説明

エピトープへの結合能力を保持する結合部位ドメインの同定のための新規方法

【課題】前もって選択された(preselected)エピトープのための結合親和力(binding affinity)を有するドメインの同定方法を提供する。
【解決手段】組換え体二価又は多価ポリペプチド中に少なくとも1つの更なるドメインのC末端に位置する場合、エピトープへ結合する能力を保持する結合部位ドメインの同定方法、組換え体ベクターを用いてトランスフェクトされた細菌ライブラリの組換え体ベクターのパネルのような成分を含むキット、及び結合部位ドメインと融合蛋白並びにそのようなドメイン、蛋白を含む抗体様分子。更に、上記融合蛋白及びポリペプチドを含む薬学的及び診断的組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前もって選択された(preselected)エピトープのための結合親和力(binding affinity)を有するドメインの同定方法に関する。これらのドメインは、組換え体2価又は多価ポリペプチドにおいて少なくとも1つの更なるドメインのC末端に位置する場合に、エピトープとの結合能力を保持する免疫グロブリンVH及びVLドメインを好ましくは含む。本発明は更に、本発明の方法を実施する際に有用な、組換え体ベクターのパネル又は組換え体ベクターのパネルを用いてトランスフェクトされた細菌ライブラリのような成分を含むキットに関する。その上、本発明は、前記の方法により得られ得るポリペプチド及び薬学的及び診断的組成物におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
組換え体2抗原特異(bifunctional)抗体構築物のような多価レセプターは、特に医療分野において、例えば癌及び自己免疫疾患のための新しい治療のアプローチの発達において、又は細胞シグナル形質導入経路の分析及び調節のための興味深い手段として、重要性が増大している治療的及び化学的役割を果たし、先駆者の研究はこのようなレセプターを用いて行われていた。
【0003】
それ故、腫瘍細胞上の抗原と結合した腫瘍を有するT細胞におけるCD3−活性化抗原の架橋(cross-linking)により、二特異的(bispecific)単一鎖抗体は、腫瘍細胞が細胞−細胞接触の際に効率的に溶解されるように、両細胞を共に運ぶことができる(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (1995) 7021-7025)。比較のアプローチは、他のターゲット細胞(例えばウイルス感染細胞)のために、及び他のエフェクター細胞群(例えば、NK-細胞及び一核性食細胞(mononuclear phagocytes)の補充(recruitment)のために発達した、又は発達している。ターゲッティング機構として抗体フラグメントを運ぶ2抗原特異融合蛋白を使用すると、多数の異なるレセプター及びリガンドが、選択された細胞群上の決められた表面分子と特異的に結合され得る。同じ細胞上の表面分子が、そのような細胞の細胞機能又は活性化若しくは分化状態を調節するために、二特異的抗体により架橋され得ることは、特に興味深い。このタイプのアプローチの可能な適用は、多くの自己免疫疾患において病原の役割を果たす自己攻撃的B-又はT-リンパ球におけるアネルギー(anergy)の誘発であることもある。幅広い科学的及び治療的関連を考慮すると、機能性抗原結合部位を含む組換え体ポリペプチドを生成する効果的かつ再現可能な方法は、特に重要である。即ち、そのような方法は、例えば細菌における、及び哺乳類細胞における発現により、機能的に活性な二特異的抗体構築物をもたらす。前記の組換え体2抗原特異単一鎖蛋白は、それぞれが1つの免疫グロブリン可変重鎖(VH)及び1つの可変軽鎖(VL)抗原結合ドメインから成る、異なるscFv-抗体フラグメントにより通常構築される。或いは、それらはそのような抗体フラグメント及び1つの非免疫グロブリン部を含むこともある。全ての機能性(抗原特異)ドメインは、単一ポリペプチド鎖上に配置され、かつ可撓性グリシン-セリン-又は他の適当なペプチドリンカーにより連結される。この2抗原特異ポリペプチド鎖は、対応するDNA配列を用いて哺乳類の又はより優先性の低い他のホスト細胞をトランスフェクトすることにより機能性(抗原特異)蛋白として精製され得て、これは、例えばニッケル-キレートカラムを使用することにより組換え体蛋白の容易な精製を可能にする、任意の蛋白-タグ(tag)、優先的にはポリ-ヒスチジン-タグを更にコードすることもできる。この単一鎖アプローチによる多価の、かつ好ましくは2抗原特異構築物の生成は、独立に発現した機能性(抗原特異)ドメインのインビトロ(in vitro-)の、又はインビボ(in vivo-)のヘテロジ(heterodi-)またはマルチメリゼーション(multimerization)を使用する、非常に困難でかつしばしば低収率と関連する手法である通常の方法と比べて重要な利点を有する。汚染するホモダイマー(homodimer)の出現は、単一鎖アプローチにより除かれ、それにより生成された全ての組換え体蛋白が100%まで所望の二特異的構築物から成るので、その結果、高純度かつ高収率の蛋白調製が行われる。CHO-細胞において機能的に発現された二特異的単一鎖抗体を用いる例により示されたように、scFv-抗体フラグメントは、2抗原特異単一鎖構築物のN末端又はC末端のいずれかとしてそれらの抗原へ原理上は(in principle)結合することができる(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92(1995) 7021-7025)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、抗体フラグメントのような多価ポリペプチドの多数の機能性(抗原特異)ドメインは、融合蛋白内の更なる三次元蛋白構造のC末端に配置される場合にそれらの結合活性を失う。例えば、同様のVH/VL対が、N末端に、又は全抗体若しくはフリーの一価scFv-フラグメントとして配置される場合にその抗原と結合するにもかかわらず、ハイブリドーマ細胞系により生成された無作為に選ばれた抗体由来の、又は組み合せ (combinatorial)抗体ライブラリからインビトロで選択されたscFv-フラグメントは、組換え体2抗原特異単一鎖蛋白内のC末端位置に配置される場合にそれらの抗原結合活性を失う(図10)。参考例を参照すると、この現象はN末端においてヒトCD80(B7-1)の細胞外部分、続いてC末端において17-1A-抗原と特異的に結合する抗体由来の異なるscFv-フラグメントにより構成される組換え体2抗原特異単一鎖分子により広く特徴付けられる(図1.1)。4種の異なる17-1A-特異的抗体のうちの3種は、ネズミハイブリドーマ細胞系から生成され、及び1種はファージ表示法(phage display method)を用いるヒト組み合せ抗体ライブラリからインビトロで選択された。そのN末端を用いてヒトCD80-フラグメントのC末端と融合され、そしてCHO-細胞において2抗原特異単一鎖分子として発現された場合、1つとしてその抗原結合活性を保持するscFvフラグメントは生成されなかった(実施例1-4)。2種のネズミ抗体フラグメント(M79及びM74)が、フリーの一価scFv-フラグメントの形態である場合と同様に、二特異的単一鎖抗体のN末端部として17-1A抗原へ結合し(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1995) 7021-7025)、そのうちの後者は、ファージライブラリにインビトロで由来するヒト17-1A特異的抗体VD4.5VK8(実施例3)のためにも示されたことは注目に値する。全ての4つの特異性は、全抗体分子の形態で17−1A抗原と結合する。従って、本発明の根底にある技術的課題は、対応する抗原へ効率的に結合することができる抗体結合部位を含む2価又は多価ポリペプチドを同定するための手段及び方法を提供することである。前記技術的課題の解決は、本請求項において特徴付けられた態様を提供することにより達成される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
それ故、本発明は、以下の段階を含む、組換え体2価又は多価ポリペプチドにおいて少なくとも1つの更なるドメインのC末端に位置する場合、所定の(predetermined)エピトープへの結合能力を有する結合部位ドメインの同定方法に関する。
(a) 所定のエピトープへ結合するための融合蛋白の部分として生物学的表示系の表面上に表示された結合部位ドメインのパネルを試験する段階。但し前記融合蛋白は前記結合部位ドメインのN末端に位置する追加のドメイン及び融合蛋白の前記表示系の表面への固定(anchoring)をもたらすアミノ酸配列を含む;
(b) 前記の所定のエピトープと結合する結合部位ドメインを同定する段階。
前もって選択された抗原決定因子(determinant)へ結合することができる結合部位は、前記の前もって選択されたエピトープへ結合することができる免疫グロブリン分子の可変領域と相同的なアミノ酸配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1.1:蛋白レベルでの構築要素を示す様々な2抗原特異CD80-scFv-構築物の設計。VHは、Ig-重鎖の可変領域を、VLはIg-軽鎖の可変領域を示す。本発明において使用される単一鎖-Fv-フラグメントは、実施例1、2、3、4、及び9において得られる。
【図2】図1.2:可能なクローン化部位の数を増加させるために制限部位Xbal及びSallを使用することによりブルースクリプト(Bluescript)KSベクター(ゲンバンク(GenBank)(登録商標)取得番号X52327)の複数のクローン化部位内でクローン化されたCTIと呼ばれるDNA配列。CTI由来制限酵素切断部位が示されている。
【図3】図1.3:DNAレベルでの構築要素及び使用された制限酵素切断部位を示す様々な2抗原特異CD80-scFv-構築物の設計。
【図4】図1.3:DNAレベルでの構築要素及び使用された制限酵素切断部位を示す様々な2抗原特異CD80-scFv-構築物の設計。
【図5】図1.3:DNAレベルでの構築要素及び使用された制限酵素切断部位を示す様々な2抗原特異CD80-scFv-構築物の設計。
【図6】図1.4:短(Gly4Ser11リンカーのコード配列を含む発現プラスミドpEF-DHFR+CTI+CD80-M79scFv(VL/VH)を用いてトランスフェクトされたCHO細胞から得られた細胞培養上清のELISA分析。96ウェルELISAプレートはウェル当たり50μlの可溶性17-1A抗原(50μg/ml)と共にインキュベートされた。その後、その純粋な細胞培養上清希釈物が記載されたように添加された。検出は1:200に希釈されたネズミIgG1アンチHis-タグ抗体及び1:5000に希釈されたペルオキシダーゼ複合ポリクローナルヤギアンチマウスIgG(Fc)抗体(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)により行われた。アンチ-17-1A/アンチ-CD3二特異的単一鎖抗体(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025)は、陽性参照(positive control)として用いられた。陰性参照(negative control)としては、ウェルは燐酸バッファー化生理食塩水(phosphate buffered saline)と共にインキュベートされた。ELISAは、実施例8に記載されたようなABTS-基質溶液により進められた。OD値は、ELISA読み取り機により405nmにおいて測定された。
【図7】図1.5:短(Gly4Ser1)1リンカーのコード配列を含む発現プラスミドpEF-DHFR+CTI+CD80-M79scFv(VL/VH)を用いてトランスフェクトされたCHO-細胞から得られた細胞培養上清のELISA分析。96ウェルELISAプレートはウェル当たり50μlの可溶性17-1A抗原(50μg/ml)と共にインキュベートされた。その後、その純粋な細胞培養上清及び希釈物が記載されたように添加された。検出は、1:1000に希釈されたネズミIgG1-アンチCD80抗体により、次いで1:5000に希釈されたペルオキシダーゼ複合ポリクローナルヤギアンチマウスIgG(Fc)抗体(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)により行われた。アンチ-17-1A/アンチ-CD3二特異的単一鎖抗体(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025)が陽性参照として用いられ、そして図1.4に記載されたように検出された。陰性参照としては、ウェルは燐酸バッファー化生理食塩水と共にインキュベートされた。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS-基質溶液により進められた。OD値は、ELISA読み取り機により405nmにおいて測定された。
【図8】図1.6:記載されたような(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025) Ni-NTA-カラムを用いて細胞培養上清からの精製により得られた短(Gly4Ser1)1リンカーを用いた精製された組換え体CD80-M79scFv(VL/VH)-構築物のELISA分析。96ウェルELISAプレートは記載されたように、Ni-NTA-カラムからの純粋な溶出液及びそれらの希釈物を用いて4℃において一晩被覆された。次いで、結合組換え体蛋白は、1:1000に希釈されたネズミIgG1-アンチCD80抗体により、又は1:200に希釈されたネズミIgG1-アンチHis−タグ抗体(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)により、次いで1:5000にそれぞれ希釈されたペルオキシダーゼ複合ポリクローナルヤギアンチマウスIgG(Fc)抗体(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)により検出された。陰性参照としては、ウェルは3%BSA含有燐酸バッファー化生理食塩水を用いて4℃において一晩被覆された。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS-基質溶液により進められた。OD値は、ELISA読み取り機により405nmにおいて測定された。
【図9】図1.7:短(Gly4Ser1)1リンカーのコード配列を含む発現プラスミドpEF-DHFR+CTI+CD80-M79scFv(VH/VL)を用いてトランスフェクトされたCHO-細胞から得られた細胞培養上清のELISA分析。96ウェルELISAプレートはウェル当たり可溶性17-1A抗原(50μg/ml)と共にインキュベートされた。その後、純粋な細胞培養上清及びその希釈物が、記載されたように添加された。検出は1:1000に希釈されたネズミIgG1-アンチCD80抗体により、次いで1:5000に希釈されたペルオキシダーゼ複合ポリクローナルヤギアンチ-マウスIgG(Fc)抗体(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)により行われた。アンチ-17-1A/アンチ-CD3二特異的単一鎖抗体(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025)は、陽性参照として使用され、そして図1.4に記載されたように検出された。陰性参照として、ウェルは燐酸バッファー化生理食塩水と共にインキュベートされた。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS-基質溶液により処理された。OD値は、ELISA読み取り機により405nmにおいて測定された。
【図10】図1.8:制限酵素BspEI及びBamHIのものと適合する一本鎖張り出し(overhangs)を有するACCGS15BAMと呼ばれる二本鎖オリゴヌクレオチドのDNA配列。このヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸が示されている。
【図11】図1.9:長(Gly4Ser1)3リンカーのコード配列を含む発現プラスミドpEF-DHFR+CTI+CD80-M79scFv(VH/VL)を用いてトランスフェクトされたCHO-細胞から得られた細胞培養上清及びその希釈物のELISA分析。96ウェルELISAプレートは、ウェル当たり50μlの可溶性17-1A抗原(50μg/ml)と共にインキュベートされた。その後、純粋な細胞培養上清及びその希釈物が記載されたように添加された。結合蛋白は、1:200に希釈されたネズミアンチHis-タグ抗体(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)により、次いで1:5000に希釈されたペルオキシダーゼ複合ポリクローナルヤギアンチマウスIgG(Fc)抗体により検出された。アンチ-171A/アンチ-CD3二特異的単一鎖抗体抗体(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025)は、陽性参照として使用された。陰性参照として、ウェルは燐酸バッファー化生理食塩水と共にインキュベートされた。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS-基質溶液により進められた。OD値は、ELISA読み取り機により405nmにおいて測定された。
【図12】図2.1:長(Gly4Ser1)3又は短(Gly4Ser1)1リンカーのコード配列をそれぞれ含む発現プラスミドpEF-DHFR+CTI+CD80-M74scFv(VH/VL)又はpEF-DHFR+CTI+CD80-M74scFv(VL/VH)を用いてトランスフェクトされたCHO-細胞から得られた細胞培養上清のELISA分析。96ウェルELISAプレートはウェル当たり50μlの可溶性17-1A抗原(50μg/ml)と共にインキュベートされた。その後、純粋な細胞培養上清及びその希釈物が記載されたように添加された。検出は、1:1000に希釈されたネズミIgG1アンチHis-タグ抗体(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)により、次いで1:5000に希釈されたペルオキシダーゼ複合ポリクローナルヤギアンチマウスIgG(Fc)抗体により行われた。アンチ-17-1A/アンチCD3二特異的単一鎖抗体(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025)は陽性参照として使用され、そして図1.4に記載されたように検出された。陰性参照として、ウェルは燐酸バッファー化生理食塩水と共にインキュベートされた。ELISAは実施例8に記載されたようにABTS-基質溶液により進められた。OD値はELISA読み取り機により405nmにおいて測定された。
【図13】図2.2:長(Gly4Ser1)3又は短(Gly4Ser1)1リンカーのコード配列をそれぞれ含む発現プラスミドpEF-DHFR+CTI+CD80-M74scFv(VH/VL)又は pEF-DHFR+CTI+CD80-M74scFv(VL/VH)を用いてトランスフェクトされたCHO-細胞から得られた細胞培養上清のELISA分析。96ウェルELISAプレートはウェル当たり50μlの可溶性17-1A抗原(50μg/ml)と共にインキュベートされた。その後、純粋な細胞培養上清及びその希釈物は記載されたように添加された。検出は、1:1000に希釈されたネズミIgG1-アンチCD80により、次いで1:5000に希釈されたペルオキシダーゼ複合ポリクローナルヤギアンチマウスIgG (Fc)抗体(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)により行われた。アンチ-17-1A/アンチ-CD80二特異的単一鎖抗体(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025)は、陽性参照として使用され、そして図1,4に記載されたように検出された。陰性参照として、ウェルは燐酸バッファー化生理食塩水と共にインキュベートされた。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS-基質溶液により進められた。OD値は、ELISA読み取り機により405nmにおいて測定された。
【図14】図3.1:ヒトD4.5.重鎖可変領域(ヒトのアンチ-17-1A-抗体VD4.5VK8のVH)のDNA-及び蛋白配列。番号はヌクレオチド(nt)位置を示し、アミノ酸は一文字のコードで表されている。CDR1は、nt90〜nt105を、CDR2はnt148〜nt198を、CDR3はnt292〜nt351を含む。
【図15】図3.2:ヒトのカッパー(kappa)8軽鎖可変領域(ヒトのアンチ-17-1A-抗体VD4.5VK8のVL)のDNA-及び蛋白配列。番号はヌクレオチド(nt)位置を示す、アミノ酸は一文字のコードで表されている。CDR1は、nt70〜nt102を、CDR2はnt148〜nt168を、CDR3はnt265〜nt294を含む。
【図16】図3.3:ヒトのアンチ17-1A抗体VD4.5VK8のフリーのscFv-フラグメント(VH/VL)のELISA分析。N2-ドメインをコードする配列は、制限酵素SalI及びXhoIを用いてプラスミドpComb3H5BHis-VD4.5VK8scFv(実施例3)から除去され、次いでそのベクターが再ライゲイション(religation)された。その結果得られたプラスミドは、実施例6に記載された手順に従い大腸菌XL1-ブルーにおける可溶性VD4.5VK8-scFv-フラグメントのペリプラズミカルな発現のために使用された。可溶性VD4.5VK8-scFv-フラグメントの17-1A-抗原への結合の分析は、以下のように行われた。96ウェルELISAプレートは可溶性17-1A抗原(50μg/ml)と共にインキュベートされた。その後、純粋なペリプラズミカルな調製物が添加された。検出は、1:250に希釈されたネズミIgG1-アンチ-His-タグ抗体により、次いで1:5000に希釈されたペルオキシダーゼ複合ポリクローナルヤギアンチマウスIgG(Fc)抗体(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)により行われた。アンチ-17-1A/アンチ-CD3二特異的単一鎖抗体(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025)は陽性参照として使用され、図1.4に記載されたように検出された。陰性参照としては、関係のないペリプラズミカルな調製物が使用された。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS-基質溶液により進められた。OD値はELISA読み取り機により405nmにおいて測定された。
【図17】図3.4:NS3フレーム:可能なクローン化部位の数を増加させるために制限部位EcoRI及びSalIを用いることによりベクター ブルースクリプト(Bluescript)-KS-CTI (図1.2)の多クローン化(multicloning)部位においてクローン化されたL-F-NS3フレームと呼ばれるDNA配列。L-F-NS3フレーム由来のクローン化部位が示されている。
【図18】図4:キメラ化(chimerized)アンチ17-1A抗体MACH(実施例4)の軽及び重鎖を用いてトランスフェクトされたCHO-細胞から得られた細胞培養上清のELISA分析。96ウェルELISAプレートは、可能性17-1A抗原(50μg/ml)と共にインキュベートされた。その後、純粋な細胞培養上清及びその希釈物が記載されたように添加された。検出は、ビオチン化アンチヒトIgG抗体により、次いでストレプトアビジンにより行われた。親(parent)ネズミアンチ-17-1A抗体MACHの上清及びその希釈物は、陽性参照として使用され、そしてビオチン化アンチ-マウスIgG抗体によって検出された。陰性参照として、燐酸バッファー化生理食塩水が使用された。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS-基質溶液によって進められた。OD値はELISA読み取り機により405nmにおいて測定された。
【図19】図5.1:重要な制限部位を有するpComb3Hのクローン化部位。以下の略語が使用された。P、lac-プロモーター;VL、可変軽鎖ドメイン;CL、定常軽鎖ドメイン;VH、可変重鎖ドメイン;CH1、定常重鎖ドメイン;L1/2、原核生物リーダー配列(L1=ompA、L2=pelB)。
【図20】図5.2:重要な制限酵素切断部位を示すpComb3H5BHisの複数のクローン化部位のDNA配列並びにグリシン-セリン-リンカーのアミノ酸配列及び繊維状ファージの遺伝子III-生成物のN2-ドメインのアミノ酸配列。 N2-ドメインをコードするDNA配列は、nt19において開始し、そしてnt411において終了する。
【図21】図5.3:重要な制限部位を有するpComb3H5BHisのクローン化部位。以下の略語が使用された。P、lac-プロモーター;VK、可変カッパー軽鎖ドメイン;VH、可変軽鎖ドメイン;ompA、原核生物リーダー配列;N2は、Gly4Ser1-リンカーによってVHへ結合され、VHは(Gly4Ser1)3-リンカーによってVKへ結合される。
【図22】図6.1:pComb3H5BHis-プラスミド及び完全に発現されたM13-ファージのスキーム。先端には、リーダー(L)ompA、VH、VK及び遺伝子IIIの構築物が示されている。代表的な発現されたM13-ファージ粒子(下部)は、そのC末端を用いて遺伝子III生成物と、かつそのN末端を用いてN2-ドメイン内で結合した、VH及びVKから成るあるscFv-フラグメントの表現型をその表面上に示し、単一ポリペプチド鎖として前記蛋白成分をコードする一本鎖DNAとしての対応する遺伝子型を含有する。
【図23】図6.2:本発明の方法によって生成された17-1A-特異的scFv蛋白フラグメントのELISA分析。それらのN末端においてN2-ドメインを含み、かつ1つの単一マウスVカッパー-及び1つの単一V重鎖ドメインから成る可溶性scFv蛋白フラグメントのペリプラズミカルな調製物がそれぞれ可溶性17-1A抗原を用いて被覆されたELISA-プレートへ純粋物として添加された。検出は、ネズミIgG1アンチ-His-タグ抗体により、次いでペルオキシダーゼ複合ポリクローナルヤギアンチマウス-Ig(Fc)抗体により行われた。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS-基質溶液によって進められた。OD値(y軸)は、ELISA読み取り機によって405nmにおいて測定された。クローンは、X軸上に示され、下部の数字は選別の回数を示し、上部の数字はその回の試験されたクローンを示す。クローン0−1〜0−9は、非選択scFvフラグメントの組み合わせを有し、それ故、陰性参照として観察され得て、陽性参照は、アンチ17-1A/アンチ-CD3二特異的単一鎖Fv抗体である(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025)。
【図24】図6.3:マウスscFvフラグメント3-1のDNA-及び蛋白-配列。数字はヌクレオチド(nt)位置を示し、アミノ酸(aa)は一文字のコードで表さている。VH-フラグメントの最初の4つのaaは、プラスミドpComb3H5BHisによってコードされる。H鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt1において開始し、そしてnt360において終了し、(G4S1)3-リンカーが続く。カッパー鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt406において開始し、そしてnt726において終了する。
【図25】図6.4:マウスscFvフラグメント3-5のDNA-及び蛋白-配列。数字はヌクレオチド(nt)位置を示し、アミノ酸(aa)は一文字のコードで表されている。VH-フラグメントの最初の4つのaaは、プラスミドpComb3H5BHisによってコードされる。H鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt1において開始し、nt372において終了し、(G4S1)3-リンカーが続く。カッパー鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt418において開始し、nt753において終了する。
【図26】図6.5:マウスscFvフラグメント3-8のDNA-及び蛋白-配列。数字はヌクレオチド(nt)位置を示し、アミノ酸(aa)は一文字のコードで表されている。VH-フラグメントの最初の4つのaaは、プラスミドpComb3H5BHisによってコードされる。重鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt1において開始し、そしてnt360において終了し、(G4S1)3-リンカーが続く。カッパー鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt406において開始し、nt726において終了する。
【図27】図6.6:マウスscFvフラグメント4-1のDNA-及び蛋白-配列。数字はヌクレオチド(nt)位置を示し、アミノ酸(aa)は一文字のコードで表されている。VH-フラグメントの最初の4つのaaは、プラスミドpComb3H5BHisによってコードされる。重鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt1において開始し、そしてnt360において終了し、(G4S1)3-リンカーが続く。カッパー鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt406において開始し、nt744において終了する。
【図28】図6.7:マウスscFvフラグメント4-4のDNA-及び蛋白-配列。数字はヌクレオチド(nt)位置を示し、アミノ酸(aa)は一文字のコードで表されている。重鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt1において開始し、そしてnt360において終了し、(G4S1)3-リンカーが続く。カッパー鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt406において開始し、nt726において終了する。
【図29】図6.8:マウスscFvフラグメント4-7のDNA-及び蛋白-配列。数字はヌクレオチド(nt)位置を示し、アミノ酸(aa)は一文字のコードで表されている。VH-フラグメントの最初の4つのaaは、プラスミドpComb3H5BHisによってコードされる。重鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt1において開始し、そしてnt372において終了し、(G4S1)3-リンカーが続く。カッパー鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt417において開始し、そしてンnt753において終了する。
【図30】図6.9:マウスscFvフラグメント5-3のDNA-及び蛋白-配列。数字はヌクレオチド(nt)位置を示し、アミノ酸(aa)は一文字のコードで表されている。VH-フラグメントの最初の4つのaaは、プラスミドpComb3H5BHisによってコードされる。重鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt1において開始し、そしてnt348において終了し、(G4S1)3-リンカーが続く。カッパー鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt394において開始し、そしてnt717において終了する。
【図31】図6.10:マウスscFvフラグメント5-10のDNA-及び蛋白-配列。数字はヌクレオチド(nt)位置を示し、アミノ酸(aa)は一文字のコードで表される。VH-フラグメントの最初の4つのaaは、プラスミドpComb3H5BHisによってコードされる。重鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt1において開始し、そしてnt360において終了し、(G4S1)3-リンカーが続く。カッパー鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt406において開始し、そしてnt744において終了する。
【図32】図7:マウスscFvフラグメント5-13のDNA-及び蛋白-配列。数字はヌクレオチド(nt)位置を示し、アミノ酸(aa)は一文字のコードで表される。VH-フラグメントの最初の4つのaaは、プラスミドpComb3H5BHisによってコードされる。重鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt1において開始し、そしてnt360において終了し、(G4S1)3-リンカーが続く。カッパー鎖のV-領域をコードするDNA配列は、nt406において開始し、そしてnt744において終了する。
【図33】図8.1:発現プラスミドpEF-DHFR+CTI+CD80+scFv17-1Aクローン3-1〜5-13を用いてトランスフェクトされたCHO細胞から得られた9種の細胞培養上清(第一選択段階(PS))のELISA分析。96ウェルU底ELISAプレートは、ウェル当たり50μlの可溶性17-1A抗原(50μg/ml)と共にインキュベートされた。培養上清としての抗体構築物は、純粋物として添加され、かつ以下のように希釈された:1:2、1:4、1:8。検出は、1%BSAを含むPBS中で1:1000に希釈されたCD80-特異的モノクローナル抗体によって、次いで1:5000に希釈されたポリクローナルペルオキシダーゼ複合ヤギアンチ−マウスIgG-抗体(Fc-特異的)(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)によって行われた。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS基質溶液を添加することによって最終的に進められた。陰性参照として、これらのプレートは2抗原特異抗体構築物の代わりにPBSと共にインキュベートされた。OD値は、405nmにおいてELISA読み取り機によって測定された。
【図34】図8.2:発現プラスミドpEF-DHFR+CTI+CD80+scFV17-1A クローン3-1〜5-13を用いてトランスフェクトされたCHO細胞から得られた9種の細胞培養上清(1.増幅段階(20nM MTX)(1.Amp))のELISA分析。96ウェルU底プレートは、ウェル当たり50μlの可溶性17-1A抗原(50μg/ml)と共にインキュベートされた。培養上清としての抗体構築物は、純粋物として添加され、かつ以下のように希釈された:1:2、1:4、1:8。検出は、1%BSAを含むPBS中で1:1000に希釈されたCD80-特異的モノクローナル抗体によって、次いで1:5000に希釈されたポリクローナルペルオキシダーゼ複合ヤギアンチ-マウスIgG-抗体(Fc-特異的)(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)によって行われた。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS基質溶液を添加することによって最終的に進められた。陰性参照として、これらのプレートは2抗原特異抗体構築物の代わりにPBSと共にインキュベートされた。OD値は405nmにおいてELISA読み取り機によって測定された。
【図35】図8.3:実施例3及び4に記載されたように生成された17-1A特異的2抗原特異CD80-scFv-構築物からの2種の細胞培養上清(第一選択段階(PS))のELISA分析。96ウェルU底ELISAプレートは、ウェル当たり50μlの可溶性17-1A抗原(50μg/ml)と共にインキュベートされた。培養上清としての抗体構築物は、純粋物として添加され、かつ以下のように希釈された:1:2、1:4、1:8。検出は、1%BSAを含むPBS中で1:1000に希釈されたCD80-特異的モノクローナル抗体によって、次いで1:5000に希釈されたポリクローナルペルオキシダーゼ複合ヤギアンチ-マウスIgG-抗体(Fc-特異的)(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)によって行われた。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS基質を添加することによって最終的に進められた。陰性参照として、これらのプレートは2抗原特異抗体構築物の代わりにPBSと共にインキュベートされた。陽性参照としては実施例7において生成された上清が使用された。OD値は、ELISA-読み取り機を用いて405nmにおいて測定された。
【図36】図8.4:実施例3及び4に記載されたように生成された17-1A特異的2抗原特異CD80-scFv-構築物からの2種の細胞培養上清(1.増幅段階(20nM MTX)(1.Amp))のELISA分析。96ウェルU底ELISAプレートは、ウェル当たり50μlの可溶性17-1A抗原(50(g/ml)と共にインキュベートされた。培養上清としての抗体構築物は、純粋物として添加され、かつ以下のように希釈された:1:2、1:4、1:8。検出は、1%BSAを含むPBS中で1:1000に希釈されたCD80-特異的モノクローナル抗体によって、次いで1:5000に希釈されたポリクローナルペルオキシダーゼ複合ヤギアンチ-マウスIgG-抗体(Fc-特異的)(ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)によって行われた。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS基質溶液を添加することによって最終的に行われた。陰性参照として、これらのプレートは2抗原特異抗体構築物の代わりにPBSと共にインキュベートされた。陽性参照としては、実施例7において生成された上清が使用された。OD値は、ELISA読み取り機を用いて405nmにおいて測定された。
【図37】図9.1:フローサイトメトリーによって検出された17-1Aトランスフェクト(実線)及び非トランスフェクトCHO細胞(破線)における17-1A特異的2抗原特異CD80-scFv-構築物の結合研究。5x105の細胞が、対応する2抗原特異構築物を含む50μlの未希釈細胞培養上清においてインキュベートされた。結合された2抗原特異CD80-scFv-構築物は、50μlのPBS中で1:20に希釈されたモノクローナルアンチ-CD80抗体(イムノテック(Immunotech)、カタログ番号: 1449)によって検出された。インキュベーション条件は、実施例8.5において記載されたものと同様であった。結合されたCD80-抗体は、PBS中で1:100に希釈されたフルオレセイン複合ポリクローナルヤギアンチ-マウスIgG+IgM(H+L)抗体によって最終的に検出された。インキュベーションは、30分間氷上で再度行われた。フルオレセインラベル細胞の固定のために、1%パラホルムアルデヒド含有PBSが使用された。最初の陰性参照として、非トランスフェクトCHOが使用された。2番目の陰性参照は、2抗原特異CD80-scFv-構築物の代わりにPBSと共にインキュベートされた17−1A-トランスフェクト細胞を含んでいた。細胞は、FACSスキャンにおいてフローサイトメトリー(ベクトン・ディケンソン(Becton Dickenson))によって分析された。
【図38】図9.1:フローサイトメトリーによって検出された17-1Aトランスフェクト(実線)及び非トランスフェクトCHO細胞(破線)における17-1A特異的2抗原特異CD80-scFv-構築物の結合研究。5x105の細胞が、対応する2抗原特異構築物を含む50μlの未希釈細胞培養上清においてインキュベートされた。結合された2抗原特異CD80-scFv-構築物は、50μlのPBS中で1:20に希釈されたモノクローナルアンチ-CD80抗体(イムノテック(Immunotech)、カタログ番号: 1449)によって検出された。インキュベーション条件は、実施例8.5において記載されたものと同様であった。結合されたCD80-抗体は、PBS中で1:100に希釈されたフルオレセイン複合ポリクローナルヤギアンチ-マウスIgG+IgM(H+L)抗体によって最終的に検出された。インキュベーションは、30分間氷上で再度行われた。フルオレセインラベル細胞の固定のために、1%パラホルムアルデヒド含有PBSが使用された。最初の陰性参照として、非トランスフェクトCHOが使用された。2番目の陰性参照は、2抗原特異CD80-scFv-構築物の代わりにPBSと共にインキュベートされた17−1A-トランスフェクト細胞を含んでいた。細胞は、FACSスキャンにおいてフローサイトメトリー(ベクトン・ディケンソン(Becton Dickenson))によって分析された。
【図39】図9.2:17−1Aを用いてトランスフェクトした後のCHO細胞のFACS-制御。 トランスメンブラン17−1Aの発現は、20nM〜100nMの間での濃度段階で、DHFR阻害剤MTXの濃度を最終濃度500nMまで増加させることを次に追加することによって引き起こされた段階的遺伝子増幅によって増加された。10μg/mlの濃度における17-1A-特異的抗体M79(Goettlinger, Int. J. Cancer 38 (1986), 47-53)、及び続くPBS中で1:100に希釈されたFITC−ラベルポリクローナルヤギアンチマウスIgG+IgM(H+L)抗体のフローサイトメトリーによって、これらの細胞は17-1Aの膜発現が試験された。陰性参照として、非トランスフェクトCHO細胞が使用されたのに対し、ATCCから得られた17-1A-プラス(positive)ヒト胃ガン細胞系カトー(Kato)が、陽性参照として使用された。
【図40】図10:2抗原特異単一鎖蛋白を構成する原理
【図41】図11:野生型ファージ、通常のファージ表示及び本発明の方法によるファージ表示の間の構造比較。
【図42】図12:本発明の方法によって得られた様々なアンチ17−1A特異性を有する、異なる17-1A-CD54-、アンチ17-1A-CD58-及びアンチ17-1A-CD86-scFv構築物(4−7、5−3、5−10)の細胞培養上清のELISA-分析。一段階の遺伝子増幅(20nM MTX、実施例10参照)が行われた、トランスフェクトされたCHO-細胞の細胞培養上清は、固定化17−1A抗原(被覆条件:実施例8参照)を伴う96-ウェルU底ELISAプレートにおいて、種々の希釈物中でインキュベートされた。固定化17-1A抗原へ結合した、異なる構築物の特異的検出は、アンチ-CD54-(イムノテック(Immunotech)、ハンブルグ、カタログ番号0544)、アンチ-CD58-(イムノテック(Immunotech)、ハンブルグ、カタログ番号0816)、又はアンチ−CD86-(R&Dシステムズ、カタログ番号MB141)抗体(1:1000に希釈)の使用により、次いで1:5000にそれぞれ希釈されたポリクローナルペルオキシダーゼ複合ヤギアンチ-マウスIgG-抗体(Fc-特異的)によって行われた。ELISAは、実施例8に記載されたようにABTS基質溶液を添加することによって最終的に進められた。陰性参照のために、これらのプレートは2抗原特異構築物の代わりにPBSと共にインキュベートされた。OD-値は、ELISA-読み取り機を用いて405nmにおいて測定された。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明によって使用される際の“結合部位ドメイン”という用語は、エピトープと結合することができる三次元構造を含むドメインを示す。
【0008】
ここで使用される際の“2価又は多価ポリペプチド”という用語は、異なる起源由来の少なくとも2つのアミノ酸配列を含むポリペプチドを示し、前記起源の1つは、結合部位ドメインを特徴付ける。
【0009】
本発明によれば、“エピトープへの結合能力”という用語は、天然の(native)抗体又はフリーのscFvフラグメントのような、対応するエピトープに入り込み、そして結合する前記結合部位ドメインの能力を示す。
本発明によって使用される際の“パネル”という用語は、列挙された(recited)ドメインの2つ以上の対を指し示す。好ましくは、前記パネルはcDNAライブラリのようなライブラリに、又は、より好ましくは例えば、VH/VL鎖の組み合せライブラリに由来する。
【0010】
融合蛋白は、前もって選択されたエピトープへ結合することができ、かつ例えば、それが由来する免疫グロブリン分子の結合特異性と少なくとも実質的に同一の特異性を好ましくは有する。そのような結合部位ドメインは、少なくとも106M-1、好ましくは108M-1、そして有利には1010M-1以上までの結合親和力を有する。
融合蛋白中に存在する追加の(additional)ドメインは、ポリペプチドリンカーによって結合部位ドメインへ結合されることもある。その上、前記の追加のドメインは、予定された(predefined)特異性又は機能を有することもある。例えば、文献は、悪性細胞を破壊し、若しくはその位置を特定するため、又は局在化された薬剤又は酵素の効果を誘発させるための体内の特異点に対して薬剤、毒素、及び酵素のような生物活性物質をターゲッティングする概念を示すホストを含む。モノクローナル抗体へその生物活性物質を複合することによりこの効果を達成することが提案されている(例えば、N.Y.オクスフォード大学プレス;及びゴーセ(Ghose)、(1978)J. Natl. Cancer Inst. 61:657-676)。しかし、対応するターゲッティングされた多抗原特異(multifunctional)蛋白を構成することは、キメラ蛋白が、余剰の(extra)配列の存在によりそれらの結合親和力及び/又は特異性を失うという事実及びこの障害を治すには不十分であることが判明した推量(guess work)により妨げられる。
【0011】
本発明の方法は、この問題を解決し、かつそれにより追加のドメイン(類)の結合親和力及び機能(抗原特異性)の両方を本質的に保持するような多抗原特異蛋白を調製し、かつ同定するために使用され得る。
本発明の方法の好ましい態様において、結合部位ドメイン及び前記の追加のドメインは、前記結合部位及び前記の追加のドメインの間に配置されたポリペプチドリンカーにより結合され、前記ポリペプチドリンカーは、複数の親水性ペプチド結合アミノ酸を含み、かつ前記結合部位のN末端及び前記の追加のドメインのC末端に結合する。
周知のように、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体フラグメントであるFvは、非共有結合した1つの重鎖及び1つの軽鎖可変ドメイン(VH及びVL)の二量体から成る。この構造において、各可変ドメインの3つの相補性決定領域(CDR類)が相互作用して、VH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義する。6つのCDRは、共通して抗体へ抗原結合特異性を与える。CDRの側面に位置するフレームワーク(frameworks)(FR類)は、ヒトとマウスとで異なる種の天然の免疫グロブリンにおいて本質的に保存される第三(tertiary)構造を有する。これらのFRは、それらの適当な配向(orientation)にCDRを保持するために働く。これらの定常ドメインは、結合機能は要求されないが、VH-VL相互作用を安定化させる際に助けとなり得る。全結合部位よりも低い親和力にあるにもかかわらず、単一可変ドメイン(又は一つの抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、抗原を認識しそして結合する能力を有する(Painter (1972) Biochem. 11:1327-1337)。
それ故、本発明の方法の特に好ましい態様において、前記結合部位ドメインは、同種の又は異種の免疫グロブリンのいずれかのVH-VL、VH-VH、又はVL-VLドメイン対である。
【0012】
ポリペプチド鎖内のVH及びVLドメインの順序は、本発明に対しては決定的ではなく、ここで得られた上記のドメインの順序は、いかなる機能の損失もなく逆転され得る。しかし、これらのVH及びVLドメインが、抗原結合部位が適切に折りたたまれるように配列されることは重要である。
【0013】
本発明によれば、“同定する”という用語は、その最も広い意味において、適切な結合部位ドメインを含むクローンの同定を指し示し、好ましくは、前記クローンは精製されることが可能で、かつその結合部位ドメイン、例えばVH及びVLドメインの配列が決定され得る。
【0014】
当然、本発明の方法はVH及びVLドメインの単一対の同定に適用できるだけでなく、種々のそのような対の同定及び単離に適用されることもできる。
【0015】
本発明の方法を確立する前には、多価ポリペプチドの、特に2抗原特異単一鎖分子のC末端に位置するscFv-フラグメントの結合活性に恐らく影響を及ぼすことが予想された種々のパラメーターが考えられていた。よって、CD80-及びscFv-フラグメントの間に5-及び15-アミノ酸グリシン-セリン-リンカー並びに代わりのドメイン配列、即ちC末端scFv−フラグメント内のVL-VH及びVH-VLを有する構築物が生成され、かつ抗原結合に対して分析された(実施例1及び2)。
【0016】
しかし、2抗原特異単一鎖分子のC末端でのそれらの位置により、それらの結合活性を失ったscFv-フラグメントの抗原結合は、試験されたいずれの実施例においても、異なるリンカーの長さを用いることによって、及び/又はVL-及びVH-ドメインの配列を変えることによっては再構築出来なかった。
驚くべきことに、ファージ表示技術に基づく新規なインビトロ選択法を用いることにより(実施例11)、2抗原特異単一鎖融合蛋白内のそれらの位置に依存せずに結合するscFv-フラグメントが、実施例の手法により組み合せ抗体ライブラリから単離できることがここで本発明により見出された(実施例5及び6)。
【0017】
それ故、本発明は、2抗原特異単一鎖分子のような多価ポリペプチドの適用可能性を示す。
【0018】
2抗原特異単一鎖構築物により例示された多価ポリペプチドにおけるC末端状態(context)を機能的にシュミレーションするために、VH−VL−scFv−抗体フラグメントのN末端、そのVH−ドメインのそれぞれのものが、三次元構造内で折りたたまれるアミノ酸の広がり(stretch)のC末端へ融合された。これは、繊維状(filamentous)ファージの遺伝子III-生成物のN2-ドメインを使用することにより実験的に達成された(Krebber, FEBS Letters 377 (1995) 227-231)。従って、このN2-ドメインは、2価又は多価単一鎖蛋白内のVH及びVLドメイン対のN末端に配置される好ましく機能するいずれのドメインの代わりの役割をも果たす。“N末端が遮断された”scFv-フラグメントN2-VH-VL、VLのそれぞれのC末端は、融合蛋白のファージの表面への固定をもたらすアミノ酸配列へ融合された。これは、遺伝子III-繊維状ファージ生成物のC末端CT-ドメインのN末端を使用することにより実験的に行われた(Barbas, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88 (1991) 7978-7982)。以下において、実際に行われた実施例に基づいて本発明はより詳細に説明されるであろう。融合蛋白N2-VH-VL-CTをコードするDNAは、ファージミド(phagemid)ベクター(例えばpComb3H)内でクローン化され、かつ繊維状ヘルパーファージによる感染の後にN2-VH-VL-CT-融合蛋白をそれらの表面に運び、かつ対応するDNAの単一鎖複製物を含有するファージ粒子を生成するであろう雄大腸菌株(例えばXL1-ブルー)に形質転換されることが可能である。この表現型と遺伝子型との結合は、それらの抗原結合活性を依然として保持する“N末端で遮断された”scFv-抗原フラグメントであるVH/VL-組み合せの大きなレパートリー(repertories)から、抗原における選別の数回の繰り返しにより、選択し、かつ質を向上することを可能にする。本発明の方法を試験するために、マウスが組換え体可溶性17-1A-抗原を用いて免疫性を与えられた。即ち、検出可能なアンチ-17-1A血清抗体タイター(titer)を有する動物が犠牲にされ、全RNAがネズミの脾臓細胞から調製され、かつランダム六量体プライミング(priming)を用いてcDNAへ逆転写された。この抗体応答のVL-及びVH-レパートリーは、VL-及びVH-サブファミリー特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより増幅され、かつ繊維状ファージの遺伝子III-生成物のN2-及びCT-ドメインをコードするDNA配列を既に含むファージミドベクターpComb3H内でクローン化された。この組み合せ抗体ライブラリは、大腸菌株XL1-ブルーに形質転換され、次いでファージ表示法に従って固定化された17-1A-抗原における選別によりインビトロ選択が行われた(Winter, Annu. Rev. Immunol. 12 (1994) 433-455; Barbas, METHODS, A companion to Methods in Enzymology 2 (1991) 119-124)。3回、4回及び5回の選別の繰り返しの後に、個々のクローンの可溶性N2-VH-VL-単一鎖フラグメントは、大腸菌におけるペリプラズミカルな(periplasmatic)発現の前の遺伝子III-CT-配列の切除により生成され、そして固定化された17-1A-抗原への結合がELISAにより試験された。17-1A-抗原へ結合された“N2遮断”scFv-フラグメントのVL-及びVH-領域は、配列決定され、そして細胞外CD80-フラグメントのコード配列を既に含む哺乳類発現ベクター pEF-DHFR内でサブクローン化され、それにより結果的にN末端位置に配置されたCD80-フラグメントを有する2抗原特異単一鎖蛋白をコードする最終構築物を得た(実施例7)。更に、17-1A-特異的ネズミハイブリドーマ細胞系由来の一方のVH-VL-対及び通常のファージ表示法によりヒト組み合せ抗体ライブラリから選択された他方の17-1A-特異的VH-VL-対(実施例3)もまた、この2抗原特異状態においてクローン化された。これらの2抗原特異単一鎖構築物は、第一の選択のためにヌクレオシドを含まない培養培地を用いてDHFR-欠乏CHO-細胞内へトランスフェクトされ、そしてこの蛋白発現は、20nMの最終濃度でDHFR-阻害メトトレキセートを用いて遺伝子増幅によりその後増された。これらの組換え体2抗原特異蛋白は、培養上清中へ分泌され、一方、異種のクローンからの培養上清は、固定化された組換え体17-1A抗原においてELISAにより(実施例8)、そしてトランスメンブラン形態の17-1A-抗原を用いてトランスフェクトされたCHO細胞においてフローサイトメトリー(flow cytometry)により(実施例9)抗原結合が分析された。本発明の方法に由来する9種の異なる2抗原特異単一鎖構築物の全ては、両結合検定(ELISA及びFACS)において示されたように17-1A-抗原へ結合することが証明されたが(図8.1、8.2及び9.1)、しかし通常2抗原特異単一鎖構築物に由来する両者は、17-1A-抗原へ結合できなかった(図8.3、8.4及び9.1)。実施例10に示されたように、本発明の方法により得られたscFv-抗体フラグメントの特異的抗原結合が、2抗原特異単一鎖蛋白内の特定の更なるN末端ドメイン(CD80の細胞外部分のような)に依存しないことを更に示すことができた。それと共に、これらのデータは、2抗原特異単一鎖蛋白のC末端位においてそれらの抗原結合活性を保持するscFv-フラグメントが、scFv-抗体フラグメントのN末端へ融合した他の機能性(抗原特異)ドメインの効果をシュミレーションするN末端代用ドメインを用いる本発明の方法により選択的に得られ得ることを示す。この典型的なアプローチは、当業者により上記の位置(群)において多価ポリペプチド中に含有されたVH及びVLドメインのその他の対へ転用され得る。
【0019】
本発明の好ましい態様において、前記の生物学的表示系は、それを用いてトランスフェクトされた細菌により生成された繊維状ファージ、バキュロウイルス発現系、リボソームに基づく表示系、バクテリオファージラムダ表示系又は例えばompA蛋白に基づく細菌表面発現系である。
【0020】
リボソーム表示系の例は、例えばHanes, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94 (1997) 4937-4942により説明された。上記に言及されたその他の系の例は、当分野において十分に確立されている(Mottershead, Biochem. Biophys. Res. Commun. 238 (1997) 717-722; Sternberg, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (1995) 1609-1613; Stahl, Trends Biotechnol, 15 (1997) 185-192)。
ファージを用いてトランスフェクトされた細菌に関しては、その細菌は大腸菌であることが好ましい。
【0021】
ここでは本発明を説明するために使用され、かつここで上述された実験的手順については、本発明の更に好ましい態様において、前記の方法は段階(a)の前に、前記融合蛋白をコードする組換え体ベクターを用いて細菌をトランスフェクトする更なる段階(a”)を含む。前記ベクターは好ましくはファージミドベクターである。
【0022】
本発明の更に好ましい態様において、前記の方法は段階(a”)の前に、ベクター内の結合部位ドメイン、例えばVH及びVLドメイン対をコードする核酸分子のパネルをクローン化する更なる段階(a’)を含む。
【0023】
本発明の最も好ましい態様において、前記の核酸分子のパネルは、哺乳類、魚類又は鳥類の免疫適格細胞に由来する。この態様は、VH-及びVL-特異的オリゴヌクレオチドプライマー類又はプライマーセットを用いたRT-PCRにより増幅されかつクローン化され得る哺乳類のB細胞区画の免疫レパートリーを反映する限りにおいて特に好ましい。
【0024】
本発明の追加の好ましい態様において、前記の追加のドメインは少なくとも9つのアミノ酸を含む。
好ましくは、前記の追加のドメインは、ファージ粒子の表面上に表示される際に、ファージ伝染力(infectivity)をもたらすのに十分ではない。
【0025】
本発明の最も好ましい態様において、前記の追加のドメインは、繊維状ファージの遺伝子III生成物のN2-ドメインであり、又はそれに由来する。好ましくは、N2はそのファージの伝染力をもたらすことが出来ない。
【0026】
本発明の好ましい態様において、前記の固定をもたらす前記配列は、繊維状ファージの遺伝子III生成物のC末端CT-ドメインであり、又はそれに由来する。しかし、例えばファージ表示の表面への固定をもたらし得ることが知られている他の適当なドメインもまた、使用され得る。
【0027】
本発明の更に好ましい態様において、前記の2価又は多価ポリペプチドは、2-又は多抗原特異ポリペプチドである。
【0028】
本発明の最も好ましい態様において、前記の少なくとも1つの更なるドメインは、生物活性に適した構造、イオンを隔離すること(sequestering)が可能なアミノ酸配列、及び固体支持体へ選択的に結合することが可能なアミノ酸配列を有するエフェクター蛋白から成る群から選択されるポリペプチドを含む。
好ましくは、前記のエフェクター蛋白は、酵素、毒素、レセプター、結合部位、生合成抗体結合部位、成長因子、細胞識別因子、リンフォカイン(lymphokine)、 サイトカイン(cytokine)、ホルモン、間接的に検出可能な部分(remotely detectable moiety)、又は代謝拮抗物質(anti-metabolite)である。
その上、イオンを隔離することが可能な前記配列は、カルモデュリン(calmodulin)、メタロチオネイン(methallothionein)、それらのフラグメント、又はグルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、及びアルギニンの少なくとも1種の含有量の多いアミノ酸配列から好ましくは選択される。
更に、固体支持体へ選択的に結合することが可能な前記のポリペプチド配列は、プラスに又はマイナスに帯電したアミノ酸配列、システイン含有アミノ酸配列、アビジン(avidin)、ストレプトアビジン(streptavidin)、又はスタフィロコッカス(Staphylococcus)蛋白Aのフラグメントであり得る。
【0029】
上記のエフェクター蛋白及びアミノ酸配列は、それ自身が活性であるか又はそうではなく、かつ例えばある細胞環境に入る際に除去され得る代用形(proform)において存在し得る。
【0030】
本発明の最も好ましい態様において、前記のレセプターはT-細胞活性化のために重要なコスティミュラトリー(costimulatory)表面分子であり、又はエピトープ結合部位若しくはホルモン結合部位を含む。
【0031】
本発明の更に最も好ましい態様において、前記のコスティミュラトリー表面分子はCD80(B7-1)、CD86(B7-2)、CD58(LFA−3)、又はCD54(ICAM-1)である。
【0032】
本発明の更に最も好ましい態様において、前記のエピトープ結合部位は、VH-VL、VH-VH、及びVL-VLドメイン対の中に埋め込まれる。
【0033】
本発明の好ましい態様において、前記のVH及び/又はVLドメインは、可撓性リンカーにより、好ましくは前記ドメイン間に配置されたポリペプチドリンカーにより連結され、ここで前記ポリペプチドリンカーは、前記融合蛋白が水溶液中に置かれる場合に結合するために適当な構造を取るときに、一方の前記ドメインのC末端と他方の前記ドメインのN末端との間の距離をつなぐのに十分な長さの複数の親水性ペプチド結合アミノ酸を含む。
【0034】
本発明の更に好ましい態様において、前記の結合部位ドメインの同定は、以下の段階を含む。
(a) 融合蛋白のファージ表面への固定をもたらす前記アミノ酸配列を前記融合蛋白から除去する段階;
(b) 細菌中の前記融合蛋白の残部をコードする核酸分子のペリプラズミカルな発現段階;及び
(c) 前記結合部位ドメインが前記の所定のエピトープへ結合するか否かを確認する段階。
【0035】
他の態様において、本発明は前記の態様において定義されたような組換え体ベクター及びそのような組換え体ベクターを含み、かつ発現することが可能なホスト細胞に関する。
【0036】
本発明の更に好ましい態様において、そのキットは以下を含む。
(a) 上記の組換え体ベクター又は上記の態様において定義されたような融合蛋白のパネルをコードする組換え体ベクターのパネル;及び/又は
(b) 上記のホスト細胞又は(a)において定義されたようなベクターのパネルを用いてトランスフェクトされた細菌ライブラリ。
【0037】
その上、本発明は上記の態様において特徴付けられたような本発明の方法により得られ得る結合部位ドメイン又は融合蛋白に関する。有利には、この融合蛋白の前記融合蛋白のファージ表面への固定をもたらすアミノ酸配列が、この融合蛋白から除去される。よって、その結果得られた融合蛋白は、結合部位ドメイン及び追加のドメイン、好ましくは上記のようにエフェクター蛋白のみを含有し得る。
【0038】
本発明の好ましい態様において、例えば融合蛋白中に含有された結合部位ドメインは、図6.3〜6.10及び7のいずれか1つに示されたscFvフラグメントの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。各可変ドメインが、4つの相対的に保存されたフレームワーク領域、即ち“FR類”が側面に配置された相補性決定領域、即ち“CDR類”としばしば呼ばれる3つの超可変(hypervariable)領域を含むことは当業者に知られていた。図6.3〜6.10及び7に示された可変領域に含まれるCDRは、カボット(Kabot)の免疫学的関心事の蛋白の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest (U.S. Department of Health and Human Services, third edition, 1983, fourth edition, 1987, fifth edition 1990)に従って決定され得る。
本発明の方法により同定された結合部位ドメイン若しくは融合蛋白又はそこから由来する少なくとも1つのCDRが、所望の特異性及び生物学的機能を有する他のポリペプチド若しくは抗体の構築のために使用され得ることは当業者に容易に認識されるであろう。よって、本発明はまた、本発明の結合部位ドメイン又は融合蛋白を含むポリペプチド又は抗体にも関する。好ましくは、前記ポリペプチド又は抗体は、図6.3〜6.10及び7のいずれか1つに記載されたようなアミノ酸配列を含む。上記の結合部位又はCDRを使用する場合に、抗体が、例えばEP-A1 0 451 216及びEP-A1 0 549 581に記載されたような当分野において既知の方法により生成され得ることは、当業者に容易に認識されるであろう。
【0039】
その上、更なる態様において、本発明は発現の際に上記のポリペプチド及び抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。前記のポリヌクレオチドは、ポリペプチドの適切な転写及び翻訳を保証する当分野において既知の適当な発現調節配列へ融合され得る。
【0040】
その上、これらのポリヌクレオチドは、選択可能なマーカーを更に含有するベクター中に含まれ得る。
【0041】
なお更なる態様において、本発明は上記のポリヌクレオチドを含有する細胞に関する。ポリペプチドの治療的使用が予想される場合には、前記細胞は好ましくは哺乳類細胞である。もちろん、酵母及び細菌細胞もまた、生成されたポリペプチドが診断手段として使用される場合に特に役立ち得る。
【0042】
更なる態様において、本発明はそれ故、この融合蛋白又はポリペプチドの発現のために適当な条件下で本発明の細胞を培養すること及びこの融合蛋白、ポリペプチド又は抗体を細胞培養培地から単離することを含む、本発明による方法によって得られ得る融合蛋白、上記のようなポリペプチド又は抗体の調製方法に関する。
【0043】
その上、本発明は本発明の融合蛋白、ポリペプチド又は抗体及び任意に薬学的に適用可能なキャリアーを含有する薬学的組成物に関する。
【0044】
更なる態様については、本発明は上記のような融合蛋白、ポリペプチド又は抗体及び任意に検出のために適当な手段を含む診断的組成物に関する。
【0045】
本発明は、所定のエピトープに対する親和力及び特異性を有する単一鎖結合部位の組換え体生成を許容する。この技術は、開発されており、かつここで開示される。この開示を考慮して、組換え体DNA技術、蛋白設計及び蛋白化学における専門家は、溶液中に置かれた場合に高い結合定数(通常少なくとも106、好ましくは108M-1)及び優れた特異性を有するそのような部位を調製することが可能である。前述から明らかな様に、本発明は治療的及び診断的アプローチにおけるあらゆる使用のための、結合部位ドメイン及び融合蛋白並びにそのような結合部位及び融合蛋白を含むポリペプチドの大きな群(large family)を提供する。これらの結合部位ドメイン及び融合蛋白が、例えば薬剤ターゲッティング又は画像化適用のために他の部分と更に結合し得ることは、当業者には明らかであろう。そのような結合は、接合部位への融合蛋白若しくはポリペプチドの発現の後に化学的に行われ、又、この結合生成物は、DNAレベルで本発明のポリペプチド中に作られることもある。これらのDNAは、適当なホスト系においてその後発現され、かつ発現が行われた蛋白は、必要であれば回収され、そして再生される。上述のように、この結合部位ドメインは、抗体、好ましくはモノクローナル抗体の可変領域に好ましくは由来する。この点において、ハイブリドーマ技術は、免疫応答を生み出す所望の物質のいずれへも抗体を本質的に分泌する細胞系の生成を可能にする。免疫グロブリンの軽及び重鎖をコードするRNAは、ハイブリドーマの細胞質からその後得られ得る。このmRNAの5’末端部は、本発明の方法において使用されるcDNAの調製のために使用することができる。
【0046】
本発明の方法により得られた融合蛋白をコードするDNAは、細胞中で、好ましくは哺乳類細胞中でその後発現され得る。
【0047】
ホスト細胞によっては、適切な構造を得るために再生技術が要求されることがある。種々の蛋白は、結合能力がその後更に試験され得て、そして適当な親和力を有するものが、上記のタイプのポリペプチド内への取り込みのために選択され得る。必要であれば、結合を最適化しようとする点置換(point substitutions)が、通常のカセット突然変異生成又は以下に開示されるような他の蛋白設計法(protein engineering methodology)を用いてDNA中で行われることがある。
【0048】
本発明のポリペプチドの調製もまた、酵素、毒素、成長因子、細胞識別因子、レセプター、代謝拮抗物質、ホルモン又は種々のサイトカイン若しくはリンフォカインのような、生物活性蛋白のアミノ酸配列(又は対応するDNA若しくはRNA配列)の知識に依存する。このような配列は、文献に報告され、かつコンピューターデータバンク(computerized data banks)を通じて利用することができる。
【0049】
結合部位及び第2蛋白ドメインのDNA配列は、通常の技術を用いて融合され、又は合成オリゴヌクレオチドから作られ、そして通常の技術を同様に用いてその後発現される。
【0050】
目的のアミノ酸配列をコードするDNAを操作し、増幅しそして組換えるための方法は、当分野において一般的に周知であり、それ故、ここでは詳細に説明されていない。目的の抗体をコードする遺伝子の同定及び単離の方法は、十分に理解されており、かつ本出願及び他の文献に記載されている。一般に、これらの方法は遺伝的コードに従って目的のCDR及びFRを含む目的の蛋白を定義するアミノ酸配列をコードする遺伝的材料を選択することを含む。
【0051】
従って、ここで開示されたように蛋白をコードするDNAの構築は、DNAに配列特異的切断を形成して平滑末端又は粘着末端を生成する様々な制限酵素、DNAリガーゼ、平滑末端DNAへの粘着性末端の酵素的付加を可能にする技術、短い又は中間の長さのオリゴヌクレオチドの集合による合成DNAの構成、cDNA合成技術、及び免疫グロブリン又は他の生物活性蛋白遺伝子の単離のための合成プローブの使用を含む、既知の技術を用いて行われ得る。発現を成し遂げる際に用いられる様々なプロモーター配列及び他の規則的DNA配列、並びに様々なタイプのホスト細胞もまた、既知であり利用することができる。通常のトランスフェクション技術及び同様にDNAをクローン化及びサブクローン化するための通常の技術は、本発明の実施において有用であり、かつ当業者に知られている。プラスミド及び動物細胞を包含する細胞及びバクテリオファージのような、様々なタイプのベクターが使用され得る。これらのベクターは、どのクローン群が、ベクターの組換え体DNAを首尾よく取り込むかを同定するために使用され得る検出可能な表現型特性を、首尾よくトランスフェクトされた細胞に与える様々なマーカー遺伝子を利用し得る。
【0052】
これらの及び他の態様は、本発明の記述及び実施例により開示され、かつ理解される。例えば、本発明により用いられ得る方法、使用及び化合物のいずれか1つに関するさらなる文献は、例えば電子的装置を用いて公共図書館から再度得ることが出来る。例えば、 HYPERLINK "http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/medline.html" http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/medline.htmlの下、インターネット上で利用することができる公共のデータベース“メッドライン”が、利用され得る。 HYPERLINK "http://www.ncbi.nlm.nih.gov/" http://www.ncbi.nlm.nih.gov/、 HYPERLINK "http://www.infobiogen.fr/" http://www.infobiogen.fr/、 HYPERLINK "http://www.fmi.ch/biology/research#tools.html" http://www.fmi.ch/biology/research#tools.html、 HYPERLINK "http://www.tigr.org/のような更なるデータベース及びアドレスは" http://www.tigr.org/のような更なるデータベース及びアドレスは、当業者に知られており、そして例えば HYPERLINK "http://www.lycos.com" http://www.lycos.comを用いて得ることもできる。バイオテクノロジーにおける特許情報の概要及び過去に遡った調査のために、かつ現在の認識のために有用な特許情報の関連する情報源の概観は、バークス(Berks)のTIBTECH 12 (1994), 352-364において得られる。
【0053】
以下の実施例は本発明を説明する:
【実施例】
【0054】
実施例1:CD80-M79scFv構築物

1.1 短(Gly4Ser1)1リンカーを有するCD80-M79scFv(VL/VH)構築物

蛋白は、(Gly4Ser1)1リンカーにより連結されたネズミアンチ17-1A抗体M79の単一鎖Fvフラグメント(scFv)とヒト コスティミュラトリー蛋白CD80(B7-1)の細胞外部分からなるように構築された(図1.1)。M79抗体は、Goettlinger(1986)Int.J.Cancer:38、47-53に記載されているように得られた。M79 scFvフラグメントは、Mack. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.. 92 (1995) 7021-7025に記載されているようにクローン化された。完全なプラスミドは、幾つかの段階でクローン化された。第一に、CTIと呼ばれるポリリンカーは、制限酵素切断部位、Xbal及びSall(ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim))を用いて、Bulescript KSベクター(ゲンバンク(GenBank)(登録商標)取得番号X52327)へ挿入された。ポリリンカーCTIの導入は、図1.2に示されているように(Gly4Ser1)1リンカーの6アミノ酸ヒスチジンタグ及び終止コドンをコードする配列に加えて、追加の切断部位を提供する。ベクターBluescript KS + CTIは、EcoRV及びBspEI(ニューイングランド・バイオラボズ(New England Biolabs)により切断されたM79 scFvフラグメントとそれ(T4 DNA、リガーゼ・ベーリンガー・マンハイム(Ligase Boehringer Mannheim))をライゲイションするために、制限酵素EcoRV及びXmal(ベーリンガー・マンハイム及びニューイングランド・バイオラボズ)による切断により調製された。得られたベクターBluescript KS+CTI+M79 scFvは、予め同じ酵素を用いて調製されたCD80 DNAフラグメントを挿入するために、もう一度EcoRI(Boehringer Mannheim)及びBspEIにより切断された。サブクローニングの前に、CD80フラグメントは、CD80の細胞外部分をコードするヌクレオチド配列(Freeman G.Jら、J.Immunol.143、(1989)2714-2722.)の5'及び3'末端に相補的である特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により得られた。これらのプライマーは、EcoRI及びBspEI制限酵素部位((5'CD80プライマー: 5'GCA GAA TTC ACC ATG GGC CAC ACA CGG AGG CAG 3'; 3'CD80プライマー: 5'TGG TCC GGA GTT ATC AGG AAA ATG CTC TTG CTT G 3')も導入した。このPCRに使用されたcDNA鋳型は、標準の手順(Sambrook、 Molecular Cloning; A Laboratory Manual、 2nd Edition、 Cold Spring Harbour Laboratory Press、cold Spring Habour、 New York (1989))によりバーキットリンパ腫細胞系Rajiから調製された全RNAの逆転写により調製された。
【0055】
CD80コスティミュラトリー蛋白は、Igスーパーファミリーに属している。それは、262アミノ酸からなる高度に糖化された蛋白である。更なる詳細な説明は、Freeman G.Jら、J.Immunol.143,(1989) 2714 - 2722として出版されている。
【0056】
最終段階では、全CD80-M79scFv(VL/VH)DNAフラグメント(図1.3.1.)は、EcoRI及びSalI (Boehringer Mannheim)によるベクターBluescript KS+CTI+CD80-M79scFv (VL/VH) の切断により単離され、かつ、続く Mackら Proc. Natl. Sci. U.S.A. 92 (1995) 7021-7025で説明されたジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolatereductase)遺伝子を選択マーカーとして含む真核性発現ベクターpEF-DHFR内に導入された。最終的なプラスミドは、制限酵素NdeI(ベーリンガー・マンハイム)により線状化され、電子穿孔法によりCHO細胞にトランスフェクトされた。電気穿孔法の条件は、バイオラド・ジーンパルサー(BioRad Gene Pulser()を用いた260V/960μFDである。安定な発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537-566に記載されているようにDHFR欠損CHO細胞内で行われた。細胞は、10%の透析分離されたFCS及び2 mMのL-グルタミンを補充されたヌクレオシドを含まないα-MEM培地において選択のために培養された。2抗原特異CD80-M79 scFv (VL/VH)の構築物の製造のために、細胞は、ローラーボトル(Falcon)中で300 mlの培地で7日間培養された。蛋白は、Ni-NTA-カラム(Mackら、 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (1995)7021-7025)を用いて、C末端に接合しているそのHisタグ(図1.1.参照)を介して精製された。結合性を分析するために、異なるELISAアッセイが行われた:
【0057】
1.1.1 アンチ-His-タグ検出を用いた細胞培養上清によるELISA

17-1A-抗原への結合は、終止コドンが続くGA 733-2として知られている17-1A抗原の最初の264アミノ酸をコードするDNA(Szala, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87 (1990) 3542-3546)のCHO細胞中での安定な発現により、説明されたように(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (1995) 7021-7025)得られた可溶性17-1A-抗原を用いて分析された。抗原は、50 μg/mlの濃度のリン酸バッファー化生理食塩水PBSにより、96ウェルU底ELISAプレート(nunc maxisorb)上で固定化された。被覆は、4°Cで12時間50μlで行われ、続いて(PBS) 0.05%トゥイーンにより一度洗浄された。ELISAは、その後PBS/3%ウシ血清アルブミン(BSA)と共に1時間遮断され、もう一度洗浄された。次に、細胞培養物上清は希釈されずに添加され、数回希釈され、2時間インキュベートされた。検出システムとして、1:200で希釈されたネズミIgG1アンチ His-タグ抗体(ディアノバ(dianova)ハンブルグ)とぺルオキシダーゼ複合ポリクローナルヤギアンチネズミ IgG (Fc) (dianova, Hamburg) 抗体は、順番に適用された。ELISAは、実施例8に記載されているようにABTS-基質溶液(2'2アジノ(Azino)-ビス (3エチルベンズチアゾリン(Ethlbenzthiazoline)-6-スルホン酸)、シグマ(SIGMA) A-1888、スタンハイム(Steinheim))の添加により行われた。結果は、OD 405 nmにおいてELISA読み取り機により測定された;結果は、図1.4.に示されている。結合活性ははっきりと測定することはできなかった。陰性参照として、プレートは、抗体構築物の代りにPBSを用いてインキュベートされた。陽性参照としては、前記アンチ-17-1A/アンチ-CD3 2特異性-単一鎖抗体(Mack、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (1995) 7021-7025)が用いられた。
【0058】
1.1.2 アンチ-CD80検出を用いた細胞培養物のELISA

17-1A-抗原の固定化、ブロッキング、及び細胞培養上清のインキュベーションは、上記のように行われた。検出は、1:1000に希釈されたネズミIgG1アンチ-CD80-抗体 (ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)、続いて1:5000に希釈されたぺルオキシダーゼ複合ポリクローナルヤギアンチ-ネズミIgG (Fc)-抗体 (ディアノバ(dianova)、ハンブルグ)を用いて行われた。ELISAは、ABTS基質を用いて行われ、OD値は上記のように測定されたが、この場合も17-1A-結合活性は検出することができなかった。陽性参照としては、アンチ-17-1A/アンチ-CD3 2特異性-単一鎖抗体(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (1995) 7021-7025)が使用され、記載されたアンチ-His-タグ抗体により検出された。結果は、図1.5に示されている。
【0059】
1.1.3 精製された組換え体CD 80-M79scFv-構築物のELISA分析

特異的抗原結合を検出する細胞培養上清のELISAはすべて陰性であったため、組換え体蛋白は上清中に分泌されていないと言う可能性を除外するために、ローラーボトル培養物の上清(300ml)からの蛋白精製により、可溶性CD80-M79scFvが得られた。精製は、記載されているように(Mack、 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (1995) 7021-7025) ニッケル-NTA-カラムを用いて行われた。2抗原特異CD80-M79scFv-構築物の検出は、その17-1A-抗原結合活性について、個々に、それぞれアンチ-マウスIgG(Fc)抗体がそれぞれ続くアンチ-CD80抗体(実施例1.1.2.参照)とアンチHis-タグ抗体(実施例1.1.1.参照)のどちらかを用いて別々の実験において行われた。OD値の測定と同様にELISAの操作は、上記のように行われた。結果は図1.6に示されており、細胞培養上清中にCD80-M79scFv-構築物の存在を確認した。
【0060】
1.2 (Gly4Ser1)1リンカーを有するCD80 - M79 scFv (VH/VL)構築物

M79scFvフラグメント内のVL/VHからVH/VLのIg可変領域の配列を変化させるため、Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (1995) 7021-7025に記載されている方法(実施例2.1も参照)により、オリゴヌクレオチドプライマー5'VHB5RRV:AGG TGT ACA CTC CGA TAT C(A,C)A (A,G)CT GCA G(G,C)A GTC (A;T)GG、 3'VHGS15、 5'VLGS15 、3'VLBspE1 (最後の3つのオリゴヌクレオチドの配列は実施例2.1を参照)を用いた2段階融合PCRが行われた。VH/VL-scFv-フラグメントをコードするPCRフラグメントは、制限酵素EcoRV/BspEIにより切断され、EcoRV/XmaIによる切断により予め調製されたベクターBluescript KS + CTI(実施例1.1.参照)に挿入された。次に、転換されたM79scFv (VH/VL)フラグメントは、制限酵素BspEI/SalIにより除去され、BspEI/SalIを用いてプラスミドpEF-DHFR+CTI + CD80-M79scFv (VL/VH)に導入され、M79scFv- VL/VHフラグメントを置換した(図1.3.2.参照)。トランスフェクション及び細胞培養の手順は、上記のように行われた。抗原結合の分析は、記載された17-1A-ELISA(実施例1.1.2.)を用いて行われた。しかし、代りに配置されたCD80-M79scFv-構築物の17-1A結合活性は、検出することができなかった。結果は図1.7.に示されている。
【0061】
1.3 長(Gly4Ser1)3 リンカーを有するCD80 - M79 scFv (VH/VL)構築物

初めに、M79scFv (VH/VL)フラグメントは、実施例1.2.に記載されたように2段階融合PCRにより得られた。VH/VL-scFv-フラグメントをコードするPCRフラグメントは、制限酵素EcoRV/BspEIにより切断され、EcoRV/XmaIで切断されたBluescript KS +CTIベクターにサブクローン化された(実施例1.1.参照)。更なる段階においては、15アミノ酸からなる長グリシン-セリンリンカー(Gly4Ser1)3が導入された。従って、(Gly4Ser1)3リンカーをコードするために、かつ、BspEI及びBamHIと適合する張り出しを提供するためにデザインされた他方のオリゴヌクレオチドリンカー(ACCGS15BAM)は、Bluescript KS + CTI + M79 scFv (VH/VL)に挿入される必要があった(実施例1.2.参照)。このリンカーのヌクレオチド配列は、図1.8.に示されている。
【0062】
(Gly4Ser3)3リンカーをコードする配列を含むプラスミドBluescript KS + CTI + M79 scFv (VH/VL)は、BspEI及びSalIにより切断され、得られたDNAフラグメント(Gly4Ser1)3+M79scFv (VH/VL)は、CD80をコードするフラグメント(実施例1.1)を含むBspEI/SalIで切断されたベクターpEF-DHFRに挿入され、その結果、M79scFv (VL/VH)フラグメントを短(Gly4Ser1)1リンカーと共に置換した(図1.3.3.参照)。トランスフェクション及び細胞培養の手順については実施例1.1.が参照される。抗原特異的結合は、上記(実施例1.1.1)のように 17-1A ELISAにより分析され、細胞培養上清中の機能性(抗原特異)組換え体蛋白の検出は、アンチHis-タグ抗体、続いてアンチマウスIgG (Fc)抗体を用いて行われた(実施例1.1.1を比較)。アンチ-17-1A/アンチ-CD3二特異的単一鎖抗体(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (1995) 7021-7025)は陽性参照として使用される。ELISAの操作とOD値の測定は上記(実施例1.1.1)のように行われた。 しかし、抗原結合は検出されなかった。結果は図1.9.に示されている。
【0063】
実施例2: (VH/VL) 又は(VL/VH)-ドメイン配列と同様に短(Gly4Ser1)1又は長(Gly4Ser1)3リンカー を有するCD80 - M74 scFv構築物

(Gly4Ser1)リンカーで連結されたアンチ17-1A抗体M74の単一鎖Fvフラグメント(scFv)及びコスティミュラトリー蛋白CD80からなる蛋白が構築された(図1.1)。M74抗体は、Goettlinger (1986) Int. J. Cancer: 38, 47-53.に記載されているように得られた。M74のVL及び VHは、Orlandi (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 3833-3837に記載されているようにハイブリドーマ細胞系に対応する全RNAからクローン化され、配列決定が行われた。M74抗体のVL及び VHを含むプラスミドは、2段階融合PCRのための鋳型としてそれぞれ使用され、その結果、ドメイン配列がVL/VHであるか、又は、その代りの配列VH/VLのどちらかであるM74 scFv-フラグメントを得た。VL/VH配列については、M74 VLのプライマーは、5'VLB5RRV (5'AGG TGT ACA CTC CGA TAT CCA GCT GAC CCA GTC TCC A3')及び3'VLGS15 (5'GGA GCC GCC GCC GCC AGA ACC ACC ACC ACC TTT GAT CTC GAG CTT GGT CCC3')であり、M74 VHについては、5'M74VHGS15 (5'GGC GGC GGC GGC TCC GGT GGT GGT GGT TCT CAG GT(GC) (AC)A(AG) CTG CAG (GC)AG TC(AT) GGA CCT GAG CTG GTG AAG CCT GGG GCT TCA GTG AAG ATT TCC TGC 3')及び3'VHBspEI (5'AAT CCG GAG GAG ACG GTG ACC GTG GTC CCT TGG CCC CAG3`)であった。VH/VL-配列については、M74 VHのプライマーは、5'M74VHEcoRV (5'TCC GAT ATC (AC)A(AG) CTG CAG (GC)AG TC(AT) GGA CCT GAG CTG GTG AAG CCT GGG GCT TCA GTG AAG ATT TCC TGC 3')及び3`VHGS15 (5'GGA GCC GCC GCC GCC AGA ACC ACC ACC ACC TGA GGA GAC GGT GAC CGT GGT CCC TTG GCC CCA G 3')であり、M74 VLについては5'VLGS15 (5'GGC GGC GGC GGC TCC GGT GGT GGT GGT TCT GAC ATT CAG CTG ACC CAG TCT CCA3')及び3'VLBspEI (5'AAT CCG GAT TTG ATC TCG AGC TTG GTC CC3')であった。第一のPCR段階では、対応するVH-及び-VLフラグメントは、以下のPCRプログラムを用いて得られた:変性94℃で5分間、アニーリング37℃で2分間、伸長72℃で1分間、第一サイクル;変性94℃で1分間、アニーリング37℃で2分間、伸長72℃で1分間、6サイクル;変性94℃で1分間、アニーリング55℃で1分間、伸長72℃で45秒間、及び18サイクル;最終伸長 72℃で2分間。VH及びVLの精製されたPCRフラグメントは、その後、M74 scFV VH/VLのための5'M74VHEcoRV及び3'VLBspEIと同様に、以下のM74 scFv VL/VHのプライマー 5'VLB5RRV及び3'VH BspEIを用いる融合PCRの第二段階のために使用された。下記のPCRプログラムが使用された:94℃で5分間、一回;変性94℃で1分間、アニーリング55℃で1分間、伸長72℃で1時間30分間、及び8サイクル;最終伸長72℃で2分間)。次の段階は、フラグメントをEcoRV/BspEIにより切断し、ベクターをEcoRV/XmaIで切断することにより、両方のM74 scFv配列をプラスミドBluescript KS+CTI(実施例1参照)にクローン化するためのものであった。下記の操作法が異なる長さのリンカーを有する構築物を得るために使用された:
【0064】
VH/VL-及びVL/VH-各配列及び短(Gly4Ser1)リンカーを有するCD80-M74scFv-構築物を生成するために、M74 scFvフラグメント(VL/VH)と同様にM74 scFvフラグメント(VH/VL)はBluescript KS+CTIからそれぞれ切り出され、それぞれが、制限酵素BspEI及びSalI(図1.3.4及び1.3.5参照)を用いて、ベクターpEF-DHFR+CTI+ CD80-M79scFv(VL/VH)(実施例1.1参照)に挿入された。CHO細胞へのトランスフェクション及び細胞培養条件には、実施例1.1が参照される。
【0065】
それぞれが長(Gly4Ser1)3リンカーを含むVH/VL-及びVL/VH-各配列を有するCD80-M74 scFv-構築物の生成のために、M74 scFvフラグメントは、上記のようにベクターBluescript KS+CTIから除去され、ベクター及びフラグメントをそれぞれEcoRV及びSalIにより切断し、それによりM79の特異性をM74 (VH/VL) 又は M74 (VL/VH)により置換することにより、長リンカーを含むプラスミドBluescript KS + CTI + M79scFv (VH/VL)(実施例1.3参照)に導入された。トランスフェクションの前の最終段階は、M74 (VH/VL)又はM74 (VL/VH)をpEF-DHFR + CTI + CD80-M79scFv (VH/VL)ベクターにそれぞれ制限酵素BspEI及びSalIを用いて導入することであった(図1.3.6及び1.3.7参照)。その結果、VH/VL-又はVL/VH-ドメイン配列のどちらかを有し、かつ、長(Gly4Ser1)3リンカーをそれぞれ含むCD80-M74 scFv-構築物のCHO細胞での発現のために必要なものすべてを有するプラスミドを得ることができる。CHO細胞へのトランスフェクション及び細胞培養条件には、実施例1.1が参照される。4つの異なる構築物(CD80 -(Gly4Ser1)1 - M74 (VH/VL)、 CD80 -(Gly4Ser1)1 - M74 (VL/VH)、CD80 -(Gly4Ser1)3 - M74 (VH/VL)、 CD80 -(Gly4Ser1)3 - M74 (VL/VH) )は、実施例1.1.1及び1.1.3にそれぞれ記載されているように、ニッケル-NTA-カラムを用いて培養上清から精製され、同様に、細胞培養上清を用いて17-1A-抗原への結合について全て試験された。ELISAは、記載されているように行われ、検出は、それぞれアンチHis-タグ抗体又はアンチCD80抗体、続いてぺルオキシダーゼ複合アンチ-マウス-IgG (Fc)抗体を用いて行われた(実施例1.1.1参照)。4つの上清全てから組換え体蛋白を精製することができるという事実(データは示されていない)を除いては、図2.1及び2.2に示されているように17-1A抗原への結合は検出することができなかった。
【0066】
実施例3: 短(Gly4Ser1)1リンカーを有するCD80 - VD4.5VK8 scFv(VH/VL) 構築物

更なる実施例においては、組合わせ抗体ライブラリからファージ表示法によりインビトロで選択されたヒトアンチ-17-1A抗体(VD4.5VK8)が、実施例1、2及び4並びに図1.1に例示されているように2抗原特異単一鎖構築物のC末端におけるその抗原結合活性を分析するために選ばれた。VD4.5VK8のVH -及びVL-鎖は、公知のヌクレオチド配列(図3.1及び3.2)を有するクローン化されたDNAフラグメントの形態で利用可能であり、以下のプライマーを用いたPCRの鋳型分子として用いられた:VHには: 5'VH1357 5'-AGG TGC AGC TGC TCG AGT CTG G-3及び3'huVHBstEII 5'-CTG AGG AGA CGG TGA CC'-3; VLには:5'VK3 GAG CCG CAC GAG CCC GAG CTC GTG (AT)TG AC(AG) CAG TCT CC-3'及び3'huVkBsiWI/SpeI 5'-GAA GAC ACT AGT TGC AGC CAC CGT ACG TTT (AG)AT-3')。それぞれVH-と VL-鎖(VH-respectively VL-chains)は、実施例5に記載されているpComb3H5Bhisと呼ばれる新たに構築されたベクターに導入された。VD4.5VK8 VHは、XhoI及びBst EIIにより、VD4.5VK8 VLは、SacI及びSpeIによりサブクローン化され、その結果プラスミドpCOMB3H5BHis+VD4.5VK8 VH+VLを得た。pComb3H5BHis-ベクターを用いることにより、融合PCRは、ドメイン配列VH/VLを有するscFv-抗体フラグメントを得るためにもはや必要ではなくなった。
【0067】
VD4.5VK8 scFv-フラグメントの17-1A結合活性を分析するために、N2フラグメント(実施例5参照)は、制限酵素XhoI及びSalIにより除去された。適合ベクター末端は、ライゲイションされた:ライゲイション生成物は、大腸菌Xl 1 Blueに形質転換され、ぺリプラズミカルな蛋白発現はIPTGの添加により誘導された。ペリプラズム(periplasma)調製が行われ、得られたサンプルは、実施例5に記載されたようにELISAに基づく17-1A抗原結合活性分析に直接使用された。ウェルは、可溶性17-1Aにより被覆され、結合scFvフラグメントは、1:200に希釈されたネズミアンチHis-タグ抗体、続いて1:5000に希釈されたアンチ-マウスIgG(Fc)抗体を用いて検出された(実施例1.1.1参照)。ELISAの操作及びOD値の測定は実施例1.1.1に記載されているように行われた。陽性参照としては、本発明の方法により得られたアンチ17-1A抗体クローン3-5が使用された(実施例6参照)。結果は、図3.3に示されており、フリーの一価VD4.5.VK8 scFv-フラグメントの固定された17-1A抗原への顕著な結合を明らかにした。2抗原特異CD80-VD4.5VK8-scFv-構築物の生成における次の段階は、上記ベクタpCOMB3H5BHis+VD4.5VK8 VH+VLからEcoRI/NotI VD4.5VK8フラグメントをサブクローン化するための、Bluescript- 由来NotI-部位が除去され、伸長されたポリリンカー(配列については、図3.4参照)を含む Bluescript KS + CTI+L-F-NS3フレームと呼ばれるプラスミドの酵素EcoRI及びNotIによる切断である。
【0068】
2抗原特異CD80-VD4.5VK8-scFv-構築物の生成の最終段階として、VD4.5VK8- scFv-フラグメントは、制限酵素BspEI及びSalIを用いてベクターBluescript KS+CTI+L+F+NS3フレームから除去され、同じ酵素により切断されたプラスミドpEF-DHFR+CTI+CD80-M79scFv (VL/VH)(実施例1.1及び1.2参照)にサブクローン化され、それによりM79 scFvフラグメントがヒト抗体VD4.5VK8のものにより置換された(図1.3.8参照)。CHO細胞へのトランスフェクション及び細胞培養の手順は、実施例1.1.1に記載されているように行われた。17-1A-抗原結合活性は、実施例8及び9に詳細に記載されているELISA(図8.3及び8.4)及びフローサイトメトリー(図9.1 及び9.2)により分析された;しかし、17-1A抗原への結合はどちらの方法によっても検出することができなかった。
【0069】
実施例4: CD80- MACHscFv抗体構築物

Goettlinger (1986) Int. J. Cancer:38, 47-53.に記載された方法により得られた他のネズミアンチ-17-1A抗体(MACH)は、2抗原特異単一鎖構築物のC末端におけるそのscFv-フラグメントの抗原結合活性に関して分析された。対応する免疫グロブリン可変領域VL及びVHは、Orlandi、(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA: 86, 3833-3837によるRT-PCRにより、ハイブリドーマ細胞系から調製された全RNAからクローン化され、続いてOrlandi (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.: 86, 3833-3837により、ヒトIgG1kappa -Isotypeのキメラ抗体として哺乳類細胞において発現された。組換え体抗体は、トランスフェクトされた細胞系、及びハイブリドーマ細胞系それぞれの培養物上清を用いて17-1A-ELISAにより決定されたようにそのネズミ親抗体を集合させ、17-1A抗原に結合すると証明された。結合した抗体の検出は、アンチ-ヒト-又はアンチ-ネズミ免疫グロブリン抗体それぞれを用いて行われた。ELISAの操作及びOD値の測定は、実施例8に記載されたように行われた。結果は、図4に示されている。
【0070】
Vk及びVhドメインは、pComb3H5BHisにクローン化された(実施例3及び5)。ネズミアンチ-17-1A-scFv-フラグメントは、制限酵素BspEI及びNotIを用いて、プラスミドpEF-DHFR+CTI+ CD80-VD4.5VK8(実施例3参照)に導入され、それにより17-1A特異的VD4.5VK8scFvフラグメント(図1.3.9)を置換した。得られた発現プラスミドは、その後、実施例1.1に記載されているようにCHO細胞へトランスフェクトされた。17-1A結合活性は、実施例8及び9に詳細に記載されているELISA(図8.3及び8.4)及びフローサイトメトリー(図9.1及び9.2)により分析された;しかし、17-1A抗原への結合は、いずれの方法によっても検出することができなかった。
【0071】
実施例5: プラスミドベクターpComb3H5BHisの構築

本発明の方法による抗体フラグメントのインビトロ選択のために適したファージ表示ベクターのための出発点は、pComb3の誘導体であるベクターpComb3H(Barbas、 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88 (1991) 7978-7982)が使用され(クローン化部位については図5.1参照)、下記を提供する:
・陽性形質転換及び組換え体ファージ粒子による感染のためのカルベニシリン耐性選択を可能にするbla遺伝子
・細菌性ぺリプラズムへの機能性(抗原特異)抗体フラグメントの蛋白分泌のための原核生物リーダー配列
・高い蛋白生成度のための誘導可能なlacプロモーター
・繊維状ファージ(ファージ表示)表面上の抗体フラグメントの固定のために必要なM13ファージ遺伝子III生成物の被覆ドメインCT
【0072】
大腸菌のぺリプラズム中に発現される蛋白、特に小さいscFvフラグメントの検出及び単離のためには、Hisタグが非常に好ましい。従って、第一段階は、遺伝子III配列の下流の6つのヒスチジン残基をコードするDNA配列をサブクローン化することである。
pComb3Hベクターは、NheIにより切断され、適当な末端を持つ二本鎖オリゴヌクレオチドはライゲイションにより挿入された。6つのHis残基をコードする二本鎖オリゴマーは2つの5'-リン酸化プライマーHis6s及びHis6asのアニーリング(94°Cで10分間; 65 °Cで30分間; 52 °C 30分間及び30°C 10分間)を介して生成された。
【0073】
His6s: 5'-CTAGCCATCACCATCACCATCACA-3'
His6as: 5'-CTAGTGTGATGGTGATGGTGATGG-3'
【0074】
プライマー末端は、ベクターによる融合の後に、3'NheI制限酵素部位が破壊され、一方5'NheI切断部位は完全なままで残るようにデザインされた。
挿入部は、配列決定され、クローニングの性高及びpComb3HHisと呼ばれる新規ベクターが確認された。
【0075】
軽鎖可変ドメイン(VK)のC末端を有する遺伝子III生成物と連結しているscFvフラグメントを生成する目的のために、全く新しい多クローン化部位(mcs)がサブクローン化される必要があった。
【0076】
pComb3HHisの元のmcsの第一部分は、SacI-XhoI消化により除去された。得られたベクターフラグメントは、2つの5'-リン酸化プライマー(5BFors;5BForas)のアニーリングにより生成された二本鎖(ds)DNAフラグメントとライゲイションされ、5' SacI及び3'XhoIと適合する張り出しを設け、かつ、元の5'SacI切断部位を破壊する。2つのプライマーのアニーリングは、94℃で10分間;65℃で30分間;52℃で30分間及び30℃で10分間行われた。
【0077】
プライマー配列:
5BFors:
5'-GCAGCTGGTCGACAAATCCGGAGGTGGTGGATCCGAGGTGCAGCTGC-3'
5BForas:
5'-TCGAGCAGCTGCACCTCGGATCCACCACCTCCGGATTTGTCGACCAGCTGCAGCT-3'
【0078】
挿入物は配列決定され、クローニングの成功及びpComb3HForHisと呼ばれる新規ベクターが確認された。元の重鎖クローン化スタッファー(stuffer)は、その後、XhoI及びSpeIにより除去され、得られたベクターフラグメントは、他方の二本鎖DNAフラグメントによりライゲイションされ、5BFors及び5BForasのアニーリングのために使用されたものと同様の条件下で、2つの5'リン酸化プライマー(5BBacks; 5BBackas)のアニーリングにより生成された。
【0079】
プライマー配列:
5BBacks:
5'-TCGAGCCCGGTCACCGTCTCCTCAGGTGGTGGTGGTTCTGGCGGCGGCGGCTCCGGTGGTGGTGGTTCTGAGCTCGGGA-3'
5BBackas:
5'-CTAGTCCCGAGCTCAGAACCACCACCACCGGAGCCGCCGCCGCCAGAACCACCACCACCTGAGGAGACGGTGACCGGGC-3'
【0080】
全挿入物が、再度配列決定され、クローニングの成功及びpComb3HmcsHisと呼ばれる新規ベクター(図5.2)が確認された。
【0081】
このベクターは、scFv抗体フラグメントのクローニングのために必要な全てのクローン化部位、大腸菌のぺリプラズム内の組換え体蛋白の輸送のための原核生物リーダー配列、繊維状ファージの遺伝子III生成物のCTドメインへのscFVフラグメントの連結、及びCTをコードする配列の除去の後のヒスチジンタグへの連結を提供する。
【0082】
最終及び最も重要な段階は、位置感受性抗体フラグメントの抗原結合活性を低減し、かつ、感受性でないscFv-フラグメントに対して中性であり、そのため、そのC末端は続いてクローン化されたscFv-抗体フラグメントのN末端に融合する蛋白を導入することである。
バクテリオファージfdの遺伝子III生成物のアミノ酸87から217に対応するM13遺伝子IIIドメインN2(Beck、 Nucl. Acid. Res. 5 (1978), 4495-4503)は、scFv-フラグメントのN末端へ融合するべき適切な蛋白として選択された。完全な遺伝子III生成物と異なり、N2-ドメインはファージ伝染力をもたらさなかった。
【0083】
約400bpのN2-フラグメントは、プライマー5' N2 SalI及び3'N2 BspEIを用いて大腸菌XL1blueに感染された VCSM13-ファージ(ストラタジーン(Stratagene)から入手可能)からPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により(94°C、4分間.; (94°C、 0.5分間; 52°C、 1分間; 72°C、 0.5分間) × 40サイクル; 72°C、 10分間; 30°C、 1秒間)増幅された。
【0084】
プライマー配列:
5' N2 SalI : 5'-GGTGTCGACACTAAACCTCCTGAGTACGG-3'
3'N2 BspEI : 5'-GCCTCCGGAAGCATTGACAGGAGGTTGAGG-3'
【0085】
このフラグメントは、その後、制限酵素部位、SalI及びBspEIを用いてpComb3HmcsHisベクターへサブクローン化された。正確なサブクローニングは、DNA配列決定法により確認された。得られたベクターは、pComb3H5BHisと呼ばれた。
その多クローン化部位の配列は、図5.2に示されている。
図5.3は、クローン化されたscFv- 抗体-フラグメントを有するpComb3H5BHisのプラスミドマップを示している。
特に記載されていなければ、Sambrook, Molecular Cloning, 'A Laboratory Manual', 2nd Edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, NY (1989)に記載されている手順 に従う。
【0086】
実施例6: 組み合せ抗体ライブラリ及びファージ表示の構築

免疫化のために、100 μl PBS中の25 μgの可溶性17-1A抗原は、100 μlの不完全フロイントアジュバント(Freunds Adjuvance)(IFA)と混合され、1匹のマウスに皮下注射された。2及び5週間の後、注射は、同じ容量(100 μl)のIFAにそれぞれ混合された同量の抗原を用いて繰り返された。初めの注射から4週間後、成功した免疫化は、1:5、1:50、及び1:500に希釈されたマウス血清、続いてぺルオキシダーゼ複合アンチ-マウスIg-抗体を用いて、17-1A ELISA(実施例8)により分析された。陰性及び交差反応参照と比較して、強いシグナルが全ての濃度において得られた。
【0087】
3回目の注射後3日間、ネズミ脾臓細胞は、Chomczynski, Analytical biochemistry 162 (1987) 156-159による全RNAの調製のために収集された。
ネズミ免疫グロブリン(Ig)軽鎖カッパー可変領域(VK)及びIg重鎖可変領域(VH)のDNAフラグメントのライブラリは、VK-及びVH特異的プライマーを用いて、ネズミ脾臓RNAにおけるPT-PCRにより構築された。cDNAは、標準プロトコル(Sambrook、 Cold Spring Harbour Laboratory Press 1989, second edition)により合成された。
【0088】
プライマーセット(表1)は、重鎖V-フラグメントの5'- XhoI及び3'-BstEII認識部位、並びに、VKの5'-SacI及び 3'- SpeI認識部位を生じるように選択された。
VH DNA-フラグメントのPCR増幅のために、8つの異なる5'-VH-族特異的プライマーは、それぞれ1つの3'-VHプライマーと組み合わされた;VK鎖フラグメントのPCR増幅のために、7つの異なる5'-VK族特異的プライマーは、それぞれ1つの3'-VKプライマーと組み合わされた。VH-及びVK-DNA-フラグメント (5'から3')の増幅のためのプライマーセットは、表1に示されている。
【0089】
下記のPCRプログラムは、増幅のために使用された。変性94℃で20秒間;プライマーアニーリング52℃で50秒間、及びプライマー伸長72℃で60秒間を40サイクル、続いて10分間最終伸長を72℃で行う。
【0090】
450 ngのカッパー軽鎖フラグメント(SacI-SpeIにより消化)は、ファージミドpComb3H5BHis (SacI-SpeIにより消化; 大きいフラグメント)とライゲイションされた。得られた組合わせ抗体ライブラリは、その後、300 μlの電子適格大腸菌XL1 Blue細胞へ電子穿孔法(2.5 kV, 0.2 cmギャップキュベット(gap cuvette), 25 μFD, 200 Ohm, バイオラド・ジーンパルサー(Biorad gene-pulser))により形質転換され、ライブラリの大きさが6×108の独立したクローンを得た。表現型発現の1時間後、陽性形質転換体は、100 mlの液体スーパー培地(SB)培養物中に終夜置かれたComb3H5BHisベクターによりコードされるカルベニシリン耐性のために選択された。
細胞は、その後、遠心分離により回収され、プラスミド調製は市販のプラスミド調製キット(キアゲン(Qiagen))を用いて行われた。
【0091】
2800 ngのVK-ライブラリ(XhoI-BstEIIにより消化; 大きいフラグメント)を含むこのプラスミドDNAは、900 ngの重鎖V-フラグメント(XhoI-BstEIIにより消化)とライゲイションされ、電子適格大腸菌XL1Blue細胞の2つの300μlアリコート中へ電子穿孔法(2.5 kV, 0.2 cmギャップキュベット, 25 μ FD, 200 Ohm)により再度形質転換され、全VH-VK scFv(単一鎖可変フラグメント)ライブラリサイズが4×108の独立したクローンを得た。
1時間の表現型発現の後、陽性形質転換は、カルベニシリン耐性によって選択された。
この適合化の後、これらのクローンは、ヘルパーファージVCSM13感染性分量の1×1012粒子により感染され、その結果ネズミscFvフラグメントをコードし、かつファージ被覆蛋白IIIへの翻訳性融合(ファージ表示は図6.2参照)としてファージ表面上のN2ドメインに融合した対応するscFv蛋白を表示する一本鎖pComb3H5BHis-DNAをそれぞれ含む単一鎖繊維状ファージが生成され、かつ分泌された。
【0092】
クローン化されたscFv-レパートリーを担うこのファージライブラリは、PEG8000/NaCl沈殿及び遠心分離により培養上清から回収され、TBS/1%BSA中に再溶解され、96ウェルELISAプレート上に固定化された組換え体可溶性17-1Aと共にインキュベートされた。可溶性17-1Aは、記載されているように(Mack、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (1995) 7021-7025)調製された。ターゲット抗原に特異的に結合しなかったN2-融合scFvフラグメントを発現するファージ粒子は、TBS/トゥイーンを用いた10回の洗浄段階により除去された。結合したものは、HCl-グリシン(pH 2.2)を用いて溶出され、2 Mトリス (pH 12)により中和した後、溶出物は、新規の感染していない大腸菌XL1 Blue培養物の感染のために使用された。ネズミscFvフラグメントをコードするpCombファージミド複製物により形質導入することができた細胞は、カルベニシリン耐性について再度選択され、続いて、2回目の抗体表示及びインビトロ選択を始めるためにVCMS13ヘルパーファージにより感染された。
【0093】
ファージ生成及び続く抗原結合scFv表示ファージの選択を5回行った後、大腸菌培養物からのプラスミドDNAは、第1回選別の前の選択されていないレパートリーと同様に第3、4、及び5回選別に対応して単離された。
【0094】
N2-ドメインをN末端に有する可溶性scFv抗体フラグメントの生成のためには、遺伝子III生成物のCT-ドメインをコードするDNAフラグメントは、プラスミドから除去され(SpeI/NheI)、その結果、ファージ表面へのscFvフラグメントの翻訳性融合固定が破壊される。再ライゲイションの後、このプラスミドDNAの集合は、100 μlの熱ショック適格大腸菌XL1 Blue細胞中へトランスフェクトされ、カルベニシリン LB寒天上で平板培養された。1つのコロニーは、10 ml LB-カルベニシリン培養物/20 mM MgCl2において培養され、scFv発現は、最終濃度1 mMになるようにイソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)を添加することにより6時間後に誘導された。
可溶性抗体フラグメントのぺリプラズミカルな発現と同様に、このインビトロでの選択手順は、Burton,μ、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991)、 10134-10137に記載されているように行われた。
【0095】
これらの細胞は、遠心分離により20時間後に回収され、4回の−70℃での冷凍及び37℃での解凍を通して、細菌の外膜は温度ショックにより破壊され、その結果、N2-scFv融合蛋白を含む可溶性ぺリプラズマティック蛋白は、溶液中に放出された。遠心分離による完全細胞及び細胞破片除去の後、上清は、17-1A-結合N2-scFv-融合蛋白についてELISAにより試験された。
固定化された可溶性17−1A抗原に結合したN2-scFv-フラグメントの検出は、アンチ-His-タグ抗体(1 μg/ml PBS)を用いて行われ、ホースラディッシュ ぺルオキシダーゼ複合ポリクローナルアンチマウス抗体(1 μg/ml PBS)により検出された。信号は、実施例8に記載されているようにABTS基質溶液の添加により発生し、波長405 nmで検出された。
抗原選択の前のクローンとの比較において、3、4、及び5回の選別後の多くのクローンは、図6.2に示される17-1A結合活性を示した。
【0096】
幾つかの陽性クローンのVH-及び VK-領域のDNA配列(3-1; 3-5; 3-8; 4-1; 4-4; 4-7; 5-3; 5-10及び 5-13)が決定されたが、いずれのクローンも同一のVH及びVK DNA-配列の組合わせを有していなかった(図6.3-6.10及び7)。
特に記載されていない場合は、Sambrook、 Molecular Cloning、 'A Laboratory Manual'、 2nd Edition、 Cold Spring Harbour Laboratory Press、 Cold Spring Harbour NY (1989)に記載されている手順に従う。
【0097】
実施例7: 本発明の方法により生成されたscFv-抗体フラグメントを用いる2 抗原特異CD80-アンチ-17-1A単一鎖構築物のクローニング

下記の9つの17-1A特異的scFv構築物は、実施例6に記載された手順により得られた。

p-Comb3H-5B-His中の 17-1A 3-1
p-Comb3H-5B-His中の 17-1A 3-5
p-Comb3H-5B-His中の 17-1A 3-8
p-Comb3H-5B-His中の 17-1A 4-1
p-Comb3H-5B-His中の 17-1A 4-4
p-Comb3H-5B-His中の 17-1A 4-7
p-Comb3H-5B-His中の 17-1A 5-3
p-Comb3H-5B-His中の 17-1A 5-10
p-Comb3H-5B-His中の 17-1A 5-13

は、CHO細胞内の安定な発現のためにベクターpEF-DHFRへサブクローン化された。この段階において、N2-ドメインは、ヒトCD80(= B7-1)の2つの細胞外ドメインにより置換された。
【0098】
この目的のために、実施例3に記載されているベクターpEF-DHFR + CTI + CD80 + scFv VD4.5VK8は、標準手順により制限酵素BspEI及びNotIを用いてpComb3H5Bhisクローン3-1から5-13に由来するフラグメントと同様に切断された(Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Habour, NY (1989))。
【0099】
ベクター及びフラグメントの両方は、1%アガロースゲル上で単離され、特異的バンドは、市販のゲル溶出キット(キアゲン)を用いて溶出された。ライゲイションの後、DNAは、標準熱ショック法(Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Habour, NY (1989))により大腸菌株XL-1 blueへトランスフェクトされた。
【0100】
陽性クローンは、下記のプライマーを用いたPCRに基づくコロニースクリーニングにより検出された:
5' B7-1 5'- GCA GAA TTC ACC ATG GGC CAC ACA CGG AGG CAG-3'
3' mu VK 5'-TGG TGC ACT AGT CGT ACG TTT GAT CTC AAG CTT GGT CCC-3'
【0101】
それぞれの構築物の1つのクローンは、50 μg/mlアンピシリンの存在下、200 ml LB培養物へ培養された。プラスミドDNAは、市販のMega Prepキット(キアゲン)を用いて精製され、制限酵素Nde Iにより線状化された。最終的にこれらの線状化プラスミドDNAは、説明されたように(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (1995), 7021-7025)、260 V及び960 μFDでの電子穿孔法によりジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠損CHO細胞ヘトランスフェクトされた。
【0102】
一次選択は、説明されたように(Kaufmann、 Methods Enzymol. 185 (1990)、 537-566)、10%透析されたFCSにより補充されたヌクレオチドを含まないアルファMEM培地において行われた。
これら構築物の発現は、説明されたように(Kaufmann, Methods Enzymol. 185 (1990), 537-566)、最終濃度が20 nMになるようなDHFR阻害剤メトトレキセート(MTX)の添加により誘導された遺伝子増幅により増加された。
【0103】
実施例8: 本発明の方法により生成された2抗原特異CD80-アンチ-17-1A-scF v構築物のELISA分析

一次選択及び第一増幅段階から誘導されたこれらのトランスフェクトされた細胞系の培養物上清は、ELISAにより試験された。従って、組換え体可溶性17-1A(Mack、 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (1995)、 7021-7025)はリン酸バッファー化生理食塩水(PBS) (Nunc maxisorb) (50 μg/ml 50 μl/ウェル)中において、96ウェルU底ELISAプレートに被覆された。被覆は終夜4℃で行われた、ブロッキングはPBS中の3%ウシ血清アルブミン(BSA)を用いて1時間室温で行われた。一次選択(PS)(図8.1及び8.2)及び第一増幅段階(1. Amp.)(図8.3及び8.4)による培養物上清としての抗体構築物は、それぞれ添加され、一時間室温で1% BSAを含むPBSによる異なる希釈においてインキュベートされた。
【0104】
結合した2抗原特異抗体構築物は、1:1000に1%BSA含有PBSにより希釈されたCD80特異的モノクローナル抗体(Immunotech., Cat. No. 1449)により検出された。PBS 0.05% トゥイーン20による3回の洗浄の後、ポリクローナルペルオキシダーゼ複合ヤギアンチ-マウスIgG-抗体(Fc-特異的)は、添加され、室温で一時間インキュベートされた。0.05%トゥイーン20含有PBSによる4回の洗浄の後、ELISAは、下記の基質溶液の添加により最終的に行われた:22 mg ABTS (2,2アジノ-ビス (3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸) ジアンモニウム塩)は、2.3 mgのぺルボレートテトラヒドレートナトリウムを含む10 mlの0.1 Mクエン酸緩衝液(pH 5.1)中に溶解された。陰性参照として、プレートは2抗原特異抗体構築物を含まないPBSを用いてインキュベートされた。染色された沈殿物は、ELISA読み取り機を用いて405 nmで測定された。
図8.1及び8.2に示されているように、全てのクローンは、様々な結合強度で17-1A抗原に結合していることが証明された。
【0105】
実施例9: 本発明の方法により生成された2抗原特異CD80-アンチ-17-1A-scF v-構築物のフローサイトメトリー分析

9つの17-1A 2抗原特異CD80-scFv-構築物(実施例7)のうちの1つをそれぞれ含む第一遺伝子増幅段階から得られた培養物上清は、フローサイトメトリーにより17-1AによりトランスフェクトされたCHO細胞において試験された。これらのトランスフェクトされた細胞系は、標準手順(Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Habour, NY (1989))による真核性発現ベクターpEF-DHFR内への GA733-2(Szala, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87 (1990), 3542-3546)として知られている17-1A抗原の完全なアミノ酸配列をコードするDNAフラグメントのサブクローニングにより生成され;得られたプラスミドの制限酵素Nde Iを用いた線状化及び続くDHFR欠損CHO細胞への安定なトランスフェクションは、実施例7に記載されているように行われた。トランスメンブラン17-1Aの発現は、濃度段階20 nMから100 nMの間で、最終濃度500 nMになるようにDHFR阻害剤メトトレキセート (MTX)の増加する濃度の継続添加(Kaufmann、 Methods Enzymol. 185 (1990)、 537-566)により誘導される段階的な遺伝子増幅により増された。
【0106】
これらの細胞は、濃度10μg/mlの17-1A特異的モノクローナル抗体M79(Goettlinger、 Int. J. Cancer 38 (1986)、 47-53)、続いてPBSにより1:1000に希釈されたポリクローナル ヤギアンチマウスIgG + IgM (H+L)抗体を用いたフローサイトメトリーによる17-1Aの膜発現について試験された。陰性参照として、トランスフェクトされていないCHO細胞が使用され、ATCCから得られた17-1A陽性ヒト胃癌細胞系Katoは陽性参照として使用された。結果は、図9.2に示されている。
【0107】
17-1A陽性細胞において本発明の方法により生成された2抗原特異CD80-scFv構築物の結合は、下記のように分析された:
この目的のために、粘着性非トランスフェクト、及び17-1AトランスフェクトCHO細胞は、0.05%のトリプシンを含むPBSを用いてそれぞれ分離された。5×105の細胞は、希釈されていない対応する2抗原特異構築物(図9.1)を含む50 μlの培養物上清中、氷上で30分間インキュベートされた。結合した2抗原特異CD80-scFv構築物は、50 μlのPBSにより1:20に希釈されたモノクローナルアンチ-CD80抗体(Immunotech. Cat. No: 1449)により検出された。インキュベート条件は、上記と同様である。結合したCD80-抗体は、PBSで1:100に希釈されたフルオレセイン複合ポリクローナル ヤギアンチマウスIgG+ IgM (H+L)抗体により最終的に検出された。インキュベイションは、再度30分間氷上で行われた。フルオレセインラベル細胞の固定のために、1%パラホルムアルデヒド含有PBSが使用された。
【0108】
第一陰性参照として非トランスフェクトCHO細胞が使用された。第二陰性参照は、2抗原特異CD80-scFv構築物の代わりにPBSと共にインキュベートされた17-1A細胞を含んでいた。モノクローナル抗体M79による染色(Goettlinger、 Int. J. Cancer 38 (1986), 4753)は、陽性参照として使用された。
【0109】
図9.1に記載されているように、9つの2抗原特異CD80-scFv構築物全ては、細胞表面の17-1A抗原へ結合しており、これにより実施例8のELISAの結果が立証された。
【0110】
実施例10: 本発明の方法により生成されたscFv-抗体構築物を含む2抗原特異CD54-、CD58-及び CD86-アンチ-17-1A単一鎖構築物 の構築及び結合分析

本発明の方法により得られたscFv-抗体への特異的17-1A抗原の結合が、特に更なる2抗原特異単一鎖構築物内のN末端ドメインに依存していないことを確認するために、実施例7-9に説明される組換え体単一鎖蛋白のN末端領域を形成する細胞外部分は、それぞれCD54、CD58及びCD86に置換された。異なる2抗原特異単一鎖構築物の構築は以下に説明されている。
【0111】
CD54単一鎖構築物

ICAM-1(細胞内吸着分子-1)として知られているCD54は、Igスーパーファミリーに属している。それは、多くのリンパ球、例えば、樹状細胞において発現される高度に糖化された蛋白である。より詳細な説明は、Simmons D.らのNature 331 (1987) 624-626により出版されている。cDNA鋳型は、TPA刺激HL-60細胞から調製された全RNAの逆転写により得られた。CD54の細胞外領域を増幅するために、5'及び3'の特異的プライマーが使用された。これらのプライマーは、更に、制限酵素切断部位EcoR1及びBspE1(5' ICAM: CTC GAA TTC ACT ATG GCT CCC AGC AGC CCC CG及び3'ICAM: GAT TCC GGA CTC ATA CCG GGG GGA GAG CAC )もまた導入した。
【0112】
CD54-PCRフラグメントは、制限酵素切断部位EcoR1及びBspE1を用いたベクターBluescript KS+CTI+M79scFv (VL/VH) (実施例1参照)へクローン化され、ベクターBluescript KS+CTI+CD54+M79scFv(VL/VH)を結果として得た。CD54-M79scFv (VL/VH)フラグメントは、ベクターBluescript KS+CTI+CD54+M79scFv(VL/VH)のEcoRI及びSalIの切断により単離され、続いて真核性発現ベクター(実施例1参照)へ導入された。得られたプラスミドpEFDHFR CD54-M79scFv (VL/VH)は、その後、切り取られたCD54-配列を含む対応するDNAフラグメントをベクターpEFDHFR + CTI + CD80 +scFvアンチ 17-1A 4-7、pEFDHFR + CTI + CD80 +scFvアンチ17-1A 5-3及びpEHDFR + CTI + CD80 +scFvアンチ17-1A 5-10(実施例7参照)へそれぞれサブクローン化するために、制限酵素NdeI及びBspEIにより切断され、それによってCD54によりCD80が置換された。最終プラスミドは、制限酵素NdeIにより線状化され、電子穿孔法(実施例1参照)によりCHO細胞へトランスフェクトされた。トランスフェクトされたCHO細胞(pEF-DHFR-CTI-CD54- アンチ17-1A 4-7、 pEF-DHFR-CTI-CD54- アンチ17-1A 5-3及びpEF-DHFR-CTI-CD54-アンチ 17-1A 5-10)は、10%の透析されたFCS及び2 mM L-グルタミンにより補充されたヌクレオシドを含まないα-MEM培地で選択のために培養された。これら構築物の発現は、続いて、説明されているように(Kaufman, Methods Enzymol. 185 (1990), 537-566)、最終濃度が20 nMになるようにDHFR-阻害剤メトトレキセート(MIX)の添加により誘導された遺伝子増幅により増加された。
【0113】
CD54単一鎖構築物の17-1A抗原への結合は、説明されているように(Mackら、 Proc.Natl.Acad.Sci. 92 (1995)7021-7025)CHO細胞での安定な発現により得られた組換え体17-1A抗原を用いて分析された;対応するELISAは、特異的検出が1:1000に希釈されたアンチ-ヒトCD54抗体(Immunotech Hamburg, Cat.no 0544)を用いて行われることを除いては、細胞培養物上清を用いて実施例8に記載されているように行われた。染色された沈殿物は、ELISA読み取り機を用いて405 nmで測定された。図12に示されている結果は、構築されたアンチ17-1A-CD54 scFv構築物のそれぞれの17-1A抗原への結合が検出できたことを明確に証明している。
【0114】
CD58単一鎖構築物

LFA-3(リンパ球機能結合抗原(Lymphocyte Function-Associated Antigen))としても知られているCD58は、Ig-スーパーファミリーに属している蛋白であり、CD2のカウンターレセプターである。より詳細な説明は、Wallner B.P. らのJ.Exp.Med 166 (1987) 923-932として出版されている。cDNA鋳型は、U937細胞から調製された全RNAの逆転写により得られた。CD58の細胞外領域を増幅し、かつ、制限酵素切断部位Xba1及びBspE1を導入するために、特異的5'及び3'プライマー(5`LFA-3 AA TCT AGA ACC ATG GTT GCT GGG AGC GAC G and 3'LFA-3 AAG TCC GGA TCT GTG TCT TGA ATG ACC GCT GC)が使用された。更なるクローニング及び発現手順は、CD58-DNA-フラグメント内の内在EcoRI部位のため、EcoRIの代りにXbaIが使用されたこと、及び、重複するdam部位のため、CD58フラグメントの3'末端におけるBspEIのブロッキングを防ぐために、dam-メチラーゼ欠損大腸菌株を使用したこと除いては、上記CD54について記載されているのと同様である。最終的に得られたトランスフェクトされたCHO細胞(pEF-DHFR-CTI-CD58- アンチ17-1A 4-7、pEF-DHFR-CTI-CD58- アンチ17-1A 5-3及び pEF-DHFR-CTI-CD58- アンチ17-1A 5-10)は、10%の透析されたFCS及び2 mMのL-グルタミンにより補充されたヌクレオシドを含まないα-MEN培地において選択のために培養された。これら構築物の発現は、続いて、説明されているように(Kaufman、 Methods Enzymol. 185 (1990), 537-566)、最終濃度が20 nMになるようにDHFR-阻害剤メトトレキセート(MIX)の添加により誘導された遺伝子増幅により増加された。
【0115】
CD58単一鎖構築物の17-1A抗原への結合は、特異的検出が1:1000に希釈されたアンチ-ヒトCD58抗体(Immunotech Hamburg, Cat.no 0544)を用いて行われることを除いては、上記のように分析された。図12に示されている結果は、構築されたアンチ17-1A-CD58 scFv構築物のそれぞれの17-1A抗原への結合が検出できたことを明確に証明している。
【0116】
CD86単一鎖構築物

B7-2としても知られているCD86コスティミュラトリー蛋白は、Igスーパーファミリーに属している。それは、306アミノ酸からなる高度に糖化された蛋白である。より詳細な説明は、 Freeman G.J.らのScience 262 (1993) 909-911において出版されている。cDNA鋳型は、バーキットリンパ腫細胞系Rajiから調製された全RNAの逆転写により得られた。CD86の細胞外領域の増幅のために、特異的5'及び3'プライマー(5'B7-2: 5'AAG TCT AGA AAA TGG ATC CCC AGT GCA CTA TG 3'、3'B7-2: 5'AAT TCC GGA TGG GGG AGG CTG AGG GTC CTC AAG C '3)が使用された。これらのプライマーは、CD86 PCRフラグメントをベクターBluescript KS-CTI-M79scFv (VL/VH)へクローン化するために(実施例1参照)使用されるXba1及びBspE1切断部位をも導入する。更なるクローニング及び発現手順は、CD86-DNAフラグメント内に内在するEcoRI-部位のため、EcoRIの代りにXbaIが使用されることを除いては、D54構築物について上記と同様である。最終的に得られたトランスフェクトされたCHO細胞(pEF-DHFR-CTI-CD86- アンチ17-1A 4-7、 pEF-DHFR-CTI-CD86- アンチ17-1A 5-3及びpEF-DHFR-CTI-CD86- アンチ17-1A 5-10)は、10% の透析されたFCS及び2 mMのL-グルタミンにより補充されたヌクレオシドを含まないα-MEN培地において選択のために培養された。これらの構築物の発現は、続いて、記載されているように(Kaufman、 Methods Enzymol. 185 (1990)、 537-566)、最終濃度が20 nMになるようなDHFR-阻害剤メトトレキセート(MTX)の添加により誘導された遺伝子増幅により増加された。
【0117】
17-1A抗原へのCD86-単一鎖構築物の結合は、特異的検出が、1:1000に希釈されたアンチ-ヒトCD86抗体(R&Dシステムズ、カタログ番号 MB141)を用いて行われることを除いては、上記のように分析された。図12に示されている結果は、構築されたアンチ17-1A-CD86 scFv構築物のそれぞれの17-1A抗原への結合が検出できたことを明確に証明している。
【0118】
[表1]VH-及びVK-DNA-フラグメント(5'−3')の適用のためのプライマーセット
ネズミV重鎖:

5'プライマー
MVH1 5'-(GC)AGGTGCAGCTCGAGGAGTCAGGACCT-3'
MVH2 5'-GAGGTCCAGCTCGAGCAGTCTGGACCT-3'
MVH3 5'-CAGGTCCAACTCGAGCAGCCTGGGGCT-3'
MVH4 5'-GAGGTTCAGCTCGAGCAGTCTGGGGCA-3'
MVH5 5'-GA(AG)GTGAAGCTCGAGGAGTCTGGAGGA-3'
MVH6 5'-GAGGTGAAGCTTCTCGAGTCTGGAGGT-3'
MVH7 5'-GAAGTGAAGCTCGAGGAGTCTGGGGGA-3'
MVH8 5'-GAGGTTCAGCTCGAGCAGTCTGGAGCT-3'

3'プライマー
MUVHBstEII 5'-TGAGGAGACGGTGACCGTGGTCCCTTGGCCCCAG-3'

ネズミVカッパー鎖:

5'プライマー
MUVK1 5'-CCAGTTCCGAGCTCGTTGTGACTCAGGAATCT-3'
MUVK2 5'-CCAGTTCCGAGCTCGTGTTGACGCAGCCGCCC-3'
MUVK3 5'-CCAGTTCCGAGCTCGTGCTCACCCAGTCTCCA-3'
MUVK4 5'-CCAGTTCCGAGCTCCAGATGACCCAGTCTCCA-3'
MUVK5 5'-CCAGATGTGAGCTCGTGATGACCCAGACTCCA-3'
MUVK6 5'-CCAGATGTGAGCTCGTCATGACCCAGTCTCCA-3'
MUVK7 5'-CCAGTTCCGAGCTCGTGATGACACAGTCTCCA-3'

3'プライマー
MUVKHindIII/BsiWI 5'-TGGTGCACTAGTCGTACGTTTGATCTCAAGCTTGGTCCC-3'

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合部位ドメインが、図6.3〜6.10及び7のいずれか1つに示されたscFvフラグメントの相補性決定領域(CDR)を少なくとも1つ含む結合部位ドメイン又は融合蛋白。
【請求項2】
請求項1の結合部位ドメイン又は融合蛋白を少なくとも1つ含有するポリペプチド又は抗体。
【請求項3】
図6.3〜6.10及び7のいずれか1つにおいて記載されたようなアミノ酸配列を有する請求項2のポリペプチド又は抗体。
【請求項4】
請求項2又は3のポリペプチド又は抗体を発現の際にコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項4のポリヌクレオチドを用いてトランスフェクトされた細胞。
【請求項6】
ポリペプチドの発現のために適当な条件下で請求項5の細胞を培養すること、及び細胞培養培地から前記ポリペプチドを単離することを含む請求項2又は3のポリペプチド又は抗体の調製方法。
【請求項7】
請求項2又は3のポリペプチド又は抗体及び任意に薬学的に適用可能なキャリアーを含む薬学的組成物。
【請求項8】
請求項2又は3のポリペプチド又は抗体及び任意に検出のために適当な手段を含む診断的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2009−148280(P2009−148280A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34882(P2009−34882)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【分割の表示】特願2000−521184(P2000−521184)の分割
【原出願日】平成10年11月16日(1998.11.16)
【出願人】(502343861)マイクロメット アーゲー (6)
【Fターム(参考)】