説明

エプロンシートによるキャップフィルムの幅変更装置

【課題】キャップフィルム製造において、製品幅を簡便に種々に変更させることを可能にし、樹脂や製品の歩留を向上させ、作業効率を向上させる方法を提供する。
【解決手段】真空成形によってプラスチックフィルム4に多数の窪み(キャップ)を形成させるキャップフィルム形成装置において、成形ロール1の外部において保持されており、その成形ロールの端部で吸引されている真空吸引孔群2を、成形ロールの外部より気密的に覆うエプロンシート11を有することを特徴とするキャップフィルムの幅変更装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップフィルム製造における製品幅変更手段に関し、特に、成形ロールの端部にある真空吸引孔群の一部を、成形ロールの外部より気密用エプロンシートで覆うことにより、キャップフィルム製造における幅変更を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムに真空成形によって多数の窪みを形成させたキャップフィルムを製造し、キャップの底面に平坦なバックフィルムを接合させて、多数の密閉された空気室(気泡突起)を形成させたプラスチック気泡シート(以下、気泡シートと略す場合がある。)は、緩衝材等に広く使用されている(特公平3−74616号)。このように、キャップフィルムはプラスチック気泡シートの根幹をなすものであるが、キャップフィルム単体としても、簡易な緩衝材等に使用される。このキャップフィルムの製造においては、用途に応じて種々の製品幅の製品を製造することが求められている。フィルム押出成形では、運転を停止することなく製品幅を変更できる種々のダイスが開発されている。したがって、キャップフィルムやプラスチック気泡シート成形においても、運転停止時間をできるだけ短く、または多少のラインスピードを低下させても停止することなく製品幅を変更することを可能にすることによって、作業効率を向上させ、樹脂の歩留を良くすることが求められていた。
【0003】
キャップフィルムは、通常その底面にバックフィルムをラミネートして使用されることが多いが、その際、キャップフィルムとバックフィルムとが強固に接合されるためには、成形ロール上でシートに気泡突起が形成された直後にバックフィルムがラミネートされることが望ましい。したがって、キャップフィルムの幅変更手段においても、キャップフィルムとバックフィルが密着することで、両者の接合強度が維持されることが必要である。その密着手段として、成形ロール上でニップロールが使用されるが、本発明のエプロンシートを使用すると、エプロンシートの端末がニップロールに巻き込まれないため、そのニップロールにおいても幅調整が必要となる。
【0004】
本発明においては、エプロンシートを使用する場合、さらに進んでニップロールそのものを使用しない方策も提案した。Tダイ製膜において、製膜されたフィルムの透明性をアップする目的で、静電気を利用して、溶融したフィルムをチルロールに密着させる方式が行われている(特開2004−255720)。しかしこの方式はフィルムとチルロールを密着させてフィルムの透明性を高めることを目的としているのに対し、本発明では、キャップフィルムとバックフィルムとの2枚のフィルムの接着性を高めることとを目的としており、目的・効果が全く異なる。ましてや、プラスチック気泡シートの製造における、幅調整ニップロールを使用することなく、幅調整を可能にすることとは、用途においても全く異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3−74616号公報(第1−2頁、第1図)。
【特許文献2】特開2004−255720号公報(第1−2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点を解決するためのものであって、キャップフィルム製造において、簡便な装置で、ラインの停止時間を極めて短く、または多少のライン速度の低下はあっても、ラインを停止することなく製品幅を種々に変更させることを可能にし、樹脂や製品の歩留を向上させ、作業効率を向上させることにある。また、キャップフィルムとバックフィルの接合強度が維持されるような幅変更手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の目的を達成するためになされたものであって、本発明は、多数の真空吸引孔が表面に存在し、回転可能に支持されている成形ロールと、この成形ロール内部に真空吸引孔に対応して成形ロールの軸方向に配設されている空気の通路である複数のアキシャル孔と、成形ロールの端部に接して設けられ、成形ロールの一部の範囲におけるアキシャル孔を真空源に導き、アキシャル孔内を負圧にするように構成されている固定の吸引ボックスを有することにより、真空成形によってプラスチックフィルムに多数の窪み(キャップ)を形成させるキャップフィルム形成装置において、成形ロールの外部において固定されており、成形ロールの端部で吸引されている真空吸引孔群を、成形ロールの外部より覆うエプロンシートを有することを特徴とする、キャップフィルムの幅変更装置に関する。また本発明は、前記エプロンシートが、前記成形ロールの幅方向には移動可能である、前記キャップフィルムの幅変更装置に関する。また本発明は、前記キャップフィルムの前記キャップの底面に平坦なバックフィルムが接合されて多数の密閉された空気室(気泡突起)が形成されたプラスチック気泡シートの製造において、前記成形ロールの前記エプロンシートが覆われていない前記真空吸引孔群の領域を走行するキャップフィルムのみをニップする幅調整ニップロールを有することを特徴とする、キャップフィルムの幅変更装置に関する。また本発明は、前記幅調整ニップロールが、前記キャップフィルムの種々の幅に対応した複数のロールが一つの回転軸を中心に取り付けられたものの1個である、前記キャップフィルムの幅変更装置に関する。また本発明は、前記幅調整ニップロールが、前記成形ロールのロール幅の外部に幅調整ニップロールの軸方向に移動可能な複数の小幅ロール面体を有する、前記キャップフィルムの幅変更装置に関する。また本発明は、前記キャップフィルムの前記キャップの底面に平坦なバックフィルムが接合されて多数の密閉された空気室(気泡突起)が形成されたプラスチック気泡シートの製造において、キャップフィルムと該バックフィルムの接合点の上方に、導電性を有する放電材と、この放電材と前記成形ロールに直流電圧を印加する手段と、を有するキャップフィルムの幅変更装置に関する。また本発明は、前記放電材が多数の放電針を有する、キャップフィルムの幅変更装置に関する。さらに本発明は、前記エプロンが導電性を有する材質からなる、キャップフィルムの幅変更装置に関する。
【0008】
本発明は、キャップフィルム製造における製品幅変更手段に関する。プラスチックフィルムを真空成形することによって多数の窪みを形成させたキャップフィルムは、そのキャップの底面に平坦なバックフィルムを接合させて、多数の密閉された空気室(気泡突起)を形成させたプラスチック気泡シート製造における根幹となる資材である。プラスチック気泡シートは、パッキング材や緩衝材等に広く使用されている。また、キャップフィルム単体でもパッキング材や軽度の緩衝性を求められている用途に使用される。キャップフィルムの気泡突起は、回転可能に支持されている成形ロールの表面にある多数の真空吸引孔からフィルムを負圧吸引することにより形成される。
【0009】
本発明におけるキャップフィルムは、真空成形によってプラスチックフィルムに多数の窪みを形成させたものである。多数のとは、1平方メータ当たり数十個、通常数百個以上の気泡突起を有する。このキャップフィルムの厚みは、数マイクロメータから250マイクロメータの範囲である、通常はフィルムと呼ばれる範囲ばかりでなく、250マイクロメータ以上で、通常はシートとよばれる数ミリメータの厚みに属するものも使用される。これらのフィルムの厚みは、押出機の押出能力に限界があるため、フィルムの厚みが厚い場合は、生産ラインのライン速度を遅くし(2〜3m/分)、フィルムの薄い場合は、100m/分を越える速度で運転される。
【0010】
成形ロール表面には、多数の真空吸引孔が設けられており、ロール軸方向(横方向)に配列されている。この成形ロール内部に、この真空吸引孔の列に対応して設けられた空気の通路である複数のアキシャル孔が成形ロールの軸方向に配設されている。そして各真空吸引孔は、このアキシャル孔を通じて真空源に導かれている。この真空吸引孔の列は、必ずしも規則的に配列している必要はないが、それぞれの真空吸引孔が、対応するアキシャル孔に導かれておればよい。また、隣接する真空吸引孔の列は、かならずしも一定の配列になることは必要とされないが、結果として、成形ロール上の真空吸引孔の配列が互いに千鳥配列に配置されることが、真空吸引孔の数を大きく取ることが出来るので望ましい。また、真空吸引孔の複数の列が、一つのアキシャル孔に導かれていてもよい。本発明におけるアキシャル孔は、成形ロールの端部において接して設けられている固定の吸引ボックスにより、成形ロールの外に設けられている真空源に導かれ、このアキシャル孔内を負圧にすることができるように構成されている。
【0011】
本発明における吸引ボックスは、回転している成形ロールに気密に接しているが、成形ロールの外部にあって固定されており、回転はしない。吸引ボックスは、回転している成形ロールが有する複数のアキシャル孔の内の一部を真空源からの負圧により吸引し、それによってアキシャル孔が負圧にされる。一部としたのは、全てのアキシャル孔を負圧にしたのでは、フィルムの真空成形に寄与していないアキシャル孔まで吸引してしまい、効率が悪いからである。成形ロールは高速で回転しているので、吸引ボックスは複数列のアキシャル孔にまたがるように、ある程度の幅に渡って設けられていることが望ましい、固定している吸引ボックスと回転している成形ロールとの接触部は、気体の漏れが少ないよう、フッ素系樹脂や繊維集積体などで摺動部が構成されていることが好ましい。本発明における吸引ボックスは、成形ロールの側面(ロール鏡板面、以下、単にロール側面という場合がある)側に設置する場合と、成形ロール表面(曲面からなる部分、以下ロール表面という場合がある)側に設置する場合がある。
【0012】
本発明におけるプラスチックフィルムの気泡突起は、突起の平面形状が円形の場合のみでなく、楕円形、三角、四角、ハート形、星形、クローバ形などの種々の形態をとることができ、それによって製品の意匠性を高めることができる。このような場合、真空吸引孔は、それらの楕円やハート形など種々の形態にしておくことで、これらの形態の気泡突起が形成される。
【0013】
本発明は、成形ロールの外部で保持されているエプロンシートを有することを特徴とする。エプロンとは、前掛けとも呼ばれる衣類の前に垂らす布を言うが、本発明におけるエプロンシートは、成形ロールに沿って上から垂らされているシートを言う。このエプロンシートは、成形ロールの外部で保持されているので、回転している成形ロールとは共に移動することはない。また、このエプロンシートは、成形ロールの端部にある真空吸引孔群のロールの円周の一部を、成形ロールの外部より覆う。このエプロンシートで覆われている成形ロールにおける端部の真空吸引孔は、キャップシートの幅変更のため、吸引されることを望まない部分にある。エプロンシートは、この端部の真空吸引孔により吸引されつつ覆われているので、成形ロールに密着し、自己シール性を有することにより、必要な部分の吸引効率を効果的に維持することができる。
【0014】
本発明におけるエプロンシートによる幅調整方法は、目的の幅ごとにエプロンシートを取り替えても良い。しかし、運転を止めずに簡便に幅変更する手段として、広めのエプロンシートを用意しておき、エプロンシートを横方向に移動させ、成形ロールを覆いたい部分だけを覆い、余ったエプロンシートの幅方向は、成形ロールの端で、真空吸引孔が無い部分に垂らされている。したがって、前述のエプロンシートが「外部で保持」されているという意味は、ロールの回転方向に一緒に移動しないように保持されているという意味であり、成形ロールの幅方向には移動可能である。
【0015】
エプロンシートは、キャンパス地などの厚い布や、これらの布にゴムやプラスチックがコーティングされたものや、プラスチックシートなどが使用される。使用の態様の一つとして、ガラス繊維からなる糸が織物に仕上げられた布に、フッ素樹脂がコーティングされたシートが、寸法安定性もあり、成形ロール上で摺動性や耐摩耗性も良いので、本発明のシートに適合する。
【0016】
本発明のエプロンシートは、成形ロールの幅方向における両端部に1セットずつ設けられていることが望ましい。成形されるフィラメントの幅が、フィルムの両端部において幅調整されるTダイスに対応するためである。成形ロールの幅の両端に設けられているエプロンは、成形されてくるキャップフィルムの幅に合わせて、センタリングできる幅調整機構を有することが好ましい。
【0017】
キャップフィルムのキャップの底面に平坦なバックフィルムを接合させて、多数の密閉された空気室(気泡突起)が形成されたプラスチック気泡シートを製造する場合において、本来のキャップフィルムが成形される領域で、エプロンシートが覆われていない真空吸引孔群の領域を走行するキャップフィルムとバックフィルムとをニップする幅調整ニップロールを有することが望ましい。幅調整ニップロールは、通常ゴム材質で表面が覆われているものが使用されているが、プラスチック材質、繊維材質、金属材質のものも使用することができる。
【0018】
本発明では、エプロンシートが覆われていない真空吸引孔群の領域は、キャップフィルムの幅変更に応じて変更され、それに伴い、走行するキャップフィルムとバックフィルムのみをニップする幅調整ニップロールの幅も変更する必要がある。「のみ」としたのは、この両者のフィルムのみで、エプロンシートはニップしない意味である。その幅調整ニップロールの幅変更手段の一つとして、ターレット方式がある。その方式は、キャップフィルムの種々の幅に対応した複数のロールが、一つの軸を中心に回転可能なように取り付けられ、その中から選ばれた1個が軸を中心に回転させ、成形ロールに押しつけられて使用される。
【0019】
幅変更手段の他の例として、幅調整ニップロールが成形ロールのロール幅の外部に、幅調整ニップロールの軸に軸方向に移動可能な複数の小幅ロール面体を有しており、その小幅ロール面体を幅調整ニップロール軸上で移動させて、目的幅の幅調整ニップロールとすることができる。小幅ロール面体は、幅調整ニップロールと共通の軸の上に設けられている。そして、この小幅ロール面体のロール軸へのセットをゆるめて、ロールの幅方向へ移動させ、目的位置で軸受をロール軸へセットして保持することで、幅調整ニップロールのロール幅を調整する。
【0020】
キャップフィルムのキャップの底面に平坦なバックフィルムが接合されて、多数の密閉された空気室(気泡突起)が形成されたプラスチック気泡シートの製造において、キャップフィルムとバックフィルムの接合の際、ニップロールを使用せずに、両フィルムを静電気的に密着させる方式をとることもできる。その方式においては、キャップフィルムとバックフィルムの接合点の上方に、導電性を有する放電材を設け、この放電材と成形ロール間に直流電圧を印加する手段を設けることにより、放電材と成形ロール間で高電位差を生じさせ、これによりキャップフィルムとバックフィルムとが静電気的に密着し、圧着ロールがなくとも、キャップフィルムとバックフィルムの両者の持つ熱により融着させることができる。導電性を有する放電材は、線状、棒状、板状等の種々の形状をとることができるが、成形ロールの幅方向に渡って設けられる。なお、導電性材料とは、少なくとも比抵抗が、1Ωcmより小さいことが好ましく、1×10-2Ωcmより小さいことがさらに好ましく、1×10-4Ωcmより小さいことが最も好ましい。
【0021】
この導電性を有する放電材は、単なる電線でもよいが、この放電材が多数の放電針を有することが望ましい。多数の針を有することにより、放電性が良くなり、また、局所的な電圧のムラも少なくなった。針としては、0.2mmから8mmが好ましく、さらに好ましくは、0.5mmから5mmである。長さは、好ましくは5mmから80mmであり、さらに好ましくは10mmから50mmである。これらの針が、2mmから100mmの間隔で植えられていることが好ましい。放電材と成形ロールとの距離は、一定に保たれる必要があるが、その距離は、好ましくは5mmから100mm、10mmから30mmの範囲であることがさらに好ましく、その距離はフィルムの厚みやライン速度によって定められる。
【0022】
この放電材と成形ロール間には直流電圧が印加される。印加する手段としては、直流発電機や電池、交流電源からの整流器によって直流化されたものなど、直流電源であれば種々のものが使用される。電圧としては、1kvから100kv等の高電圧が使用されるが、その電圧は、フィルムの厚みやライン速度によって定められる。また、電圧ばかりでなく、放電材と成形ロール間の距離を可変にすることも有益である。
【0023】
本発明において、放電材によってキャップフィルムとバックフィルムの接着性を高める方式をとる場合、本発明におけるエプロンは、導電性を有する材質からなることが望ましい。成形ロール上に渡されている放電材の幅は、キャップフィルムやバックフィルムの幅によって巾変更することは煩雑であるので、エプロンを導電性材料より構成されていることが望ましい。導電性材料としては、例えば、銅等の導電性金属を織り込んだ布や、カーボンブラックやカーボン繊維等の導電材料を、数10%練り込まれたプラスチックシートなどがある。この導電性エプロンシートに溜まった電荷は、このエプロンシートを保持している物体を通じて、外部へアースされていることが望ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のキャップフィルム製造において、ラインの停止時間を極めて短くでき、または多少のライン速度の低下はあっても、ラインを停止することなく製品幅の変更を可能にできる。また本発明により、多様な製品幅に対応することができる。さらに本発明により、原料樹脂や製品の歩留を良くし、作業効率もアップさせることができる。また、かかる目的における装置を、簡便な手段で実現できる。また、キャップフィルムとバックフィルムの接着性を高める目的で、成形ロール上にニップロールが設けられるが、本発明においては、このニップロールの幅変更も簡便に行える手段を提供した。
【0025】
さらに本発明では、キャップフィルムとバックフィルムに静電気を印加して、両フィルムの成形ロールへの密着性を高めることにより、両フィルム間の接着性を良くすることができた。この場合は、上記にニップロールを使用しなくてもよいので、エプロンがニップロールに巻き込まれるというトラブルを皆無にでき、本発明のエプロンロールの移動だけでキャップフィルムの幅変動ができるので、より簡便に幅変動を実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のキャップフィルム製造装置の全体を示す斜視図。
【図2】本発明のエプロンシートが左右にセットされている例を示す斜視図。
【図3】本発明の左右のエプロンシートをキャップフィルムに対してセンタリング可能にする装置の正面図。
【図4】本発明の幅調整ニップロールが、ターレット方式によって、幅を異にする複数のロールが取り付けられている例を示す装置の側面図。
【図5】本発明の幅調整ニップロールの他の例で、複数の小幅ロール面体を有する例を示す装置の正面図。
【図6】本発明のキャップフィルム製造装置において、幅調整ニップロールの代わりに、放電材を有する場合における、装置全体を示す斜視図。
【図7】放電材が放電針を有する場合における装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下本発明を図面で示す実施例に基づいて説明する。図1は、本発明のキャップフィルム成形装置の全体の概念を示す斜視図である。回転している成形ロール1の表面には多数の真空吸引孔2を有しており、それぞれの真空吸引孔2は、アキシャル孔3に通じている。真空吸引孔2の数およびアキシャル孔3の数は、図では煩雑なため粗く描いているが、実際の装置は、もっと密に配されている。アキシャル孔3は、成形ロール1の側面からみて、成形ロールの周方向に等位置に配分されていることが望ましい。真空吸引孔2は、横方向に列をなしており、例えば、アキシャル孔3aは、点線で示した範囲の真空吸引孔2の列に通じている。このような成形ロール1上へ、キャップフィルムの原料となる溶融フィルム4がTダイ5で製膜されて導かれる。アキシャル孔3内が減圧されると、そのアキシャル孔3に通じている真空吸引孔2により真空成形されて多数の窪み(キャップ)が形成され、キャップフィルム6となる。キャップフィルム6に多数のキャップが形成された後、バックフィルムの原料となる溶融フィルム7が導入され、キャップフィルム6とラミネートされて、多数の気泡突起を有するプラスチック気泡シート8となる。なお、アキシャル孔3の一部が、吸引ボックス9によって負圧吸引される。本発明において、プラスチック気泡シート8の製品幅が、用途において狭くなることが求められた場合、原料となるキャップフィルムの原料となる溶融フィルム4も、バックフィルムの原料となる溶融フィルム7も幅狭くして供給されてくる。そうすると、図の斜線で示す真空吸引孔2pは、大気に開放されているので、アキシャル孔3からの負圧吸引が大気を吸引してしまうので、溶融フィルム4の範囲の真空吸引孔2からの真空成型が有効に機能しないこととなる。そこで、キャップフィルム製造における製品幅の変更に際して、ラインの停止時間を極めて短く、または多少のライン速度の低下はあっても、ラインを停止することなく、図における斜線で示した真空吸引孔2pを塞いだり、開いたりする必要がある。
【0028】
図1において、溶融フィルム4の幅が狭くなり、図の斜線を施した真空吸引孔2pは、エプロンシート11によって気密的に覆われる。エプロンシート11は、成形ロール1の外部にある保持バー12に保持されている。吸引ボックス9で吸引されている真空吸引孔2pによる負圧吸引により、エプロンシート11は自己シール性をもって成形ロール1に密着しているが、外部の保持バー12に保持されているので、成形ロール1の回転方向に移動することはない。なお、エプロンシート11は、保持バー12に保持されてはいるが、幅方向へは移動可能なように保持されているので、製品幅を異にするため、溶融フィルム4の幅を異にした場合は、その幅に追随するように幅方向に移動させることもできる。
【0029】
図1において、真空吸引されることによって成形されたキャップフィルム6は、バックフィルムの原料となる溶融フィルム7でラミネーションされることにより、成形されたキャップの底面がシールされる。この溶融フィルム7は、キャップが成形された直後にラミネーションされることが好ましいので、吸引ボックス9の最後の部分で幅調整ニップロール13によってラミネーションされることが好ましい。このように、キャップが成形された直後にラミネーションされることで、キャップフィルムと溶融フィルム7との接合強度が強くなる。このように、幅調整ニップロール13が、キャップ成形直後でラミネーションされる必要があることから、幅調整ニップロール13は、エプロンシート11を避けた幅である必要がある。そのために、エプロンシート11の位置により、幅調整ニップロール13のニップする幅を変更する必要がある。なお、キャップフィルム4や溶融フィルム7の材質の接着性が良い場合や、キャップフィルムと溶融フィルム7との接合強度が若干低くても良い場合は、幅調整ニップロール13は、キャップ成形直後でなく、若干離れた位置でもよい場合があり、このような場合は、エプロンシート11で覆われている位置から離れているので、必ずしも幅調整の必要はなく、成形ロール1の幅一杯のニップロールを使用してもよい。また、キャップフィルムの製造のみを目的とし、溶融フィルム7によるバックフィルムを必要としない場合は、幅調整ニップロールは必要ないし、単なるターンロール14があればよい場合もある。
【0030】
図2は、本発明のエプロンシートが成形ロールの幅方向(軸方向)における両端部にそれぞれ1セットずつ備えている例を示す斜視図である。図の右側は、エプロンシート11が、保持バー12に保持されており、保持バー12上は左右に移動可能である。図の左側にも、エプロンシート21が、保持バー22に保持され、真空吸引孔2qを気密的に覆う。エプロンシート16は、保持バー17上を左右に移動可能である。このようにエプロンシートを左右に設けることにより、製品の幅変動をよりスムースに行うことができる。
【0031】
図3は、本発明のエプロンシート31a、31bが成形ロールの幅方向(軸方向)における両端部にそれぞれ1セットずつ備えられている場合において、左右のエプロンシートをキャップフィルムのセンターに対して簡便にセンタリングすることを可能にした例で、装置の正面図で示す。回転軸32には、センター部33を中心に、左右にそれぞれ逆方向にネジ34a、34bが切られている。回転軸32は、固定軸受35a、35bで、ベアリング部を介して外部の梁に保持されている。この左右逆方向に切られているネジ部34a、34bには、内部にこれらのネジ34a、34bに嵌合するネ内ジ36a、36bが設けられている移動軸37a、37bがセットされている。移動軸37a、37bには、それぞれエプロンシート31a、31bが保持されている。また、移動軸37a、37bには、外部の梁から出ている軸38a、38bに、ベアリング39a、39bを介して廻止軸受40a、40bに保持されている。回転軸32の端部には、ハンドル41が設けられており、このハンドル41を廻すことにより、両エプロンシート31a、31bは、共に外側に、又は、ハンドル41の回転方向によっては、共に内側に向かって移動する。
【0032】
図3の回転軸32には、さらにベアリング44を介してセンタリング軸受45が設けられている。このセンタリング軸受45は、回転軸32に設けてあるフランジ46a、46bにより、横方向には移動できないようになっている。センタリング軸受45の外面にはネジ47が切られてウォームギアを構成し、そのネジ47に嵌合するウォームホィール48が梁49に回転可能に保持されている。ウォームホィール48には、ハンドル50が設けられている。回転軸32のハンドル41を廻すことによってエプロンシート31a、31bを移動させた結果、幅は合致しても、センターが合致しない場合がある。その場合は、ハンドル50を廻すことによって、回転軸32を左右に動かし、エプロンシート31a、31bの位置を、キャップフィルムに対してセンタリングを可能にする。
【0033】
図4は、幅調整ニップロールが、ターレット方式によって、幅を異にする複数のロールが取り付けられている例を示す装置の側面図である。架台51に取り付けられている回転軸52を中心に4本のアーム53a、53b、53c、53dに回転自在に4本の幅調整ロール54A、54B、54C、54Dが取り付けられている。幅調整ロール54A、54B、54C、54Dは、それぞれロール面長が異なっており、使用したいロール面長のロール、例えば54Aを選び、回転軸52を回転させて成形ロール1に押しつけて、幅調整ニップロールとして使用される。
【0034】
図5は、幅調整ニップロールの他の例で、幅調整ニップロール61が、ロール軸方向に移動可能な複数の小幅ロール面体62a、62b、62cを有する例を示す。この図では、小幅ロール面体62aが幅調整ニップロール61に密着して、幅調整ニップロール61の軸63にセットネジ64aでセットされている。成形ロール1のロール幅の外部に幅調整ニップロール61の軸方向に移動可能な小幅ロール面体62b、62cが、幅調整ニップロール61の軸63に、セットネジ64b、64cでセットされている。幅調整ニップロール61は、小幅ロール面体62のセットネジ64をゆるめて軸63上を移動させ、エプロンシート65の位置によって、幅調整ニップロール61のロール幅を適宜追加、又は減縮して使用される。幅調整ニップロール61の軸63は、成形ロール1の外部で、軸受66により、回転自在に保持されている。
【0035】
図6は、図1における幅調整ニップロールを使用しないで、静電気的にキャップフィルムとバックフィルムとなる溶融フィルム7とを接合させる場合の装置全体の斜視図である。成形ロール1上で、キャップフィルム4と溶融フィルム7の2枚のフィルムの反対側に、棒状の放電材71が設置されている。この放電材71と成形ロール1との間に、直流電圧を発する発電機72が設けられて、放電材71と成形ロール1間に、直流電圧が生じ、その結果、キャップフィルム4と溶融フィルム7に静電気が発生し、この2枚のフィルムは接合線s上で合わさり、溶融フィルム7の持っている溶融熱により両者が融着する。なお、この場合におけるエプロンシート11は、導電性材料で構成されていることが望ましく、エプロンシート11に溜まった電荷は、保持バー12を通じて、外部へアースされる。
【0036】
図7は、図6における放電材71が、さらに多数の放電針73を有する場合の装置の平面図である。放電針73の針先は、成形ロール1の方向に向けられている。放電材71と成型ロール1との間に、直流発電機72による直流高圧電圧が生じることで、放電針73の針先から成型ロール1に向けて放電し、キャップフィルムと溶融フィルム(両フィルムは図示していない)に静電気が発生する。このように放電針73を有することで、局所的な電圧のムラがなくなり、キャップフィルムとバックフィルムとの接合強度が増し、接合強度のムラも少なくなる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によって製造されるキャップフィルムやプラスチック気泡シートは、包装用の箱や荷物の運搬用などに使用される緩衝用シートとして使用される。
【符号の説明】
【0038】
1:成形ロール、 2:真空吸引孔、 3:アキシャル孔、
4:溶融フィルム、 5:Tダイス、 6:キャップフィルム、
7:溶融フィルム、 8:プラスチック気泡シート、 9:吸引ボックス。
11:エプロンシート、 12:保持バー、 13:幅調整ニップロール、
14:ターンロール。
21:エプロンシート、 22:保持バー。
31a、31b:エプロンシート、 32:回転軸、 33:センター部、
34a、34b:ネジ、 35:固定軸受、 36:内ネジ、 37:移動軸、
38a、38b:移動軸、 39a、38b:ベアリング、 40:軸受、
41:ハンドル、 44:ベアリング、 45:センタリング軸受、
46a、46b:フランジ、 47:ネジ、 48:ウォームホィール、
49:梁、 50:ハンドル。
51:架台、 52:回転軸、 53:アーム、
54:幅調整ニップロール。
61:幅調整ニップロール、 62:小幅ロール面体、 63:軸、
64:セットネジ、 65:エプロンシート、 66:軸受。
71:放電材、 72:直流発電機、 73:放電針。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の真空吸引孔が表面に存在し、回転可能に支持されている成形ロールと、該成形ロール内部に該真空吸引孔に対応して該成形ロールの軸方向に配設されている空気の通路である複数のアキシャル孔と、該成形ロールの端部に接して設けられ、該成形ロールの一部の範囲における該アキシャル孔を真空源に導き、該アキシャル孔内を負圧にするように構成されている固定の吸引ボックスを有することにより、真空成形によってプラスチックフィルムに多数の窪み(キャップ)を形成させるキャップフィルム形成装置において、
該成形ロールの外部において保持されており、該成形ロールの端部にある該真空吸引孔群を、該成形ロールの外部より覆う気密用エプロンシートを有することを特徴とする、キャップフィルムの幅変更装置。
【請求項2】
前記エプロンシートが、前記成形ロールの幅方向(軸方向)には移動可能である、請求項1のキャップフィルムの幅変更装置。
【請求項3】
前記エプロンシートが、前記成形ロールの幅の両端に設けられている、請求項1のキャップフィルムの幅変更装置。
【請求項4】
前記成形ロールの幅の両端に設けられている前記エプロンシートが、前記キャップフィルムの幅に合わせてセンタリングできる幅調整機構を有する、請求項1のキャップフィルムの幅変更装置。
【請求項5】
前記キャップフィルムのキャップの底面に平坦なバックフィルムを接合させて、多数の密閉された空気室(気泡突起)が形成されるプラスチック気泡シートの製造において、
前記成形ロールの前記エプロンシートが覆われていない前記真空吸引孔群の領域を走行する前記キャップフィルムとバックフィルムのみをニップする幅調整ニップロールを有する、請求項1のキャップフィルムの幅変更装置。
【請求項6】
前記幅調整ニップロールが、前記キャップフィルムの種々の幅に対応した複数のロールが一つの回転軸を中心に取り付けられたものの1個である、請求項5のキャップフィルムの幅変更装置。
【請求項7】
前記幅調整ニップロールが、前記成形ロールのロール幅の外部に該幅調整ニップロールの軸方向に移動可能な複数の小幅ロール面体を有する、請求項5のキャップフィルムの幅変更装置。
【請求項8】
前記キャップフィルムの前記キャップの底面に平坦なバックフィルムが接合されて多数の密閉された空気室(気泡突起)が形成されるプラスチック気泡シートの製造において、
該キャップフィルムと該バックフィルムとの接合点の上方に設けられた、導電性を有する放電材と、
該放電材と前記成形ロールに直流電圧を印加する手段と、
を有する、請求項1のキャップフィルムの幅変更装置。
【請求項9】
前記放電材が多数の放電針を有する、請求項8のキャップフィルムの幅変更装置。
【請求項10】
前記エプロンシートが導電性を有する材質からなる、請求項8のキャップフィルムの幅変更装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−255533(P2009−255533A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9932(P2009−9932)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】