説明

エマルション様水溶性濃縮物

【課題】本発明の課題は、脂質、ステロイド、テルペンおよび極性脂質の群からの親油性物質を、レシチン/ポリオールマトリックスまたはレシチン/炭水化物マトリックスを用いて可溶化する方法を提供することである。
【解決手段】本発明の課題は、ポリオール溶液または炭化水素溶液の濃度が30質量%〜99質量%であり、レシチン:脂質の比が1:1〜1:12であり、かつポリオール溶液または炭水化物溶液中のレシチン/脂質混合物の濃度が10質量%〜90質量%である、脂肪様物質のエマルション様水溶性濃縮物およびその使用により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の特徴を有する、エマルション様の透明〜半透明の水溶性濃縮物、ならびにその化粧品、医薬または食品のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬、化粧品および食品分野における親油性または脂肪様の物質は、通常は、問題のない適用形で使用されなければならない。この問題のない適用形とは、乳化剤により、脂肪滴の界面における表面張力を減少させる古典的なエマルションであり、これによって、水中での脂肪の良好かつ安定な分散を提供する。適用分野に依存して、クリーム状〜ミルク状のコンテステンシーを有するエマルションが生じ、その際、0.5〜10%(w/w)の乳化剤量で添加する。常用のエマルションの脂肪滴の粒径は、多くの要因、たとえば脂肪、乳化剤、適用エネルギーに依存し、かつ通常は、3桁のnm−範囲(100〜1000nm)の範囲内である。
【0003】
特別な事情および適用の場合には、1〜2桁のnm−範囲(5〜100nm)の液滴の粒径を有する、透明〜不透明の生成物が必要とされる。このような配合物は、ミセル可溶化剤を用いてのみ製造することができる。混合ミセルの形で、親油性材料は、適した可溶化剤(乳化剤)および補助乳化剤と一緒になって、透明な配合物に可溶化される。
【0004】
化粧品および皮膚化学の分野において、審美的製品は、低い水溶性物質を部分的に高い濃度で含有することが必要とされる。外観は、このような生成物は、優れた物理的安定性を有していなければならない。たとえば、化粧品および皮膚化学製品における透明なバスオイルであり、その際、脂肪様成分としてトリグリセリド、パラフィンオイルおよびエッセンシャルオイルが含まれる。
【0005】
香油は、主に、脂肪様のフレグランスを明瞭に透明な形で溶解された形で含有する。同様に、難水溶性の医薬を経口または非経口適用する際には、透明な配合物に加工される。
【0006】
局所、経口または非経口適用される生成物に、親油活性物質を使用することは、本発明の対象である。乳化剤または補助乳化剤は望ましくないが、これらは今日まで技術的に必要不可欠な補助物質であった。
【0007】
技術水準においては、前記に示された適用分野で、脂肪様物質の透明系への可溶化は、エトキシル化界面活性剤または高いHLB−値を示す界面活性剤および/またはアルコールを用いてのみ実施可能であった。しかしながら、これらの可溶化剤は、以下の重大な欠陥を有する:
−易揮発性アルコール−VOC−(エタノール、イソプロパノール)が、強い細胞毒性を有すること、および
−これらは、大気の保護を考慮すると、多くの配合物において望ましくないことである。
−乳化剤を、可溶化のために多量に使用しなければならないために、供給される作用物質の適用に関して、常に著量の添加剤を必要とすることである。一般的な方法において、たとえば1gのラベンダー油を可溶化するために、5gのPEG40水素化ヒマシ油を25%(w/w)エタノール性溶液中で必要とするか;さもなければ、一般的な方法において、たとえば20gのビタミンE−アセテートを可溶化するために、44gのPEG36水素化ヒマシ油および25gのプロピレングリコールを水溶液中で必要とする。さらに、親油性ビタミンA、EおよびDを一般的な方法で可溶化するためには、グリココール酸およびホスファチジルコリンの混合物の約10倍の過剰量を必要とする。
【0008】
DE−19859427A1では、マイクロエマルションの形で、透明な系中のミセル状に溶解された脂肪様物質の製造方法を開示している。その際、乳化剤−/補助乳化剤系としては、専ら、レシチンおよびエトキシル化乳化剤から成る混合物、高いHLB値を示すレシチン/乳化剤またはレシチン/易揮発性アルコールが使用される。
【0009】
DE19922193では、水素化レシチン、エッセンシャルオイルおよび水から成るミルク状の古典的脂質エマルションおよび視覚的に透明な濃縮物の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE19859427A1
【特許文献2】DE19922193
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、難水溶性物質の透明または半透明のエマルション様水溶性濃縮物への溶解方法およびこれらの濃縮物の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、請求項1に記載の特徴を有する本発明によるエマルション様の水溶性濃縮物および請求項10に記載の特徴を有するこれらのエマルション様水溶性濃縮物の使用により達成された。
【0013】
従来のミセル系とは対照的に、本発明により特定のマトリックスを用いて、第2の乳化剤ならびに一価または二価のアルコールの使用を完全に排除することは有利である。さらに驚くべきことに、本発明を用いた場合には、親油性物質に関してはリン脂質を欠いていてもよく、したがって、従来の一般的な可能性を考慮した場合に、可溶化を達成するものである。
【0014】
本発明によれば、エトキシル化界面活性剤または他の強い可溶化剤は、天然物質の系(レシチン/リン脂質/ポリオール)によって置換されてもよく、この場合、これらの天然物質は、健康および環境安全性に関して問題のないものである。
【0015】
本発明によれば、可溶化のために5〜100%(w/w)に過ぎない親油性物質が可溶化剤として必要とされる。従来の方法の場合には、この割合は逆である。
【0016】
本発明によれば、易揮発性有機溶剤(エタノール、イソプロパノール等)の使用を排除することができる。
【0017】
本発明によるエマルション様濃縮物は、単一製造工程によって製造され、この場合、これらの方法は、水で希釈した後に、不透明〜透明の微細に分散されたエマルションを生じるものであり、この場合、このようなエマルションは、エマルション様濃縮物を回避する場合には、製造不可能であるか、あるいは困難性を伴ってのみ製造可能である。
【0018】
これらの新規濃縮物は、高圧ホモジナイザーを用いて最適に製造することができる。
【0019】
ローターステーターミキサは、わずかな透明性を有する濃縮物を生じる。DE19859427の欠点は、高圧ホモジナイズによる金属研磨によって生じるが、これは、ホモジナイズのための相当する装置において、セラミックを用いることにより取り除く。
【0020】
本発明による濃縮物は、直接的に生成物として、たとえば医薬品または化粧品としてのバスオイル、マウスウオッシュ、香油、飲料または食品補助食品にか、あるいは、水または他の水性溶液(たとえば、ジュース)を用いて希釈することによって、微細に分散された透明〜不透明のO/Wエマルション(ナノエマルション)にし、この場合、これらは2〜3桁のnm範囲の極めて小さい粒度分布を有するものである。極めて良好な水溶性によって、これらの透明なエマルション様濃縮物は、化粧品(ゲル、クリーム、ローション等)、医薬品または食品中で問題なく添加することができる。
【0021】
レシチンおよび/またはリン脂質、脂質ならびにポリオールまたは炭水化物の高濃度溶液から成るエマルション様濃縮物の製造は、以下のようにおこなわれる:
−レシチン/リン脂質と脂肪様物質との比は、問題なく水で希釈される透明な濃縮物が得られるように選択すべきであり、かつ、
−ポリオール−または炭水化物溶液の含水量は、透明な濃縮物が得られるばかりでなく、水の低い値に基づいて自己保存系(selbstkonservierendes System)が得られるように選択すべきであり、それによって、合成または同様に天然の保存剤の使用を回避することができる。
−工程温度は、使用されたレシチン/リン脂質または可溶化すべき脂質に適合させるべきである。水素化されたレシチン/リン脂質は、通常は、40〜80℃の工程温度を必要とし、不飽和のレシチン/リン脂質の場合には室温で処理されてもよく、その際、レシチン/リン脂質を好ましくは極性相中で、すなわちポリオール溶液または炭水化物溶液中に添加する。
【実施例】
【0022】
本発明は、好ましい実施例によって示される。
【0023】
例1:
PC−含量70%を有する大豆からのリン脂質画分5gを、86%グリセリン 75g中で撹拌することによって分散した。ビタミンE−アセテート20gを添加し、かつ連続的撹拌によって分散させた。これらの粗く分散された不均一な混合物を、高圧ホモジナイザーによってホモジナイズした。高粘度を有する透明なエマルション様溶液が得られた。
【0024】
例2:
PC−含量70%を有する大豆からのリン脂質画分5gを、70%フルクトース溶液 75g中に撹拌することによって分散した。中鎖トリグリセリド 20gの添加後に、この混合物を高圧ホモジナイズすることによって、蜂蜜様の粘度を有する透明なエマルション様溶液が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質またはレシチンと、ポリオールまたは炭水化物の高濃度水溶液との組合せ物を用いての、脂肪様物質のエマルション様水溶性濃縮物において、ポリオール溶液または炭水化物溶液の濃度が30質量%〜99質量%であり、レシチン:脂質の比が1:1〜1:12であり、かつポリオール溶液または炭水化物溶液中のレシチン/脂質混合物の濃度が10質量%〜90質量%である、脂肪様物質のエマルション様水溶性濃縮物。
【請求項2】
使用されたリン脂質またはレシチンのいずれかが不飽和であるか、水素化されているか、加水分解されているかヒドロキシ化されており、その際、レシチンまたはリン脂質は、大豆、ナタネ、魚、牛乳または卵から得られたものであって、かつ、レシチン画分が、ホスファチジルコリン含量10質量%〜100質量%を有する脱脂画分から形成されている、請求項1に記載のエマルション様水溶性濃縮物。
【請求項3】
レシチンが、少なくとも50質量%のアセトン不溶性物質を含有し、この場合、これらは、主に極性脂質、たとえばグリセリンホスファチド、スフィンゴホスファチド、スフィンゴグリコリピド、グリセリングリコリピドまたはアミノリピドの群からのものである、請求項1に記載のエマルション様水溶性濃縮物。
【請求項4】
ポリオールとして、好ましくは多価アルコールを使用し、その際、C〜Cの炭素鎖を有するもの、たとえばグリセロール、トレイトール、ペンチトールまたはヘキシトールを使用する、請求項1に記載のエマルション様水溶性濃縮物。
【請求項5】
炭水化物として、モノサッカリド、ジサッカリド、マルチトールまたはマルトデキシトリンを使用する、請求項1に記載のエマルション様水溶性濃縮物。
【請求項6】
一価の易揮発性アルコール(VOC)および/またはエトキシル化界面活性剤または他の合成界面活性剤を使用しない、請求項1に記載のエマルション様水溶性濃縮物。
【請求項7】
保存剤を使用しない、請求項1に記載のエマルション様水溶性濃縮物。
【請求項8】
高圧ホモジナイザー、超音波またはローターステーターミキサを使用する、請求項1に記載のエマルション様水溶性濃縮物。
【請求項9】
脂質(たとえば、脂肪酸、ワックス、ワックスエステル、パラフィン、脂肪族アルコール、脂肪族アルデヒド、グリセリド等)、イソプレノイド(テルペンおよびステロイド:たとえば、A−ビタミン、E−ビタミン、D−ビタミン、K−ビタミン、ビサボロール、メントール、グルココルチコイド、エッセンシャルオイル、コレステロール、シトステロール、コエンザイムQ10等)、極性脂質(セラミド、スフィンゴ脂質、グリコリピド等)ならびに油溶性UV−AおよびUV−Bフィルターおよびシリコーンオイルを使用する、請求項1に記載のエマルション様水溶性濃縮物。
【請求項10】
化粧品、医薬品または食品のための、請求項1から9までのいずれか1項に記載のエマルション様水溶性濃縮物の使用。
【請求項11】
局所、経口または非経口適用による、請求項9に記載の使用。

【公開番号】特開2012−136552(P2012−136552A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−62525(P2012−62525)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2004−554223(P2004−554223)の分割
【原出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【出願人】(505197115)リポイト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】Lipoid GmbH
【住所又は居所原語表記】Frigenstrasse 4, D−67065 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】