説明

エレクトレットの製造方法及びその製造装置

【課題】エレクトレットの製造に要する時間の短縮化を図ることができるエレクトレットの製造方法及びその装置を提供する。
【解決手段】エレクトレットの製造装置100は、ヘリウムガスが注入された上部室101と、アルゴンガスが空気に添加された下部室102と、シリコンマイク110を保持する台座104と、台座104に設けられた電極105及び106と、電極105と106との間に直流電圧を印加する直流電源107と、電離放射線を発生する電離放射線発生装置108とを備え、アルゴンガスが空気に添加された雰囲気において、シリコンマイク110の対向電極間に直流電圧を印加した状態で、電離放射線によって正イオン及び負イオンを発生させ、背面板130に設けたシリコン酸化膜132を負イオンによって負に帯電させる構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトレットの製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘電体に半永久的に電荷を保持させた、いわゆるエレクトレットを製造するための方法として、コロナ放電法や電子ビーム法(例えば、非特許文献1〜2参照)や、軟X線照射法(例えば、特許文献1〜2参照)などが知られている。また、エレクトレットを利用し、外部から電圧を印加することなく動作させることが可能なセンサが提案されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0003】
エレクトレットを製造するための上記方法のうち、現在では特にコロナ放電法が産業上において利用されることが多い。コロナ放電法は、電子ビーム法に比べて真空装置を用いることなく利用することができるため、設備コストを抑えてエレクトレットを製造することが可能である。
【0004】
しかしながら、(1)大気中で行った場合、誘電体に電荷を保持させるエレクトレット化を行うために必要な電荷を発生する際に、有害なオゾンが発生する、(2)曲面状に一様なエレクトレットを製造することが難しい、(3)イオンが供給できない構造を有する素子においてはエレクトレット化できない、という課題があった。
【0005】
そこで、特許文献1〜2に記載されているように、軟X線などの電離放射線を利用したエレクトレットの製造方法が提案されている。この電離放射線を利用したエレクトレットの製造方法を用いることによって、上記の様な課題が解決されてきたが、新たに、コロナ放電法に比べてエレクトレットの製造に要する時間が長くなるという課題が生じた。特に、エレクトレット化される誘電体が設けられた一方の電極と、他方の電極との間の距離が短くなるほど、両電極の空隙において電離放射線により生成されるイオン数が少なくなるため、この課題は顕著に現れた。その結果、エレクトレットの製造時間が長くなることにより、設備コストや生産コストが上昇するという産業上における課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−117172号公報
【特許文献2】特開平03−006500号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「静電気ハンドブック」静電気学会編、P1108、オーム社
【非特許文献2】「Electrets」G.M.Sessler編、Lapracian Press
【非特許文献3】「マイクロホンテクニカルハンドブック」高柳裕雄著、P35、兼六館出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたもので、エレクトレットの製造に要する時間の短縮化を図ることができるエレクトレットの製造方法及びその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエレクトレットの製造方法は、互いに対向する対向電極のいずれか一方の対向面側に誘電体を配置する誘電体配置工程と、前記対向電極のいずれか一方の電極を透過する電離放射線を発生して前記誘電体に照射する電離放射線照射工程と、前記電離放射線の予め定めたエネルギー範囲において空気よりも前記電離放射線の透過率が低いガスを含む雰囲気に前記対向電極間を設定した状態で、前記対向電極間に直流電圧を印加し、前記電離放射線によって前記対向電極間に発生する正イオン及び負イオンのうちのいずれか一方により前記誘電体を帯電させる誘電体帯電工程とを含む構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明のエレクトレットの製造方法は、空気よりも電離放射線の透過率が低いガスを含む雰囲気に対向電極間を設定した状態で、対向電極間に直流電圧を印加し、電離放射線によって対向電極間に発生する正イオン又は負イオンにより誘電体を帯電させるので、エレクトレットの製造に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0011】
また、本発明のエレクトレットの製造方法は、前記ガスが、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれか、又はこれらの混合ガスであるのが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のエレクトレットの製造方法は、前記誘電体帯電工程において、前記誘電体が配置された側の電極よりも他方の電極の電位を低くし、前記負イオンにより前記誘電体を負に帯電させる構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明のエレクトレットの製造方法は、負に帯電したエレクトレットを製造することができる。
【0014】
さらに、本発明のエレクトレットの製造方法は、前記誘電体帯電工程において、前記誘電体が配置された側の電極よりも他方の電極の電位を高くし、前記正イオンにより前記誘電体を正に帯電させる構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明のエレクトレットの製造方法は、正に帯電したエレクトレットを製造することができる。
【0016】
さらに、本発明のエレクトレットの製造方法は、前記電離放射線照射工程において、前記電離放射線を発生する電離放射線発生装置から前記対向電極のうち前記電離放射線装置側の電極までの空間を、前記エネルギー範囲において空気よりも前記電離放射線の透過率が高いガスを含む雰囲気とする構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明のエレクトレットの製造方法は、対向電極のうち電離放射線装置側の電極から電離放射線発生装置までの空間で電離放射線が吸収される確率を下げることができるので、より多量の電離放射線を電離放射線照射装置側の電極を透過させ、対向電極間で生成されるイオン数を増加させることができる。
【0018】
さらに、本発明のエレクトレットの製造方法は、前記誘電体が、半導体微細加工技術によって形成されるシリコンエレクトレット素子が備える対向電極のいずれか一方の対向面側に形成されたものである構成を有している。
【0019】
この構成により、本発明のエレクトレットの製造方法は、シリコンエレクトレット素子のエレクトレットを従来よりも短時間で製造することができる。
【0020】
さらに、本発明のエレクトレットの製造方法は、前記誘電体が、エレクトレットフィルタが備える金属板上に形成された網状のものであって、前記対向電極のいずれか一方の電極としての前記金属板と、前記誘電体配置工程において予め用意する前記対向電極の他方の電極との間で帯電されるものである構成を有している。
【0021】
この構成により、本発明のエレクトレットの製造方法は、エレクトレットフィルタのエレクトレットを従来よりも短時間で製造することができる。
【0022】
本発明のエレクトレットの製造装置は、互いに対向する対向電極のいずれか一方の電極の対向面側に配置された誘電体に前記対向電極のいずれか一方の電極を透過して電離放射線を照射する電離放射線照射装置と、直流電圧を前記対向電極間に印加する直流電源と、前記電離放射線の予め定めたエネルギー範囲において空気よりも前記電離放射線の透過率が低いガスを発生するガス発生手段とを備え、前記直流電源は、前記対向電極間が前記ガスを含む雰囲気にある状態で前記電離放射線によって前記対向電極間に発生する正イオン及び負イオンのうちのいずれか一方により前記誘電体を帯電させるものである構成を有している。
【0023】
この構成により、本発明のエレクトレットの製造装置は、空気よりも電離放射線の透過率が低いガスを含む雰囲気に対向電極間を設定した状態で、対向電極間に直流電圧を印加し、電離放射線によって対向電極間に発生する正イオン又は負イオンにより誘電体を帯電させるので、エレクトレットの製造に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0024】
また、本発明のエレクトレットの製造装置は、前記電離放射線照射装置及び前記対向電極を収容する筐体と、前記対向電極を保持し前記筐体の内部を第1室と第2室とに分割する筐体内部分割手段とを備え、前記第1室には、前記電離放射線照射装置が配置されるとともに前記電離放射線が透過する電極の対向面の裏面が露出しており、前記第2室には、前記ガスを含む雰囲気中に前記誘電体側にある電極が配置されるとともに前記電離放射線が透過する電極の対向面が露出している構成を有している。
【0025】
この構成により、本発明のエレクトレットの製造装置は、第1室及び第2室のそれぞれに別個に最適なガスを注入することにより、エレクトレットの製造に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0026】
さらに、本発明のエレクトレットの製造装置は、前記第1室が、前記エネルギー範囲において空気よりも前記電離放射線の透過率が高いガスを含む構成を有している。
【0027】
この構成により、本発明のエレクトレットの製造装置は、対向電極のうち電離放射線照射装置側の電極から電離放射線照射装置までの空間で電離放射線が吸収される確率を下げることができるので、より多量の電離放射線を電離放射線照射装置側の電極を透過させ、対向電極間で生成されるイオン数を増加させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、エレクトレットの製造に要する時間の短縮化を図ることができるという効果を有するエレクトレットの製造方法及びその製造装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態におけるエレクトレットの製造装置に関し、その実験装置の構成を示す図
【図2】軟X線のエネルギーが3keV〜9.5keVの範囲における、空気及び酸素等のそれぞれの透過率を示す図
【図3】軟X線のエネルギーが3keV〜9.5keVの範囲における、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン及び空気の透過率を示す図
【図4】サンプルの表面電位とアルゴン混合割合との関係を示す図
【図5】サンプルの表面電位と照射時間との関係を示す図
【図6】本発明の第1実施形態におけるエレクトレットの製造装置の筐体内部を示す図
【図7】本発明の第2実施形態におけるエレクトレットの製造装置の筐体内部を示す図
【図8】本発明の第3実施形態におけるエレクトレットの製造装置の筐体内部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の発明者は、前述の課題を解決するために実験検討を重ねた結果、電離放射線を照射する際、誘電体が設けられた一方の電極と、他方の電極との間を、照射する電離放射線のエネルギー範囲において、空気に比べて透過率が低いガスを含む雰囲気にすることが課題の解決に有効であることを見出した。そこで、本発明の実施形態について説明する前に、本発明に係るエレクトレットの製造方法に関する実験について説明する。
【0031】
図1は、実験装置の構成を示す図である。図2は、電離放射線として軟X線を用いた場合、軟X線のエネルギーが3keV〜9.5keVの範囲における標準空気(以下「空気」という。)及び空気を構成する酸素等の透過率を示す図である。また、図3は、前述のエネルギー範囲において、空気よりも軟X線の透過率が低いネオンやアルゴン、クリプトン、キセノンの透過率、及び空気よりも軟X線の透過率が高いヘリウムの透過率を示す図である。
【0032】
後述するように、実験結果によれば、電離放射線の照射により、空気のみの雰囲気中よりも、希ガスを含む雰囲気中の方が、生成される総イオン数が増えるため、短時間でエレクトレットを製造することが可能になることが分かった。これは、(1)希ガスは空気中の酸素等に比べて軟X線の吸収率が大きいため、イオン化する確率が高い、(2)希ガスが軟X線を吸収して正イオン化するため、希ガス分子から放出された電子が空気中の酸素等に作用し、空気中の酸素等から生成される正負両極性のイオン数も増やす、などの理由があるためであると考えられる。
【0033】
また、希ガスを用いるため、腐食や有害ガスの発生の問題もない。また、希ガスから生成された正イオンを利用して電荷蓄積することができることも分かった。これにより、前述のように空気中の酸素等に作用してイオン数を増やすだけではなく、希ガスから生成される正イオン自身が誘電体の帯電に寄与するため、通常空気中では得ることが難しい表面電位の大きなエレクトレットを製造することが可能になる。
【0034】
以下、図1に示した構成図に基づき、実験内容について具体的に説明する。
【0035】
まず、シリコン基板11上にシリコン酸化膜12及びシリコン窒化膜13を順次積層したサンプル10を用意した。サンプル10の表面電位を予め測定し、表面電位が0Vであることを確認した。
【0036】
次に、密閉した筐体25内において、サンプル10を金属板21の上に載せ、その上にSUS製のメッシユ状のグリッド電極23を、サンプル10に触れないように間隔をおいて配置した。ここで、グリッド電極23からサンプル10の表面までの距離は2.5mmとした。
【0037】
次に、外部に設けた直流電源24をグリッド電極23に接続した(極性は後述)。金属板21はアース電位とした。グリッド電極23の上方に3keV〜9.5keVのエネルギーを有する軟X線を発生する電離放射線発生装置22を配置した。ここで、電離放射線発生装置22からサンプル10の表面までの距離は15mmとした。また、筐体25には、バルブ32、流量計33及びチューブ34を介してアルゴンボンベ31を接続し、バルブ36、流量計37及びチューブ34を介して空気ボンベ35を接続した。なお、アルゴンボンベ31は、本発明に係るガス発生手段を構成する。
【0038】
前述の構成において、流量計33、37及びバルブ32、36を用いてアルゴンガスと空気とを所定の割合で混合して、この混合ガスを筐体25の注入口26から注入し、筐体25の内部の気体が十分に置換されるのに必要な時間を経た後、直流電源24によりグリッド電極23に所定の電圧を印加した。その後、サンプル10に軟X線を照射し、一定の時間経過後に照射を停止した。そして、直流電源24による電圧印加を停止して筐体25からサンプル10を取り出し、エレクトレット化されたサンプル10の表面電位を測定した。
【0039】
(実験1)
この実験1は、グリッド電極23の電位を−50Vとして、サンプル10に軟X線を照射する実験である。具体的には、軟X線をサンプル10に30秒間照射し、アルゴンガスと空気との混合割合が、サンプル10の表面電位にどの程度影響を及ぼすかについて調べた実験である。その結果を図4に示す。
【0040】
図4に示した結果によると、アルゴンガスを空気に添加していない場合、サンプル10の表面電位は0Vから−17Vに変化したに過ぎなかった。ところが、サンプル10の表面電位は、アルゴンガスの割合を増やすにつれて負方向に上昇し、アルゴンガスを80%まで増やした時に最も負方向に上昇し、−31Vになった。これは印加した電圧の3/5に相当する。その後、サンプル10の表面電位は、アルゴンガスを99.5%まで増やすと、逆に−21Vになった。
【0041】
一方、アルゴンガスを添加せず、空気中で軟X線をサンプル10に照射した場合において、アルゴンガスを空気に80%添加した条件と同じく−31Vの表面電位を得るためには、図5に示すように、300秒程度の時間を要することが分かった。
【0042】
以上の結果より、軟X線を利用したエレクトレットの製造方法において、アルゴンガスを含む雰囲気中に誘電体を配置することにより、誘電体の電荷量を増加させるのに要する時間を大幅に短縮できることが分かった。
【0043】
(実験2)
この実験2は、グリッド電極23の電位を+50Vとして、実験1と同様に、サンプル10に軟X線を照射する実験である。
【0044】
この実験の結果、アルゴンを空気に添加していない場合、軟X線を照射しても、表面電位は+7Vまでしか上昇しなかった。一方、アルゴンガスの割合を99.5%にまで増やすと、表面電位は+40Vまで上昇することが分かった。この結果は、印加した電圧の4/5に相当し、空気中で得られる限界値である3/5よりも大きいことを示している。
【0045】
他方、前述の実験1の結果(図4、5)からは、アルゴンの添加に関わらず、メッシュグリッドの電位を−50Vとした場合には、サンプル10の表面電位は、−31V程度で飽和してそれ以上負方向に上昇しないことが分かった。
【0046】
これに対し、本実験2の結果によれば、グリッド電極23の電位を+50Vとし、アルゴンの混合割合を増やしていくと、空気中で得られる限界値である3/5を超えた表面電位が得られることが分かった。これは、空気中の各成分から生成された正イオンの他に、多量に生成されたアルゴンイオン(正イオン)が誘電体への電荷の注入に寄与しているためと考えられる。このため、軟X線を利用したエレクトレットの製造方法において、誘電体が設けられた一方の電極と、他方の電極との間に印加する電圧を大きく増加させることなく、両電極間をアルゴンガスが含まれた雰囲気にすることにより、空気中において得られる表面電位よりも大きな表面電位が得られることが分かった。
【0047】
また、従来、例えばシリコンマイクにおいて、エレクトレットの所望の電圧を1とすると、1を大きく超える電圧をグリッドの役目をする振動電極と、固定電極との間に印加する必要があった。具体的には、1の電圧を得ようとすると5/3程度の印加電圧が必要であった。しかも、一定以上の電圧を印加すると振動電極と固定電極とが静電引力によって吸着し、場合によっては振動電極が破壊に至るため、エレクトレットの製造時に高い電圧を印加できず、所望の表面電位が得られなかった。これに対し、本実験2の結果は、本発明に係るエレクトレットの製造方法が、これらの問題を解決できることを示している。
【0048】
(第1実施形態)
次に、本発明に係るエレクトレットの製造装置の第1実施形態について説明する。本実施形態では、半導体微細加工技術によって形成され互いに対向する対向電極を備えたシリコンエレクトレット素子のうち、エレクトレットコンデンサシリコンマイクロホン(以下、単に「シリコンマイク」という。)のエレクトレットを製造する例を挙げる。そして、シリコンマイクに設けた誘電体膜を負に帯電させる場合について説明する。
【0049】
まず、本実施形態におけるエレクトレットの製造装置の構成について説明する。図6は、本実施形態におけるエレクトレットの製造装置100の筐体内部を示す図であって、筐体自体の図示は省略している。
【0050】
図6に示すように、エレクトレットの製造装置100は、筐体の内部が上下に分割された構成を有し、筐体の上部に位置する上部室101と、筐体の下部に位置する下部室102と、上部室101と下部室102とを仕切る仕切板103とを備えている。なお、上部室101及び下部室102は、それぞれ、本発明に係る第1室及び第2室を構成する。また、仕切板103は、本発明に係る筐体内部分割手段を構成する。
【0051】
また、エレクトレットの製造装置100は、シリコンマイク110を保持する台座104と、台座104の上部室101側の面上に設けられた電極105と、台座104の下部室102側の面上に設けられた電極106と、電極105と106との間に直流電圧を印加する直流電源107と、電離放射線を発生する電離放射線発生装置108とを備えている。なお、台座104は、本発明に係る筐体内部分割手段を構成する。
【0052】
シリコンマイク110は、振動膜120が形成されたシリコン基板111と、音孔135が形成された背面板130とが対向した構造を有している。以下、振動膜120及び背面板130が互いに対向するそれぞれの面を「対向面」という。
【0053】
振動膜120は、2000nm程度の厚みを有しており、振動膜120と背面板130との間は、絶縁体のスペーサ112を挟むことにより10000nm以上の間隙を有している。
【0054】
また、振動膜120は、拡大図に示すように、シリコン121と、シリコン121の外側の面(対向面の裏面)上に形成された電極としてのアルミニウム薄膜122とを備えている。このアルミニウム薄膜122の膜厚は、50nm〜100nm程度である。
【0055】
背面板130は、拡大図に示すように、シリコン131と、シリコン131の対向面側に設けた誘電体としてのシリコン酸化膜132と、その上面に設けた防湿膜としてのシリコン窒化膜133とを備えている。また、シリコン131の対向面の裏面には電極としてのアルミニウム薄膜134が形成されている。ここで、各膜厚としては、例えば、シリコン酸化膜は1000nm、シリコン窒化膜は200nm、アルミニウム薄膜134は50nm〜100nm程度である。
【0056】
上部室101には、電離放射線発生装置108が配置されるとともに、電離放射線発生装置108から出射した電離放射線が透過する振動膜120の対向面の裏面、すなわちアルミニウム薄膜122の表面が露出している。
【0057】
下部室102には、振動膜120の対向面が露出し、誘電体であるシリコン酸化膜132を備えた背面板130が配置されている。
【0058】
上部室101及び下部室102は、それぞれ別個に任意のガスを注入することができるようになっている。
【0059】
具体的には、上部室101には、電離放射線の予め定めたエネルギー範囲において空気よりも電離放射線の透過率が高いガス、例えばヘリウムガスを注入するのが好ましい。この構成により、電離放射線発生装置108から振動膜120までの空間で電離放射線が吸収される確率を下げることができるので、より多量の電離放射線が振動膜120を通過し、振動膜120と背面板130との間で生成されるイオン数を増加させることができる。なお、上部室101に空気のみを満たす構成であってもよい。
【0060】
一方、下部室102には、空気にアルゴンを20%〜95%、好ましくは70%〜90%添加したガスを満たす。この際、簡便のため、密閉された筐体を用いず、ガスノズルを背面板130の直下に設置し、音孔135を通して空気及びアルゴンガスの混合ガスを振動膜120と背面板130との間の空隙に吹き付ける構成としてもよい。また、ガスノズルをシリコンマイク110の側面に設置し、振動膜120と背面板130との間の空隙に吹き付ける構成とすることもできる。なお、下部室102をアルゴンガス100%とする構成であってもよい。
【0061】
台座104の外周は仕切板103と結合され、台座104の内側には段差部のある貫通孔が形成されている。台座104は絶縁体で構成され、シリコンマイク110は、台座104の段差部に振動膜120側が電離放射線発生装置108側になるようセットされる。台座104にシリコンマイク110がセットされると、振動膜120を境に上部室101と下部室102とが分離されるとともに、振動膜120のアルミニウム薄膜122と電極105、背面板130のアルミニウム薄膜134と電極106とがそれぞれ電気的に接続されるようになっている。
【0062】
次に、本実施形態におけるエレクトレットの製造方法について説明する。
【0063】
まず、シリコン酸化膜132が帯電していないシリコンマイク110を、台座104の段差部にセットする。その際、台座104の上下に設けた電極105及び106に、それぞれ、アルミニウム薄膜122及び134を電気的に接続する。この工程は、互いに対向する対向電極としてのアルミニウム薄膜122及び134のうち、アルミニウム薄膜134側に誘電体であるシリコン酸化膜132を配置する工程である(誘電体配置工程)。
【0064】
続いて、筐体の上部室101にヘリウムガスを図示しない注入口から注入する。また、筐体の下部室102に、アルゴンガスを空気に添加した混合ガスを図示しない注入口から注入する。
【0065】
次に、電離放射線発生装置108からシリコンマイク110に向けて軟X線を照射する(電離放射線照射工程)。照射した軟X線は、アルミニウム薄膜122を含む振動膜120を透過する。ここで、シリコン製の振動膜120の膜厚を2000nmとすると、例えばエネルギーが6.5keVの軟X線の透過率は、およそ95%である。振動膜120を透過した軟X線は、振動膜120と背面板130との間の混合ガスをイオン化する。
【0066】
次に、直流電源107によって、アルミニウム薄膜122及び134に電圧を印加する。ここで、シリコン酸化膜132を負に帯電させる場合、アルミニウム薄膜134(背面板130側電極)がアルミニウム薄膜122(振動膜120側電極)に対して正の電位になるよう、直流電源107の極性を設定する。この状態で電離放射線の照射を行うと、振動膜120と背面板130との間で、空気中の酸素等が電離してイオンが生成されるだけでなく、アルゴンが電離放射線を吸収して正イオン化し、その際に放出された電子が、空気中の酸素等に作用してイオン数が増加する。この際、アルゴンイオンを含む正イオンは振動膜120に、負イオンは背面板130に引き寄せられ、背面板130に設けたシリコン酸化膜132は負に帯電される(誘電体帯電工程)。
【0067】
以上のように、第1実施形態におけるエレクトレットの製造装置100では、振動膜120と背面板130との対向電極間の空隙を下部室102に配置し、下部室102はアルゴンガスを空気に添加した雰囲気とし、誘電体であるシリコン酸化膜132に軟X線を照射する構成としたので、対向電極間でのイオンの生成量が増加するため、背面板130上に設けたシリコン酸化膜132の表面電位が短時間で上昇し、通常の空気中で所定の表面電位を得るのに要する時間を1/10(300秒→30秒:実験1参照)に短縮することができる。
【0068】
したがって、本実施形態におけるエレクトレットの製造装置100は、エレクトレットの製造に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0069】
また、本実施形態におけるエレクトレットの製造装置100は、希ガスを用いるため、腐食や有害ガスの発生の問題もない。
【0070】
なお、前述の実施形態において、振動膜120と背面板130との対向電極間の空隙を、アルゴンガスを空気に添加した雰囲気とした例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、対向電極間の空隙が、空気に比べて透過率が低いガスを含む雰囲気であってもよいし、空気にCOを混合させたものでもよい。
【0071】
また、前述の実施形態のように、誘電体を負に帯電させる場合は、電離放射線を照射したときに、空気中よりも多くの負イオンが生成されるガスを用いるのが好ましい。負イオンが生成されやすいガスとしては、例えば、塩素系やフッ素系のガスが挙げられる。ただし、塩素系やフッ素系のガスを用いる場合は、これらのガスに耐性のある材料で誘電体等を構成するのが好ましい。
【0072】
また、前述の実施形態において、電離放射線として軟X線を例に挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、X線やγ線等を用いても同様の効果が得られる。
【0073】
また、前述の実施形態において、誘電体としてのシリコン酸化膜132を背面板130に設けた例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、誘電体を振動膜120側に設ける構成としても同様の効果が得られる。
【0074】
(第1実施形態の他の態様)
前述の説明では、誘電体としてのシリコン酸化膜132を負に帯電させる場合について説明した。以下、第1実施形態の他の態様として、シリコン酸化膜132を正に帯電させる場合について説明する。この態様では、下部室102の雰囲気が前述の構成と異なっており、その他の構成は同様である。したがって、前述の説明と重複する説明は省略する。
【0075】
まず、本態様のエレクトレットの製造装置における下部室102に、空気にアルゴンを50%以上、好ましくは99%以上添加した混合ガスを満たす。なお、下部室102をアルゴンガス100%とする構成であってもよい。
【0076】
次に、直流電源107によって、アルミニウム薄膜122及び134に電圧を印加する。ここで、シリコン酸化膜132を正に帯電させる場合、アルミニウム薄膜134(背面板130側電極)がアルミニウム薄膜122(振動膜120側電極)に対して負の電位になるよう、直流電源107の極性を設定する。この状態で電離放射線の照射を行うと、振動膜120と背面板130との間で、空気中の酸素等が電離してイオンが生成されるだけでなく、アルゴンが電離放射線を吸収して正イオン化し、その際に放出された電子が、空気中の酸素等に作用してイオン数が増加する。この際、負イオンは振動膜120側に、アルゴンイオンを含む正イオンは背面板130側に引き寄せられ、背面板130に設けたシリコン酸化膜132は正に帯電される(誘電体帯電工程)。
【0077】
以上のように、第1実施形態の他の態様におけるエレクトレットの製造装置では、第1実施形態における効果に加えて、シリコン酸化膜132を正に帯電させる構成において、アルゴンガスを含む雰囲気にシリコン酸化膜132を配置することによりシリコン酸化膜132の表面電位の上昇にアルゴンイオンが大きく寄与するため、通常空気中で得られる表面電位よりも25%大きい表面電位(32/50→40/50:実験2参照)を得ることができる。
【0078】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るエレクトレットの製造装置の第2実施形態について説明する。本実施形態では、半導体微細加工技術によって形成され互いに対向する対向電極を備えたシリコンエレクトレット素子のうち、エレクトレットコンデンサシリコンスピーカ(以下、単に「シリコンスピーカ」という。)のエレクトレットを製造する例を挙げる。
【0079】
まず、本実施形態におけるエレクトレットの製造装置の構成について説明する。図7は、本実施形態におけるエレクトレットの製造装置200の筐体内部を示す図であって、筐体自体の図示は省略している。
【0080】
図7に示すように、エレクトレットの製造装置200は、アルゴンと空気とが混合された混合ガスを放出するガスノズル201と、電極202〜204と、直流電源205と、電離放射線発生装置206とを備えている。
【0081】
シリコンスピーカ210は、振動膜220及び230がそれぞれ形成された2つのシリコン基板211及び212と、それらに挟まれるように形成された固定基板240とを貼り合わせた構造を有している。振動膜220及び230は、例えば2000nm程度の厚みを有しており、振動膜220及び230のそれぞれと固定基板240との間は、絶縁体のスペーサ213を挟むことにより10000nm以上の間隙を有している。固定基板240は厚さ50μm程度のシリコンで構成され、例えば0.1Ωcm以下の抵抗率を有している。
【0082】
振動膜220は、拡大図に示すように、シリコン221と、シリコン221の外側の面(対向面の裏面)上に形成された電極としてのアルミニウム薄膜222とを備えている。このアルミニウム薄膜222の膜厚は、50nm〜100nm程度である。なお、図示を省略したが、振動膜230の構成も振動膜220と同様であり、固定基板240に対して対称にアルミニウム薄膜が形成されている。
【0083】
また、固定基板240は、拡大図に示すように、シリコン241と、シリコン241の両面側(振動膜220、230の各対向面側)に形成された誘電体としてのシリコン酸化膜242と、その上面に形成された防湿膜としてのシリコン窒化膜243とを備えている。ここで、各膜厚としては、例えば、シリコン酸化膜242は1000nm、シリコン窒化膜243は200nm程度である。
【0084】
電極202及び203は、それぞれ、振動膜220及び230の電極に接続されるようになっている。また、電極204は、固定基板240のシリコン241に接続されるようになっている。
【0085】
次に、本実施形態におけるエレクトレットの製造方法について説明する。
【0086】
まず、シリコン酸化膜242が帯電していないシリコンスピーカ210を筐体内の所定治具(図示省略)にセットし、電極202〜204を介して振動膜220及び230と固定基板240とを直流電源205に接続する。
【0087】
また、振動膜220及び230と固定基板240との空隙には、空気にアルゴンガスを20%〜95%、好ましくは70%〜90%添加した混合ガスを、シリコンスピーカ210の側面に設置したガスノズル201により吹き付ける。なお、混合ガスを使用せず、アルゴンガスのみを吹き付けてもよい。
【0088】
次に、電離放射線発生装置206からシリコンスピーカ210に向けて軟X線を照射し、振動膜220及び230と固定基板240との間の混合ガスをイオン化する。このとき、振動膜220及び固定基板240は薄いため、軟X線が透過する。
【0089】
ここで、シリコン製の振動膜220の膜厚を2000nmとすると、例えばエネルギーが6.5keVの軟X線の透過率は、およそ95%である。また、シリコン製の固定基板240の厚さを50μmとすると、6.5keVの軟X線の透過率は、およそ27%である。透過した軟X線は、振動膜220及び230と固定基板240との間のガスをイオン化する。なお、必要であれば、電離放射線発生装置206をもう一台用意し、振動膜230側から軟X線を照射する構成としても構わない。これにより、一方向から軟X線を照射した場合に、固定基板240による電離放射線の減衰によって2つの対向電極間で生成イオン数が非対称となることを防ぐことができ、固定基板240の両面間における表面電位の偏りを防ぐことができる。
【0090】
次に、直流電源205によって、各電極に電圧を印加する。ここで、シリコン酸化膜242を負に帯電させる場合、固定基板240の電極が振動膜220及び230の電極に対して正の電位になるよう、直流電源205の極性を設定する。この状態で電離放射線の照射を行うと、振動膜220及び230と固定基板240との間で、空気中の酸素等が電離してイオンが生成されるだけでなく、アルゴンが電離放射線を吸収して正イオン化し、その際に放出された電子が、空気中の酸素等に作用してイオン数が増加する。この際、アルゴンイオンを含む正イオンは振動膜220及び230側に、負イオンは固定基板240側に引き寄せられ、固定基板240に設けたシリコン酸化膜242は負に帯電される。
【0091】
以上のように、第2実施形態におけるエレクトレットの製造装置200では、シリコンスピーカ210において、誘電体としてのシリコン酸化膜242が両面に形成された固定基板240と、振動膜220及び230とを備え、振動膜220及び230と固定基板240との空隙を空気にアルゴンを添加した雰囲気とし、シリコン酸化膜242に軟X線を照射する構成としたので、対向電極間でのイオンの生成量が増加するため、シリコン酸化膜242の表面電位が短時間で上昇し、通常空気中で所定の表面電位を得るのにかかる時間を1/10(300秒→30秒:実験1参照)に低減することができる。
【0092】
したがって、本実施形態におけるエレクトレットの製造装置200は、エレクトレットの製造に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0093】
(第3実施形態)
次に、本発明に係るエレクトレットの製造装置の第3実施形態について説明する。本実施形態では、エレクトレットフィルタのエレクトレットを製造する例を挙げる。
【0094】
まず、本実施形態におけるエレクトレットの製造装置の構成について説明する。図8は、本実施形態におけるエレクトレットの製造装置300の筐体内部を示す図であって、筐体自体の図示は省略している。
【0095】
図8に示すように、エレクトレットの製造装置300は、アルゴンと空気とが混合された混合ガスをエレクトレットフィルタ310に向けて放出するガスノズル301と、メッシュ状電極302と、直流電源303と、電離放射線発生装置304とを備えている。
【0096】
エレクトレットフィルタ310は、メッシュ状電極302に対向するよう配置された金属板311と、金属板311上に設けられたフィルタ材312とを備えている。
【0097】
フィルタ材312は、例えばポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリ塩化ビニル系などの樹脂材料からなる繊維状あるいはメッシュ状、不織布状等に加工されたものである。本実施形態では、対向電極として、例えば開口率50%程度のSUSのメッシュ状電極302と、金属板311とを用い、金属板311の対向面上にフィルタ材312を設置する構成としている。メッシュ状電極302と金属板311との間は、直流電源303によって、例えば0〜10kV程度の電位差を与えることができるようになっている。
【0098】
次に、本実施形態におけるエレクトレットの製造方法について説明する。
【0099】
まず、メッシュ状電極302を用意し、筐体内部にメッシュ状電極302を配置して直流電源303と接続する。
【0100】
続いて、メッシュ状電極302に対向させて、フィルタ材312を備えた金属板311を配置し、金属板311を接地する。
【0101】
さらに、電離放射線発生装置304から軟X線を照射し、メッシュ状電極302を通して、メッシュ状電極302と金属板311との間のガスをイオン化する。ガスとしては、空気にアルゴンを20%〜95%、好ましくは70%〜90%添加した混合ガスをガスノズル301から吹き付ける。なお、混合ガスを使用せず、アルゴンガスのみを吹き付けてもよい。
【0102】
次に、直流電源303によって、メッシュ状電極302と金属板311とに電圧を印加する。ここで、フィルタ材312を負に帯電させたい場合、金属板311がメッシュ状電極302に対して正の電位になるよう、直流電源303の極性を設定する。この状態で軟X線の照射を行うと、メッシュ状電極302と金属板311との間で、空気中の酸素等が電離してイオンが生成されるだけでなく、アルゴンが軟X線を吸収して正イオン化し、その際に放出された電子が、空気中の酸素等に作用してイオン数が増加する。この際、アルゴンイオンを含む正イオンはメッシュ状電極302に、負イオンは金属板311に引き寄せられ、金属板311上に設けたフィルタ材312は負に帯電される。
【0103】
以上のように、第3実施形態におけるエレクトレットの製造装置300では、エレクトレットフィルタ310が、誘電体としてのフィルタ材312が設けられた金属板311を備え、別途用意したメッシュ状電極302と、金属板311との空隙を空気にアルゴンを添加した雰囲気とし、フィルタ材312に軟X線を照射する構成としたので、対向電極間でのイオンの生成量が増加するため、フィルタ材312の表面電位が短時間で上昇し、通常空気中で所定の表面電位を得るのにかかる時間を1/10(300秒→30秒:実験1参照)に減らすことができる。
【0104】
したがって、本実施形態におけるエレクトレットの製造装置300は、エレクトレットの製造に要する時間の短縮化を図ることができる。
【符号の説明】
【0105】
10 サンプル
11、111、211、212 シリコン基板
12、132、242 シリコン酸化膜
13、133、243 シリコン窒化膜
21、311 金属板
22、108、206、304 電離放射線発生装置
23 グリッド電極
24、107、205、303 直流電源
25 筐体
26 注入口
31 アルゴンボンベ(ガス発生手段)
32、36 バルブ
33、37 流量計
34 チューブ
35 空気ボンベ
100、200、300 エレクトレットの製造装置
101 上部室(第1室)
102 下部室(第2室)
103 仕切板(筐体内部分割手段)
104 台座(筐体内部分割手段)
105、106、202〜204 電極
110 シリコンマイク
112、213 スペーサ
120、220、230 振動膜
121、131、221、241 シリコン
122、134、222 アルミニウム薄膜
130 背面板
135 音孔
201、301 ガスノズル
210 シリコンスピーカ
240 固定基板
302 メッシュ状電極
310 エレクトレットフィルタ
312 フィルタ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する対向電極のいずれか一方の対向面側に誘電体を配置する誘電体配置工程と、前記対向電極のいずれか一方の電極を透過する電離放射線を発生して前記誘電体に照射する電離放射線照射工程と、前記電離放射線の予め定めたエネルギー範囲において空気よりも前記電離放射線の透過率が低いガスを含む雰囲気に前記対向電極間を設定した状態で、前記対向電極間に直流電圧を印加し、前記電離放射線によって前記対向電極間に発生する正イオン及び負イオンのうちのいずれか一方により前記誘電体を帯電させる誘電体帯電工程とを含むことを特徴とするエレクトレットの製造方法。
【請求項2】
前記ガスは、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれか、又はこれらの混合ガスであることを特徴とする請求項1に記載のエレクトレットの製造方法。
【請求項3】
前記誘電体帯電工程において、前記誘電体が配置された側の電極よりも他方の電極の電位を低くし、前記負イオンにより前記誘電体を負に帯電させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレクトレットの製造方法。
【請求項4】
前記誘電体帯電工程において、前記誘電体が配置された側の電極よりも他方の電極の電位を高くし、前記正イオンにより前記誘電体を正に帯電させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレクトレットの製造方法。
【請求項5】
前記電離放射線照射工程において、前記電離放射線を発生する電離放射線発生装置から前記対向電極のうち前記電離放射線装置側の電極までの空間を、前記エネルギー範囲において空気よりも前記電離放射線の透過率が高いガスを含む雰囲気とすることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のエレクトレットの製造方法。
【請求項6】
前記誘電体は、半導体微細加工技術によって形成されるシリコンエレクトレット素子が備える対向電極のいずれか一方の対向面側に形成されたものであることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のエレクトレットの製造方法。
【請求項7】
前記誘電体は、エレクトレットフィルタが備える金属板上に形成された網状のものであって、前記対向電極のいずれか一方の電極としての前記金属板と、前記誘電体配置工程において予め用意する前記対向電極の他方の電極との間で帯電されるものであることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のエレクトレットの製造方法。
【請求項8】
互いに対向する対向電極のいずれか一方の電極の対向面側に配置された誘電体に前記対向電極のいずれか一方の電極を透過して電離放射線を照射する電離放射線照射装置と、直流電圧を前記対向電極間に印加する直流電源と、前記電離放射線の予め定めたエネルギー範囲において空気よりも前記電離放射線の透過率が低いガスを発生するガス発生手段とを備え、
前記直流電源は、前記対向電極間が前記ガスを含む雰囲気にある状態で前記電離放射線によって前記対向電極間に発生する正イオン及び負イオンのうちのいずれか一方により前記誘電体を帯電させるものであることを特徴とするエレクトレットの製造装置。
【請求項9】
前記電離放射線照射装置及び前記対向電極を収容する筐体と、前記対向電極を保持し前記筐体の内部を第1室と第2室とに分割する筐体内部分割手段とを備え、
前記第1室には、前記電離放射線照射装置が配置されるとともに前記電離放射線が透過する電極の対向面の裏面が露出しており、
前記第2室には、前記ガスを含む雰囲気中に前記誘電体側にある電極が配置されるとともに前記電離放射線が透過する電極の対向面が露出していることを特徴とする請求項8に記載のエレクトレットの製造装置。
【請求項10】
前記第1室は、前記エネルギー範囲において空気よりも前記電離放射線の透過率が高いガスを含むことを特徴とする請求項9に記載のエレクトレットの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−267884(P2010−267884A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119217(P2009−119217)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(000115636)リオン株式会社 (128)
【出願人】(000173728)財団法人小林理学研究所 (15)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【Fターム(参考)】