説明

エビを用いた塩辛

【課題】 酒肴や副食として供することができるように食感や食味を調整したエビの塩辛を提供する。
【解決手段】 エビの肉及びエビの頭部の内容物(ミソ)を用いて塩辛を得る。前記エビの頭部の内容物は、前記塩辛の全量に対する比率が、10重量%未満とすることが望ましく、食感調整のために多糖類増粘剤を添加することが可能であり、食味を調整するために、キムチ味、シソ味、わさび味、中華風味、味噌味、ジャン辛味から選ばれる食味を付与する添加物を適宜添加することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエビの肉を含む塩辛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩辛は、魚介類を、殆どの場合は内臓ごと塩漬けにした保存食品であり、塩漬けによって腐敗を防止するとともに、熟成によって生じるアミノ酸により旨味を付与されることもある。居酒屋などにあっては、そのまま、あるいは大根おろしなどと合わせ酒肴として提供され、家庭にあっては、食事の際に副食としたり、米飯の上に載せて茶を注ぎ、茶漬けにしたりする例が多い。
【0003】
素材としては、各種のイカが一般的であり、店頭で販売されているものも、イカを用いたものが多い。その一般的な製法は、適当な大きさに切断した魚介肉及び内臓の全量に対し、約10重量%ないし飽和量の食塩を添加して攪拌した後、熟成させるというものである。
【0004】
また、イカ以外の食材についても、例えば特許文献1には、タコの塩辛の製造方法が、特許文献2には、牡蛎の塩辛の製造方法が、特許文献3には、フグの塩辛の製造方法が開示されている。一方で、エビについて見ると、輸入量では90年代後半にアメリカに抜かれたものの、一人当たりの消費量で見ると、今なお日本は世界一の消費国であるにも関わらず、塩辛として食用に供する先行技術が見受けられない。
【0005】
これは、エビの消費形態が、生食、天麩羅、フライ、寿司などが殆どであることと、塩辛として多用されるイカに比較すると、その食感の違いが大きいことに起因すると考えられる。しかし、エビを塩辛として提供することは、エビ保存性向上や食生活の多様化に寄与するという観点から有用である。
【0006】
【特許文献1】 特開昭49−085270号公報
【特許文献2】 特開昭54−037868号公報
【特許文献3】 特開平02−268639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、酒肴や副食として供することができるように食感や食味を調整したエビの塩辛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記の課題解決のために、エビの処理方法や食感、食味を調整するための食品添加剤や香料の添加を検討した結果なされたものである。
【0009】
即ち、本発明は、エビの肉及びエビの頭部の内容物を含むことを特徴とする、エビを用いた塩辛であり、前記エビの頭部の内容物は、前記塩辛の全量に対する比率が、10重量%未満とすることが望ましく、食感調整のために多糖類増粘剤を添加することが可能であり、食味を調整するために、キムチ味、シソ味、ワサビ味、中華風味、カレー味、味噌味、ジャン辛味から選ばれる食味を付与する添加物を適宜添加することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による塩辛においては、エビの剥き身に、エビの頭部に内容物を加え、さらに食品に粘りやぬめりを付与するために用いられる多糖類増粘剤を添加することにより、従来の調理法によるエビでは味わうことができない食感を得ることができる。なお、エビの頭部の内容物は、慣用的にカニミソと同様にミソと称されることが多いので、以下、ミソと記す。
【0011】
また、本発明においてミソの添加比率を塩辛の全量に対して10重量%未満としたのは、有頭エビから採取できるミソの量が限られていることと、過度に加えるとエビ本来の風味が損なわれるからである。
【0012】
さらに本発明による塩辛においては、エビ本来の淡白な食味を活用して、様々な食味を付与する素材や添加物を添加することにより、基本的な塩味の他に、添加物に応じた食味を呈するようにすることも可能である。例を挙げれば、唐辛子などを加えたキムチ味などがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、具体的な製法に基づいて、本発明の塩辛の実施の形態について説明する。
【0014】
まず、有頭エビを準備し、剥き身とミソを分離する。エビとしては、甘エビやボタンエビを用いることができる。この際、ミソは赤い部分のみを取り出し、10%のエタノール水溶液で消毒した後、十分に水切りを施す。
【0015】
次に、エビの剥き身100重量部に対し、5重量部の食塩と、5重量部のミソ、5重量部の多糖類増粘剤を加えて混合攪拌し、70℃で約30分保持し、殺菌処理を施す。この後、冷蔵庫に入れて熟成させることにより、本発明のエビを用いた塩辛が得られる。なお、ここでは、多糖類増粘剤として、株式会社ショクセンの「オルノTB−1」を用いた。
【0016】
以上に説明したのは、基本的な塩味の塩辛で、他の食味を付与するには、香料や調味料を添加する必要がある。例えば、キムチ味を得るには、定法により粉唐辛子、おろしにんにく、刻みネギ、刻みニラ、おろしショウガ、刻み昆布などを適宜加えて食味を調整すればよい。また、ワサビ味やシソ味を得るには、おろしワサビや刻みミソを適宜加えればよい。
【0017】
以上に説明したように、本発明によれば、従来とはまったく異なる食感や食味を呈するエビを用いた塩辛を提供することができる。なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本技術分野における通常の知識を有する者が想到し得る変形、修正など、例えば、エビとして、甘エビ、ボタンエビ以外のエビを用いた場合も、本発明に含まれることは論を俟たない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エビの肉及びエビの頭部の内容物を含むことを特徴とする、エビを用いた塩辛。
【請求項2】
前記エビの頭部の内容物は、前記塩辛の全量に対する比率が、10重量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載のエビを用いた塩辛。
【請求項3】
多糖類増粘剤を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエビを用いた塩辛。
【請求項4】
キムチ味、シソ味、ワサビ味、中華風味、カレー味、味噌味、ジャン辛味から選ばれる食味を付与する添加物を含むことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のエビを用いた塩辛。

【公開番号】特開2010−162010(P2010−162010A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25378(P2009−25378)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(501452768)株式会社千葉喜商店 (2)
【Fターム(参考)】