けることができる。その後、ワイヤケーブル20とその終端機構40の両方をはんだ内、すなわち処理タンク202内に浸漬する。
【0026】
図5および7を再び参照する。ある用途では、ワイヤケーブルセグメントを非一様に被覆するのが望ましい場合がある。例えば、上述の方法でワイヤセグメントの長さA1の部分をケーブル補強材料に浸漬することによってワイヤケーブルセグメントに第1のコーティングC1を施すのが有益である場合がある。被覆されていないワイヤケーブル205の一部のみを処理することによって、残りの未処理の部分は、その元々の可とう性を保持し、それによって、まだ、ケーブルの未処理の可とう性の部分をプーリ82のような曲面の周り、曲面内、または曲面上に容易に挿入し、または配置することができる。次にワイヤケーブル200のセグメントを浸漬する際は、ワイヤケーブル200のセグメントを、コーティングC2が得られる長さA2までだけ浸漬する。各層の相対的な厚さの位置は、図示のために大幅に誇張されている。ケーブルセグメントの頂端部は1つのケーブル補強材料層のみを有し、一方、セグメントの残りの部分は複数の被覆を含んでいる。様々な厚さのコーティングC3〜CNを、連続的である必要のない様々な部分に塗布して各被覆層をセグメントの長さにわたって少しずつずらして配置することができる。層C3,C4におけるように、ある複数の層を同じように塗布することもできる。コーティングの厚さを、ワイヤケーブル200のセグメントの一方の端部の所で厚くすることができ、または、中央部で厚くして一方または両方の端部に向かって先細りにしてもよい。
【0027】
被覆されていないワイヤケーブル20のセグメントではなく、(上述のように)被覆されたワイヤケーブル200を用いた、図4に示されているようなプリテンショナの動作において、ピストン68がチューブ72の下流側に押し込まれると、ワイヤケーブル200が管状部材内に引き込まれ、前述のように、シートベルトバックル42がシートベルトプリテンショナ70のより近くに引っ張られる。こうして、ワイヤケーブル200の、処理され補強された部分が、湾曲したプーリ82(プーリホイール、湾曲した通路など)上に引っ張られる。処理されたワイヤケーブル200は、プーリ82の周りに強力に引っ張られると湾曲する。ワイヤケーブル200の補強された部分は、プーリ上で湾曲する際、エネルギーを消散し、その結果、シートベルトバックルが受ける減速のレベルが低くなる。破壊可能なチューブ90を使用せずにエネルギーの消散が達成される。
【0028】
最初にプーリ82に隣接するコーティングの、増大させた、または設定された厚さを、シートベルトバックル42にかけられる最初の加速を調節するのに用いることができ、一方、バックルの近くの、被覆されたセグメントによってバックルの減速が制御される。
【0029】
図8Aは、シートベルトプリテンショナ70のプーリ82の周りに位置する、ワイヤケーブル200の、被覆されたセグメントの一使用法を示している。この実施形態において、ワイヤセグメントは部分的にのみ被覆されている。ワイヤケーブルの、プーリホイール、すなわちプーリ82の下方の部分205は被覆されないままになっている。ワイヤケーブルセグメントは、被覆層C1〜CNの層が、ガイド86とプーリホイール、すなわちプーリ82の間に位置する溝87の入口、すなわち始まりの概ね近くに配置されるように、プーリホイールの周りに配置されている。この構成では、ピストン68を少量だけ移動させる(矢印34a参照)ことによって、被覆されたワイヤケーブル200が狭い溝内に(またはさらに奥に)、プーリの周りに引っ張られ、複数の被覆層の層、被覆されたワイヤ、およびストランドが変形させられるにつれてエネルギーが吸収され、すなわち消散される。
【0030】
図8Bに示されている実施形態は、ワイヤケーブルの、被覆された長さ部分がシートベルトバックル42の近くにあり、大部分が、図4に示されているのと同様に被覆されていないワイヤケーブル205を用いている。この実施形態では、コーティングC1〜CNが、ガイド86とプーリホイール、すなわちプーリ82の間の溝87に接触し、またはこの溝内に引き込まれるまでエネルギーの、追加の消散は生じない。各被覆層C1〜CNの厚さを(バックルに近くなるほど厚く)変化させて、ピストン34の動作範囲の最後の部分の所、またはその近くで起こる、バックルの減速の程度の変化を生じさせることができる。被覆されるはんだの代表的な厚さは0.15μmから約100μmの範囲内にある。
【0031】
上記の説明では、ある長さの真っ直ぐなワイヤが本発明に従って処理されている。この実施形態では、処理済みのワイヤセグメントが、予め設定された弧状の形状に形成され、70のような代表的なシートベルトプリテンショナの、モジュール式の構成となっているのを利用している。予め設定された構成の利点は、被覆されたワイヤケーブル200をプーリホイール、すなわちプーリ82の周りに、予備成形された部材として配置して、組立て時間を短縮できることである。
【0032】
図9Aは、被覆されていないワイヤケーブル205を、予備成形された形状に形作るのに用いられる固定具300を模式的に示している。被覆されていないワイヤケーブル205は、図9Aに破線で示されており、固定具の様々な部材の間に位置している。固定具は、ピボット、すなわち柱302と止め部304,306を含んでいる。止め部は、柱302から離して配置することができ、また、ワイヤセグメント60の各端部34,36を指定された角度に保持するフックまたはクランプを有するように構成することができる。止め部304,306と柱302の相対的な角度位置は、(図4に示されている)シートベルトプリテンショナ70内のワイヤケーブル20の向きを再現するように配置されている。止め部304,306は、被覆されていないワイヤケーブル205が(プリテンショナ70aの)プーリ82の周りを延びてプーリ82から出るように、柱から接線方向に延びる線上に配置されている。柱と止め部は、プレート301のような保持機構に固定することができ、被覆されていないワイヤケーブル205は処理の前に保持機構に取り付けられる。止め部は柱302に物理的に連結することもできる(例えば、図9Cの実施形態)。
【0033】
柱302の曲率はプーリ82の曲率と同じであり、ワイヤケーブル200は、柱の曲率にぴったり合うように柱302の周りに配置され、被覆されていないワイヤケーブル205の両端部は、止め部304,306によって向きを定められ、所定の位置に保持されている。固定具300は、所定の位置にある被覆されていないワイヤケーブル205のセグメントと共に、ケーブル補強材料のタンク内に下降させられる。上記の例では、はんだが、選択されたケーブル補強材料であり、柱および止め部を含む固定具300は、はんだが付着しないセラミックまたは他の材料から作ることができる。その後、固定具とケーブルはケーブル補強材料から取り外される。ケーブル補強材料が凝固した(はんだが十分に冷えた)後、被覆済みのワイヤケーブルセグメント200aが固定具300から取り外される。ケーブル補強材料は、ワイヤケーブルセグメント200aを予備成形された形状に維持することができる(図9B参照)。処理済みの今や予備成形されたワイヤケーブルセグメント200aをケーブル補強材料内に再び浸漬してケーブル補強材料の厚さを厚くし、および/または被覆率を高めることができる。追加の複数のケーブル補強材料層を、ケーブルが固定具300内にある状態で、または(ケーブルが今や予備成形された形状になっているので)固定具から取り外された状態でケーブルに付加することができる。前述のように、ケーブル補強材料をケーブルに噴霧し、塗りつけ、または他の方法でケーブルに付与することもできる。
【0034】
未処理のワイヤケーブル205のセグメントの全体を材料内に浸漬する必要はない。例えば、被覆済みのワイヤケーブル200のセグメントが湾曲形状を保持するには、固定具300および被覆されていないワイヤケーブル205の、柱302の近くの部分のみを被覆すればよい。ワイヤケーブル200の湾曲部にのみ付与されたはんだによって、その曲線形状を保持することができる。
【0035】
図9Cは、ケーブル用の、成形のための他の固定具300aを示している。この実施形態では、固定具300aは、所望の形状に形成されたある長さのケーブル303から作られており、それによってプレート301が不要になっている。ケーブル300の中央部は、少なくとも1つの円形のループ303aが形成された少なくとも1つの弧状形部になるように形成されており、ケーブル303の両端部は、ケーブル303の、少なくとも1つのループ303aから接線方向に延びる脚部303b,303cのように形成されている。脚部303b,303cは、ケーブルがシートベルトプリテンショナ70内にある時にとる向きによって決められた所望の角度間隔だけ恒久的に離されて配置されている。ループ303aの半径はプーリ82の半径に対応している。各脚部303b,303cは、止め部304,306の1つをそれぞれ形成する、内側を向いたタブを含んでいる。
【0036】
使用時には、ケーブルのセグメントの中央部200aがループ303a上の中央に揃えられ、ケーブルの、延びている端部200b,200cが湾曲させられ、止め部303b,303cの一方にそれぞれ隣接して位置させられる。この構成では、ケーブルの中央部200aをループ303aの曲率半径に合わせることができ、各端部200b,200cが各止め部304,306によって所定の位置に保持されるので、被覆済みのケーブルの端部200b,200cが外側に跳ね返らないように保持することができる。この代替の固定具303aを形成しているケーブル303は、セラミック材料、または、使用するはんだと密着しない他の材料によって覆うことができる。その後、被覆済みのワイヤケーブル205は、上述のようにケーブル補強材料(はんだなど)によって処理され、次に、取り出されて、予備成形された部材として、70のようなプリテンショナ内に設置される。
【0037】
図10は、シートベルトプリテンショナ70の一部を、より具体的には、ブラケット部75(プーリハウジング)を示している。プーリはブラケット部75から取り外されているが、その位置が破線82によって示されている。(上述の)ケーブル200aの、処理済みの、予備成形され湾曲させられたセグメントが、ブラケット部75上に嵌められ、止め部、すなわちガード86に接して配置されており、曲線の頂上点が、プーリ82の所望の位置に配置されている。ケーブル200aがブラケット上の所定の位置に配置された状態で、プーリ82がブラケット部75に取り付けられ、ケーブルが所定の位置に保持される。この実施形態において、ケーブル補強材料204(はんだ)は、プーリの下方へ(ピストンの方向に)、およびシートベルトバックル42(不図示)に向かって十分に上方に延び、エネルギー吸収に必要な被覆長を生じさせている。
【0038】
図11Aは、被覆されていないワイヤケーブル205のセグメントを被覆する他の方法を示している。この実施形態では、ワイヤケーブル205の被覆されていないセグメントをU字形状に湾曲させ、固定具220内に挿入し、すなわち保持してこの形状を保持する。その後、ワイヤケーブル205、および必要ならば固定具220を液体、すなわちケーブル補強材料204内に移動させる。ケーブルの、処理済みの、すなわち被覆済みの部分が参照番号200bによって示されており、被覆層は記号C1によって示されている。ケーブルセグメントを処理するこの方法では、ケーブルの、被覆されたこの部分200bのみが補強され、この場合、セグメントの中央部250が、ワイヤケーブル20の概ね中央に位置している。上記の工程を使用すると、ワイヤセグメントの端部34,36は、固定具もケーブル補強材料内に浸漬しないかぎり、被覆材料、すなわちケーブル補強材料204内に埋め込まれることはない。
【0039】
図11Bは、U字形のワイヤセグメント200bの一使用法を示している。図11Bは、シート背もたれ362およびシートクッション364を有する、乗物の後部のシート組立体360を示している。シート組立体360は2つの着座位置365a,365bを形成している。シート組立体360はベンチシートとすることも複数のバケットシートとすることもできる。200bのようなケーブルの未処理の一セグメント上に2つのシートベルトバックル42を取り付けることが通常受け入れられている。この代替の実施形態において、ワイヤケーブル200bの、処理済みの部分を、固定部材370を介して乗物の床に取り付け、シートベルトバックル42をワイヤセグメント200bの両端部に固定することができる。被覆されたケーブルセグメント200bの、被覆された中心部201aは、乗物の床に合うように構成されており、直線状とすることも、曲線状とすることもでき、一方、ケーブルセグメント200bの、延びている被覆された脚部201b,201cは、シートベルトバックル42を乗員のために所望の向きに向け、すなわち方向付けるように所望の形状に湾曲している。ケーブル200bの、被覆されたセグメントを所望の形状に湾曲させることができ、このセグメントはこの形状を保持することができる。さらに、従来技術においてプラスチック製スリーブによって行われている,バックルを支持するセグメント201b,201cの追加の支持は必要ない。乗物の後部シート用の、代表的なシートベルトのように、シートベルトバックル42は、シートクッションとシート背もたれの間の空間から外側に延びている。
【0040】
図12は、被覆されていないワイヤケーブル205の一部を被覆液体、すなわちケーブル補強材料204にさらす他の方法を示している。この液体、加熱されたはんだ、または他の液体材料は、複数のノズル、すなわちスプレーヘッド380を通され、ワイヤケーブル205の、処理すべきセグメント上に噴霧され、または噴射される。ケーブルまたはスプレーヘッドの一方または他方を、互いに移動可能とすることができる。この被覆方法の1つの利点は、ワイヤケーブルの、被覆可能な長さに実質的に制限がなく、ケーブルが切断時に裂ける(ストランドまたはワイヤが解ける)ことが無くなることである。
【0041】
図13は、シートベルトバックル42が、ある長さの可とう性のシートベルトウェビング400によって固定部材44に連結される、本発明の他の実施形態を示している。シートベルトウェビング400の頂部は、開口部を通って、シートベルトバックル42またはバックルフレームに結合されたバー404の周りに、従来の方法でループ状にされた第1のループ402になるように形成されており、このループは、閉じるように縫われている。シートベルトウェビングの他方の端部は、他の開口部を通って、固定部材44に結合されたバー408の周りに受け入れられ、閉じるように縫われた他のループ406になるように形成されている。上記の構成は、当該産業界の標準であり、図3に示されているように、バックルを、ワイヤケーブル20を介して固定部材に取り付ける方法の代替の方法を示している。さらに、この構成では、シートベルト400は可とう性が非常に高く、シートベルトは、固定部材とバックルの両方に取り付ける前の全体形状を補強するために、52(図3参照)のようなスリーブに通されることが多い。シートベルトは、互いに交差する縦繊維と横繊維からなる織られた構成から作られている。小さな複数の開口部410がこれらの各繊維の交差点に存在している。本発明では、シートベルト400は、シートベルトバックル42の下部412、および固定部材44の上部414が、可とう性のシリコンゴム、ウレタン樹脂、または、PlastiDip(登録商標)のようなビニルを含む耐久性の高い可とう性の材料420によって被覆され、剛性が高められ、すなわち、シートベルトの可とう性が低くされている。シートベルト400は、それ自体の重量、およびバックルと固定部材の重量を支持することができ、湾曲しないことができるが、より大きな力の作用によって湾曲しねじれるのに十分な可とう性を有するように、選択された材料によって剛性を十分に高められている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来技術のワイヤケーブル/組立体を示す図である。
【図2】従来技術のワイヤケーブル/組立体を示す図である。
【図3】シートベルトの、代表的な従来技術の取り付けを示す図である。
【図4】在来のワイヤケーブルを用いた、従来技術のシートベルトプリテンショナを示す図である。
【図5】改良されたワイヤケーブルを製造する方法のステップを示す図である。
【図6】改良された一例のワイヤケーブルの断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図8A】被覆されたワイヤセグメントの、シートベルトプリテンショナ内での使用法を示す図である。
【図8B】被覆されたワイヤセグメントの、シートベルトプリテンショナ内での使用法を示す図である。
【図9A】ワイヤケーブルを処理する他の方法を示す図である。
【図9B】ワイヤケーブルを処理する他の方法を示す図である。
【図10】予備成形されたワイヤケーブルセグメントを示す図である。
【図11A】ベルトプリテンショナの一部内の本発明を示す図である。
【図11B】ベルトプリテンショナの一部内の本発明を示す図である。
【図12】ワイヤケーブルを被覆する他の方法を示す図である。
【図13】シートベルトウェビングに適用した、本発明の他の実施形態を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲したケーブルガイド(82)と、前記ケーブルガイド(82)の周りに位置し前記ケーブルガイド(82)に対して移動可能である可とう性で金属製のケーブル(200)と、を有し、前記ケーブル(200)の、選択された部分(200a)が、前記ケーブルの前記選択された部分(200a)が前記ケーブルガイド(82)の周りを移動させられる時に前記ケーブル(200)がエネルギーを消散する特性を高めるように前記ケーブルの残りの部分よりも高い剛性を有している、シートベルトプリテンショナ。
【請求項2】
前記ケーブル(200)は、前記プリテンショナに結合された固定部材とピストン(58)の一方に連結された第1の端部と、バックル(42)とバックル連結部材(40)の一方に連結された第2の端部と、を有する、請求項1に記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項3】
前記ケーブル(200)は、1本または2本以上のワイヤ(26)をそれぞれ有し、互いに隣接する前記ワイヤ(26)の間にワイヤ間空間(27a)を備える1本または2本以上のストランドを有し、前記ケーブルの前記選択された部分(200a)は、前記ワイヤ間空間(27a)内に配置された、容易に溶融する合金製または樹脂製のケーブル補強材料(204)を有し、前記ケーブル補強材料(204)は、前記ケーブルを湾曲させるのに必要なエネルギーの量を、前記ケーブルの、前記ワイヤ間空間(27a)内に前記ケーブル補強材料を有していない部分に対して変化させている、請求項1または2に記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項4】
前記ケーブル(200)は複数本のストランド(24)を有し、前記ケーブル補強材料(204)は、ストランド間空間(27)内にも前記ワイヤ間空間(27a)内にも配置されている、請求項3に記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項5】
前記ケーブル補強材料(204)は、前記ケーブルの前記選択された部分(200a)の外側も覆っている、請求項3または4に記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項6】
前記ケーブル補強材料(204)の厚さが可変であり、前記ケーブル(200)を湾曲させるのに必要なエネルギーが、前記ケーブル補強材料(204)の厚さ、樹脂、または合金に応じて変化する、請求項3から5のいずれかに記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項7】
前記ケーブル補強材料(204)は、はんだ、樹脂、またはエポキシのうちの1つを含む、請求項3から6のいずれかに記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項8】
前記材料(204)は、溶融した鉛、すず、銀、ビスマス、銅、アンチモン、セレン、樹脂、またはエポキシの混合物の1つを含む、請求項3から6のいずれかに記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項1】
湾曲したケーブルガイド(82)と、前記ケーブルガイド(82)の周りに位置し前記ケーブルガイド(82)に対して移動可能である可とう性で金属製のケーブル(200)と、を有し、前記ケーブル(200)の、選択された部分(200a)が、前記ケーブルの前記選択された部分(200a)が前記ケーブルガイド(82)の周りを移動させられる時に前記ケーブル(200)がエネルギーを消散する特性を高めるように前記ケーブルの残りの部分よりも高い剛性を有している、シートベルトプリテンショナ。
【請求項2】
前記ケーブル(200)は、前記プリテンショナに結合された固定部材とピストン(58)の一方に連結された第1の端部と、バックル(42)とバックル連結部材(40)の一方に連結された第2の端部と、を有する、請求項1に記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項3】
前記ケーブル(200)は、1本または2本以上のワイヤ(26)をそれぞれ有し、互いに隣接する前記ワイヤ(26)の間にワイヤ間空間(27a)を備える1本または2本以上のストランドを有し、前記ケーブルの前記選択された部分(200a)は、前記ワイヤ間空間(27a)内に配置された、容易に溶融する合金製または樹脂製のケーブル補強材料(204)を有し、前記ケーブル補強材料(204)は、前記ケーブルを湾曲させるのに必要なエネルギーの量を、前記ケーブルの、前記ワイヤ間空間(27a)内に前記ケーブル補強材料を有していない部分に対して変化させている、請求項1または2に記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項4】
前記ケーブル(200)は複数本のストランド(24)を有し、前記ケーブル補強材料(204)は、ストランド間空間(27)内にも前記ワイヤ間空間(27a)内にも配置されている、請求項3に記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項5】
前記ケーブル補強材料(204)は、前記ケーブルの前記選択された部分(200a)の外側も覆っている、請求項3または4に記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項6】
前記ケーブル補強材料(204)の厚さが可変であり、前記ケーブル(200)を湾曲させるのに必要なエネルギーが、前記ケーブル補強材料(204)の厚さ、樹脂、または合金に応じて変化する、請求項3から5のいずれかに記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項7】
前記ケーブル補強材料(204)は、はんだ、樹脂、またはエポキシのうちの1つを含む、請求項3から6のいずれかに記載のシートベルトプリテンショナ。
【請求項8】
前記材料(204)は、溶融した鉛、すず、銀、ビスマス、銅、アンチモン、セレン、樹脂、またはエポキシの混合物の1つを含む、請求項3から6のいずれかに記載のシートベルトプリテンショナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−528108(P2006−528108A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521053(P2006−521053)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/014388
【国際公開番号】WO2005/016691
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(504204568)キー セーフティー システムズ、 インコーポレイテッド (59)
【氏名又は名称原語表記】Key Safety Systems, Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/014388
【国際公開番号】WO2005/016691
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(504204568)キー セーフティー システムズ、 インコーポレイテッド (59)
【氏名又は名称原語表記】Key Safety Systems, Inc.
【Fターム(参考)】
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