説明

エポキシ樹脂組成物

例えば、粉末塗料、コンポジット及び電気用積層板を含む種々の製品を製造するために有用である、ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物のジグリシジルエーテルを生成するためのジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物から製造されたエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クロスリファレンス記述
本件特許出願は、2009年12月2日付けで出願された米国仮特許出願第61/265,799号(参照して本明細書に含める)の利益を請求する。
【0002】
本発明は、エポキシ樹脂組成物に関し、更に詳しくは、本発明は、ジヒドロキシジフェニルシクロアルカン化合物のジグリシジルエーテルを含有するエポキシ樹脂組成物及びアドバンスト(advanced)樹脂組成物並びにこのエポキシ樹脂組成物から製造された誘導体に関する。このエポキシ樹脂組成物は、種々の応用最終用途、例えば粉末塗料(powder coatings)、コンポジット及び電気用積層板において使用することができる。
【背景技術】
【0003】
良好な耐熱性を有する熱硬化樹脂、例えばエポキシ樹脂(「エポキシ」)は、多くの用途、例えば電気用積層板、コーティング、粉末塗料、注型品及びコンポジットのために望ましい。これらのアリールグリシジルエーテルについての三つの望ましい特性は、高いガラス転移温度(ジシアンジアミド硬化による、動的機械的熱分析(dynamic mechanical thermal analysis)により190℃よりも高いTg)、低いモノマー粘度(150℃で200mPa−sよりも低い)及び高いエポキシ当量重量(EEW)である。本発明のエポキシは、120mPa−sのように低い粘度を示し、ジシアンジアミド硬化熱硬化樹脂は、202℃以下のTg及び190グラム/当量(g/eq)よりも高いEEW(エポキシ当量重量)を有する。
【0004】
高いTgは、熱硬化樹脂が高温度に露出される用途のために、例えば熱油を輸送するために使用される被覆鋼管のために必要である。熱硬化樹脂の特性は、Tgの温度よりも上で急激に劣化する。低い粘度を有する樹脂は、それを仕上げ部品に加工することを容易にし、容易な加工性は常に望ましい。また、基体の複雑な微小構造の濡れが、より良いので、金属及びガラスに対する接着は、通常、低粘度の熱硬化性樹脂について、より良い。最終的に、高いEEWを有するエポキシ樹脂は、主鎖中にヒドロキシルの比較的低い濃度を有する熱硬化樹脂を与える。ヒドロキシルは、典型的には、例えばジシアンジアミド、多官能性アミンとの、エポキシ樹脂の硬化反応の間に形成される。熱硬化樹脂中のヒドロキシル濃度と水吸収との間に直接的関係が存在する。高い水吸収は、それが接着を減少させ、他の特性を劣化させ得るので、殆どの用途において望ましくない。
【0005】
これらの特性を個別に達成する多数のアリールグリシジルエーテルは存在するが、それらを全ての特性に同時に適合するものは存在しない。この特性のバランスは、達成することが困難である。例えば、高いTgのための一つの一般的な戦略は、より高い官能性ポリフェノールのポリグリシジルエーテル、特にエポキシノボラックとして知られている、フェノールホルムアルデヒドノボラックを使用することである。しかしながら、200cPよりも低い粘度を有するこのようなノボラックの例は、本発明のエポキシ樹脂に匹敵する高いTgを達成することが不可能である。例えば工業的標準のエポキシノボラックであるD.E.N.(登録商標)438(The Dow Chemical Companyの商標)は、<200mPa−sの粘度を有するが、このジシアンジアミド硬化熱硬化樹脂のTgは、173℃に過ぎない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、二官能性であり、高いTg(>190℃)、低いモノマー粘度(150℃で<150mPa−s)及び高いEEW(>190g/eq)を含む特性のバランスを有する熱硬化樹脂を提供する、新規な熱硬化樹脂を開発するための工業におけるニーズがなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、二官能性であり、低粘度(150℃で<150mPa−s)及び高EEW(>190g/eq)のものであり、高いTg(>150℃)を有する熱硬化樹脂を提供するエポキシ熱硬化性樹脂の一種類を同時に提供する挑戦的目標を達成する。
【0008】
本発明の一つの態様は、下記式Iの一般化学構造によって表されるエポキシ樹脂組成物、例えばジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物から製造されるエポキシ樹脂に関する。
【0009】
【化1】

(式中、Rは水素又はメチル基であり、R及びRは、互いから独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアラルキル基、ニトリル基、ニトロ基又は置換若しくは非置換のアルコキシ基を表し、XはCH、CH(R)又はC(R)(R)であり、mは8と20との間の整数であり、R及びRは、互いから独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のアラルキル基を表し、そしてnは0〜約10の値を有する整数である。)
【0010】
本発明の別の態様は、上記式Iのエポキシ樹脂組成物のアドバンスト樹脂組成物及び誘導体に関する。例えば、本発明の二つの他の追加の態様は、上記式Iのエポキシ樹脂組成物を、(a)化学量論的不足量の、式IIの組成物を与えるための二官能性エポキシ反応性化合物又は(b)化学量論的過剰量の、式IIIの組成物を与えるための二官能性エポキシ反応性化合物と反応させることによって製造することができる組成物に関する。
【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

(式中、R、R、R、R、R、X及びmは式Iにおいて定義した通りであり、p及びyは1〜約20の値を有する整数であり、yは0〜約20の値を有する整数であり、Qはヒドロカルビレン部分であり、それぞれのZは、独立に、O、S、−NR(式中、Rは、ヒドロカルビル部分である)からなる群から選択され、そしてZはZ−Hである。
【0013】
本発明の更に別の態様は(a)上記式Iのエポキシ樹脂組成物及び(b)少なくとも1種の硬化剤(硬化剤)を含んでなる熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0014】
本発明のなお別の態様は上記熱硬化性樹脂組成物から製造された硬化した熱硬化樹脂製品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
その最も広い範囲において、本発明は、下記式I:
【0016】
【化4】

[式中、Rは水素又はメチル基であり、R及びRは、互いから独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアラルキル基、ニトリル基、ニトロ基又は置換若しくは非置換のアルコキシ基を表し、XはCH、CH(R)又はC(R)(R)であり、mは8と20との間の整数であり、R及びRは、互いから独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のアラルキル基を表し、そしてnは0〜約10の値を有する整数である]
によって表されるエポキシ樹脂組成物を含む。
【0017】
上記式Iにおいて、R〜Rのための置換若しくは非置換のアルキル基、置換された若しくは置換されていないアリール基又は置換若しくは非置換のアラルキル基並びにR及びRのための置換又は非置換のアルコキシ基は、例えばC〜Cアルキル若しくはアルキルオキシ基、C〜C10アリール基又はC〜C12アラルキル基を含むことができる。
【0018】
上記式Iによって表されるジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物のジグリシジルエーテルの例には、例えば異性体ジヒドロキシジフェニル−シクロオクタン、ジヒドロキシジフェニル−シクロノナン、ジヒドロキシジフェニル−シクロデカノン、ジヒドロキシジフェニル−シクロドデカン、ジヒドロキシジフェニル−シクロペンタデカン、ジヒドロキシジフェニル−シクロオクタデカン、ジヒドロキシジフェニル−シクロエイコサン、ジヒドロキシジフェニルジメチル−シクロドデカン、ジヒドロキシジフェニルテトラブロモ−シクロドデカン、ジヒドロキシジフェニルジメトキシ−シクロドデカン、ジヒドロキシジフェニルジメチルジブロモ−シクロドデカンのジグリシジルエーテル及びこれらの混合物が含まれてよい。
【0019】
典型的に製造されたとき、式Iのエポキシ樹脂は、変化するnを有するオリゴマーの混合物である。この混合物中のnの平均値は、これらの樹脂を製造するために使用されるプロセスに依存する。本発明の殆どの一般的な用途において、0よりも大きいnを有する分子鎖を有する混合物の比率は10%よりも小さい。これは、高い反応性エポキシの濃度を有する比較的低い粘度の材料を与える。しかしながら、鎖の大部分がゼロよりも大きいn値を有する混合物を製造することも可能である。これは、比較的高い粘度及び低いエポキシの濃度を有する混合物を与える。
【0020】
一つの態様において、式Iのエポキシ樹脂組成物の製造プロセスは、(a)少なくとも1種のエポキシ樹脂と(b)エポキシ官能基を除く、1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子(ここで、この反応性水素原子は、式Iによって表されるエポキシ樹脂組成物中のエポキシド基と反応性である)を有する少なくとも1種の化合物とを反応させることを含んでなる。上記プロセスにおいて、成分(a)である少なくとも1種のエポキシ樹脂には、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ポリフェノールのポリグリシジルエーテル及びこれらの混合物が含まれてよい。ポリフェノールのポリグリシジルエーテルはフェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック又はこれらの混合物からなっていてよい。
【0021】
上記のプロセスにおいて、成分(b)である1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子を有する少なくとも1種の化合物には、例えばビスフェノール化合物が含まれてよい。成分(b)であるビスフェノール化合物は下記一般式IV:
【0022】
【化5】

[式中、R及びRは、互いから独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のアラルキル基を表し、XはCH、CH(R)又はC(R)(R)であり、mは8と20との間の整数であり、R及びRは、互いから独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のアラルキル基を表す]
によって表されるビスフェノール化合物を含んでいてよい。
【0023】
別の態様において、このビスフェノール化合物には、約C8〜約C20の炭素原子を有する化合物が含まれてよい。更に別の態様において、前記ビスフェノール化合物は、シクロオクタノン、シクロデカノン、シクロドデカノン、シクロペンタデカノン、シクロオクタデカノン、シクロエイコサノン及びこれらの混合物を含んでなるシクロアルカン化合物から製造された化合物であってよい。例えば、成分(b)であるビスフェノール化合物はビスフェノールシクロドデカノン化合物を含んでいてよい。
【0024】
別の態様において、上記式Iのエポキシ樹脂組成物の製造プロセスは、(A)エピハロヒドリン化合物、例えばエピクロロヒドリン又はエピブロモヒドリンと(B)1種又はそれ以上のフェノール性ヒドロキシル化合物、例えば下記の式IVによって表されるビスフェノールのようなビスフェノール化合物とを反応させることを含んでなる。
【0025】
一つの態様において、本発明の上記の式Iのエポキシ樹脂組成物を製造するために有用である成分(B)であるビスフェノール化合物は下記式IV:
【0026】
【化6】

(式中、R、R、R、R、X及びmは式Iにおいて定義した通りである)
によって表される化合物の何れであってもよい。このようなビスフェノールは、典型的には、環式ケトンとフェノールとの公知の縮合反応によって製造される。式IVの適切なビスフェノールの具体例には、シクロオクタノン、シクロデカノン、シクロドデカノン、シクロペンタデカノン、シクロオクタデカノン、シクロエイコサノン及びこれらの混合物とフェノールとの反応から誘導された化合物が含まれていてよい。本発明において有用なビスフェノール化合物の一つの好ましい例はビスフェノールシクロドデカノンである。
【0027】
本発明において有用なビスフェノール化合物の好ましい例には、シクロドデカノンとフェノール類、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール及びナフトールとの縮合生成物が含まれてよい。
【0028】
式Iによって表される、得られるエポキシ樹脂組成物は、ビスフェノール化合物のジグリシジルエーテル(これは、硬化剤成分と混合することによって熱硬化性樹脂組成物を製造するための成分として使用することができる)を含んでなる。
【0029】
本発明の上記式Iのエポキシ樹脂組成物を製造する際に、一般的に、成分(B)であるビスフェノール化合物を、組成物の合計重量基準で、約10重量%〜約98重量%、好ましくは約15重量%〜約97重量%、更に好ましくは約20重量%〜約97重量%の量で使用することができる。
【0030】
当該技術分野で公知の方法、例えばPham and Marks,“Epoxy Resins”,Encyclopedia of Polymer Science and Technology、第9巻、John Wiley & Sonsに記載されている方法を、本発明の式Iのエポキシ樹脂へのビスフェノールの転化のために使用することができる。一般的に言って、「苛性カップリングプロセス(caustic coupling process)」又は相間移動触媒を使用するプロセスを使用することができる。これらのプロセスは、塩基、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)を必要とする。NaOHが最も一般的であるが、例えば第I族及び第II族金属水酸化物、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、メトキシド、アミン塩基、例えばジアゾビシクロウンデセン(DBU)を含む他の塩基を、このプロセスにおいて使用することができる。当該技術分野で公知のように、プロセスの選択はオリゴマー並びにエポキシ樹脂生成物中に存在する他の副生物、例えばビシナルジオール、クロロヒドリン、塩化物及び他の塩素化種の濃度への影響を有し得る。
【0031】
幾つかの用途について、例えば電子コンポーネント用の接着剤において、低い全塩素及びイオン性塩化物濃度を有することが望ましい。米国特許第7,582,706号明細書に記載されているような、主としてビスフェノールAジグリシジルエーテルのために開発された方法を使用することができる。
【0032】
更に、プロセスの選択により、生成物の分子量(式I中の「n」に関連する)を調節することが可能である。低粘度が有利である用途のために、例えば液体コーティング、注型材料又はコンポジットのために、低い濃度(50%よりも低い)でオリゴマー(n>0)の濃度を有することが望ましい。これは、約2:1よりも大きいエピハロヒドリン対ビスフェノールの高い化学量論的比を使用することを含む、当該技術分野で公知の方法によって達成することができる。ある用途において、例えば粉末塗料において、より高い粘度、従ってより高いオリゴマー(n>0)の濃度を有することが望ましい。これらのオリゴマーを製造するための一つの方法は、Pham and Marksによる上記の文献中に記載されているような「タフィプロセス(taffy process)」を使用することである。一般的に言って、タフィプロセスには、2:1よりも小さい化学量論的比(エピハロヒドリン:ビスフェノール)の使用が含まれる。
【0033】
本発明の別の態様は、(I)化学量論的過剰の、1種又はそれ以上の、上記式Iによって表されるエポキシ樹脂組成物と、(II)1種又はそれ以上の、エポキシ官能基を除く、1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子を有する化合物(ここで、反応性水素原子は上記式Iによって表されるエポキシ樹脂組成物中のエポキシド基と反応性である)との反応生成物を含むアドバンストエポキシ樹脂組成物に関する。
【0034】
成分(II)の一態様はビスフェノールのようなフェノール性ヒドロキシル含有化合物であってよい。
【0035】
【化7】

[式中、R、R、R、R、R、X及びmは、式Iにおいて定義した通りであり、yは1〜約20の値を有する整数であり、pは1〜約20の値を有する整数であり、Qはヒドロカルビレン部分であり、そしてそれぞれのZは、独立に、O、S、−NR(式中、Rは、ヒドロカルビル部分である)からなる群から選択される。]
【0036】
本明細書で使用される「ヒドロカルビレン部分(moiety)」によって、炭化水素から2個の水素原子を除去することによって形成される任意の二価のラジカルが意味される。更に詳しくは、ヒドロカルビレン単位は、非置換の若しくは置換アルキル、非置換の若しくは置換シクロアルキル、非置換の若しくは置換ポリシクロアルキル、非置換の若しくは置換アルケニル、非置換の若しくは置換シクロアルケニル、非置換の若しくは置換ジ若しくはポリシクロアルケニル又は非置換の若しくは置換芳香族環からなる群から選択された二価の単位である。本明細書で使用される「ヒドロカルビル部分」によって、一価のラジカル、更に詳しくは、非置換の若しくは置換アルキル、非置換の若しくは置換シクロアルキル、非置換の若しくは置換ポリシクロアルキル、非置換の若しくは置換アルケニル、非置換の若しくは置換シクロアルケニル、非置換の若しくは置換ジ若しくはポリシクロアルケニル又は非置換の若しくは置換芳香族環からなる群から選択された任意の一価の部分が意味される。
【0037】
式IIのアドバンストエポキシ樹脂組成物は、(I)1種又はそれ以上の、式Iのエポキシ樹脂と、(II)1種又はそれ以上の、1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子を有する適切な化合物(ここで、反応性水素原子はエポキシ樹脂中のエポキシド基と反応性である)とから製造されるアドバンストエポキシ樹脂生成物である。アドバンスメント(advancement)反応中に使用されるエポキシ樹脂は、更に、(III)いずれか1種又はそれ以上の公知のエポキシ樹脂、例えば式Iのエポキシ樹脂とは異なるジヒドロキシ芳香族化合物のジグリシジルエーテルを含有することができる。上記のアドバンストエポキシ樹脂生成物の製造は公知の方法を使用して実施することができる。
【0038】
1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子を有する化合物の例には、ジヒドロキシ芳香族化合物、ジチオール、ジスルホンアミド、ジアミド若しくはジカルボン酸化合物又は1個の第一級アミン若しくはアミド基、2個の第二級アミン基、1個の第二級アミン基及び1個のフェノール性ヒドロキシ基、1個の第二級アミン基及び1個のカルボン酸基又は1個のフェノール性ヒドロキシ基及び1個のカルボン酸基を含有する化合物並びにこれらの任意の組合せが含まれる。
【0039】
1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子を有する化合物の、エポキシ樹脂に対する化学量論的比は、一般に約0.01:1〜約0.95:1、好ましくは約0.05:1〜約0.8:1、更に好ましくは約0.10:1〜約0.5:1の、反応性水素原子の当量/エポキシ樹脂中のエポキシド基の当量である。
【0040】
アドバンスメント反応は、溶媒、任意的に触媒の存在下又は非存在下に、熱及び混合の適用によって行うことができる。アドバンスメント反応は、大気圧、大気圧よりも高い又は大気圧よりも低い圧力で、約20℃〜約260℃、好ましくは約80℃〜約240℃、更に好ましくは約100℃〜約200℃の温度で行うことができる。
【0041】
アドバンスメント反応を完結させるために必要な時間は、使用される温度、使用される1分子当たり1個より多い反応性水素原子を有する化合物の化学構造及び使用されるエポキシ樹脂の化学構造のような要因に依存する。より高い温度はより短い反応時間を必要とし、他方、より低い温度は、より長い反応時間を必要とするであろう。
【0042】
一般的に、アドバンスメント反応完結のための時間は約5分〜約24時間、好ましくは約30分〜約8時間、更に好ましくは約30分〜約4時間の範囲であろう。
【0043】
アドバンスメント反応においては触媒を添加することもできる。触媒の例には、ホスフィン(RP)、第四級アンモニウム化合物(R)、ホスホニウム化合物(R)及び第三級アミン(RN)が含まれてよい。適切なホスホニウム塩の具体例には、テトラフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルメチルホスホニウムクロリド、メチルトリトリールホスホニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムクロリド、トリエチルアンモニウムクロリド、トリブチルアンモニウムクロリド及び関連する塩(ここで、アニオンはブロミド、アセテート、ベンゾエート及びヒドロキシドである)が含まれる。この触媒は、エポキシ樹脂及び1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子を有する化合物の合計重量基準で、約0.01〜約3、好ましくは約0.03〜約1.5、更に好ましくは約0.05〜約1.5重量%の量で使用することができる。
【0044】
本発明において使用することができる樹脂化合物のためのアドバンストエポキシ樹脂生成物を製造する際に有用であるアドバンスメント反応に関する他の詳細は、米国特許第5,736,620号明細書及びHenry Lee及びKris Neville著Handbook of Epoxy Resins(参照して本明細書に含める)に記載されている。
【0045】
芳香族ジ及びポリヒドロキシル含有化合物の例には、シクロオクタノン、シクロデカノン、シクロドデカノン、シクロペンタデカノン、シクロオクタデカノン、シクロエイコサノン及びこれらの混合物と、フェノール、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、2,4−ジメチルレゾルシノール、4−クロロレゾルシノール、テトラメチルヒドロキノン、ビスフェノールA(4,4’−イソプロピリデンジフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−チオジフェノール、4,4’−スルホニルジフェノール、2,2’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ビス(4−(4−ヒドロキシフェノキシ)フェニルスルホン)ジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジスルフィド、3,3’,3,5’−テトラクロロ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール、3,3’,3,5’−テトラブロモ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール、3,3’−ジメトキシ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシベンズアニリド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタレート、N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタルアミド、ビス(4’−ヒドロキシビフェニル)テレフタレート、4,4’−ジヒドロキシフェニルベンゾエート、ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−ベンゼンジイミン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、フロログルシノール、ピロガロール、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルホン、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジシクロペンタジエンジフェノール、トリシクロペンタジエンジフェノール及びこれらの任意の組合せとの反応から誘導されるジヒドロキシジフェニル−シクロアルカンが含まれる。
【0046】
ジ−及びポリカルボン酸の例には、4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、ジシクロペンタジエンジカルボン酸、トリス(カルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)シクロヘキサン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシ−α−メチルスチルベン、1,4−ビス(4−カルボキシフェニル)−トランス−シクロヘキサン、1,1’−ビス(4−カルボキシフェニル)シクロヘキサン、1,3−ジカルボキシ−4−メチルベンゼン、1,3−ジカルボキシ−4−メトキシベンゼン、1,3−ジカルボキシ−4−ブロモベンゼン、4,4’−ベンズアニリドジカルボン酸、4,4’−フェニルベンゾアートジカルボン酸、4,4’−スチルベンジカルボン酸及びこれらの任意の組合せが含まれる。
【0047】
ジ−及びポリメルカプタンの例には、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、4,4’−ジメルカプトジフェニルメタン、4,4’−ジメルカプトジフェニルオキシド、4,4’−ジメルカプト−α−メチルスチルベン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジメルカプトジフェニル、1,4−シクロヘキサンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、2,2’−ジメルカプトジエチルエーテル、1,2−ジメルカプトプロパン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、トリス(メルカプトフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メルカプトフェニル)シクロヘキサン及びこれらの任意の組合せが含まれる。
【0048】
ジ−及びポリアミンの例には、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルオキシド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノ−α−メチルスチルベン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノスチルベン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)−トランス−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(アミノフェニル)メタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、ピペラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス(アミノプロピル)エーテル、ビス(アミノプロピル)スルフィド、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、2,2’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン及びこれらの任意の組合せが含まれる。
【0049】
第一級モノアミンの例には、アニリン、4−クロロアニリン、4−メチルアニリン、4−メトキシアニリン、4−シアノアニリン、2,6−ジメチルアニリン、4−アミノジフェニルオキシド、4−アミノジフェニルメタン、4−アミノジフェニルスルフィド、4−アミノベンゾフェノン、4−アミノジフェニル、4−アミノスチルベン、4−アミノ−α−メチルスチルベン、メチルアミン、4−アミノ−4’−ニトロスチルベン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、アミノノルボルナン及びこれらの任意の組合せが含まれる。
【0050】
スルホンアミドの例には、フェニルスルホンアミド、4−メトキシフェニルスルホンアミド、4−クロロフェニルスルホンアミド、4−ブロモフェニルスルホンアミド、4−メチルスルホンアミド、4−シアノスルホンアミド、4−スルホンアミドジフェニルオキシド、4−スルホンアミドジフェニルメタン、4−スルホンアミドベンゾフェノン、4−スルホニルアミドジフェニル、4−スルホンアミドスチルベン、4−スルホンアミド−α−メチルスチルベン、2,6−ジメチルフェニルスルホンアミド及びこれらの任意の組合せが含まれる。
【0051】
アミノフェノールの例には、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2−メトキシ−4−ヒドロキシアニリン、3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシアニリン、2,6−ジブロモ−4−ヒドロキシアニリン、5−ブチル−4−ヒドロキシアニリン、3−フェニル−4−ヒドロキシアニリン、4−(1−(3−アミノフェニル)−1−メチルエチル)フェノール、4−(1−(4−アミノフェニル)エチル)フェノール、4−(4−アミノフェノキシ)フェノール、4−((4−アミノフェニル)チオ)フェノール、(4−アミノフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、4−((4−アミノフェニル)スルホニル)フェノール、4−(1−(4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモフェノール、N−メチル−p−アミノフェノール、4−アミノ−4’−ヒドロキシ−α−メチルスチルベン、4−ヒドロキシ−4’−アミノ−α−メチルスチルベン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシアニリン及びこれらの任意の組合せが含まれる。
【0052】
アミノカルボン酸の例には、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−メトキシ−4−アミノ安息香酸、3,5−ジメチル−4−アミノ安息香酸、3−シクロヘキシル−4−アミノ安息香酸、2,6−ジブロモ−4−アミノ安息香酸、5−ブチル−4−アミノ安息香酸、3−フェニル−4−アミノ安息香酸、4−(1−(3−アミノフェニル)−1−メチルエチル)安息香酸、4−(1−(4−アミノフェニル)エチル)安息香酸、4−(4−アミノフェノキシ)安息香酸、4−((4−アミノフェニル)チオ)安息香酸、(4−アミノフェニル)(4−カルボキシフェニル)メタノン、4−((4−アミノフェニル)スルホニル)安息香酸、4−(1−(4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモ安息香酸、N−メチル−4−アミノ安息香酸、4−アミノ−4’−カルボキシ−α−メチルスチルベン、4−カルボキシ−4’−アミノ−α−メチルスチルベン、グリシン、N−メチルグリシン、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸、4−アミノヘキサン酸、4−ピペリジンカルボン酸、5−アミノフタル酸及びこれらの任意の組合せが含まれる。
【0053】
スルファニルアミドの例には、o−スルファニルアミド、m−スルファニルアミド、p−スルファニルアミド、2−メトキシ−4−アミノ安息香酸、3−メチル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、5−メチル−3−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、3−フェニル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、4−(1−(3−スルホンアミドフェニル)−1−メチルエチル)アニリン、4−(1−(4−スルホンアミドフェニル)エチル)アニリン、4−(4−スルホンアミドフェノキシ)アニリン、4−((4−スルホンアミドフェニル)チオ)アニリン、(4−スルホンアミドフェニル)(4−アミノフェニル)メタノン、4−((4−スルホンアミドフェニル)スルホニル)アニリン、4−(1−(4−スルホンアミド−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモアニリン、4−スルホンアミド−1−N−メチルアミノベンゼン、4−アミノ−4’−スルホンアミド−α−メチルスチルベン、4−スルホンアミド−4’−アミノ−α−メチルスチルベン、2,6−ジメチル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン及びこれらの任意の組合せが含まれる。
【0054】
本発明の更に別の態様は、(1)化学量論的不足量の、1種又はそれ以上の、上記式Iによって表されるエポキシ樹脂組成物と、(2)1種又はそれ以上の、エポキシ官能基を除く、1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子を有する化合物(ここで、反応性水素原子は上記式Iによって表される該エポキシ樹脂組成物中のエポキシド基と反応性である)との反応生成物を含むアドバンスト反応性樹脂組成物に関する。得られるアドバンスト反応性樹脂組成物は、下記式III:
【0055】
【化8】

[式中、R、R、R、R、R、X、p及びmは、式Iにおいて定義した通りであり、yは、0〜約20の値を有する整数であり、Qはヒドロカルビレン部分であり、それぞれのZは、独立に、O、S、−NR(式中、Rはヒドロカルビル部分である)からなる群から選択され、そしてZはZ−Hである]
の一般化学構造によって表すことができる。
【0056】
用語「ヒドロカルビレン部分」及び「ヒドロカルビル部分」は、前記に定義された通りに使用される。
【0057】
式Iの樹脂組成物と反応して、式IIIのアドバンスト反応性樹脂組成物を提供するために適している成分(2)として有用な、1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子を有する化合物は、例えば前記のヒドロキシル含有化合物のいずれかから選択することができる。
【0058】
好ましくは、本発明において使用されるヒドロキシル含有化合物はビスフェノール、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールS及びこれらの混合物である。
【0059】
一般的に、式IIIのアドバンスト反応性樹脂組成物を形成するために使用される、成分(2)である1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子を有するアドバンスト反応性化合物は、化学量論的比(2:1)で使用され、一般的に約1:0.01〜約1:0.95、好ましくは約1:0.05〜約1:0.8、更に好ましくは約1:0.10〜約1:0.7である。
【0060】
前記式Iによって表されるエポキシ樹脂は式IIIのアドバンスト反応性樹脂組成物を製造する際に使用することができる。
【0061】
式IIIのアドバンスト反応性樹脂組成物を製造するための上記の式Iの範囲内に入るエポキシ樹脂の好ましい例には、シクロドデカノンビスフェノールのジグリシジルエーテルが含まれる。
【0062】
1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子を有するアドバンスト反応性化合物の、上記の式Iによって表されるエポキシ樹脂に対する比が1:1である場合、ヒドロキシル基のような官能基を有する末端及びエポキシ基を有する末端の両方を含有する樹脂組成物になるであろうことが、当業者に明らかであろう。本発明の範囲は、このような態様をカバーすることが意図される。
【0063】
本発明の一つの第一の態様に従って、本明細書中に開示された本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物、即ち硬化性組成物は、(a)少なくとも1種の上記式Iのエポキシ樹脂組成物及び(b)少なくとも1種の硬化剤を含んでいてよい。
【0064】
本発明の別の第二の態様に従って、本明細書中に開示された本発明の熱硬化性アドバンストエポキシ樹脂組成物は(i)少なくとも1種の上記式IIのアドバンストエポキシ樹脂組成物及び(ii)少なくとも1種の硬化剤を含んでいてよい。
【0065】
本発明の更に別の第三の態様に従って、本明細書中に開示された本発明の熱硬化性アドバンスト反応性樹脂組成物は、(x)少なくとも1種のエポキシ樹脂及び(y)少なくとも1種の上記式IIIのアドバンスト反応性樹脂組成物を含んでいてよい。
【0066】
任意的に、上記の熱硬化性組成物の態様のいずれも、(c)上記の成分(a)、(i)又は(x)のエポキシ樹脂のいずれとも異なる、少なくとも1種の熱硬化樹脂を含有することができる。用語「熱硬化性」(「硬化性」とも参照される)は、組成物が、この組成物を硬化した又は熱硬化した状態又は条件にする条件に付され得ることを意味する。
【0067】
用語「硬化した」又は「熱硬化した」は、Whittington’s Dictionary of Plastics(1968)、239頁において、L.R.Whittingtonによって、下記、「完成した物品としてそれらの最終状態で、実質的に不融性で不溶性である樹脂又はプラスチックス化合物。熱硬化性樹脂は、それらの製造又は加工中の或る段階でしばしば液体であり、これらは熱、触媒又は幾つかの他の化学的手段によって硬化される。完全に硬化された後、熱硬化樹脂は、熱によって再軟化させることができない。通常熱可塑性である幾つかのプラスチックスは、他の材料による架橋の手段によって熱硬化させることができる。」のように定義される。
【0068】
上記第一の態様において、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の成分(a)であるエポキシ樹脂組成物は、式Iを参照して前記したエポキシ樹脂のいずれであってもよい。
【0069】
一般的に、本発明の熱硬化性樹脂組成物中に存在する成分(a)であるエポキシ樹脂組成物の濃度は、最終使用用途に依存して変えることができる。例えば、使用されるエポキシ樹脂組成物の量は、幾つかの態様において、組成物の合計重量基準で、約97重量%から約10重量%まで変化することができる。他の態様において、このエポキシ樹脂組成物は、組成物の合計重量基準で、約20重量%〜約97重量%の範囲内の量で使用することができ、更に他の態様において、このエポキシ樹脂組成物は、組成物の合計重量基準で、約30重量%〜約95重量%の範囲内の量で使用することができる。
【0070】
第一の態様の熱硬化性エポキシ樹脂組成物中で有用である、成分(b)である硬化剤(また、硬化剤又は架橋剤とも参照される)は、例えば、これらに限定されないが、無水物、カルボン酸、アミン化合物、フェノール化合物、ポリオール又はこれらの混合物を含む、当該技術分野で公知のこれらの硬化剤から選択することができる。本明細書で使用される用語「硬化剤」は、また、単独で又は1種若しくはそれ以上の他の硬化剤と組合わせて使用される触媒又は共触媒を含むことを意図される。
【0071】
本発明において有用な硬化剤の例には、エポキシ樹脂系組成物を硬化させるために有用であることが知られている任意の硬化剤が含まれる。このような材料には、例えばポリアミン、ポリアミド、ポリアミノアミド、ポリフェノール、ポリマー性チオール、ポリカルボン酸及び無水物、ポリオール及びこれらの任意の組合せ等が含まれる。硬化剤の他の具体例には、ジシアンジアミド、テトラブロモビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノール−Aノボラック、ジシクロペンタジエンのフェノールノボラック、スチレン−無水マレイン酸(SMA)コポリマー、DOP(9,10−ジヒドロキシ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)とビスフェノールAレゾールとの縮合生成物(例えばWO第2005118604号(A1)(参照して本明細書に含める)に記載されているようなもの)及びこれらの任意の組合せが含まれる。硬化剤の好ましい例には、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールA、ジシアンジアミド及びこれらの任意の組合せが含まれてよい。
【0072】
本発明において有用な硬化剤の好ましい例には、ビスフェノールA、ジシアンジアミド、フェノールノボラック、例えばビスフェノールAノボラック若しくはフェノールジシクロペンタジエンノボラック、臭素含有ビスフェノールA、例えばテトラブロモビスフェノールA(TBBA)、臭素含有ビスフェノールAノボラック、リン含有ビスフェノールAノボラック又はこれらの任意の組合せが含まれてよい。
【0073】
ジシアンジアミドは、本発明において有用な硬化剤の一つの好ましい態様であろう。ジシアンジアミドは、ジシアンジアミドが、その硬化特性を活性化するために比較的高い温度を必要とし、従ってジシアンジアミドは、室温(約25℃)で熱硬化性樹脂に添加し、貯蔵することができるので、遅延硬化(delayed curing)を与えるという利点を有する。更に、ジシアンジアミドを使用する樹脂組成物の硬化プロフィールは、触媒、例えば2−メチルイミダゾール(2−MI)を使用して、便利に修正することができる。
【0074】
一般的に、本発明の熱硬化性樹脂組成物中に存在する成分(b)である硬化剤の濃度は、最終使用用途に依存して変えることができる。例えば、使用される硬化剤の量は、幾つかの態様において、重量基準で、熱硬化性樹脂100部当たり、約0.1部から約150部まで変えることができる。他の態様において、硬化剤は、重量基準で、熱硬化性樹脂100部当たり、約5〜約95部の範囲内の量で使用することができ、更に他の態様において、硬化剤は、重量基準で、熱硬化性樹脂100部当たり、約10〜約90部の範囲内の量で使用することができる。
【0075】
上記の第二の態様において、本発明の熱硬化性アドバンストエポキシ樹脂組成物の成分(i)であるアドバンストエポキシ樹脂組成物は、式IIを参照して前記したアドバンストエポキシ樹脂のいずれをも含むことができる。
【0076】
一般的に、本発明の熱硬化性アドバンストエポキシ樹脂組成物中に存在する成分(i)であるアドバンストエポキシ樹脂組成物の濃度は、最終使用応用に依存して変えることができる。例えば、使用されるアドバンストエポキシ樹脂組成物の量は、幾つかの態様において、組成物の合計重量基準で、約25重量%から約99重量%まで変化することができる。他の態様において、このアドバンストエポキシ樹脂組成物は、組成物の合計重量基準で、約30重量%〜約97重量%の範囲内の量で使用することができ、更に他の態様において、このアドバンストエポキシ樹脂組成物は、組成物の合計重量基準で、約40重量%〜約95重量%の範囲内の量で使用することができる。
【0077】
第二の態様の熱硬化性アドバンストエポキシ樹脂組成物中で有用である成分(ii)である硬化剤は、第一の態様を参照して前記した、成分(b)である硬化剤の1種又はそれ以上から選択することができる。
【0078】
一般的に、本発明の熱硬化性樹脂組成物中に存在する成分(ii)である硬化剤の濃度は、最終使用用途に依存して変えることができる。例えば、使用される硬化剤の量は、組成物の合計重量基準で、約2重量%〜約80重量%、好ましくは組成物の合計重量基準で、約10重量%〜約70重量%、更に好ましくは組成物の合計重量基準で、約20重量%〜約60重量%で変えることができる。
【0079】
第三の態様において、本発明の熱硬化性アドバンスト反応性樹脂組成物の成分(x)であるエポキシ樹脂は、本発明の熱硬化性アドバンスト反応性樹脂組成物を製造する際に有用である任意の公知のエポキシ樹脂であってもよい。このエポキシ樹脂には、少なくとも1種のエポキシ樹脂又は1種若しくはそれ以上のエポキシ樹脂の組合せが含まれる。エポキシ樹脂は、少なくとも1個の隣接するエポキシ基を含有する、これらの化合物である。エポキシ樹脂は、飽和又は不飽和の脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族又は複素環式であってよく、置換されていてよい。エポキシ樹脂は、また、モノマー性、オリゴマー性又はポリマー性であってよい。本発明において有用な成分(x)であるエポキシ樹脂は、当該技術分野で公知の任意のエポキシ樹脂から選択することができる。本発明において有用なエポキシ樹脂の広範な列挙は、Lee,H.及びNeville,K.著、“Handbook of Epoxy Resins”、McGraw-Hill Book Company、ニューヨーク、1967年刊、第2章、第257-307頁(参照して本明細書に含める)に記載されている。
【0080】
本明細書中に開示された本発明の態様において使用されるエポキシ樹脂は、変化し、従来の又は市販のエポキシ樹脂(これらは、単独で又は2種若しくはそれ以上の組合せで使用することができる)を含むことができる。本明細書中に開示された組成物のためのエポキシ樹脂を選択する際に、最終製品の特性のみならず、粘度及び樹脂組成物の加工に影響を与え得る他の特性に対して考慮を払わなくてはならない。
【0081】
エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種若しくはそれ以上の組合せを、熱硬化性樹脂組成物を製造するためのエポキシ樹脂として使用することができる。
【0082】
当業者に公知である特に適切なエポキシ樹脂は、多官能性アルコール、フェノール、シクロ脂肪族カルボン酸、芳香族アミン又はアミノフェノールと、エピクロロヒドリンとの反応生成物をベースにしている。僅かな非限定の態様には、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールA及びパラ−アミノフェノールのトリグリシジルエーテルが含まれる。当業者に公知である他の適切なエポキシ樹脂には、エピクロロヒドリンとクレゾール又はフェノールノボラックとの反応生成物が含まれる。2種又はそれ以上のエポキシ樹脂の混合物を使用することも可能である。
【0083】
前記エポキシ樹脂組成物の製造のために本発明において有用なエポキシ樹脂は市販の製品から選択することができる。例えばThe Dow Chemical Companyから入手可能な、D.E.R.(登録商標)331、D.E.R.332、D.E.R.334、D.E.R.580、D.E.N.431、D.E.N.438、D.E.R.736又はD.E.R.732を使用することができる。本発明の例示として、このエポキシ樹脂成分(a)は、175〜185のエポキシド当量重量、9.5Pa−sの粘度及び1.16g/ccの密度を有する液体エポキシ樹脂、D.E.R.(登録商標)383(DGEBA)であってよい。エポキシ樹脂成分のために使用することができる他の市販のエポキシ樹脂は、D.E.R.330、D.E.R.354又はD.E.R.332であってよい。
【0084】
成分(b)として有用な他の適切なエポキシ樹脂は、例えば米国特許第3,018,262号明細書、米国特許第7,163,973号明細書、米国特許第6,887,574号明細書、米国特許第6,632,893号明細書、米国特許第6,242,083号明細書、米国特許第7,037,958号明細書、米国特許第6,572,971号明細書、米国特許第6,153,719号明細書、米国特許第5,405,688号明細書、PCT公開第WO2006/052727号明細書、米国特許出願公開第20060293172号明細書、米国特許出願公開第20050171237号明細書、米国特許出願公開第2007/0221890A1号明細書(これらのそれぞれを、参照して本明細書中に含める)に開示されている。
【0085】
好ましい態様において、本発明の組成物中で有用なエポキシ樹脂は、任意の芳香族又は脂肪族のグリシジルエーテル若しくはグリシジルアミン又はシクロ脂肪族エポキシ樹脂を含む。
【0086】
一般的に、本発明において使用されるエポキシ樹脂の選択は用途に依存する。しかしながら、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)及びその誘導体が特に好ましい。他のエポキシ樹脂は、これらに限定されないが、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAエポキシ樹脂及びこれらの組合せの群から選択することができる。
【0087】
一般的に、本発明の熱硬化性樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の濃度は、最終使用用途に依存して変えることができる。例えば、使用される硬化剤組成物の量は、組成物の合計重量基準で、約20重量%〜約80重量%、好ましくは組成物の合計重量基準で、約25重量%〜約70重量%、更に好ましくは組成物の合計重量基準で、約30重量%〜約70重量%で変えることができる。
【0088】
第三の態様において、本発明の熱硬化性アドバンスト反応性樹脂組成物の成分(y)である少なくとも1種のアドバンスト反応性樹脂組成物は、式IIIを参照して前記したアドバンスト反応性樹脂組成物のいずれであってもよい。
【0089】
一般に、本発明の熱硬化性樹脂組成物中に存在する成分(y)であるアドバンスト反応性樹脂組成物の濃度は、最終使用用途に依存して変えることができる。例えば、使用されるアドバンスト反応性樹脂組成物の量は、幾つかの態様において、組成物の合計重量基準で、約10重量%から約90重量%まで変化することができる。他の態様において、このアドバンストヒドロキシル含有樹脂組成物は、組成物の合計重量基準で、約20重量%〜約80重量%の範囲内の量で使用することができ、更に他の態様において、このアドバンストヒドロキシル含有樹脂組成物は、組成物の合計重量基準で、約30重量%〜約70重量%の範囲内の量で使用することができる。
【0090】
成分(c)である任意の熱硬化性樹脂を、前記の熱硬化性樹脂組成物のいずれか中に使用することができる。この任意の熱硬化性樹脂には、例えば樹脂成分(a)、(i)及び(x)とは異なるエポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂成分が含まれてよい。好ましくは、樹脂成分(a)、(i)又は(x)とは異なるエポキシ樹脂が、熱硬化性樹脂組成物中の任意の成分(c)として使用される。
【0091】
一つの好ましい態様において、本発明において有用な任意のエポキシ樹脂成分には、熱硬化性樹脂組成物を製造するために使用される樹脂成分(a)、(i)及び(x)とは異なる少なくとも1種のエポキシ樹脂が含まれてよい。前記したエポキシ樹脂のいずれか1種又は2種若しくはそれ以上の組合せを、熱硬化性樹脂組成物を製造するための本発明における任意のエポキシ樹脂成分(c)として使用することができる。このエポキシ樹脂には、従来の及び市販のエポキシ樹脂が含まれてよい。
【0092】
本発明において使用するために適している成分(a)、(i)及び(x)とは異なる他の任意のエポキシ樹脂の例には、エポキシ化ビスフェノールA;エポキシ化ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン;エポキシ化フェノールノボラック、例えば、エポキシ化フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック若しくはエポキシ化フェノールジシクロペンタジエンノボラック;エポキシ化臭素含有ビスフェノール若しくは臭素化ビスフェノールAノボラック又はこれらの任意の組合せ(ここで、「エポキシ化」は、フェノール系化合物とエピクロロヒドリン又は関連物質との反応生成物を意味する)が含まれてよい。
【0093】
一般に、成分(c)である任意の熱硬化性樹脂は、熱硬化性組成物中に、組成物の合計重量基準で、約5重量%〜約50重量%、好ましくは約5重量%〜約40重量%、更に好ましくは約10重量%〜約35重量%の量で存在してよい。
【0094】
本発明の熱硬化性組成物のいずれかにおいて有用な任意の成分には、少なくとも1種の触媒が含まれてよい。本発明において使用される触媒は、少なくとも1種の熱硬化性樹脂の、単独重合を含む重合のために適合させることができる。その代わりに、本発明において使用される触媒は、少なくとも1種の熱硬化性樹脂と少なくとも1種の硬化剤との間の反応のために適合させることができる。
【0095】
本発明の熱硬化性組成物中の任意の成分として有用な触媒は、この目的のために使用される当該技術分野で公知の任意の触媒であってよい。例えば、この触媒には、アミン、ホスフィン、複素環式窒素、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム部分、これらの置換された誘導体及びこれらの任意の組合せを含有する化合物が含まれてよい。本発明において有用な触媒の幾つかの非限定例には、例えばエチルトリフェニルホスホニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、米国特許第4,925,901号明細書(参照して本明細書に含める)に記載されている複素環式窒素含有触媒、イミダゾール、トリエチルアミン及びこれらの任意の組合せが含まれてよい。
【0096】
本発明において有用な触媒の選択は限定されず、エポキシ系のために一般的に使用される触媒を使用することができる。また、触媒の添加は任意的であり、製造されるシステムに依存する。触媒が使用されるとき、触媒の好ましい例には、第三級アミン、イミダゾール、有機ホスフィン及び酸塩が含まれる。
【0097】
最も好ましい触媒には、第三級アミン、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、2−メチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン、これらの混合物等が含まれる。アルキル置換イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,5−クロロ−4−エチルイミダゾール及びフェニル置換イミダゾール並びにこれらの任意の混合物が特に好ましい。
【0098】
本発明のために適している触媒のなお更に好ましい態様は、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、イミダゾール誘導体、例えば2−メチルイミダゾール−エポキシ樹脂付加物、例えば、EPON(登録商標)P101(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能)及びこれらの任意の組合せが含まれる。
【0099】
一般に、本発明の熱硬化性樹脂組成物中に存在する触媒の量は、最終使用用途に依存して変えることができる。使用される触媒の量は、幾つかの態様において、重量基準で、熱硬化性樹脂100部当たり、約0.1部から約20部まで変えることができる。他の態様において、触媒は、重量基準で、熱硬化性樹脂100部当たり、約1〜約15部の範囲内の量で使用することができ、更に他の態様において、重量基準で、熱硬化性樹脂100部当たり、約2〜約10部の範囲内の量で使用することができる。与えられたシステムについて使用される触媒の特定の量は、所望の特性における最適値を開発するための実験を見出す単純な範囲により、実験的に決定することができる。
【0100】
本発明の熱硬化性組成物には、熱硬化性樹脂システム、例えばエポキシ樹脂システム中に一般的に見出される任意の添加剤及び充填材が含有されていてよい。本発明の熱硬化性組成物には、それらの意図される用途のために有用である添加剤及び/又は充填材が任意に含有されていてよい。この熱硬化性樹脂組成物中に使用される添加剤及び/又は充填材の種類及び量は、熱硬化性樹脂組成物の意図される用途に依存して変化するであろう。
【0101】
例えば、本発明の組成物において有用な任意の添加剤及び充填材には、これらに限定されないが、下記のもの、即ち、シリカ、ガラス、タルク、金属粉末、二酸化チタン、湿潤剤、顔料、着色剤、離型剤、強化材、カップリング剤、脱ガス剤、難燃剤(例えば、無機難燃剤、ハロゲン化難燃剤及び非ハロゲン化難燃剤、例えば、リン含有物質)、イオンスカベンジャー、UV安定剤、柔軟剤、粘着付与剤、安定剤、界面活性剤、流れ調整剤、充填材、顔料又は染料、光沢制御剤、酸化防止剤、マット剤、硬化開始剤、硬化抑制剤、熱可塑性樹脂、加工助剤、UVブロッキング化合物、蛍光化合物、UV安定剤、不活性充填材、繊維状強化材、酸化防止剤、熱可塑性樹脂粒子を含む耐衝撃性改良材及びこれらの混合物の1種又はそれ以上が含まれてよい。添加剤及び充填材には、また、とりわけ、ヒュームドシリカ、骨材、例えばガラスビーズ、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、グラファイト、二硫化モリブデン、研磨顔料、粘度低下剤、窒化ホウ素、雲母、核生成剤及び安定剤が含まれてよい。充填材及び変性剤は、熱硬化性樹脂組成物に添加する前に水分を追い出すために予熱することができる。更に、これらの任意の添加剤は、硬化の前及び/又は後に、組成物の特性に影響を有し得、組成物及び所望の反応生成物を配合するとき考慮に入れなくてはならない。上記のリストは例示であることが意図され、限定であるとは意図されない。本発明の配合物のための好ましい添加物は、当業者によって最適化することができる。
【0102】
好ましくは、本発明の熱硬化性樹脂組成物中に使用される添加剤には、触媒、難燃剤、溶媒、充填材、強化材、共触媒、促進剤並びに任意的に他の用途特異的(application-specific)添加剤、例えば難燃剤、湿潤剤、脱泡剤、接着促進剤、充填材、顔料、染料、安定剤、UV吸収剤及び強化材が含まれる。当該技術分野で公知のように、他の熱硬化性モノマー、例えば他のエポキシド、シアネート、マレイミド、トリアジン及びベンゾオキサジン並びに他のオリゴマー又はポリマー、例えば、ポリ(フェニレンオキシド)を添加することが可能である。
【0103】
追加の添加物の濃度は、全組成物の重量基準で、一般に、約0重量%〜約50重量%、好ましくは約0.01重量%〜約20重量%、更に好ましくは約0.05重量%〜約15重量%、最も好ましくは約0.1重量%〜約10重量%である。約0.01重量%よりも下では、添加剤は、一般に、得られる熱硬化生成物に、如何なる更なる顕著な利点も与えず、約20重量%よりも上では、これらの添加剤によってもたらされる特性改良(1個又はそれ以上)は、比較的に一定のままである。
【0104】
幾つかの態様において、硬化性組成物には、約0.1〜約50体積%の任意の添加剤が含有されていてよい。他の態様において、硬化性組成物には、約0.1〜約5体積%の任意の添加剤が含有されていてよく、更に他の態様において、約0.5〜約2.5体積%の任意の添加剤が含有されていてよい。
【0105】
本明細書中に開示された本発明の熱硬化性(thermosettable)(即ち硬化性(curable or hardenable))樹脂組成物の一つの例示として、熱硬化性樹脂組成物は、成分(a)、(i)又は(x)である少なくとも1種のエポキシ樹脂組成物及び少なくとも1種の硬化剤(b)及び(ii)又は反応性化合物(y)を含有していてよい。前記のように、幾つかの態様において、本明細書中に開示された硬化性組成物は、更に、触媒、無機充填材、1種若しくはそれ以上の前記のような添加剤及び/又は他の材料、例えば強化材を含有していてよい。
【0106】
一般に、熱硬化性組成物の成分を混合することの臨界性(criticality)は存在しない。一般的に、硬化性組成物は、前記の成分を、段階的に又は同時に混合することによって形成することができる。熱硬化性又は硬化性組成物中に使用される成分の所望量は、予想される最終用途に依存するであろう。
【0107】
前記熱硬化性樹脂組成物は、一般的に、約300〜約40,000g/モル、好ましくは約1000〜約10000g/モル、更に好ましくは約1000〜5000g/モル、最も好ましくは約1000〜約3000g/モルの範囲内の平均分子量を有する。
【0108】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、従来の硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂を硬化させる、当業者によって使用されている公知の技術に従って硬化させることができる。例えば、樹脂成分(a)及び硬化剤成分(b)を含む、本発明の配合物又は組成物の成分を、適切な比で混合し、得られる最終熱硬化性組成混合物を、硬化条件に付して、熱硬化樹脂を形成させることができる。本明細書で使用される用語「熱硬化構造体」又は「熱硬化ネットワーク構造体」は、実質的に硬化し、架橋した熱硬化樹脂構造体を指す。この熱硬化ネットワーク構造体は、前記の硬化性熱硬化性樹脂を硬化させることによって得られる硬化樹脂である。
【0109】
例えば、熱硬化性組成物の硬化反応は、一般的に約0℃〜約250℃、好ましくは約25℃〜約200℃、更に好ましくは約40℃〜約190℃の温度で実施することができる。熱硬化性樹脂組成物を硬化させる時間は、数分間から数時間以下の範囲であり得る予定された時間であってよく、一般的に、反応時間は、約5分間よりも長く約24時間よりも短く、好ましくは約5分間〜約6時間、更に好ましくは約5分間〜約2時間である。熱硬化性樹脂の硬化条件は、また、使用される成分及び組成物に添加される全ての任意の成分、例えば、使用される場合に触媒に依存し得る。他の態様において、硬化は、第一の温度で起こり、続いて第二の温度又は後処理で起こり得、このような後処理は、通常、100℃よりも高い温度、好ましくは約100℃〜200℃である。
【0110】
幾つかの態様において、硬化は、制御されない発熱を防止するために、加工性を改良するために,そして他の公知の理由のために、段階化又は「B段階化」することができる。典型的に「B段階化」として参照される段階化には、ある温度で一定時間硬化させ、続いて、より高い温度で一定時間硬化させることが含まれる。B段階化硬化には、2個又はそれ以上の硬化段階が含まれてよく、ある態様において約180℃よりも低い温度で、他の態様において約150℃よりも低い温度で開始することができる。他の態様において、粘度を低下させるために、熱硬化性組成物の成分を溶媒と一緒する。ワニスと呼ばれるこの溶液は、繊維、例えばガラスのウエブを被覆するために使用される。次いで、この溶媒を、換気オーブン内で除去し、樹脂をB段階化する。プリプレグと呼ばれる被覆された繊維マットを、積み重ね、プレスし、加熱して、仕上部品、例えば電気用積層板又は他の固体形を形成することができる。
【0111】
熱硬化樹脂は、前記のような本発明の硬化性の熱硬化性樹脂組成物を硬化させることによって形成させることができる。最終使用用途に依存して、本発明の得られる熱硬化樹脂は、充填材、繊維状強化材、面形状(aspect shaped)無機材料及び/又は他の添加剤を含んでいてよく、ここで、熱硬化ネットワーク構造物は、前記の式Iによって表されるジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物、例えばビスフェノールシクロドデカノンからなり又は熱硬化ネットワーク構造体は、前記の式IIによって表されるジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物、例えばビスフェノールシクロドデカノンのジグリシジルエーテルからなり又は両方の組合せを含む。
【0112】
本発明の熱硬化性樹脂組成物から得られる結果としての熱硬化物は、高い熱安定性を維持しながら、優れた熱−機械特性、例えば良好な靱性及び機械的強度を示す。例えば、従来のフェノール性硬化剤及び/又は連鎖延長剤に対して比較したとき、本発明のジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物が、本発明の熱硬化樹脂に、幾つかの改良された特性を与えることが見出された。例えば、従来の熱硬化樹脂に対して比較して、ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物を含む本発明の熱硬化樹脂は、それの他の特性、例えば高い温度安定性及び高い架橋密度を維持しながら、下記の改良された特性、即ち、
(1)低い架橋密度を有し、従って比較的強靱である二官能性樹脂をベースにして、改良された機械的特性、例えば改良された靱性;
(2)改良された熱特性、例えばジシアンジアミドによって硬化させたとき、約150℃よりも高い、好ましくは約170℃よりも高い、更に好ましくは約190℃よりも高い、より高いガラス転移温度;
(3)より高い耐湿特性(高い防湿性又は換言すると、低い水吸収);
(4)より低い誘電定数/誘電正接(Dk/Df)特性及び
(5)約150mPa−sよりも低い、好ましくは約120mPa−sよりも低い低粘度を示すエポキシ樹脂をベースにする、
を有する。
【0113】
Tgは、幾つかの要因、例えば選択されるエポキシ樹脂及び硬化剤、他の添加剤並びに選択される任意の任意的なエポキシ樹脂に依存するであろう。例えば、一つの態様において、一般的にTgは、約50℃〜約220℃、好ましくは約80℃〜約210℃、更に好ましくは約100℃〜約200℃である。
【0114】
本発明をいずれか一つの理論に制限することなく、ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン構造中のビスフェノール基の間のアルキル環の付加が、立体障害によってビスフェノール基の回転を減少させることができ、結果として、ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物構造の存在が、アルキル環を有しないビスフェノール誘導体を含んでなる従来の樹脂に対して比較して、ホスト樹脂のガラス転移温度(Tg)を上昇させることが理論化される。
【0115】
本発明のジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物からなるホスト樹脂のガラス転移温度の上昇は、樹脂を硬化させる際に使用される硬化剤、樹脂及び触媒の種類並びに硬化条件のような要因に依存して、一般的に約10℃〜約100℃又はそれ以上の範囲内にある。ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物を含んでなるホスト樹脂のヤング率は、また、アルキル環を有しないビスフェノール誘導体を含んでなる樹脂に対して比較して、より低いことも見出された。従って、本発明の組成物は、より高いTgを示す。ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物中のビスフェノール基の間のアルキル環の付加が、より高い立体障害のために架橋密度を低下させ、従って、熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂に改良された靱性を与えることが理論化される。
【0116】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、多くの用途、例えば高い耐熱性及び良好な貯蔵安定性を有するための最終熱硬化樹脂を必要とするこれらの用途のために有用であろう。例えば、この熱硬化樹脂は、注型品、注封品、カプセル品、コーティング、コンポジット又は積層板において、更に詳しくは、電気用若しくは電子用注型品、電気用若しくは電子用注封品、電気用若しくは電子用カプセル品又は電気用積層板、構造コンポジット又は保護皮膜において有用であろう。本発明の熱硬化樹脂は、また、例えば粉末塗料、接着剤、構造積層板、電気用積層板、コーティング、注型品、航空宇宙産業用の構造体、電子産業用の回路基板等として並びにスキー、スキーポール、釣り竿及びその他の屋外スポーツ装備の形成用を含む他の種々の最終使用用途において使用することができる。本明細書中に開示された組成物は、また、とりわけ電気用ワニス、カプセル品、半導体、一般的成形粉末、フィラメント巻パイプ、貯蔵タンク、ポンプ用内張及び防蝕コーティングにおいて使用することができる。
【0117】
本発明は、本発明の硬化組成物から物品を製造する際に有用である。この物品には、例えば注型品、注封品、カプセル品、コーティング、コンポジット又は積層板が含まれてよい。この物品には、また、例えばプリント回路基板、電気用若しくは電子用注型品、電気用若しくは電子用注封品、電気用若しくは電子用カプセル品、電気用積層板、構造コンポジット又は保護皮膜が含まれてよい。
【実施例】
【0118】
下記の実施例及び比較例は、更に、本発明を詳細に例示するが、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0119】
下記の実施例において使用される種々の用語及び名称には、例えば下記のものが含まれる。D.E.R.(登録商標)330は、The Dow Chemical Companyから入手可能な、177g/eq〜189g/eqのエポキシ当量重量(EEW)を有する、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。D.E.R.(登録商標)560は、The Dow Chemical Companyによって供給された、約455g/eqのエポキシ当量重量(EEW)を有する、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。Dowanol(登録商標)PMは、The Dow Chemical Companyによって供給された、プロピレングリコールメチルエーテルを含有する溶媒である。Plenco13943は、Plastics Engineering Co.から入手可能な、フェノールノボラックエポキシ樹脂である。「Al触媒」は、Alfa Aesarから入手可能な、エチルトリフェニルホスホニウムアシッドアセテート(ethyl triphenylphosphonium acid acetate)から製造された触媒である。EPON(登録商標)P101は、Hexion Chemicalから入手可能な触媒である。「DICY」は、ジシアンジアミドを表す。「DMA」は、動的機械的分析を表す。「DSC」は、示差走査熱量測定を表す。「EEW」は、エポキシ当量重量を表す。「HEW」は、ヒドロキシル当量重量を表す。「2−MI」は、2−メチル−イミダゾールを表す。「TBBA」は、The Dow Chemical Companyによって供給された、テトラブロモビスフェノールA(これは、272の当量重量を有する)を表す。XZ92747は、Kolon Chemicalから(韓国から)KBE F4113として市販されている、約21重量%のビスフェノールA含有量を有するビスフェノールAノボラック硬化剤である。XZ92755は、Kolon Chemicalから(韓国から)市販されている、約17重量%のより低いビスフェノールA含有量を有する、KBE F4127をベースにするビスフェノールAノボラック硬化剤である。Herinol KBE F4127は、Kolon Chemicalから(韓国から)市販されている、約17重量%のより低いビスフェノールA含有量を有するKBE F4127をベースにするビスフェノールAノボラック硬化剤である。
【0120】
下記の標準的分析装置及び方法を、実施例において使用する。
【0121】
エポキシ当量重量(EEW)は、氷酢酸中のテトラエチルアンモニウムブロミドの存在下での、0.1M過塩素酸による、エポキシ樹脂サンプル(約0.4mg)の比色滴定によって測定した。ASTM D1652方法に従って、指示薬としてクリスタルバイオレットを使用した。
【0122】
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により、20℃/分の加熱勾配で50℃から220℃まで測定した。
【0123】
樹脂溶液の反応性は、樹脂溶液のサンプルを、170℃のホットプレートの表面上に置くことによって測定した。樹脂溶液の反応性測定値は、170℃でゲル化のために必要な秒での経過時間(「ゲル時間」)として報告する。
【0124】
軟化点は、Mettler FP80により、室温(約25℃)から200℃まで3℃/分の加熱勾配で決定した。
【0125】
熱重量分析(TGA)を、分解温度Tdを測定するために使用した。TGAは、TA Instrumentsからの熱重量分析計TGA2950(これに自動サンプリングデバイスを取り付け、これをパーソナルコンピュータに接続する)を使用することによって実施した。TGA分析計は、窒素雰囲気下で操作した。分解温度Tdは、10℃/分の加熱勾配で50℃から700℃まで、IPC−TM−650−2.3.40に従って測定した。Tdは、パーセント重量損失(他の方法で記載した場合を除く、即ち、1%、2%、5%又は10%重量損失)で決定した。典型的な実験誤差は±1℃であった。
【0126】
実施例1
ビスフェノールシクロドデカノンとD.E.R.(登録商標)330とのアドバンスト反応
ビスフェノールシクロドデカノンの66.8グラム(g)サンプル(189.8ミリモル)を、500mLのガラス反応器内で、133.1gのD.E.R.(登録商標)330(371.8ミリモル)中に、140℃で溶解させて、混合物を形成させた。この混合物を80℃まで冷却し、次いで100ミリグラムのAl触媒溶液(メタノール中70%固体)をこの混合物に添加し、ビスフェノールシクロドデカノンとD.E.R.(登録商標)330との反応を開始させた。アドバンスト反応を150℃で実施して、アドバンスト樹脂Aを形成させた。1時間後に、このアドバンスト樹脂Aを、滴定によってキャラクタリゼーションした。滴定から得られたアドバンスト樹脂AのEEWは、520g/eq(EEW理論=551g/eq)であった。アドバンスト樹脂AのTgは、10℃/分の加熱勾配でDSCによって測定した。Tgは54℃であった。
【0127】
比較例A
ビスフェノールAの52.5gサンプル(230.3ミリモル)を、500mLのガラス反応器内で、147.4gのD.E.R.(登録商標)330(411.7ミリモル)中に、140℃で溶解させた。この混合物を80℃まで冷却し、次いで100mgのAl触媒溶液(メタノール中70%固体)をこの混合物に添加し、ビスフェノールAとD.E.R.(登録商標)330とのアドバンスメント反応を開始させた。この反応を150℃で実施して、比較アドバンスト樹脂Aを形成させた。1時間後に、この比較アドバンスト樹脂Aを、滴定によってキャラクタリゼーションした。滴定から得られた比較アドバンスト樹脂AのEEWは、569g/eq(EEW理論=552g/eq)であった。比較アドバンスト樹脂AのTgは、10℃/分の加熱勾配でDSCによって測定した。Tgは49℃であった。
【0128】
アドバンストビスフェノールシクロドデカノン樹脂(実施例1)は、アドバンストビスフェノールA樹脂(比較例A)よりも高い樹脂Tgを有する。樹脂についてのより高いTgは、樹脂の貯蔵安定性のために有利であろう。
【0129】
実施例2
ビスフェノールシクロドデカノンとD.E.R.(登録商標)330とのアドバンスト樹脂硬化
上記実施例1から得られたアドバンスト樹脂A(EEW=520g/eq)の20.0gサンプルを、0.48gのdicy及び0.25gのEPON(登録商標)P101と混合した。この混合物を、200℃で2時間硬化させて、硬化樹脂Aを形成させた。硬化樹脂AのTgを、DSCによって10℃/分の加熱勾配で測定した。硬化樹脂AのTgは141℃であった。
【0130】
比較例B
上記比較例Aから得られたアドバンスト樹脂B(EEW=569g/eq)の20.0gサンプルを、0.45gのdicy(当量重量=14g/eq)及び0.26gのEPON P101と混合した。
【0131】
この混合物を、200℃で2時間硬化させて、硬化樹脂Bを形成させた。硬化樹脂BのTgを、DSCによって10℃/分の加熱勾配で測定した。硬化樹脂BのTgは115℃であった。
【0132】
実施例2の硬化樹脂及び比較例Bの硬化樹脂は、硬化樹脂A(アドバンストビスフェノールシクロドデカノン樹脂、実施例2)及び硬化樹脂B(アドバンストビスフェノールA樹脂、比較例B)について同様のEEWでTgを示す。ビスフェノールシクロドデカノンの使用は、硬化樹脂Aが、約26℃ほど硬化樹脂Bを越えて上昇したTgを有することを示している。
【0133】
実施例3及び比較例C
2種の樹脂(樹脂C及び比較樹脂C)の靱性を、DMAによって測定した。樹脂Cを含む実施例2の硬化樹脂は、実施例1における手順を使用して製造されたアドバンストビスフェノールシクロドデカノン樹脂である。樹脂Cを、実施例2における手順を使用してPlenco13943によって硬化させた。この硬化樹脂を本明細書において「硬化樹脂C」(実施例3)として参照する。
【0134】
比較樹脂Cは、従来のビスフェノールA、DER330である。比較樹脂Cを、比較例Bの手順を使用してPlenco13943によって硬化させた[本明細書において、「比較硬化樹脂C」(比較例C)]。
【0135】
硬化樹脂C及び比較硬化樹脂Cは、約130℃で同様のガラス転移温度(Tg)を有する。上記の2種の樹脂の靱性は、樹脂が同様のガラス転移温度(Tg)を有するので比較することができる。
【0136】
靱性は、ヤング率(E’)における低下によって定義することができる。この2種の樹脂は、約130℃でのガラス転移の結果として、より低い剛性(弾性率低下)を得る。硬化樹脂Cのヤング率(E’)は、130℃のTgの前の約5×10Paから、130℃のTgの後の約3×10Paまで低下する。
【0137】
ゴムモジュラス(rubber modulus)範囲(Tgが130℃に到達した後)内の硬化樹脂Cのヤング率(E’)は、同じゴムモジュラス範囲内で、比較硬化樹脂Cのものよりも低いヤング率(E’)(改良された靱性)を有する。従って、硬化樹脂Cは、ビスフェノールシクロドデカノンを使用することによって、従来のビスフェノールAを使用する比較硬化樹脂Cを超えた改良された靱性を有する。
【0138】
本発明の実施例の結果は、ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物のジグリシジルエーテルからなるエポキシ樹脂が、従来のエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAをベースにするものよりも高い樹脂ガラス転移温度(樹脂Tg)を有することを示している(実施例1及び比較例Aを参照)。本発明の硬化エポキシ樹脂は、従来のビスフェノールAをベースにするエポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂よりも高い硬化ガラス転移温度(硬化Tg)を示す(実施例2及び比較例Bを参照)。本発明の硬化エポキシ樹脂は、また、フェノール系硬化剤によって硬化された従来のエポキシ樹脂に対して比較して、改良された機械的特性、例えば、靱性を有し、従って、本発明のエポキシ樹脂は、改良された耐衝撃性を有する(実施例3及び比較例Cを参照)。
【0139】
実施例4
アドバンストビスフェノールシクロドデカノン樹脂から製造された積層板
パートA.D.E.R.(登録商標)330を含有するアドバンストビスフェノールシクロドデカノン
ビスフェノールシクロドデカノンの99.88gサンプル(0.57モル)を、500mLのガラス反応器内で、399.88gのD.E.R.(登録商標)330(2.22モル)中に、140℃で溶解させて、混合物を形成させた。この混合物を80℃まで冷却し、次いで231mgのAl触媒溶液(メタノール中70%固体)をこの混合物に添加した。Al触媒溶液を含有する得られる混合物を、約150℃まで加熱した。ビスフェノールシクロドデカノンとD.E.R.(登録商標)330とのアドバンスト反応を150℃で約1時間実施して、アドバンスト樹脂Eを形成させた。
【0140】
滴定によって測定されたアドバンスト樹脂EのEEWは、297g/eq(EEW理論は302g/eqである)であった。DSCによって測定されたアドバンスト樹脂EのTgは、13℃であった。
【0141】
75.0gの上記の反応から得られたアドバンスト樹脂E(EEW=297g/eq)及び29.5gのHerinol KBE F4127(HEW=117)を、75.0gのDowanol(登録商標)PM中に溶解させて、樹脂Fを形成させた。樹脂Fの反応性(即ち、秒でのゲル時間)を、400mgの2−MI溶液(Dowanol(登録商標)PM中20%固体)を添加することによって、280秒に調節した。
【0142】
パートB.プリプレグ及び積層板
47重量%の上記パートAで製造した樹脂F(溶媒無しで計算した、即ち、100%固体含有量)を53重量%のstyle7628ガラスクロス(Porcher731仕上)の上にコーティングすることによって、プリプレグを製造した。樹脂F中の溶媒(Dowanol(登録商標)PM)を、温度を約165℃に設定したオーブン内で、約5分間蒸発させて、プリプレグを形成させた。
【0143】
上記製造したプリプレグを使用して、下記のようにして如何なる更なる修正も無しに積層板を製造した。8枚のプリプレグのシート(それぞれ20cm×20cm)を、約0.7バールの圧力を有するフロープレス内で、約190℃で1時間プレスして、積層板を形成させた。
【0144】
実施例5
臭素化したアドバンストビスフェノールシクロドデカノン樹脂
150g(100%固体含有量基準)のビスフェノールシクロドデカノン、150グラムのD.E.R.(登録商標)560(58.8%のBrで100%固体含有量基準)及び200gのDowanol(登録商標)PM溶媒を、反応器の中に装入した。この混合物を60℃まで加温して、ビスフェノールシクロドデカノン及びD.E.R.(登録商標)560をDowanol(登録商標)PM溶媒中に溶解させた。次いで、この混合物を、この混合物に添加した0.643gのAl触媒溶液(メタノール中70%固体)と共に、100℃まで加熱した。この混合物を、Dowanol(登録商標)PM溶媒が還流で沸騰し始める(137℃)まで連続的に加熱した。ビスフェノールシクロドデカノンとD.E.R.(登録商標)560とのアドバンスト反応を、137℃で約150分間行って、臭素化アドバンスト樹脂Gを形成させた。臭素化アドバンスト樹脂Gを、室温にまで冷却させた。
【0145】
臭素化アドバンスト樹脂GのEEW及びTgを、前記の方法に従って測定した。その結果を下記の通り列挙する。EEWは297g/eq(EEW理論は302g/eqである)であり、Tgは13℃であった。
【0146】
臭素化アドバンスト樹脂Gを使用して、The Dow Chemical Companyから入手可能な、硬化剤、XZ92747及びXZ92755と共に樹脂配合物を形成させた。
【0147】
約59.95重量%の上記の反応から得られた臭素化アドバンスト樹脂G並びに33.29重量%のXZ92747及び6.63重量%のXZ92755を、0.13重量%の2−MI溶液(Dowanol(登録商標)PM中20%固体)中に溶解させて、樹脂配合物を形成させた。
【0148】
前記樹脂配合物の反応性を、3回測定して、249秒の平均結果であった。Tgを、DSC(フィルム)によって、20℃/分で50℃から220℃まで2回走査することにより測定して、120℃の平均結果であった。この樹脂配合物を、続いて、ホットプレート上で、170℃で10分間及び190℃で90分間硬化させて、硬化臭素化アドバンストビスフェノールシクロドデカノン樹脂生成物を形成させた。
【0149】
実施例6
エポキシ化ビスフェノールシクロドデカノン(ビスフェノールシクロドデカノン変性エポキシ樹脂)の形成
下記の手順に従って、ビスフェノールシクロドデカノンをエピクロロヒドリンと、7.5:1の比(エピクロロヒドリン対ヒドロキシル(−OH)当量)で反応させることによって、ビスフェノールシクロドデカノンのエポキシ化を行った。
【0150】
サーモスタット制御加熱マントルを取り付けた2リットルの三つ口丸底ガラス反応器に、ビスフェノールシクロドデカノン(176g、1.0ヒドロキシル当量)、エピクロロヒドリン(694g、7.5モル)及びイソプロパノール(373g、使用したエピクロロヒドリンの35重量%)を装入した。この反応器を、実験の間50℃で維持した。この反応器に、更に、凝縮器(−15℃に維持された)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1LPM Nを使用した)及び攪拌機アセンブリ(PTFEパドル、ガラス軸、可変速モーター)を取り付けた。初期水酸化ナトリウム溶液(水中20%、180g)を、サイドアーム排気添加漏斗から、20〜30分間かけて添加した。得られた混合物を攪拌して、エピクロロヒドリン及びイソプロパノール中のビスフェノールシクロドデカノンのスラリーを得た。
【0151】
20分間の後反応の後に、攪拌を停止した。水層及び有機層が形成された。この混合物から水層を除去した。有機層の加熱及び攪拌を、50℃まで再開した。水酸化ナトリウムの第二部分(水中20%、80g)の滴下による添加を、温度を50℃で維持しながら、20分間かけて完結した。
【0152】
同様に、20分間の後反応の後に、攪拌を停止し、水層及び有機層が形成された。この混合物から水層を除去した。有機層を、脱イオン水の3〜4個の部分(それぞれ250ml)で、有機層の7のpHが達成されるまで洗浄した。75℃の最高油浴温度を使用する有機層のロータリー蒸発を使用して、有機層中に存在する揮発物質の大半を除去した。125℃で2〜3時間(16mbar)の更なるロータリー蒸発によって、透明で無色の液体であったエポキシ化ビスフェノールシクロドデカノン230gが得られた。得られた液体は、室温(約25℃)で脆い固体に固化した。
【0153】
実施例7
エポキシ化ビスフェノールシクロドデカノンとTBBAとのアドバンスト反応によって形成されたアドバンスト臭素化エポキシ樹脂
上記実施例6から得られたエポキシ化ビスフェノールシクロドデカノン生成物(EEW 236g/eq)の7.63gサンプル及び4.52gのTBBA(EEW 272g/eq、Br58.8%)を、ホットプレート上のアルミニウムカップ内で溶融させて、均一混合物を得た。約0.0049gのAl触媒を、この均一混合物に添加した。エポキシ化ビスフェノールシクロドデカノン生成物とTBBAとのアドバンスト反応を、120℃で1時間行って、アドバンスト樹脂を形成させた。次いで、このアドバンスト樹脂を2.98gのアセトン(アセトン中80%固体)中にDICYと共に溶解させて、樹脂混合物を形成させた。この樹脂混合物をホットプレート上で170℃で10分間及び190℃で90分間硬化させて、アドバンスト臭素化エポキシ樹脂生成物を形成させた。
【0154】
このアドバンスト臭素化エポキシ樹脂の反応性を、3回測定した。この樹脂は、205秒の平均反応性を有していた。この樹脂のTgを、DSC(フィルム)によって測定した。このフィルムを、20℃/分で50℃から220℃まで2回走査した。この樹脂は、168.3℃の平均Tgを有していた。この臭素化エポキシ樹脂のフィルム分解温度(Td)を、前記の手順に従ってTGAによって測定した。Td測定の結果を、下記の表Iに示す。
【0155】
【表1】

【0156】
実施例8及び比較例D
パートA.プリプレグ手順
ガラスウエブ(Porcherスタイル Nr.7628/36アミンシラン仕上)にワニス混合物を含浸させることによって、プリプレグを製造した。一方のワニス混合物(実施例8)は、実施例7のアドバンスト臭素化樹脂から製造し、別のワニス混合物(比較例D)は、TBBAでアドバンスした従来のエポキシ化ビスフェノールAから製造した。プリプレグは、長さが3メートルのCaratschパイロットトリーターを使用して形成した。「ハンドレイアップ」は、ワニスをガラスウエブの上に注ぐことによって製造した。ワニスをガラスウエブ全体に広げ、その後、ガラスウエブをトリーターローラーに通過させた。次いで、樹脂含浸ウエブをトリーターに通過させ、175〜180℃の温度で加熱して、得られるプリプレグを形成させた。
【0157】
パートB.積層板手順
上記パートAからのプリプレグ8個の層を、両側上の銅箔と共に積み重ねることによって、積層板を製造した。8個の層を20N/cmで、3°K/分の加熱勾配で室温から190℃までプレスし、そして90分間保持した。
【0158】
下記の表IIは、TBBAでアドバンスした従来のエポキシ化ビスフェノールAから製造した積層板(比較例D)及びTBBAでアドバンスした実施例7のエポキシ化ビスフェノールシクロドデカノン生成物から製造した積層板(実施例8)の比較を示す。
【0159】
【表2】

【0160】
実施例9
eCDONの合成
サーモスタット制御加熱マントルを取り付けた2リットルの三つ口丸底ガラス反応器に、シクロドデカノンのビスフェノール(約176g、1.0ヒドロキシル当量)、エピクロロヒドリン(約694g、7.5モル)及びイソプロパノール(約373g、使用したエピクロロヒドリンの35重量%)を装入した。この反応器に、更に、凝縮器(−15℃に維持された)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1LPM Nを使用した)及び攪拌機アセンブリ(テフロン(登録商標)パドル、ガラス軸、可変速モーター)を取り付けた。50℃で溶解した後、水酸化ナトリウムの溶液(水中20%、180g)を、サイドアーム排気添加漏斗から、20〜30分間かけて添加した。攪拌を開始して、エピクロロヒドリン及びイソプロパノール中のビスフェノールシクロドデカノンのスラリーを得た。この反応の間、温度を50℃で維持した。20分間の後反応の後に、攪拌を停止し、水層を有機層から除去した。
【0161】
有機層の加熱及び攪拌を、50℃まで再開した。有機層への水酸化ナトリウムの第二部分(水中20%、80g)の滴下による添加を、温度を50℃で維持しながら、20分間かけて完結した。20分間の後反応の後に、攪拌を停止し、水層を有機層生成物から除去した。次いで、有機層を、脱イオン水の3〜4個の部分(それぞれ250ml)で、有機層の7のpHが達成されるまで洗浄した。
【0162】
75℃の油浴温度を使用する有機層のロータリー蒸発を使用して、揮発物質の大半を除去した。125℃で2〜3時間(16mbar)の更なるロータリー蒸発によって、透明で無色の液体約225〜235gが得られ、これは、室温(約25℃)で脆い固体に固化した。得られた樹脂は、ビスフェノールシクロドデカノンのジグリシジルエーテル(ここでは「eCDON」)であり、表IIIに示す下記の特性を有していた。
【0163】
【表3】

【0164】
実施例10
eCDONを使用する粉末組成物の製造
上記実施例9において製造されたeCDON(EEW236g/eq)のサンプル20g、1.06gのdicy(当量重量=14g/モル)及び0.35gのEPON P101を、15℃で10秒間、微細な粉末にまで混合した。次いで、この粉末を、200℃で30分間硬化させた。得られた熱硬化樹脂のガラス転移温度(Tg)を、10℃/分の加熱勾配で50℃から300℃まで記録した。得られた熱硬化樹脂のTgは約198℃であった。
【0165】
比較例E
従来の樹脂を使用する粉末組成物の製造
エポキシ樹脂D.E.R.330(EEW179g/eq)(The Dow Chemical Companyから市販されている、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル材料)の20gサンプル、1.4gのdicy(当量重量=14g/モル)及び0.35gのEPON P101を、120℃で及び180℃で20分間混合した。得られた生成物を、150℃で10秒間、微細な粉末にまで混合し、次いでこれを、200℃で30分間硬化させた。得られた熱硬化樹脂のTgを、10℃/分の加熱勾配で50℃から300℃まで記録した。得られた熱硬化樹脂のTgは、約143℃であった。
【0166】
上記の実施例9及び比較例Eにおいて示されるように、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル材料の使用(比較例E)に対して比較したとき、ビスフェノールシクロドデカノンのジグリシジルエーテルの使用(実施例1)は、それぞれ、143℃に対して198℃のTgを有する熱硬化生成物になった。ビスフェノールシクロドデカノンのジグリシジルエーテルの使用は、得られる熱硬化生成物のTgを55℃ほど上昇させた。
【0167】
実施例11
dicyによるeCDONの硬化
eCDONのサンプル(4.62g)、dicy(0.34g)及び2−フェニルイミダゾール(0.038g)を、極低温粉砕によって混合した。極低温粉砕手順には、固体を、ねじ込み末端を有するステンレススチールシリンダーに添加すること、金属球を添加すること、内容物を液体窒素中で冷却すること及びアセンブリーを10分間振盪することが含まれる。このシリンダーを窒素パージバッグの中に入れ、室温(25℃)にまで暖めた。シリンダーからの粉末の一部をアルミニウムパンの中に入れ、真空オーブン内で190℃で90分間加熱して、透明な注型品を形成させた。DSCによって、202℃のTgが観察された。この注型品を、4個の片に切断し、それぞれの片を秤量し、4個の片全部を、スチームオートクレーブの中に121℃で90分間置いた。それぞれの片の重量増分を、パーセントとして表し、4個の値を平均して、2.3重量%の値を得た。
【0168】
比較例F
dicyによるD.E.R.(登録商標)331の硬化
下記の反応剤、即ち、D.E.R.(登録商標)331(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、4.51g)、dicy(0.44g)及び2−フェニルイミダゾール(0.05g)を使用した以外は、実施例11に記載された同じ手順を繰り返した。DSCによって139℃のTgが観察され、水吸収は3.9重量%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式I:
【化1】

[式中、Rは水素又はメチル基であり、R及びRは、互いから独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアラルキル基、ニトリル基、ニトロ基又は置換若しくは非置換のアルコキシ基を表し、XはCH、CH(R)又はC(R)(R)であり、mは8と20との間の整数であり、R及びRは、お互いから独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のアラルキル基を表し、そしてnは0〜約10の値を有する整数である]
によって表されるエポキシを含んでなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物のジグリシジルエーテルを含んでなる請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(a)1種又はそれ以上のヒドロキシル含有化合物と(b)化学量論的過剰の、1種又はそれ以上の請求項1に記載のエポキシ樹脂との反応生成物を含んでなるアドバンストエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
下記式II:
【化2】

[式中、R、R、R、R、R、X及びmは式Iにおいて定義した通りであり、yは1〜約20の値を有する整数であり、Qはヒドロカルビレン部分であり、それぞれのZは、独立に、O、S、−NR(式中、Rはヒドロカルビル部分である)からなる群から選択される]
の一般的化学構造によって表される請求項3に記載のアドバンストエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(a)1種又はそれ以上のヒドロキシル含有化合物と(b)化学量論的不足量の、1種又はそれ以上の請求項1に記載のエポキシ樹脂との反応生成物を含んでなるアドバンスト活性水素含有樹脂組成物。
【請求項6】
下記の式III:
【化3】

(式中、Q、Z、R、R、R、R、R、p、X及びmは式IIにおいて定義した通りであり、ZはZ−Hに等しく、そしてyは0〜約20の値を有する整数である)
の一般化学構造によって表される請求項5に記載のアドバンスト活性水素含有樹脂組成物。
【請求項7】
(a)少なくとも1種のエポキシ樹脂と(b)エポキシ官能基を除く、1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子(ここで、反応性水素原子は、式Iによって表される該エポキシ樹脂組成物中のエポキシド基と反応性である)を有する少なくとも1種の化合物とを反応させることを含んでなる請求項1に記載の式Iのエポキシ樹脂組成物の製造プロセス。
【請求項8】
成分(b)であるビスフェノール化合物が下記一般式IV:
【化4】

[式中、R及びRは、互いから独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のアラルキル基を表し、XはCH、CH(R)又はC(R)(R)であり、mは8と20との間の整数であり、そしてR及びRは、互いから独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のアラルキル基を表す]
によって表されるビスフェノール化合物を含んでなる請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
エポキシ樹脂成分(a)が、組成物の合計重量基準で、約10重量%〜約80重量%を含み、成分(b)が、組成物の合計重量基準で、約20重量%〜約80重量%を含んでなる請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
(a)請求項1に記載の組成物、(b)少なくとも1種の硬化剤及び(c)任意的に、硬化触媒を含んでなる熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記組成物が粉末塗料組成物又は電気用積層板組成物である請求項10に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
(I)化学量論的過剰量の、1種又はそれ以上の、請求項1に記載の式Iによって表されるエポキシ樹脂組成物と、(II)1種又はそれ以上の、エポキシ官能基を除く、1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子を有する化合物(ここで、反応性水素原子は式Iによって表される該エポキシ樹脂組成物中のエポキシド基と反応性である)とを反応させることを含んでなるアドバンストエポキシ樹脂組成物の製造プロセス。
【請求項13】
前記アドバンストエポキシ樹脂組成物が下記式II:
【化5】

[式中、R、R、R、R、R、X及びmは式Iにおいて定義した通りであり、yは1〜約20の値を有する整数であり、Qはヒドロカルビレン部分であり、そしてそれぞれのZは、独立に、O、S、−NR(式中、Rは、ヒドロカルビル部分である)からなる群から選択される]
の一般化学構造によって表される請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
(1)化学量論的不足量の、1種又はそれ以上の、請求項1に記載の式Iによって表されるエポキシ樹脂組成物と、(2)1種又はそれ以上の、エポキシ官能基を除く、1分子当たり平均で1個より多い反応性水素原子を有する化合物(ここで、反応性水素原子は式Iによって表される該エポキシ樹脂組成物中のエポキシド基と反応性である)とを反応させることを含んでなるアドバンスト反応性樹脂組成物の製造プロセス。
【請求項15】
前記アドバンスト反応性樹脂組成物が下記式III:
【化6】

(式中、R、R、R、R、R、X、Z、m及びQは式IIにおいて定義した通りであり、ZはZ−Hに等しく、そしてyは0〜約20の値を有する整数である)
の一般化学構造によって表される請求項14に記載のプロセス。

【公表番号】特表2013−512988(P2013−512988A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542034(P2012−542034)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/056102
【国際公開番号】WO2011/068644
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】