説明

エネルギ効率の良い方法で連続蒸解装置においてセルロールパルプを製造する方法

【課題】効率的な方法で連続蒸解システムにおいてセルロースパルプを製造する方法を提供する。
【解決手段】セルロースチップは、移送液を用いて移送循環路11で、蒸解装置30の頂部に配置されたセルロースチップから自由液体を分離するためのトップセパレータ20へ連続的に供給される。トップセパレータは自由液体を収集するための回収空間21を有する。分離された温度Tutを有する自由液体の少なくとも一部が、リターンライン32で、トップセパレータの回収空間から移送液として使用されるべき位置まで導かれる。本質的に少なくとも135℃のクッキング温度で、蒸解装置30において少なくとも一度、黒液の加圧回収が行われる。本発明は、温度Tutより高い温度Tinを有する液体添加物をトップセパレータの回収空間21に添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載したように、エネルギ効率の良い方法で連続蒸解装置においてセルロースパルプを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の連続蒸解装置では、チップは、含浸容器内で含浸液に含浸される。次いで、含浸されたチップは蒸解装置内でクッキングされる。そのため、含浸容器と蒸解装置とは、移送循環路を用いて相互に連結されている。移送循環路は、トップセパレータで自由液体を分離するために、チップを含浸容器の出口端から蒸解装置の頂部へ送る移送ラインだけでなく、含浸されたチップ用の移送液として使用するために、分離された液体を蒸解装置の頂部から含浸容器の出口端へ送るリターンラインも有する。
【0003】
蒸気相蒸解装置では、クッキングを開始する前に、チップを加熱するために容器の頂部にスチームが添加される。このスチームは、多量のエネルギを必要とする。このため、幾つかの発明が、蒸解装置へ添加されるスチームの必要性を減らすことに向けられている。
【0004】
スウェーデン国特許SE518957は、蒸解装置の頂部へのスチームの供給の必要性を減らすことを目的の一つとした発明を開示している。この特許によれば、移送循環路中のチップ混合体の温度を上げるために、蒸解装置(2)から回収された黒液(14)の一部が、本質的に回収温度Tavで、液体が保持される移送流の最初の部分に添加される。蒸解装置のトップセパレータから回収された液体の一部が、含浸液として作用し得るように、含浸容器に戻される。この発明によって、チップは加熱され、蒸解装置の頂部でのスチームの消費量を低減でき、そのため、スチームを他の目的で使用することができる。この方法の一つの限界は、添加される黒液の温度があまり高くないことにあり、そのため、スチームの崩壊(implosion)の危険を招く。
【0005】
スウェーデン国特許SE511850は、含浸容器の設計を簡単化し得るように、クッキングの初期段階前の蒸解システムからの液体の回収に関して、蒸解プラントを簡単化する方法を開示している。この発明の一つの好ましい実施例では、材料を上方に送るトップセパレータ内のスクリューの作用の下で液体含有量が低くされた繊維材料に混合するために、液体の分離後に、クッキング液がトップセパレータに添加される。
【0006】
図2によれば、この発明のトップセパレータは、垂直に配置された回転スクリュー29を有する。また、トップセパレータは、下側シーブ部分31を有し、このシーブ部分31は、液体を収集するための中間液体室35を形成するために壁34で囲まれている。液体は、スクリューの作用の下で、シーブ部分31を通して押し出される。スクリュー29の周りにはリング型供給パイプ36が配置されている。リング型供給パイプには、白液及び可能性のある他の液体をチップへ供給するために複数の孔37が設けられている。スチームは、中間圧力で、ライン39を介して、トップセパレータ28に接続された蒸解装置4の頂部にある蒸解装置の上方スチーム空間に加えられ、スクリュー29によって送り込まれ、そして、エッジ33を超えて落ちるチップを加熱する。回収空間35とリング型供給ラインとの間には何の接続もない。
【0007】
この発明の一つのリスクは、添加された液体がチップを逆方向に押し流す危険を冒す可能性があるので、供給ラインで添加される液体が、蒸解装置の頂部の閉塞を引き起こし得ることにある。
【0008】
【特許文献1】スウェーデン国特許SE518957
【特許文献2】スウェーデン国特許SE511850
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の第一の目的は、蒸解装置の頂部でのスチームを用いた加熱の必要性を低減させることにある。
本発明の第二の目的は、クッキング工程の前に、移送流で加熱を行った時に得られる温度より高い熱い液体の温度を用いてチップを加熱することができるようにすることにある。
本発明の第三の目的は、蒸気相蒸解装置におけるトップセパレータでの目詰まりを回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の概念は、エネルギの使用量の点で効率良く、連続蒸解システムにおいてセルロースパルプを製造する方法を達成することにある。標準的な連続蒸解装置では、チップは、移送液で、蒸解装置の頂部に配置されたトップセパレータへ連続的に送られる。
【0011】
液体を収集する回収空間へのセルロースチップからの自由液体の分離は、トップセパレータで行われる。自由液体の一部は、リターンラインで、回収空間から、それが移送液として作用し得る位置へ引き出される。
【0012】
本発明は、熱い液体添加物をトップセパレータの回収空間に添加することを特徴としている。回収空間に添加される熱い液体添加物の温度は、リターンライン内の自由液体における回収された液体の温度より高い。熱い液体を回収空間に添加することで、以下の利点が得られる。
【0013】
・移送循環路で実行される加熱は何れも減らされるか、又は完全に排除され得、それにより、例えば、スウェーデン国特許SE518957に開示されている発明において可能である温度より高い温度で、液体によってチップを加熱できることが保証される。
・頂部で添加されるスチームの量を、大幅に減らすことができる。
・回収位置で添加される熱い液体添加物が、チップを移動方向に反して流すことがなく、これにより、スウェーデン国特許SE511850に比べて、蒸解装置の頂部が閉塞されるリスクが低減される。
・この方法は、回収空間が常に液体で満たされていることを保証し、トップセパレータの閉塞を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1及び図4は、エネルギ効率の良い方法で連続蒸解システムにおいてセルロースパルプを製造する方法の第一の好ましい実施例を示している。セルロースチップは、含浸容器10内の含浸液に含浸させるために連続的に含浸容器10に供給される。
【0015】
含浸が終了すると、含浸されたチップは、移送ライン11内の移送液によって、蒸解装置30の頂部に配置されたトップセパレータ20に供給される。トップセパレータ20は、セルロースチップから自由液体を分離する。ここで、蒸解装置30は、蒸気相蒸解装置である。
【0016】
移送ライン11は、トップセパレータ20の底部に接続され、従って、チップはトップセパレータを通して上方に供給される。
【0017】
図4に示す通り、トップセパレータ20は、垂直に配置された回転上方供給スクリュー22を有する。また、トップセパレータ20はスクリーニング面23を有し、このスクリーニング面23は、中間回収空間21を形成するために非透過壁24で覆われている。前記回収空間21では、スクリュー22の作用の下で、スクリーニング面23を通して押し出される自由液体が収集される。回収空間21は、スクリュー22のネジ付き部分の高さの少なくとも50%、好ましくは、少なくとも75%にわたってのびている。
【0018】
分離された自由液体の少なくとも一部分は、移送液として使用するために、トップセパレータの回収空間から含浸容器の出口端までリターンライン32で導かれる。リターンライン32は、回収空間21の下方部分に接続される。リターンライン32内の回収液体の温度はTutである。好ましくはポンプの形態の加圧手段35が、リターンライン32内に配置されている。
【0019】
少なくとも一回の黒液の加圧回収が、本質的に少なくとも135℃のクッキング温度で、蒸解装置30内で実行される。この黒液の加圧回収の一部分は、黒液ライン34に沿って含浸容器の底部に導かれ得る。
【0020】
温度Tinの液体添加物が、回収空間の上部に接続された添加ライン33を通して添加される。ここで、この液体添加物は、回収黒液の少なくとも一部で構成される。液体添加物は、材料を上方に送るスクリュー22の作用の下でチップに混合される。回収空間に添加される回収黒液の温度と、回収空間から回収される自由液体の温度との間の関係は、Tin>Tutのようになる。添加ライン33で導かれる液体添加物は、チップの移動方向から見てリターンライン32の下流で回収空間21に添加される。
【0021】
移送ライン11における流体/木比率は7以上であり、トップセパレータで加圧された後のチップの残留液体は、3以上の流体/木比率になり、そして、回収空間21に添加される添加ライン33内の液体添加物の量は、1以上の流体/木比率になる。
【0022】
トップセパレータ20で添加される液体添加物におけるCOD(化学的酸素要求量)のレベルは、トップセパレータ20で回収されるリターンライン32内の自由液体のCODより低くても高くてもよい。
【0023】
図2は、本発明の方法による第二の好ましい実施例を示している。液体添加物として加圧された回収黒液を使用する代わりに、この実施例では、回収空間21で回収される自由液体の少なくとも一部が用いられる。この回収自由液体は、それが添加ライン33で、液体添加物として回収空間21に導かれる前に、熱交換器40で加熱される。ここでは、液体添加物の温度TinはTutより高い。熱交換器40内で液体添加物が液体と熱交換するのに用いられる加熱媒体は、加圧された回収黒液で構成され得る。液体と熱交換を行う加熱方法の代わりに他の形式の加熱方法、例えば、スチームによる加熱が用いられ得る。この実施例は、他の点では、第一の好ましい実施例と同一である。
【0024】
図3は、本発明の方法による第三の好ましい実施例を示している。この実施例では、液体添加物は二つの液体で構成される。即ち、一部は第一の好ましい実施例と同様に加圧された回収黒液であり、そして、一部は第二の好ましい実施例と同様に回収空間で回収された加熱自由液体である。この実施例は、他の点では、第一の好ましい実施例と同様である。
【0025】
本発明によれば、以下の好ましい利点が得られる。
・移送循環路で実行される加熱は何れも減らされるか、又は完全に排除され得、それにより、例えば、スウェーデン国特許SE518957に開示されている発明において可能である温度より高い温度で、液体によってチップを加熱できることが保証される。
・頂部で添加されるスチームの量を、大幅に減らすことができる。
・回収位置で添加される熱い液体添加物が、チップを移動方向に反して流すことがなく、これにより、スウェーデン国特許SE511850に比べて、蒸解装置の頂部が閉塞されるリスクが低減される。
・この方法は、回収空間が常に液体で満たされていることを保証し、トップセパレータの閉塞を防止する。
・熱い液体添加物が、移送流の温度に顕著に影響を及ぼすことがない。
【0026】
上述した実施例以外の幾つかの実施例が、添付の特許請求の範囲の枠組み内で実施可能である。例えば、チップを移送液でトップセパレータまで送る前に、それらチップを含浸容器内で含浸させることは必須ではない。代わりに、チップは、スチーム前処理容器内でスチーム前処理に供することができ、又、これらチップは、幾つかの他の方法で処理され得る。
【0027】
従って、チップをトップセパレータに送る前にどのようにして処理するかは、本発明の新規な概念の重要性とは全く関係がない。重要なことは、回収空間に液体が添加されることであり、液体が、回収空間からリターンラインに回収される温度より高い温度を有することである。
【0028】
第三の好ましい実施例のように、液体添加物は二つの液体で構成することができ、また、液体添加物は二つ以上の液体で構成することもできる。本発明の新規な概念に対して唯一の重要な点は、液体添加物の温度が、リターンラインに引き出される回収液体の温度より高いことである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】特許を請求する発明の第一の好ましい実施例を示している。
【図2】特許を請求する発明による蒸解システムの第二の好ましい実施例を示している。
【図3】特許を請求する発明の第三の好ましい実施例を示している。
【図4】特許を請求する方法による蒸解システムの頂部に配置されたトップセパレータを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ効率の良い方法で連続蒸解システムにおいてセルロールパルプを製造する方法であって、
セルロースチップを、移送液を用いて移送循環路(11)で、蒸解装置(30)の頂部に配置されたセルロースチップから自由液体を分離するためのトップセパレータ(20)へ連続的に供給し、前記トップセパレータが自由液体を収集するための回収空間(21)を有し、
分離された温度Tutを有する自由液体の少なくとも一部を、リターンライン(32)で、トップセパレータの回収空間から移送液として使用されるべき位置まで導き、
本質的に少なくとも135℃のクッキング温度で、蒸解装置(30)において少なくとも一度、黒液の加圧回収を行う
セルロースパルプの製造方法において、
温度Tutより高い温度Tinを有する液体添加物をトップセパレータの回収空間(21)に添加する
ことを特徴とするセルロースパルプの製造方法。
【請求項2】
セルロースチップを移送液でトップセパレータ(20)に送る前に、セルロースチップを含浸容器(10)内で含浸液に含浸する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分離された自由液体を、移送液として使用するために、リターンライン(32)で、トップセパレータの回収空間から含浸容器の出口端まで導く
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
液体添加物を、セルロースチップの移動方向から見てリターンラインの下流で回収空間に添加する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
蒸解装置が蒸気相蒸解装置であり、
液体添加物を、トップセパレータにおいて上方に材料を送るスクリューの作用の下でセルロースチップと混合する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
液体添加物を、加熱された液体で構成する
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱された液体を、少なくとも部分的にトップセパレータから回収された液体で構成する
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
液体添加物を、加圧された回収黒液の少なくとも一部で構成する
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
液体添加物を、
加圧された回収黒液の少なくとも一部と、
加熱されたトップセパレータからの回収液の少なくとも一部と
で構成する
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
移送ラインにおける流体/木比率が7以上であり、
トップセパレータの後のチップにおける残留液体が、流体/木比率3以上であり、
添加される液体添加物の量が、流体/木比率1以上である
ことを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
回収空間(21)を、スクリューのネジ部の高さの少なくとも50%、好ましくは、少なくとも75%に亘ってのばす
ことを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
トップセパレータに添加される液体添加物が、トップセパレータから回収される液体より低いCODレベルを有する
ことを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
トップセパレータに添加される液体添加物が、トップセパレータから回収される液体より高いCODレベルを有する
ことを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
液体添加物を、添加ライン(33)を介して、回収空間の上部に添加し、
リターンライン(22)を、回収空間(21)の下方に接続する
ことを特徴とする請求項1〜13の何れか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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