説明

エポシロンを含有する組合せ剤およびその医薬上の使用

【課題】増殖性疾患の進行を遅延させるかまたは処置するために有用である組合せ剤を提供する。
【解決手段】(a)ビスホスホネート、プラチナ化合物または血管静止性化合物、および(b)式I


〔式中、AはOまたはNRを表し、Rは水素または低級アルキルであり、Rは水素または低級アルキルであり、そしてZはOまたは単結合である。〕で示されるエポシロン誘導体を含有する組合せ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ増殖性疾患、特に充実性腫瘍の進行を遅延させるかまたは処置するために、(a)ビスホスホネート、プラチナ化合物または血管静止性化合物、および(b)式Iのエポシロン誘導体を含有する組合せ剤に関し、同時使用、個別使用または逐次使用のために、必要に応じて、少なくとも一つの薬学的に許容され得る担体があってもよい。このような組合せ剤を含有する医薬組成物;増殖性疾患の進行を遅延させるかまたは処置するための薬剤を調製するための、このような組合せ剤の使用;同時使用、個別使用または逐次使用のための組合せ調製品としての、このような組合せ剤を含有する市販用パッケージまたは製品;および温血動物、特にヒトを処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の異なるタイプの腫瘍の処置にTaxol(登録商標)およびTaxotere(登録商標)が広く用いられているにもかかわらず、患者の延命に与えるタキサン類の影響は大きくなく、そして転移性の腫瘍のほとんどすべては依然として不治のままである。タキサンの処置には、末梢神経障害および口内炎といった多種類の顕著な副作用が伴い、そしてタキサン類の有効性は、急激に発達する薬剤耐性メカニズムによって大幅に制限を受ける可能性がある。このメカニズムは、薬剤の流出ポンプとして機能するチューブリンの突然変異またはホスホ糖タンパク質の過剰発現に関わっているかもしれない。これらの制限ならびに標準的な多剤併用療法に伴って一般的に見られる副作用を考慮すると、より広い抗腫瘍活性スペクトル、複数の薬剤に対して耐性を持つ腫瘍に対する有効性、およびより高い安全性とより高い許容性などの特徴を全体的に向上させる新しい組合せ剤を同定する必要性が、明らかに存在する。
【0003】
ビスホスホネート類の治療上の有効性は、骨のページェット病、腫瘍誘発性高カルシウム血症、骨への転移および多発性骨髄腫の処置において実証されている(H. Fleisch, Bisphosphonates in Bone Disease. From the Laboratory to the Patient, Parthenon Publishing Group編、ニューヨーク/ロンドン、1997年、第68〜163頁)。
【0004】
VEGFの発現またはVEGF活性を阻害するという研究から、インビボでの腫瘍血管新生因子としての「血管内皮細胞増殖因子」(VEGF)の役割を示す直接的な証拠が得られている。このことは、VEGF活性を阻害する抗体、シグナル伝達を阻害するドミナントネガティブVEGFR−2変異体、またはアンチセンス−VEGF RNA技術を用いることによってなされた。VEGFチロシンキナーゼを阻害する小分子は、例えばWO98/35958に開示されている。これらの分子のうちの一つは、PTK787として知られている。
【0005】
エポシロン類の微小管を安定させる効果は、Bollag et al., Cancer Research 55, 1995, 2325-33によって最初に記載された。種々のタイプの腫瘍、特にその他の化学療法、とりわけTAXOL(商標)による処置では手に負えない腫瘍の適切な処置計画について、WO99/43320に記載されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は組合せ剤、例えば組合せ調製品または医薬組成物に関する。このものは、(a)ビスホスホネート、プラチナ化合物または血管静止性化合物、および(b)式I
【化1】

〔式中、AはOまたはNRを表し、Rは水素または低級アルキルであり、Rは水素または低級アルキルであり、そしてZはOまたは単結合である。〕
のエポシロン誘導体を含有する。そして、有効成分の(a)および(b)はそれぞれ遊離した形態で存在するか、または薬学的に許容され得る塩の形態で存在し、同時使用、個別使用または逐次使用のために、必要に応じて、少なくとも一つの薬学的に許容され得る担体があってもよい。
【0007】
別途規定されていない限り、本開示内容において「低級」と指定される有機基および有機化合物には、7以下、好ましくは4以下の炭素原子のものが含まれる。
【0008】
AがOを表し、Rが水素であり、そしてZがOである式Iの化合物は、エポシロンAとして知られている;AがOを表し、Rがメチルであり、そしてZがOである式Iの化合物は、エポシロンBとして知られている;AがOを表し、Rが水素であり、そしてZが単結合である式Iの化合物は、エポシロンCとして知られている;AがOを表し、Rがメチルであり、そしてZが単結合である式Iの化合物は、エポシロンDとして知られている。
【0009】
本明細書で用いられる「組合せ調製品」という用語は、特に、上記に規定されたような組合せ相手の(a)および(b)を独立して服用させるか、または組合せ相手の(a)および(b)の特徴的な量を伴う種々の固定された組合せ剤を用いて服用させることが可能な、すなわち、同時にまたは異なる時点で服用させることが可能であるという意味における、「キット・オブ・パーツ(kit of parts)」を規定する。次いで、キット・オブ・パーツの成分を、例えば、同時にまたは時間を順にずらせて−すなわち、キット・オブ・パーツ中の任意の成分について、異なる時点で、かつ等しい時間間隔または異なる時間間隔で−投与することができる。成分を組み合せて用いた際の処置される疾患に与える効果の方が、組合せ相手の(a)および(b)のいずれか一方のみを用いて得られるだろう効果よりも大きくなるように、時間間隔を選択することが非常に好ましい。例えば、処置を受ける下位集団の患者の必要性に対処するために、または患者の年齢、性別、体重などによって異なり得る一人の患者の必要性に対処するために、組合せ調製品における、投与される組合せ相手(b)に対する組合せ相手(a)の総量の割合を変えることが可能である。少なくとも一つの有益な効果、例えば、組合せ相手の(a)および(b)の効果を互いに高めること、とりわけ相乗効果があることが好ましい。具体的には、相加効果を超えるもの、追加的な効果、副作用がより少ないこと、組合せ相手の(a)および(b)の一方または両方の効率的でない投与量で組み合わさった治療効果があり、そして組合せ相手の(a)および(b)の強力な相乗効果が非常に好ましい。
【0010】
「充実性腫瘍」という用語は、特に、乳ガン、卵巣ガン、大腸ガンおよび胃ガンなどの一般的な消化器ガン、子宮頚ガン、小細胞肺ガンおよび非小細胞肺ガンなどの肺ガン、膵臓ガン、腎臓ガン、グリオーム、メラノーマ、頭部または頚部のガン、膀胱ガン、肝細胞ガン、前立腺ガンおよびカポジ肉腫を意味する。プラチナ化合物を含有する組合せ剤によって処置を受ける増殖性疾患としては、卵巣ガン、肺ガン、頭部もしくは頚部のガン、子宮頚ガン、前立腺ガン、大腸ガン、乳ガン、腎臓ガン、カルチノイド、胃ガンまたは肝細胞ガンが好ましい。ビスホスホネートを含有する組合せ剤によって処置を受ける増殖性疾患としては、乳ガン、卵巣ガンまたは肺ガンが好ましい。本発明の別の好ましい態様において、血管静止性化合物、とりわけPTK787を含有する『本発明の組合せ剤』によって処置を受ける増殖性疾患としては、卵巣ガン、乳ガン、肺ガン、頭部もしくは頚部のガン、子宮頚ガン、前立腺ガンまたは大腸ガンがある。
【0011】
本明細書で用いられる「増殖性疾患」という用語には、上記のような充実性腫瘍と、さらに骨のページェット病、腫瘍誘発性高カルシウム血症、骨への転移および多発性骨髄腫が含まれる。
【0012】
「無秩序な脈管形成に関連する疾患」という用語は、特に、眼での新生血管形成、特に網膜症−例えば糖尿病性網膜症もしくは加齢性黄斑変性症など−、乾癬、血管芽細胞腫−例えば血管腫など−、メサンギウム細胞増殖性疾患−例えば慢性もしくは急性腎臓病、具体的には糖尿病性ニューロパシー、悪性腎硬化症、血栓性微小血管症候群もしくは移植の拒絶反応または特に炎症性腎臓病(例えば糸球体腎炎、特にメサンギウム増殖性糸球体腎炎)など−、溶血性尿毒症症候群、糖尿病性ニューロパシー、高血圧性腎硬化症、アテローム、動脈の再狭窄、自己免疫疾患、急性炎症、線維形成障害(例えば肝硬変)、神経変性障害、および特に増殖性疾患、とりわけc−kit、KDRまたはflt−1を発現する腫瘍を含有する増殖性疾患によって引き起こされる疾患に関する。
【0013】
本明細書で用いられる「ビスホスホネート」という用語には、エトリドン酸、クロドロン酸、チルドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸およびゾレドロン酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、DIDRONEL(商標)という商標で市販されているような形態で、「エトリドン酸」を投与することができる。例えば、BONEFOS(商標)という商標で市販されているような形態で、「クロドロン酸」を投与することができる。例えば、SKELID(商標)という商標で市販されているような形態で、「チルドロン酸」を投与することができる。例えば、AREDIA(商標)という商標で市販されているような形態で、「パミドロン酸」を投与することができる。例えば、FOSAMAX(商標)という商標で市販されているような形態で、「アレンドロン酸」を投与することができる。例えば、BONDRANAT(商標)という商標で市販されているような形態で、「イバンドロン酸」を投与することができる。例えば、ACTONEL(商標)という商標で市販されているような形態で、「リセドロン酸」を投与することができる。例えば、ZOMETA(商標)という商標で市販されているような形態で、「ゾレドロン酸」を投与することができる。
【0014】
本明細書で用いられる「プラチナ化合物」という用語は、カルボプラチン、シスプラチンまたはオキサリプラチンを意味する。
【0015】
本明細書で用いられる「カルボプラチン」という用語は、抗腫瘍剤のシス−ジアミン(1,1−シクロブタン=ジカルボキシラート)プラチナ(II)に関する。このものは、例えば、US4,140,707またはR.C. Harrison et al., Inorg. Chim. Acta 46, L15(1980)に開示されている。例えば、CARBOPLAT(商標)またはPARAPLATIN(商標)という商標で市販されているような形態で、この薬剤を投与することができる。
【0016】
本明細書で用いられる「オキサリプラチン」という用語は、オキサラトプラチナムとしても知られている抗腫瘍剤に関する。このものは、例えば、US5,716,988に開示されている。例えば、引用した米国特許に記載された形態か、またはELOXANTINE(商標)もしくは1−OHP(商標)という商標で市販されているような形態で、この薬剤を投与することができる。
【0017】
本明細書で用いられる「シスプラチン」という用語は、シス−ジアミンジクロロプラチナムとしても知られている抗腫瘍剤に関する。この化合物と抗腫瘍剤としてのその使用は、例えば、DE2,318,020に開示されている。
【0018】
本明細書で用いられる「血管静止性化合物」という用語は、VEGFの活性を低下させる有効成分、メタロプロテアーゼインヒビターおよび血管静止性効果を有するその他の化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
有効成分−VEGFの活性を低下させるもの−は、VEGFレセプターチロシンキナーゼを阻害する化合物、VEGFレセプターを阻害する化合物およびVEGFと結合する化合物からなる群より特に選択される。有効成分−VEGFの活性を低下させるもの−は、特に、これらの化合物、タンパク質、モノクローナル抗体のうちの一つである。これらは、WO98/35958(式IIの化合物が記載されている)、WO00/09495、WO00/27820、WO00/59509、WO98/11223、WO00/27819、WO01/55114、WO01/58899およびEP 0 769 947に一般的にかつ具体的に開示されており、M. Prewett et al., Cancer Research 59,(1999)、5209-5218, F. Yuan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA、vol. 93, pp. 14765-14770, 1996年12月, Z. Zhu et al., Cancer Res. 58、1998, 3209-3214、およびJ. Mordenti et al., Toxicologic Pathology, Vol. 27, no. 1, pp 14-21, 1999に記載されており、WO00/37502およびWO94/10202に一般的にかつ具体的に開示されており、そしてM. S. O’Reilly et al., Cell 79, 1994, 315-328 (Angiostatin(商標))およびM. S. O’Reilly et al., Cell 88, 1997, 277-285 (Endostatin(商標))に記載されているものである。それぞれの場合における医薬品および実施例の最終生産物における対象を、特に請求の範囲の化合物における医薬品および実施例の最終生産物における対象を、この公報に引用することによって、これらの対象が本出願に取り込まれる。その中に開示されている、対応する立体異性体ならびに対応する結晶の改変体、例えば溶媒化合物および多形体も、同様に包含される。本明細書において開示される組合せ剤において、有効成分として用いられる化合物を、引用した文献に記載されているように、それぞれ調製し投与することが可能である。
【0020】
本明細書で用いられる「PTK787」という用語は、式II
【化2】

〔式中、
r、nおよびmはそれぞれ0であり、RおよびRが一緒になって、部分式II*
【化3】

[式中、A、B、DおよびEはそれぞれCHであり、Gはメチレンであり、Xはイミノであり、Yは4−クロロフェニルであり、そして波線によって特徴付けられている結合は二重結合である。]
の橋を形成する。〕
の化合物を意味する。例えば、WO98/35958の実施例38に開示されている。このような化合物がそのコハク酸塩の形態で用いられることが好ましい。例えば、引用されたPCT特許出願に開示されたような形態で、この薬剤またはその塩を投与することができる。
【0021】
本明細書で規定されている「メタロプロテイナーゼインヒビター」とは、例えば、マリマスタット(BB−2516)、プリノマスタット(AG3340)、ベイ12−9566、BMS−275291、MMI270Bおよびメタスタット(NSC683551)である。
【0022】
本明細書で規定されている「血管静止性効果を有するその他の化合物」という用語は、とりわけ化合物EMD−121974、ドキソルビシン、パクリタキセル、IM−862、Thalidomide(登録商標)、Linomide(登録商標)、PKC412、AGM−1470、スラミンおよびペントサン ポリスルファートに関する。
【0023】
AはOまたはNRを表し、Rは水素または低級アルキルであり、Rは水素または低級アルキルであり、そしてZはOまたは単結合である式Iのエポシロン誘導体、およびこのようなエポシロン誘導体を調製する方法は、WO93/10121、US6,194,181、WO98/25929、WO98/08849、WO99/43653、WO98/22461およびWO00/31247の特許および特許出願に、特に一般的にかつ具体的に開示されている。それぞれの場合における最終生産物、医薬品および請求の範囲の対象、特に請求の範囲の化合物および実施例の最終生産物における最終生産物、医薬品および請求の範囲の対象をこの公報に引用することによって、これらの対象が本出願に取り込まれる。その中に開示されている、対応する立体異性体ならびに対応する結晶の改変体、例えば溶媒化合物および多形体も、同様に包含される。WO99/39694に開示される医薬組成物の一部として、式Iのエポシロン誘導体、特にエポシロンBを投与することができる。
【0024】
エポシロンBを対応するラクタムに変換することは、WO99/02514のスキーム21(第31、32頁)および実施例3(第48〜50頁)に開示されている。同様に、エポシロンBとは異なる式Iの化合物を対応するラクタムに変換することは可能である。例えば、Rが水素であるエポシロン誘導体から出発する還元的アルキル化反応などの技術的に公知の方法によって、Rが低級アルキルである式Iの対応するエポシロン誘導体を調製することが可能である。
【0025】
さらに、標準的な概論である「The Merck Index」の最新版から、またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から、本明細書で言及した名前の活性成分の構造を選択してもよい。引用することによって、その対応する内容が本明細書に取り込まれる。当業者であれば、これらの引用文献に基づいて、完全に製造することが可能であり、そして標準的な試験モデルにおいて、薬学的な指示および特性についてのインビトロおよびインビボの両方の試験を完全に行うことが可能である。
【0026】
引用された文献に記載のように、本明細書に開示される組合せ相手の(a)および(b)として用いられる化合物をそれぞれ調製し、投与することが可能である。
【0027】
組合せ相手の(a)および(b)についての言及が、薬学的に許容され得る塩を含むことを意味することも理解できるだろう。これらの組合せ相手の(a)および(b)が例えば少なくとも一つの塩基性中心を有する場合、これらは酸の添加による塩を形成することが可能である。必要であれば、さらに塩基性中心が存在する、対応する酸の添加による塩を形成することも可能である。酸性基(例えばCOOH)を有する組合せ相手の(a)および(b)は、塩基と共に塩を形成させることも可能である。水和物の形態か、または結晶化に用いられるその他の溶媒を含有する形態で、組合せ相手の(a)もしくは(b)またはその薬学的に許容され得る塩を用いてもよい。
【0028】
(a)ビスホスホネート、プラチナ化合物または血管静止性化合物、および(b)式I〔式中、化合物AはOまたはNRを表し、Rは水素または低級アルキルであり、Rは水素または低級アルキルであり、そしてZはOまたは単結合である。〕のエポシロン誘導体を含有し、そして、存在する有効成分はそれぞれ遊離した形態で存在するか、または薬学的に許容され得る塩の形態で存在し、必要に応じて、少なくとも一つの薬学的に許容され得る担体があってもよい組合せ剤を、以下では『本発明の組合せ剤』と称する。
【0029】
『本発明の組合せ剤』は、充実性腫瘍だけでなく液性腫瘍の成長も阻害する。本発明の一つの好ましい態様において、処置される疾患は前立腺ガンであり、とりわけ骨への転移を伴うホルモン治療抵抗性前立腺ガンである。さらに、血管静止性化合物、特にPTK787を含有する『本発明の組合せ剤』は、無秩序な脈管形成に関連する疾患の処置において有益な効果を示す。
【0030】
充実性腫瘍のような増殖性疾患の性質は多因性である。特定の環境下では、異なる作用機序を有する薬剤を組み合せてもよい。しかしながら、異なる作用様式を有する薬剤のあらゆる正しい組合せ剤を考慮することが、必ずしも効果を示す組合せ剤に到達するわけではない。
【0031】
さらに驚いたことのすべては、『本発明の組合せ剤』をインビボで投与した結果、『本発明の組合せ剤』で用いる薬学上の有効成分の一種のみを適用する単剤療法と比較して、例えば増殖性疾患の進行の遅延に関しての、または腫瘍の体積の変化に関しての、より有益な、特に相乗作用的な抗増殖効果および/またはより有益な、特に相乗作用的な骨関連事象(SRE)を防止する効果が生じるだけではなく、さらに驚くべき有益な効果、例えば、副作用の減少、死亡率および疾病率の低下も生じるという実験による発見である。さらに、単剤療法によっては腫瘍の体積が減少しない場合において『本発明の組合せ剤』を用いると、腫瘍のタイプおよび用いる特定の組合せ剤に依存して、腫瘍の体積を減少させることが可能である。『本発明の組合せ剤』はさらに、転移性の腫瘍の分散や成長、または微小なガン組織の転移の進行を抑制することにも適している。『本発明の組合せ剤』は特に、病気の結果を予測するのが困難な患者、すなわち、単独の薬剤または『本発明の組合せ剤』とは異なる組合せ剤でより初期に処置した後で、応答しなかったりまたは再発するような患者の処置に好適である。
【0032】
さらなる利点は、用いることができる、すなわち副作用の発生率を低下させるために、用いることができる『本発明の組合せ剤』の有効成分の投与量をより少なくすると、例えば、必要な投与量が多くの場合さらに少なくなるだけでなく、適用される頻度も少なくなることである。このことは、処置を受ける患者の要望および要求に合致する。
【0033】
確立された試験モデルおよび特に本明細書で開示される試験モデルによって、『本発明の組合せ剤』が本明細書の上記の有益な効果をもたらすことを示すことが可能である。当業者であれば、このような有益な効果を証明する適切な試験モデルを完全に選択することが可能である。『本発明の組合せ剤』の薬理作用を、例えば臨床研究にてまたは以下に基本を記載したような試験手順にて実証してもよい。
【0034】
適切な臨床研究としては、特に、無作為プラセボ比較二重盲検パラレル研究である。このような研究は、有効成分を用いる単剤療法の効果と、『本発明の組合せ剤』を用いる療法の効果とを比較することに特に適しており、とりわけ『本発明の組合せ剤』の有効成分の相乗効果が実証される。増殖性疾患に与える有益な効果、例えば、転移性の骨疾患の病歴を持つ前立腺ガン患者において骨関連事象(SRE)を予防することを、これらの研究結果から直接求めることや、または当業者に知られているように研究計画を変更して求めることが可能である。SREは、病気による骨折事象、脊髄圧縮事象、骨の外科手術、骨への放射線療法および骨の痛みを処置するための抗腫瘍療法の変更として定義される。好ましくは、SREはこのような研究における最初の終点である。さらに、このような研究において、ペインスコア、鎮痛剤の使用、一般状態、生活の質のスコア、骨ミネラルの密度、骨における進行に要する時間および全体の進行に与える影響を評価することができる。
【0035】
適切な研究計画において、二重盲検の様式で患者を無作為化して、式Iの化合物、例えば6サイクルのエポシロンB−ここで、各サイクルは、三週間の間に、週に一回、2.5〜6mg/mの間のエポシロンBを5分間かけて注入して投与し、その後の14日間は投与しないということからなる−に加えて、三週間ごとに、2mgのゾレドロン酸塩を5分間かけてもしくは15分間かけて静脈に注入する、4mgのゾレドロン酸塩を5分間かけてもしくは15分間かけて静脈に注入する、またはプラセボを5分間かけてもしくは15分間かけて静脈に注入する、のいずれかを与える。
【0036】
別の適切な研究計画において、二重盲検の様式で患者を無作為化して、式Iの化合物、例えば6サイクルのエポシロンB−ここで、各サイクルは、三週間の間に、週に一回、2.5mg/mのエポシロンBを5分間かけて注入して投与し、その後の14日間は投与しないということからなる−に加えて、二週間ごとに、体表面1mあたり45mgのオキサリプラチンまたは対応するプラセボを2〜6時間かけて静脈に注入して与える。
【0037】
さらなる別の適切な研究計画において、二重盲検の様式で患者を無作為化して、式Iの化合物、例えば6サイクルのエポシロンB−ここで、各サイクルは、三週間の間に、週に一回、2.5mg/mのエポシロンBを5分間かけて注入して投与し、その後の14日間は投与しないということからなる−に加えて、毎日、例えば250mgもしくは500mgのPTK787または対応するプラセボを与える。
【0038】
別の研究計画において、一週間のエポシロンBの投与量を0.5mg/m、1.0mg/m、1.5mg/m、2.0mg/mまたは2.5mg/mとして、静脈に5分間以上かけて注入して適用し、そしてシスプラチンの投与量を標準のガイドラインに、すなわち、一週間の投与量を体表面1mあたり20〜100mg、例えば、一週間に30mg/mというものにしたがう。投与の前に、シスプラチンを希釈して注入し、そして1時間の静脈へのエポシロンBの注入の後に続けてすぐに投与する。処置の1サイクルは、三週間の薬剤投与とそれに続く一週間の無投与からなる。
【0039】
本発明の一つの目的は、増殖性疾患に対して共同で治療効果を示す量の『本発明の組合せ剤』を含有する医薬組成物を提供することである。この組成物において、組合せ相手の(a)および(b)を一緒に投与してもよく、交互に投与してもよく、もしくは一つの組合せ剤単位の投与形態にて別々に投与してもよく、または別個の二つの投与形態の単位で投与してもよい。投与形態の単位の組合せ剤は、固定されていてもよい。
【0040】
本発明の医薬組成物を、それ自体知られた方法で調製することができ、そしてヒトを含む哺乳動物(温血動物)に対して経腸的なもの、例えば、経口にてまたは直腸経由での投与に適したものであり、非経口的にも投与される。この組成物は、治療上有効な量の薬理的に活性な組合せ相手の少なくとも一つを、ただ一つ含有するか、または一種以上の薬学的に許容され得る担体、特に経腸的適用または非経口的適用に適した担体を一緒に含有する。
【0041】
この新規医薬組成物は、例えば、約10〜約100%の、好ましくは約20〜約60%の有効成分を含有する。経腸的または非経口的に投与するための多剤併用療法のための医薬品としては、例えば、糖衣錠、錠剤、カプセルまたは座薬のような、そしてさらにアンプルなどの投与形態の単位のものがある。別途指示がない限り、これらはそれ自体知られた方法で調製される。例えば、従来式の混合プロセス、粒状化プロセス、糖被覆プロセス、溶解プロセスまたは凍結乾燥プロセスを利用する。それぞれの投与形態に含まれる組合せ相手の個々の投与量の内容物の単位それ自体が有効量を構成する必要がないことは、好ましい。というのは、必要な有効量は、投与単位を複数回投与することによって達成できるからである。
【0042】
経口での投与形態に適した組成物を調製する場合、通常製剤時に用いられるあらゆる媒質、例えば、水、グリコール類、油類、アルコール類、香料、防腐剤、着色剤;または、例えば、粉剤、カプセルおよび錠剤などの経口用固体製剤の場合のあらゆる担体、例えば、デンプン、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、バインダー、崩壊剤などを用いてもよく、液体製剤よりも固体の経口用製剤の方が好ましい。投与が簡単なことから、錠剤およびカプセルが最も有利な経口用投与単位の形態に相当し、この場合においては、固体の薬学的担体が当然に採用される。
【0043】
特に、『本発明の組合せ剤』の組合せ相手のそれぞれの治療上有効な量を、同時に投与してもよく、または任意の順序で逐次投与してもよい。その構成成分を個別に投与してもよく、固定された組合せ剤にて投与してもよい。例えば、増殖性疾患の進行を遅延させるかまたは処置する本発明の方法は、(i)遊離した状態または薬学的に許容され得る塩の形態の状態である第一の組合せ相手を投与する工程、および(ii)遊離した状態または薬学的に許容され得る塩の形態の状態である第二の組合せ相手を投与する工程を、同時にまたは任意の順序で逐次含んでもよく、合同して治療上有効な量となるようにする。共同作用的に有効な量、例えば本明細書に記載の量に対応する一日投与量とすることが好ましい。『本発明の組合せ剤』の個々の組合せ相手を、一連の治療の間の異なる時点で個別に投与することができ、または分割してもしくは単一の組合せ剤形態にて同時に投与することができる。さらに、投与するという用語は、インビボにて組合せ相手それ自体に変換する組合せ相手のプロドラッグを使用することを包含する。それゆえに本発明は、同時に行う処置または交互に行う処置といったこのような治療プログラムのすべてを包含するものと理解すべきであり、「投与すること」という用語をそれ相応に解釈すべきである。
【0044】
『本発明の組合せ剤』において採用される組合せ相手のそれぞれの有効投与量は、用いられる特定の化合物または医薬組成物、投与の様式、処置を受ける条件、処置を受ける病状の重症度に応じて変化してもよい。したがって、投与経路および患者の腎機能および肝機能といった多様なファクターに基づいて、『本発明の組合せ剤』の投与プログラムが選択される。通常の技量を有する内科医、臨床医または獣医であれば、病状の進行を抑制したり、対抗したりまたは停止させるのに必要な、有効成分一回あたりの有効量を容易に決定し処方することができる。有効性をもたらし毒性を示さない範囲内での、有効成分の濃度の最適値を正確に求めるためには、標的部位に対する有効成分の利用の程度についての反応速度論に基づく治療プログラムが必要である。これには、有効成分の分布、平衡状態および排泄について検討する必要がある。
【0045】
温血動物がヒトである場合、式Iの化合物の投与量は、二〜四週間の間、例えば三週間の間、一週間に一回、1mあたり約0.25〜75mgの範囲が好ましく、0.5〜50mg、例えば2.5mgの範囲がより好ましく、成人患者の場合、次いで、6〜8日間は投与しない。
【0046】
エポシロンBの投与量は、式(III)
単回投与量(mg/m)=(0.1〜y)×N (III)
にしたがって計算される量が好ましい。
式中、Nは処置期間の週数であり、そしてyは6である。ここで、前回の処置から一週間〜六週間の間隔を開けた後の、二回以上の処置サイクルにて、エポシロンBを投与する。
【0047】
本発明の一つの好ましい態様において、前回の処置から一〜六週間の間隔を開けた後の三週間の間で、特に前回の処置から一週間の間隔を開けた後の三週間の間で、一週間で投与されるエポシロンBの投与量は約0.1〜6mg/mの間であり、0.1〜3mg/mの間、例えば2.5mg/mまたは3.0mg/mが好ましい。本発明の別の態様において、当該エポシロンBをヒトに投与する場合、18〜24日ごとに、約0.3〜12mg/mの間の投与量とすることが好ましい。
【0048】
本明細書にて別途規定されていない限り、本明細書に記載されるビスホスホネートを、次の投与量にて投与することができる:
【0049】
一日あたり約5〜10mgの様々な範囲の投与量のアレンドロン酸を、ヒトに投与してもよい。
【0050】
例えば、一日あたり約750〜1500mgの様々な範囲の投与量のクロドロン酸を、ヒトに投与してもよい。
【0051】
一日あたり約200〜400mgの様々な範囲の投与量のエトリドン酸を、ヒトに投与してもよい。
【0052】
三〜四週間ごとに、約1〜4mgの様々な範囲の投与量のイバンドロン酸を、ヒトに投与してもよい。
【0053】
一日あたり約20〜30mgの様々な範囲の投与量のリセドロン酸を、ヒトに投与してもよい。
【0054】
およそ三〜四週間ごとに、約15〜90mgの様々な範囲の投与量のパミドロン酸を、ヒトに投与してもよい。
【0055】
一日あたり約200〜400mgの様々な範囲の投与量のチルドロン酸を、ヒトに投与してもよい。
【0056】
三週間ごとに、約2〜10mgの様々な範囲の投与量の、特に4mgまたは8mgのゾレドロン酸を、静脈注射としてヒトに投与してもよい。
【0057】
およそ四〜六週間ごとに、体表面1mあたり約100〜400mgの様々な範囲の投与量の、例えば200mgのカルボプラチンを、ヒトの静脈内に投与してもよい。
【0058】
およそ二〜三週間ごとに、体表面1mあたり約25〜135mgの様々な範囲の投与量の、例えば45mgまたは85mgのオキサリプラチンを、ヒトの静脈内に投与してもよい。
【0059】
およそ三週間ごとに、約25〜100mg/mの様々な範囲の投与量のシスプラチンを、ヒトに投与してもよい。
【0060】
温血動物がヒトである場合、PTK787の投与量は、一日あたり約50〜1500mgの範囲が好ましく、一日あたり約100〜750mgの範囲がより好ましく、そして一日あたり約250〜500mgの範囲が特に好ましい。
【0061】
本発明の好ましい態様において、『本発明の組合せ剤』は、エトリドン酸、クロドロン酸、チルドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸および最も好ましくはゾレドロン酸から選択されるビスホスホネートを含有する。
【0062】
本発明の別の態様において、『本発明の組合せ剤』は、シスプラチン、オキサリプラチンまたはカルボプラチンを含有する。
【0063】
本発明の別の態様において、『本発明の組合せ剤』は、式II
〔式中、rは0〜2であり、nは0〜2であり、mは0〜4であり、
およびRは、
(i)低級アルキルであるか、
(ii)一緒になって、部分式II*の架橋を形成する−この結合は二つの末端の炭素原子を介して形成される−か、または
(iii)一緒になって、部分式II**
【化4】

[式中、環のメンバーであるT、T、TおよびTのうちの一つまたは二つは窒素であり、残りのものはそれぞれの場合においてCHであり、そしてTとTとを介して結合が形成される]の架橋を形成し;
A、B、D、およびEのうちの二つ以下がNである場合、これらの基は、互いに独立してNまたはCHであり;
Gは低級アルキレン、アシルオキシもしくはヒドロキシで置換された低級アルキレン、−CH−O−、−CH−S−、−CH−NH−、オキサ(−O−)、チア(−S−)、またはイミノ(−NH−)であり;
Qは低級アルキルであり;
RはHまたは低級アルキルであり;
Xはイミノ、オキサまたはチアであり;
Yは非置換もしくは置換アリール、ピリジル、または非置換もしくは置換シクロアルキルであり;そして
Zは、アミノ、一置換アミノもしくは二置換アミノ、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシエーテルもしくはヒドロキシエステル、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボキシエステル、アルカノイル、カルバモイル、N−一置換カルバモイルもしくはN,N−二置換カルバモイル、アミジノ、グアニジノ、メルカプト、スルホ、フェニルチオ、フェニル−低級アルキルチオ、アルキルフェニルチオ、フェニルスルホニル、フェニル−低級アルキルスルフィニルまたはアルキルフェニルスルフィニルであり、Zの基が2以上ある場合、置換基Zは互いに同一でも異なっていてもよい;
そして波線によって特徴付けられている結合が存在する場合、その結合は単結合か二重結合である。〕
の血管静止性化合物、
または1以上のN原子が酸素原子を保持する規定の化合物のN−オキシド、
または少なくとも一つの塩形成基を有するこのような化合物の塩を含んでなる。好ましくは、式IIとして用いられる化合物はPTK787である。
【0064】
式IIの化合物を規定するために用いられる用語は、WO98/35958に規定された意味を有する。これらの規定を引用することによって、本明細書に取り込まれる。
【0065】
式Iの化合物において、AがOを表すことが好ましい。Rは低級アルキル、例えばエチルであり、メチルが最も好ましい。ZはOであることが好ましい。
【0066】
『本発明の組合せ剤』は、組合せ調製品かまたは医薬組成物であり得る。
【0067】
さらに、本発明は、組合せ相手が薬学的に許容され得る塩の形態でも存在可能な組合せ剤であって、増殖性疾患に対して共同で治療効果を示す量の、『本発明の組合せ剤』を動物に投与する工程を含む、増殖性疾患、とりわけ前立腺ガン、特に骨への転移を伴うホルモン治療抵抗性前立腺ガンを有する温血動物を処置する方法に関する。
【0068】
さらに、本発明は、増殖性疾患の進行を遅延させるかまたは処置するために『本発明の組合せ剤』を使用すること、および増殖性疾患の進行を遅延させるかまたは処置するための薬剤を調製するために『本発明の組合せ剤』を使用することに関する。
【0069】
さらに、本発明は、増殖性疾患の進行を遅延させるかまたは処置するための薬剤を調製するために、ビスホスホネート、プラチナ化合物または血管静止性化合物を、式I〔式中、化合物AはOまたはNRを表し、Rは水素または低級アルキルであり、Rは水素または低級アルキルであり、そしてZはOまたは単結合である。〕のエポシロン誘導体と組み合せて使用することに関する。
【0070】
さらに、本発明は、有効成分としての『本発明の組合せ剤』を、増殖性疾患の進行を遅延させるかまたは処置するためにそれらを同時使用、個別使用または逐次使用するための取扱説明書と共に含有する市販用パッケージを提供する。
【0071】
次の実施例によって、上記の本発明を例証する。しかしながら、これらの実施例には、本発明の範囲を制限する意図はまったくない。当業者が知っているようなその他の試験モデルによって、『本発明の組合せ剤』の有益な効果を求めることも可能である。
【実施例1】
【0072】
実施例1:ヌードマウスの脛骨内で培養されたヒト前立腺ガン細胞PC−3MM2
ヒト前立腺ガン細胞系PC−3MM2の細胞懸濁液(2×10細胞)を、ヌードマウスの脛骨内に注射する。このモデルにおける腫瘍の成長によって、はっきりと見ることができる骨破壊が、4週間後に導かれる。腫瘍細胞の注入の7日後に、化合物による処置を開始する。この時期に、腫瘍のサイズの平均値と程度が等価のグループごとに動物を分類する。次いで、異なるグループに対して処置をランダム化して、そして賦形剤のみ;(a)ビスホスホネート、例えばゾレドロン酸;組合せ相手の(b)、例えばエポシロンB;または組合せ相手の(a)および(b)、例えばゾレドロン酸およびエポシロンBによって処置する。処置から3〜4週間後の分析には、骨破壊および腫瘍負荷の推定が含まれる。
【実施例2】
【0073】
実施例2:ヌードマウスの皮下で成長するヒト前立腺ガンDU145の腫瘍の断片におけるビスホスホネートおよびエポシロン
ヌードマウスの皮下でヒト前立腺ガンDU145を成長させる。ヌードマウスの左側腹部の皮下(s.c.)に、腫瘍の断片(それぞれ約25mg)を移植する。腫瘍のサイズが80〜100mmに達する時(通常10〜15日後)に、化合物による処置を開始する。この時期に、腫瘍のサイズの平均値と程度が等価のグループごとに動物を分類する。次いで、異なるグループに対して処置をランダム化して、そして賦形剤のみ;(a)ビスホスホネート、例えばゾレドロン酸;組合せ相手の(b)、例えばエポシロンB;または組合せ相手の(a)および(b)、例えばゾレドロン酸およびエポシロンBによって処置する。(カリパスを用いて測定される)腫瘍のサイズおよび体重を、3〜5日ごとに測定する。
【実施例3】
【0074】
実施例3:ヌードマウスの皮下で成長するヒト前立腺ガンDU145の腫瘍の断片におけるオキサリプラチンおよびエポシロンB
ヌードマウスの皮下でヒト前立腺ガンDU145を成長させる。ヌードマウスの左側腹部の皮下(s.c.)に、腫瘍の断片(それぞれ約25mg)を移植する。腫瘍のサイズが80〜100mmに達する時(通常10〜15日後)に、化合物による処置を開始する。この時期に、腫瘍のサイズの平均値と程度が等価のグループごとに動物を分類する。次いで、異なるグループに対して処置をランダム化して、そして賦形剤のみ;(a)オキサリプラチン;(b)エポシロンB;または組合せ相手の(a)および(b)を同時にまたは任意の順番で順次投与して、処置する。(カリパスを用いて測定される)腫瘍のサイズおよび体重を、3〜5日ごとに測定する。
【実施例4】
【0075】
実施例4:ヌードマウスの皮下で成長するヒト肺ガンNCI−H596の腫瘍の断片におけるカルボプラチンおよびエポシロンB
肺ガン細胞系NCI−H596を採用すること以外は実施例3にて用いるモデルと同じモデルにおいて、カルボプラチンおよびエポシロンBからなる組合せ剤は、単一の薬剤よりも優れた有効性を示すことができる。
【実施例5】
【0076】
実施例5:ヌードマウスの皮下でのヒト前立腺ガンDU145の異種移植片におけるPTK787およびエポシロンB
ヌードマウスの皮下でヒト前立腺ガン細胞DU145を成長させる。ヌードマウスの左側および右側の腹部の皮下(s.c.)に、腫瘍細胞(10)を注射する。腫瘍のサイズが80〜100mmに達する25〜32日後に、化合物による処置を開始する。この時期に、腫瘍のサイズの平均値と程度が等価のグループごとに動物を分類する。次いで、異なるグループに対して処置をランダム化して、そして賦形剤のみ;週に1回の2mg/kgのエポシロンBの静脈注射;日に1回の50mg/kgのPTK787の経口投与;または組合せ相手のエポシロンBおよびPTK787によって処置する。週1回の頻度にて、カリパスを用いて腫瘍のサイズおよび体重の変化を測定する。この結果から、体重の更なる減少を伴うことなく、腫瘍の成長が相加的に阻害されることが示される。
【実施例6】
【0077】
実施例6:黒色マウスの皮下での同系マウスメラノーマB16の異種移植片におけるエポシロンBおよびPTK787
黒色マウスの耳の皮下(s.c.)に、マウスメラノーマ細胞B16(5×10)を注射する。7日後に化合物による処置を開始する。この時期に、腫瘍のサイズの平均値と程度が等価のグループごとに動物を分類する。次いで、異なるグループに対して処置をランダム化して、そして賦形剤のみ;週に1回のエポシロンBの静脈注射;日に1回のPTK787の経口投与;または組合せ相手のエポシロンBおよびPTK787によって処置する。週1回の頻度にて、メラノーマの画像のコンピュータを用いる分析によって、原発腫瘍の成長をモニターする。処置開始時から3週間後に、動物の検視を行う。頚部リンパ節の重量を測定することによって、転移性の分散を評価する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カルボプラチンおよびオキサリプラチンから選択されるプラチナ化合物、および(b)式I
【化1】

〔式中、AはOまたはNRを表し、Rは水素または低級アルキルであり、Rは水素または低級アルキルであり、そしてZはOまたは単結合である。〕
のエポシロン誘導体を含有する組合せ剤であって、
有効成分(a)および(b)がそれぞれ遊離した形態で存在するか、または薬学的に許容され得る塩の形態で存在し、必要に応じて、少なくとも一つの薬学的に許容され得る担体を含有していてもよい、同時使用、個別使用または逐次使用のための組合せ剤。
【請求項2】
AがOを表し、Rが水素または低級アルキルであり、そしてZがOまたは単結合である、式Iのエポシロン誘導体を含有する、請求項1に記載の組合せ剤。
【請求項3】
組合せ調製品または医薬組成物である、請求項1または2に記載の組合せ剤。
【請求項4】
増殖性疾患の進行の遅延または処置のために使用するための、請求項1〜3のいずれかに記載の組合せ剤。
【請求項5】
増殖性疾患が卵巣ガン、肺ガン、頭部もしくは頚部のガン、子宮頚ガン、前立腺ガン、大腸ガン、乳ガン、腎臓ガン、カルチノイド、胃ガンまたは肝細胞ガンである、請求項4に記載の組合せ剤。
【請求項6】
増殖性疾患に対して共同で治療効果を示す量の、請求項1〜5のいずれかに記載の組合せ剤と、少なくとも一つの薬学的に許容され得る担体とを含有する医薬組成物。
【請求項7】
増殖性疾患の進行の遅延または処置のための薬剤を製造するための、請求項1〜5のいずれかに記載の組合せ剤または請求項6に記載の医薬組成物の使用。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の組合せ剤または請求項6に記載の医薬組成物を、増殖性疾患の進行の遅延または処置のためにそれらを同時使用、個別使用または逐次使用するための取扱説明書と共に含有する市販用パッケージ。

【公開番号】特開2010−159271(P2010−159271A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44000(P2010−44000)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2003−513533(P2003−513533)の分割
【原出願日】平成14年7月18日(2002.7.18)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】