説明

エビ材料およびその製造方法

【課題】高級な大型のエビを用いたフライや天ぷらと同等の食感および形状を有したフライや天ぷらを作ることが可能となるエビ材料を低価格にて提供する。
【解決手段】複数の剥きエビのうち、胴体部形状が保持されている第1の剥きエビ12と、胴体長さ方向に切込みを入れてその切込み面を露出する形で開かれた第2の剥きエビ11とを、それぞれ1尾以上有し、第1の剥きエビの外周表面に複数の切込溝11fを入れるとともに、第2の剥きエビの開き面表面に切込溝と同じ方向に複数の切込溝を入れ、第1の剥きエビの外周に、切込みにより開かれた第2の剥きエビの開き面を密着させる形で巻きつけるとともに、その密着面が複数の切込溝により接合され、第1の剥きエビと第2の剥きエビとが一体化してエビ接合体となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エビ材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フライや天ぷらに用いるエビは、そのサイズが大きくなるほど仕入れ価格が高くなる一方、消費者はそうした大型サイズの高級エビからなるエビフライや海老天を、より低価格で食したいと望むものである。
この要望にこたえるため、低価格の小型のエビに大量の衣を着けて、見かけ上大きなエビのフライや天ぷらを作る手法がある(特許文献2の図5参照)。ところが、この手法では、実際に食べた時に衣の部分ばかりとなるため、ユーザーが食べた後に不満を持つことは明らかである。
また、特許文献1には、低価格の小型エビを胴体長さ方向に引き伸ばして、見かけ上大きなエビのフライや天ぷらを作る手法が開示されている。ところが、この手法の場合、長く引き伸ばすほどエビの繊維が切れてしまうから、エビ独特のプリッとした歯ごたえ・食感が減じられ、ユーザーが食べた後に不満を持つ可能性がある。また、長く引き伸ばすにも限界がある。
【0003】
また、特許文献2には、2尾の剥きエビをそれぞれの胴体の側面で接着する手法が開示されている。ところが、この手法の場合、特許文献2の図2に示すように、通常の大型エビを使用したエビフライや海老天のように、スマートに長くのびる形状とならず、中央部分が極端に膨らんだ不細工な形になってしまう。従って、ユーザーを満足させる大型のエビのフライや天ぷらを作成できているとはいえない。
【0004】
また、特許文献1〜3のように、エビや魚のすり身を使用してサイズアップした場合には、使った部分においてエビ独特の歯ごたえや食感がなくなる。このため、ユーザーは、これを食した際に、見かけ上のサイズから期待する食感と、実際に食べた時の食感との落差を大きく感じ、不満を持つ可能性がある。また、この場合、エビや魚のすり身を別に作って用意しておかなければならないという、製造上の手間も問題となる。また、特許文献1および3では、各剥きエビに多くの切れ目を入れるため、エビの繊維がいたるところで切断されているから、個々のエビの食感は調理前に既に減じられている。さらに、特許文献3の場合、切れ目を入れた複数のエビを、向きを無視してランダムに配置しているため、部分的に食感の悪い箇所ができてしまい、ユーザーの満足感を得られない可能性がある。
【0005】
以上のように、現時点で考案されているエビ材料のサイズアップ手法は、あくまで見かけの上で大きく見えればよいというものに過ぎず、大型サイズのエビのフライや天ぷらに形状が類似し、なおかつその食感までもそれに近いものにできるという効果を達成できる手法は、これまでに存在していなかった。
さらに、従来の方法では、エビ1尾を大きくサイズアップすることに主目的が置かれており、エビ材料として斬新でユーザーを満足させる新商品が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−43363号
【特許文献2】特許3299255号
【特許文献3】特開昭52−136950
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、高級な大型のエビを用いたフライや天ぷらと同等の食感および形状を有したフライや天ぷらを作ることが可能となると共に、ユーザーを満足させる新規なエビ材料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエビ材料は、複数の剥きエビのうち、胴体部形状が保持されている第1の剥きエビと、胴体長さ方向に切込みを入れてその切込み面を露出する形で開かれた第2の剥きエビとを、それぞれ1尾以上有し、第1の剥きエビの外周表面に複数の切込溝を入れるとともに、第2の剥きエビの開き面表面に、第1の剥きエビの外周表面に形成された複数の切込溝と同じ方向に、複数の切込溝を入れ、第1の剥きエビの外周に、上記切込みにより開かれた第2の剥きエビの開き面を密着させる形で巻きつけるとともに、その密着面が複数の切込溝により接合され、第1の剥きエビと第2の剥きエビとが一体化して、エビ接合体となっていることを特徴とする。
また、第2の剥きエビは切込みにより開かれた開き面を、第1の剥きエビの胴体長さ方向における一方の端部側の外周に巻きつける形で接着されていることを特徴とする。
また、第1の剥きエビが複数あり、第2の剥きエビが隣接する第1の剥きエビにまたがって巻きつく形で双方に接着し、隣接するそれら第1の剥きエビを連結していることを特徴とする。
【0009】
本発明のエビ材料は、第1の剥きエビの外周表面と第2の剥きエビの開き面表面との密着面が食品加工用接着剤により接着されていることを特徴とする。
本発明のエビ材料は、上記エビ材料を複数個集合させて筏状に接合させたことを特徴とする。
【0010】
本発明のエビ材料の製造方法は、エビに対し、頭部除去、殻剥き、背わた除去を行ない第1の剥きエビを得る下準備工程と、この下準備工程を経たエビに切込みを入れ、その切込み面を露出する形で開いて開き面を形成して第2の剥きエビを得る開き工程と、この開かれた第2の剥きエビの開き面上に、第1の剥きエビを重ねて配置して、この配置された第1の剥きエビの外周を被うように第2の剥きエビの開き面を巻きつけて、両剥きエビを密着させる巻きつけ工程とを備えることを特徴とする。
また、上記巻きつけ工程前に、両剥きエビの密着面に対して、同じ方向に複数の切込溝を形成する工程を有することを特徴とする。
また、上記巻きつけ工程前に、両剥きエビの密着面に対して、食品加工用接着剤を塗布することを特徴とする。
本発明のエビ材料の製造方法は、上記製造方法で製造されたエビ材料を複数個集合させて、その接合面に食品加工用接着剤を塗布することで相互に接合させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエビ材料は、胴体部形状が保持されている第1の剥きエビを芯とし、その外周面に、切込みにより開かれた第2の剥きエビを巻きつけ、この状態で双方を一体化させる。つまり、胴体形状がそのまま残る第1の剥きエビが、切込みにより開かれた第2の剥きエビによって外周が被われて補強された状態となる。このようにして作られたエビ材料によりフライや天ぷらを作って食する場合、第1の剥きエビの身だけでなくその外に巻きつく第2の剥きエビの身も歯で噛み切らなければならないから、身のぎっしりと詰まった大型のエビの食感と同様の食感を得ることができる。また、第2の剥きエビは、第1の剥きエビの外周に巻きつけられているだけなので、エビ材料の全体の形状は、エビの基本形状である棒形状のままとなっており、形としては大型のエビと同様である。また、噛み切った時の断面形状も略円形の断面を有するから、大型のエビの断面形状と同様となる。また、特許文献2のように、胴体部形状の残る剥きエビのみを接着して構成する場合には、接着部分の接着強度が弱くなるという問題もあるが、上記本発明によれば、胴体部形状の残る第1の剥きエビの外周に第2の剥きエビの開き面が巻きつく形で接合されるから、胴体同士を接合する場合よりも接着強度が高くなる。
【0012】
また、現状、フライ用や天ぷら用等の材料となるエビは、人工的に飼育されて、サイズ別に管理・販売されている。この場合、特大サイズのエビを販売しようとすれば、生産者は長期間にわたってエビを飼育する必要があり、長期間にわたって管理費およびリスクを負い続けなければならなかった。ところが、上記した本発明のエビ材料であれば、人工的に様々なサイズのエビ材料を作り出すことが可能となるから、生産者による上記のような長期飼育は不要であり、管理費およびリスクがかからない。よって、計り知れない利益が約束されるものと思われる。
【0013】
本発明のエビ材料は、形状として大型にできるエビ材料を複数個集合させて筏状に接合させることにより、従来のフライ用や天ぷら用等の材料以外に、ステーキなどにも応用することができ、新規なエビ食材が得られる。
【0014】
本発明のエビ材料の製造方法は、下準備工程と、開き工程と、巻きつけ工程とを備えるので、特別な装置、手法を採用することなく簡易な方法でエビ材料を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態をなすエビ材料およびその製造工程を示す図である。
【図2】本発明の第二実施形態をなすエビ材料およびその製造工程を示す図である。
【図3】本発明の第三実施形態をなすエビ材料およびその製造工程を示す図である。
【図4】本発明のエビ材料の第一変形例を示す図である。
【図5】本発明のエビ材料の第二変形例を示す図である。
【図6】本発明のエビ材料の第三変形例を示す図である。
【図7】本発明のエビ材料の第四変形例を示す図である。
【図8】本発明のエビ材料の第五変形例を示す図である。
【図9】A−A断面図である。
【図10】本発明のエビ材料の他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のエビ材料1は、複数の剥きエビを用い、全体としてそれら個々の剥きエビよりも大きいサイズのエビに見えるよう形成され、例えば、フライ用または天ぷら用のエビ材料として用いられる。
用いられる剥きエビには、胴体部形状が保持されている第1の剥きエビと、胴体長さ方向に切込みを入れてその切込み面を露出する形で開かれた第2の剥きエビとがあり、それぞれが1尾以上用いられる。そして、第1の剥きエビを芯とし、その外周面に、開かれた第2の剥きエビの開き面を巻きつけるような形で密着させる。密着面は、第1および第2の剥きエビに形成された複数の切込溝の凸部と凹部の係合いにより接合され、第1の剥きエビと第2の剥きエビとが一体化されたエビ接合体となっている。
【0017】
上記本発明のエビ材料1の場合、第1の剥きエビを芯とし、その外周面に第2の剥きエビを巻きつけるから、太さを増すことができる。また、開かれた第2の剥きエビを、芯となる第1の剥きエビの胴体長さ方向においてずらした位置で巻きつけて接着する、即ち、芯となる第1の剥きエビの胴体長さ方向における一方の端部側の外周に巻きつく形で接着することにより、一体化されてなるエビ材料1全体の長さを増すことができる。
【0018】
さらに、本発明のエビ材料1は、大型のエビと同様の形状に仕上げたいので、一方の端部よりも他方の端部の方が太い棒形状となるよう、第1の剥きエビと第2の剥きエビとを一体化して形成されるとよい。外殻をなす尻尾部を飾りとして残す場合には、当該尻尾部が付く側の端部1bよりもその逆側の端部1aが太い、棒形状に形成するとよい。なお、これらはあくまで端部同士での太さ比較であり、それらの間の中間部については、少なくとも細い側の端部より太ければよく、わずかな凹凸があったとしても、衣3をつけることで見えなくなる。
【0019】
また、本発明のエビ材料1を大型のエビと同様の形状に仕上げるためには、例えば、芯となる第1の剥きエビは全て、その尻尾側が、一体化されたエビ材料の細い方の端部側に向くように配置するとよい。また、芯となる第1の剥きエビの外周に巻きつけられる第2の剥きエビのうち、一体化されたエビ材料の細い方の端部側に位置するものについては、その尻尾側が、当該エビ材料の細い方の端部側に向くように配置されるとよい。
【0020】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態に係るエビ材料について、図1を参照して説明する。第一実施形態におけるフライ用または天ぷら用のエビ材料1A(1)は、2尾のエビ11、12を使用する。
まず、生のエビを準備する。冷凍状態で仕入れたエビは解凍する。そして、これらのエビに対し、頭部除去、殻剥き、背わた除去を行なう(下準備工程)。本実施形態においては、上記のような下準備がなされた2尾の剥きエビ11、12を用いる。ただし、そのうちの1尾の剥きエビ11は、外殻をなす尻尾部2が残存する尻尾付き剥きエビであり、もう1尾の剥きエビ12は、殻剥きの際に、外殻をなす尻尾部2をも除去した尻尾無し剥きエビである。第一実施形態では、芯としての役割を果たす本発明の第1の剥きエビとして、尻尾無し剥きエビ12を用い、その芯をなす剥きエビの外周に巻きつけられる本発明の第2の剥きエビとして、尻尾付き剥きエビ11を用いる。
【0021】
次に、第2の剥きエビ11に切込みを入れ(図1(a)参照)、その切込み面を露出する形で開いて開き面を形成する(開き工程:図1(b)参照)。ここでは、尻尾付き剥きエビ(第2の剥きエビ)11の頭部側(符号11a側)に切込み11dを入れ、その切込み面を露出する形で開いて、頭部側に開き面11cを形成する。また、ここでは、エビの胴体の腹部側に胴体長さ方向に沿って頭部側端部から胴体中央部まで続く切込みが入れられる。
続いて、開かれた第2の剥きエビ11の開き面上に、第1の剥きエビ12を重ねて配置(図1(c)参照)する。そして、配置された第1の剥きエビ12の外周を被うように第2の剥きエビ11の開き面を巻きつけて、両剥きエビ11、12を密着させる(巻きつけ工程:図1(d)参照)。
【0022】
ここでは、尻尾付き剥きエビ(第2の剥きエビ)11の頭部側の開き面11c上に、尻尾無し剥きエビ(第1の剥きエビ)12の胴体長さ方向(図1の場合は図の左右方向)における一方の端部側を配置し、この開き面11cにて、尻尾無し剥きエビ12の当該端部側外周を被うように巻きつけて、両剥きエビ11、12を密着させる。さらにいえば、尻尾付き剥きエビ11の頭部側開き面11c上に、尻尾無し剥きエビ12を尻尾側(符号12b側)の腹部が接触するように配置し、この接触状態を保持したままこの開き面11cにて尻尾無し剥きエビ12の尻尾側外周を被うように巻きつけ、両剥きエビ11、12を密着させる。
【0023】
ただし、密着させる工程の前(巻きつけ工程の前)には、第1の剥きエビ12と第2の剥きエビ11の密着面に対して、同じ方向に複数の切込溝11f、12fを形成する(図1(b)、(b’)参照)。この複数の切込溝11f、12fを有する面同士を密着させることで切込溝の凹凸が重なり合い、密着面が一体化する。
また、第1の剥きエビ12と第2の剥きエビ11との密着面のいずれかまたは双方に、食品用接着剤4を付着させておくことができる(図1(b'')参照)。いずれかの密着面に食品用接着剤4が付着されていれば、その密着面は接着されて一体化される。なお、食品用接着剤4の付着作業は、一方の剥きエビに切込みを入れて開き面を形成した後、その開き作業に続いて実施するとよい。これにより、切込み、開き、食品用接着剤4の付着といった全て作業を同一の剥きエビ(ここでは第2の剥きエビ11)に対してのみ行なうことになる。他方の剥きエビ(ここでは第1の剥きエビ12)には上記した処置が必要無くなるから、効率的に作業が進む。ここでは、尻尾付き剥きエビ(第2の剥きエビ)11の頭部側開き面11cに、尻尾無し剥きエビ(第1の剥きエビ)12の尻尾側外周を密着させるから、尻尾付き剥きエビ11の頭部側開き面11cに食品用接着剤4を付着させておく。
【0024】
ここで、食品用接着剤4について説明する。本実施形態においては、第1の剥きエビ12と第2の剥きエビ11とが、トランスグルタミナーゼの酵素作用により接着される。ここでは、トランスグルタミナーゼを有効成分とする粉末の食品加工用接着剤(例えば、味の素株式会社が製造販売している「アクティバTG−B粘着タイプ」:トランスグルタミナーゼ0.5%、二酸化ケイ素2%、魚ゼラチン他97.5%)を、その使用方法に従い適量、剥きエビに所定位置(密着予定面)に付着させる。剥きエビには、一定の水分が付着しており、当該粉末が付着すると適宜広がる。この状態で密着させると、約3分後、長くとも5分後には固まり、軽く引っ張っても抜けない状態となる。ただし、本発明は、この接着剤(上記のトランスグルタミナーゼ製剤)4、さらにはこの接着剤による接着方法に限られるものではなく、上述した複数の切込溝による密着と併用することができる。
【0025】
第1の剥きエビ12と第2の剥きエビ11とが密着して固まった接着状態となることでエビ材料1A(1)は完成となる。完成したエビ材料1Aは、頭部を除去した複数の剥きエビ11、12のうち、外殻をなす尻尾部を除去し、かつ胴体部形状が保持されている1尾の第1の剥きエビ11と、外殻をなす尻尾部2を有し、かつ頭部側に胴体長さ方向の切込みを入れてその切込み面を露出する形で開かれた1尾の第2の剥きエビ12とを用い、第1の剥きエビ11の尻尾側外周には、切込みにより開かれた第2の剥きエビ12の頭部側の開き面12cが密着した形で巻きつくとともに、その密着した面12cが複数の切込溝11f、12f同士の重なりにより、食品加工用接着剤4等により接着されることにより、または両者の併用により、それら第1の剥きエビ11と第2の剥きエビ12とが一体化したエビ接合体である。
【0026】
このエビ材料(エビ接合体)1Aは、一方の端部よりも他方の端部の方が太い棒形状をなし、1尾の高級な大型サイズのエビと同様の形状となる。従って、この一体化されたエビ材料1Aを用いれば、高級な大型サイズのエビと同様の形状のフライや天ぷらを作ることができる。また、この一体化されたエビ材料1Aは、胴体形状が残る第1の剥きエビ12に、開かれた第2の剥きエビ11を巻きつける形で形成されているのだから、いわば、芯をなす1尾のエビの外周側をもう一尾のエビで補強した状態といえる。よって、これを噛み切った時には、大型の高級エビで作られたフライや天ぷらと同様の十分な噛み応えを楽しめる。また、エビの繊維も多く残っているためエビの独特の食感も残っているから、これを口にした時にユーザーが不満を持つことは無い。なお、ここで用いられた第1の剥きエビ12と第2の剥きエビ11とは、双方ともが同程度の大きさ(サイズ)を有する。
【0027】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。以下、上記第一実施形態とは異なる他の実施形態について説明する。なお、同じ構成については同符号を付することにより、説明を略する。
【0028】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係るエビ材料について、図2を参照して説明する。第二実施形態におけるエビ材料1B(1)は、3尾のエビ13、14、15を使用し、上記第一実施形態のエビ材料1Aよりもサイズの大きいエビ材料である。
まずは、解凍されたエビに対し、頭部除去、殻剥き、背わた除去を行なう(下準備工程)。そして、上記下準備がなされた3尾の剥きエビ13、14、15を用いる。それらのうち1尾の剥きエビ13は、外殻をなす尻尾部2が残存する尻尾付き剥きエビであり、もう2尾の剥きエビ14、15は、殻剥きの際に外殻をなす尻尾部2を除去した尻尾無し剥きエビである。第二実施形態では、一方の尻尾無し剥きエビ15を本発明の第1の剥きエビとし、他方の尻尾無し剥きエビ14と尻尾付き剥きエビ13を本発明の第2の剥きエビとする。
【0029】
次に、尻尾付き剥きエビ(第2の剥きエビ)13に、上記第一実施形態と同様に切込み13dを入れて(図2(a)参照)、頭部側に開き面13cを形成する(第一開き工程:図2(b)参照)。また、尻尾無し剥きエビ(第2の剥きエビ)14に、頭部側から尻尾側にかけて切込み14dを入れ(図2(a)参照)、その切込み面を露出する形で開き、頭部側から尻尾側にかけて開かれた開き面14cを形成する(第二開き工程:図2(b)参照)。ここでは、いずれの切込み13d、14dも、エビの胴体腹部側になされるものとする。
続いて、尻尾付き剥きエビ(第2の剥きエビ)13の頭部側開き面13cに隣接する形で、尻尾無し剥きエビ(第2の剥きエビ)14を配置し、双方の開き面13c、14cが並んで続く状態とする(図2(b)参照)。そして、これら双方の開き面13c、14cにまたがる形で尻尾無し剥きエビ(第1の剥きエビ)15を配置し(図2(c)参照)、これら開き面13c、14cにて、当該尻尾無し剥きエビ15の外周を被うように巻きつけ、これらを密着させる(巻きつけ工程:図2(d)参照)。
【0030】
ここでは、尻尾付き剥きエビ(第2の剥きエビ)13の頭部側端部13aに、尻尾無し剥きエビ(第2の剥きエビ)14の頭部側端部14aを隣接させ、なおかつそれら双方の剥きエビの胴体長さ方向が一直線上にそろうように配置される。尻尾無し剥きエビ15は、尻尾付き剥きエビ13の頭部側開き面13c上に自身の尻尾側端部15bが位置し、尻尾無し剥きエビ14の開き面14c上の頭部側端部14aの側に自身の頭部側端部15aが位置するよう、双方の開き面13c、14cにまたがって配置される。このとき、尻尾無し剥きエビ15は、その腹部を剥きエビ13、14の開き面13c、14cに接触するよう配置し、この状態を保持する形で巻きつけられるとよい。
なお、上記の巻きつけがなされた後、尻尾無し剥きエビ(第2の剥きエビ)14の開き面14cの尻尾側は、尻尾無し剥きエビ(第1の剥きエビ)15が内包されていない筒状となるから、この尻尾側の筒状部分(尻尾側の先端)14eは、内部の空洞がなくなるよう頭部側(14a側)に折り返して、当該尻尾無し剥きエビ14自身の外表面および当該尻尾無し剥きエビ14自身がまきつく尻尾無し剥きエビ15の外表面のいずれかまたは双方に密着させる(折り返し工程:図2(e)参照)。
【0031】
密着させる工程の前(巻きつけ工程、折り返し工程の前)には、剥きエビ13、14、15において互いに密着する両面に同じ方向に複数の切込溝13f、14f、15fを形成する。この複数の切込溝13f、14f、15fを有する面同士を密着させることで切込溝の凹凸が重なり合い、密着面が一体化する。
また、剥きエビ13、14、15において互いに密着する両面のいずれかまたは双方に、食品用接着剤4を付着させておくことができる(接着剤付着工程)。食品用接着剤4が付着されていれば、密着した面は接着固定されてより一体化される。ここでは、剥きエビ(第2の剥きエビ)13、14に切込み13d、14dを入れて開き面13c、14cを形成し、その開き作業に続いて、当該開き面13c、14cおよび尻尾無し剥きエビ14の折り返しの際に密着する面に対し食品用接着剤4の付着作業を行うものとする。なお、食品用接着剤4については、上記第一実施形態と同様であるから説明を略する。
【0032】
各剥きエビ13、14、15が密着して固まった接着状態となることで、エビ材料1B(1)は完成となる。完成したエビ材料1Bは、頭部を除去した複数の剥きエビ13、14、15のうち、胴体部形状が保持されている1尾の第1の剥きエビ15と、胴体長さ方向に切込みを入れてその切込み面を露出する形で開かれた2尾の第2の剥きエビ13、14とが用いられており、1尾の第1の剥きエビ15は、外殻をなす尻尾部2が除去されている一方で、2尾の第2の剥きエビ13、14のうち一方の剥きエビ13は、外殻をなす尻尾部2を有し、かつ頭部側に胴体長さ方向の切込みを入れて開かれた頭部側の開き面13cを有しており、他方の剥きエビ14は、外殻をなす尻尾部2が除去されており、かつ頭部側から尻尾側にかけて胴体長さ方向の切込みを入れて開かれた開き面14cを有する。そして、第1の剥きエビ15の尻尾側外周には、尻尾部2を有する第2の剥きエビ13の頭部側の開き面13cが密着した形で巻きつき、同じく当該第1の剥き15エビの頭部側外周には、尻尾部2が除去された第2の剥きエビ14の開き面14cの頭部側が密着した形で巻きつくとともに、当該尻尾部2が除去された第2の剥きエビ14は、その尻尾側先端14eが自身の頭部側に折り返されて、当該第2の剥きエビ14および当該第2の剥きエビ14が巻きつく第1の剥きエビ15に対し密着しており、それらの密着した面の全てが切込溝により、食品加工用接着剤4により、またはそれらを併用することで接着されて、それら第1の剥きエビ15と第2の剥きエビ13、14とが一体化したエビ接合体となっている。
【0033】
このエビ材料(エビ接合体)1Bも、第一実施形態のエビ材料1Aと同様、一方の端部1bよりも他方の端部1aの方が太い棒形状をなす。特に、太い側の先端部1aは、頭部側から尻尾側まで開かれた第2の剥きエビの先端を折り返して重なる形をなしており、第一実施形態のエビ材料1Aの端部1aよりもより太い状態となっている。このように、第二実施形態のエビ材料1Bは、第一実施形態のエビ材料1Aよりも長さと太さにおいて上回っており、より高級な大型サイズのエビと同様の形状を再現している。なお、ここで用いられた剥きエビ13〜15は全て同程度の大きさ(サイズ)を有する。
【0034】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態に係るエビ材料について、図3を参照して説明する。第三実施形態におけるフライ用または天ぷら用のエビ材料1C(1)は、5尾のエビ16〜20を使用し、上記第二実施形態のエビ材料1Bよりもサイズの大きいエビ材料である。
【0035】
まずは、解凍されたエビに対し、頭部除去、殻剥き、背わた除去を行う(下準備工程)。そして、上記下準備がなされた剥きエビのうち、5尾の剥きエビ16〜20を用いて1つのエビ材料1Cを製造する。それらのうち1尾の剥きエビ16は、外殻をなす尻尾部2が残存する尻尾付き剥きエビであり、残り4尾の剥きエビ17〜20は、殻剥きの際に外殻をなす尻尾部をも除去した尻尾無し剥きエビである。第三実施形態では、4尾の尻尾無し剥きエビ17〜20のうち2尾の剥きエビ19、20を本発明の第1の剥きエビとし、残りの2尾の剥きエビ17、18を本発明の第2の剥きエビとする。また、1尾の尻尾付き剥きエビ16は本発明の第2の剥きエビとする。
【0036】
次に、尻尾付き剥きエビ(第2の剥きエビ)16に、上記第一実施形態と同様の切込み16dを入れて(図3(a)参照)、頭部側の開き面16cを形成する(第一開き工程:図3(b)参照)。また、尻尾無し剥きエビ(第2の剥きエビ)17、18に、頭部側から尻尾側にかけて切込み17d、18dを入れ(図3(a)参照)、その切込み面を露出する形で開き、頭部側から尻尾側にかけて開かれた開き面17c、18cを形成する(第二開き工程:図3(b)参照)。ここでは、いずれの切込み16d、17d、18dも、エビの胴体の腹部側に入れられるものとする。
【0037】
続いて、尻尾付き剥きエビ(第2の剥きエビ)16の頭部側の開き面16cに隣接する形で、開かれた尻尾無し剥きエビ(第2の剥きエビ)17を配置し、さらにこれに隣接してもう1尾の開かれた尻尾無し剥きエビ(第2の剥きエビ)18を配置し、これら3尾の開き面16c、17c、18cが直線的に並んで続く状態とする(図3(c)参照)。尻尾無し剥きエビ(第1の剥きエビ)19、20は、それらの胴体方向が一直線状となり、なおかつ配置された剥きエビ16、17、18のうち隣接する2尾の開き面(16c−17c、17c−18c)に1尾ずつがまたがる形で配置される(図3(c)参照)。そして、これら開き面16c、17c、18cにて、それら尻尾無し剥きエビ19、20の外周を被うように巻きつけ、これらを密着させる(巻きつけ工程:図3(d)参照)。
【0038】
ここでは、尻尾付き剥きエビ(第2の剥きエビ)16の頭部側端部16aに、尻尾無し剥きエビ(第2の剥きエビ)17の尻尾側端部17bの先端部分を重ねるようにして配置する(符号167部分)。さらに、その尻尾無し剥きエビ17の頭部側端部17aに、もう一方の尻尾無し剥きエビ(第2の剥きエビ)18の頭部側端部18aを隣接して配置する。また、これら剥きエビ16、17、18は、互いの胴体長さ方向が一直線上にそろうように配置される。その上で、尻尾無し剥きエビ(第1の剥きエビ)19は、尻尾付き剥きエビ16の頭部側開き面16c上に、尻尾側端部19bが位置し、尻尾無し剥きエビ17の開き面17c上の尻尾側に、頭部側端部19aが位置するように配置される。さらに、尻尾無し剥きエビ(第1の剥きエビ)20は、尻尾無し剥きエビ17の開き面17c上の頭部側に、頭部側端部20aが位置し、尻尾無し剥きエビ(第2の剥きエビ)18の開き面18c上の頭部側に、尻尾側端部20bが位置するように配置される。このとき、尻尾無し剥きエビ(第1の剥きエビ)19、20は、その腹部を剥きエビ16、17、18の開き面16c、17c、18cに接触するよう配置し、この状態を保持する形で巻きつけられるとよい。
【0039】
なお、上記の巻きつけがなされた後、尻尾無し剥きエビ(第2の剥きエビ)18の尻尾側には、尻尾無し剥きエビ(第1の剥きエビ)20が内包されていない筒状となるから、この尻尾側の筒状部分(尻尾側の先端)18eは、自身の頭部側端部18aの側に折り返して、当該剥きエビ18自身の外表面および当該剥きエビ18自身がまきつく剥きエビ20の外表面のいずれかまたは双方に密着させる(折り返し工程:図3(e)参照)。
【0040】
密着させる工程の前(巻きつけ工程、折り返し工程の前)には、尻尾無し剥きエビ17の開き面17Cと、剥きエビ19の表面とにそれぞれ同一方向に切込溝17f、19fとを形成する。この複数の切込溝17f、19fを有する面同士を密着させることで切込溝の凹凸が重なり合い、密着面が一体化する。また、剥きエビ16〜20において互いに密着する両面のいずれかまたは双方に、食品用接着剤4を付着させておくことができる(接着剤付着工程)。食品用接着剤4が付着されていれば、密着した面は接着固定されて一体化される。ここでは、剥きエビ(第2の剥きエビ)16、17、18に切込み16d、17d、18dを入れて開き面16c、17c、18cを形成し、その開き作業に続いて、当該開き面16c、17c、18cおよび尻尾無し剥きエビ18の折り返しの際に密着する面に対し、食品用接着剤4の付着作業を行うものとする。なお、食品用接着剤4については、上記第一実施形態と同様であるから説明を略する。
【0041】
各剥きエビ16〜20が密着して固まった接着状態となることで、エビ材料1C(1)は完成となる。完成したエビ材料1Cは、頭部を除去した複数の剥きエビ16〜20のうち、胴体部形状が保持されている2尾の第1の剥きエビ19、20と、胴体長さ方向に切込みを入れてその切込み面を露出する形で開かれた3尾の第2の剥きエビ16〜18とを用い、2尾の第1の剥きエビ19、20は、外殻をなす尻尾部2が除去されている一方で、3尾の第2の剥きエビ16〜18のうち1尾(16)は、外殻をなす尻尾部2を有し、かつ頭部側に胴体長さ方向の切込みを入れて開かれた頭部側開き面16cを有し、他方、残余の2尾(17、18)は、外殻をなす尻尾部2が除去されており、かつ頭部側から尻尾側にかけて胴体長さ方向の切込みを入れて開かれた開き面17c、18cを有する。そして、尻尾部2を有する第2の剥きエビ16の頭部側開き面16cは、2尾の第1の剥きエビ19、20のうち一方の剥きエビ19の尻尾側外周に密着した形で巻きつき、当該第1の剥きエビ19の頭部側外周には、尻尾部2が除去された2尾の第2の剥きエビ17、18のうち一方の剥きエビ17の開き面17cの尻尾側が密着した形で巻きついており、さらに、当該第2の剥きエビ17の開き面17cの頭部側は、残り1尾の第1の剥きエビ20の頭部側外周に密着した形で巻きつき、当該第1の剥きエビ20の尻尾側外周には、尻尾部2が除去された残り1尾の第2の剥きエビ18の開き面18cの頭部側が密着した形で巻きついている。当該第2の剥きエビ18は、その尻尾側先端18eが自身18の頭部側に折り返されて、当該第2の剥きエビ18および当該第2の剥きエビ18が巻きつく第1の剥きエビ20に対し密着しており、それら密着した面の全てが食品加工用接着剤4により接着されて、それら第1の剥きエビ19、20と第2の剥きエビ16、17、18とが一体化したエビ接合体となっている。
【0042】
このエビ材料(エビ接合体)1Cも、第一実施形態および第二実施形態のエビ材料1A、1Bと同様、一方の端部1bよりも他方の端部1aの方が太い棒形状をなす。特に、太い側の先端部1aは、頭部側から尻尾側まで開かれた第2の剥きエビ18の先端を折り返して重なる形をなしており、第一実施形態のエビ材料1Aの端部1aよりもより太い状態となっている。このように、第三実施形態のエビ材料1Cは、第一実施形態のエビ材料1Aよりも長さと太さにおいて上回っており、第二実施形態のエビ材料1Bよりも長さにおいて上回っているから、より高級な大型サイズのエビと同様の形状を再現している。なお、ここで用いられた剥きエビ16〜20は全て同程度の大きさ(サイズ)を有する。
【0043】
(変形例)
以下、上記した各実施形態にも適用可能な変形例を例示する。
上記実施形態においては、使用する各剥きエビのサイズをほぼ同じにそろえて実施しているが、本発明では、サイズが異なっていても、第1の剥きエビと第2の剥きエビが互いに接着・一体化可能なサイズを有していればよい。ただし、符号11、13、16のような尻尾付き剥きエビについては、よりサイズが大きい尻尾部を有したものの方が望ましい。例えば、図4に示すように、尻尾付き剥きエビ16'を、残余の剥きエビ(17〜20)よりも大きいサイズのものとし、残余の剥きエビの除去前の尻尾部よりも大きい尻尾部2'が、完成後のエビ材料に残存するとよい。完成後のエビ材料(エビ接合体)1C'(1)を、パーツとなる個々の剥きエビよりも大きなエビに見せる以上、飾りとして付く尻尾部も大きく見せた方が、見た目の違和感が少ないからである。完成後のサイズが大きいエビ材料(エビ接合体)1C'(1)ほど、よりサイズの大きい尻尾付き剥きエビを用いるとよい。図4は、図3の尻尾付き剥きエビ16を、それよりも大きい尻尾付き剥きエビ16'に置き換えた図である。
また、飾りとして残される外殻をなす尻尾部2(または2')は、1つのエビ材料1に対し複数とすることも可能ではあるが、よりリアルなエビ形状を再現するためには尻尾部2は1つとすることが望ましい。
【0044】
上記実施形態においては、切込みを入れて開かれる第2の剥きエビの中に、尻尾部2(または2')を有した尻尾付き剥きエビが含まれる構成とされているが、開かれない第1の剥きエビの中に、尻尾部2を有した尻尾付き剥きエビが含まれる構成であってもよい。この場合、完成後の尻尾部2側の端部には、尻尾部2を有した第1の剥きエビ(尻尾付き剥きエビ)が配置され、当該第1の剥きエビの頭部側端部の外周に、第2の剥きエビの開き面が巻きつく形で接着される。上記第一実施形態のようなサイズとする場合、第2の剥きエビには、尻尾側または頭部側のいずれかに切込みを入れて開き面を形成し、この開き面を、尻尾部2を有した第1の剥きエビの頭部側外周に巻きつける形で接着すればよい。上記第二および第三実施形態のようなサイズとする場合には、尻尾部2を有した第1の剥きエビ(尻尾付き剥きエビ)の頭部側外周を、頭部側から尻尾側にかけて切込みを入れて開かれた開き面上の尻尾側にて巻きつけて接着し、残余の部分は、上記第二および第三実施形態と同様の形態とすればよい。
【0045】
図5はその具体例であり、第2の剥きエビ22には、頭部側端から尻尾部側端にかけて切込み22dを入れて開き面22cを形成し、この開き面22cの頭部側(符号22a側)を、尻尾側(符号21b側)に尻尾部2を有した第1の剥きエビ21の頭部側外周(符号21a側の外周)に巻きつける形で接着するとともに、当該第2の剥きエビ22の尻尾側(符号22b側)の先端が折り返されて、自身22の頭部側外表面および自身22が巻きつく第1の剥きエビ21の外表面のいずれかまたは双方に接着されている。完成したエビ材料1Dは、第一実施形態のエビ材料1Aよりも長さが短いが、これを構成する個々の剥きエビ21、22よりは長くて太い。
【0046】
上記第三実施形態においては、2尾の第1の剥きエビ19、20を各々の胴体長さ方向が一直線状になるよう一列に配列し、それらにまたがって巻きつく形で第2の剥きエビ17を接着することにより、隣接するそれら第1の剥きエビ19、20を連結しているが、更に長くなるよう、第1の剥きエビを3尾以上とし、かつそれら全ての胴体長さ方向が一直線状になるよう一列に配列し、かつ隣接する第1の剥きエビにまたがって巻きつく形で各第2の剥きエビを接着して、一列に並ぶ全ての第1の剥きエビを連結してもよい。これにより、一層長いエビ材料1を形成できる。なお、隣接する第1の剥きエビを連結する連結用の第2の剥きエビには、その一方の端部とその逆側の端部のそれぞれに第1の剥きエビの端部を配置できるよう、それら双方の端部に切込みが入れられて開かれていればよいが、上記実施形態の第2の剥きエビ14、17、18のように、頭部側から尻尾側にかけて続く切込み14d、17d、18dを入れ、開くようにすることで、切込み入れ作業および開き作業が容易となる。
【0047】
上記実施形態において、第2の剥きエビは、自身の胴体長さ方向が第1の剥きエビの胴体長さ方向と同じになる向きとなる形で、第1の剥きエビの外周に巻きつき、接着されているが、巻きつく方の剥きエビの胴体長さ方向については、芯となる剥きエビの胴体長さ方向とは異なる方向を向いていてもよい。例えば、図7に示すように、第2の剥きエビ30の胴体長さ方向を、第1の剥きエビの胴体周方向を向くようにして、第2の剥きエビ30を、第1の剥きエビ28、29の外周に巻きつけて接着してもよい(エビ材料1E)。この場合、第2の剥きエビ30の胴体長さは、第1の剥きエビの胴体周方向長さよりも長いので、巻きつけた後のこの部分の太さは残余の部分よりも太くなるから、残余の部分もこの巻きつけた部分の太さにあわせるとよい。
【0048】
また、完成後のエビ材料(エビ接合体)1をより太くするためには、芯となる第1の剥きエビの外周側に対し、複数の第2の剥きエビの開き面を巻きつけて接着すればよい。このとき、完成後のエビ材料1全体のバランスを考慮して、芯となる第1の剥きエビが断面の中心部に位置するよう、第1の剥きエビの周方向において等角な位置に、各第2の剥きエビの開き面を巻きつけて接着するとよい。図6(a)は、上記第一〜第三実施形態におけるエビ材料1の断面図であり、図6(b)は、芯となる第1の剥きエビを、例えば上下または左右で挟み込む形で、2尾の第2の剥きエビ22、23の開き面22c、23cを巻きつけて接着したエビ材料1の断面図であり、図6(c)は、芯となる第1の剥きエビ21を、その外周の等角をなす三方向から第2の剥きエビ22、26、27の開き面22c、26c、27cを巻きつけて接着したエビ材料1の断面図であり、図6(d)は、芯となる第1の剥きエビ21を、その外周の等角をなす四方向から第2の剥きエビ22、23、24、25の開き面22c、23c、24c、25cを巻きつけて接着したエビ材料1の断面図である。また、更に太くしたい場合には、芯となる第1の剥きエビに巻きつけた第2の剥きエビの外周面に、さらに第2の剥きエビの開き面を巻きつけて接着すればよい。
【0049】
また、完成後のエビ材料(エビ接合体)1の尻尾部2側とは逆の端部には、図8に示すように、飾りとなるエビの頭部5があってもよい。この場合、エビ材料1(1F)の尻尾部2側とは逆の端部には、尻尾が除去されて頭部5が残存する第1の剥きエビ(胴体形状が保持される剥きエビ)または第2の剥きエビ(開き面を有する剥きエビ)を使用することができる。第1の剥きエビが頭部5を有する頭部付き剥きエビである場合は、例えば、図8に示すようにでき、頭部5を有する第1の剥きエビ32は、尻尾部2を除去し頭部5を残し胴体形状を保持したまま、第2の剥きエビ31に接着・一体化される。他方、第2の剥きエビが頭部5を有する頭部付き剥きエビである場合、当該第2の剥きエビには、尻尾側にて胴体長さ方向に切込みが入れられ、尻尾側に開き面が形成される。そして、その開き面に、第1の剥きエビの一方の端部が巻きつけられて接着される。また、飾りとして付く尻尾部2と同様、頭部5も大きく見せた方が見た目の違和感が少ないから、頭部付き剥きエビも、尻尾付き剥きエビを除く残余の剥きエビよりも、サイズの大きいものを用いるとよい。完成後のサイズが大きいエビ材料1ほど、よりサイズの大きい頭部付き剥きエビを用いるとよい。
【0050】
なお、これまでに述べた全ての実施形態にて完成された生のエビ材料(エビ接合体)1は、フライや天ぷら等の下準備をして、それらの調理を開始することができるが、調理を直ちにしない場合には、冷凍(凍結)し、冷凍状態(凍結状態)のエビ材料1として保存することができる。また、これまでに述べた全ての実施形態にて完成されたエビ材料1にフライ用や天ぷら用の下準備をした上で冷凍(凍結)し、冷凍状態(凍結状態)のエビ材料1として保存することもできる。また、これまでに述べた全ての実施形態にて完成されたエビ材料1を調理してフライや天ぷらの衣3を付けて完成されたものを冷凍(凍結)し、冷凍状態(凍結状態)のエビ材料1として保存することもできる(図1および図8の(e)、図2〜5の(f)の状態)。
【0051】
本発明のエビ材料1が、フライ用や天ぷら用の下準備をした状態のものである場合は、素材をなすエビ接合体1とその最表に形成される層との間に位置するベース層を5mm以下、より望ましくは3mm以下とする。フライ用の場合は、図9に示すように、素材をなすエビ接合体1の表面に薄い小麦粉層101が付着し、さらにその表面に溶いた卵を付着させる卵層102が形成され、最表層103にパン粉層が形成される。この場合、小麦粉層101と卵層102とがパン粉付着用のベース層104であり、その大半は卵層102となる。
【0052】
なお、上記した個々の剥きエビ11〜32に付された各符号について、数字の後に付く小文字の英字は、それら各剥きエビ11〜32において、「a」が頭部側端部、「b」が尻尾部側端部、「c」が開き面、「d」が切込み、「e」が折り返し部、「f」が切込溝を示すように付されている。
【0053】
本発明のエビ材料は、上記各実施形態および変形例で製造されたエビ材料を複数個集合させて筏状に接合させることができる。
図10は、第三実施形態に係るエビ材料を4個筏状に接合させた例である。この場合、エビ材料1は各接合部同士が食品加工用接着剤4により接着されている。このエビ材料200は、エビステーキ材料としてこのままの状態で調理することができる。また、フライ用または天ぷら用のエビ材料とすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 フライ用または天ぷら用のエビ材料(エビ接合体)
2 尻尾部
3 衣
4 食品用接着剤
11、13、16 尻尾付き剥きエビ(第2の剥きエビ)
12、15、19、20 尻尾無し剥きエビ(第1の剥きエビ)
14、17、18 尻尾無し剥きエビ(第2の剥きエビ)
100 エビフライまたはエビの天ぷら
200 筏状エビ材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の剥きエビのうち、胴体部形状が保持されている第1の剥きエビと、胴体長さ方向に切込みを入れてその切込み面を露出する形で開かれた第2の剥きエビとを、それぞれ1尾以上有し、
前記第1の剥きエビの外周表面に複数の切込溝を入れるとともに、前記第2の剥きエビの開き面表面に前記切込溝と同じ方向に複数の切込溝を入れ、
前記第1の剥きエビの外周に、前記切込みにより開かれた前記第2の剥きエビの開き面を密着させる形で巻きつけるとともに、その密着面が複数の切込溝により接合され、前記第1の剥きエビと前記第2の剥きエビとが一体化して、エビ接合体となっていることを特徴とするエビ材料。
【請求項2】
前記第2の剥きエビは、前記切込みにより開かれた前記開き面を、前記第1の剥きエビの胴体長さ方向における一方の端部側の外周に巻きつける形で接着されていることを特徴とする請求項1記載のエビ材料。
【請求項3】
前記第1の剥きエビは複数あり、
前記第2の剥きエビは、隣接する前記第1の剥きエビにまたがって巻きつく形で双方に接着し、隣接するそれら第1の剥きエビを連結していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエビ材料。
【請求項4】
前記第1の剥きエビの外周表面と前記第2の剥きエビの開き面表面との密着面が食品加工用接着剤により接着されていることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のエビ材料。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載のエビ材料を複数個集合させて筏状に接合させたことを特徴とするエビ材料。
【請求項6】
エビ接合体を複数個集合させて筏状に接合させてなるエビ材料であって、
前記エビ接合体は、複数の剥きエビのうち、胴体部形状が保持されている第1の剥きエビと、胴体長さ方向に切込みを入れてその切込み面を露出する形で開かれた第2の剥きエビとを、それぞれ1尾以上有し、前記第1の剥きエビの外周に、または、隣接する前記第1の剥きエビにまたがって巻きつく形で双方の剥きエビの外周に、前記切込みにより開かれた前記第2の剥きエビの開き面を密着させる形で巻きつけるとともに、その密着面が食品加工用接着剤により接着され、前記第1の剥きエビと前記第2の剥きエビとが一体化していることを特徴とするエビ材料。
【請求項7】
エビに対し、頭部除去、殻剥き、背わた除去を行ない第1の剥きエビを得る下準備工程と、
前記下準備工程を経たエビに切込みを入れ、その切込み面を露出する形で開いて開き面を形成して第2の剥きエビを得る開き工程と、
前記開かれた第2の剥きエビの開き面上に、第1の剥きエビを重ねて配置して、この配置された第1の剥きエビの外周を被うように第2の剥きエビの開き面を巻きつけて、両剥きエビを密着させる巻きつけ工程とを備えることを特徴とするエビ材料の製造方法。
【請求項8】
前記巻きつけ工程前に、両剥きエビの密着面に対して、同じ方向に複数の切込溝を形成する工程を有することを特徴とする請求項7記載のエビ材料の製造方法。
【請求項9】
前記巻きつけ工程前に、両剥きエビの密着面に対して、食品加工用接着剤を塗布することを特徴とする請求項7または請求項8記載のエビ材料の製造方法。
【請求項10】
請求項7、請求項8、または請求項9の製造方法で製造されたエビ材料を複数個集合させて、その接合面に食品加工用接着剤を塗布することで相互に接合させる工程を有することを特徴とするエビ材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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