説明

エポキシ化反応及びその運転条件

アルキレン、酸素及び気体状塩素含有プロモーター種を含む反応混合物を、銀及び促進量のレニウムを含有する担持触媒の上を通過させて、第一の運転条件でエポキシ化反応を受けさせることを含むアルキレンオキサイドの製造方法。この方法は、続いて、好ましい運転条件下でエポキシ化反応を実施することを更に含む。この好ましい運転条件は、アルキレンオキサイドへのエポキシ化反応の効率(ここで、この効率は、好ましい運転条件に対応する運転温度で達成可能な最高効率よりも低い)によって特徴づけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、好ましい運転条件下でエポキシ化反応を運転することに関する。本発明は好ましい運転条件の決定方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
アルキレンオキサイドは多数の有用性が知られている。例えばエチレンオキサイドは、自動車冷媒として、不凍液として並びにポリエステル繊維及び樹脂、非イオン性界面活性剤、グリコールエーテル、エタノールアミン並びにポリエチレンポリエーテルポリオールを製造する際に使用されるエチレングリコールを製造するために使用される。プロピレンオキサイドは、ポリウレタンポリマー用途において使用されるプロピレングリコール及びポリプロピレンポリエーテルポリオールを製造するために使用される。
【0003】
担時された銀系触媒を使用する酸素の存在下でのオレフィンの接触エポキシ化によるアルキレンオキサイドの製造は公知である。この銀触媒中に促進量のレニウムを導入することによって、エポキシ化反応の効率を大きく改良することができる。エポキシ化反応は、典型的に、この反応の効率を増加させる気体状反応プロモーター(promoter)、例えば塩素化炭化水素の存在下に実施される。レニウムを含む銀触媒について、効率を増加させることに加えて、塩素化炭化水素の量を増加させることによって、典型的には、エポキシ化反応の活性が増加する。その結果、この反応は、一定のアルキレンオキサイド製造を維持しながら、より低い温度で実施することができる。
【0004】
先行技術は、塩素化炭化水素の濃度を調節することによって、エポキシ化反応を、或温度で最高効率で運転できることを教示している。これは、必要な(又は望ましい)温度よりも高い温度で、この反応を運転することに至り、触媒の過塩素化の増加したリスク、そうして触媒の失活に至り得、また、触媒の、塩素レベルへの強い活性依存性のために、目標のエチレンオキサイド製造速度を維持することにおける困難さを引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最適効率でエポキシ化反応を運転することに付随する問題点の幾つかを解決する、エチレンオキサイドの改良された製造方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以前のプロセスよりも、高い効率(原材料の節約及びより少ない温室効果ガスの発生になる)並びに低い温度(より少ない副生物不純物及びより少ないAg焼結になる)の両方で、同じ量のアルキレンオキサイドの製造を可能にする。より高い選択率及びより低い運転温度は、一定の生産性及び転化率を自動的に維持することができる制御システムについての必要性無しに、本発明の使用によって達成することができる。より低い温度での運転は、同様により長い触媒寿命を可能にできる。本発明は、所定の生産性について、以前のプロセスによって得られるものよりも高い効率になる一組の運転条件の決定を可能にする。
【0007】
一つの態様において、アルキレンオキサイドの製造方法が提供される。この方法は、アルキレン、酸素及び気体状塩素含有プロモーター種を含む反応混合物を、銀及び促進量のレニウムを含有する担持触媒の上を通過させて、第一の運転条件でエポキシ化反応を受けさせて、反応器内でアルキレンオキサイドを生成させることを含む。この方法は、続いて、この反応器内で好ましい運転条件下でエポキシ化反応を実施することを更に含む。この好ましい運転条件は、アルキレンオキサイドへのエポキシ化反応の効率(ここで、この効率は好ましい運転条件に対応する運転温度で達成可能な最高効率よりも低い)によって特徴づけられる。
【0008】
別の態様において、気体状塩素含有プロモーター種の存在下の、銀及び促進量のレニウムを含む触媒上でのエポキシ化反応の好ましい運転条件の決定方法が提供される。この方法は、固定された運転温度での、総触媒塩化物化有効度値(overall catalyst chloriding effectiveness value)の関数としての、エポキシ化反応の生産性に対する効率の微分係数(derivative)を決定することを含む。この好ましい運転条件は、アルキレンオキサイドを生成するためのエポキシ化反応の効率がパーセントで表し、エポキシ化反応の生産性が、反応器出口流中のアルキレンオキサイドの濃度として、モルパーセントで表すと、約−1〜約−4の範囲内である微分係数によって特徴づけられる。
【0009】
更に別の態様において、気体状塩素含有プロモーター種の存在下の、銀及び促進量のレニウムを含有する担時触媒の存在下でのエポキシ化反応の好ましい運転条件の決定方法が提供される。この方法は、第一の温度で、少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値での、エポキシ化反応の効率及び生産性での第一のデータの組を作ることを含む。この方法は、第一のデータの組から第一の温度での最高効率値を決定することを更に含む。この方法は、この最高効率値よりも低い効率値の範囲を選択することを更に含む。この効率値の範囲は、エポキシ化反応が、最高効率及び第一の温度で運転されるとき達成できるものよりも高いエポキシ化反応の生産性に対応する。この効率値の範囲は、好ましい運転条件に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のこれらの及び他の特徴、面及び利点は、下記の発明を実施するための形態が、添付する図面(図面において、類似の文字は、図面を通して類似の部品を表す)を参照して読まれるとき、より良く理解されるようになるであろう。
【図1】図1は、本発明の態様に従った、好ましい運転条件の決定方法のフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の一つの態様に従った、好ましい運転条件の他の決定方法のフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の態様に従って、図2に示される方法を使用して得られるエポキシ化反応の生産性に対する効率のプロットの例示である。
【図4】図4は、本発明の態様に従った、好ましい運転条件の更に他の決定方法のフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の態様に従って、図4に示される方法を使用して得られるエポキシ化反応の生産性に対する効率のプロットの例示である。
【図6】図6は、本発明の態様に従った、好ましい運転条件の決定方法のフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の態様に従って、図6に示される方法を使用して得られる、総触媒塩化物化有効度値及び温度の関数としての、効率及び生産性の等高線プロットの例示である。
【図8】図8は、本発明の態様に従ったアルキレンオキサイドを製造するためのシステムの図解線図である。
【図9】図9は、本発明の態様に従った、エポキシ化反応の生産性に対する効率の他のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
典型的なエポキシ化反応において、アルキレン、例えばエチレンは、反応器内で、担時銀触媒の存在下で、酸素又は酸素含有気体と反応して、アルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイドを生成する。このエポキシ化反応は、エポキシ化反応の「活性」、「生産性」、「収率」及び/又は「選択率」の項目で特徴づけることができる。
【0012】
エポキシ化反応の活性は、多数の手段で定量することができ、その一つは、反応器温度を実質的に一定に維持している間の、反応器の入口流中に含有されているアルキレンオキサイドのモルパーセント(入口流中のアルキレンオキサイドのモルパーセントは、典型的には、必ずではないが、ゼロパーセントに近い)に対する、反応器の出口流中に含有されているアルキレンオキサイドのモルパーセントであり、他のものは、アルキレンオキサイド製造の所定の速度を維持するために必要な温度である。多くの例において、活性は、一定の時間に亘って、特定された一定の温度で製造されたアルキレンオキサイドのモルパーセントの項目で測定される。この活性は、反応器内の触媒体積の単位当たりの、アルキレンオキサイド生成の方に向かう反応速度として定義することができる。その代わりに、活性は、アルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイドの特定の一定のモルパーセントの製造を持続するために必要な温度、与えられた他の条件、例えば圧力及び供給物中の合計モル数の関数として測定することができる。
【0013】
この反応の生産性は、触媒の量によって正規化された反応速度の尺度である。多くの例において、生産性は、反応器の充填体積として測定される触媒の体積当たり、時間当たりの、製造されるアルキレンオキサイドのモル数又はキログラム数として表すことができる。或る例において、この生産性は、特定のプロセス条件、例えば空間速度で、反応器の出口流中のアルキレンオキサイドのモルパーセントとして表すことができる。
【0014】
「効率」と同義語である、エポキシ化反応の「選択率」は、特定の生成物を形成する転化した又は反応したオレフィンの相対量(分率として又はパーセントで)を指す。例えば「アルキレンオキサイドへの効率」は、アルキレンオキサイドを形成する転化した又は反応したアルキレンの、モル基準でのパーセントを指す。
【0015】
「失活」は、本明細書中に使用されるとき、活性及び/又は効率における、回復することができない減少である、活性及び/又は効率の永久的損失を指す。より低い失活速度が、一般的に望ましい。
【0016】
アルキレンオキサイドの「収率」は、任意の与えられた時間について、プロセスによって製造されたアルキレンオキサイドの正味モル数÷プロセスに供給されたオレフィンの正味モル数を指す。
【0017】
本明細書中に使用される用語「第一の運転条件」は、エポキシ化反応の任意の与えられた時間での運転条件を指し、触媒の寿命を通して適用可能である。エポキシ化反応の運転に関して、本明細書中に使用される用語「運転条件」は、下記のコンポーネント、即ち温度並びに圧力並びに時間基準の気体空間速度並びに反応混合物の組成及び/又は濃度の項目で定義される(又は表される)。幾つかの態様において、第一の運転条件は、触媒寿命の開始時であってよく、一方、或る別の態様において、第一の運転条件は、触媒の寿命における後の期間であってよい。本発明の態様は、好ましい運転条件を決定するための方法及び第一の運転条件の後の好ましい運転条件でエポキシ化反応を実施する方法も提供する。幾つかの態様において、この方法は、好ましい運転条件を達成する前の単一の第一の運転条件を含むことができる。或る別の態様において、この方法は好ましい運転条件を達成する前の多数の第一の運転条件を含むことができる。
【0018】
本発明者等は、驚くべきことに、最高効率で所定の温度で運転する代わりに、エポキシ化反応を、「好ましい運転条件」で運転することを見出した。本明細書中に定義される用語「好ましい運転条件」は、エポキシ化反応の生産性と効率との望ましい組合せに対応し、これは第一の運転条件から達成することができる。
【0019】
一つの態様において、好ましい運転条件は、エポキシ化反応の効率が最高にされている所望の生産性によって特徴づけられる。更に別の態様において、本発明の方法は、先行技術によって教示される最適効率の方法を使用する運転の温度よりも低い、運転の温度に対応する好ましい運転条件を提供することができる。有利なことに、本件特許出願中に記載したような好ましい運転条件は、触媒の寿命の任意の期間で適用可能である。本発明の一態様に従った、好ましい運転条件は、同じ運転温度での最高効率よりも低いエポキシ化反応の効率並びに最高効率で、同じ運転温度でエポキシ化反応を実施することに付随する生産性よりも高い生産性に対応する。本発明の態様は、好ましい運転条件の決定方法も提供する。
【0020】
一つの態様において、アルキレンオキサイドの製造方法が提供される。この方法は、アルキレン、酸素及び気体状塩素含有プロモーター種を含む反応混合物を、銀及び促進量のレニウムを含有する担持触媒の上を通過させて、第一の運転条件でエポキシ化反応を受けさせて、反応器内でアルキレンオキサイドを生成させることを含む。このエポキシ化反応は、続いて、好ましい運転条件下で実施される。
【0021】
エポキシ化反応を最高効率で実施することができる運転条件を決定することは、運転条件の他のコンポーネントを実質的に変化させないで保持しながら、運転温度で、「総触媒塩化物化有効度」(本明細書中に後で定義される)値を変化させることによって達成することができる。例えば、総触媒塩化物化有効度値は、1種若しくはそれ以上の気体状塩素含有プロモーター種の濃度及び/又は1種若しくはそれ以上の塩素非含有炭化水素種の濃度を変化させることによって変えることができる。アルキレンの濃度を変化させないことが好ましい。気体状塩素含有プロモーター種の濃度を変化させることにより、例えば、反応器へのその供給速度を変化させることにより、総触媒塩化物化有効度を変えることが最も好ましい。以下、「最高効率での総触媒塩化物化有効度値」として参照される、特定の総触媒塩化物化有効度値で、エポキシ化反応は、その運転温度で、運転条件の他のコンポーネントを実質的に変化させないままにして、達成可能な最高効率である運転温度での最高効率を示す。
【0022】
総触媒塩化物化有効度値を、最高効率での総触媒塩化物化有効度値から増加させることは、アルキレンオキサイド生成へのエポキシ化反応の効率の低下を起こす。
【0023】
第一の運転条件に対して比較すると、好ましい運転条件は、運転温度及び総触媒塩化物化有効度値の少なくとも一方が、第一の運転条件のものとは異なっている、運転温度及び総触媒塩化物化有効度値で運転される。
【0024】
一つの態様において、エポキシ化反応を好ましい運転条件で実施することは、反応器を実質的に固定された温度で運転することを含む。一つの態様において、好ましい運転条件は、更に、好ましい運転条件に対応する運転温度で達成可能な総触媒塩化物化有効度値及び最高効率が、総触媒塩化物化有効度値がより低い以外は、好ましい運転条件と同じ反応条件下で達成可能な最高効率であることによって特徴づけられる。一つの態様において、総触媒塩化物化有効度値のみは、好ましい運転条件と最高効率をもたらすものとの間で異なっていなくてはならない。
【0025】
本発明の態様において使用されるアルキレンは、下記の式(I):
【0026】
【化1】

【0027】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素並びに低級一価ラジカル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル及び炭素数6以下のより高級のホモローグを含むC1〜C6アルキルラジカルから選択される)
によって特徴づけられる。幾つかの態様において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素、メチル、エチル及びプロピルから選択される。一つの態様において、R1及びR2の両方は水素であり、好ましいアルキレンはエチレンである。幾つかの態様において、アルキレンはプロピレン(ここで、R1は水素であり、R2はメチルである)である。製造される対応するアルキレンオキサイド又はエポキシドは、好ましくは下記の構造式(II):
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、R1及びR2は、本明細書中で、反応剤アルキレンに関連させて同定される)
によって特徴づけられる。幾つかの態様において、アルキレンオキサイドはエチレンオキサイド(即ち、R1及びR2は共に水素である)である。或る態様において、アルキレンオキサイドはプロピレンオキサイド(即ち、R1は水素であり、R2はメチルである)である。他の例示的アルキレンオキサイドには、式中、R1及びR2が、それぞれ独立に、水素及び低級一価ラジカル、好ましくはC1〜C6アルキルラジカルから選択される、式(II)を有するオキサイドが含まれる。
【0030】
エポキシ化反応のための適切な反応器には、固定床反応器、固定床管型反応器、連続攪拌槽反応器(CSTR)、流動床反応器及び当業者に公知である広範囲の種々の反応器が含まれる。未反応供給物を循環すること若しくは単一通過システムを使用すること又は直列配置での反応器を使用することによってアルキレン転化率を上昇させるために逐次的反応を使用することの望ましさは、また、当業者によって容易に決定することができる。反応圧力は、反応器の設計に依存して変化するが、典型的に、約1000kPa(キロパスカル)〜約2500kPa絶対の範囲内である。幾つかの態様において、反応器の圧力は、約1800kPa〜約2500kPa(絶対)の範囲内である。反応器の温度は、重要な運転パラメーターである。このエポキシ化反応は、好ましくは少なくとも約200℃、更に好ましくは少なくとも約210℃、最も好ましくは少なくとも約220℃である温度で実施される。約300℃以下の反応温度が好ましく、更に好ましくは約290℃以下であり、最も好ましくは約280℃以下である。反応器の温度は、反応器内の種々の点で、例えば、これらに限定するものではないが、触媒床での温度又は反応器からの出口流を含む気体の温度を測定することができる。或る態様において、冷却媒温度、例えば冷却媒が反応器の冷却媒側に供給される点での冷却媒温度に対応する入口冷却媒温度を使用することができる。運転の特定のモード、例えば選択された温度及び/又は圧力のような条件は、通常、プロセス経済性によって指定される。
【0031】
エポキシ化反応は空気ベース又は酸素ベースであってよい、カーク・オスマーの化学技術百科事典(Kirk-Othmer's Encyclopedia of Chemical Technology)、第3版、第9巻、1980年、第445〜447頁参照。酸素は、プロセスに、純粋な分子状酸素として又はその代わりに、酸素含有気体(ここで、この気体は、1種又はそれ以上の気体状成分、例えば酸化プロセスに関して本質的に不活性である気体状希釈剤、例えば窒素、ヘリウム、メタン及びアルゴンを更に含むことができる)として供給することができる。適切な酸素含有気体には空気が含まれる。更に、酸素含有気体は、水、二酸化炭素及び種々の気体状プロモーター又はそれらの副生物を含む気体状成分の1種又はそれ以上を含むことができる。反応混合物中の酸素濃度は、広範囲に亘って変えることができる。実際に、反応混合物の易燃性は、酸素濃度を制限し得る主な考慮すべき事項である。幾つかの態様において、酸素濃度は、少なくとも約1モル%、更に好ましくは少なくとも約2モル%である。或る態様において、酸素濃度は、反応混合物の約15モル%以下、更に好ましくは約12モル%以下である。
【0032】
反応混合物中のアルキレン濃度は、広範囲に亘って変化させることができる。幾つかの態様において、このアルキレン濃度は、少なくとも約18モル%、更に好ましくは少なくとも約20モル%である。或る態様において、反応混合物中のアルキレンの濃度は、約50モル%以下、更に好ましくは約40モル%以下である。反応混合物は、他の炭化水素、例えばエタンを更に含むことができる。
【0033】
反応混合物中のアルキレン対酸素の相対体積比は、このような公知の一般的な値のいずれかに従った範囲であってよい。典型的には、反応混合物中のアルキレン対酸素の体積比は、約1/1から約10/1まで変化させることができる。同様に、不活性気体、希釈剤又は他の気体状成分、例えば水、二酸化炭素、気体状プロモーター及び気体状副生物インヒビター(inhibitor)の量を、当該技術分野で見出されるような公知の一般的な範囲に従って変化させることができる。
【0034】
幾つかの態様において、この触媒は担持触媒である。この触媒の適切な担体材料には、エポキシ化のために導入される反応混合物及び生成物エポキシドの存在下で比較的に不活性であり、触媒に転化されるとき製造条件に耐えることができる、多孔質耐火性担体又は材料が含まれてよい。例えば担体はα−アルミナ、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、ジルコニア、マグネシア、軽石、ゼオライト、木炭、種々のクレイ、アルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウム及びこれらの混合物から構成されていてよい。一つの態様において、担体はα−アルミナから構成されている。
【0035】
アルキレンオキサイド触媒中に使用するのに適している担体を製造するための多数の公知の方法が存在している。このような方法の幾つかは、例えば米国特許第4,379,134号明細書、米国特許第4,806,518号明細書、米国特許第5,063,195号明細書、米国特許第5,384,302号明細書、米国特許第6,831,037号明細書等に記載されている。例えば、少なくとも95%の純度のα−アルミナ担体は、原材料を配合(混合)し、押出し、乾燥し、そして高温度焼成することによって製造することができる。この場合に、出発原材料には、通常、異なった特性を有する1種又はそれ以上のα−アルミナ粉末(単数又は複数)、物理的強度を与えるためのバインダーとして添加することができるクレイ型材料及び焼成工程の間のその除去の後で所望の多孔度及び/又は細孔サイズ分布を与えるために混合物で使用されるバーンアウト材料(通常有機化合物)が含まれる。完成担体中の不純物のレベルは、使用する原材料の純度及び焼成段階の間のそれらの揮発の程度によって決定される。一般的な不純物には、シリカ、アルカリ及びアルカリ土類金属酸化物並びに微量の金属及び/又は非金属含有添加物が含まれるであろう。アルキレンオキサイド触媒使用のために特に適切な特性を有する担体を製造するための他の方法は、任意的に、ケイ酸ジルコニウムを、ベーマイトアルミナ(AlOOH)及び/又はγ−アルミナと混合する工程、このアルミナを、酸性成分及びハロゲン化物アニオン(好ましくはフッ化物アニオン)を含有する混合物で解膠して、解膠されたハロゲン化アルミナを提供する工程、この解膠されたハロゲン化アルミナを(例えば押出又はプレスにより)成形して、成形され解膠されたハロゲン化アルミナを提供する工程、この成形され解膠されたハロゲン化アルミナを乾燥して、乾燥成形アルミナを提供する工程並びにこの乾燥成形アルミナを焼成して変性されたα−アルミナ担体の球状物を提供する工程からなる。
【0036】
非常に高い純度、即ち少なくとも98重量%のα−アルミナを有し、全ての残りの成分がシリカ、アルカリ金属酸化物(例えば酸化ナトリウム)並びに微量の他の金属含有及び/又は非金属含有添加物若しくは不純物であるアルミナが使用されてきた。同様に、より低い純度、即ち約80重量%のα−アルミナで、残りが無定形及び/又は結晶性アルミナ及び他のアルミナ酸化物、シリカ、シリカアルミナ、ムライト、種々のアルカリ金属酸化物(例えば酸化カリウム及び酸化セシウム)、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物(例えば酸化鉄及び酸化チタン)並びに他の金属及び非金属酸化物の1種又はそれ以上であるアルミナが使用されてきた。更に、担体を製造するために使用される材料は触媒性能を改良するために公知である化合物、例えばレニウム(例えば、レニウム酸塩)及びモリブデンを含んでいてよい。
【0037】
一つの態様において、この担体材料は、少なくとも約80重量%のα−アルミナを含み、そして重量基準で約30ppm(部/100万)よりも少ない酸浸出性アルカリ金属(α−アルミナの重量パーセント及び酸浸出性アルカリ金属の濃度は担体の重量基準で計算される)を含み、ここで、酸浸出性アルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウム及びこれらの混合物から選択される。
【0038】
このα−アルミナ担体は、少なくとも約0.3cm3/g、更に好ましくは約0.4cm3/g〜約2.0cm3/gの細孔体積及び約1〜約50ミクロンの中央細孔直径(median pore diameter)を有する。
【0039】
このα−アルミナ担体は、好ましくは少なくとも約0.5m2/g、更に好ましくは少なくとも約0.7m2/gの比表面積を有する。この表面積は典型的には約10m2/gよりも小さく、好ましくは約5m2/gよりも小さい。
【0040】
一つの態様において、このα−アルミナは、それらのそれぞれが、六角板(幾らかの粒子は、2個又はそれ以上の平らな表面を有する)の形状に近似し、(数基準での)その少なくとも50%が、約50ミクロンよりも小さい主寸法を有する薄板又は小板形状を有する少なくとも1個の実質的に平らな主表面を有する粒子を含有する。
【0041】
一つの態様において、このα−アルミナ担体は、完成した担体中に実質的にケイ酸ジルコニウムとして存在し、更に好ましくは、担体の重量基準で計算して、約4重量%以下の量で存在する、ケイ酸ジルコニウム(ジルコン)を含有している。
【0042】
このα−アルミナ担体は、任意の適切な形状のものであってよい。担体の例示的形状には、球形、塊(chunk)、板状物、片、ペレット、リング、球、ワゴンホイール(wagon wheel)、星形内及び/又は外表面を有するトロイド等が含まれる。担体は、反応器内で使用するために適している任意のサイズのものであってよい。例えば、複数の、触媒を充填した約1〜3インチ(2.5〜7.5cm)の外径及び約15〜45フィート(4.5〜13.5m)の長さの平行の細長い管(適当なシェル内で)を有する固定床エチレンオキサイド反応器内で、約0.1インチ(0.25cm)〜約0.8インチ(2cm)の直径を有する、丸みを帯びた形状、例えば球、ペレット、リング、板状物等を有するα−アルミナ担体を使用することが望ましい。
【0043】
幾つかの態様において、アルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの製造のための触媒は、上記の担体で、当該技術分野で公知であるように、担体に、1種又はそれ以上の銀化合物の溶液を含浸させ、担体の細孔全体に銀を堆積させ、そして銀化合物を金属銀にまで還元することによって製造することができる。例えばLiu等、米国特許第6,511,938号明細書及びThorsteinson等、米国特許第5,187,140号明細書(参照して本明細書に含める)参照。
【0044】
一般的に、担体には、対応するアルキレンオキサイドへの、酸素又は酸素含有気体によるアルキレンの直接酸化に、触媒作用することができる銀の任意の量である、触媒量の銀を含浸させる。このような触媒を製造する際に、担体に、典型的には、触媒の重量基準で、約5重量%よりも多い、約10重量%よりも多い、約15重量%よりも多い、約20重量%よりも多い、約25重量%よりも多い、約27重量%よりも多い、更に好ましくは約30重量%よりも多い量で、銀を担体上に担持させることを可能にするために充分な、1種又はそれ以上の銀化合物溶液を、(1回又はそれ以上)含浸させる。典型的には、担体上の銀の量は、触媒の重量基準で、約70重量%未満、更に好ましくは約50重量%未満である。
【0045】
完成した触媒中の銀粒子サイズは、重要であるが、その範囲は狭くない。適切な銀粒子サイズは、直径が、約10オングストローム〜約10,000オングストロームの範囲内であってよい。好ましい銀粒子サイズは、直径が、約100オングストロームよりも大きくから約5,000オングストロームよりも小さいまでの範囲内である。この銀は、α−アルミナ担体内に、全体中に及び/又は上に比較的均一に分散されていることが望ましい。
【0046】
幾つかの態様において、この含浸溶液は、レニウムプロモーター及び/又はコプロモーター(co-promoter)並びにこれらの任意の混合物を含有することができる。或他の態様において、プロモーター及びコプロモーターは、銀含浸の前に若しくは銀含浸の後に又はお互いとは異なった含浸において添加することができる。本明細書中に使用されるとき、プロモーターは、特定の触媒材料、例えば銀と組合せて存在するとき、触媒性能の1個若しくはそれ以上の面に有利であり又は他の方法で、所望の生成物、例えばエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを製造するための触媒の能力を促進するように作用する材料である。本明細書中に使用される用語「コプロモーター」は、プロモーターと組合せたときに、プロモーターの促進効果を増加する材料を指す。更に、プロモーターは、「ドーパント(dopant)」として参照されることもできる。プロモーター及びコプロモーターは、それら自体、一般的に触媒材料とは考えられていない。触媒中のプロモーター及び/又はコプロモーターの存在は、触媒性能への1個又はそれ以上の有利な効果、例えば所望の生成物の製造の速度又は量を増大させること、反応の適切な速度を達成するために必要な温度を低下させること、望まない反応の速度又は量を低下させることなどに寄与することが示されてきた。競争反応が反応器内で同時に起こり、方法全体の有効性を決定する際の重要な要因は、これらの競争反応を超えて有する制御の尺度である。所望の反応のプロモーター又はコプロモーターと呼ばれる材料は、他の反応、例えば燃焼反応のインヒビターであり得る。顕著なことは、反応全体へのプロモーター及び/又はコプロモーターの影響が、所望の生成物、例えばエチレンオキサイドの効率的な製造に有利であることである。触媒中に存在する1種又はそれ以上のプロモーター及び/又はコプロモーターの濃度は、触媒性能への所望の効果、特定の触媒の他の成分、担体の物理的及び化学的特性並びにエポキシ化反応条件に依存して、広範囲に亘って変えることができる。
【0047】
少なくとも2種類のプロモーター、即ち固体プロモーター及び気体状プロモーターが存在する。固体及び/又は気体状プロモーターが促進量で与えられる。本明細書中に使用される用語「促進量」は、該成分を含有しない触媒に対して比較したとき、その触媒の触媒的特性の1個又はそれ以上において改良を与えるために有効に作用する、その触媒の成分の量を指す。触媒的特性の例には、とりわけ、運転性(暴走に対する抵抗)、効率、活性、転化率、安定性及び収率が含まれる。個々の触媒的特性の1個又はそれ以上を、「促進量」によって増強させることができ、一方、他の触媒的特性を増強させることができるか若しくはできないか又は減衰させることさえできることが、当業者によって理解される。更に、異なった触媒的特性は異なった運転条件で増強できることが理解される。例えば、一つの運転条件で増強された効率を有する触媒は、異なった条件で運転することができ、この場合には、改良は、効率ではなくて活性において現れる。
【0048】
プロモーターによってもたらされる促進効果は、多数の変数、例えば運転条件、触媒製造技術、支持体の表面積及び細孔構造及び表面化学的特性、触媒の銀及びコプロモーター含有量、触媒上に存在する他のカチオン及びアニオンの存在によって影響を受け得る。他の活性剤、安定剤、プロモーター、増強剤又は他の触媒改良剤の存在も、促進効果に影響を与え得る。
【0049】
エチレンオキサイドを製造するために使用される触媒用の公知の固体プロモーターの例にはレニウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、硫黄、マンガン、モリブデン及びタングステンの化合物が含まれる。エチレンオキサイドを製造するための反応の間に、触媒上のプロモーターの特定の形は知ることができない。固体プロモーター組成物の例及びそれらの特徴並びに触媒の一部としてこのプロモーターを含有させる方法は、Thorsteinson等、米国特許第5,187,140号明細書、特に第11〜15欄、Liu等、米国特許第6,511,938号明細書、Chou等、米国特許第5,504,053号明細書、Soo等、米国特許第5,102,848号明細書、Bhasin等、米国特許第4,916,243号明細書、同第4,908,343号明細書及び同第5,059,481号明細書並びにLauritzen、米国特許第4,761,394号明細書、同第4,766,105号明細書、同第4,808,738号明細書、同第4,820,675号明細書及び同第4,833,261号明細書(全部を参照して本明細書に含める)中に記載されている。固体プロモーターは、一般的に、その使用の前に触媒に化学的化合物として添加される。本明細書で使用される用語「化合物」は、表面及び/又は化学結合、例えばイオン結合及び/又は共有結合及び/又は配位結合による、特定の元素と1種又はそれ以上の異なった元素との組合せを指す。用語「イオン性」又は「イオン」は、電気的に帯電した化学単位を指し、「カチオン性」又は「カチオン」は正であり、そして「アニオン性」又は「アニオン」は負である。用語「オキシアニオン性」又は「オキシアニオン」は、他の元素と組合せて少なくとも1個の酸素原子を含有する、負に帯電した単位を指す。従って、オキシアニオンは、酸素含有アニオンである。イオンは真空中には存在しないが、触媒に化合物として添加されたとき、電荷バランス対イオンと組合せて見出されることが理解される。触媒中にあるとき、プロモーターの形は必ずしも知られておらず、そしてプロモーターは、触媒の製造の間に添加された対イオン無しに存在し得る。例えば水酸化セシウムで製造された触媒は、セシウムを含有するように分析できるが、完成した触媒中に水酸化物を分析できない。同様に、アルカリ金属酸化物、例えば酸化セシウム又は遷移金属酸化物、例えばMoO3のような化合物は、イオン性ではないが、触媒製造の間に又は使用中にイオン性化合物に転化し得る。理解を容易にするために、固体プロモーターは、運転条件下で触媒中のその形に無関係に、カチオン及びアニオンの用語で参照されるであろう。
【0050】
本発明の方法において使用される触媒は、種々の形で、例えば金属として、共有化合物として、カチオンとして又はアニオンとして与えることができるレニウムプロモーターからなる。レニウム促進担持銀含有触媒は、米国特許第4,761,394号明細書及び米国特許第4,766,105号明細書(参照して本明細書に含める)から公知である。概して、この触媒は、担体材料上の、銀、レニウム又はこれらの化合物並びに任意的に、幾つかの態様において、コプロモーター、例えば別の金属又はその化合物並びに任意的に追加のコプロモーター、例えば硫黄、リン、ホウ素及びこれらの化合物を含む。増強された効率及び/又は活性を与えるレニウム種は確かではなく、添加された成分又は触媒の製造の間若しくは触媒として使用する間に発生するものであろう。レニウム化合物の例にはレニウム塩、例えばハロゲン化レニウム、オキシハロゲン化レニウム、レニウム酸塩、過レニウム酸塩、レニウムの酸化物及びレニウムの酸が含まれる。しかしながら、過レニウム酸アルカリ金属、過レニウム酸アンモニウム、過レニウム酸アルカリ土類金属、過レニウム酸銀、他の過レニウム酸塩及び七酸化レニウムも、適切に使用できる。七酸化レニウム、Re27は、水中に溶解したとき、加水分解して、過レニウム酸、HReO4又は過レニウム酸水素になる。従って、本明細書の目的のために、七酸化レニウムは、過レニウム酸塩、即ちReO4であると考えることができる。同様な化学は、モリブデン及びタングステンのような他の金属によって示されることができる。
【0051】
この担持銀触媒は、レニウムプロモーター、第一のコプロモーター及び第二のコプロモーターを含有していてよく、ここで、担体上に担持されたレニウムプロモーターの量は、触媒の重量に対して、1ミリモル/kg(約186ppmw)よりも大きく、第一のコプロモーターは、硫黄、リン、ホウ素及びこれらの混合物から選択され、第二のコプロモーターは、タングステン、モリブデン、クロム及びこれらの混合物から選択され、担体上に担持された第一のコプロモーター及び第二のコプロモーターの合計量は、触媒の重量に対して、最大3.8ミリモル/kgである。
【0052】
この触媒は、担体並びに担体上に担持された、銀、レニウムプロモーター、第一のコプロモーター及び第二のコプロモーターからなっていてよく、ここで、第一のコプロモーターの第二のコプロモーターに対するモル比は1よりも大きく、第一のコプロモーターは、硫黄、リン、ホウ素及びこれらの混合物から選択され、第二のコプロモーターは、タングステン、モリブデン、クロム及びこれらの混合物から選択される。
【0053】
幾つかの例において、プロモーターは、米国特許第4,916,243号明細書(参照して本明細書に含める)に記載されているように、相乗効率増強を得るために、カチオンの混合物、例えばセシウムと少なくとも1種の他のアルカリ金属との混合物を含む。
【0054】
完成触媒中のアルカリ金属プロモーターの濃度は、狭くなく、広範囲に亘って変化してよい。特定の触媒のための最適アルカリ金属プロモーター濃度は、他の担体及び触媒特性を考慮して、性能特性、例えば触媒効率、触媒老化の速度及び反応温度に依存するであろう。
【0055】
完成触媒中のアルカリ金属の濃度(カチオン、例えばセシウムの重量基準)は、約0.0005〜1.0重量%、好ましくは約0.005〜0.5重量%で変化してよい。担体又は触媒の表面上に堆積される又は存在するカチオンプロモーターの好ましい量は、一般的に、全担体材料上で計算される、約10ppm〜約4000ppm、好ましくは約15ppm〜約3000ppm、更に好ましくは約20ppm〜約2500ppm重量のカチオンである。約50ppm〜約2000ppmの量が、しばしば最も好ましい。アルカリ金属セシウムを、他のカチオンと共に混合物中に使用するとき、所望の性能を達成するための、セシウム対任意の他のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩(単数又は複数)(使用する場合)の比は、狭くなく、広範囲に亘って変化してよい。セシウム対他のカチオンプロモーターの比は約0.0001:1から10,000:1まで、好ましくは約0.001:1から1,000:1まで変化してよい。
【0056】
本発明で使用することができる幾つかのアニオンプロモーター又はコプロモーターの例には、ハロゲン化物、例えばフッ化物及び塩化物並びに周期表の第3b族〜第7b族及び第3a族〜第7a族の5〜83の原子番号を有する、酸素以外の元素のオキシアニオンが含まれる。窒素、硫黄、マンガン、タンタル、モリブデン、タングステン及びレニウムのオキシアニオンの1種又はそれ以上が、幾つかの用途のために好ましいであろう。
【0057】
本発明の触媒中に使用するために適しているアニオンプロモーター、コプロモーター又は変性剤の種類は、単なる例として、オキシアニオン、例えば硫酸塩、SO4-2、リン酸塩、例えばPO4-3、チタン酸塩、例えばTiO3-2、タンタル酸塩、例えばTa26-2、モリブデン酸塩、例えばMoO4-2、バナジン酸塩、例えばV24-2、クロム酸塩、例えばCrO4-2、ジルコン酸塩、例えばZrO3-2、ポリリン酸塩、マンガン酸塩、硝酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、タングステン酸塩、チオ硫酸塩、セレート(cerates)などを含む。フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物を含むハロゲン化物が存在してもよい。
【0058】
多くのアニオンが、錯体化学的性質を有し、1種又はそれ以上の形、例えばオルトバナジン酸塩及びメタバナジン酸塩並びに種々のモリブデン酸塩オキシアニオン、例えばMoO4-2、Mo724-6及びMo27-2で存在し得ることが、よく認められている。オキシアニオンには、ポリオキシアニオン構造を含有する混合金属含有オキシアニオンが含まれていてもよい。例えばマンガン及びモリブデンは、混合金属オキシアニオンを形成することができる。同様に、アニオン性、カチオン性、元素状又は共有形で与えられる他の金属を、アニオン性構造の中に入れることができる。
【0059】
オキシアニオン又はオキシアニオンへの前駆体は、担体に含浸する溶液中に使用できるが、触媒の製造の状態の間及び/又は使用の間に、特定のオキシアニオン又は最初に存在する前駆体を、他の形に転換させることができる。実際に、元素をカチオン性形又は共有形に転換させることができる。多くの例において、分析技術は、存在する種を正確に同定するために充分ではないであろう。本発明は、使用の間に触媒上に最終的に存在し得る正確な種によって限定されることを意図しない。
【0060】
本発明で使用することができるプロモーターの別の種類には、マンガン成分が含まれる。多くの例において、マンガン成分は、触媒の活性、効率及び/又は安定性を増強し得る。増強された活性、効率及び/又は安定性を与えるマンガン種は、確かではなく、添加される成分又は触媒製造の間若しくは触媒として使用する間に発生するものであってよい。マンガン成分には、これらに限定するものではないが、酢酸マンガン、硫酸アンモニウムマンガン、クエン酸マンガン、ジチオン酸マンガン、シュウ酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン及びマンガン酸塩アニオン、例えば過マンガン酸塩アニオンなどが含まれる。ある種の含浸溶液中でマンガン成分を安定化するために、キレート化化合物、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその適切な塩を添加することが必要であろう。
【0061】
アニオンプロモーターの量は、広く、例えば触媒の全重量基準で約0.0005重量%〜約2重量%、好ましくは約0.001重量%〜約0.5重量%で変化させることができる。使用するとき、レニウム成分は、しばしば、触媒の全重量基準でレニウムの重量として計算して、少なくとも約180ppmwで、約2000ppmwまで、しばしば約180ppmw〜1000ppmwの量で与えられる。幾つかの態様において、レニウム成分は少なくとも約270ppmw、少なくとも約360ppmwの量で与えられる。
【0062】
銀、レニウムプロモーター及び/又は1種若しくはそれ以上のプロモーター若しくはコプロモーターが、担体上に比較的均一に分散されていることが望ましい。銀触媒材料、レニウムプロモーター及び1種又はそれ以上のプロモーターを堆積させるための好ましい手順は、(1)本発明に従った担体に、溶媒又は可溶化剤、銀錯体及び1種又はそれ以上のプロモーターからなる溶液を含浸させる工程並びに(2)その後、含浸担体を処理して、銀化合物を転化させ、そして銀及びプロモーター(単数又は複数)の、担体の外部及び内部細孔表面上への堆積を実施する工程を含む。銀及びプロモーター堆積は、一般的に、担体を含有する溶液を高温度に加熱して、担体内の液体を蒸発させ、そして内部及び外部担体表面上への銀及びプロモーターの堆積を実施することによって達成される。この加熱工程の温度は、任意の銀化合物を金属銀にまで還元するために充分に高い。担体の含浸は、これが、被覆手順(これは、一般的に、担体の内部表面上への実質的な銀堆積を行うことができない)よりも一層効率的に銀を利用するので、銀堆積のための好ましい技術である。更に、被覆された触媒は、機械的摩擦による銀損失を一層受けやすい。
【0063】
α−アルミナ担体の上に堆積された銀、プロモーター及びコプロモーターの量について分析するために、公知の方法を使用することができる。当業者は、例えば、これらの堆積された成分の任意の量を決定するために物質収支を使用することができる。その代わりに、元素状組成を決定するための任意の適切な分析技術、例えばX線蛍光(XRF)を使用して、堆積された成分の量を決定することができる。
【0064】
反応混合物中に導入される気体状塩素含有プロモーター種は、他の方法で、気相変性剤、インヒビター及び/又はエンハンサー(enhancers)とも命名される。適切な気体状塩素含有プロモーター種は、C1〜C8クロロ炭化水素を含む群から選択することができる。例示的クロロ炭化水素には、塩化エチル、塩化ビニル、二塩化エチレン、塩化メチル及びこれらの混合物が含まれる。塩化エチル及び二塩化エチレンが最も好ましい。1例として気体状塩素含有プロモーター種を使用して、エポキシ化プロセスの効率及び/又は活性を増強するための気体状塩素含有プロモーター種の能力は、この気体状塩素含有プロモーター種が、例えば具体的な塩素種、例えば原子状塩素又は塩化物イオンを、触媒上に堆積させることにより、触媒の表面を塩素化する程度に依存する。しかしながら、塩素原子を欠く炭化水素は、触媒から塩化物を剥がし、従って、気体状塩素含有プロモーター種によってもたらされる総効率増強を減じると信じられる。この現象の検討は、Berty,“エチレンオキサイドへのエチレンの酸化に於ける塩化炭化水素の抑制剤作用(Inhibitor Action of Chlorinated Hydrocarbons in the Oxidation of Ethylene to Ethylene Oxide)”、Chemical Engineering Communications、第82巻(1989)第229〜232頁及びBerty,“エチレンオキサイド合成(Ethylene Oxide Synthesis)”、Applied Industrial Catalysis、第I巻(1983)第207〜238頁に記載されている。パラフィン系化合物、例えばエタン及びプロパンは、触媒から塩化物を剥がすことで特に効果的であると信じられる。しかしながら、オレフィン、例えばエチレン又はプロピレンも、触媒から塩化物を剥がすように作用すると信じられる。これらの炭化水素の幾つかは、また、アルキレン供給物中に不純物として導入されるであろうし又は他の理由(例えば再循環流の使用)のために反応混合物中に存在するであろう。典型的には、存在するとき、反応混合物中のエタンの好ましい濃度は、0〜約2モル%である。反応混合物中の気体状塩素含有プロモーター種と非ハロゲン化、塩化物除去炭化水素との競争効果を考えると、触媒を塩化物化する(chloriding)する際の促進及び塩化物除去気相種の正味効果を表す「総触媒塩化物化有効度値」を定義することが便利である。気体状塩素含有プロモーター種の場合に、「総触媒塩化物化有効度」値は、無次元量Z*として定義することができ、下記の式(III):
【0065】
【数1】

【0066】
(式中、塩化エチル当量は、反応混合物中の気体状塩素含有プロモーター種の濃度で、実質的に同じの、反応混合物中に存在する気体状塩素含有プロモーター種の触媒塩化物化有効度を与える塩化エチルのppmvでの濃度であり、エタン当量は、反応混合物中の非塩化物含有炭化水素の濃度で、実質的に同じの、反応混合物中の非塩化物含有炭化水素の触媒塩化物化有効度を与えるモルパーセントでのエタンの濃度である)
によって表される。
【0067】
塩化エチルが、反応混合物中に存在する唯一の気体状塩素含有プロモーター種である場合、塩化エチル当量(即ち、式(III)中の分子)は、ppmvでの塩化エチル濃度である。他の気体状塩素含有プロモーター種(特に塩化ビニル、塩化メチル又は二塩化エチレン)が、単独で又は塩化エチルと一緒に使用される場合、塩化エチル当量は、ppmvでの塩化エチルの濃度+他の気体状塩素含有プロモーター種の濃度(塩化エチルに対して比較したときの、プロモーターとしてのそれらの有効度について補正される)である。非−塩化エチルプロモーターの相対有効度は、塩化エチルを他のプロモーターによって置き換え、塩化エチルによって与えられる同じレベルの触媒性能を得るために必要な濃度を決定することによって、実験的に測定することができる。更なる例示の手段として、1ppmvの塩化エチルによって与えられる触媒性能の項目で等価有効度を実現するために、反応器入口での二塩化エチレンの必要な濃度が0.5ppmvである場合、1ppmvの二塩化エチレンについての塩化エチル当量は、2ppmvの塩化エチルであろう。1ppmvの二塩化エチレン及び1ppmvの塩化エチルを有する仮想供給物について、Z*の分子中の塩化エチル当量は、3ppmvであろう。更なる例として、塩化メチルは、塩化エチルの塩化物化有効度の約10分の1を有することが見出された。従って、ppmvでの塩化メチルの与えられた濃度についての塩化エチル当量は、0.1×(ppmvでの塩化メチル濃度)である。また、或る触媒について、塩化ビニルは、塩化エチルと同じ塩化物化有効度を有することが見出された。従って、このような触媒について、ppmvでの塩化ビニルの与えられた濃度についての塩化エチル当量は、1.0×(ppmvでの塩化ビニル濃度)である。反応混合物中に2種より多い塩素含有プロモーターが存在するとき(これは、商業的エチレンエポキシ化プロセスにおいて事実である)、総塩化エチル当量は、存在するそれぞれの個々の塩素含有プロモーターについての相当する塩化エチル当量の総計である。例えば1ppmvの二塩化エチレン、1ppmvの塩化エチル及び1ppmvの塩化ビニルの仮想供給物について、Z*の分子中の塩化エチル当量は、2×1+1+1×1=4ppmvであろう。
【0068】
エタン当量(即ち式(III)中の分母)は、反応混合物中のモルパーセントでのエタンの濃度+エタンに対する脱塩素化のためのそれらの有効度について補正された、触媒から塩化物を除去する際に有効な他の炭化水素の濃度である。エチレン及びエタンの相対有効度は、特定の塩化エチル当量濃度を有し、エタンを有しない以外は同じエチレン濃度を有する同じ供給物に対して比較したとき、エチレン及びエタンの両方を含む供給物のための同じレベルの触媒性能を与える、入口塩化エチル当量濃度を決定することによって、実験的に測定することができる。更なる例示の手段として、30.0モル%のエチレン濃度及び0.30モル%のエタン濃度を含む反応混合物組成で、6.0ppmvの塩化エチル当量のレベルが、エタンを欠く以外は同様の反応混合物組成で3.0ppmvの塩化エチル当量と同じレベルの触媒性能を与えることが見出された場合、30.0モル%のエチレンについてのエタン当量は0.30モル%であろう。30.0モル%のエチレン及び0.3モル%のエタンを有する反応混合物について、エタン当量は0.6モル%であろう。他の例示として、或る触媒について、メタンが、エタンの脱塩化物化有効度の約500分の1を有することが見出された。従って、このような触媒について、メタンについてのエタン当量は、0.002×(モル%でのメタン濃度)である。30.0モル%のエチレン及び0.1モル%のエタンを有する典型的な反応混合物について、エタン当量は0.4モル%であろう。エタン及びエチレン以外の炭化水素の相対有効度は、二つの異なった供給物エタン濃度でその供給物濃度で関心のある炭化水素を含む反応混合物について同じ触媒性能を達成するために必要な、入口塩化エチル当量濃度を決定することによって実験的に測定することができる。炭化水素化合物が、非常に小さい脱塩化物化効果を有し、また低濃度で存在することが見出された場合、Z*計算に於けるエタン当量濃度へのその寄与は無視することができるであろう。
【0069】
従って、前記の関係が与えられると、反応混合物が、エチレン、塩化エチル、二塩化エチレン、塩化ビニル及びエタンを含有する場合に、総触媒塩化物化有効度値は、式(IV):
【0070】
【数2】

【0071】
(式中、ECL、EDC及びVCLは、それぞれ、反応混合物中の、塩化エチル(C25Cl)、二塩化エチレン(Cl−CH2−CH2−Cl)及び塩化ビニル(H2C=CH−Cl)のppmvでの濃度であり、C26及びC24は、それぞれ、反応混合物中の、エタン及びエチレンのモルパーセントでの濃度である)
によって定義することができる。気体状塩素含有プロモーター種及び炭化水素脱塩素化種の相対有効度を、また、エポキシ化反応が実施される条件下で測定することが重要である。Z*は、好ましくは、約20以下であるレベルで維持されるであろう。これは、最も好ましくは約15以下である。Z*は、好ましくは少なくとも約1である。
【0072】
気体状塩素含有プロモーター種は、単一種として供給することができるが、触媒と接触した際に、他の種が生成し、反応器の出口流中で混合物に至り得る。幾つかの態様において、反応混合物には、反応器からの循環供給物流が含有され得る。その結果、反応器の出口流が再循環される場合、種の混合物が反応混合物中に見出されるであろう。本明細書中に使用される用語「反応混合物」は、アルキレン、酸素及び気体状塩素含有プロモーター種並びに存在する場合反応器への再循環供給物流を含有する、反応器入口供給気体を意味する。特に、反応器への再循環供給物流は、塩化エチル又は二塩化エチレンのみがシステムに供給されるが、塩化エチル、塩化ビニル、二塩化エチレン及び/又は塩化メチルを含有するであろう。塩化エチル、塩化ビニル及び二塩化エチレンの濃度は、Z*を計算する際に考慮しなくてはならない。
【0073】
典型的には、反応器からの出口流は、とりわけ未反応のアルキレン、未反応の酸素、アルデヒド、酸性不純物、窒素、アルゴン及び二酸化炭素と共に、希薄濃度のアルキレンオキサイドを含有している。二酸化炭素は、反応副生物として製造され、また、他の不活性反応気体と共に不純物として導入されるであろう。アルキレンオキサイドは、反応器の出口流から分離し、回収することができる。反応器の出口流中の残留物質は、未反応アルキレンの損失を減少させるために、循環供給物流として反応器に戻し循環させることができる。幾つかの態様において、反応器の出口流を、二酸化炭素除去装置に通過させて、循環供給物流として反応器内に導入する前に、二酸化炭素を除去するか及び/又はその量を減少させることができる。一つの態様において、循環供給物流中の二酸化炭素濃度は、反応混合物の全組成物の、約5モル%以下、更に好ましくは約3モル%以下、なお更に好ましくは約2モル%以下である。水もまた、循環供給物流中に、好ましくは、約0モル%〜約3モル%以下である濃度で存在するであろう。
【0074】
一つの態様において、このエポキシ化反応は、一定の期間に亘って好ましい運転条件で運転され、少なくとも約250キロモルのアルキレンオキサイド/触媒の立方メートル(キロモル m-3)(ここで、触媒の体積は、反応器の充填体積として測定される)の製造をもたらす。幾つかの態様において、このエポキシ化反応は、一定の期間に亘って好ましい運転条件で運転され、少なくとも約500キロモルのアルキレンオキサイド/触媒の立方メートルの製造をもたらす。別の態様において、このエポキシ化反応は、一定の期間に亘って好ましい運転条件で運転され、少なくとも約1000キロモルのアルキレンオキサイド/触媒の立方メートルの製造をもたらす。「反応器の充填体積」は触媒床によって実際に占められている反応器の体積である。
【0075】
好ましい態様において、このエポキシ化反応は、約50000キロモル 触媒のm-3(ここで、触媒の体積は、反応器の充填体積として測定される)の累積アルキレンオキサイド製造に到達する前に、好ましくは約20000キロモル 触媒のm-3に到達する前に、更に好ましくは約10000キロモル 触媒のm-3に到達する前に、好ましい運転条件で運転される。
【0076】
好ましい運転条件はエポキシ化反応の生産性に対する効率の微分係数から決定することができる。この方法は、運転条件の他のコンポーネントを実質的に変化させないままで、第一の温度での総触媒塩化物化有効度値(Z*)の関数として、エポキシ化反応の生産性に対する効率の微分係数を決定することを含む。エポキシ化反応の生産性に対する効率の微分係数は、エポキシ化反応の効率がパーセントで表され、エポキシ化反応の生産性が、反応器出口流中のモルパーセントでのアルキレンオキサイドの濃度として表されるとき、約−1〜約−4の範囲内である。総触媒塩化物化有効度は、1種若しくはそれ以上の気体状塩素含有プロモーター種の濃度及び/又は1種若しくはそれ以上の非塩素含有炭化水素種の濃度を変更することによって変えることができ、アルキレンの濃度を変えないことが最も好ましい。(当業者は、アルキレンの濃度を変えることができるが、そうすると、計算で適切に調節する必要があることを認めるであろう)。一つの態様において、この微分係数は勾配ベース方法を使用して測定される。例えば、エポキシ化反応の効率及び関連する生産性は、第一の総触媒塩化物化有効度値で測定されて、第一の温度での第一の効率値及び第一の生産性値を得る。第二の総触媒塩化物化有効度値で、エポキシ化反応は、第一の温度での第二の効率値及び第二の生産性値を与える。本発明の態様に従って、好ましい運転条件は、勾配によって特徴づけられ、ここで、この勾配は、第一の生産性値と第二の生産性値との間の差によって割った、第一の効率値と第二の効率値との間の差から得られる。この勾配は、効率がパーセントで表され、生産性が、反応器出口流中に含有されているアルキレンオキサイドのモルパーセントとして表されるとき、約−1〜約−4の間の値である。幾つかの態様において、好ましい運転条件は、第二の効率値及びこの勾配から決定することができる対応する第二の生産性値によって特徴づけられる。例えば、エポキシ化反応についての第一の生産性値及び対応する第一の効率値が、第一の温度で既知である場合、この反応は、効率がパーセントで表され、生産性が、反応器出口流中に含有されているアルキレンオキサイドのモルパーセントとして表されるとき、勾配が約−1〜約−4の間であるまで、総触媒塩化物化有効度を変化させることによって、第一の温度での第二の効率値及び第二の生産性値によって特徴づけられる好ましい運転条件で運転することができる。
【0077】
図1は、本発明の幾つかの態様に従った、エポキシ化反応の好ましい運転条件の決定方法のフローチャート10である。工程12において、第一の温度でのエポキシ化反応の効率及び生産性の第一のデータの組が作られる。第一のデータの組には、運転条件の他のコンポーネントを実質的に変化しないままで、第一の温度での少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値に関連する効率値及び対応する生産性値が含まれる。少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値は、3個の異なった総触媒塩化物化有効度値に対応し、1種若しくはそれ以上の気体状塩素含有プロモーター種の濃度及び/又は1種若しくはそれ以上の非塩素含有炭化水素種の濃度を変更することによって得られ、アルキレンの濃度を変えないことが最も好ましい。総触媒塩化物化有効度が、1種若しくはそれ以上の気体状塩素含有プロモーター種の入口濃度及び/又は1種若しくはそれ以上の飽和非塩素含有炭化水素種の入口濃度を変更することによって変えられることが好ましい。総触媒塩化物化有効度が、気体状塩素含有プロモーター種の入口濃度を変更することによって、例えば、反応器へのその供給速度を変更することによって変更されることが最も好ましい。Z*が、総触媒塩化物化有効度の尺度として使用されるとき、少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値は約1〜30の間である。少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値は、低い値、1個又はそれ以上の中間の値及び高い値を含むことができ、これらの値は、温度と共に並びに一般的により高い温度に関連する、より高い総触媒塩化物化有効度値と共に変化するであろう。また、1個又はそれ以上の中間値の少なくとも1個は、低い及び高い総触媒塩化物化有効度値で得られる効率に対して比較したとき、最高の効率に関連することが望ましい。最高の効率が、これらの総触媒塩化物化有効度値、即ち、低い値及び/又は高い値の一方又は両方で得られる場合、それぞれこの低い値及び/又は高い値よりもなお低い及び/又は高い総触媒塩化物化有効度値で、エポキシ化反応の効率及び生産性での追加のデータを作ることが好ましい。一つの態様において、約240℃の反応器温度で、Z*の低い値は約1〜約2であり、Z*の1個又はそれ以上の中間値は約2〜約3であり、Z*の高い値は約3〜約4である。
【0078】
第一の温度は、この温度が、前記のようなエポキシ化反応の温度範囲内に入るように選択される。幾つかの態様において、第一の温度は、好ましくは少なくとも約200℃、更に好ましくは少なくとも約210℃、最も好ましくは少なくとも約220℃である。第一の温度は、約300℃以下、更に好ましくは約290℃以下、最も好ましくは約280℃以下である。典型的には、第一の温度での総触媒塩化物化有効度値の選択された範囲に亘るエポキシ化反応の生産性は、出口流中のモル濃度として表すと、約1モル%よりも高いアルキレンオキサイドである。或る態様において、第一の温度での総触媒塩化物化有効度値の選択された範囲に亘るエポキシ化反応の生産性は、約1モル%〜約4モル%の範囲内のアルキレンオキサイドである。幾つかの態様において、第一の温度での総触媒塩化物化有効度値の選択された範囲に亘るエポキシ化反応の最高効率は少なくとも約85%である。或る態様において、第一の温度での総触媒塩化物化有効度値の選択された範囲に亘るエポキシ化反応の最高効率は約85%〜約95%の範囲内である。
【0079】
第一の温度での最高効率値は、工程14で、第一のデータの組から決定され、総触媒塩化物化有効度を変えることによって第一の温度で達成可能な最高効率に対応する。幾つかの態様において、第一の温度での最高効率値を決定することは、プロットを作ること若しくはプログラムを使用すること若しくは数学式を使用すること又はこれらの任意の組合せを含む。当業者に公知であるように、第一のデータの組のデータ点の数を増加させることによって、最高効率値を決定する品質を改良することができる。認められるように、データ点の数を増加させることは、第一の温度での3個より多い総触媒塩化物化有効度値でデータを作ること及び/又は第一の温度での少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値の少なくとも幾つかで測定を繰り返すことを含む。
【0080】
工程16で、最高効率値よりも低い効率値の範囲が選択される。本発明の態様に従って、効率値の範囲は、好ましい運転条件に対応し、更に、反応が、第一の温度で最高効率で実施されるとき達成可能なものよりも高いエポキシ化反応の生産性によって特徴づけられる。幾つかの態様において、効率値の範囲は、最高効率値で得られるものよりも少なくとも約1%高い、即ち最高効率値に対応する反応器出口流中のアルキレンオキサイドの濃度の少なくとも約1.01倍の生産性値によって特徴づけられる。或る態様において、効率値の範囲は、最高効率値で得られるものよりも少なくとも約5%高い、即ち、最高効率値に対応する反応器出口流中のアルキレンオキサイドの濃度の少なくとも約1.05倍の生産性値によって特徴づけられる。一つの態様において、効率値の範囲は、最高効率値で得られるものよりも少なくとも約10%高い、即ち、最高効率値に対応する反応器出口流中のアルキレンオキサイドの濃度の少なくとも約1.1倍の生産性値によって特徴づけられる。
【0081】
本発明の一態様に従ったエポキシ化反応の好ましい運転条件の決定方法のフローチャート20が図2に示される。フローチャート20は、フローチャート10を、好ましい運転条件を決定するために使用することができる一つの特定の方法を示している。フローチャート20には、フローチャート10を参照して前記されたような工程12が含まれている。第一の温度でのエポキシ化反応の効率及び生産性の第一のデータの組が、工程12で、少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値で作られる。工程22で、第一のプロットの上に第一のデータの組をプロットすることによって、第一の最大値を有する第一の曲線が作られる。いくつかの態様において、第一のデータの組は数学的に一般化して第一の曲線を生じさせることができる。一つの態様において、第一の曲線は、第一のデータの組を二次多項式関数と適合させて、適合曲線を形成させることによって作ることができ、この適合曲線は下向きに開いた放物線の形を有する。一つの態様において、第一のプロットの横座標(X軸)は、少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値でエポキシ化反応の生産性に対応し、第一のプロットの縦座標(Y軸)は、少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値でエポキシ化反応の効率に対応している。第一のプロットの縦座標がエポキシ化反応の効率に対応している態様において、縦軸に沿った第一の最大値の位置を読み取ることによって、最高効率値(これは、第一の温度での総触媒塩化物化有効度を変えることによって達成可能な最高効率である)が得られ、横軸に沿った第一の最大値の位置を読み取ることによって、エポキシ化反応の対応する生産性になる。
【0082】
工程24で、第一の曲線上の第一の領域が選択される。本発明の態様に従って、第一の領域は、第一の温度での好ましい運転条件に対応し、第一のプロットの横座標がエポキシ化反応の生産性であるとき、第一の最大値の右に位置している。第一の領域は、第一の最大値で得られる効率よりも低い効率値の範囲によって特徴づけられる。認められるように、第一の領域でエポキシ化反応を運転することに起因する効率における損失は、生産性における利得によって相殺される。
【0083】
図3は、本発明の態様に従って、フローチャート20に示されるような方法を使用して、第一の温度で、効率及び生産性の第一のデータの組をプロットすることによって得られる、第一のプロット30の例示である。第一のデータの組は、それぞれ、30及び0.5モル%の固定された入口エチレン及びエタン濃度目標値で、2.5、3.1、3.7及び4.4の総触媒塩化物化有効度値で並びに245℃の温度で得られ、プロットされて、第一のプロット上で第一の最大値36を有する第一の曲線34を作る。第一の最大値36は、それぞれ数字38及び40によって参照されるような対応する効率及び生産性値を有する。この態様において、数字38は、245℃で得られる最高効率値を指し、数字40は、対応する生産性値を指す。第一のプロット30の横座標がエポキシ化反応の生産性であるとき、第一の最大値36の右の方に位置している第一の領域42が選択される。一つの態様において、第一の領域42は、第一の最大値36に対応する生産性40よりも少なくとも約1%大きい(生産性40の少なくとも1.01倍の)生産性を有する。幾つかの態様において、第一の領域42は、第一の最大値36に対応する生産性40よりも少なくとも約5%大きい(生産性40の少なくとも1.05倍の)生産性を有する。或る態様において、第一の領域42は、第一の最大値36に対応する生産性40よりも少なくとも約10%大きい(生産性40の少なくとも1.10倍の)生産性を有する。認められるように、第一の領域42は、エポキシ化反応の効率がパーセントで表され、エポキシ化反応の生産性が、反応器出口流中に存在しているモルパーセントでのアルキレンオキサイドの濃度として表されるとき、勾配が約−1〜約−4の間である、プロット上の領域に対応する。
【0084】
本発明の態様に従ったフローチャート50が、図4中に示されている。フローチャート50には、図2のフローチャート20を参照して前記されたような工程12及び22が含まれている。工程52において、エポキシ化反応の効率及び生産性の第二のデータの組が、第二の温度で作られる。第二のデータの組には、運転条件の他のコンポーネントを実質的に変化させないままで、第二の温度での少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値に関連する効率値及び対応する生産性値が含まれる。第二の温度は、第一の温度よりも低いか又は高くてよい。第二の温度に達するために第一の温度からの追加の上昇又は下降を有することが望ましい。幾つかの態様において、第二の温度は、約1セルシウス度よりも高く第一の温度から異なっている。或る態様において、第二の温度は、約3セルシウス度よりも高く第一の温度から異なっている。一つの態様において、第二の温度は、約5セルシウス度よりも多くほど第一の温度から異なっている。
【0085】
幾つかの態様において、工程52において、第二データの組を作るために使用される少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値は、工程12において第一のデータの組を作るために使用されたのと同じものであってよい。或る態様において、工程52において使用される少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値は、第一のデータの組を作るために使用されたものとは異なっていてよい。工程52において使用される少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値は、工程12に関して前記したように、低い値、1個又はそれ以上の中間の値及び高い値を含む。工程52において使用される少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値は、前記工程12に関して記載したようにして得られる。
【0086】
工程54において、第一のプロットの上に第二のデータの組をプロットすることによって、第二の曲線が作られる。この第二の曲線は、第二の最大値(ここで、効率は第二の温度で最大値を示す)によって特徴づけられる。第二の温度が第一の温度よりも高い態様において、第二の曲線は、典型的には、第一の曲線の右下の方に、即ち、より大きい生産性及びより低い効率の方にシフトするであろう。第二の温度が第一の温度よりも低い態様において、第二の曲線は、第一の曲線の左上の方にシフトするであろう。
【0087】
工程56において、第一の曲線及び第二の曲線に亘って、接線を引くことができる。この接線は、第一の最大値及び第二の最大値の右の方に存在する点で、第一の曲線及び第二の曲線と接している。本発明の態様に従って、接線が上記のように構成されているとき、接線の勾配は、効率をパーセントで表し、生産性を、反応器出口流中のアルキレンオキサイドのモルパーセントとして表すとき、約−1〜約−4の範囲内であることが見出される。得られる接線の勾配は、温度、反応器条件及び/又は触媒齢のような要因に依存して、この範囲内で変わることができる。
【0088】
第二の領域は、工程58で選択することができる。第二の領域は、接線上に存在し、本発明の態様に従った好ましい運転条件に対応する。認められるように、望ましい生産性をもたらす好ましい運転条件は、第一の曲線及び第二の曲線に亘って引かれる接線から決定することができる。一つの態様において、所望の生産性は、第一の温度で第一の曲線との接点及び第二の温度で第二の曲線との接点の間に存在する接線上の点で達成される。所望の生産性が、第一の温度での第一の曲線についての接点での生産性及び第二の温度での第二の曲線についての接点での生産性の両方よりも高い又は低い態様において、好ましい運転条件を得るために、接線を外挿することができる。一つの態様において、好ましい運転条件に対応する温度(T3)及び総触媒塩化物化有効度値(Z3*)は、下記に示す式(V及びVI):
【0089】
【数3】

【0090】
(式中、T1、T2及びT3は、それぞれ、第一の温度、第二の温度及び第三の温度であり、CAO1及びCAO2は、それぞれ、接線がT1及びT2で応答曲線に接している点での、出口流中のアルキレンオキサイドの濃度であり、CAO3は、出口流中のモルパーセントでの生産性の所望のレベルであり、Z1*及びZ2*は、それぞれ、接線がT1及びT2で応答曲線に接している点での総触媒塩化物化有効度値であり、必要な場合、それぞれ、T1及びT2で総触媒塩化物化有効度値に対する出口アルキレンオキサイド濃度のプロットから内挿又は外挿によって決定することができ、そしてZ3*は、第三の温度で好ましい運転条件に対応する総触媒塩化物化有効度値である)
を使用して決定することができる。
【0091】
一つの態様において、フローチャート50の工程12〜58は、関連する効率及び生産性値で2個より多い温度で2個より多い曲線を得るために、繰り返すことができる。接線若しくは一連の接線又は2個より多い曲線に亘って引かれた滑らかに変化する椄曲線は、それぞれの温度で前記したものと同様の方法で好ましい運転条件をもたらすことができる。
【0092】
図5は、本発明の態様に従って、フローチャート50を使用して得られる、第一のデータの組及び第二のデータの組のプロット60の例示である。第一のデータの組は、図3を参照して記載されるように、プロットして、第一の最大値36を有する第一の曲線34を得ることができる。対応する効率及び生産性値は、それぞれ数字38及び40によって参照される。それぞれ30及び0.5モル%の固定された入口エチレン及びエタン濃度目標値で、3.6、4.4及び5.0の総触媒塩化物化有効度値を有する250℃での第二のデータの組のプロットは、第二の最大値66を有する第二の曲線64を提供し、対応する効率及び生産性値は、数字68及び70によって参照される。接線72が、第一の曲線34及び第二の曲線64に亘って引かれる。接線72は、図5に示されるように、数字74及び76によって印をつけられた点で、第一の曲線34及び第二の曲線64に接している。点74及び76は、それぞれ、第一の曲線34及び第二の曲線64の第一の最大値36及び第二の最大値66の右の方に存在している。本発明の態様に従って、第一の温度での好ましい運転条件は、74によって印をつけられたような接線72に接している第一の曲線上の領域に対応し、第二の温度について、これは点76に対応している。
【0093】
本発明の態様に従った方法のフローチャート80が図6中に示されている。フローチャート80には、図4のフローチャート50中に示されるような工程12及び52が含まれている。工程12において、第一の温度での少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値でエポキシ化反応の効率及び生産性の第一のデータの組が作られる。工程52において、第二の温度での少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値でエポキシ化反応の効率及び生産性の第二のデータの組が作られる。
【0094】
工程82において、第一のデータの組及び第二のデータの組をプロットすることによって、等高線プロットが作られる。一つの態様において、第一のデータの組及び第二のデータの組は、総触媒塩化物化有効度値及び温度の関数としてプロットされて、少なくとも1個の第三の曲線及び少なくとも1個の第四の曲線を得る。少なくとも1個の第三の曲線は、エポキシ化反応の一定効率の等高線に対応し、少なくとも1個の第四の曲線は、エポキシ化反応の一定生産性の等高線に対応する。
【0095】
等高線プロットの第三の領域が、工程84で選択される。第三の領域は、好ましい運転条件に対応する。一つの態様において、第三の領域は、生産性の所望のレベルに対応する少なくとも1個の第四の曲線上に存在し、更に、最高効率を有する少なくとも1個の第三の曲線によって特徴づけられ、また、関心のある少なくとも1個の第四の曲線に合致する。
【0096】
幾つかの態様において、工程12又は52は、第三の温度で繰り返され、少なくとも3個の温度でデータをプロットすることによって、等高線プロットが作られる。認められるように、3個より高い温度でデータを作ることによって、3個の温度で作られる等高線プロットとの比較でより良い好ましい運転条件の決定を得ることができる。
【0097】
図7は、フローチャート80の方法に従って得られた第一のデータの組、第二のデータの組及び第三のデータの組の等高線プロット90である。この態様において、等高線プロット90の横座標は温度であり、縦座標は総触媒塩化物化有効度値である。第一のデータの組、第二のデータの組及び第三のデータの組から、3個の温度での効率データ及び少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値を、等高線プロット90の上にプロットして、少なくとも1個の第三の曲線98を得ることができる。第一のデータの組、第二のデータの組及び第三のデータの組からの生産性値をプロットして、少なくとも1個の第四の曲線100を得ることができる。好ましい運転条件は、少なくとも1個の第四の曲線100を選択し、少なくとも1個の第四の曲線100上の少なくとも1個の第三の曲線98の交点(これは、その生産性での最高効率を与える)を選択することによって、決定することができる。一つの態様において、好ましい運転条件に対応する温度及び総触媒塩化物化有効度値を、等高線プロット90の軸から読み取ることができる。図7の例示態様において、1.6%EOの所望の生産性について、約87%の最高効率を、246.5℃の温度及び約4.3Z*の総触媒塩化物化有効度値で得ることができる。認められるように、好ましい運転条件102での87%の効率は、約3.7Z*の総触媒塩化物化有効度値で246.5℃の温度(ここで生産性は約1.42%EOである)で得ることができる87.4%の最高効率よりも低い。
【0098】
図8は本発明の態様に従ったシステム110の図解線図である。システム110は、反応器112及び制御器114を含む。図8の例示態様において、反応器112は、その中に配置された触媒床を有する管型容器である。アルキレン供給物116、酸素供給物118及び気体状塩素含有プロモーター種供給物120が、一緒にされ、反応混合物122として反応器112の中に導入される。数字124及び126は、それぞれ、アルキレン供給物116のための流量計及び気体状塩素含有プロモーター種供給物120のための流量計を示す。アルキレンオキサイド生成物プラス副生物及び/又は不純物(例えばCO2、H2O及び飽和炭化水素)並びに未反応オレフィン及び酸素を含有する反応器出口流128を、反応器112から取り出すことができる。所望により、再循環供給物流130を、反応器112に供給して、反応器出口流128中の未反応オレフィン及び酸素を循環させることができる。循環供給物流130は、流量計134及び循環流量制御器136を含むことができる。循環流量制御器136は、流量計134から循環流量データを受け取り、制御バルブ138を操作して、循環供給物流130の流量を制御することができる。
【0099】
反応器112の温度は、冷却媒システム、例えば沸騰水冷却システムの手段によって制御することができる。冷却媒圧力制御器140は、圧力計142から冷却媒データを受け取り、冷却媒制御バルブ144を調節して、冷却媒圧力を変更し、温度変更を実施する。反応器温度制御器146は、反応器サーモカップルから温度信号を受け取り、冷却媒圧力制御器140の設定点をリセットする出力を与える。
【0100】
制御器114は、反応器出口流濃度分析器148、反応混合物濃度分析器150、アルキレン供給物流量計124、アルキレン供給物流量制御器152、アルキレン供給物分析器制御器154、気体状塩素含有プロモーター種流量制御器156及び正味生成物流量計158からのインプットを受け取ることができる。制御器114は、好ましくはコンピューター化制御システム内に設けられ、また、CPU及びメモリー並びに最終的にそれぞれ制御バルブ160(気体状塩素含有プロモーター種)及び144(冷却媒)を調節するために使用されるアウトプットを含む。制御器114は、アルキレン供給物流116中のアルキレンの流量基準のアルキレンオキサイドの収率、正味生成物流132中の正味生成物の流量及び反応器出口流128中のアルキレンオキサイドの濃度を決定することもできる。
【0101】
制御器114は、分析器150から、反応混合物122中の気体状塩素含有プロモーター種、例えば塩化エチル、塩化ビニル及び二塩化エチレンについての濃度データを、そして反応混合物122中のエチレン、エタン及び任意の他の非塩素化炭化水素の濃度データを受け取ることもできる。次いで、これらの濃度データは、総触媒塩化物化有効度値(例えばZ*)を計算するために使用される。制御器114は、反応器出口流128中のアルキレンオキサイドのモルパーセント及び/又はアルキレンオキサイドの収率のための使用者入力設定点を受け取ることもできる。反応器出口流濃度分析器148からの使用者入力設定点及びデータに基づいて、制御器114は、反応器出口流128中のアルキレンオキサイドの濃度及び/又はアルキレンオキサイドの収率が、好ましい運転条件内にあるかどうかを決定することができる。アルキレンオキサイド濃度及び/又は収率が、好ましい運転条件の外側に落ちているとき、制御器114は、反応器温度又は反応混合物122中の気体状塩素含有プロモーター種の流量を(Z*を変更するように)調節して、望まれるアルキレンオキサイド濃度又は収率を得ることができる。
【0102】
図8に示されるように、アルキレン供給物分析器制御器154は、反応混合物122中のアルキレン濃度を調節するために設けられることができる。例示される実施例において、アルキレン供給物分析器制御器154は、反応混合物122中のアルキレンの量を示す、反応混合物濃度分析器150からの組成データを受け取る。アルキレン供給物分析器制御器154(これは、反応混合物122中のアルキレン濃度のための使用者入力設定点を有することができる)は、次いで、アルキレン供給物流量計124から流量データを受け取り、新しいアルキレン供給物の流量を操作するアルキレン供給物流量制御器156の設定点をリセットする。例示した制御スキームは、単に例示であり、本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0103】
ここで使用した方法は、制御器114によって使用するための、コンピュータ読み取り可能な媒体、例えば磁気ディスク又はコンピュータハードドライブ上に記憶される、一組のコンピュータ読み取り可能インストラクション中に具体化することができる。制御器114は、多数の手段で実施できるが、コンピュータ制御システムの使用が好ましい。
【0104】
上記の制御器114の設定点は、多数の手段で決定することができる。これらは、外部源泉からの、例えば運転データの手動解析からの制御器114へのインプットであってよい。これらは、制御器114自体によって計算することもできる。例えばコンピュータ制御システムが使用される場合、コンピュータ制御システムを、受け取ったインプットを解析し、このデータを使用して、反応の生産性に対する反応の効率の勾配を計算し、この勾配情報を使用して、好ましい運転条件で運転するための所望の総触媒塩化物化有効度値又は温度を計算するようにプログラムすることができる。所望により、総触媒塩化物化有効度を定期的に変え、前記のようにして得られるデータを解析するように、制御器114をプログラムすることさえできる。制御器の手段によって本発明を実施する多数の他の方法が、当業者に明らかであろう。
【0105】
本発明のエポキシ化プロセスによって製造されるアルキレンオキサイドを、典型的には、更なる下流の生成物、例えば1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カルボネート及びアルカノールアミンを得るために処理することができる。本発明は、改良されたエポキシ化方法を提供するので、この提供された改良は、これらの下流のプロセス及び/又は生成物への改良を提供するように進歩するであろう。従って、1,2−ジオール、1,2−カルボネート、1,2−ジオールエーテル及びアルカノールアミンの製造のための改良方法が、また、本発明において提供される。
【0106】
1,2−ジオール又は1,2−ジオールエーテルへのアルキレンオキサイドの転化は、例えば所望のアルキレンオキサイドを水と、適切には酸性又は塩基性触媒の存在下で反応させることからなっていてよい。例えば1,2−ジオール又は1,2−ジオールエーテルの好ましい製造のために、アルキレンオキサイドを、10倍モル過剰の水と、液相反応中で、酸触媒、例えば全反応混合物基準で0.5〜1.0重量%の硫酸の存在下で、50〜70℃で1バール絶対で又は気相反応中で、130〜240℃及び20〜40バール(絶対)で、好ましくは触媒の不存在下で反応させることができる。水の比率がより低い場合、反応混合物中の1,2−ジオールエーテルの比率は増加されるであろう。そうして製造された1,2−ジオールエーテルは、ジエーテル、トリエーテル、テトラエーテル又は他のマルチエーテルを含むであろう。その代わりに、1,2−ジオールエーテルは、アルキレンオキサイドをアルコール、例えばメタノール若しくはエタノールによって転化させることにより又は水の少なくとも一部をアルコールで置き換えることにより製造することができる。得られる1,2−ジオール及びジオールエーテルは、広範囲の種々の最終使用応用において、食品、飲料、たばこ、化粧品、熱可塑性ポリマー、硬化性樹脂システム、洗剤、熱移動システム等の工業において使用することができる。
【0107】
本発明の方法を経て製造されたアルキレンオキサイドのアルカノールアミンへの転化は、例えばアルキレンオキサイドをアンモニアと反応させることからなる。無水アンモニア又はアンモニア水溶液を使用することができるが、無水アンモニアがモノアルカノールアミンの製造に有利であり、同じものが好ましいとき使用することができる。得られるアルカノールアミンは、例えば天然ガスの処理において使用することができる。オレフィンオキサイドは、オレフィンオキサイドを二酸化炭素と反応させることによって、対応する1,2−カルボネートに転化させることができる。所望により、続いて、1,2−カルボナートを水又はアルコールと反応させて1,2−ジオールを生成させることにより、1,2−ジオールを製造することができる。応用可能な方法について、米国特許第6,080,897号明細書(参照して本明細書に含める)を参照されたい。
【0108】
エチレングリコールは、2個の顕著な用途において、即ちポリエステル繊維、フィルム及び容器において使用するためのポリ(エチレンテレフタレート)のための原材料として又は自動車不凍液として使用される。ジ−、トリ−及びテトラエチレングリコールはエチレングリコールの共生成物である。
【0109】
更なる詳述無しに、当業者は、本明細書の説明を使用して、本発明をその全範囲まで利用できることが信じられる。下記の実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明を実施する際の当業者への追加の案内を提供するために含められる。提供された実施例は、本件特許出願の教示に寄与する作業の単なる代表である。従って、これらの実施例は、絶対に、付属される特許請求の範囲中に定義されたような本発明を限定することを意図しない。
【実施例】
【0110】
例1
本例は、フローチャート50によって記載され、プロット60によって示されたようなプロット方法を使用する、好ましい運転条件の決定を示す。
【0111】
特許公開第WO2007/123932号明細書及び米国特許公開第2007−0111886A1号明細書(参照して本明細書に含める)中に記載されているような一般的な手順を使用して、α−アルミナ担体を製造する。特許公開第WO2007/123932号明細書に記載されているような一般的な手順を使用して、上記のα−アルミナ担体上に、レニウムを含有する銀触媒を製造する。この銀触媒のX線蛍光(XRF)分析は、これが、約34.8重量%の銀、約572ppmwのセシウム、約60ppmwの全ナトリウム、約405ppmwのレニウム、約115ppmwの硫黄及び約115ppmwのマンガンを含有していることを示す。触媒の製造の間にプロモーターとしてリチウムも添加するが、これはXRFを使用して分析されなかった。この銀触媒のサンプル80ccを、逆混合型オートクレーブ反応器内で、30モル%のエチレン、3モル%の二酸化炭素、8モル%の酸素、0.5モル%のエタン、1.5〜4ppmwの範囲内の塩化エチレンの濃度を有し、残りが窒素である入口気体組成物で作用させる。反応器圧力は2000kPa絶対(275psig)である。反応器を始動し、230℃の温度で1日間運転し、次いで240℃、245℃及び250℃の温度で運転する。合計反応器入口供給気体流量は、窒素として測定して10.67標準リットル/分(22.6scfh)である。
【0112】
2.0、2.5、3.0及び3.5ppmvの入口塩化エチル濃度(2.5、3.1、3.7及び4.4のZ*)で反応器を運転することによって、245℃の温度での効率及び生産性の第一のデータの組を得、このデータを表1に示す。生産性は、反応器の出口流中のエチレンオキサイドのモルパーセントによって定義され、%EOとして表される。2.9、3.5及び4.0ppmvの入口塩化エチル濃度(3.6.4.4及び5.0のZ*)で反応器を運転することによって、250℃の温度での効率及び生産性の第二のデータの組を得、この結果を表1に示す。生産性に対する効率の第一のプロットを、図5に示されるようにプロットして、それぞれ、第一の曲線34及び第二の曲線64を得る。記号は、実際の実験データを表し、点曲線は適合させた曲線に対応する。接線72が、第一の曲線34及び第二の曲線64に亘って引かれ、245℃及び250℃での好ましい運転条件は、それぞれ、接線72上の点74及び76に対応する。
【0113】
【表1】

【0114】
245℃の温度で、好ましい運転条件74は、85.7%効率で2.00%EOを製造し、対応する総触媒塩化物化有効度値は、245℃で得られる%EO対Z*応答データの線形回帰によって、3.43Z*であると決定され、250℃の温度で、好ましい運転条件76は、85.3%効率で2.22%EOを製造し、対応する総触媒塩化物化有効度値は、同様に、250℃で得られる%EO対Z*応答データの線形回帰によって、4.07Z*であると決定される。表2は、この反応を、好ましい運転条件(図5の74、76)に対して最高効率(図5の36、66)で運転するときの比較を示す。表2から判るように、好ましい運転条件は、最高効率で運転した反応に対して比較したとき、より高い生産性をもたらす。245℃で3.1の効率最高化Z*で達成される1.90%EOの等価生産性は、式(V)及び(VI)に従った好ましい運転条件のために、85.9%の接線上の得られる効率で、242.7℃のより低い温度及び3.1Z*で達成することができる。
【0115】
【表2】

【0116】
例2
本例は、少なくとも約250キロモル/m3触媒の累積アルキレンオキサイド製造のための好ましい運転条件でエポキシ化反応を実施することを示す。
【0117】
レニウムを含有する銀触媒を、例1に記載したような手順を使用して、担体上に製造する。この触媒のレニウム含有量は、X線蛍光により分析されたとき、約368ppmwである。この触媒のサンプルを、管型反応器に装入する。この管型反応器は、二酸化炭素を含有する反応器出口流の一部が、エチレンオキサイド吸収器を通過した後に循環され、目標入口供給物を達成するために十分な新しい供給物気体と一緒にされ、反応器の中に再導入されるように構成されている。反応器を始動し、エポキシ化反応を、プロセス条件の範囲下で、第一の50日間運転する。
【0118】
35モル%のエチレン、8.5モル%の酸素、0.9モル%の二酸化炭素、0.6モル%のエタン、残りの下記に示すような気体状塩素含有プロモーター種及び窒素の入口気体組成を維持することによって、約222℃の温度、2140kPa絶対(295psig)の反応器圧力及び約5400/時の時間基準の気体空間速度で、第51日と第61日との間で運転する。
【0119】
第一の運転条件での運転に対応する第51日及び第52日で、入口での塩化エチル濃度を、反応器出口から循環される流中に含有されている他の気体状塩素含有プロモーター種を考慮に入れた後の総触媒塩化物化有効度値Z*が、約2.7であるように調節する。第52日に、反応器の出口流中のエチレンオキサイドの平均モルパーセント、即ち生産性は2.15モル%であり、平均効率は、86.8%である。第53日に、入口塩化エチル濃度を、2.24モル%の生産性及び86.5%の平均効率で、3.0のZ*値を得るように上昇させる。第52日と第53日との間の一定の運転温度で総触媒塩化物化有効度値の関数としての、エポキシ化反応の生産性(モルパーセントで表される)に対する効率(パーセントで表される)の微分係数は約−3.3であり、好ましい運転条件に対応して決定される。
【0120】
第53日から第61日まで、温度を、3.0のZ*値で222℃に維持する。この期間に亘って、累積エチレンオキサイド製造は、2.24モル%EOである出口流中のエチレンオキサイドの平均モルパーセント及び86.4%である平均効率で、約1160キロモル/立方メートル触媒である。この運転を合計170日間続け、第170日での運転温度は240℃である。
【0121】
例3
例2の使用した触媒のサンプル80ccを、触媒床の出口区画から得る。エポキシ化反応を、この使用した触媒で、逆混合Berty型オートクレーブ反応器内で、30.0モル%のエチレン、8.0モル%の酸素、2.0モル%の二酸化炭素、0.5モル%のエタン、2.0ppmwの塩化エチル及び残りの窒素の入口気体組成物で始動する。反応器圧力は2000kPa絶対(275psig)で、温度は230℃である。全反応器入口供給気体流量は、窒素として測定して640標準リットル/時である。230℃で4日間運転した後、温度は240℃まで上昇する。
【0122】
240℃の温度での効率及び生産性についての第一のデータの組を、約3.1〜4.3の範囲内のZ*値を得るための0.3ppmvの工程での入口塩化エチル濃度を変えることによって得て、表3に示す。生産性に対する効率の第一のプロット170をプロットし、図9に示す。
【0123】
【表3】

【0124】
第一のデータの組を、放物線として数学的に適合させて、240℃の温度で1.31モル%EOの対応する生産性で、85.9%の最高効率(点182)を予測する第一の曲線180を得る。対応するZ*値は、点182で3.58である。240℃での好ましい運転条件は、点184に対応し、ここで、生産性に対する効率の微分係数又は第一の曲線の勾配は約−3.0である。点184で、効率は85.8であり、生産性は1.38モル%EOであり、対応するZ*値は3.81である。この例は、最高効率で運転することとは対照的に、好ましい運転条件で反応器を運転することが、与えられた温度について、より高い生産性になることを示している。
【0125】
本発明の或る構成のみを例示し、本明細書中に記載したが、多くの修正及び変更が当業者に思い浮かべられるであろう。従って、添付される特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内に入る全てのこのような修正及び変更をカバーすることを意図することが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレン、酸素及び気体状塩素含有プロモーター種を含んでなる反応混合物を、銀及び促進量のレニウムを含む担持触媒上を通過させて、第一の運転条件でエポキシ化反応を受けさせて、反応器内でアルキレンオキサイドを生成させ;そしてそれに続いて、前記反応器内で好ましい運転条件下でエポキシ化反応を実施することを含んでなるアルキレンオキサイドの製造方法であって、前記好ましい運転条件がアルキレンオキサイドへのエポキシ化反応の効率(ここで、この効率は好ましい運転条件に対応する運転温度で達成可能な最高効率よりも低い)によって特徴づけられる方法。
【請求項2】
前記好ましい運転条件が、前記エポキシ化反応の生産性によって特徴づけられ、前記好ましい運転条件でのエポキシ化反応の生産性が、その運転温度で達成可能な最高効率で得られるものよりも高い請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記好ましい運転条件が、このエポキシ化反応が、更に、好ましい運転条件に対応する最高効率及び運転温度で実施されるときよりも高い、総触媒塩化物化有効度値によって特徴づけられる、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記好ましい運転条件でエポキシ化反応を続いて実施することが、前記第一の運転条件の温度又は前記第一の運転条件の総触媒塩化物化有効度値の少なくとも一方を変えることからなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
好ましい運転条件を決定することを更に含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルキレンオキサイドが、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドからなる群から選択される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記気体状塩素含有プロモーター種がC1〜C8クロロ炭化水素及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が約180ppmw〜約2000ppmwの範囲内のレニウムを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が少なくとも1種のコプロモーターを更に含み、前記コプロモーターが、ハロゲン化物及び/又は周期表の第3b族〜第7b族及び第3a族〜第7a族からの5〜83の原子番号を有する、酸素以外の元素のオキシアニオンを更に含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒が第IA族金属、第IIA族金属、リン、ホウ素、マンガン、硫黄、モリブデン、タングステン、クロム、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、タリウム、トリウム、タンタル、ニオブ、ガリウム、ゲルマニウム及びこれらの任意の混合物からなる群から選択された少なくとも1種のコプロモーターを更に含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器が少なくとも250キロモル/m3触媒の累積アルキレンオキサイド製造のための好ましい運転条件で運転される請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記請求項のいずれか1項に従ってアルキレンオキサイドを製造するシステムであって、このシステムが反応器及び制御器を含み、前記制御器が好ましい運転条件を決定するように作動可能であり、そして前記反応器が前記好ましい運転条件で運転されるシステム。
【請求項13】
銀及び促進量のレニウムを含む担持触媒の存在下の、気体状塩素含有プロモーター種の存在下でのエポキシ化反応の好ましい運転条件の決定方法であって、固定された運転温度での、総触媒塩化物化有効度値の関数としての、前記エポキシ化反応の生産性に対する効率の微分係数を決定することを含んでなり、前記好ましい運転条件がアルキレンオキサイドを生成するエポキシ化反応の効率がパーセントで表され、エポキシ化反応の生産性が、反応器出口流中のアルキレンオキサイドの濃度として、モルパーセントで表すと、約−1〜約−4の範囲内である微分係数によって特徴づけられる方法。
【請求項14】
銀及び促進量のレニウムを含む触媒の存在下の、気体状塩素含有プロモーター種の存在下でのエポキシ化反応の好ましい運転条件の決定方法であって、
a)第一の温度で、少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値での、エポキシ化反応の効率及び生産性での第一のデータの組を作り、
b)第一のデータの組から第一の温度での最高効率値を決定し、そして
c)前記最高効率値よりも低い効率値の範囲を選択する
工程を含んでなる(ここで、前記効率値の範囲が、最高効率値に対応するものよりも高いエポキシ化反応の生産性に対応し、前記効率値の範囲が、好ましい運転条件に対応する)方法。
【請求項15】
前記最高効率値の決定が、第一のプロットを作ること若しくはプログラムを使用すること若しくは数学式を使用すること又はこれらの任意の組合せを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
更に、生産性に対して効率をプロットすることによって第一の最大値を有する第一の曲線を作ることによって第一のプロットを作り、そして
好ましい運転条件に対応する第一の曲線上で第一の領域を選択することを更に含む(ここで、前記第一の領域は前記プロットの横座標がエポキシ化反応の生産性であるときに、第一の曲線の第一の最大値の右に存在する)請求項15に記載の方法。
【請求項17】
a)第二の温度で、少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値での、エポキシ化反応の効率及び生産性での第二のデータの組を作り、
b)第一のプロット上に第二のデータの組をプロットすることによって、第二の最大値を有する第二の曲線を作り(ここで、第二の最大値は第二の温度での最高効率に対応する)、
c)第一の曲線及び第二の曲線に亘って接線を引き(ここで、この接線の勾配を、エポキシ化反応の効率がパーセントで表し、エポキシ化反応の生産性を、反応器出口流中のアルキレンオキサイドの濃度としてモルパーセントで表すと、約−1〜約−4の範囲内である)、そして
d)好ましい運転条件に対応する第二の領域を選択する(ここで、この第二の領域は接線上に存在する)
ことを更に含む請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
a)第二の温度で、少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値での、エポキシ化反応の効率及び生産性での第二のデータの組を作り、
b)第一のデータの組及び第二のデータの組をプロットすることによって、総触媒塩化物化有効度値及び温度の関数としての、効率及び生産性の等高線プロットを作って、それぞれ、少なくとも1つの第三の曲線及び少なくとも1つの第四の曲線を得(ここで、少なくとも1つの第三の曲線はエポキシ化反応の効率に対応し、少なくとも1つの第四の曲線はエポキシ化反応の生産性に対応する)、そして
c)好ましい運転条件に対応する第三の領域を選択する(ここで、この第三の領域は、少なくとも1つの第四の曲線上に存在し、少なくとも1つの第四の曲線に合致する最高効率を有する少なくとも1つの第三の曲線によって決定される)
を更に含む請求項14に記載の方法。
【請求項19】
第一の曲線、第二の曲線、少なくとも1つの第三の曲線及び少なくとも1つの第四の曲線の少なくとも1つを得る工程が、第一の曲線、第二の曲線、少なくとも1つの第三の曲線及び少なくとも1つの第四の曲線の少なくとも1つを数学的に適合させることを含む請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記請求項のいずれか1項に記載の方法によって製造されたアルキレンオキサイドを、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カルボネート又はアルカノールアミンに転化させることを含んでなる1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カルボネート又はアルカノールアミンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−524787(P2012−524787A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507300(P2012−507300)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/031694
【国際公開番号】WO2010/123856
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(508168701)ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー (19)
【Fターム(参考)】