説明

エピジェネティックパターン及びクロマチン構造に基づいて細胞の型及び/又は状況を決定するアッセイ

哺乳動物から得られたサンプルにおける哺乳動物細胞の特定の型/状態を同定する方法であって、a)上記細胞のゲノム内の細胞型/細胞状態に特異的な領域中の接近可能クロマチンの相対量を分析することと、b)上記領域中の接近可能クロマチンの上記相対量を、細胞型/細胞状態に非特異的な上記細胞のゲノム内の領域中の接近可能クロマチンの相対量と比較することと、c)上記サンプル中の上記哺乳動物細胞の特定の型/状態を上記比較に基づいて推定することとを含む、哺乳動物から得られたサンプルにおける哺乳動物細胞の特定の型/状態を同定する方法に関する。上記同定は上記比較に基づく上記特定の細胞の型/状態の相対定量を更に含む。該方法は、上記同定に基づく疾患の素因又は疾患の診断を含んでいてもよい。キット、及びゲノム内の接近可能クロマチンの領域中の或る特定のマーカーも記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物から得られたサンプル中に存在する全ての細胞における哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態の総量及び/又は比率を同定及び/又は定量する方法であって、a)上記細胞のゲノム内の細胞型及び/又は細胞状態に特異的な領域中の接近可能クロマチンの相対量を分析することと、b)上記領域中の接近可能クロマチンの上記相対量を、細胞型及び/又は細胞状態に非特異的な上記細胞のゲノム内の領域中の接近可能クロマチンの相対量と比較することと、c)上記サンプル中の上記哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態を上記比較に基づいて推定することと、を含む、哺乳動物から得られたサンプル中に存在する全ての細胞における哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態の総量及び/又は比率を同定及び/又は定量する方法に関する。好ましくは、上記同定は上記比較に基づく上記特定の細胞の型及び/又は状態の相対定量を更に含む。該方法は、上記同定に基づく疾患の素因又は疾患の診断を更に含んでいてもよい。キット、及びゲノム内の接近可能クロマチンの領域中の或る特定のマーカーも記載される。
【0002】
本願とともに提出される配列表は、提出される明細書の一部としてその全体が本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0003】
遺伝子調節は、哺乳動物細胞の発生及び機能における複雑な事象及びプロセスである。
【0004】
一部分では、かかる複雑な調節はタンパク質及び転写機構に依存する。他の部分は遺伝子転写の青写真及び基質、すなわちDNAの接近可能性に依存する。DNAレベルでの大抵の遺伝子調節は、いわゆる遺伝子プロモーター、並びに転写モジュレーター(エンハンサー)の結合部位及び保存非コード領域等を含む、調節要素として働く同様の調節DNA領域で制御される。
【0005】
概してDNA、特に調節要素に対する(upon/on)(ギリシャ語:epi、έπί)特定の制御の一例は、クロマチンが重要な役割を果たし、DNA、RNA、及びタンパク質の複雑な組合せを表す、それらのエピジェネティックな特徴である。これらの組合せはともに、染色体のクロマチンを構成する。クロマチンの主成分はDNA及びヒストンタンパク質であるが、多くの他の染色体タンパク質が主要な役割を有する。クロマチンの機能は、有糸分裂及び減数分裂を可能にするためにDNAを比較的小さな凝縮した構造内に入れてDNAを強化すること、並びに遺伝子発現及びDNA複製を制御する機構として働くことである。クロマチン構造はまた、メチル化又はヒドロキシメチル化(DNA及びタンパク質)及びアセチル化(タンパク質)等の化学修飾、並びに非ヒストン修飾によって影響を受けるとともに、支配される。クロマチンの主要構成要素はヌクレオソームであり、ヌクレオソームの位置はクロマチン構造/修飾によって決まり、後成的にも遺伝する。
【0006】
科学界では、「開いた」接近可能クロマチンが活性遺伝子又は遺伝子発現の可能性に相当することが広く認められている。反対に、密集した接近不能クロマチンが不活性化された転写固定(transcription locked)クロマチンであることが広く知られている。それぞれのエピジェネティック制御は、例えば転写因子によって実行されるいわゆる即時制御と比較して長期にわたり、持続的である。活性状態の報告に関する限りでは、クロマチン状態は、他の検出可能レベルよりも安定な遺伝子調節を決定する遺伝子制御のレベルとして興味が持たれている。
【0007】
クロマチン構造は非常に安定な遺伝子調節プロセスであると考えられているが、それにも関わらず誘導可能である。したがって、クロマチン構造は細胞分化及び同様のプロセス中に変化する/変化を受けることができる。ただし、転写機構とは対照的に、クロマチン変化の誘導は長期にわたって持続するようである。さらに、開いた及び閉じたクロマチン状態はゲノム内で広範な影響を有し得る。例えば、エンハンサーのクロマチン状況は直接隣接しない遺伝子に対して影響を有し得る。
【0008】
高等生物は、個体のほとんどの細胞がDNAコードの全く同じ相補体を含有するにもかかわらず、様々な組織型において異なるパターンの遺伝子発現を行い、維持する必要がある。一方で一部の遺伝子調節は細胞の現状に応じた一時的なものでなければならず、外部刺激によって変化する。他方で、持続的な調節は、エピジェネティクス(DNAの基本的な遺伝コードを変更しない遺伝的な調節パターン)の基本的法則(role)である。クロマチン構造は安定な細胞記憶として機能し、様々な細胞型の長期同一性を維持するうえで重要な役割を果たす。
【0009】
免疫系は腫瘍の発生において極めて重要な役割を果たす。しかしながら、腫瘍内微小環境における免疫応答の適応エフェクターの主要細胞成分としてのTリンパ球、及びそれらの対応物であるTリンパ球サブセット調節T細胞の役割の理解は依然として断片的である。これはナチュラルキラー細胞を含む先天性免疫及び適応免疫の両方のほとんどの細胞成分についても同様に当てはまる。一部分では、この欠如は、固形組織における特定の細胞の同定及び定量に対して信頼性のある技術的解決法がないためである。
【0010】
今日まで、Tリンパ球、Treg、及びNK細胞を含む免疫細胞の定量的特性評価は、mRNA分析、免疫組織化学(IHC)、及び/又はFACS分析によって主に行われている。しかしながら、この3つの技術は全て、真に定量的な方法に適用した場合に制限を受ける。RNA分析はサンプル中の或る特定の転写産物の全体量を決定するものであるため、細胞数に関連付けることができない。IHC及びFACS分析はどちらも、細胞が或る特定のマーカーに陽性であるとみなされる前に細胞によって提示されるタンパク質の閾値に依存する。FACS分析は、実験的必須条件が単一細胞懸濁液へのその解離であるため固形組織について更に問題がある。IHCによる細胞計数を自動化する試みにも関わらず、これは定量について信頼性のある方法ではない(非特許文献1)。腫瘍内微小環境における免疫細胞の測定に関連するこれらの技術的問題点は、正確な研究を制限し、実際の免疫状況及び腫瘍環境における免疫細胞浸潤の予測的意味は大部分が不明確なままであることが広く認められている。
【0011】
特許文献1は、被験体に由来するサンプル中のおよそマップ位置2q14.1からおよそマップ位置2q14.3までのヒトゲノムの第二染色体内の高度のクロマチン修飾を検出することを含む、がんを診断し、その治療の有効性をモニタリングする方法を記載している。該方法は、第二染色体のおよそ2q14.1から2q14.3までの領域内の変調された遺伝子の発現レベルを検出することも含み、ここで遺伝子はDEADボックスポリペプチド18(DDX18)、トランスリン(TSN)、v−ralサル白血病ウイルスがん遺伝子ホモログB(RALB)、セクレチン受容体(receptor)(SCTR)、エングレイルドホモログ1(EN1)、コラーゲン構造を有するマクロファージ受容体(MARCO)、タンパク質非受容体4型チロシンホスファターゼ(PTPN4)、インスリン誘導遺伝子2(INSIG2)、インヒビンβB(INHBB)、GLI−Kruppelファミリーメンバー2(GLI2)、FLJ10996、STEAP3、ジアゼパム結合阻害因子(DBI)、MGC10993、赤血球膜タンパク質バンド4.1様5(EPB41L5)、FLJ14816、又は転写因子CP2様1(TFCP2L1)からなる群から選択することができる。
【0012】
特許文献2(参照により本明細書中に援用される)は、インプリンティング遺伝子等のエピジェネティック修飾をマイクロアレイベースの技術を用いて同定及びモニタリングする方法を記載している。具体的には、重複する閉じたクロマチンマーカー及び開いたクロマチンマーカーの存在によるインプリンティング遺伝子の検出が記載されている。様々な医学的状態の指標であるゲノム規模でのインプリンティングの喪失を検出する方法が開示されている。遺伝子インプリンティング及びその喪失を同定するための診断アッセイ及びクロマチン構造マーカーも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009−042184号
【特許文献2】米国特許出願公開第2007−196843号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Taylor, C.R. and R.M. Levenson, Quantification ofimmunohistochemistry--issues concerning methods, utility and semiquantitativeassessment II. Histopathology, 2006. 49(4): p. 411-24
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、特定の免疫細胞における細胞型を同定及び定量する改善された方法を提供することである。本発明の他の目的は、以下の本発明のより詳細な説明を検討することで当業者に明らかとなる。
【0016】
その第1の態様によると、本発明は、哺乳動物から得られたサンプル中の哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態を同定する方法であって、a)上記細胞のゲノム内の細胞型及び/又は細胞状態に特異的な領域中の接近可能クロマチンの相対量を分析することと、b)上記領域中の接近可能クロマチンの上記相対量を、細胞型及び/又は細胞状態に非特異的な上記細胞のゲノム内の領域中の接近可能クロマチンの相対量と比較することと、c)上記サンプル中の上記哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態を上記比較に基づいて推定することとを含む、哺乳動物から得られたサンプル中の哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態を同定する方法を提供することによって上記の目的を解決する。
【0017】
好ましくは、任意で、b’)細胞型及び/又は細胞状態に特異的な上記領域並びに細胞型及び/又は細胞状態に非特異的な上記細胞のゲノム内の上記領域の相対量を、本明細書中に記載されるような対照プラスミドを用いて正規化することとを含む、哺乳動物から得られたサンプル中の哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態を同定する方法が好ましい。
【0018】
細胞型及び/又は細胞状態に非特異的な上記細胞のゲノム内の領域(単数又は複数)中の接近可能クロマチンを用いた(例えば、本明細書中に記載されるようなGAPDH領域を用いた)正規化は、他の一般的な方法と比較した場合の本発明の主な相違及び利点である。したがって、差次的メチル化は分析されないが、「同じクロマチンDNA」が使用される。さらに、本発明による標準化は分析される細胞型と独立して、分析対象の細胞型の選択に応じた1つのサンプル中の幾つかの細胞型の分析が可能となる(下記にも記載される)。このアプローチは、他の系では1つの遺伝子型のみを分析する(例えば、foxp3 tpgを検出し、foxp3 cpgと比較する)ため可能ではない。対照的に、本発明では、相対量を得るために「内部標準」のGapdh tpgに対して(例えば)cd3、foxp3、gnly、1588nk 1586grc、及び/又はccr6 tpgを測定する。さらに、好ましい実施の形態では、該方法は、本明細書中に記載されるような分析対象の領域を含有する対照プラスミドを用いて、分析される遺伝子のコピー数を測定することも可能にする。
【0019】
DNAの青写真は、細胞が発揮することのできるありとあらゆる機能についての情報を提供するはずである。したがって、脳細胞についての情報は必然的に肝細胞中にも存在する。しかしながら、発生期間であっても成人期であっても、肝細胞が脳特異的遺伝子を発現する必要はない。したがって、肝臓においては脳特異的遺伝子は永久的にオフになっている。
【0020】
この長期調節の主要な決定因子として、エピジェネティック変化及びクロマチンは、以下の2つのクロマチン状態のいずれかを示すことによって安定な遺伝子発現を完全に可能にするか、又は妨げる:
A)X染色体のバー小体で観察されるような完全かつ永久的な不活性化(染色体全体の場合もある)。ただし、X染色体不活性化は、例えば遺伝子foxp3及びCD3の場合等のように1つの対立遺伝子のみをオフにするため、オフにされる遺伝子に関する一般原則の顕著な例外である。
B)遺伝子の完全かつ永久的な活性化はハウスキーピング遺伝子によって例示される。これらの遺伝子は、例えば、限定されるものではないが、グルコース代謝、クエン酸回路又は尿素回路、HMG−CoA還元酵素経路等のように細胞の生存に永久的に必要とされる。いかなる生細胞も、細胞が死ぬか又は致死的静止(lethal resting)に陥らない限り、通常はこれらの回路をオフにすることはない。
【0021】
体内での細胞の更なる分化のために、身体(器官、組織)の或る特定の部分の或る特定の細胞において並びに/又は規定の時点及び期間でのみオンにされる遺伝子が存在する。これらの細胞は分化し、そうすることにより或る特定の遺伝子の発現を可能にし、一方でその他の遺伝子を完全に不能の遺伝子の大きな群とする。主として、これらの(より)細胞型に特異的な遺伝子も2つの群に分けられる:
i)Oct−3又はNanog等のような遺伝子を含む、胚発生中に重要なスイッチとなり/重要な役割を果たし、成人期においては必要とされない遺伝子、及び
ii)発生中にはオフであり、非常に特異的な細胞型への最終分化時にのみ発現が可能である、非常に特異的な細胞型への最終分化中に重要な役割を有し、かつ/又はこの細胞型に特徴的な発現パターンを有する遺伝子。
【0022】
上記を考慮すると、本発明は、全ての異なる独特の細胞型が、この細胞型にのみ特異的な接近可能クロマチン領域を有する或る特定のDNA断片(すなわち染色体領域及び/又は遺伝子)、1つ又は複数の細胞の群と共有の接近可能クロマチンを有する或る特定のDNA切片、及び体内の他の全ての生細胞と共有の接近可能クロマチンを有する或る特定のDNA断片を含有するという発見に基づく。この点で、生細胞中の接近可能クロマチンは以下の性質の1つ又は複数によって定義することができる:
i)バイサルファイトによる変換にとって接近可能なシトシンを含有するDNA(バイサルファイトによる修飾にとってのDNAの接近可能性がDNAの精製後も保持される安定な性質であり、したがって単離細胞DNAを使用する分析システムにいつでも採用することができるため、この性質は好ましい);
ii)DNAse I又は同様の酵素にとっての接近可能性(この接近可能性は、クロマチン構造が依然として維持されている場合にのみ測定することができ、したがってDNAの単離はこの性質を損なうことに留意されたい);及び
iii)ChIP又は当該技術分野で既知の他の好適な方法による沈降。
【0023】
上記同定が、上記比較に基づく上記特定の細胞の型及び/又は状態の相対定量を更に含む、本発明に記載の方法が好ましい。工程a)の前に、既知の特定の細胞型及び/又は細胞状態を有する細胞のゲノム内の接近可能クロマチンの相対量を測定することを含む、特定の細胞型及び/又は細胞状態を決定する工程を更に含む、本発明に記載の方法が更に好ましい。
【0024】
本発明は、好ましい1つの実施の形態では全ての可能な細胞、すなわち全ての細胞型を、第2の実施の形態では好ましくは全ての免疫細胞を、第3の実施の形態では本明細書中に記載されるような特定の免疫細胞を、細胞型及び細胞状況に特異的な領域中の接近可能な、すなわち活性なクロマチンの相対量を、全ての細胞型において接近可能な接近可能クロマチンと対比して測定することによって同定及び定量する分析法及び分析システムを確立する。
【0025】
既知の特定の細胞型及び/又は細胞状態を有する細胞のゲノム内の接近可能クロマチンの相対量に関する情報を含む知識ベースを生成することを更に含む、本発明に記載の方法が更に好ましい。上記知識ベースは診断用コンピュータであってもよく、ロボット等のように完全に又は大部分が自動化されていてもよい。さらに、データベースは、或る特定の細胞型又は細胞状態における接近可能クロマチンに関する情報を収集するために集約化してもよい。
【0026】
本発明による方法のまた更に好ましい実施の形態では、分析は、DNAse I消化、ChIPクロマチン免疫沈降マイクロアレイ(例えば、ChIP)、定量PCR分析、選択的沈降、若しくはバイサルファイトによるシトシンの変換、又はそれらの組合せを含むアッセイによって接近可能クロマチンの相対量を測定することを含む。本発明のまた別の好ましい実施の形態では、ヌクレオソームの位置を診断によって決定するために、DNAse I超感受性アッセイを本明細書中に記載されるように使用する。
【0027】
開いたクロマチンの範囲を同定するために本発明との関連で使用することのできる方法の他の例は以下のとおりである。或る特定の実施の形態では、接近可能領域と結合することが可能であるが、接近可能領域内のDNAを必ずしも切断又は共有結合的に修飾しない分子を使用して、接近可能領域を同定及び単離することができる。
【0028】
好適な分子としては、例えば小溝結合剤(例えば、米国特許第5,998,140号及び同第6,090,947号)及び三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO、米国特許第5,176,996号及び同第5,422,251号)が挙げられる。該分子を細胞クロマチンと接触させ、クロマチンを任意で除タンパクした後、断片化し、結合分子を含む断片を例えば親和性技法によって単離する。ポリイノシン(ポリI)を含むTFOの使用によって三重鎖形成の配列特異性が最小となり、それにより最大限の数の接近可能配列との相互作用の可能性が最大になる。
【0029】
上述の方法の変形形態においては、共有結合した修飾基を有するTFOを使用する。例えば、米国特許第5,935,830号を参照されたい。この場合、DNAの共有結合修飾は三重鎖形成配列の周辺で起こる。処理したクロマチンの任意の除タンパク及び断片化の後、標識された断片を例えば親和性選択によって精製する。
【0030】
別の実施の形態では、細胞クロマチンを非配列特異的DNA結合タンパク質と接触させる。タンパク質を任意でクロマチンと架橋させる。次いで、クロマチンを断片化し、断片の混合物を、非配列特異的DNA結合タンパク質に指向性を有する抗体を用いた免疫沈降に供する。この免疫沈降物中の断片は細胞クロマチンの接近可能領域に富んでいる。本方法での使用に好適な非配列特異的DNA結合タンパク質としては、バクテリオファージSP01タンパク質TF1及び原核生物HU/DBPIIタンパク質等の原核生物ヒストン様タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない(Greene et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:7031-7035、Rouviere-Yaniv et al. (1977) Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol.42:439-447、Kimura et al. (1983) J. Biol. Chem.258:4007-4011、Tanaka et al. (1984) Nature 310:376-381)。更なる非配列特異的DNA結合タンパク質としては、ポリアルギニンモチーフを含有するタンパク質、及びDNA結合能を保持するが、それらの配列特異性を失うように突然変異した配列特異的DNA結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。かかるタンパク質(この場合、突然変異した制限酵素)の一例は、Rice et al. (2000) Nucleic Acids Res. 28:3143-3150によって与えられる。
【0031】
また別の実施の形態では、複数の配列特異的DNA結合タンパク質を使用して、細胞クロマチンの接近可能領域を同定する。例えば、結合特異性の異なる配列特異的DNA結合タンパク質の混合物を細胞クロマチンと接触させ、クロマチンを断片化し、断片の混合物を、DNA結合タンパク質上の共通の抗原決定基を認識する抗体を用いて免疫沈降する。得られる免疫沈降物は、該タンパク質の混合物によって認識されるDNA結合部位の集合体に相当する接近可能部位に富んでいる。該タンパク質の混合物によって認識される配列の完全性に応じて、接近可能な免疫沈降配列は、接近可能な部位のサブセット又はそれを完全に表したものである。
【0032】
加えて、非配列特異的DNA結合相互作用(例えばホスフェート接触等)が最大化し、一方で配列特異的相互作用(例えば塩基接触等)が最小化した合成DNA結合タンパク質を設計することができる。細菌2ハイブリッド選択によって得られる或る特定の亜鉛フィンガーDNA結合ドメインは、低度の配列特異性を有し、上述の方法において有用であり得る(Joung et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:7382-7387;特にそこに記載される「III属」フィンガーを参照されたい)。
【0033】
更なる例として、選択的/限定消化法(上記にも言及される)では、限定ヌクレアーゼ消化アプローチは一般に、DNAの小断片が接近可能領域から生成するように、核又はクロマチンを制御反応条件下で化学プローブ及び/又は酵素プローブで処理することを含む。所要の選択的消化及び限定消化は、或る特定の消化パラメータを制御することによって達成することができる。具体的には、通常はプローブの濃度を非常に低いレベルに制限する。反応の持続時間及び/又は反応を行う温度を調節して、消化の程度を所望のレベルに制御してもよい。より具体的には、比較的短い反応時間、低い温度及び低いプローブ濃度を利用することができる。様々なヌクレアーゼのいずれも限定消化を行うために使用することができる。例えばDNase I、S1ヌクレアーゼ、及びマングビーンヌクレアーゼ等の非配列特異的エンドヌクレアーゼ、並びに例えば制限酵素等の配列特異的ヌクレアーゼを使用することができる。
【0034】
様々な異なる化学プローブを、接近可能領域中のDNAを切断するために利用することができる。好適な化学プローブの具体例としては、ヒドロキシルラジカル及びメチジウムプロピル−EDTA Fe(II)(MPE)が挙げられるが、これらに限定されない。接近可能領域での化学切断は、硫酸ジメチル、ヒドラジン、過マンガン酸カリウム、及び四酸化オスミウム等の試薬による細胞クロマチンの処理、それに続くアルカリ条件(例えば1Mピペリジン)への曝露によっても行うことができる。例えば、Tullius et al. (1987) Meth. Enzymology, Vol. 155, (J. Ableson and M.Simon, eds.) Academic Press, San Diego, pp. 537-558、Cartwrightet al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:3213-3217、Hertzberget al. (1984) Biochemistry 23:3934-3945、Wellinger etal. in Methods in Molecular Biology, Vol. 119 (P. Becker, ed.) Humana Press,Totowa, N.J., pp. 161-173、及びMaxam et al. (1980) Meth.Enzymology, Vol. 65, (L. Grossman and K. Moldave, eds.) Academic Press, NewYork, pp. 499-560を参照されたい。化学プローブを用いる場合、1つの接近可能領域当たり平均して2つの反応部位の生成が支持され、それにより比較的短いDNA断片が接近可能領域から放出されるように反応条件を調整する。
【0035】
前述の方法と同様に、消化プロセスによって生成した得られる小断片を、サイズ(例えばゲル電気泳動、沈殿法、ゲル濾過)、選択的溶解性、又はバルククロマチンからの裸の核酸(すなわち、ヒストンを欠いた核酸)の分離をもたらす手順によって精製することができ、それにより小断片を単離及び/若しくはクローニングし、かつ/又は続いて例えばヌクレオチドシークエンシングによって分析することが可能となる。
【0036】
本方法の1つの実施の形態では、核を低濃度のDNase Iで処理し、次いでDNAを核から精製し、ゲル電気泳動に供する。ゲルをブロットし、ブロットを、例えばハウスキーピング遺伝子のプロモーター内に位置する既知のマッピングDNase I超感受性部位に相当する短い標識断片でプローブする。かかる遺伝子(及び関連の超感受性部位)の例としては、rDNA、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、及びコアヒストン(例えばH2A、H2B、H3、H4)をコードする遺伝子中のものが挙げられるが、これらに限定されない。代替的には、DNA断片のサイズ画分をゲルから単離し、スロットブロットし、超感受性部位プローブ及び超感受性部位から数キロベース(kb)に位置するプローブでプローブする。サイズ画分への超感受性部位プローブの選択的ハイブリダイゼーションは、画分が接近可能領域配列に富んでいることを示す。接近可能領域配列に富んだサイズ画分を、標準手順を用いてクローニングし、接近可能領域配列のライブラリを生成することができる。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「接近可能クロマチン」という用語は、DNA塩基のシトシンが一般に、ヌクレオチドコンテキスト(context)とは独立して、バイサルファイトによるウラシルへの変換にとって接近可能であるクロマチンの領域を指す。かかる領域は、好ましくは未精製DNAが、エンドヌクレアーゼ、例えばDNAse Iの作用に対して周辺領域よりも少なくとも10倍感受性が高いということによっても定義される。クロマチンの展開(opening)は転写活性の必須条件であるため、DNAse I感受性はクロマチン領域の転写増強の指標を与える。より大きなDNAse感受性は一般に、より大きな転写活性に対応する。DNAse超感受性アッセイは、Weintraub and Groudine, 1976, Science 193: 848-856(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。「高度に転写された」又は「高度に発現された」領域又は遺伝子は、転写された開いたクロマチン構造の領域である。近年、研究者らは、遺伝子に富んだ領域が開いたクロマチン構造中に存在する傾向があり、遺伝子に乏しい領域が凝縮クロマチン中に存在する傾向があることを見出した。ただし、開いたクロマチンは不活性遺伝子を含有することができ、凝縮クロマチンは活性遺伝子を含有することができる(Bickmore, et al (2004) Chromatin Architecture of the Human Genome:Gene-Rich Domains Are Enriched in Open Chromatin Fibers, Cell, Vol 118,555-566, 3を参照されたい)。
【0038】
不完全にバイサルファイト変換されたDNAは、バイサルファイトでの処理後にその配列中にシトシン残基を、それがこれらの位置でウラシルへと変換される代わりに保持するDNAである。DNAの化学的性質のために、現行の技術水準においては、この不完全な変換がCpGジヌクレオチドのコンテキストにおいてのみ起こり、メチル化、ヒドロキシメチル化、若しくはシトシン塩基の他の共有結合修飾等のエピジェネティック修飾、又は構造変化によって引き起こされる、この塩基の限られた利用可能性によるものであることが認められている。
【0039】
ゲノムDNAの亜硫酸水素ナトリウム処理又は同様の塩での処理は、Olek et al.(Olek, A., Oswald, J., Walter, J.(1996) Nucleic Acids Res. 24, 5064-5066)に従って若干変更して行い、化学的に未修飾の又は「接近可能な」シトシンからウラシルへの変換を生じさせたが、共有結合的に修飾されたシトシンはバイサルファイト塩に不活性又は「接近不能」であり、この反応へ進められても変化しないままである。したがって、DNA中の未修飾の及び「接近可能な」シトシン(本明細書中で接近可能クロマチン領域と一致して使用される用語である)についてのみ、バイサルファイト又は同様の反応によって生成したウラシルが、DNA及びRNAの典型的な塩基対合のために続くPCR増幅においてチミンに置き換えられる。したがって、シークエンシング反応における「C」の検出は、クロマチンの「接近不能性」、したがってそのDNA切片中でのゲノムDNAの修飾を反映する。したがって、これは閉じた接近不能クロマチンを反映する。対照的に、同じ部位での「T」の検出はこの代わりに、安定な修飾の欠如を反映し、その部位での接近可能クロマチン及びゲノムシトシンに対応する。ほとんどの参照文献は、この接近不能性をシトシンの5’C位のメチル修飾に起因するとしているが、驚くべき新たな研究から、シトシン「メチル化」が明らかに、DNA完全性を保護し、クロマチンを接近不能にするシトシン修飾だけではないことが示された(例えばBMC Genomics 2006, 7:98を参照されたい)。しかしながら、バイサルファイト変換DNAにおけるシトシン残基の欠如は、その部位での元の修飾が何であるかにかかわらず、完全に接近可能で、機能的に完全に活性であり、化学的に修飾されていないシトシン残基に対する決定的な手がかりであることは明らかである。
【0040】
ジヌクレオチドCpGは、哺乳動物ゲノムにおいては、6.25%というその予測された統計的発生頻度と比べて圧倒的に少ない。加えて、ゲノム内のCpG残基の大部分は(シトシン塩基の5位で起こる修飾によって)メチル化されている。これら2つの現象の結果として、ヒトゲノムDNA全体が、例えば認識配列がCCGGであり、活性が標的部位の2番目のシトシンのメチル化によって遮断される制限エンドヌクレアーゼHpa IIに著しい耐性を示す。
【0041】
ゲノム内の脱メチル化Hpa II部位が全体的に少ないことの重要な例外は、転写開始部位の周辺に生じ、活性遺伝子のプロモーター中の転写機構にとって接近可能な(すなわち、開いたクロマチン及び非シトシン修飾)並外れてCpGに富んだ配列(いわゆる「CpG島」)である(Jones et al. (1999) Nature Genet. 21:163-167. Aberranthypermethylation of such promoter-associated CpG islands is a well-establishedcharacteristic of the genome of malignant cells. Robertson et al (2000)Carcinogenesis 21:61-467)。
【0042】
したがって、接近可能領域を生成する別の選択肢は、真核生物ゲノム内のほとんどのCpGジヌクレオチドがC残基のC5位でメチル化されている一方で、活性遺伝子のCpG島内のCpGジヌクレオチドがメチル化されていないという観察結果によるものである。例えば、Bird (1992) Cell 70:5-8及びRobertson et al.(2000) Carcinogenesis 21:461-467を参照されたい。実際に、CpGのメチル化は、真核生物遺伝子の発現を抑制する機構の1つである。したがって、メチル化感受性制限酵素(すなわち、メチル化DNAを切断しないもの)、とりわけその認識配列中にジヌクレオチドCpGを有するもの、例えばHpa II等での細胞DNAの消化は、非メチル化CpG島DNAから小断片を生成する。例えば、Hpa IIによるゲノムDNAの完全な消化の際に、DNAの圧倒的大部分はサイズが3kb超のままであり、およそ100bp〜200bpのDNA断片のみが脱メチル化されたCpGに富んだ配列、すなわち活性遺伝子のCpG島に由来する。かかる小断片は、DNAが由来する細胞において活性な調節領域に富んでいる。これらを例えば溶解度差(differential solubility)又はサイズ選択によって精製し、ライブラリを生成するためにクローニングし、それらのヌクレオチド配列を決定し、1つ又は複数のデータベースに入れることができる。かかる配列を含むアレイを構築することができる。
【0043】
メチル化感受性酵素による消化を、任意で1つ又は複数の更なるヌクレアーゼの存在下で、全細胞、単離した核内でバルククロマチン、又はクロマチンからタンパク質を除去した後に得られる裸のDNAを用いて行うことができる。いかなる場合でも、比較的小さな断片を摘出し、これらをバルククロマチン、又はメチル化CpGジヌクレオチドを含有する領域に相当するより長いDNA断片から分離することができる。非メチル化CpG島を含む小断片は、例えば様々なサイズベースの精製技法(例えば、ゲル電気泳動、沈殿法、及びサイズ排除カラム)又は溶解度差(例えば、ポリエチレンイミン、スペルミン、スペルミジン)を用いてより大きな断片から単離することができる。上記で示したように、Dpn II、Mbo I、Hpa II、及びCla Iを含むが、これらに限定されない様々なメチル化感受性制限酵素が市販されている。上述の各々は、例えばNew England BioLabs, Inc.(Beverly,Mass)等の商業供給業者から入手可能である。
【0044】
別の実施の形態では、調節配列の富化(enrichment)は、ATに富んだDNAを選択的に切断する作用物質での除タンパクされたゲノムDNAの消化によって達成される。かかる作用物質の例としては、A残基及びT残基のみからなる認識配列を有する制限酵素、並びに高温で使用されるS1ヌクレアーゼ及びマングビーンヌクレアーゼ等の一本鎖特異的ヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。好適な制限酵素の例としては、Mse I、Tsp509 I、Ase I、Dra I、Pac I、Psi I、Ssp I、及びSwa Iが挙げられるが、これらに限定されない。かかる酵素は、例えばNew England BioLabs(Beverly,Mass)から市販されている。CpG島内のGCに富んだ配列の濃度のために(上記を参照されたい)、かかる消化により生じる大断片は、とりわけ完全にA残基及びT残基からなる4ヌクレオチド認識配列(例えば、Mse I、Tsp509 I)を消化剤として使用した場合に、一般にCpG島調節配列を含む。かかる大断片を、それらのサイズに基づいて、AT配列に富んだ領域での切断によって生成するより小さな断片から分離することができる。或る特定の場合では、ATに富んだ配列を認識する複数の酵素による消化は、調節配列の富化の増大をもたらす。
【0045】
代替的に、又はサイズ選択に加えて、これらの方法によって生成する大きなCpG島含有断片を親和性選択に供し、メチル化断片を非メチル化大断片から分離することができる。分離は、例えばメチル化DNA結合ドメインを含有するタンパク質(Hendrich et al. (1998) Mol. Cell. Biol. 18:6538-6547、Bird et al. (1999) Cell 99:451-454)及び/又はメチル化シトシンに対する抗体との選択的結合によって達成することができる。非メチル化大断片は、DNAが由来する細胞における遺伝子活性化に関与する調節配列を含む可能性が高い。他の実施の形態と同様に、上述の方法によって得られたポリヌクレオチドをクローニングして、調節配列のライブラリを生成することができ、かつ/又は調節配列をアレイ上に固定化することができる。
【0046】
非メチル化CpG島を他の断片から精製するために採用される特定の戦略に関わらず、単離された断片をクローニングして、調節配列のライブラリを生成することができる。ライブラリのメンバーのヌクレオチド配列を決定し、任意で1つ又は複数のデータベースに入れ、ゲノムデータベースと比較して、これらの調節領域をゲノム上にマッピングすることができる。
【0047】
本発明による方法のまた更に好ましい実施の形態では、上記シトシンの変換は、染色体の少なくとも1つの領域における化学的に修飾されていないDNA、特に遺伝子インプリンティングの喪失の分析を更に含む。化学的に修飾されていないCpG位置を決定するために、本明細書中及びそれぞれの文献中に記載されるような未修飾DNAを同定及び判別する任意の既知の方法を使用することができる。本発明による方法の好ましい実施の形態では、接近可能性状況の分析は、メチル化特異的酵素消化、バイサルファイトシークエンシングから選択される方法、プロモーター修飾分析、CpG島分析、MSP、HeavyMethyl、MethyLight、Ms−SNuPEから選択される分析、又は増幅DNAの検出に基づく任意の他の方法を含む。これらの方法は当業者に既知であり、それぞれの文献中に見ることができる。
【0048】
メチル化分析の文脈における「領域」という用語は、特に遺伝子発現の調節に関連する部分、例えばプロモーター及び他の調節要素内のCpG位置を含有する染色体の部分を指す。特に、プロモーター領域及びエクソン・イントロン境界は、別個の領域と考えることができる。これらの領域は同時に、クロマチン構造を分析するのに好ましい領域のサブグループである。本発明による方法の更に好ましい実施の形態では、上記細胞のゲノム内の細胞型及び/又は細胞状態に特異的な分析される領域は、FOXP3、GNLY、CD3、血小板糖タンパク質IX(GP9);低親和性免疫グロブリンεFc受容体(FCER2);タンパク質S100−P(S100カルシウム結合タンパク質P);ホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼ3(HIPK3);膜貫通4 L6ファミリーメンバー19(TM4SF19);CD160抗原前駆体(ナチュラルキラー細胞受容体BY55)(CD160);LIMドメイン結合タンパク質2(LDB2);CD19;CD3;CD8;CD15;CD14;CD56;及びCD4から選択される遺伝子を含む領域から選択される。本発明による方法の更に好ましい実施の形態では、上記細胞のゲノム内の細胞型及び/又は細胞状態に特異的な分析される領域は、本明細書中に記載されるような分析される遺伝子のアンプリコン(配列番号16〜配列番号22)、及びアンプリコン配列を含むそれぞれのROI(関心の領域;配列番号23〜配列番号29)から選択される。
【0049】
他の例としては、肺特異的遺伝子産物は、肺サーファクタントタンパク質SP−A、SP−B、SP−C、SP−D、及びクララ細胞分泌タンパク質(CCSP)を含む。或る特定の細胞型に関する他の遺伝子は当業者に既知であり、例えば好ましくはチップアッセイ技術を用いた遺伝子発現プロファイリングを用いて同定することができるか、又はそれぞれのデータベース、例えばLSPD(肝臓特異的遺伝子プロモーターデータベース、http://rulai.cshl.org/LSPD/index.html)に挙げられているか、又はAbbas et al.(Abbas AR, Baldwin D, Ma Y,Ouyang W, Gurney A, Martin F, Fong S, van Lookeren Campagne M, Godowski P,Williams PM, Chan AC, Clark HF. Immune response in silico (IRIS):immune-specific genes identified from a compendium of microarray expressiondata. Genes Immun. 2005 Jun;6(4):319-31.)等の文献中に記載されている。データを好ましくは上記に記載されるような知識ベースに組み入れることができる。
【0050】
以前の分析は、メチル化状況、すなわち特定のDNA領域において非メチル化DNAに対してメチル化DNAに見られるコピー数の相違の測定に焦点を合わせているが、本発明の最も好ましい実施の形態は、ゲノムDNAにおいて起こるいかなる修飾にも依存しない。完全に接近可能なクロマチン及びDNAを決定することによって、完全に未修飾であるこれらのDNAコピーのみが評価される(assessed)ため、メチル化又は任意の他の修飾は問題ではなくなる。これらの完全に未修飾なDNAの中でも、本発明は、細胞型に特異的に接近可能な遺伝子及び/又は領域を分析し、それらを生物内の2つ、3つ又は全ての細胞型からなり得る、より大きな(好ましくは)任意に選択された細胞のサブグループにおいて接近可能な遺伝子及び/又は領域と比較する(例えば、接近可能なCD3、接近可能なGAPDHと比較した、接近可能なFOXP3)。かかる系に基づいて、種々の細胞サブタイプの細胞数の相対定量が可能である。かかる直接多重化可能なサブタイプ間比較は本発明による系でしか可能でなく、差次的メチル化又は他の技法を使用した場合には可能でない。
【0051】
上記で述べたように、本発明は、遺伝子の活性の必須条件としてDNAの接近可能性を用いる。本発明は、ハウスキーピング遺伝子(HKG)、及びHKGのプロモーターにおけるDNAの全体的かつ永久的な接近可能性のモデルとしてGAPDHを用いてこれを実証する。プロモーターにおけるDNAのこの永久的な接近可能性は、細胞型特異的遺伝子には存在しない。したがって、開いたHKGの数に対する特定の開いた(接近可能な)遺伝子の数の比率の測定、決定及び分析は、特定の細胞又は特定の細胞状況の相対細胞数の定量的指標(quantifier)となる。好ましくは、細胞特異的な遺伝子座における完全にバイサルファイト変換されたDNAの量を、細胞非特異的な遺伝子座(又はこれらの遺伝子の事前選択されたサブグループ、例えばCD3サブグループ等)と比較することによって、完全にバイサルファイト変換されたDNAをこの目的で使用し、したがって特定の細胞又は特定の細胞状態、加えて好ましくは細胞カウント及び質を反映させることができる。
【0052】
ハウスキーピング遺伝子(HKG)は通常、比較的一定のレベルで全ての生細胞において転写される、構成的に発現される遺伝子である。ハウスキーピング遺伝子の産物は通常、(任意の)細胞の維持に必要とされる。ハウスキーピング遺伝子の発現は、それらの発現が実験条件によって影響を受けないと一般に考えられているため、(逆転写)定量的ポリメラーゼ連鎖反応において内部標準として使用される。利用される幾つかの一般的なハウスキーピング遺伝子としては、アクチン、GAPDH、アルドラーゼ、ヘキソキナーゼ、サイクロフィリンが挙げられる。ハウスキーピング遺伝子は、全ての遺伝子型においてそれらのクロマチン接近可能性(及び転写活性)によって規定されるプロモーター領域にCpGに富んだ島を有するが、細胞特異的遺伝子は停止し、それらのクロマチンは、遺伝子産物が必要とされ、したがって遺伝子が発現される組織を除く全ての組織において転写機構にとって接近不能となる。これらのクロマチン接近可能性パターンは、明らかに遺伝子発現と相関する。したがって、本発明による方法の更に好ましい実施の形態では、細胞型及び/又は細胞状態に非特異的な上記領域は、GAPDH等のハウスキーピング遺伝子を含む領域から選択される。
【0053】
好ましい例では、接近可能なバージョンの両方の遺伝子型(すなわち、細胞型特異的に接近可能な/接近不能なクロマチン及び一般に接近可能なクロマチン構造の1つ又は複数を有するもの)をバイサルファイトによる変換へと進め、増幅し、プラスミドにクローニングする。完全にバイサルファイト変換された増幅物(amplificate)と同等の形態の問題となる完全に接近可能な状態の全ての遺伝子の構築物を含有するプラスミドが更に好ましく、組み換え対照プラスミドは下記の実施例及び図面に記載する。好ましい態様では、リアルタイムPCRアッセイの定量は、ナノドロップ、又はUVette分析若しくはQ−bitシステム(Invitrogen)等の代替方法における吸収測定によって定量される、かかる標準化プラスミドを準備し、その量を光学密度により決定することによって達成される。この測定に基づき、プラスミドの濃度を決定し、標準測定系列(row)を測定されたプラスミドの段階希釈を適用することによって作成する。このようにして(すなわち、単一のプラスミドが全ての試験遺伝子を含有する場合)、プラスミド上の全ての遺伝子について全く等モル濃度の標準を調製し、決定する(提供する)。この絶対等モル濃度は好ましい実施の形態であるが、本発明者らはこの標準化系を全てのサンプルに使用することを提案し、異なるプラスミド上に存在し得るか、又は更にはプラスミド標準若しくはDNA標準からなるものではない様々な異なる標準を採用する場合に、同様の系を用いた分析も想定される。最も好ましくは、上記系はCD3、FOXP3、GLNY、CCR6、CAMTA1、GP9、FCER2、S−100−P、HIPK−3、TM4SF19;CD160抗原前駆体、LDB2、CD19、及びGAPDHの増幅対象の好適な領域を含む。
【0054】
She et al(She X, Rohl CA, Castle JC,Kulkarni AV, Johnson JM, Chen R. Definition, conservation and epigenetics ofhousekeeping and tissue-enriched genes. BMC Genomics. 2009 Jun 17;10:269)は、全ての組織において構成的に発現されるハウスキーピング遺伝子(HKG)を記載しているが、組織濃縮(tissue-enriched)遺伝子(TEG)が単一組織型で他よりもはるかに高いレベルで発現される。HKGは遺伝子及びタンパク質の発現実験において有益な実験対照として働くが、TEGは独特の生理学的プロセスを示す傾向があり、しばしばバイオマーカー又は薬物標的の候補となる。反対のパターンで発現されるこれら2つの群の遺伝子のゲノム特徴は、細胞が基本的な組織特異的機能を維持する機構の解明に役立つ。独自の高密度マイクロアレイ上での42個の正常ヒト組織の遺伝子発現プロファイルを生成して、1522個のHKG及び975個のTEGを体系的に同定し、全ての組織において高度に発現される20個のハウスキーピング遺伝子の小サブセットを多くの一般に使用されるHKGよりも低分散でまとめた。
【0055】
本発明による方法の別の態様では、生体サンプルが血液又はその画分、唾液、口腔細胞、涙液、精液、尿、汗、糞便物質、皮膚、及び毛髪からなる群から選択される。代替的には、例えば組織スライド上に固定したサンプルを使用してもよい。
【0056】
本発明による方法のまた別の好ましい態様では、細胞型がCD19+B細胞、CD3+CD8+細胞傷害性T細胞、CD15+顆粒球、CD14+単球、CD56+ナチュラルキラー細胞、CD4+ヘルパーT細胞等の免疫細胞;腎細胞;骨細胞;神経細胞;血液細胞;肺細胞;結腸細胞;及びヒト胚性幹細胞を除くこれらのいずれかの前駆体から選択される。
【0057】
本発明との関連では、「細胞状況」は、細胞のライフサイクル、例えば細胞分裂、アポトーシス、休眠期、染色体複製、酵素の産生、及び/又は因子の分泌等における細胞の生物活性を意味するものとする。
【0058】
本発明による方法のまた別の好ましい態様では、方法は上記同定に基づく疾患の素因又は疾患の診断を更に含む。これは全ての細胞の量と比較して、特定の細胞識別子を有する細胞の量を決定することによって達成することができる。
【0059】
疾患の治療は、例えば疾患の素因を有することが知られている人において、疾患(例えば、卵巣がん及び/又は乳がん)の部分的又は完全な発症又は進行を阻害又は防止することを含む。既知の素因を有する人の一例は、その家族にがんの既往歴を有する者、又は放射線への曝露等の被験体を病状にかかりやすくする因子に曝露された者である。さらに、疾患の治療は、疾患又は病的状態が発症し始めた後に疾患若しくは病的状態の少なくとも1つの兆候若しくは症状を改善するか、又は病態生理学的プロセスを妨げる治療的介入を指す。例としては、がんにおける治療は化学療法、放射線療法、又は罹患組織及び/若しくは周辺部の外科的切除、並びに所与の治療選択肢の組合せから選択することができる。本発明の別の態様は、被験体におけるがん等の疾患の発症又は進行を診断又は予後診断する方法であって、本発明による方法と、上記決定に基づいてがん等の上記疾患の発症又は進行を診断又は予後診断することとを含む、被験体におけるがん等の疾患の発症又は進行を診断又は予後診断する方法に関する。これは、好ましい実施の形態では、本方法が最良の既知の手段を提供すると本発明者らが仮定する個体の免疫状況の決定を含む。免疫状況を知ることは、治療の予測及び患者の一般的予後診断にも役立つ可能性がある。
【0060】
上記のような比較の結果は、被験体においてがん等の疾患の進行を診断するか、又は予後診断を提供することにも使用することができる。発現パターンは、非腫瘍組織パターンに対するがん等の疾患の発現パターンの回復を探すことによって、がん等の疾患の治療のための治療剤をスクリーニングすること、又は被験体における療法に対する応答をモニタリングすることにも使用することができる。
【0061】
疾患が免疫疾患又は免疫状態、がん、出生異常、精神遅滞、肥満、神経疾患、糖尿病、及び妊娠性糖尿病からなる群から選択される本発明による方法が好ましい。好ましくは、がんは、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、白血病/リンパ腫、肺がん、前立腺がん、子宮がん、乳がん、皮膚がん、内分泌がん、膀胱がん、膵臓がん、他の消化管がん、卵巣がん、子宮頸がん、頭部がん、頸部がん、及び腺腫等のがんからなる群から選択される。
【0062】
本発明のまた別の態様は、哺乳動物から得られたサンプル中の哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態の相対量に対する薬物の効果をモニタリングする方法であって、上記薬物で治療した哺乳類動物において本発明による方法を行うことと、上記哺乳動物細胞の上記特定の型及び/又は状態の相対量を非治療サンプルのものと比較することとを含む、哺乳動物から得られたサンプル中の哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態の相対量に対する薬物の効果をモニタリングする方法に関する。本明細書中で論考される特定のマーカー遺伝子で開いたクロマチンを有する細胞の存在及び数、量、又は比率の変化(増大又は減少)は、上記治療に対する上記患者の応答及び/又は応答の可能性の指標となる。細胞の特異的に接近可能な遺伝子コピーの変化がないことは、通常は選択された療法の効果がないことを示す。モニタリング又は予測を、当該技術分野で既知の他の方法、例えばCA125血液検査及び/又はCTスキャン若しくは超音波スキャン等と組み合わせてもよい。
【0063】
生体サンプルが上述にもあるように、血液又はその画分、唾液、口腔細胞、涙液、精液、尿、汗、糞便物質、皮膚、及び毛髪からなる群から選択される本発明による方法が好ましい。さらに、サンプルは心臓、肝臓、脳、腎臓、膀胱、筋肉、軟骨、骨、結腸、胃、乳房、膵臓、及び/又は甲状腺等(これらに限定されない)の健常な又は病変した固形組織に由来する任意の細胞型を含み得る。好ましくは、細胞型がCD19+B細胞、CD3+CD8+細胞傷害性T細胞、CD15+顆粒球、CD14+単球、CD56+ナチュラルキラー細胞、CD4+ヘルパーT細胞等の免疫細胞;腎細胞;骨細胞;神経細胞;血液細胞;及び分化全能性のヒト胚性幹細胞を除くこれらのいずれかの前駆体から選択される。
【0064】
また、疾患が免疫疾患又は免疫状態、がん、出生異常、精神遅滞、肥満、神経疾患、糖尿病、及び妊娠性糖尿病からなる群から選択される本発明による方法が好ましい。好ましくは、上記がんは、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、白血病/リンパ腫、肺がん、前立腺がん、子宮がん、乳がん、皮膚がん、内分泌がん、膀胱がん、膵臓がん、他の消化管がん、卵巣がん、子宮頸がん、頭部がん、頸部がん、及び腺腫からなる群から選択される。
【0065】
次に、更に別の態様は、生体サンプルにおける細胞の存在を決定する方法であって、GP9、FCER2、S100P、HIPK3、TM4SF19、CD160、及びLDB2の群から選択される遺伝子の少なくとも1つのクロマチン構造を決定し、それにより選択された細胞の細胞特性に特異的なプロファイル(又はパネル)を生成する、クロマチン構造を決定する工程を含む、生体サンプルにおける細胞の存在を決定する方法に関する。
【0066】
したがって、その別の態様では、本発明は、例えば完全にバイサルファイト変換された、全体的にシトシンを含まないDNAのリアルタイムPCR分析によって決定されるクロマチン構造が、驚くべきことに或る特定の細胞型及び細胞状況の指標となることが見出された上記で言及される特定のマーカー遺伝子に言及する。本発明の一態様では、これらの遺伝子はしたがって、例えば未知の型及び/又は状況の細胞の混合物を含有する生体サンプルにおける細胞型及び細胞状況を特性評価する好ましい例として使用することができる。
【0067】
好ましくは一方の細胞型が特異的であり一方が一般に接近可能である、上記遺伝子の少なくとも2つのクロマチン構造が決定される本発明による方法が好ましい。上記遺伝子の全てのクロマチン構造が決定される本発明による方法が更に好ましい。本発明の基礎を形成する遺伝子は好ましくは、「遺伝子パネル」、すなわち特定の細胞型又は細胞型の群(セット)についてのそれらのそれぞれの情報的クロマチン構造を含む集合体を形成するためにそれぞれ使用される。遺伝子パネルの形成は、特定の細胞型及び細胞状況の指標となる迅速かつ特異的な分析を可能にする。本発明において記載され、採用される遺伝子パネル(複数も可)は、驚くほど高い効率で生体サンプルにおける細胞の存在の決定に更に使用することができる。加えて、多種多様な遺伝子に由来する複数のCpG部位の使用は、単一遺伝子の診断ツール及び検出ツールと比較して高度の感受性及び特異性を可能にする。
【0068】
その別の態様において、本発明による方法は、選択された細胞型のクロマチン構造分析の質に基づく決定される遺伝子の特異的選択を更に含む。すなわち(That is)、14個の遺伝子を有する幅広いパネルを、識別精度及び定量精度に対する高い分解能を有する細胞型の群を識別するのに採用することができるが、パネルのごく一部を細胞型のより小さな群の同定及び定量に使用することが可能である。全ての細胞型が存在するわけではなく、又は分析に関連するわけではないことが知られている場合、14個全てより少ないマーカーからなる選択されたパネルを使用してもよい。例えば、それぞれの分化経路において細胞型のサブセットのみを産生する幹細胞を用いて分化実験を行う場合、一部の細胞型及びそれらの差次的クロマチン構造パターンの分析のみが要求される。この場合、14個の完全なセットより少ないマーカー領域を有するミニマーカーパネルをこの目的で生成し、調査する集団の同定及び定量の両方を達成することができる。最も極端な場合では、かかるミニパネルは、対処する問題に基づいて、僅か1つのマーカー領域からなっていてもよい。この最小限のシナリオは2つの状況で実現可能である。一方では、かかる状況は、2つの細胞型のみが不均一な細胞集団中に存在する可能性がある場合に起こり得る。この場合、2つの細胞型間で一貫した独特のクロマチン構造を有する単一マーカー領域によってこれらを識別することが可能である。代替的には、かかる最小のパネルは、1つの特定の細胞型において単一の調査領域が排他的に接近可能であることが知られ、一方でそれが他の全ての細胞において逆の状態にある場合に、より不均一な(すなわち、2つを超える細胞型が存在する可能性がある)混合物に適用可能である。この後者の場合、及び対処する問題がこの特定の1つの細胞型の存在の定量及び分析のみである場合、領域の大きなパネルに由来する単一領域が望ましい。
【0069】
上記に記載されるような異なる領域の組合せに基づいて、生体サンプルにおける細胞型の存在を決定することも本発明の代替的な実施の形態である。正確な決定の可能性を増大させるために、幾つかの選択された更なる領域の独特のクロマチン構造を調査することが好ましい。1つ又は複数の領域を含むかかる「ミニパネル」において、更なる領域を7個まで使用することが好ましい。かかるミニパネルに加えるべき好ましい数の領域は、上記に記載される遺伝子の領域のうちの1つ又は複数であり得る。細胞型及び細胞状況を十分に高いレベルの質の上記分析で識別するには、最大で2つの記載の領域の複合分析が特に好ましい。他の好ましい組合せは、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、及び14個の領域のクロマチン構造分析を含み得る。以下で本発明を検出される特定の細胞型について具体的に説明する場合には、本発明は上記のパネルの1つの領域と、指示される領域の1つ又は複数との組合せも含むことを意味する。
【0070】
或る特定のマーカーによって、試験した他の細胞型と比べて一部の細胞型において特に独特であった特定の遺伝子の領域が実証された。例えば、領域、特に開いたクロマチン領域については以下のとおりである:
2個の領域の一例として、GP9及びFCER2の領域は、CD19+B細胞(BCL05)において最も接近可能である;
2個の領域の一例として、領域S100P、HIPK3は、CD15+顆粒球(GRC01)において最も接近可能である;
1個の領域の一例として、TM4SF19の領域は、CD14+単球(MOC02)において最も接近可能である;
2個の領域の一例として、CD160及びLDB2の領域は、CD56+ナチュラルキラー細胞(NKC02)において最も接近可能である(図5を参照されたい)。
【0071】
好ましい例として、2つの遺伝子S100P及びHIPK3の領域をしたがって、CD15+顆粒球と上記に記載されるような他の免疫細胞とを識別するために使用することができる。同様に、CD160をしたがって、CD56+ナチュラルキラー細胞と上記に記載されるような他の免疫細胞とを識別するために使用することができる(図5を参照されたい)。
【0072】
本発明は、或る特定の実施の形態において、生体サンプルの試験による生体サンプルにおける細胞の存在又は状況の決定に使用されるキットとして更に記載することができる。代表的なキットは、上記の領域の少なくとも1つのDNAに選択的にハイブリダイズする上記に記載されるような1つ又は複数の核酸セグメントと、1つ又は複数の核酸セグメントの各々の容器とを含み得る。或る特定の実施の形態では、核酸セグメントは、単一のバイアルに合わせることができる。更なる実施の形態では、核酸セグメントは、標的領域を増幅するためのプライマー対も含み得る。かかるキットは、任意のバッファー、溶液、溶媒、酵素、ヌクレオチド、又はハイブリダイゼーション反応、増幅反応、若しくは検出反応のための他の構成要素を含んでいてもよい。好ましいキットの構成要素は、更に好ましくは、メチル化分析、逆転写PCR、in situハイブリダイゼーション、ノーザン分析、制限多型性分析(RPA)、DNAse I消化、ChIP Chip(商標)、クロマチン免疫沈降マイクロアレイ、定量PCR分析、選択的沈降、若しくはバイサルファイトによるシトシンの変換、又はそれらの組合せのための試薬を含む。好ましいキットは、CD3、FOXP3、GLNY、CCR6、CAMTA1、GP9、FCER2、S−100−P、HIPK−3、TM4SF19;CD160抗原前駆体、LDB2、CD19、及びGAPDHの群から選択される遺伝子の少なくとも1つのクロマチン構造を決定するための任意の他の構成要素も含み得る。
【0073】
本発明によるキットは、1.細胞試料を処理するための化学物質(バイサルファイト等);2.手順書;3.特定の細胞型又は状況に関連するマーカー領域を検出する、本発明によるオリゴヌクレオチドプローブ、アンプリコン、遮断剤又は伸長プライマー(オリゴヌクレオチドは、リアルタイムPCR(RT−PCR)又は一塩基伸長法(SBE)等の一般に利用可能な検出プラットフォーム上でシグナルを発生するように構成され得る。各々のシグナルは、試料中の特定の標的部位でのメチル化レベルを示す。代替的に、記載の核酸によるプローブをチップ上で使用するために作製する場合もある);4.結果を処理するためのバイオインフォマティクス手段(これ(例えばソフトウェア)は、生データからシグナルを正規化する、読出し値を解釈するための結果の行列を含有する、又は例えば細胞型の割合若しくは効力予測を算出する様々なアルゴリズムを実行するものであり得る)も含有し得る。
【0074】
本発明の別の好ましい態様は、本発明による方法を行うための材料を含む、哺乳動物から得られたサンプルにおいて哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態を同定するためのキットに関する。本発明による好ましい1つの実施の形態では、キットは、a)バイサルファイト試薬と、b)関心の領域におけるCpG位置のメチル化分析のための材料とを含む。当業者であれば、分析対象の部位の量を最小にするために、CpG位置の特定のサブセットの材料を更に選択することが可能である。キットは診断キットであり得る。
【0075】
本発明との関連で生成されるデータから、0.8超という観察された相関係数がTregに対するFoxp3 TSDRの特異性と同等であるため、Foxp3接近可能性がTregを規定する(Huehn, J., J.K. Polansky, and A. Hamann, Epigenetic control of FOXP3expression: the key to a stable regulatory T-cell lineage? Nat Rev Immunol,2009. 9(2): p. 83-9)のと同程度に、CD3遺伝子におけるバイサルファイト変換にとってのDNAの接近可能性がCD3発現Tリンパ球を規定することが示される。残りの結果のFACSとエピジェネティック測定との間の変動性は、フローサイトメトリーによる全体的な白血球カウントの規定における正確さの欠如を含む体系的変動に一部起因し得る。フローサイトメトリーによる細胞計数を採血の約6時間後に、エピジェネティック分析を1年後に行ったことから、本発明者らは、凍結血液サンプルの遡及的分析がエピジェネティック免疫表現型検査を用いて実現可能となると提唱する。グラニュライシンの発現は細胞傷害性T細胞及びNK細胞の機能特性であり、これはがん発症時に損なわれることが報告されており(Kishi, A., et al., Differential expression of granulysin andperforin by NK cells in cancer patients and correlation of impaired granulysinexpression with progression of cancer. Cancer Immunol Immunother, 2002. 50(11):p. 604-14)、腫瘍患者の予後と相関することが示唆されている(Galon, J., et al.,Type, density, and location of immune cells within human colorectal tumorspredict clinical outcome. Science, 2006. 313(5795): p. 1960-4)。本発明によるデータから、グラニュライシン遺伝子のバイサルファイト変換にとっての接近可能性は、フローサイトメトリー分析によって検出される全血中のNK細胞及びNKT細胞の量と相関する、CD3−CD56+NK細胞及びCD+CD56+NKT細胞の固有の性質であることが示される。したがって、グラニュライシン遺伝子のエピジェネティック接近可能性が細胞傷害性T細胞の一部とも共通することにも関わらず、このエピジェネティックマーカーは、NK細胞による免疫反応の良好な指標であるようである。エピジェネティック免疫表現型検査を更に可能にするために、本発明者らは全細胞計数のための一般的標準系を開発した。mRNA技術及び或る特定のタンパク質技術と同等に、本発明者らはハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの調節領域を正規化標準として使用した。細胞特異的エピジェネティックマーカー系に対する高度保存、推定機能的非冗長性、及び構造的類似性、すなわち潜在的な差次的バイサルファイト変換性の存在がこの選択の基準であった。本発明者らは、GAPDHが全ての生細胞において十分に接近可能であり、したがって総細胞カウントを決定するために使用することができることを示す。標準化プロセスの等モル濃度性を保証するために、本発明者らは、FOXP3、CD3、GNLY、及びGAPDHのTpG変異体を単一プラスミドにクローニングした。これにより、どの細胞型を定量するかに関わらず、定量は十分に比較可能となる。本発明者らはしたがって、全ての細胞特異的パラメータを等しく正規化し、それにより互いに関連付けることもできる一体標準系を提供する。
【0076】
本発明者らは健常組織と腫瘍組織とで免疫細胞の浸潤を比較したが、3つ全ての非関連腫瘍実体についてTreg数の劇的な増大が見られる。肺がん及び結腸直腸がんの両方について約2倍のTregが観察され、卵巣組織においては増大は10倍超である。肺腫瘍及び結腸直腸腫瘍において、本発明者らは、健常組織と比較して統計的に有意な総Tリンパ球カウントの低下も見出した。CD3細胞の減少及びTregの増大の両方が、腫瘍発生に適切に対抗する身体の病的機能低下と一致する。この考えは、肺組織及び結腸直腸組織と比較して卵巣における非常に異なる細胞カウントにも関わらず、CD3細胞コンパートメント内のTregの相対量が3つ全ての腫瘍実体で同様に振る舞うということによって支持される。それぞれの健常組織と比較して肺がん、結腸がん、及び卵巣がんにおいて観察された相対Treg対総T細胞比の平均的な増大はそれぞれ2.5倍、2.8倍、及び5.4倍である。気管支組織及び結腸直腸組織においてのみ可能なマッチドペア分析について、本発明者らは、測定したペアのおよそ95%及び81%(それぞれ46個のペアのうち43個及び48個のうち39個)が、気管支腫瘍において健常隣接組織と比較して、結腸直腸がんサンプルより大きな増大を示すことを見出している。結腸直腸組織のサンプルの質は比較可能なほど低いため、マッチドペア分析における相違は、生物学的現象というよりも組織の質の差異に起因すると言える。したがって、データから、3つ全ての腫瘍実体におけるTreg比の顕著な変動及び一貫した推移が示される。Tregの測定に対するFOXP3 TSDRアッセイの認められた高い特異性と総合して、本発明者らは、この不均衡(disbalance)が固形腫瘍の発生のバイスタンダー効果というよりも不可欠な決定因子であると考えた。したがって、データから、寛容原性免疫系対エフェクター免疫系の比率も標的抗腫瘍戦略の有力な候補であり得ることが予示され、ここで既知の表面マーカーは、活性化エフェクターT細胞及び調節T細胞の両方を激減させるため理想的な候補ではない場合があると考えることが重要である。3つ全ての測定した細胞亜集団の組織浸潤が、卵巣組織よりも肺及び結腸において有意に高いことが更に観察される。全体としては、これは健常組織及び腫瘍組織のどちらにも当てはまる。しかしながら、健常卵巣組織は極端に低いリンパ球カウント(気管支がんと比較して、およそ15倍低いTreg、7.5倍低いCD3細胞、及び10倍低いグラニュライシン細胞)を有するが、腫瘍組織では差は有意に低い(気管支がんと比較して、3倍低いTreg、2.8倍低いCD34細胞、及び3.5倍少ないグラニュライシン陽性細胞)。健常卵巣における低いリンパ球カウントは、健常状態で既に高度に血管化している肺及び結腸と比較して有意に低い血管化による可能性が高い。腫瘍組織内で観察される適応は、卵巣における血管化が組織組成を大幅に変化させるが、これは全体的に安定な血管化を有するようである肺組織又は結腸直腸組織には当てはまらないことを示す。CD3細胞及びグラニュライシン陽性細胞の相対的減少は、腫瘍形成(tumorigenesis)中に免疫系が反発され、非常に限られた適応免疫応答及び先天性免疫応答しか開始されず、卵巣がんにおける免疫細胞カウントの増大が免疫応答の増大ではなく血管化によるものとする考えを更に支持する。データは、CD3陽性細胞数の増大は、腫瘍に効果的に対抗するのに有利であり、したがって単変量分析において試験した場合のより良好な予後につながることを示した様々な以前の報告を裏付ける。本発明者らはまた、この傾向が特定の腫瘍実体に依存しないことを示す。このため、データは、適応免疫応答の増強が抗腫瘍アプローチに有用であると考えられるという見解を支持する。同じ器官の健常組織と比較した場合の腫瘍組織におけるTregの割合及びTreg対CD3比の劇的な影響にも関わらず、本発明者らは以前に報告されたようなTregカウント及び生存との逆相関を認めなかった。それどころか、110人の卵巣がん患者及び86人の結腸直腸がん患者を用いた2回の研究において、より低いTregカウントを有する患者と比較して、より高いTregレベルを有する腫瘍患者の生存利益について統計的に有意ではないが、明らかな傾向を見出した。この傾向は卵巣がんでより顕著であり、Tregカウント及びTreg対CD3細胞比の両方が、より高いTregを有する患者についてより良好な生存の傾向を示す。結腸直腸がんのデータはより不明瞭であり、総Tregカウントについては僅かな傾向しか観察されず、Treg対CD3比についての傾向は全く観察されない。
【0077】
異なるデータセットを組み合わせることで、以前に報告された相関の本質的な問題を明らかにする。本発明者らは、全ての健常組織及び腫瘍性組織においてTreg数と総Tリンパ球カウントとの間の直接的な線形相関を観察する。この直接的な相関はその強さが異なり、結腸直腸がんの0.325から卵巣がんの0.76まで様々であるが、全ての健常組織及び病変組織において統計的に有意である。したがって、CD3レベルの増大及び同時のTregの減少が、少なくとも先の研究で行われたように単変量で試験した場合に転帰の改善につながると仮定することは妥当ではない。しかしながら、本データと以前のデータとで異なる結果は、機能的説明及び技術的説明も必要とする。これに関し、エピジェネティック計数は通常は相対的な三次元尺度であるが、絶対細胞数の細胞計数は組織内の全体的な細胞密度に関わらない尺度である。この場合、以前のデータはより高い腫瘍細胞密度に起因するより高いTregカウントを相関させ得る。また、より高密度のTregは腫瘍の特定の範囲で生じ得るが、これはエピジェネティック研究が感知することができない現象である。生物学的には、TregカウントはFoxp3を発現する細胞を計数することによって行われた。活性化エフェクターT細胞もFoxp3を発現するため、Tregに対するFoxp3発現の特異性は限られているが、これらの細胞は接近可能なFOXP3 TSDRを有しないことが現在知られていない。したがって、活性化エフェクターT細胞数の低下を転帰の改善と相関させることは実現可能である。
【0078】
総合すると、本発明者らは、本発明によるエピジェネティック免疫表現型検査が血液、及び場合によっては、より重要なことには固形組織における免疫表現型検査に新たな比較可能性及び容易さを加えることができる新規な方法であると考える。これは、その相対的なロバスト性のために、良好な研究室業務の要件を達成することが困難である臨床的日常測定により良好な方法であり得る。しかしながら、この技術が固形組織及び血液における免疫学的問題に対処するために容易に適用可能となる前に、本発明によるGAPDHに対して示されるように標準化可能な、CD3又はFOXP3と同等の新規の特異的免疫細胞マーカーを発見し、広く比較可能な標準系を提供する多大な組織的な努力が不可欠である。生物学的には、本明細書中で提示したデータは、CD3、特にTregの腫瘍発生における卓越した役割を確固たるものにする。Tregの不確かな予後的意義にも関わらず、本発明者らは、全ての腫瘍における劇的なTregの増大が不適切なバイスタンダー効果ではなく、腫瘍確立の成功に必要とされる必須条件であることを主張する。本発明者らはしたがって、Tregが、かかる薬物は必ずしも全身的に作用するのではなく、むしろ腫瘍内微小環境に特異的に作用するように設計され得るが、抗腫瘍戦略の主要な標的となるであろうことを提唱する。現在のデータは全て、抗腫瘍応答におけるCD3細胞の重要な役割を支持するものである。しかしながら、本発明者らは、Tregホーミングを阻害しないCD3細胞の無差別のホーミングが、常に活性化因子及びその抑制因子を同様に同時誘引する(co-attract)恐れがあるため、TregとCD3細胞カウントとの関連性をT細胞ベースの薬物の有効性の深刻な阻害となるとみなしている。
【0079】
したがって、本発明との関連では、特定の遺伝子のプロモーター、プロモーター近接領域又はコード配列が、細胞型又は細胞状態に特異的なクロマチン構造を示すことが更に示され得る。本発明者らは、主にT細胞分化及び免疫状況について上述したものと同様に振る舞う遺伝子領域を明らかにした。特に、バイサルファイト処理におけるウラシルへのシトシンの変換にとってのそれらの得られる接近可能性によって例示されるように、それらのクロマチン接近可能性の程度に応じて細胞型/細胞状況の高感度な指標となる、14個という多数の遺伝子領域を発見した。接近可能性を、細胞型間で変動すると考えられるが、細胞型内で一貫した表現型を維持する、これらの領域のエピジェネティックなエピ表現型(epiphenotype)に変換した。これらは各々の細胞型の複数のサンプルについて検証されたが、細胞の同一性、状況、純度及び効力を決定するアッセイにおいて特異的に標的とすることができるマーカー領域となる。さらに、これらは細胞特徴における重要な変化の指標であり、したがって組織工学及びかかる変化をもたらす化合物のモニタリングに有用である。本発明者らは、そのクロマチン及びエピジェネティック(例えばメチル化)パターンの接近可能性が細胞の型又は状況と統計的に相関する、本明細書中に記載されるような一連の遺伝領域を説明する。それにより、これらの領域は細胞型の識別に特に高感度かつ有用なマーカー領域となる。
【0080】
本発明をここで添付の実施例を参照して更に説明するが、本発明はそれに限定されない。本発明の目的上、本明細書中で引用される全ての参照文献は、それらの全体が参照により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1−1】遺伝子CD3、GNLY、及びGAPDHのゲノム構成及び局在性を示す図である。染色体バーの上又は下の方向に応じて転写産物を示す。様々な遺伝子領域に対して整列したアンプリコンを明るい赤色で示す。
【図1−2】選択されたアンプリコンのエピジェネティックプロファイリングを示す図である。バイサルファイトシークエンシングの結果を色分けしたマトリックス内に示し、ここで各々のラインは細胞型におけるシークエンシングデータを表し、各々のブロックはアンプリコンを表す。左側の色分けバーによって示されるように、青色はバイサルファイトによる変換にとって接近不能なDNAに対応し、黄色はバイサルファイト変換にとって接近可能なDNAに対応する。
【図2−1】特異的RT PCRアッセイの増幅プロファイルを示す図である。各々、左パネルには完全にバイサルファイト変換されたDNAに対するプライマー及びプローブを用いたPCRシステムを示し、右パネルにはバイサルファイト変換に不活性なCpGを有するDNAに対するバージョンを示す。全てのPCRシステムの直線性は、測定されたCP値を使用される鋳型のlog濃度上にプロットすることによって各々のグラフ内に示される。
【図2−2】同上
【図2−3】同上
【図3】下記実施例による完全にバイサルファイト変換された対照プラスミドの好ましい実施形態を示す図である。
【図4】様々な細胞及び組織におけるGAPDHの完全にバイサルファイト変換されたDNAと部分的にのみバイサルファイト変換されたDNAとの比率を示す図である(1.顆粒球、2.単球、3.NK細胞、4.CD4ナイーブ細胞、5.CD8細胞、L.肺、C.結腸、U.子宮組織、B.乳房組織)。本発明者らは、部分的にのみ変換されたDNAのシグナルを検出することができなかった。したがって、全ての細胞は、完全に接近可能なDNA、すなわち開いたクロマチンのみを含有するようである。
【図5】或る特定の好ましい細胞型及び/又は細胞状況に特異的な遺伝子のメチル化分析ベースのクロマチン接近可能性分析を示す図である。細胞型はBCL05:CD19+B細胞;CTL05:CD3+CD8+細胞傷害性T細胞;GRC01:CD15+顆粒球;MOC02:CD14+単球;NKC02:CD56+ナチュラルキラー細胞;及びTHC04:CD3+CD4+ヘルパーT細胞である。試験した領域/遺伝子は以下のとおりである。
【表A】

実際のアンプリコンにおいて分析したCpG位置は、アンプリコン番号の後の配列番号によって示す。
【図6−1】カツマキソマブ(Catumaxomab)による治療前及び治療後の卵巣がん患者に由来する末梢血の分析を示す図である(下記実施例を参照されたい)。測定は、全有核細胞に対してCD3+細胞(A)、全有核細胞に対してCD4+CD25+CD127−(B)、CD3+細胞に対してCD4+CD25+CD127−(C)、及び全有核細胞に対してCD56+細胞(D)のいずれかを選択するFACS選別を用い、全ての利用可能な血液サンプルについて行った。FACS結果(%)をX軸上にプロットし、Y軸上にプロットされるqPCRを用いた細胞のエピジェネティック分析により得られたパーセンテージと比較する。Rはエピジェネティック測定に対する各FACSのピアソン相関係数を示す。p値は相関の統計的有意性を示す。
【図6−2】同上
【図7−1】健常組織及びがん性組織における組織浸潤リンパ球を示す図である。箱ひげ図は、健常な及びがん性の卵巣(OC)組織、肺(BCa)組織、及び結腸直腸(CRC)組織におけるA)Treg、B)CD3T細胞、C)GNLY細胞、及びD)CD3コンパートメント内のTregの相対存在量を総細胞カウントに対する百分率で示す。Nは各々の箱ひげ図に含まれる患者の数を示す。中央の箱は分布の50%を示す。箱内の中央の線は分布の中央値を表し、ひげは全測定データの95%をカバーする。この分布からの外れ値は丸によって示される。表示のp値は両側不均一分散(heteroscedastic)スチューデントt検定から得た。
【図7−2】同上
【0082】
配列番号1は、実施例において使用するプラスミドにクローニングされる挿入断片のDNA配列を示す。
【0083】
配列番号2〜配列番号15は、バイサルファイト変換されたDNAに特異的な実験において使用されるプライマーの配列を示す。
【0084】
配列番号16〜配列番号22は、図5において分析されるアンプリコンの配列を示す。
【0085】
配列番号23〜配列番号29は、本発明との関連で同様に分析することができる関心の領域の配列を示す。ROIは、それぞれAMP1583、AMP1584、AMP1588、AMP1589、AMP1594、AMP1599、及びAMP1601に対応する。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0086】
材料及び方法
略語:
Amp、アンプリコン;CD3D、T細胞表面糖タンパク質CD3δ鎖;CD3G、T細胞表面糖タンパク質CD3γ鎖;FOXP3、フォークヘッドボックスタンパク質P3;GAPDH、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ;GNLY、グラニュライシン。
【0087】
細胞及び組織サンプル
ホルマリン固定し、パラフィン包埋した組織サンプルについては、ベルリン大学附属シャリテ病院(Charite -UniversitaetsmedizinBerlin)のベンジャミンフランクリンキャンパス(Campus Benjamin Franklin)の病理学研究所のアーカイブから検索した。腫瘍及び正常組織の代表的なパラフィンブロックを選択し、対応する正常実質を含む結腸直腸癌又は気管支癌の標本の組織マイクロアレイ(TMA)を、直径1mmのコアを用いて構築した。新鮮凍結卵巣組織サンプル及び血液については、ベルリン大学附属シャリテ病院のウィルヒョーキャンパス(Campus Virchow)の卵巣がん腫瘍バンクから検索した。
【0088】
ゲノムDNAの単離
ヒトの血液、組織からのゲノムDNAの精製については、DNeasy Blood and Tissue Kit(Qiagen,Hilden,Germany)を使用した。腹水の場合、本発明者らは培養細胞からの全DNAの単離のためのプロトコルに従った。ホルマリン固定し、パラフィン包埋した(FFPE)組織のサンプルからのゲノムDNAは、QIAamp DNA FFPE Tissue Kit(Qiagen,Hilden,Germany)を用いて単離した。パラフィンブロックをトリミングして余分なパラフィンを除去し、組織切片の厚さを10umに調整した。各々の反応は10個の組織切片を用いて行った。
【0089】
ゲノムDNAの亜硫酸水素ナトリウム変換
亜硫酸水素ナトリウム媒介変換をEpiTect Bisulfite Kit(Qiagen,Hilden,Germany)を適用することによって行い、反応を0.5ug〜1ugの精製ゲノムDNAを用いて行った。簡潔に述べると、高バイサルファイト塩濃度及び低pH下でのゲノムDNAの熱サイクリングによって、非メチル化シトシン残基のウラシル(続くPCRにおいてチミンとして複製される)への変換をもたらす。これらの条件下ではメチル化シトシン(CpGジヌクレオチドのコンテキスト内に見られる)は変化しないままであるため、この処理はエピジェネティック標識を配列情報に変換するものである。
【0090】
オリゴヌクレオチド
この研究において使用される増幅プライマー及び加水分解プローブ等のオリゴヌクレオチドは、ヒトゲノムGRCh37(e!Ensemble release 56;2009年9月)のアセンブリに対するそれらの染色体位置によって表される。
定量的バイサルファイトシークエンシングのためのオリゴヌクレオチド:a)遺伝子間CD3G(ENSG00000160654)/CD3D(ENSG00000167286)領域:アンプリコン番号1、フォワードプライマー:11:118213200−118213221:1、リバースプライマー:11:118213616−118213637:1;アンプリコン番号2、フォワードプライマー:11:118214271−118214292:1、リバースプライマー:11:118214685−118214705:1;アンプリコン番号3、フォワードプライマー:11:118214702−118214723:1、リバースプライマー:11:118215151−118215173:1;b)GNLY(ENSG00000115523)遺伝子領域:アンプリコン番号1、フォワードプライマー:2:85921382−85921404:1、リバースプライマー:2:85921742−85921763:1;アンプリコン番号2、フォワードプライマー:2:85921807−85921828:1、リバースプライマー:2:85922259−85922279:1;アンプリコン番号3、フォワードプライマー:2:85922895−85922916:1、リバースプライマー:2:85923327−85923348:1;c)GAPDH(ENSG00000111640)CpG島:アンプリコン番号1、フォワードプライマー:12:6644119−6644135:1、リバースプライマー:12:6644635−6644656:1;アンプリコン番号2、フォワードプライマー:12:6643586−6643604:1、リバースプライマー:12:6643990−6644011:1。
リアルタイムPCRベースアッセイのためのオリゴヌクレオチド:a)FOXP3(ENSG00000049768)TSDR:メチル化特異的PCR:フォワードプライマー:X:49117219−49117246:1、リバースプライマー:X:49117283−49117307:1、プローブ:X:49117256−49117273:1;脱メチル化特異的PCR:フォワードプライマー:X:49117219−49117246:1、リバースプライマー:X:49117283−49117307:1、プローブ:X:49117256−49117278:1。b)CD3:メチル化特異的PCR:フォワードプライマー:11:118213633−118213653:1、リバースプライマー:11:118213686−118213707:1、プローブ:11:118213670−118213687:1;脱メチル化特異的PCR:フォワードプライマー:11:118213632−118213653:1、リバースプライマー:11:118213686−118213709:1、プローブ:11:118213664−118213690:1。c)GNLY:メチル化特異的PCR:フォワードプライマー:2:85921878−85921895:1、リバースプライマー:2:85921964−85921992:1、プローブ:2:85921918−85921943:1;脱メチル化特異的PCR:フォワードプライマー:2:85921877−85921895:1、リバースプライマー:2:85921964−85921992:1、プローブ:2:85921911−85921939:1。d)GAPDH:脱メチル化特異的PCR:フォワードプライマー:12:6644378−6644399:1、リバースプライマー:12:6644456−6644476:1、プローブ:12:6644429−6644457:1。
【0091】
バイサルファイト変換されたDNAに特異的な使用されるプライマーの配列は、以下のとおりである(例えば図5を参照されたい)。
【0092】
【表B】

【0093】
定量的バイサルファイトシークエンシング
バイサルファイト変換に特異的なプライマーを用いて、7ngの亜硫酸水素ナトリウム変換されたゲノムDNAから標的領域をプレ増幅した。PCRを1×PCRバッファー、1UのTaq DNAポリメラーゼ(Qiagen,Hilden,Germany)、200μM dNTP、各々12.5pmolのフォワードプライマー及びリバースプライマーを含有する25μlの最終容量で行った。熱サイクリングを95℃で15分間、続いて95℃で1分間、55℃で45秒間及び72℃で1分間を40サイクル、72℃で10分間の最終伸長工程で行った。PCR産物をExoSAP−IT(USB Corp.)を用いて精製し、増幅プライマー及びABI Big Dye Terminator v1.1 chemistry(Applied Biosystems)を適用して直接シークエンシングした。産物をエタノール沈殿によって精製し、1Mベタイン(betaine)に溶解させ、ABI 3100遺伝子分析装置でのキャピラリー電気泳動に供した。AB1ファイルを、配列トレースを正規化し、不完全なバイサルファイト変換を補正し、CpG部位でのメチル化シグナルの定量を可能にするESMEを用いて解釈した。
【0094】
リアルタイムPCR
リアルタイムPCRを、Roche LightCycler 480 Probes Master chemistry(Roche Diagnostics)を用いて、各々30pmolのメチル化特異的又は脱メチル化特異的フォワードプライマー及びリバースプライマー、5pmolの加水分解プローブ、50ngの□−ファージDNA(New England Biolabs)、及び60ngのバイサルファイト変換されたゲノムDNAの鋳型、又はそれぞれの量のプラスミド標準を含有する20μlの最終反応容量で行った。各々のサンプルを、LightCycler 480 System(Roche)を用いて三連で分析した。全てのアッセイシステムについて、サイクリング条件は95℃で10分間の予熱工程、続いて50サイクルの95℃で15秒間及び61℃で1分間の工程を含んでいた。CP(「クロッシングポイント(crossing point)」)値を、LC480分析ソフトウェアを適用して二次導関数最大値(second-derivative maximum)法によってコンピュータで計算し、鋳型コピー数を線形回帰による(適切なプラスミドベース標準の段階希釈を用いた)検量線から算出した。
【0095】
プラスミド標準
様々なリアルタイムPCRベースアッセイのためのバイサルファイト変換されたメチル化標的領域及びバイサルファイト変換された脱メチル化標的領域をコンピュータ内で設計し、合成し(Genscript Inc.)、断片をプラスミドpUC57に挿入した。組み換えプラスミドを線状化し、10ng/μlの□−ファージDNA(New England Biolabs)中で段階希釈して、リアルタイムPCRベースアッセイのための標準を、1回の反応当たりの鋳型コピー数が12500、2500、500、100、20及び4という最終濃度で得た。
【0096】
主要末梢血白血球集団の細胞選別
末梢血サンプルを、地方倫理委員会の承認に従うインフォームドコンセントの後に健常ドナーから得た。顆粒球(CD15+)、単球(CD14+)、CD4+T細胞(CD3+CD4+)、Treg(CD4+CD25highCD45RA−)、B細胞(CD19+)、NK細胞(CD56+、CD56bright、CD56dim)、ナイーブCD8+T細胞(CD3+CD8+CD45RA+CD127+)、及び記憶CD8+T細胞(CD3+CD8+CD45RA−CD127+/−)等の異なる白血球集団への血液サンプルの分画を、以前に記載されるように行った(Baron et al. Eur J Immunol)。選別した細胞の純度はフローサイトメトリーによって求められるように97%超であり、生存度は常に99%超であった。
【0097】
統計分析
メチル化(CpG変異体)及び非メチル化(TpG変異体)DNAの量を、二次導関数最大値法からのクロッシングポイントでの線形回帰による検量線から推定した。中央値を使用して試験サンプルの三連の測定値を統合した。遺伝子特異的DNAの割合を、遺伝子特異的(specific)TpG変異体DNAと、この同じ遺伝子のTpG変異体とCpG変異体との合計、又はGAPDH TpG変異体コピーの数との比率としてコンピュータで計算した。累積生存率はSPSSを用いたカプランマイヤー法によって算出した。群間の単変量比較については、統計的有意性をコックス・マンテル検定を用いて評価した。相関分析については、ピアソンの積率係数又はスピアマンの順位相関及びt検定統計量を使用した。全てのP値は両側とした。
【0098】
結果
本明細書中で言及される或る特定の特異的遺伝子を分析したが、これは本発明者らによってバイサルファイトにより完全に変換されていると同定され、したがって接近可能クロマチン構造が示唆された(図1〜図4を参照されたい)。特定のRT−PCR設定を用いて、本発明者らはDNAの増幅が、完全にバイサルファイト変換された領域が存在する場合にのみ起こることを示すことができた。変換されていない領域の場合、増幅産物は観察されない。
【0099】
図面中のデータは、確立したPCRシステムが、完全に変換されたDNA種又は完全に変換されていないDNA種のいずれかを排他的に増幅することを示す。2つの種間の交差汚染は観察されなかった。
【0100】
逆の特異性を試験するために、図3に示すようなバイサルファイト変換を模倣するプラスミド制御系を設計した。このプラスミド系は、この特定の設定において分析される完全にバイサルファイト変換されたCD3、FOXP3、GNLY及びGAPDH遺伝子領域のコピー量を定量するのに必要とされる全ての構成要素を含有していた。
【0101】
プラスミドは、配列gcggccgcCCTAAACACTACCACATCTCAAAACCCCTTAAAAAAAACCACAACCCCATAACACAAACCATAACAACTAAATTTCTgatcGTTTTTGATTTGTTTAGATTTTTTTGTTATTGATGTTATGGTGGTTGGATGTGTGGGTTTTATTGATATTATGGAGGAAGAGAAGAGG**tcgacCCAAACCCCTACCTCCACATCTACATAATAAAAACCATTAACCCTCATCAATAAATCTACATTTCCTCAAACCTACACTATCTAAAATTATACAAAACTAATAAAAAAACAAAATCTCTTCTATATTCagtcGGAATAGAGGAGAAGAGAGAGTTTCATTTTTTTGGTTTTTTAGAAGGAACATGAGAATACATGTTTGTGTTGAGAGTGGGTTAGAGCAGTTTTAGGGTAAAGTATGTGGATAagtc**GTTTTTGGTATTGTAGGTTTTGGGATGTTAGTGTGTAGTGGGTGTATTTTTGTTTGGATGTTGTGTTTGTGGTAGAGTGGTTGTTATGTTGTAATTGagtcGTTTTTTTTAAAGAGTGTTTTTGATAGGGATTGTTTTAGGAATTAGGTAGGAGAGAAGGGAGTGTGAGAGGTGAAAGTTATTATTATTctcgag(配列番号1)を、NotI−XhoI制限部位を用いてpUC 57プラスミドバックグラウンドに導入することによって構築した。星印は潜在的なメチル化部位を指し、小文字は構築物NotI−CD3−FOXP3−NKII−NKIII−GAPDH−CFF−XhoIの一般構造の境界を示す。
【0102】
リアルタイムPCRアッセイの定量は、ナノドロップ、又はUVette分析若しくはQuibitシステム(Invitrogen)等の代替方法における吸収測定によって定量される標準化プラスミドを準備し、光学密度を決定することによって達成される。
【0103】
この測定に基づき、プラスミドの濃度を決定し、標準測定系列を測定されたプラスミドの段階希釈を適用することによって作成する。このようにして、プラスミド上の全ての遺伝子について全く等モル濃度の標準を調製し、決定する(提供する)。この絶対等モル濃度は好ましい実施形態であるが、本発明者らはこの標準化系を全てのサンプルに使用することを提案し、異なるプラスミド上に存在し得るか、又は更にはプラスミド標準若しくはDNA標準からなるものではない様々な異なる標準を採用する場合に、同様の系を用いた分析も想定される。
【0104】
次いで、プラスミド系においてCD3、FOXP3、GLNY、及びGAPDHの完全にバイサルファイト変換された画分を最初に検出した後、生体サンプルを分析した。
【0105】
生細胞は、いわゆるハウスキーピング遺伝子の活性によって規定されるため、これらの遺伝子は定義からして全ての細胞において活性でなくてはならない。様々な実験において、全ての細胞が完全にバイサルファイト接近可能なGAPDH遺伝子座を有する(すなわち活性である)ことが示された。これに関し、本発明者らは顆粒球細胞、単球細胞、NK細胞、CD4ナイーブ細胞、CD8細胞、並びに肺、子宮、乳房、及び結腸の組織を分析し、これらの細胞内の遺伝子座が全てバイサルファイト変換について完全に接近可能であることを示した。
【0106】
接近可能クロマチンを有していた細胞について試験するために、本発明者らは完全にバイサルファイト変換されたDNAのみを認識する上記のPCRプラスミド系を分析した。バイサルファイト変換にとっての接近が限られた細胞が残らないことを示すために、本発明者らは、これらの細胞を完全には変換されていないDNAに特異的な系を用いて増幅することを試みたが、いずれのサンプルにおいてもいかなるシグナルも検出することができなかった。
【0107】
ほとんど全ての考え得るDNAシグナルが、完全に変換されたDNA又は完全に変換されていないDNAのいずれかに由来するため、完全に接近可能なGAPDHを測定することによって非アポトーシス性、非壊死性細胞の総数を確実に決定することができる。
【0108】
次に、特定の細胞においてのみ転写活性を有するDNA断片を分析した。この場合も、本発明者らは、これらの領域で完全に接近可能なDNAを分析した後、これらを試験プラスミド構築物中の接近可能なGAPDHの量と関連付けた。
【0109】
データの精度を確認するために、本発明者らは2つの以下の分析を互いに比較した:
%SCT1=コピーFBC SPG/コピーFBC GAPDH
その測定/算出の結果に対して、
%SCT2=コピーFBC SPG/(コピーFBC SPG+コピーNBCSPG)
ここで
%SCT1は、第1の方法によって決定される特定の細胞型の量であり、
%SCT2は、第2の方法によって決定される特定の細胞型の量である。
コピーFBC SPGは、特定の遺伝子の完全にバイサルファイト変換されたDNAのコピー数であり、
コピーFBC GAPDHは、GAPDHの完全にバイサルファイト変換されたDNAのコピー数であり、
コピーNBCSPGは、特定の遺伝子のバイサルファイト変換されていないDNAのコピー数である。
【0110】
分析を全血サンプルについて繰り返し、以下のデータを得た:
【0111】
【表C】

【0112】
完全なバイサルファイト変換の影響を受けやすい細胞型特異的遺伝子領域の確立及びqPCRアッセイ設計
CD3D及びCD3G(chr.11q23.3)遺伝子、グラニュライシン遺伝子領域(Chr.2p11.2)、及びGAPDH遺伝子内のCpG島(Chr.12p13.31)の遺伝子間制御領域におけるCpGジヌクレオチドのバイサルファイト変換接近可能性を、バイサルファイトシークエンシングを用いて試験した。ナイーブCD4及びCD8Tリンパ球においてCD3近接領域の全てのシトシンが完全に変換され(図1B)、TpG変異体のみが生じることを見出した。顆粒球、単球、Bリンパ球、及びNK細胞を含む他の試験した細胞型において同じ領域はバイサルファイト変換されず、「CpG変異体」が生じる。グラニュライシンについては、分析した遺伝子領域がナイーブCD4及びCD8 Tリンパ球、単球、顆粒球、並びにB細胞においてCpG変異体中に排他的に存在することが見出されたが、これはナチュラルキラー細胞においてはTpG変異体中に存在するようである(図1B)。本発明者らは、試験した全ての細胞型において分析したGAPDH領域中にTpG変異体を排他的に見出した(図1A)。これらのデータに基づいて、CD3領域、GNLY領域、及びGAPDH領域の分析した遺伝子座に対するPCRアンプリコンを設計した。各々の領域について、各々のアッセイについて変異体特異的な蛍光標識検出プローブを含む、TpG変異体鋳型を排他的に認識する1つのPCRシステムと、CpG変異体鋳型に特異的な1つのPCRシステムとを設計した(図2)。また、TpG変異体及びCpG変異体に対応する3つの遺伝子座の各々に対するプラスミド系を構築した。本発明者らは数桁にわたる増幅の高い線形性を示した(増幅効率は1.95〜2の範囲であった)。また、非生理的に高い濃度で試験した場合であっても、互いに反対の鋳型を用いる各々のTpG変異体及びCpG変異体に特異的なPCRシステムとの交差反応性が検出されたため、高い特異性が示された(コピー数はプラスミドDNA20コピー〜12500コピーの範囲であった)(図2)。
【0113】
CD3、GLNY、及びGAPDHに対するqPCRアッセイによる主要血液細胞画分の特性評価
CD3、GNLY、及びGAPDHに対するPCRシステムを、最近公表された分離スキーム(Baron, U., et al., DNA demethylation in the human FOXP3 locusdiscriminates regulatory T cells from activated FOXP3(+) conventional T cells.Eur J Immunol, 2007. 37(9): p. 2378-89)に従って精製した血液細胞画分について試験した。標準と同等のバイサルファイト変換されたゲノムDNA領域を含有する精製プラスミドの段階希釈物を用いて、TpG変異体からなるDNAコピーの数を決定した。対照として、CpG鋳型変異体を別個の反応で測定した。各々の遺伝子領域についての両方の画分のコピーの比率を算出した。これを表1に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
結果から、CD8及びCD4Tリンパ球がCD3位置について99%を超えるTpG変異体を含有するが、CD19B細胞、CD15+顆粒球、CD14単球、及びCD3CD56ナチュラルキラー細胞が1%未満のTpG変異体しか含有せず、排他的にCpG変異体からなることが示された。同等の分析をGNLY領域で行ったところ、95%を超えるTpG変異体がCD3CD56NK細胞及びCD3CD56NKT細胞の両方について観察された。CD19B細胞、CD15顆粒球、CD14単球は排他的にCpG変異体からなる。2.6%のCD4細胞及び20.6%のCD8記憶T細胞がGNLY遺伝子座についてTpG変異体として検出された。
【0116】
最後に、GAPDH遺伝子領域を指定の全ての細胞型におけるバイサルファイト変換接近可能性について試験した。ここで、CpG変異体の特異的増幅は全ての組織及び細胞型において完全に起こらなかった。これは、バイサルファイトシークエンシングデータ及びこの領域が常に完全に転写活性を有するはずであるという見解と一致する。データは、精製した細胞型におけるGAPDHについてのTpG DNA変異体の効率的な増幅を示した(表1)。本発明者らはしたがって、この遺伝子が任意の所与のサンプルにおける全細胞カウントの決定に最適であり、細胞数を制御するために生物学的に必要とされる完全に未修飾のDNAストレッチが測定されると推測する。
【0117】
これらのデータに基づいて、本発明者らは様々なqPCRシステムの技術的精度を更に証明しようとした。そのために、そのバイサルファイト変換されたDNAがCD3遺伝子座において99.9%のTpG変異体からなることが示される、FACS精製した調節T細胞を選択した。顆粒球はバイサルファイト変換にとって完全に接近不能であることが示され、CD3分析において99.7%のCpG変異体からなっていた。次いで、40%、20%、10%、5%、3%、2%、及び1%のCD3陽性調節T細胞を顆粒球のバックグラウンドにスパイクし(spiked)、CpG変異体のバックグラウンドにおけるCD3遺伝子座でのTpG変異体の割合を決定した。表2に示されるように、スパイクしたサンプルとCD3 PCR測定との間に厳密な相関(ピアソンr=0.998)が見られ、比較対照として使用したFOXP3 PCRについて観察された厳密な相関(ピアソンr=0.998)と一致した。スパイキング実験は、精製したCD3CD56NK細胞をTpG変異体として、及び顆粒球をCpG変異体として使用したGNLYアッセイを用いて行った。CD3アッセイと同様、TpG変異体の比率は、スパイキング実験から予測された比率とよく一致していた(ピアソンr=0.98)(表2)。
【0118】
【表2】

【0119】
次に、CD3、FOXP3、GNLY、及びGAPDH中の領域のTpGバージョンに相当する配列を含有するプラスミドを設計した(図3)。この構築物は等モル化学量論(stoichiometry)で全ての標的領域を有するため、定量についての究極的標準とみなされる。このプラスミドを正規化に用いて、GAPDH TpG変異体によって決定された総細胞カウントと比較したCD3、FOXP3及びGNLY TpG変異体の相対量(表2)を再定量した。結果が内部標準及び元の希釈率の細胞による定量と非常に良好に合致することが示された。
【0120】
エピジェネティックqPCRを適用した全血サンプルにおけるTreg、全身性Tリンパ球、及びNK細胞の分析
この方法の適用性を試験するために、本発明者らは、カツマキソマブ治験に参加した卵巣がん患者に由来する全血サンプルを試験し、その結果を、フローサイトメトリー分析から得られたデータと比較した。FACS分析によって決定されたCD3細胞の割合及びCD3 qPCRによって決定されたTpG変異体の割合について、本発明者らは、スピアマンの順位相関及び高い統計的有意性(R=0.80;p=7.25E−5)を示した(表2)。同様に、FACS測定から得られたCD4CD25Cd127細胞の割合とFoxp3遺伝子座に見られるTpG DNAの割合との比較によって、強い統計的に高度に有意な相関(R=0.84、p=2.13E−5)が示された。FACS又はエピジェネティック分析のいずれかによって測定されたFoxp3とCD3細胞との比率は、同様に強く相関した(R=0.7、p=0.00098)。本発明者らはしたがって、フローサイトメトリーにより測定されたCD3CD56及びCD3+CD56(NK及びNKT)細胞と、グラニュライシン遺伝子座に見られるTpG変異体の比率との間のより低いが強固な相関を見出した(R=0.59、p=0.006)。
【0121】
固形腫瘍におけるFoxp3 TSDR、CD3、及びグラニュライシンのqPCR分析
健常組織及び腫瘍内微小環境における組織浸潤Foxp3 Treg、CD3 Tリンパ球、及びグラニュライシンに陽性な細胞傷害性細胞の完全に定量的な評価をもたらすために、新鮮凍結卵巣がんサンプル(n=86)を、独立したドナーに由来する健常卵巣組織及び良性嚢胞(n=15)と比較した。健常対照(0.12%)と比較して、腫瘍におけるFoxp3細胞の統計的に有意な(p=2.34E−11)増大(中央値:1.28%)が観察された。さらに、本発明者らは、腫瘍において健常組織(4.27%、n=15)よりも多量のCD3T細胞(中央値:7.76%、n=84)を観察した。この増大はp=2.56E−7により統計的に有意であった。Foxp3Tregと総Tリンパ球カウントとの間の比率について、本発明者らは、健常組織(n=15)における総T細胞カウントの3.38%のTregから腫瘍組織(n=84)におけるおよそ19.7%までという中央値の変化を観察した(p=8.06E−07)。グラニュライシン発現細胞については重要な変化は観察されなかった。気管支癌(BC)については、本発明者らは、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した(FFPE)患者に適合した健常サンプル及び腫瘍サンプルを比較することが可能であった。本発明者らは、健常組織(平均:2.0%)と比較した腫瘍におけるTregの強い増大(中央値:4.2%)を観察した。この増大は、ペアワイズ(n=52、p=2.76E−2)及び非ペアワイズ(n健常=52、n腫瘍=91、p=9.14E−3)比較の両方について統計的に高度に有意であった。ここで、本発明者らは、正常組織(中央値:29.6%)と比較した腫瘍におけるCD3 Tリンパ球の顕著な減少(中央値:22.3%)を観察した。この変化は、ペアワイズ(n=76、p=3.36E−3)及び非ペアワイズ(n腫瘍=87、n健常=76、p=3.4E−3)分析の両方について統計的に有意であった。Tregと総CD3細胞との比は、健常サンプル(中央値:7.6%)と比較して腫瘍において増大した(中央値:18.3%)。この変化は、ペアワイズ比較(n=48、p=6.35E−11)及び非ペアワイズ比較(n腫瘍=86、n健常=48、p=1.59E−14)において統計的に有意であった。本発明者らはグラニュライシン陽性細胞も試験し、健常組織(中央値:4.8%)と比較した腫瘍におけるこれらの細胞の顕著な減少(中央値:1.9%)を見出した。この相違は、ペアワイズ比較(n腫瘍=89、n正常=46、p=1.59E−14)及び非ペア比較(n=46、p=9.77E−9)の両方において統計的に有意である。最後に、本発明者らは、結腸直腸がん(CRC)サンプル及びそれらの隣接する健常対照組織において同じエピジェネティックパラメータを分析した。本発明者らは、健常組織(中央値:1.78%)と対比した腫瘍におけるTregカウントの統計的に高度に有意な増大(中央値:4.2%)を観察した(ペアワイズ比較:n=49、p=6.29E−4;非ペア比較:n腫瘍=49、n健常=52、p=5.9E−4)。本発明者らは、総Tリンパ球カウントの中央値の統計的に有意な低下も見出したが、これは腫瘍において24.9%及び健常組織において32.3%であった(ペアワイズ比較:n=61、p=2.59E−2;非ペア比較:n腫瘍=61、n健常=69、p=2.75E−2)。総Tリンパ球に対するTregの中央値の増大は高度に有意であった(ペアワイズ比較:n=49、p=4.75E−7;非ペア比較:n腫瘍=52、n健常=49、p=5.1E−7)。健常組織ではTリンパ球におけるTreg数の中央値の値は7.8%であり、CRC組織ではこの比率は21.8%に跳ね上がる。本発明者らは細胞傷害性免疫細胞のマーカーとしてもグラニュライシンを試験し、本発明者らは、健常組織における3.0%と対比して腫瘍におけるGNLY+細胞が2.31%という中央値である、グラニュライシン陽性細胞の傾向的な減少を観察した。しかしながら、この傾向は統計的に有意ではなかった(ペアワイズ比較:n=50、p=8.43E−2;非ペア比較:n腫瘍=50、n健常=58、p=8.04E−2)。
【0122】
TregはCD3陽性でもあるため、本発明者らは、血液並びに健常組織及び腫瘍組織においてFoxp3とCD3細胞との間に相関があるか否かを知ろうとした。十分な健常卵巣組織がこの分析に利用可能でないため、本発明者らは、Foxp3とCD3 TpGとの間に、健常な血液、肺及び結腸直腸組織のそれぞれについて0.47(p=0.000、N=124)、0.68(p=0.000、N=48)、及び0.55(p=0.000、N=49)に等しいスピアマンの順位相関ρを見出している(表3)。同様に、本発明者らは、気管支がん、結腸直腸がん、及び卵巣がんについてρ=0.48(p=0.000、N=86)、0.325(p=0.325、p=0.019)、及び0.76(p=0.000、N=107)という相関を観察している。本発明者らの発見によると、接近可能なグラニュライシン遺伝子座を有する細胞の数は患者の予後と有意に相関しない。本発明者らはしたがって、腫瘍内微小環境における調節T細胞の量は総CD3細胞数に依存すると結論付ける。
【0123】
疾患予後と腫瘍内免疫細胞カウントとの関連付け
結腸直腸がん患者及び卵巣がん患者について、追跡調査データが利用可能であった。したがって、本発明者らは、診断及び手術時に腫瘍内微小環境内で測定された免疫細胞カウントが患者の予後と相関するか否かについて試験した。Gallon et al.によって示されたデータと合致して、本発明者らは、結腸直腸がん患者における低いCD3カウントと比較して高いCD3カウントを有する患者について統計的に有意な生存優位性を観察した。この分析について、本発明者らは、一方が23.9%のCD3細胞という中央値未満のCD3カウントを有する患者を含有し、他方が中央値を超えるCD3カウントを有する患者を含有する2つの群に患者を分けた。95%信頼区間における50ヶ月〜73ヶ月と比較して75ヶ月〜99ヶ月という平均生存時間及び0.58というハザード率が観察された。卵巣がん患者についての生存分析から、より低いCD3カウントを有する群(7.76%未満)と対比して、高いCD3カウントを有する群(7.76%超)内の患者についてのより良好な生存への強いが統計的に有意でない傾向が得られた。本発明者らのデータは、Treg数の増大と生存率の改善との統計的に有意でない関連性を示す。それどころか、本発明者らは、Treg数と総CD3細胞カウントとの間の直接的な線形相関を示す。
【符号の説明】
【0124】
図1A
forwardstrand フォワード鎖
reversestrand リバース鎖
図1B
Granulocytes 顆粒球
Monocytes 単球
NK cells NK細胞
Th cells Th細胞
CytotoxicT-cells 細胞傷害性T細胞
B-Lymphocytes Bリンパ球
Amplicon アンプリコン
図2
CD3 PCRSystem Standard CD3 PCRシステム標準
Genomic CpGsamplified to TpG TpGに対して増幅されたゲノムCpG
Fluorescence 蛍光
Cycle No サイクル数
Genomic CpGsamplified to CpG CpGに対して増幅されたゲノムCpG
GNLY PCRSystem Standard GNLY PCRシステム標準
GAPDH PCRSystem GAPDH PCRシステム
図4
% fullybisulfite converted DNA 完全にバイサルファイト変換されたDNA(%)
Tissue type 組織型
図5
Methylation メチル化
図6
% TpG contentin CD3 locus CD3遺伝子座におけるTpG含量(%)
% CD3+T-cells per total cell count 総細胞カウントに対するCD3+T細胞の%
% TpG contentin TSDR TSDRにおけるTpG含量(%)
% Treg pertotal cell count 総細胞カウントに対するTregの%
% TpG cont.in TSDR/TpG cont. in CD3 locus TSDRにおけるTpG含量/CD3遺伝子座におけるTpG含量(%)
% Treg perCD3+ cell count CD3+細胞カウントに対するTregの%
% TpG contentin GNLY locus GNLY遺伝子座におけるTpG含量(%)
% CD56+ cellsper total cell count 総細胞カウントに対するCD56+細胞の%
図7
% Treg Tregの%
Ovary 卵巣
Lung 肺
Colon 結腸
% CD3+T-cells CD3+T細胞の%
% GNLY+ cells GNLY+細胞の%
% Treg perCD3+ T-cells CD3+T細胞に対するTregの%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物から得られたサンプル中の哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態を同定する方法であって、
a)前記細胞のゲノム内の細胞型及び/又は細胞状態に特異的な領域中の接近可能クロマチンの相対量を分析することと、
b)前記領域中の接近可能クロマチンの前記相対量を、細胞型及び/又は細胞状態に非特異的な前記細胞のゲノム内の領域中の接近可能クロマチンの相対量と比較することと、
c)任意で、細胞型及び/又は細胞状態に特異的な前記領域並びに細胞型及び/又は細胞状態に非特異的な前記細胞のゲノム内の前記領域の相対量を、対照プラスミドを用いて正規化することと、
d)前記サンプル中の前記哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態を前記比較に基づいて推定することと、
を含む、哺乳動物から得られたサンプル中の哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態を同定する方法。
【請求項2】
前記同定が、前記比較に基づく前記特定の細胞の型及び/又は状態の相対定量を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)の前に、既知の特定の細胞型及び/又は細胞状態を有する細胞のゲノム内の接近可能クロマチンの相対量を測定することを含む、特定の細胞型及び/又は細胞状態を決定する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
既知の特定の細胞型及び/又は細胞状態を有する細胞のゲノム内の接近可能クロマチンの相対量に関する情報を含む知識ベースを生成することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
分析がDNAse I消化、ChIP Chip(商標)、クロマチン免疫沈降マイクロアレイ、バイサルファイト変換に基づく若しくはバイサルファイト変換に基づかない定量PCR分析、選択的沈降、及び/又はバイサルファイトによるシトシンの変換を含むアッセイによって接近可能クロマチンの相対量を測定することを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞のゲノム内の細胞型及び/又は細胞状態に特異的な前記領域が、FOXP3、GNLY、CD3、血小板糖タンパク質IX(GP9);低親和性免疫グロブリンεFc受容体(FCER2);タンパク質S100−P(S100カルシウム結合タンパク質P);ホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼ3(HIPK3);膜貫通4 L6ファミリーメンバー19(TM4SF19);CD160抗原前駆体(ナチュラルキラー細胞受容体BY55)(CD160);及びLIMドメイン結合タンパク質2(LDB2)から選択される遺伝子を含む領域から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
細胞型及び/又は細胞状態に非特異的な前記領域が、GAPDH等のハウスキーピング遺伝子を含む領域から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞型がCD19+B細胞、CD3+CD8+細胞傷害性T細胞、CD15+顆粒球、CD14+単球、CD56+ナチュラルキラー細胞、CD4+ヘルパーT細胞等の免疫細胞;腎細胞;骨細胞;神経細胞;血液細胞;肺細胞;結腸細胞;及びヒト胚性幹細胞を除くこれらのいずれかの前駆体から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記同定に基づく疾患の素因又は疾患の診断を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
疾患が免疫疾患又は免疫状態、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、白血病/リンパ腫、肺がん、前立腺がん、子宮がん、乳がん、皮膚がん、内分泌がん、膀胱がん、膵臓がん、他の消化管がん、卵巣がん、子宮頸がん、頭部がん、頸部がん、及び腺腫等のがん、出生異常、精神遅滞、肥満、神経疾患、糖尿病、並びに妊娠性糖尿病からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
哺乳動物から得られたサンプル中の哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態の相対量に対する薬物の効果をモニタリングする方法であって、前記薬物で治療した哺乳動物において請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を行うことと、前記哺乳動物細胞の前記特定の型及び/又は状態の相対量を非治療サンプルのものと比較することとを含む、哺乳動物から得られたサンプル中の哺乳動物細胞の特定の型及び/又は状態の相対量に対する薬物の効果をモニタリングする方法。
【請求項12】
生体サンプルが血液又はその画分、唾液、口腔細胞、涙液、精液、尿、汗、糞便物質、皮膚、及び毛髪からなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞型がCD19+B細胞、CD3+CD8+細胞傷害性T細胞、CD15+顆粒球、CD14+単球、CD56+ナチュラルキラー細胞、CD4+ヘルパーT細胞等の免疫細胞;腎細胞;骨細胞;神経細胞;血液細胞;及びヒト胚性幹細胞を除くこれらのいずれかの前駆体から選択される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記治療が免疫疾患又は免疫状態、がん、出生異常、精神遅滞、肥満、神経疾患、糖尿病、及び妊娠性糖尿病からなる群から選択される疾患又は状態に対するものである、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法を行うための材料を含む診断キット。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【公表番号】特表2013−518574(P2013−518574A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551627(P2012−551627)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051601
【国際公開番号】WO2011/095564
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(511145937)エピオンティス ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】