エマルジョン型粘着剤組成物および粘着テープ
【課題】光学フィルムを被着体に固定する際に、高温で放置した際も光学フィルムの歪みを抑制でき、光学フィルムの浮きや剥がれを生じず好適に固定可能な粘着テープを実現できる粘着剤組成物の提供。
【解決手段】水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’が3000Pa以上6000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)、および、水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’が6000Pa以上50000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)を混合してなり、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paである水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【解決手段】水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’が3000Pa以上6000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)、および、水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’が6000Pa以上50000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)を混合してなり、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paである水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系共重合体を主成分とするエマルジョン型粘着剤組成物、および該組成物を用いた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、携帯電話、デジタルカメラ、薄型テレビ等の広範囲な分野において、部材を固定、接着する材料として多方面で利用されている。近年、携帯電話に代表されるように、いわゆる光学部材を製品の構成要素とし、薄型設計が要望される分野においては、従来問題視されていなかった課題が浮上している。中でも、光学フィルムを固定する粘着テープにおいて、光学フィルムの薄型化により、両面粘着テープで周囲を固定された光学フィルムが信頼性試験で高温に放置された時に光学フィルムの歪みが発生する問題が生じている。このような歪んだ箇所を通過した光で照明されると、LCDパネルや有機ELパネル等の画像表示パネル中の画像がシャープさを欠くものになってしまうという問題が生じている。
【0003】
上記課題を解決するため、光学フィルムに向き合う箇所に接着剤を有しない両面粘着テープを使用したLCDモジュールが開示されている(特許文献1参照)。しかし、部分的に接着剤を有しない両面粘着テープを製造するのは極めて困難であり、コストも高い。また光学フィルムが固定されていないため、使用中や組立作業中にプリズムシートがずれるという問題が発生する。また、光学フィルムに接する粘着剤層の周波数1Hzでの動的粘弾性スペクトルの85℃の損失正接が0.35〜0.7であり、85℃の貯蔵弾性率が15000〜20000Paの粘着テープが開示されている(特許文献2参照)。しかし、上記テープでも必ずしも光学フィルムの歪みを抑制できなかった。特に熱変形が大きな光学フィルムや3インチ以上の光学フィルムを使用した際には上記粘着テープでも歪みが発生する場合があった。
【0004】
さらに近年は、上記のような電子機器の部品固定に用いる粘着テープにおいて、揮発性有機化合物(いわゆるVOC)の排出抑制が強く求められている。このような粘着テープとしては、無溶剤タイプの粘着剤が注目され、溶剤剤型粘着剤から水分散型粘着剤への置換が要望されているが、上記のような光学フィルムを好適に固定し、歪みを抑制できる水分散型粘着剤を用いた粘着テープは実現されていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2006−184656号
【特許文献2】特開2008−248226号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、揮発性有機化合物を低減しつつ、光学フィルムを被着体に固定する際に、高温で放置した際も光学フィルムの歪みを抑制でき、光学フィルムの浮きや剥がれを生じず好適に固定可能な粘着テープを実現できる粘着剤組成物および該粘着剤組成物からなる粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、異なる2種類の動的粘弾性を持つ水分散型アクリル系粘着剤組成物をブレンドすることにより、高温時に必要な凝集力と柔軟性とを実現し、光学フィルムの浮きや剥がれを生じず好適に固定可能であり、光学フィルムの歪みを好適に抑制できることを見出し、本発明の課題を解決するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’が3000Pa以上6000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)、および、水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’が6000Pa以上50000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)を混合してなり、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paであることを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物および該粘着剤組成物からなる粘着テープを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着剤組成物および粘着テープは、高温時に必要な凝集力と柔軟性を両立しているため、光学フィルムの歪みを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の粘着テープの一実施形態を示す概念断面図である。
【図2】本発明の粘着テープの一実施形態を示す概念断面図である。
【図3】本発明の粘着テープの一実施形態を示す概念断面図である。
【図4】本発明の粘着テープの一実施形態を示す概念断面図である。
【図5】粘着テープを、LCDパネルとバックライト筐体との間に設けたLCDモジュールユニットの概略構成を示す断面図である。
【図6】粘着テープを、LCDパネルとバックライト筐体との間に設けたLCDモジュールユニットの概略構成を示す分解図である。
【図7】両面粘着テープを、光学フィルムとバックライト筐体との間に設けたLCDモジュールユニットの一実施形態を示す断面図である。
【図8】粘着テープを、光学フィルムとバックライト筐体との間に設けたLCDモジュールユニットの概略構成を示す分解図である。
【図9】両面粘着テープを、FPCと一体となったLCDパネルとバックライト筐体との固着に用いたLCDモジュールユニットの一実施形態を示す断面図である。
【図10】両面粘着テープを、FPCと一体となったLCDパネルとバックライト筐体との固着に用いたLCDモジュールユニットの一実施形態を示す概略図であり、(a)は分解図、(b)は全体図である。
【図11】実施例における光学フィルムの歪み防止性の測定方法を示す概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[水分散型アクリル系粘着剤組成物]
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、水性媒体中にアクリル系共重合体エマルジョン粒子が分散した水分散型アクリル系粘着剤組成物であり、水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’が3000Pa以上6000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)、および、水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’が6000Pa以上50000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)を混合してなり、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paであることを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物である。
【0012】
LCD等の画像表示モジュールに使用されているプリズムシートをはじめとする光学フィルムは、高温に放置すると一旦伸長し、その後収縮する。伸長の際、光学フィルムには歪みが発生する。粘着テープの粘着剤層が硬いと、光学フィルム伸長時に粘着剤が光学フィルムから剥がれてしまい、その後光学フィルムが収縮しても元の状態に戻らなくなる。一方、粘着剤層が柔らかいと粘着剤が変形しやすくなり、やはり元の状態に戻らなくなる。本発明の粘着テープは、動的粘弾性パラメータを上記範囲とした粘着剤層により、当該粘着剤層を光学フィルムの伸縮に好適に追従させ、光学フィルムの歪みの発生を効果的に抑制することができる。本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、上記構成のとおり水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)からなる柔軟な部位と、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)からなる剛直な部位とを粘着剤層中に併存させることにより、高温下での好適な凝集力と柔軟性を両立でき、光学フィルムの膨張、収縮、うねり等の変形を抑制し、かつ当該光学フィルムの変形に追従することにより、好適に光学フィルムの歪みを抑制できる。
【0013】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)>
本発明において使用する水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)は、2−エチルヘキシルアクリレート、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーをモノマー成分として含有するアクリル系共重合体を使用する。また、本発明において使用する水分散型アクリル系粘着剤組成物は、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’が3000Pa以上6000Pa未満となるように、粘着付与樹脂及び架橋剤を使用する。乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’が当該範囲である水分散型アクリル系粘着剤組成物を使用することで、強接着力であっても光学フィルムの歪みに追従できる柔軟性を確保できる。
【0014】
水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)の乾燥後の貯蔵弾性率等の動的粘弾性の測定においては、当該組成物(A)を基材等に塗布、乾燥して当該組成物(A)のみからなる乾燥塗膜(粘着剤層)を形成し、当該乾燥塗膜を試験片として測定できる。具体的には、例えば、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KFRTN1)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、85℃、周波数0.005Hzでの線形せん断歪み条件における貯蔵弾性率(Ga’)と損失弾性率(Ga”)を測定する。試験片は厚み0.5〜2.5mmの粘着剤層を単独で平行円盤の間に挟み、測定する。
【0015】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、2−エチルヘキシルアクリレートと併用して炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することで、再剥離性を維持しながら強接着性を大きく向上させることができる。炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートが使用でき、なかでも炭素数4〜8のアルキル基を有するアクリレートモノマーを使用することが好ましく、特にn−ブチルアクリレートを好ましく使用できる。また、n−ブチルアクリレートとt−ブチルメタクリレートとを併用することも好ましい。炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの使用量としては10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、上記2−エチルヘキシルアクリレート及び炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの効果をより好適に発現するために、高分子量アクリル系共重合体(a)を形成するモノマー成分中の2−エチルヘキシルアクリレート及び炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の和を50〜98質量%とすることが好ましく、80〜98質量%とすることが特に好ましい。また、アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の2−エチルヘキシルアクリレートと炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の比が、(2−エチルヘキシルアクリレート/炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート)で表される質量比で9/1〜2/8であることが好ましく、75/25〜25/75であることが特に好ましい。
【0017】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、カルボキシル基含有ビニルモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水フタル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマーから選ばれる1種又は2種以上を使用できる。これらカルボキシル基含有ビニルモノマーの使用量としては1〜10質量%であることが好ましい。
【0018】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、アクリル系共重合体のモノマー成分として、さらに、窒素含有ビニルモノマーを使用する。窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリロニトリル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド及びジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種又は2種以上を使用できる。
【0019】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の窒素含有ビニルモノマーの含有量は0.1〜4.5質量%であり、好ましくは、0.5〜4質量%、より好ましくは0.5〜3.5質量%の範囲で調整することで本発明の効果を好適に発現できる。
【0020】
アクリル系共重合体中の窒素含有ビニルモノマーとカルボキシル基を有するビニルモノマーの比率は、特に限定されるものではないが、高分子量アクリル系共重合体(a)を構成するモノマー成分中の窒素含有ビニルモノマーのモル数をX、カルボキシル基を有するビニルモノマーのモル数をYとした場合のモル比X/Yが1/1〜1/20であることが好ましく、1/1〜1/5がより好ましく、1/1〜1/3が更に好ましい。
【0021】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、上記以外のモノマーを必要に応じて使用することもでき、そのようなモノマーの例としては、水酸基含有モノマーとして、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のアルコール性水酸基含有モノマーを適宜使用できる。ケト基又はアルデヒド基含有モノマーとして、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニトリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセトアセテート、ブタンジオールアクリレートアセテート等が挙げられる。シラン系モノマーとして、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBM−502]、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBM−503]、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBE−502]、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBE−503]、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBM−5103]等が挙げられる。また、メチロール基含有モノマーとして、Nメチロールアクリルアミド等が挙げられる。また、燐酸基含有モノマーとして、例えば、ローディア日華(株)製 Sipomer PAM−100、PAM−200、PAM−300等が挙げられ、アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の20質量%以下の割合で用いることができ、1種または2種以上使用できる。
【0022】
(分子量)
本発明に使用するアクリル系共重合体の重量平均分子量は50〜120万であり、好ましくは60〜100万である。当該範囲内とすることで、光学フィルムの歪みに追従できる柔軟性と、優れた耐反発性を発現できる高い凝集力をバランスよく両立することができる。
【0023】
前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算である。測定条件の例として、HLC−8220GPC(東ソー社製)を用いてカラムはTSKgel GMHXL[東ソー製]を用い、カラム温度は40℃、溶離液はテトラヒドロフラン、流量は1.0mL/分とし、標準ポリスチレンはTSK標準ポリスチレンを用いることで測定できる。
【0024】
分子量を調整するために、重合には連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤、例えばラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどが使用できる。
【0025】
(粘着付与樹脂)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)において、得られる粘着剤層の強接着性を調整するために、粘着付与樹脂を使用することが好ましい。本発明における粘着付与樹脂においては、水分散型の粘着剤組成物に使用する観点から、エマルジョン型の粘着付与樹脂を好ましく使用できる。当該エマルジョン型の粘着付与樹脂としては、ロジン系、重合ロジン系、重合ロジンエステル系、ロジンフェノール系、安定化ロジンエステル系、不均化ロジンエステル系、テルペン系、テルペンフェノール系、石油樹脂系等が例示できる。
【0026】
中でも、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂と、ロジンフェノール系粘着付与樹脂が好ましく、これらを併用で配合することが特に好ましい。具体的には、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂は、スーパーエステルE−650[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−788[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−786−60[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−865[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製]、ハリエスターSK−508[ハリマ化成(株)製]ハリエスターSK−508H[ハリマ化成(株)製]、ハリエスターSK−816E[ハリマ化成(株)製]、ハリエスターSK−822E[ハリマ化成(株)製]、ハリエスターSK−323NS[ハリマ化成(株)製]等が挙げられ、ロジンフェノール系粘着付与樹脂は、タマノルE−100[荒川化学工業(株)製]、タマノルE−200[荒川化学工業(株)製]、タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製]等が挙げられる。
【0027】
これらを併用する場合には、前記重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(A)とロジンフェノール系粘着付与樹脂(B)との比が、(A)/(B)で表される質量比で5/1〜1/5であることが好ましく、3/1〜1/3がより好ましく、3/1〜1/1が更に好ましい。当該範囲内であれば、柔軟性と凝集力をバランスよく向上させることができる。
【0028】
粘着付与樹脂の軟化点において、軟化点が120〜180℃であることが好適であり、より好ましくは140〜180℃である。軟化点の高い粘着付与樹脂を配合することで、耐熱性が向上する。
【0029】
アクリル系共重合体/粘着付与樹脂の配合比において、アクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/10〜100/40が好適であり、より好ましくはアクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/15〜100/35である。当該範囲内であれば、耐熱性と凝集力をバランスよく向上させることができる。
【0030】
(架橋剤)
本発明の粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)において、得られる粘着剤層の凝集力を向上させる目的で、架橋剤を使用することが好ましい。架橋剤としては、公知のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、多価金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、ケト・ヒドラジド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、シラン系架橋剤、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系架橋剤等が使用できる。その中でも、各エマルジョン粒子の内部で架橋反応を進行させるタイプの架橋剤が好ましい。例えば、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系架橋剤等が挙げられる。中でも、水溶率が50%未満であることが好ましく、25%未満がより好ましい。具体的には、エポキシ系架橋剤では、デナコール EX−411[ナガセ化成工業(株)製;水溶率27%]、デナコール EX−301[ナガセ化成工業(株)製;水溶率33%]、デナコール EX−321[ナガセ化成工業(株)製;水溶率20%]、デナコール EX−201[ナガセ化成工業(株)製;水に不溶]、デナコール EX−211[ナガセ化成工業(株)製;水溶率26%]、デナコール EX−212[ナガセ化成工業(株)製;水に不溶]、デナコール EX−922[ナガセ化成工業(株)製;水に不溶]、テトラッドC[三菱瓦斯化学(株)製;水に不溶]、テトラッドX[三菱瓦斯化学(株)製;水に不溶]等が挙げられる。グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系架橋剤では、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン[KBM−303;信越シリコーン(株)製]、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン[KBM−403;信越シリコーン(株)製]、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン[KBE−402;信越シリコーン(株)製]、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン[KBE−403;信越シリコーン(株)製]等が挙げられる。
【0031】
架橋度合いの指標として、粘着剤層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値を用い、架橋度を調整する。ゲル分率は、10質量%以上50質量%未満が好ましい。当該範囲であれば、強接着力を維持しながら、柔軟性をバランスよく確保することができる。
【0032】
また、柔軟性の指標として、水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’を用い、架橋度を調整する。貯蔵弾性率Ga’は、3000Pa以上6000Pa未満であることが好ましい。当該範囲であれば、強接着力を維持しながら、柔軟性をバランスよく確保することができる。
【0033】
(添加剤)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物においては、添加剤として、必要に応じて本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ・金属粉末等の充填剤、顔料・染料等の着色剤、pH調整剤、皮膜形成補助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを粘着剤組成物に任意で添加することができる。
【0034】
(固形分濃度)
また、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物の固形分濃度は、特に制限されるものではないが、製造時のコストや輸送コストという観点、及び、乾燥して使用する際の乾燥性に優れるという観点から、固形分濃度が40〜70重量%であることが好ましい。
【0035】
(初期ゲル分率)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、当該組成物から架橋反応を進行させないように水性媒体を除去して固形分のみとした際の未架橋の当該固形分のゲル分率(以下、初期ゲル分率と称する)が15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることがより一層好ましい。本発明においては、水分散型アクリル系粘着剤組成物の初期ゲル分率を当該範囲とすることで、強接着力を維持しながら、柔軟性をバランスよく確保することができる。
【0036】
初期ゲル分率は、水分散型アクリル系粘着剤組成物作成時の重合温度、開始剤の種類や使用量により調整できる。初期ゲル分率を15質量%以下にする際には、例えば、開始剤として、アゾ系開始剤、過硫酸塩系開始剤及び過酸化物系開始剤を使用することが好ましい。なかでも、アゾ系開始剤や、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤を好ましく使用できる。
【0037】
初期ゲル分率は、架橋剤を含有しない水分散型アクリル系粘着剤組成物から水性媒体を除去して固形分を得た後、当該固形分をトルエンに24時間浸漬して不溶分を測定することができる。
【0038】
初期ゲル分率の調整に際しては、乳化重合に際しての重合温度を、使用する重合開始剤に応じて適宜調整することが好ましく、例えば、過硫酸アンモニウムを用いた場合に、初期ゲル分率を15質量%以下とする際には、重合温度は70℃未満が好ましく、65℃未満がより好ましい。
【0039】
(粒子径)
また、本発明における水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体エマルジョン粒子の平均粒子径は特に制限されるものではないが、アクリル系共重合体エマルジョン粒子は、粒子内部で架橋反応を好適に進行させるために、200nm以上であることがより好ましく、300nm以上であることが一層好ましい。また、アクリル系共重合体を調製するのに必要な反応性を確保するために、上限としては、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、600nm以下であることが一層好ましい。
【0040】
ここでの粒子の平均粒子径とは、エマルジョン粒子の体積基準での50%メジアン径をいい、数値は動的光散乱法により測定して得られる値に基づくものである。平均粒子径が小さくなりすぎた場合、粒子の表面積が増え、粒子表面が水と接触する割合が増加する。その結果、例えば酸基としてカルボキシル基を使用する場合には、カルボキシル基がカルボキシラートアニオンにイオン化し易くなり、粒子表面にカルボキシル基が局在化する傾向が強くなる。
【0041】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)>
本発明において使用する水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)は、2−エチルヘキシルアクリレート、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーをモノマー成分として含有するアクリル系共重合体を使用する。また、本発明において使用する水分散型アクリル系粘着剤組成物は、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’が6000Pa以上50000Pa未満、好ましくは6000〜15000Pa、より好ましくは6000〜12000Paとなるように、粘着付与樹脂及び架橋剤を使用する。乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’が当該範囲である水分散型アクリル系粘着剤組成物を使用することで、優れた耐反発性を発現できる高い凝集力を確保できる。水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)の乾燥後の貯蔵弾性率等の動的粘弾性の測定においては、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様にして測定できる。
【0042】
本発明において使用する水分散型アクリル系共重合体は、2−エチルヘキシルアクリレートをモノマー成分として含有する。本発明においては、水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と併用する水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用する水分散型アクリル系共重合体として、2−エチルヘキシルアクリレートをモノマー成分として使用することにより、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)との相溶性を確保でき、また、高温時に必要な凝集力と柔軟性を両立しやすくなる。また、当該モノマー成分以外のモノマー成分や配合比についても、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用する水分散型アクリル系共重合体と同様とすることで、両者の相溶性が確保しやすく、共重合体の併用による凝集力の劣化が生じにくい。水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の2−エチルヘキシルアクリレートの含有量としては、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがさらに好ましい。2−エチルヘキシルアクリレートの含有量を当該範囲とすることで、好適な強接着性と凝集力を保持できる。
【0043】
また、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体おいても、水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体と同様に、2−エチルヘキシルアクリレートと併用して炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、高分子量アクリル系共重合体(a)において例示した(メタ)アクリレートを例示でき、なかでも、n−ブチルアクリレートを好ましく使用できる。また、n−ブチルアクリレートとt−ブチルメタクリレートとを併用することも好ましい。炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの使用量としては10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがさらに好ましい。また、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを併用する場合には、2−エチルヘキシルアクリレート及び炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の和を50〜98質量%とすることが好ましく、80〜98質量%とすることが特に好ましく、2−エチルヘキシルアクリレートと炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の比が、(2−エチルヘキシルアクリレート/炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート)で表される質量比で9/1〜2/8であることが好ましく、75/25〜25/75であることが特に好ましい。
【0044】
また、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体を形成する(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の1種または2種以上を併用しても良い。なかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の炭素数2以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを併用することが好ましく、使用量としては1〜10質量%であることが好ましい。
【0045】
また、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体においては、上記以外のモノマーとして、酸基を有するモノマーを含有することも好ましい。酸基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水フタル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマーから選ばれる1種又は2種以上を使用できる。
【0046】
水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体中の酸基を有するモノマーの含有量は、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の0.5〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましく、更に好ましくは1.5〜3.5質量%である。当該範囲内とすることで、架橋剤との架橋反応が良好に進行し易くなる。さらに、粘着剤層を形成した際に、粘着剤層に好適な凝集力が確保され、耐反発性が向上しやすい。
【0047】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体においては、粘着剤層の凝集力を向上させるため、アクリル系共重合体のモノマー成分として、さらに、窒素含有ビニルモノマーを使用しても良い。窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリロニトリル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド及びジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種又は2種以上を使用できる。
【0048】
窒素含有ビニルモノマーを使用する場合の含有量は、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の0.1〜4.5質量%であり、好ましくは、0.5〜4質量%、より好ましくは0.5〜3.5質量%の範囲で調整することで本発明の効果を好適に発現できる。
【0049】
水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体中の窒素含有ビニルモノマーとカルボキシル基を有するビニルモノマーの比率は、特に限定されるものではないが、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の窒素含有ビニルモノマーのモル数/カルボキシル基を有するビニルモノマーのモル数で表わされるモル比が、1/1〜1/20であることが好ましく、1/1〜1/5がより好ましく、1/1〜1/3が更に好ましい。当該範囲内であれば、カルボキシル基を有するビニルモノマーと後述する架橋剤との反応が進行し易くなる。さらに、アクリル系共重合体エマルジョン中のカルボキシル基の分布を後述する範囲に収束させ易くなる。
【0050】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体においては、上記以外のモノマーを必要に応じて使用することもでき、そのようなモノマーの例としては、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体において例示した、水酸基含有モノマー、ケト基又はアルデヒド基含有モノマー、シラン系モノマー、メチロール基含有モノマー及び燐酸基含有モノマーの1種または2種以上を使用しても良く、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の20質量%以下の割合で用いることができる。
【0051】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体の重量平均分子量は、水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体と同様に、50万〜120万が好適であり、さらに好ましくは60〜100万である。当該範囲内とすることで、光学フィルムの歪みに追従できる柔軟性と、優れた耐反発性を発現できる高い凝集力をバランスよく両立することができる。
【0052】
前記重量平均分子量は、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算である。測定条件の例として、HLC−8220GPC(東ソー社製)を用いてカラムはTSKgel GMHXL[東ソー製]を用い、カラム温度は40℃、溶離液はテトラヒドロフラン、流量は1.0mL/分とし、標準ポリスチレンはTSK標準ポリスチレンを用いることで測定できる。
【0053】
分子量を調整するために、重合には連鎖移動剤を用いても良く、連鎖移動剤としては、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)にて例示した、公知の連鎖移動剤を使用できる。
【0054】
(粘着付与樹脂)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体において、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体と同様に、粘着付与樹脂を使用することが好ましい。本発明における粘着付与樹脂においては、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体と同様で、水分散型の粘着剤組成物に使用する観点から、エマルジョン型の粘着付与樹脂を好ましく使用できる。前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)にて例示した、公知の粘着付与樹脂が使用できる。
【0055】
中でも、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂と、ロジンフェノール系粘着付与樹脂が好ましく、これらを併用で配合することが特に好ましい。これらを併用する場合には、前記重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(A)とロジンフェノール系粘着付与樹脂(B)との比が、(A)/(B)で表される質量比で5/1〜1/5であることが好ましく、3/1〜1/3がより好ましく、3/1〜1/1が更に好ましい。当該範囲内であれば、柔軟性と凝集力をバランスよく向上させることができる。
【0056】
粘着付与樹脂の軟化点においても、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様に、軟化点が120〜180℃であることが好適であり、より好ましくは140〜180℃である。軟化点の高い粘着付与樹脂を配合することで、耐熱性が向上する。
【0057】
アクリル系共重合体/粘着付与樹脂の配合比においても、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様に、アクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/10〜100/40が好適であり、より好ましくはアクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/15〜100/35である。当該範囲内であれば、柔軟性と凝集力をバランスよく向上させることができる。
【0058】
(架橋剤)
本発明の粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)において、得られる粘着剤層の凝集力を向上させる目的で、架橋剤を使用することが好ましい。前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)にて例示した、公知の粘着付与樹脂が使用できる。
【0059】
架橋度合いの指標として、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)を乾燥した後の粘着剤層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値を用い、架橋度を調整する。ゲル分率は、50質量%以上90質量%未満が好ましい。当該範囲であれば、強接着力を維持しながら、高い凝集力を確保することができる。
【0060】
また、柔軟性の指標として、水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’を用い、架橋度を調整する。貯蔵弾性率Gb’は、6000Pa以上50000Pa未満であることが好ましい。当該範囲であれば、強接着力を維持しながら、高い凝集力を確保することができる。
【0061】
(添加剤)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)においても、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様に、必要に応じて本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)にて例示した、公知の添加剤が使用できる。
【0062】
(固形分濃度)
また、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)においても、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様に、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)の固形分濃度は、特に制限されるものではないが、製造時のコストや輸送コストという観点、及び、乾燥して使用する際の乾燥性に優れるという観点から、固形分濃度が40〜70重量%であることが好ましい。
【0063】
(初期ゲル分率)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)においても、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様に、初期ゲル分率は15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることがより一層好ましい。本発明においては、水分散型アクリル系粘着剤組成物の初期ゲル分率を当該範囲とすることで、強接着力を維持しながら、耐反発性に必要な柔軟性と高い凝集力をバランスよく確保することができる。
【0064】
初期ゲル分率は、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様の手法で調整できる。
【0065】
初期ゲル分率は、架橋剤を含有しない水分散型アクリル系粘着剤組成物から水性媒体を除去して固形分を得た後、当該固形分をトルエンに24時間浸漬して不溶分を測定することができる。
【0066】
また、本発明における水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体エマルジョン粒子の平均粒子径は特に制限されるものではないが、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体エマルジョン粒子と同様に、アクリル系共重合体エマルジョン粒子は、粒子内部で架橋反応を好適に進行させるために、200nm以上であることがより好ましく、300nm以上であることが一層好ましい。また、アクリル系共重合体を調製するのに必要な反応性を確保するために、上限としては、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、600nm以下であることが一層好ましい。
【0067】
(製造方法)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物の調整においては、水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)とを、各々調整した後に両者を混合する。
【0068】
水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)及び(B)との混合は、得られる水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paとなるように、配合すれば良いが、各々の組成物の特性を十分に発現させるため、水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)及び(B)を、それぞれ少なくとも5質量%以上含有することが好ましく、10質量%がより好ましい。(A)/(B)で表わされる質量比で、95/5〜5/95であることが好ましく、90/10〜10/90がより好ましい。
【0069】
各々のアクリル系共重合体エマルジョンは、水性媒体を使用してエマルジョン型の粘着剤組成物を得る乳化重合法により製造できる。乳化重合においては、重合安定性を確保するため、陰イオン性や非イオン性の乳化剤、その他の分散安定剤が適量用いられる。特に乳化剤は制限されず、公知の乳化剤を用いることができる。陰イオン性乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられ、非イオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。更に、公知の「反応性乳化剤」と称される重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤を使用することが好ましい。具体的には、ラテムルS−180[花王(株)製]、ラテムルPD−104[花王(株)製]、アクアロンHS−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンHS−20[第一工業製薬(株)製]、アクアロンKH−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製]、アクアロンKH−05[第一工業製薬(株)製]、アクアロンRN−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンRN−20[第一工業製薬(株)製]、アクアロンER−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンER−20[第一工業製薬(株)製]、ニューフロンティアA−229E[第一工業製薬(株)製]、アデカリアソープSE−10[旭電化工業(株)製]、アデカリアソープSE−20[旭電化工業(株)製]、アデカリアソープSR−10N[旭電化工業(株)製]、アデカリアソープSR−20N[旭電化工業(株)製]等が挙げられる。反応性乳化剤を使用することで、重合安定性に加え、被膜の耐水性が向上するため好ましい。
【0070】
乳化重合法の中でも、滴下重合法を使用することが好ましい。また、酸基を粒子内部に導入し易くするために、滴下重合法を選定し、滴下前半と滴下後半に滴下させる乳化液の組成を変更させる方法で制御しても良い。具体的には、滴下前半では酸モノマーの比率を高め、滴下後半では酸モノマーの比率を低くすることで、粒子内部に酸モノマーを導入することができる。
【0071】
乳化重合に際し用いられる重合開始剤は限定されず、公知の重合開始剤を用いることができる。具体的に、2,2’,−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−アルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤、芳香族カルボニル化合物等のカルボニル系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ等のレドックス系開始剤などが挙げられる。
【0072】
(水性媒体)
本発明において使用する水性媒体は、水の単独使用でもよく、あるいは水と水溶性溶剤の混合溶剤を用いてもよい。本発明で使用可能な上記の「水と水溶性溶剤の混合溶剤」とは、実質的に水を主体とした水溶性溶剤との混合溶剤であり、混合溶剤の全量に対して、水溶性溶剤の含有率が好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下である。前記水溶性溶剤とは、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、あるいはN−メチルピロリドン等の極性溶剤が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0073】
[粘着テープ]
(構成)
本発明の粘着テープは、上記の水分散型アクリル系粘着剤組成物を乾燥して得られる粘着剤層を有する粘着テープである。粘着剤層は単層の粘着剤の層であっても良く、両面粘着テープのような複数の粘着剤の層及びシートからなる多層であっても良い。二以上の部材固定用途においては、両面粘着テープが好適に使用できる。
【0074】
(粘着剤層)
本発明の粘着テープにおける粘着剤層は、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物から溶媒を除去して得られる層であり、周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paである。
【0075】
(粘着剤層の貯蔵弾性率)
本発明の粘着テープに使用する粘着剤層は、周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paであることが好ましい。G’が4000Pa未満であると、粘着剤層が柔らかくなりすぎて変形しやすくなり、光学フィルムの歪みの抑制が困難となる。一方、9000Paを越えると、粘着剤層が硬くなりすぎて、光学フィルムの伸張に粘着剤層が追従できなくなり、光学フィルムが粘着剤層から剥がれてしまう。
【0076】
(粘着剤層の損失正接)
本発明の粘着テープに使用する粘着剤層は、周波数0.005Hz、85℃にて測定される損失正接tanδが0.3〜0.5であることが好ましい。tanδが0.3以上であると粘着剤層が好適な柔軟性を示し、光学フィルムの伸張に粘着剤が追従しやすくなり、光学フィルムの粘着剤層からの剥がれを抑制しやすくなる。また、0.5以下とすることで、粘着剤層が大きな変形を生じない硬さを好適に保持できるため、光学フィルムの歪みを好適に抑制できる。
【0077】
(粘着剤層の貯蔵弾性率及び損失正接)
特に、本発明の粘着テープに使用する粘着剤層は、周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paかつ損失正接tanδが0.3〜0.5であることがより好ましい。G’及びtanδが当該範囲にあることで、高温時に必要な凝集力と柔軟性を特にバランスよく向上させることができ、光学フィルムの歪みを好適に抑制できる。
【0078】
上述の動的粘弾性特性は、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KFRTN1)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、線形せん断歪み条件において周波数0.005Hz、85℃における貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”及び損失正接tanδ(=G”/G’)を測定するものである。試験片は厚み0.5〜2.5mmの粘着剤を単独で平行円盤の間に挟み、測定する.
【0079】
本発明の粘着テープによる光学フィルムの歪みの抑制を評価するに際しては、温度85℃、周波数0.005Hzの動的粘弾性測定条件下における貯蔵弾性率及び損失正接を評価することで、歪み抑制効果を好適に評価できる。
【0080】
本発明の粘着テープにおける粘着剤層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定して得られるゲル分率は、30〜60%が好ましく、35〜55%が特に好ましい。当該範囲であれば、強接着力を維持しながら、高い凝集力を確保することができる。
【0081】
粘着剤層の厚さは、薄型で好適に光学フィルムの歪みを抑制できることから、10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは15〜150μmであり、30〜75μmであることが特に好ましい。両面粘着テープを形成する場合には、両面を合算した粘着剤層の厚さを上記範囲の厚さとすることが好ましい。
【0082】
(基材)
本発明の粘着テープに使用する基材としては、特に限定されず、不織布であっても、樹脂フィルムであっても良いが、厚み較差や抜き加工適性を向上させるために、樹脂フィルムの基材が好適に使用できる。また、樹脂フィルム単独からなる基材であっても、樹脂フィルム自体に遮光性や反射性を付与した樹脂フィルムからなる基材であってもよく、また、これら樹脂フィルムに遮光層や反射層が設けられた基材であっても良い。基材に使用される樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(以下PET)、トリアセチルセルロース、ポリアリレート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。中でも、特に耐熱性に優れ、低価格なPETが好ましい。
【0083】
基材の厚みは、3〜50μmであることが好ましく、更に好ましくは、10〜30μmである。当該範囲であれば、抜き加工適性が良好である。また、当該範囲であれば、薄型化が求められるLCDモジュール等の携帯電子端末に適用する粘着テープに好適である。
【0084】
特に、本発明の粘着テープに使用する基材の85℃の収縮率は流れ方向、幅方向ともに1.5%以下であることが好ましい。好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.1%以下である。当該範囲であれば、光学フィルムを固定したのち高温下で保存しても、光学フィルムの歪みを軽減できる。基材の収縮率Xは、23℃の状態の長さL23と、85℃に24時間放置した後の長さL85とした時、X=100×(L23−L85)/L23で求める。
【0085】
遮光層を設ける場合には、遮光層を、例えば、黒色のインキの塗付により形成することができる。インキ層を黒色にするには、公知慣用の顔料や染料を含有させればよい。中でも、遮光性に優れ、低価格なカーボンブラックが好ましい。また、インキのビヒクルは、環境配慮の面から、ハロゲンフリータイプであることが好ましい。
【0086】
光反射層は、光反射性の層の基材フィルム上への積層や、基材フィルム自体を光反射性のフィルムとすることにより形成できる。例えば、基材フィルムに白色顔料や銀色顔料を分散させて白色樹脂フィルムや銀色樹脂フィルムとしても良いし、白色インキや銀色インキを基材フィルムにコートして印刷フィルムとしても良いし、金属蒸着層を設けて蒸着フィルムとしても良い。中でも、白色インキや銀色インキを基材フィルムにコートした印刷フィルムが、収縮率が低く好ましい。
【0087】
本発明の粘着テープは、光学フィルムを被着体に額縁状に固定する用途、なかでもバックライト筐体と画像表示パネルとを有する画像表示モジュールにおけるバックライト筐体又は画像表示パネルの少なくとも一つを被着体とし、当該被着体に額縁状に光学フィルムを固定する用途に特に適した粘着テープである。当該光学フィルムの固定用途に際しては、光反射層と遮光層を積層した基材の両方の面に粘着剤層を設けた、光反射性と遮光性を兼備した基材を使用した粘着テープであることが好ましい。
【0088】
光学フィルムの固定用途に使用する際の具体的な実施形態としては、図1〜4に例示した構成を例示できる。図1は、基材の両面に粘着剤層が積層されている実施形態である。図2は基材の片面に粘着剤層が積層されている実施形態である。図3は光反射層と遮光層を積層した基材の光反射層側に粘着剤層が積層されている実施形態である。また、図4は、光反射層と遮光層を積層した基材の両面に粘着剤層を設けた本発明の粘着テープの一例を示す実施形態である。本発明の粘着テープは、図2及び図3のような片面粘着テープ、あるいは図1や図4のような両面粘着テープの形態を採ることができる。なお、粘着剤層は単層の粘着剤の層であっても良いが、両面粘着テープのような複数の粘着剤の層及びシートからなる多層の材料であっても良い。これら構成のなかでも、部材間の固定に際して、基材の片面に粘着剤層を有する構成の場合には粘着剤層が設けられた他面を被着体に固定する手段を要するが、基材の両面に粘着剤層を有する構成であると、他の固定手段を用いなくとも好適に部材間を固定できることから、基材の両面に粘着剤層を有する構成であることが好ましい。また、基材の両面に粘着剤層を有する構成は、画像表示パネル等に加わる衝撃の緩和や、画像表示モジュールを構成する部材間へのゴミの侵入防止に好適である。
【0089】
(画像表示モジュール)
本発明の粘着テープは、光学フィルムが少なくとも一層設けられたバックライト筐体と、画像表示パネルとを有する画像表示モジュールにおいて、前記粘着剤層表面の少なくとも一部が前記光学フィルム表面に接するように、好ましくは当該光学フィルムを額縁上に固定する態様にて使用することで、好適に光学フィルムの歪みを抑制できる。当該画像表示モジュールとしては、なかでも、光学フィルムが少なくとも一層設けられたバックライト筐体と、LCDパネルとを有するLCDモジュールにおいて、前記光学フィルムと前記LCDパネルとの間、または、前記光学フィルムとバックライト筐体の間に、前記粘着剤層表面の少なくとも一部が前記光学フィルム表面に接するよう使用される態様であると特に好適である。
【0090】
本発明において、LCDモジュールとは、光学フィルムが少なくとも一層設けられたバックライト筐体と、LCDパネルとを有し、当該LCDパネルとバックライト筐体とが一体化されているものをいい、一般にバックライト型液晶表示装置に使用されている構成のLCDモジュールとして使用されている構成のものをいう。本発明におけるバックライト筐体は、バックライト用の光源を有し、光学フィルムが少なくとも一層設けられた構成を有するものである。本発明の粘着テープは、粘着剤層の少なくとも一部が当該光学フィルム表面と接する態様で使用されるものである。
【0091】
バックライト筐体の表層に設けられる光学フィルムとしては、プリズムシート、拡散フィルム、遮光フィルム、反射フィルム等が挙げられる。そのなかでも特に歪みが発生しやすい光学フィルムとしては、偏光反射機能を有するフィルムにプリズム層を設けた光学フィルムが挙げられる。このような光学フィルムとしては、例えば、3M社製BEF−RP2RC、BEF−RP3が挙げられる。
【0092】
本発明の粘着テープは、好適に光学フィルムの歪みを抑制でき、なかでも光学フィルムの大きさが2.5〜7インチ(対角)程度の大きさの光学フィルムに対して、特に顕著な歪み抑制効果を奏する。7インチを越える光学フィルムは、本発明の粘着テープにより熱変形による歪みを抑制できるが、粘着テープのみで完全に歪みの発生を無くすことは困難な場合がある。2.5インチ未満の光学フィルムは熱変形量が小さい場合があり、この際には他の粘着テープによっても歪みの抑制が可能となる場合がある。
【0093】
光学フィルムの外形変化率が大きいほど歪みが発生しやすく、流れ方向と幅方向で挙動が変わる場合に歪みが酷くなる。特に流れ方向に+0.06%以上であり、幅方向に−0.06%以下の場合に歪みが発生しやすい。本発明の粘着テープでは上記光学フィルムであっても歪みを抑制することができる。尚、光学フィルムの外形変化率は85℃で5分間静置前後の下式で表される。
外形変化率=[(静置後長さ−静置前長さ)/(静置前長さ)]×100(%)
【0094】
光学フィルムがプリズム層を有しプリズム層の稜線が粘着テープの流れ方向と斜めに交差している場合に光学フィルムの歪みは発生しやすいが、本発明の粘着テープは上記構成であっても歪みを好適に抑制できる。
【0095】
本発明に好適なLCDモジュールの構成としては、(1)光学フィルムがバックライト筐体の最表層に設けられ、当該光学フィルムとLCDパネルとが粘着テープを介して一体化されている構成や、(2)光学フィルムが粘着テープを介してバックライト筐体と一体化されており、当該光学フィルム上に他の構成が積層された上にLCDパネルが一体化されている構成などがある。ここで使用される粘着テープは、(1)の構成においては画像表示部を確保する目的で、(2)の構成においては薄型化や軽量化のため枠抜きされた筐体の形状に合わせる目的で、額縁状の粘着テープが使用される。
【0096】
額縁状の粘着テープは、打ち抜かれて中抜きされた一枚の粘着テープによる固定であっても、細長い形態の粘着テープを複数組み合わせることによる額縁状の固定であってもよい。
【0097】
LCDモジュールの具体的な構成の例としては、上記(1)の構成例として、図5及び図6に示したサイドライト型バックライト方式のLCDモジュールユニット100が挙げられる。図5及び図6は、LCDパネルとバックライト筐体との間に粘着テープが設けられた、LCDモジュールユニット100の概略構成を示す概略図であり、図5は断面図、図6は分解図である。このLCDモジュールユニット100は、一般に、バックライト筐体16の中に、反射板15、導光板14、拡散シート12、光学フィルムとして、輝度を高めるため必要に応じて使用される1枚以上のプリズムシート11、粘着テープ10、LCDパネル17が順に積層されており、導光板14の側方には、ランプリフレクタを備えたLED(Light Emitting Diode)又は冷陰極管等からなる光源13が配置されている。
【0098】
このLCDパネル17とバックライト筐体16との間に設けられる粘着テープは、プリズムシート11に粘着剤層が接するよう設けられ、当該粘着剤層の一部が、バックライト筐体16にも接するように設けられる。これにより、プリズムシート11とプリズムシート11の下側に設置されている拡散シート12等をバックライト筐体に固定される。この粘着テープ10は、通常、額縁状に打ち抜かれており、その幅は約0.5〜10mmである。
【0099】
当該構成において、温度環境が変化することによりプリズムシート11が伸縮した場合であっても、粘着テープの粘着剤層が当該伸縮に追従し、プリズムシート11に歪みの発生を抑制することができる。粘着テープ10が両面粘着テープである場合には、上部のLCDパネル17も合わせて固定させることもでき、また、遮光性や光反射性を有する場合には、光源16の光を有効にLCDパネル17側に反射させる機能や、駆動するドライバー9への光の進入を防止する機能により美麗な画像表示に大きく寄与する。
【0100】
また、上記(2)の構成例として図7及び図8に示したサイドライト型バックライト方式のLCDモジュールユニット100’が挙げられる。図7及び図8は、バックライト筐体と光学フィルムの間に粘着テープが設けられたLCDモジュールユニット100’の概略構成を示す概略図である。このLCDモジュールユニット100’は、LCDパネル17とバックライト筐体16との間に粘着テープが設けられた上記図5及び図6に示した構成に加え、バックライト筐体16と光学フィルムの一つである反射板の間に粘着テープが設けられた構成である。
【0101】
図9及び図10は、本発明の粘着テープを、フレキシブルプリント回路基板(以下、FPCと略記)18と一体となったLCDパネル17とバックライト筐体との固着に用いた本発明のLCDモジュールユニットの一実施形態を示す概略図であり、図9は断面図、図10(a)は分解図、図10(b)は全体図である。本実施形態のLCDモジュールユニット100”、バックライト筐体16と、LCDパネル17と、LCDパネル17に一体となって接続したFPC18とから概略構成されている。図9に示すように、このFPC18は、矢印方向に、ほぼ180°に折り曲げられて、LCDパネル17とバックライト筐体16とを挟み込み、バックライト筐体16の裏面にフックや他の粘着テープ等で固定されている。
【0102】
以上のとおり、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、水分散型の粘着剤組成物でありながら光学フィルムの歪みを好適に抑制できる粘着テープを形成できる。このため、本発明によれば、LCDモジュールや有機ELモジュール等の画像表示モジュールを、揮発性溶剤の発生なく製造でき、かつ、これら画像表示モジュールを使用した携帯電話やデジタルカメラ等の各種電子機器、携帯電子端末等において、視認性の良好な画像表示を実現できる。
【実施例】
【0103】
(製造例1)
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
容器にイオン交換水75.0gと界面活性剤アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製;有効成分25%]20.0gと界面活性剤ラテムルPD−104[花王(株)製;有効成分20%]37.5gを入れ、均一に溶解した。そこに、n−ブチルアクリレート227.5g、2−エチルヘキシルアクリレート227.5g、メチルメタクリレート25.0g、N−ビニルピロリドン7.5g、アクリル酸12.5g、ラウリルメルカプタン0.2gを加えて乳化し、乳化液632.7gを得た。
【0104】
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に、イオン交換水340gを入れ、窒素を吹き込みながら60℃まで昇温した。攪拌下、前記乳化液の一部[3.2g]、過硫酸アンモニウム水溶液5.0g[有効成分3%]、亜硫酸水素ナトリウム水溶液5.0g[有効成分3%]を添加し、60℃を保ちながら、1時間で重合させた。引き続き、残りの乳化液629.5gと、過硫酸アンモニウム水溶液40g(有効成分1.25%)を別々の漏斗を使用して、反応容器を60℃に保ちながら、8時間かけて滴下重合した。滴下終了後、反応容器を60℃に保ちながら、2時間攪拌した後、内容物を冷却し、引き続き、pHが7.0になるようにアンモニア水[有効成分10%]で調整した。これを200メッシュ金網で濾過し、アクリル系共重合エマルジョン(A)を得た。ここで、得られたアクリル系共重合エマルジョンにおける固形分濃度は、50%、平均粒子径は315nmであった。また、アクリル系共重合体エマルジョン中のアクリル系共重合体の重量平均分子量は、73万であった。
【0105】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(1)の製造>
前記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50g、架橋剤として、エポキシ化合物テトラッドCを0.05g[0.01質量部]を添加したのち、40℃で1週間養生し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(1)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(1)の乾燥塗膜のゲル分率は23%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は3451Paであった。
【0106】
(製造例2)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(2)の製造>
前記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50g、架橋剤として、エポキシ化合物テトラッドCを0.1g[0.02質量部]を添加したのち、40℃で1週間養生し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(2)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(2)の乾燥塗膜のゲル分率は36%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は4400Paであった。
【0107】
(製造例3)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(3)の製造>
前記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50g、架橋剤として、エポキシ化合物テトラッドCを0.13g[0.025質量部]を添加したのち、40℃で1週間養生し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(3)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(3)の乾燥塗膜のゲル分率は41%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は5167Paであった。
【0108】
(製造例4)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(4)の製造>
前記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50g、架橋剤として、エポキシ化合物テトラッドCを0.15g[0.03質量部]を添加したのち、40℃で1週間養生し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(4)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(4)の乾燥塗膜のゲル分率は45%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は5264Paであった。
【0109】
(製造例5)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(5)の製造>
前記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50g、架橋剤として、エポキシ化合物テトラッドCを0.25g[0.05質量部]を添加したのち、40℃で1週間養生し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(5)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(5)の乾燥塗膜のゲル分率は53%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は6486Paであった。
【0110】
(製造例6)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)の製造>
前記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50g、架橋剤として、エポキシ化合物テトラッドCを0.5g[0.1質量部]を添加したのち、40℃で1週間養生し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)の乾燥塗膜のゲル分率は65%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は12898Paであった。
【0111】
【表1】
【0112】
(実施例1)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(1)と前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(5)とを、質量比で30:70となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥塗膜のゲル分率は43%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は7263Pa、損失弾性率は2916Pa、損失正接は0.401であった。
【0113】
(実施例2)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(2)と前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)とを、質量比で80:20となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥塗膜のゲル分率は43%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は5977Pa、損失弾性率は2729Pa、損失正接は0.457であった。
【0114】
(実施例3)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(3)と前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)とを、質量比で70:30となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥塗膜のゲル分率は43%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は4998Pa、損失弾性率は2110Pa、損失正接は0.422であった。
【0115】
(実施例4)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(3)と前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)とを、質量比で80:20となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥塗膜のゲル分率は42%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は4765Pa、損失弾性率は2150Pa、損失正接は0.451であった。
【0116】
(実施例5)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(4)と前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)とを、質量比で80:20となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥塗膜のゲル分率は49%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は7455Pa、損失弾性率は2792Pa、損失正接は0.374であった。
【0117】
(実施例6)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(4)と前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)とを、質量比で90:10となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥塗膜のゲル分率は47%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は5953Pa、損失弾性率は2421Pa、損失正接は0.407であった。
【0118】
(比較例1)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50gを添加し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(0)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(0)の乾燥塗膜のゲル分率は8%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は2341Pa、損失弾性率は1863Pa、損失正接は0.796であった。
【0119】
(比較例2)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(1)をそのまま使用した。乾燥塗膜のゲル分率は23%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は3451Pa、損失弾性率は2301Pa、損失正接は0.667であった。
【0120】
(比較例3)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(2)をそのまま使用した。乾燥塗膜のゲル分率は36%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は4400Pa、損失弾性率は2302Pa、損失正接は0.523であった。
【0121】
(比較例4)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(3)をそのまま使用した。乾燥塗膜のゲル分率は41%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は5167Pa、損失弾性率は2497Pa、損失正接は0.483であった。
【0122】
(比較例5)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(4)をそのまま使用した。乾燥塗膜のゲル分率は45%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は5264Pa、損失弾性率は2360Pa、損失正接は0.448であった。
【0123】
(比較例6)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(5)をそのまま使用した。乾燥塗膜のゲル分率は53%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は6486Pa、損失弾性率は2167Pa、損失正接は0.334であった。
【0124】
(比較例7)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)をそのまま使用した。乾燥塗膜のゲル分率は65%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は12898Pa、損失弾性率は2631Pa、損失正接は0.204であった。
【0125】
(比較例8)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記比較例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(0)と、前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)とを、質量比で90:10となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。乾燥塗膜のゲル分率は46%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は8028Pa、損失弾性率は2636Pa、損失正接は0.366であった。
【0126】
[粘着テープの調製方法]
(白インキWの調製方法)
DIC(株)製白色インキ「パナシアCVL−SP709白」100質量部に、DIC(株)製「CVLハードナーNo.10」を2質量部、DIC(株)製「ダイレジューサーV No.20」を35質量部添加して白色インキWを調製した。
【0127】
(黒インキKの調製方法)
DIC(株)製スミインキ「パナシアCVL−SP805スミ」100質量部に、DIC(株)製「CVLハードナーNo.10」を2質量部、DIC(株)製「ダイレジューサーV No.20」を35質量部添加して黒色インキKを調製した。
【0128】
(インキコートフィルムの調製方法)
帝人デュポンフィルム(株)製テフレックスFW2#13を濡れ張力が50dyne/cmとなるようにコロナ処理し、コロナ処理面に上記白色インキWを乾燥厚みが2μmになるよう2回グラビアコートし、常温で2分間放置し、乾燥させた。更に、白色インキ層の上に上記黒色インキKを乾燥厚みが4μmになるよう2回グラビアコートし、常温で2分間放置し、インキコートフィルムを調製した。
【0129】
(粘着テープの調製方法)
上記実施例及び比較例にて調整した水分散型アクリル系粘着剤組成物を、それぞれ剥離処理した厚さ75μmのPETフィルム上に、乾燥後の厚さが20μmとなるよう塗工して、100℃で3分間乾燥して得た粘着シートを、上記インキコートフィルムの両面に転写し、80℃の熱ロールで4kgf/cmの圧力でラミネートし、粘着テープを得た。
【0130】
[評価方法]
(アクリル系共重合体の重量平均分子量)
得られたアクリル系共重合体エマルジョンについて、以下の条件にてGPC測定を行い、水分散型アクリル系粘着剤組成物中のアクリル共重合体の重量平均分子量を測定した。
測定装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
GPCカラム構成:以下の4連カラム(すべて東ソー社製)
(1)TSK−GEL HXL−H(ガードカラム)
(2)TSK−GEL GMHXL
(3)TSK−GEL GMHXL
(4)TSK−GEL GMHXL
サンプル濃度:4mg/mLとなるようにテトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
注入量:100μL
カラム温度:40℃
【0131】
(アクリル系共重合体エマルジョン粒子の平均粒子径)
得られたアクリル系共重合体エマルジョンについて、日機装(株)製マイクロトラックUPA型粒度分布測定装置にて測定し、水分散型アクリル系粘着剤組成物中のアクリル共重合体エマルジョン粒子の平均粒子径(体積基準での50%メジアン径)の値を求めた。
【0132】
(ゲル分率の測定)
上記にて調整した粘着テープを40℃の環境下で2日エージング後に、40mm×50mmの大きさに切り取ったものを試料とした。次に、予め上記試料のトルエン浸漬前の質量(G1)と基材の質量(G0)を測定しておき、トルエン溶液中に常温で24時間浸漬した。そして、浸漬後の試料のトルエン不溶分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、105℃で1時間乾燥した後の残留分の質量(G2)を測定し、下記式に従ってゲル分率を求めた。
ゲル分率(質量%)=[(G2−G0)/(G1−G0)]×100
【0133】
(貯蔵弾性率、損失正接の測定)
乾燥後のアクリル系粘着剤組成物を1mm厚まで重ね合わせた試験片を粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KFRTN1)を用いて、直径7.9mmの平行円盤形の測定部に試験片を挟み込み、周波数0.005Hz、85℃、線形せん断歪みの条件で動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”及び損失正接tanδ(=G”/G’)を計測した。
【0134】
(光学フィルムの歪み抑制評価)
上記にて調整した粘着テープを23℃下で図11のように額縁状に打ち抜き加工した粘着テープ(外形:32mm×42mm、幅:2mm)の黒色インキ側をガラスに貼付し、白色インキ側を3M社製の薄型光学フィルム「BEFRP2RC」(120μm)(外形:30mm×40mm)に貼付した(図11)。なお、粘着テープと光学フィルムが接する幅は各辺とも1mmとした。この部品を85℃に72時間静置し、その後23℃に1時間静置して、85℃静置前後での外観変化を観察した。
○:光学フィルムに全く歪みが発生しなかった
△:光学フィルムに歪みが発生した
×:光学フィルムに大きな歪みが発生した
【0135】
(耐反発性評価)
100μmのPETフィルム(ユニチカ製エンブレットSA#100)と2mm厚さのポリカーボネート(PC)板を2mm幅のテープで貼付した。その後、2kgローラー1往復の条件で加圧し、85℃72時間放置後の浮き剥がれを観察した。
○:浮き剥がれが0.5mm未満
△:浮き剥がれが0.5mm以上1mm未満
×:1mm以上浮き剥がれが生じ、剥離した
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
上記表2〜3から明らかなとおり、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物を使用した実施例1〜6の粘着テープにおいては、光学フィルムの高温下での歪みを抑制でき、浮きや剥がれを生じることなく好適に光学フィルムを固定できるものであった。一方、比較例1〜8の粘着剤組成物では、光学フィルムの歪みや、0.5mm以上の浮き剥がれが発生し、視認性評価や厚み較差が厳しいLCDモジュール等の画像表示モジュールに適さないものであった。
【符号の説明】
【0139】
1:粘着剤層
2:基材
3:遮光層
4:光反射層
9:ドライバー
10:粘着テープ
11:プリズムシート
12:拡散シート
13:光源
14:導光板
15:反射板
16:バックライト筐体
17:LCDパネル
20:粘着テープ
21:光学フィルム
22:ガラス
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系共重合体を主成分とするエマルジョン型粘着剤組成物、および該組成物を用いた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、携帯電話、デジタルカメラ、薄型テレビ等の広範囲な分野において、部材を固定、接着する材料として多方面で利用されている。近年、携帯電話に代表されるように、いわゆる光学部材を製品の構成要素とし、薄型設計が要望される分野においては、従来問題視されていなかった課題が浮上している。中でも、光学フィルムを固定する粘着テープにおいて、光学フィルムの薄型化により、両面粘着テープで周囲を固定された光学フィルムが信頼性試験で高温に放置された時に光学フィルムの歪みが発生する問題が生じている。このような歪んだ箇所を通過した光で照明されると、LCDパネルや有機ELパネル等の画像表示パネル中の画像がシャープさを欠くものになってしまうという問題が生じている。
【0003】
上記課題を解決するため、光学フィルムに向き合う箇所に接着剤を有しない両面粘着テープを使用したLCDモジュールが開示されている(特許文献1参照)。しかし、部分的に接着剤を有しない両面粘着テープを製造するのは極めて困難であり、コストも高い。また光学フィルムが固定されていないため、使用中や組立作業中にプリズムシートがずれるという問題が発生する。また、光学フィルムに接する粘着剤層の周波数1Hzでの動的粘弾性スペクトルの85℃の損失正接が0.35〜0.7であり、85℃の貯蔵弾性率が15000〜20000Paの粘着テープが開示されている(特許文献2参照)。しかし、上記テープでも必ずしも光学フィルムの歪みを抑制できなかった。特に熱変形が大きな光学フィルムや3インチ以上の光学フィルムを使用した際には上記粘着テープでも歪みが発生する場合があった。
【0004】
さらに近年は、上記のような電子機器の部品固定に用いる粘着テープにおいて、揮発性有機化合物(いわゆるVOC)の排出抑制が強く求められている。このような粘着テープとしては、無溶剤タイプの粘着剤が注目され、溶剤剤型粘着剤から水分散型粘着剤への置換が要望されているが、上記のような光学フィルムを好適に固定し、歪みを抑制できる水分散型粘着剤を用いた粘着テープは実現されていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2006−184656号
【特許文献2】特開2008−248226号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、揮発性有機化合物を低減しつつ、光学フィルムを被着体に固定する際に、高温で放置した際も光学フィルムの歪みを抑制でき、光学フィルムの浮きや剥がれを生じず好適に固定可能な粘着テープを実現できる粘着剤組成物および該粘着剤組成物からなる粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、異なる2種類の動的粘弾性を持つ水分散型アクリル系粘着剤組成物をブレンドすることにより、高温時に必要な凝集力と柔軟性とを実現し、光学フィルムの浮きや剥がれを生じず好適に固定可能であり、光学フィルムの歪みを好適に抑制できることを見出し、本発明の課題を解決するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’が3000Pa以上6000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)、および、水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’が6000Pa以上50000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)を混合してなり、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paであることを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物および該粘着剤組成物からなる粘着テープを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着剤組成物および粘着テープは、高温時に必要な凝集力と柔軟性を両立しているため、光学フィルムの歪みを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の粘着テープの一実施形態を示す概念断面図である。
【図2】本発明の粘着テープの一実施形態を示す概念断面図である。
【図3】本発明の粘着テープの一実施形態を示す概念断面図である。
【図4】本発明の粘着テープの一実施形態を示す概念断面図である。
【図5】粘着テープを、LCDパネルとバックライト筐体との間に設けたLCDモジュールユニットの概略構成を示す断面図である。
【図6】粘着テープを、LCDパネルとバックライト筐体との間に設けたLCDモジュールユニットの概略構成を示す分解図である。
【図7】両面粘着テープを、光学フィルムとバックライト筐体との間に設けたLCDモジュールユニットの一実施形態を示す断面図である。
【図8】粘着テープを、光学フィルムとバックライト筐体との間に設けたLCDモジュールユニットの概略構成を示す分解図である。
【図9】両面粘着テープを、FPCと一体となったLCDパネルとバックライト筐体との固着に用いたLCDモジュールユニットの一実施形態を示す断面図である。
【図10】両面粘着テープを、FPCと一体となったLCDパネルとバックライト筐体との固着に用いたLCDモジュールユニットの一実施形態を示す概略図であり、(a)は分解図、(b)は全体図である。
【図11】実施例における光学フィルムの歪み防止性の測定方法を示す概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[水分散型アクリル系粘着剤組成物]
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、水性媒体中にアクリル系共重合体エマルジョン粒子が分散した水分散型アクリル系粘着剤組成物であり、水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’が3000Pa以上6000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)、および、水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’が6000Pa以上50000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)を混合してなり、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paであることを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物である。
【0012】
LCD等の画像表示モジュールに使用されているプリズムシートをはじめとする光学フィルムは、高温に放置すると一旦伸長し、その後収縮する。伸長の際、光学フィルムには歪みが発生する。粘着テープの粘着剤層が硬いと、光学フィルム伸長時に粘着剤が光学フィルムから剥がれてしまい、その後光学フィルムが収縮しても元の状態に戻らなくなる。一方、粘着剤層が柔らかいと粘着剤が変形しやすくなり、やはり元の状態に戻らなくなる。本発明の粘着テープは、動的粘弾性パラメータを上記範囲とした粘着剤層により、当該粘着剤層を光学フィルムの伸縮に好適に追従させ、光学フィルムの歪みの発生を効果的に抑制することができる。本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、上記構成のとおり水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)からなる柔軟な部位と、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)からなる剛直な部位とを粘着剤層中に併存させることにより、高温下での好適な凝集力と柔軟性を両立でき、光学フィルムの膨張、収縮、うねり等の変形を抑制し、かつ当該光学フィルムの変形に追従することにより、好適に光学フィルムの歪みを抑制できる。
【0013】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)>
本発明において使用する水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)は、2−エチルヘキシルアクリレート、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーをモノマー成分として含有するアクリル系共重合体を使用する。また、本発明において使用する水分散型アクリル系粘着剤組成物は、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’が3000Pa以上6000Pa未満となるように、粘着付与樹脂及び架橋剤を使用する。乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’が当該範囲である水分散型アクリル系粘着剤組成物を使用することで、強接着力であっても光学フィルムの歪みに追従できる柔軟性を確保できる。
【0014】
水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)の乾燥後の貯蔵弾性率等の動的粘弾性の測定においては、当該組成物(A)を基材等に塗布、乾燥して当該組成物(A)のみからなる乾燥塗膜(粘着剤層)を形成し、当該乾燥塗膜を試験片として測定できる。具体的には、例えば、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KFRTN1)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、85℃、周波数0.005Hzでの線形せん断歪み条件における貯蔵弾性率(Ga’)と損失弾性率(Ga”)を測定する。試験片は厚み0.5〜2.5mmの粘着剤層を単独で平行円盤の間に挟み、測定する。
【0015】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、2−エチルヘキシルアクリレートと併用して炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することで、再剥離性を維持しながら強接着性を大きく向上させることができる。炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートが使用でき、なかでも炭素数4〜8のアルキル基を有するアクリレートモノマーを使用することが好ましく、特にn−ブチルアクリレートを好ましく使用できる。また、n−ブチルアクリレートとt−ブチルメタクリレートとを併用することも好ましい。炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの使用量としては10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、上記2−エチルヘキシルアクリレート及び炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの効果をより好適に発現するために、高分子量アクリル系共重合体(a)を形成するモノマー成分中の2−エチルヘキシルアクリレート及び炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の和を50〜98質量%とすることが好ましく、80〜98質量%とすることが特に好ましい。また、アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の2−エチルヘキシルアクリレートと炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の比が、(2−エチルヘキシルアクリレート/炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート)で表される質量比で9/1〜2/8であることが好ましく、75/25〜25/75であることが特に好ましい。
【0017】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、カルボキシル基含有ビニルモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水フタル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマーから選ばれる1種又は2種以上を使用できる。これらカルボキシル基含有ビニルモノマーの使用量としては1〜10質量%であることが好ましい。
【0018】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、アクリル系共重合体のモノマー成分として、さらに、窒素含有ビニルモノマーを使用する。窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリロニトリル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド及びジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種又は2種以上を使用できる。
【0019】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の窒素含有ビニルモノマーの含有量は0.1〜4.5質量%であり、好ましくは、0.5〜4質量%、より好ましくは0.5〜3.5質量%の範囲で調整することで本発明の効果を好適に発現できる。
【0020】
アクリル系共重合体中の窒素含有ビニルモノマーとカルボキシル基を有するビニルモノマーの比率は、特に限定されるものではないが、高分子量アクリル系共重合体(a)を構成するモノマー成分中の窒素含有ビニルモノマーのモル数をX、カルボキシル基を有するビニルモノマーのモル数をYとした場合のモル比X/Yが1/1〜1/20であることが好ましく、1/1〜1/5がより好ましく、1/1〜1/3が更に好ましい。
【0021】
本発明に使用するアクリル系共重合体においては、上記以外のモノマーを必要に応じて使用することもでき、そのようなモノマーの例としては、水酸基含有モノマーとして、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のアルコール性水酸基含有モノマーを適宜使用できる。ケト基又はアルデヒド基含有モノマーとして、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニトリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセトアセテート、ブタンジオールアクリレートアセテート等が挙げられる。シラン系モノマーとして、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBM−502]、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBM−503]、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBE−502]、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBE−503]、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン[例えば、信越化学(株)製 KBM−5103]等が挙げられる。また、メチロール基含有モノマーとして、Nメチロールアクリルアミド等が挙げられる。また、燐酸基含有モノマーとして、例えば、ローディア日華(株)製 Sipomer PAM−100、PAM−200、PAM−300等が挙げられ、アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の20質量%以下の割合で用いることができ、1種または2種以上使用できる。
【0022】
(分子量)
本発明に使用するアクリル系共重合体の重量平均分子量は50〜120万であり、好ましくは60〜100万である。当該範囲内とすることで、光学フィルムの歪みに追従できる柔軟性と、優れた耐反発性を発現できる高い凝集力をバランスよく両立することができる。
【0023】
前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算である。測定条件の例として、HLC−8220GPC(東ソー社製)を用いてカラムはTSKgel GMHXL[東ソー製]を用い、カラム温度は40℃、溶離液はテトラヒドロフラン、流量は1.0mL/分とし、標準ポリスチレンはTSK標準ポリスチレンを用いることで測定できる。
【0024】
分子量を調整するために、重合には連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤、例えばラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどが使用できる。
【0025】
(粘着付与樹脂)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)において、得られる粘着剤層の強接着性を調整するために、粘着付与樹脂を使用することが好ましい。本発明における粘着付与樹脂においては、水分散型の粘着剤組成物に使用する観点から、エマルジョン型の粘着付与樹脂を好ましく使用できる。当該エマルジョン型の粘着付与樹脂としては、ロジン系、重合ロジン系、重合ロジンエステル系、ロジンフェノール系、安定化ロジンエステル系、不均化ロジンエステル系、テルペン系、テルペンフェノール系、石油樹脂系等が例示できる。
【0026】
中でも、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂と、ロジンフェノール系粘着付与樹脂が好ましく、これらを併用で配合することが特に好ましい。具体的には、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂は、スーパーエステルE−650[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−788[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−786−60[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−865[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製]、ハリエスターSK−508[ハリマ化成(株)製]ハリエスターSK−508H[ハリマ化成(株)製]、ハリエスターSK−816E[ハリマ化成(株)製]、ハリエスターSK−822E[ハリマ化成(株)製]、ハリエスターSK−323NS[ハリマ化成(株)製]等が挙げられ、ロジンフェノール系粘着付与樹脂は、タマノルE−100[荒川化学工業(株)製]、タマノルE−200[荒川化学工業(株)製]、タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製]等が挙げられる。
【0027】
これらを併用する場合には、前記重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(A)とロジンフェノール系粘着付与樹脂(B)との比が、(A)/(B)で表される質量比で5/1〜1/5であることが好ましく、3/1〜1/3がより好ましく、3/1〜1/1が更に好ましい。当該範囲内であれば、柔軟性と凝集力をバランスよく向上させることができる。
【0028】
粘着付与樹脂の軟化点において、軟化点が120〜180℃であることが好適であり、より好ましくは140〜180℃である。軟化点の高い粘着付与樹脂を配合することで、耐熱性が向上する。
【0029】
アクリル系共重合体/粘着付与樹脂の配合比において、アクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/10〜100/40が好適であり、より好ましくはアクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/15〜100/35である。当該範囲内であれば、耐熱性と凝集力をバランスよく向上させることができる。
【0030】
(架橋剤)
本発明の粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)において、得られる粘着剤層の凝集力を向上させる目的で、架橋剤を使用することが好ましい。架橋剤としては、公知のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、多価金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、ケト・ヒドラジド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、シラン系架橋剤、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系架橋剤等が使用できる。その中でも、各エマルジョン粒子の内部で架橋反応を進行させるタイプの架橋剤が好ましい。例えば、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系架橋剤等が挙げられる。中でも、水溶率が50%未満であることが好ましく、25%未満がより好ましい。具体的には、エポキシ系架橋剤では、デナコール EX−411[ナガセ化成工業(株)製;水溶率27%]、デナコール EX−301[ナガセ化成工業(株)製;水溶率33%]、デナコール EX−321[ナガセ化成工業(株)製;水溶率20%]、デナコール EX−201[ナガセ化成工業(株)製;水に不溶]、デナコール EX−211[ナガセ化成工業(株)製;水溶率26%]、デナコール EX−212[ナガセ化成工業(株)製;水に不溶]、デナコール EX−922[ナガセ化成工業(株)製;水に不溶]、テトラッドC[三菱瓦斯化学(株)製;水に不溶]、テトラッドX[三菱瓦斯化学(株)製;水に不溶]等が挙げられる。グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系架橋剤では、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン[KBM−303;信越シリコーン(株)製]、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン[KBM−403;信越シリコーン(株)製]、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン[KBE−402;信越シリコーン(株)製]、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン[KBE−403;信越シリコーン(株)製]等が挙げられる。
【0031】
架橋度合いの指標として、粘着剤層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値を用い、架橋度を調整する。ゲル分率は、10質量%以上50質量%未満が好ましい。当該範囲であれば、強接着力を維持しながら、柔軟性をバランスよく確保することができる。
【0032】
また、柔軟性の指標として、水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’を用い、架橋度を調整する。貯蔵弾性率Ga’は、3000Pa以上6000Pa未満であることが好ましい。当該範囲であれば、強接着力を維持しながら、柔軟性をバランスよく確保することができる。
【0033】
(添加剤)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物においては、添加剤として、必要に応じて本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ・金属粉末等の充填剤、顔料・染料等の着色剤、pH調整剤、皮膜形成補助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを粘着剤組成物に任意で添加することができる。
【0034】
(固形分濃度)
また、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物の固形分濃度は、特に制限されるものではないが、製造時のコストや輸送コストという観点、及び、乾燥して使用する際の乾燥性に優れるという観点から、固形分濃度が40〜70重量%であることが好ましい。
【0035】
(初期ゲル分率)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、当該組成物から架橋反応を進行させないように水性媒体を除去して固形分のみとした際の未架橋の当該固形分のゲル分率(以下、初期ゲル分率と称する)が15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることがより一層好ましい。本発明においては、水分散型アクリル系粘着剤組成物の初期ゲル分率を当該範囲とすることで、強接着力を維持しながら、柔軟性をバランスよく確保することができる。
【0036】
初期ゲル分率は、水分散型アクリル系粘着剤組成物作成時の重合温度、開始剤の種類や使用量により調整できる。初期ゲル分率を15質量%以下にする際には、例えば、開始剤として、アゾ系開始剤、過硫酸塩系開始剤及び過酸化物系開始剤を使用することが好ましい。なかでも、アゾ系開始剤や、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤を好ましく使用できる。
【0037】
初期ゲル分率は、架橋剤を含有しない水分散型アクリル系粘着剤組成物から水性媒体を除去して固形分を得た後、当該固形分をトルエンに24時間浸漬して不溶分を測定することができる。
【0038】
初期ゲル分率の調整に際しては、乳化重合に際しての重合温度を、使用する重合開始剤に応じて適宜調整することが好ましく、例えば、過硫酸アンモニウムを用いた場合に、初期ゲル分率を15質量%以下とする際には、重合温度は70℃未満が好ましく、65℃未満がより好ましい。
【0039】
(粒子径)
また、本発明における水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体エマルジョン粒子の平均粒子径は特に制限されるものではないが、アクリル系共重合体エマルジョン粒子は、粒子内部で架橋反応を好適に進行させるために、200nm以上であることがより好ましく、300nm以上であることが一層好ましい。また、アクリル系共重合体を調製するのに必要な反応性を確保するために、上限としては、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、600nm以下であることが一層好ましい。
【0040】
ここでの粒子の平均粒子径とは、エマルジョン粒子の体積基準での50%メジアン径をいい、数値は動的光散乱法により測定して得られる値に基づくものである。平均粒子径が小さくなりすぎた場合、粒子の表面積が増え、粒子表面が水と接触する割合が増加する。その結果、例えば酸基としてカルボキシル基を使用する場合には、カルボキシル基がカルボキシラートアニオンにイオン化し易くなり、粒子表面にカルボキシル基が局在化する傾向が強くなる。
【0041】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)>
本発明において使用する水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)は、2−エチルヘキシルアクリレート、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーをモノマー成分として含有するアクリル系共重合体を使用する。また、本発明において使用する水分散型アクリル系粘着剤組成物は、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’が6000Pa以上50000Pa未満、好ましくは6000〜15000Pa、より好ましくは6000〜12000Paとなるように、粘着付与樹脂及び架橋剤を使用する。乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’が当該範囲である水分散型アクリル系粘着剤組成物を使用することで、優れた耐反発性を発現できる高い凝集力を確保できる。水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)の乾燥後の貯蔵弾性率等の動的粘弾性の測定においては、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様にして測定できる。
【0042】
本発明において使用する水分散型アクリル系共重合体は、2−エチルヘキシルアクリレートをモノマー成分として含有する。本発明においては、水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と併用する水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用する水分散型アクリル系共重合体として、2−エチルヘキシルアクリレートをモノマー成分として使用することにより、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)との相溶性を確保でき、また、高温時に必要な凝集力と柔軟性を両立しやすくなる。また、当該モノマー成分以外のモノマー成分や配合比についても、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用する水分散型アクリル系共重合体と同様とすることで、両者の相溶性が確保しやすく、共重合体の併用による凝集力の劣化が生じにくい。水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の2−エチルヘキシルアクリレートの含有量としては、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがさらに好ましい。2−エチルヘキシルアクリレートの含有量を当該範囲とすることで、好適な強接着性と凝集力を保持できる。
【0043】
また、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体おいても、水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体と同様に、2−エチルヘキシルアクリレートと併用して炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、高分子量アクリル系共重合体(a)において例示した(メタ)アクリレートを例示でき、なかでも、n−ブチルアクリレートを好ましく使用できる。また、n−ブチルアクリレートとt−ブチルメタクリレートとを併用することも好ましい。炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの使用量としては10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがさらに好ましい。また、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを併用する場合には、2−エチルヘキシルアクリレート及び炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の和を50〜98質量%とすることが好ましく、80〜98質量%とすることが特に好ましく、2−エチルヘキシルアクリレートと炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量の比が、(2−エチルヘキシルアクリレート/炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレート)で表される質量比で9/1〜2/8であることが好ましく、75/25〜25/75であることが特に好ましい。
【0044】
また、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体を形成する(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の1種または2種以上を併用しても良い。なかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の炭素数2以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを併用することが好ましく、使用量としては1〜10質量%であることが好ましい。
【0045】
また、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体においては、上記以外のモノマーとして、酸基を有するモノマーを含有することも好ましい。酸基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水フタル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマーから選ばれる1種又は2種以上を使用できる。
【0046】
水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体中の酸基を有するモノマーの含有量は、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の0.5〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましく、更に好ましくは1.5〜3.5質量%である。当該範囲内とすることで、架橋剤との架橋反応が良好に進行し易くなる。さらに、粘着剤層を形成した際に、粘着剤層に好適な凝集力が確保され、耐反発性が向上しやすい。
【0047】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体においては、粘着剤層の凝集力を向上させるため、アクリル系共重合体のモノマー成分として、さらに、窒素含有ビニルモノマーを使用しても良い。窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリロニトリル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド及びジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種又は2種以上を使用できる。
【0048】
窒素含有ビニルモノマーを使用する場合の含有量は、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の0.1〜4.5質量%であり、好ましくは、0.5〜4質量%、より好ましくは0.5〜3.5質量%の範囲で調整することで本発明の効果を好適に発現できる。
【0049】
水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体中の窒素含有ビニルモノマーとカルボキシル基を有するビニルモノマーの比率は、特に限定されるものではないが、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の窒素含有ビニルモノマーのモル数/カルボキシル基を有するビニルモノマーのモル数で表わされるモル比が、1/1〜1/20であることが好ましく、1/1〜1/5がより好ましく、1/1〜1/3が更に好ましい。当該範囲内であれば、カルボキシル基を有するビニルモノマーと後述する架橋剤との反応が進行し易くなる。さらに、アクリル系共重合体エマルジョン中のカルボキシル基の分布を後述する範囲に収束させ易くなる。
【0050】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体においては、上記以外のモノマーを必要に応じて使用することもでき、そのようなモノマーの例としては、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体において例示した、水酸基含有モノマー、ケト基又はアルデヒド基含有モノマー、シラン系モノマー、メチロール基含有モノマー及び燐酸基含有モノマーの1種または2種以上を使用しても良く、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の20質量%以下の割合で用いることができる。
【0051】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体の重量平均分子量は、水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体と同様に、50万〜120万が好適であり、さらに好ましくは60〜100万である。当該範囲内とすることで、光学フィルムの歪みに追従できる柔軟性と、優れた耐反発性を発現できる高い凝集力をバランスよく両立することができる。
【0052】
前記重量平均分子量は、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算である。測定条件の例として、HLC−8220GPC(東ソー社製)を用いてカラムはTSKgel GMHXL[東ソー製]を用い、カラム温度は40℃、溶離液はテトラヒドロフラン、流量は1.0mL/分とし、標準ポリスチレンはTSK標準ポリスチレンを用いることで測定できる。
【0053】
分子量を調整するために、重合には連鎖移動剤を用いても良く、連鎖移動剤としては、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)にて例示した、公知の連鎖移動剤を使用できる。
【0054】
(粘着付与樹脂)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体において、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体と同様に、粘着付与樹脂を使用することが好ましい。本発明における粘着付与樹脂においては、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体と同様で、水分散型の粘着剤組成物に使用する観点から、エマルジョン型の粘着付与樹脂を好ましく使用できる。前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)にて例示した、公知の粘着付与樹脂が使用できる。
【0055】
中でも、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂と、ロジンフェノール系粘着付与樹脂が好ましく、これらを併用で配合することが特に好ましい。これらを併用する場合には、前記重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(A)とロジンフェノール系粘着付与樹脂(B)との比が、(A)/(B)で表される質量比で5/1〜1/5であることが好ましく、3/1〜1/3がより好ましく、3/1〜1/1が更に好ましい。当該範囲内であれば、柔軟性と凝集力をバランスよく向上させることができる。
【0056】
粘着付与樹脂の軟化点においても、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様に、軟化点が120〜180℃であることが好適であり、より好ましくは140〜180℃である。軟化点の高い粘着付与樹脂を配合することで、耐熱性が向上する。
【0057】
アクリル系共重合体/粘着付与樹脂の配合比においても、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様に、アクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/10〜100/40が好適であり、より好ましくはアクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/15〜100/35である。当該範囲内であれば、柔軟性と凝集力をバランスよく向上させることができる。
【0058】
(架橋剤)
本発明の粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)において、得られる粘着剤層の凝集力を向上させる目的で、架橋剤を使用することが好ましい。前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)にて例示した、公知の粘着付与樹脂が使用できる。
【0059】
架橋度合いの指標として、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)を乾燥した後の粘着剤層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値を用い、架橋度を調整する。ゲル分率は、50質量%以上90質量%未満が好ましい。当該範囲であれば、強接着力を維持しながら、高い凝集力を確保することができる。
【0060】
また、柔軟性の指標として、水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’を用い、架橋度を調整する。貯蔵弾性率Gb’は、6000Pa以上50000Pa未満であることが好ましい。当該範囲であれば、強接着力を維持しながら、高い凝集力を確保することができる。
【0061】
(添加剤)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)においても、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様に、必要に応じて本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)にて例示した、公知の添加剤が使用できる。
【0062】
(固形分濃度)
また、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)においても、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様に、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)の固形分濃度は、特に制限されるものではないが、製造時のコストや輸送コストという観点、及び、乾燥して使用する際の乾燥性に優れるという観点から、固形分濃度が40〜70重量%であることが好ましい。
【0063】
(初期ゲル分率)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)においても、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様に、初期ゲル分率は15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることがより一層好ましい。本発明においては、水分散型アクリル系粘着剤組成物の初期ゲル分率を当該範囲とすることで、強接着力を維持しながら、耐反発性に必要な柔軟性と高い凝集力をバランスよく確保することができる。
【0064】
初期ゲル分率は、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と同様の手法で調整できる。
【0065】
初期ゲル分率は、架橋剤を含有しない水分散型アクリル系粘着剤組成物から水性媒体を除去して固形分を得た後、当該固形分をトルエンに24時間浸漬して不溶分を測定することができる。
【0066】
また、本発明における水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)に使用するアクリル系共重合体エマルジョン粒子の平均粒子径は特に制限されるものではないが、前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)に使用するアクリル系共重合体エマルジョン粒子と同様に、アクリル系共重合体エマルジョン粒子は、粒子内部で架橋反応を好適に進行させるために、200nm以上であることがより好ましく、300nm以上であることが一層好ましい。また、アクリル系共重合体を調製するのに必要な反応性を確保するために、上限としては、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、600nm以下であることが一層好ましい。
【0067】
(製造方法)
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物の調整においては、水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)とを、各々調整した後に両者を混合する。
【0068】
水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)及び(B)との混合は、得られる水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paとなるように、配合すれば良いが、各々の組成物の特性を十分に発現させるため、水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)及び(B)を、それぞれ少なくとも5質量%以上含有することが好ましく、10質量%がより好ましい。(A)/(B)で表わされる質量比で、95/5〜5/95であることが好ましく、90/10〜10/90がより好ましい。
【0069】
各々のアクリル系共重合体エマルジョンは、水性媒体を使用してエマルジョン型の粘着剤組成物を得る乳化重合法により製造できる。乳化重合においては、重合安定性を確保するため、陰イオン性や非イオン性の乳化剤、その他の分散安定剤が適量用いられる。特に乳化剤は制限されず、公知の乳化剤を用いることができる。陰イオン性乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられ、非イオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。更に、公知の「反応性乳化剤」と称される重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤を使用することが好ましい。具体的には、ラテムルS−180[花王(株)製]、ラテムルPD−104[花王(株)製]、アクアロンHS−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンHS−20[第一工業製薬(株)製]、アクアロンKH−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製]、アクアロンKH−05[第一工業製薬(株)製]、アクアロンRN−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンRN−20[第一工業製薬(株)製]、アクアロンER−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンER−20[第一工業製薬(株)製]、ニューフロンティアA−229E[第一工業製薬(株)製]、アデカリアソープSE−10[旭電化工業(株)製]、アデカリアソープSE−20[旭電化工業(株)製]、アデカリアソープSR−10N[旭電化工業(株)製]、アデカリアソープSR−20N[旭電化工業(株)製]等が挙げられる。反応性乳化剤を使用することで、重合安定性に加え、被膜の耐水性が向上するため好ましい。
【0070】
乳化重合法の中でも、滴下重合法を使用することが好ましい。また、酸基を粒子内部に導入し易くするために、滴下重合法を選定し、滴下前半と滴下後半に滴下させる乳化液の組成を変更させる方法で制御しても良い。具体的には、滴下前半では酸モノマーの比率を高め、滴下後半では酸モノマーの比率を低くすることで、粒子内部に酸モノマーを導入することができる。
【0071】
乳化重合に際し用いられる重合開始剤は限定されず、公知の重合開始剤を用いることができる。具体的に、2,2’,−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−アルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤、芳香族カルボニル化合物等のカルボニル系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ等のレドックス系開始剤などが挙げられる。
【0072】
(水性媒体)
本発明において使用する水性媒体は、水の単独使用でもよく、あるいは水と水溶性溶剤の混合溶剤を用いてもよい。本発明で使用可能な上記の「水と水溶性溶剤の混合溶剤」とは、実質的に水を主体とした水溶性溶剤との混合溶剤であり、混合溶剤の全量に対して、水溶性溶剤の含有率が好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下である。前記水溶性溶剤とは、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、あるいはN−メチルピロリドン等の極性溶剤が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0073】
[粘着テープ]
(構成)
本発明の粘着テープは、上記の水分散型アクリル系粘着剤組成物を乾燥して得られる粘着剤層を有する粘着テープである。粘着剤層は単層の粘着剤の層であっても良く、両面粘着テープのような複数の粘着剤の層及びシートからなる多層であっても良い。二以上の部材固定用途においては、両面粘着テープが好適に使用できる。
【0074】
(粘着剤層)
本発明の粘着テープにおける粘着剤層は、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物から溶媒を除去して得られる層であり、周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paである。
【0075】
(粘着剤層の貯蔵弾性率)
本発明の粘着テープに使用する粘着剤層は、周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paであることが好ましい。G’が4000Pa未満であると、粘着剤層が柔らかくなりすぎて変形しやすくなり、光学フィルムの歪みの抑制が困難となる。一方、9000Paを越えると、粘着剤層が硬くなりすぎて、光学フィルムの伸張に粘着剤層が追従できなくなり、光学フィルムが粘着剤層から剥がれてしまう。
【0076】
(粘着剤層の損失正接)
本発明の粘着テープに使用する粘着剤層は、周波数0.005Hz、85℃にて測定される損失正接tanδが0.3〜0.5であることが好ましい。tanδが0.3以上であると粘着剤層が好適な柔軟性を示し、光学フィルムの伸張に粘着剤が追従しやすくなり、光学フィルムの粘着剤層からの剥がれを抑制しやすくなる。また、0.5以下とすることで、粘着剤層が大きな変形を生じない硬さを好適に保持できるため、光学フィルムの歪みを好適に抑制できる。
【0077】
(粘着剤層の貯蔵弾性率及び損失正接)
特に、本発明の粘着テープに使用する粘着剤層は、周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paかつ損失正接tanδが0.3〜0.5であることがより好ましい。G’及びtanδが当該範囲にあることで、高温時に必要な凝集力と柔軟性を特にバランスよく向上させることができ、光学フィルムの歪みを好適に抑制できる。
【0078】
上述の動的粘弾性特性は、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KFRTN1)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、線形せん断歪み条件において周波数0.005Hz、85℃における貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”及び損失正接tanδ(=G”/G’)を測定するものである。試験片は厚み0.5〜2.5mmの粘着剤を単独で平行円盤の間に挟み、測定する.
【0079】
本発明の粘着テープによる光学フィルムの歪みの抑制を評価するに際しては、温度85℃、周波数0.005Hzの動的粘弾性測定条件下における貯蔵弾性率及び損失正接を評価することで、歪み抑制効果を好適に評価できる。
【0080】
本発明の粘着テープにおける粘着剤層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定して得られるゲル分率は、30〜60%が好ましく、35〜55%が特に好ましい。当該範囲であれば、強接着力を維持しながら、高い凝集力を確保することができる。
【0081】
粘着剤層の厚さは、薄型で好適に光学フィルムの歪みを抑制できることから、10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは15〜150μmであり、30〜75μmであることが特に好ましい。両面粘着テープを形成する場合には、両面を合算した粘着剤層の厚さを上記範囲の厚さとすることが好ましい。
【0082】
(基材)
本発明の粘着テープに使用する基材としては、特に限定されず、不織布であっても、樹脂フィルムであっても良いが、厚み較差や抜き加工適性を向上させるために、樹脂フィルムの基材が好適に使用できる。また、樹脂フィルム単独からなる基材であっても、樹脂フィルム自体に遮光性や反射性を付与した樹脂フィルムからなる基材であってもよく、また、これら樹脂フィルムに遮光層や反射層が設けられた基材であっても良い。基材に使用される樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(以下PET)、トリアセチルセルロース、ポリアリレート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。中でも、特に耐熱性に優れ、低価格なPETが好ましい。
【0083】
基材の厚みは、3〜50μmであることが好ましく、更に好ましくは、10〜30μmである。当該範囲であれば、抜き加工適性が良好である。また、当該範囲であれば、薄型化が求められるLCDモジュール等の携帯電子端末に適用する粘着テープに好適である。
【0084】
特に、本発明の粘着テープに使用する基材の85℃の収縮率は流れ方向、幅方向ともに1.5%以下であることが好ましい。好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.1%以下である。当該範囲であれば、光学フィルムを固定したのち高温下で保存しても、光学フィルムの歪みを軽減できる。基材の収縮率Xは、23℃の状態の長さL23と、85℃に24時間放置した後の長さL85とした時、X=100×(L23−L85)/L23で求める。
【0085】
遮光層を設ける場合には、遮光層を、例えば、黒色のインキの塗付により形成することができる。インキ層を黒色にするには、公知慣用の顔料や染料を含有させればよい。中でも、遮光性に優れ、低価格なカーボンブラックが好ましい。また、インキのビヒクルは、環境配慮の面から、ハロゲンフリータイプであることが好ましい。
【0086】
光反射層は、光反射性の層の基材フィルム上への積層や、基材フィルム自体を光反射性のフィルムとすることにより形成できる。例えば、基材フィルムに白色顔料や銀色顔料を分散させて白色樹脂フィルムや銀色樹脂フィルムとしても良いし、白色インキや銀色インキを基材フィルムにコートして印刷フィルムとしても良いし、金属蒸着層を設けて蒸着フィルムとしても良い。中でも、白色インキや銀色インキを基材フィルムにコートした印刷フィルムが、収縮率が低く好ましい。
【0087】
本発明の粘着テープは、光学フィルムを被着体に額縁状に固定する用途、なかでもバックライト筐体と画像表示パネルとを有する画像表示モジュールにおけるバックライト筐体又は画像表示パネルの少なくとも一つを被着体とし、当該被着体に額縁状に光学フィルムを固定する用途に特に適した粘着テープである。当該光学フィルムの固定用途に際しては、光反射層と遮光層を積層した基材の両方の面に粘着剤層を設けた、光反射性と遮光性を兼備した基材を使用した粘着テープであることが好ましい。
【0088】
光学フィルムの固定用途に使用する際の具体的な実施形態としては、図1〜4に例示した構成を例示できる。図1は、基材の両面に粘着剤層が積層されている実施形態である。図2は基材の片面に粘着剤層が積層されている実施形態である。図3は光反射層と遮光層を積層した基材の光反射層側に粘着剤層が積層されている実施形態である。また、図4は、光反射層と遮光層を積層した基材の両面に粘着剤層を設けた本発明の粘着テープの一例を示す実施形態である。本発明の粘着テープは、図2及び図3のような片面粘着テープ、あるいは図1や図4のような両面粘着テープの形態を採ることができる。なお、粘着剤層は単層の粘着剤の層であっても良いが、両面粘着テープのような複数の粘着剤の層及びシートからなる多層の材料であっても良い。これら構成のなかでも、部材間の固定に際して、基材の片面に粘着剤層を有する構成の場合には粘着剤層が設けられた他面を被着体に固定する手段を要するが、基材の両面に粘着剤層を有する構成であると、他の固定手段を用いなくとも好適に部材間を固定できることから、基材の両面に粘着剤層を有する構成であることが好ましい。また、基材の両面に粘着剤層を有する構成は、画像表示パネル等に加わる衝撃の緩和や、画像表示モジュールを構成する部材間へのゴミの侵入防止に好適である。
【0089】
(画像表示モジュール)
本発明の粘着テープは、光学フィルムが少なくとも一層設けられたバックライト筐体と、画像表示パネルとを有する画像表示モジュールにおいて、前記粘着剤層表面の少なくとも一部が前記光学フィルム表面に接するように、好ましくは当該光学フィルムを額縁上に固定する態様にて使用することで、好適に光学フィルムの歪みを抑制できる。当該画像表示モジュールとしては、なかでも、光学フィルムが少なくとも一層設けられたバックライト筐体と、LCDパネルとを有するLCDモジュールにおいて、前記光学フィルムと前記LCDパネルとの間、または、前記光学フィルムとバックライト筐体の間に、前記粘着剤層表面の少なくとも一部が前記光学フィルム表面に接するよう使用される態様であると特に好適である。
【0090】
本発明において、LCDモジュールとは、光学フィルムが少なくとも一層設けられたバックライト筐体と、LCDパネルとを有し、当該LCDパネルとバックライト筐体とが一体化されているものをいい、一般にバックライト型液晶表示装置に使用されている構成のLCDモジュールとして使用されている構成のものをいう。本発明におけるバックライト筐体は、バックライト用の光源を有し、光学フィルムが少なくとも一層設けられた構成を有するものである。本発明の粘着テープは、粘着剤層の少なくとも一部が当該光学フィルム表面と接する態様で使用されるものである。
【0091】
バックライト筐体の表層に設けられる光学フィルムとしては、プリズムシート、拡散フィルム、遮光フィルム、反射フィルム等が挙げられる。そのなかでも特に歪みが発生しやすい光学フィルムとしては、偏光反射機能を有するフィルムにプリズム層を設けた光学フィルムが挙げられる。このような光学フィルムとしては、例えば、3M社製BEF−RP2RC、BEF−RP3が挙げられる。
【0092】
本発明の粘着テープは、好適に光学フィルムの歪みを抑制でき、なかでも光学フィルムの大きさが2.5〜7インチ(対角)程度の大きさの光学フィルムに対して、特に顕著な歪み抑制効果を奏する。7インチを越える光学フィルムは、本発明の粘着テープにより熱変形による歪みを抑制できるが、粘着テープのみで完全に歪みの発生を無くすことは困難な場合がある。2.5インチ未満の光学フィルムは熱変形量が小さい場合があり、この際には他の粘着テープによっても歪みの抑制が可能となる場合がある。
【0093】
光学フィルムの外形変化率が大きいほど歪みが発生しやすく、流れ方向と幅方向で挙動が変わる場合に歪みが酷くなる。特に流れ方向に+0.06%以上であり、幅方向に−0.06%以下の場合に歪みが発生しやすい。本発明の粘着テープでは上記光学フィルムであっても歪みを抑制することができる。尚、光学フィルムの外形変化率は85℃で5分間静置前後の下式で表される。
外形変化率=[(静置後長さ−静置前長さ)/(静置前長さ)]×100(%)
【0094】
光学フィルムがプリズム層を有しプリズム層の稜線が粘着テープの流れ方向と斜めに交差している場合に光学フィルムの歪みは発生しやすいが、本発明の粘着テープは上記構成であっても歪みを好適に抑制できる。
【0095】
本発明に好適なLCDモジュールの構成としては、(1)光学フィルムがバックライト筐体の最表層に設けられ、当該光学フィルムとLCDパネルとが粘着テープを介して一体化されている構成や、(2)光学フィルムが粘着テープを介してバックライト筐体と一体化されており、当該光学フィルム上に他の構成が積層された上にLCDパネルが一体化されている構成などがある。ここで使用される粘着テープは、(1)の構成においては画像表示部を確保する目的で、(2)の構成においては薄型化や軽量化のため枠抜きされた筐体の形状に合わせる目的で、額縁状の粘着テープが使用される。
【0096】
額縁状の粘着テープは、打ち抜かれて中抜きされた一枚の粘着テープによる固定であっても、細長い形態の粘着テープを複数組み合わせることによる額縁状の固定であってもよい。
【0097】
LCDモジュールの具体的な構成の例としては、上記(1)の構成例として、図5及び図6に示したサイドライト型バックライト方式のLCDモジュールユニット100が挙げられる。図5及び図6は、LCDパネルとバックライト筐体との間に粘着テープが設けられた、LCDモジュールユニット100の概略構成を示す概略図であり、図5は断面図、図6は分解図である。このLCDモジュールユニット100は、一般に、バックライト筐体16の中に、反射板15、導光板14、拡散シート12、光学フィルムとして、輝度を高めるため必要に応じて使用される1枚以上のプリズムシート11、粘着テープ10、LCDパネル17が順に積層されており、導光板14の側方には、ランプリフレクタを備えたLED(Light Emitting Diode)又は冷陰極管等からなる光源13が配置されている。
【0098】
このLCDパネル17とバックライト筐体16との間に設けられる粘着テープは、プリズムシート11に粘着剤層が接するよう設けられ、当該粘着剤層の一部が、バックライト筐体16にも接するように設けられる。これにより、プリズムシート11とプリズムシート11の下側に設置されている拡散シート12等をバックライト筐体に固定される。この粘着テープ10は、通常、額縁状に打ち抜かれており、その幅は約0.5〜10mmである。
【0099】
当該構成において、温度環境が変化することによりプリズムシート11が伸縮した場合であっても、粘着テープの粘着剤層が当該伸縮に追従し、プリズムシート11に歪みの発生を抑制することができる。粘着テープ10が両面粘着テープである場合には、上部のLCDパネル17も合わせて固定させることもでき、また、遮光性や光反射性を有する場合には、光源16の光を有効にLCDパネル17側に反射させる機能や、駆動するドライバー9への光の進入を防止する機能により美麗な画像表示に大きく寄与する。
【0100】
また、上記(2)の構成例として図7及び図8に示したサイドライト型バックライト方式のLCDモジュールユニット100’が挙げられる。図7及び図8は、バックライト筐体と光学フィルムの間に粘着テープが設けられたLCDモジュールユニット100’の概略構成を示す概略図である。このLCDモジュールユニット100’は、LCDパネル17とバックライト筐体16との間に粘着テープが設けられた上記図5及び図6に示した構成に加え、バックライト筐体16と光学フィルムの一つである反射板の間に粘着テープが設けられた構成である。
【0101】
図9及び図10は、本発明の粘着テープを、フレキシブルプリント回路基板(以下、FPCと略記)18と一体となったLCDパネル17とバックライト筐体との固着に用いた本発明のLCDモジュールユニットの一実施形態を示す概略図であり、図9は断面図、図10(a)は分解図、図10(b)は全体図である。本実施形態のLCDモジュールユニット100”、バックライト筐体16と、LCDパネル17と、LCDパネル17に一体となって接続したFPC18とから概略構成されている。図9に示すように、このFPC18は、矢印方向に、ほぼ180°に折り曲げられて、LCDパネル17とバックライト筐体16とを挟み込み、バックライト筐体16の裏面にフックや他の粘着テープ等で固定されている。
【0102】
以上のとおり、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、水分散型の粘着剤組成物でありながら光学フィルムの歪みを好適に抑制できる粘着テープを形成できる。このため、本発明によれば、LCDモジュールや有機ELモジュール等の画像表示モジュールを、揮発性溶剤の発生なく製造でき、かつ、これら画像表示モジュールを使用した携帯電話やデジタルカメラ等の各種電子機器、携帯電子端末等において、視認性の良好な画像表示を実現できる。
【実施例】
【0103】
(製造例1)
<アクリル系共重合体エマルジョンの製造>
容器にイオン交換水75.0gと界面活性剤アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製;有効成分25%]20.0gと界面活性剤ラテムルPD−104[花王(株)製;有効成分20%]37.5gを入れ、均一に溶解した。そこに、n−ブチルアクリレート227.5g、2−エチルヘキシルアクリレート227.5g、メチルメタクリレート25.0g、N−ビニルピロリドン7.5g、アクリル酸12.5g、ラウリルメルカプタン0.2gを加えて乳化し、乳化液632.7gを得た。
【0104】
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に、イオン交換水340gを入れ、窒素を吹き込みながら60℃まで昇温した。攪拌下、前記乳化液の一部[3.2g]、過硫酸アンモニウム水溶液5.0g[有効成分3%]、亜硫酸水素ナトリウム水溶液5.0g[有効成分3%]を添加し、60℃を保ちながら、1時間で重合させた。引き続き、残りの乳化液629.5gと、過硫酸アンモニウム水溶液40g(有効成分1.25%)を別々の漏斗を使用して、反応容器を60℃に保ちながら、8時間かけて滴下重合した。滴下終了後、反応容器を60℃に保ちながら、2時間攪拌した後、内容物を冷却し、引き続き、pHが7.0になるようにアンモニア水[有効成分10%]で調整した。これを200メッシュ金網で濾過し、アクリル系共重合エマルジョン(A)を得た。ここで、得られたアクリル系共重合エマルジョンにおける固形分濃度は、50%、平均粒子径は315nmであった。また、アクリル系共重合体エマルジョン中のアクリル系共重合体の重量平均分子量は、73万であった。
【0105】
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(1)の製造>
前記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50g、架橋剤として、エポキシ化合物テトラッドCを0.05g[0.01質量部]を添加したのち、40℃で1週間養生し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(1)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(1)の乾燥塗膜のゲル分率は23%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は3451Paであった。
【0106】
(製造例2)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(2)の製造>
前記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50g、架橋剤として、エポキシ化合物テトラッドCを0.1g[0.02質量部]を添加したのち、40℃で1週間養生し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(2)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(2)の乾燥塗膜のゲル分率は36%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は4400Paであった。
【0107】
(製造例3)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(3)の製造>
前記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50g、架橋剤として、エポキシ化合物テトラッドCを0.13g[0.025質量部]を添加したのち、40℃で1週間養生し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(3)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(3)の乾燥塗膜のゲル分率は41%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は5167Paであった。
【0108】
(製造例4)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(4)の製造>
前記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50g、架橋剤として、エポキシ化合物テトラッドCを0.15g[0.03質量部]を添加したのち、40℃で1週間養生し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(4)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(4)の乾燥塗膜のゲル分率は45%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は5264Paであった。
【0109】
(製造例5)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(5)の製造>
前記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50g、架橋剤として、エポキシ化合物テトラッドCを0.25g[0.05質量部]を添加したのち、40℃で1週間養生し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(5)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(5)の乾燥塗膜のゲル分率は53%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は6486Paであった。
【0110】
(製造例6)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)の製造>
前記にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50g、架橋剤として、エポキシ化合物テトラッドCを0.5g[0.1質量部]を添加したのち、40℃で1週間養生し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)の乾燥塗膜のゲル分率は65%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は12898Paであった。
【0111】
【表1】
【0112】
(実施例1)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(1)と前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(5)とを、質量比で30:70となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥塗膜のゲル分率は43%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は7263Pa、損失弾性率は2916Pa、損失正接は0.401であった。
【0113】
(実施例2)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(2)と前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)とを、質量比で80:20となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥塗膜のゲル分率は43%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は5977Pa、損失弾性率は2729Pa、損失正接は0.457であった。
【0114】
(実施例3)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(3)と前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)とを、質量比で70:30となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥塗膜のゲル分率は43%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は4998Pa、損失弾性率は2110Pa、損失正接は0.422であった。
【0115】
(実施例4)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(3)と前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)とを、質量比で80:20となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥塗膜のゲル分率は42%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は4765Pa、損失弾性率は2150Pa、損失正接は0.451であった。
【0116】
(実施例5)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(4)と前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)とを、質量比で80:20となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥塗膜のゲル分率は49%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は7455Pa、損失弾性率は2792Pa、損失正接は0.374であった。
【0117】
(実施例6)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(4)と前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)とを、質量比で90:10となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥塗膜のゲル分率は47%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は5953Pa、損失弾性率は2421Pa、損失正接は0.407であった。
【0118】
(比較例1)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られたアクリル系共重合体エマルジョン1000g[dry;500g]に、消泡剤として、サーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、レベリング剤として、サーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、粘着付与樹脂として、エマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]を固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]を固形分で50gを添加し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(0)を得た。得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(0)の乾燥塗膜のゲル分率は8%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は2341Pa、損失弾性率は1863Pa、損失正接は0.796であった。
【0119】
(比較例2)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(1)をそのまま使用した。乾燥塗膜のゲル分率は23%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は3451Pa、損失弾性率は2301Pa、損失正接は0.667であった。
【0120】
(比較例3)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(2)をそのまま使用した。乾燥塗膜のゲル分率は36%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は4400Pa、損失弾性率は2302Pa、損失正接は0.523であった。
【0121】
(比較例4)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(3)をそのまま使用した。乾燥塗膜のゲル分率は41%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は5167Pa、損失弾性率は2497Pa、損失正接は0.483であった。
【0122】
(比較例5)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(4)をそのまま使用した。乾燥塗膜のゲル分率は45%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は5264Pa、損失弾性率は2360Pa、損失正接は0.448であった。
【0123】
(比較例6)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(5)をそのまま使用した。乾燥塗膜のゲル分率は53%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は6486Pa、損失弾性率は2167Pa、損失正接は0.334であった。
【0124】
(比較例7)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)をそのまま使用した。乾燥塗膜のゲル分率は65%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は12898Pa、損失弾性率は2631Pa、損失正接は0.204であった。
【0125】
(比較例8)
<水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記比較例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(0)と、前記製造例にて得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物(6)とを、質量比で90:10となるように混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。乾燥塗膜のゲル分率は46%であった。また、周波数0.005Hz、85℃の線形せん断歪みでの動的粘弾性スペクトルにおける貯蔵弾性率は8028Pa、損失弾性率は2636Pa、損失正接は0.366であった。
【0126】
[粘着テープの調製方法]
(白インキWの調製方法)
DIC(株)製白色インキ「パナシアCVL−SP709白」100質量部に、DIC(株)製「CVLハードナーNo.10」を2質量部、DIC(株)製「ダイレジューサーV No.20」を35質量部添加して白色インキWを調製した。
【0127】
(黒インキKの調製方法)
DIC(株)製スミインキ「パナシアCVL−SP805スミ」100質量部に、DIC(株)製「CVLハードナーNo.10」を2質量部、DIC(株)製「ダイレジューサーV No.20」を35質量部添加して黒色インキKを調製した。
【0128】
(インキコートフィルムの調製方法)
帝人デュポンフィルム(株)製テフレックスFW2#13を濡れ張力が50dyne/cmとなるようにコロナ処理し、コロナ処理面に上記白色インキWを乾燥厚みが2μmになるよう2回グラビアコートし、常温で2分間放置し、乾燥させた。更に、白色インキ層の上に上記黒色インキKを乾燥厚みが4μmになるよう2回グラビアコートし、常温で2分間放置し、インキコートフィルムを調製した。
【0129】
(粘着テープの調製方法)
上記実施例及び比較例にて調整した水分散型アクリル系粘着剤組成物を、それぞれ剥離処理した厚さ75μmのPETフィルム上に、乾燥後の厚さが20μmとなるよう塗工して、100℃で3分間乾燥して得た粘着シートを、上記インキコートフィルムの両面に転写し、80℃の熱ロールで4kgf/cmの圧力でラミネートし、粘着テープを得た。
【0130】
[評価方法]
(アクリル系共重合体の重量平均分子量)
得られたアクリル系共重合体エマルジョンについて、以下の条件にてGPC測定を行い、水分散型アクリル系粘着剤組成物中のアクリル共重合体の重量平均分子量を測定した。
測定装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
GPCカラム構成:以下の4連カラム(すべて東ソー社製)
(1)TSK−GEL HXL−H(ガードカラム)
(2)TSK−GEL GMHXL
(3)TSK−GEL GMHXL
(4)TSK−GEL GMHXL
サンプル濃度:4mg/mLとなるようにテトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
注入量:100μL
カラム温度:40℃
【0131】
(アクリル系共重合体エマルジョン粒子の平均粒子径)
得られたアクリル系共重合体エマルジョンについて、日機装(株)製マイクロトラックUPA型粒度分布測定装置にて測定し、水分散型アクリル系粘着剤組成物中のアクリル共重合体エマルジョン粒子の平均粒子径(体積基準での50%メジアン径)の値を求めた。
【0132】
(ゲル分率の測定)
上記にて調整した粘着テープを40℃の環境下で2日エージング後に、40mm×50mmの大きさに切り取ったものを試料とした。次に、予め上記試料のトルエン浸漬前の質量(G1)と基材の質量(G0)を測定しておき、トルエン溶液中に常温で24時間浸漬した。そして、浸漬後の試料のトルエン不溶分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、105℃で1時間乾燥した後の残留分の質量(G2)を測定し、下記式に従ってゲル分率を求めた。
ゲル分率(質量%)=[(G2−G0)/(G1−G0)]×100
【0133】
(貯蔵弾性率、損失正接の測定)
乾燥後のアクリル系粘着剤組成物を1mm厚まで重ね合わせた試験片を粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KFRTN1)を用いて、直径7.9mmの平行円盤形の測定部に試験片を挟み込み、周波数0.005Hz、85℃、線形せん断歪みの条件で動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”及び損失正接tanδ(=G”/G’)を計測した。
【0134】
(光学フィルムの歪み抑制評価)
上記にて調整した粘着テープを23℃下で図11のように額縁状に打ち抜き加工した粘着テープ(外形:32mm×42mm、幅:2mm)の黒色インキ側をガラスに貼付し、白色インキ側を3M社製の薄型光学フィルム「BEFRP2RC」(120μm)(外形:30mm×40mm)に貼付した(図11)。なお、粘着テープと光学フィルムが接する幅は各辺とも1mmとした。この部品を85℃に72時間静置し、その後23℃に1時間静置して、85℃静置前後での外観変化を観察した。
○:光学フィルムに全く歪みが発生しなかった
△:光学フィルムに歪みが発生した
×:光学フィルムに大きな歪みが発生した
【0135】
(耐反発性評価)
100μmのPETフィルム(ユニチカ製エンブレットSA#100)と2mm厚さのポリカーボネート(PC)板を2mm幅のテープで貼付した。その後、2kgローラー1往復の条件で加圧し、85℃72時間放置後の浮き剥がれを観察した。
○:浮き剥がれが0.5mm未満
△:浮き剥がれが0.5mm以上1mm未満
×:1mm以上浮き剥がれが生じ、剥離した
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
上記表2〜3から明らかなとおり、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物を使用した実施例1〜6の粘着テープにおいては、光学フィルムの高温下での歪みを抑制でき、浮きや剥がれを生じることなく好適に光学フィルムを固定できるものであった。一方、比較例1〜8の粘着剤組成物では、光学フィルムの歪みや、0.5mm以上の浮き剥がれが発生し、視認性評価や厚み較差が厳しいLCDモジュール等の画像表示モジュールに適さないものであった。
【符号の説明】
【0139】
1:粘着剤層
2:基材
3:遮光層
4:光反射層
9:ドライバー
10:粘着テープ
11:プリズムシート
12:拡散シート
13:光源
14:導光板
15:反射板
16:バックライト筐体
17:LCDパネル
20:粘着テープ
21:光学フィルム
22:ガラス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’が3000Pa以上6000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)、および、水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’が6000Pa以上50000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)を混合してなり、
乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paであることを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項2】
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)の混合比率が、(A)/(B)で表わされる質量比で95/5〜5/95である請求項1に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項3】
前記粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)が、炭素数が4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを主たるモノマー成分とするアクリル共重合体(a)が水性媒体中に分散した分散体に、アクリル共重合体(a)100質量部に対して架橋剤を0.01〜0.04質量部添加して得られるアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)であり、
前記粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)が、炭素数が4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを主たるモノマー成分とするアクリル共重合体(b)が水性媒体中に分散した分散体に、アクリル共重合体100質量部に対して架橋剤を0.045〜0.5質量部添加して得られるアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)である請求項1又は2に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項4】
前記アクリル共重合体(a)及び(b)が、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートの少なくとも一種をモノマー成分として含有し、n−ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの含有量の和がモノマー成分全量中の50〜98質量%である請求項3に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項5】
前記アクリル共重合体(a)及び(b)が、カルボキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーをモノマー成分として含有する請求項3又は4に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項6】
前記架橋剤がエポキシ系架橋剤である請求項3〜6のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項7】
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)及び(B)の少なくとも一方の組成物が、ロジン系粘着付与樹脂を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項8】
前記ロジン系粘着付与樹脂の軟化点が140℃以上である請求項7に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項9】
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)の乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される損失正接が0.4〜0.7であり、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)の乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される損失正接が0.1〜0.4であり、混合した水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される損失正接が0.3〜0.5である請求項1〜8のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項10】
基材の少なくとも一面に、請求項1〜9のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープ。
【請求項11】
前記粘着剤層のゲル分率が30〜60%である請求項10に記載の粘着テープ。
【請求項12】
光学フィルムを被着体に額縁状に固定する請求項10又は11に記載の粘着テープ。
【請求項13】
前記被着体が、バックライト筐体と画像表示パネルとを有する画像表示モジュールにおけるバックライト筐体又はLCDパネルの少なくとも一つである請求項12に記載の粘着テープ。
【請求項1】
水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Ga’が3000Pa以上6000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)、および、水性媒体中に粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)を含有し、乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率Gb’が6000Pa以上50000Pa未満である水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)を混合してなり、
乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される貯蔵弾性率G’が4000〜9000Paであることを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項2】
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)と水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)の混合比率が、(A)/(B)で表わされる質量比で95/5〜5/95である請求項1に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項3】
前記粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)が、炭素数が4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを主たるモノマー成分とするアクリル共重合体(a)が水性媒体中に分散した分散体に、アクリル共重合体(a)100質量部に対して架橋剤を0.01〜0.04質量部添加して得られるアクリル系共重合体エマルジョン粒子(a)であり、
前記粒子内架橋したアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)が、炭素数が4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを主たるモノマー成分とするアクリル共重合体(b)が水性媒体中に分散した分散体に、アクリル共重合体100質量部に対して架橋剤を0.045〜0.5質量部添加して得られるアクリル系共重合体エマルジョン粒子(b)である請求項1又は2に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項4】
前記アクリル共重合体(a)及び(b)が、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートの少なくとも一種をモノマー成分として含有し、n−ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの含有量の和がモノマー成分全量中の50〜98質量%である請求項3に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項5】
前記アクリル共重合体(a)及び(b)が、カルボキシル基含有ビニルモノマー及び窒素含有ビニルモノマーをモノマー成分として含有する請求項3又は4に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項6】
前記架橋剤がエポキシ系架橋剤である請求項3〜6のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項7】
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)及び(B)の少なくとも一方の組成物が、ロジン系粘着付与樹脂を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項8】
前記ロジン系粘着付与樹脂の軟化点が140℃以上である請求項7に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項9】
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物(A)の乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される損失正接が0.4〜0.7であり、水分散型アクリル系粘着剤組成物(B)の乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される損失正接が0.1〜0.4であり、混合した水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥後の周波数0.005Hz、85℃にて測定される損失正接が0.3〜0.5である請求項1〜8のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項10】
基材の少なくとも一面に、請求項1〜9のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープ。
【請求項11】
前記粘着剤層のゲル分率が30〜60%である請求項10に記載の粘着テープ。
【請求項12】
光学フィルムを被着体に額縁状に固定する請求項10又は11に記載の粘着テープ。
【請求項13】
前記被着体が、バックライト筐体と画像表示パネルとを有する画像表示モジュールにおけるバックライト筐体又はLCDパネルの少なくとも一つである請求項12に記載の粘着テープ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−213788(P2011−213788A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81249(P2010−81249)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】
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