説明

エレクトロクロミック素子

【課題】ハロゲン光とHID(High Intensity Discharged lamp)光の双方に対し防眩性を有し、かつ防眩時の対象物の視認性を向上させた液体型EC(エレクトロクロミック)素子を提供する。
【解決手段】還元着色剤としてビフェニルジカルボン酸ジエチルを含み、酸化着色剤としてフェロセンまたはフェノチアジンを含むEC液でEC層を構成する。反射型素子の場合、反射率のピーク波長が510〜600nmにあり、400〜510nmの平均反射率が10%以下、510〜600nmの平均反射率が23%以上、600〜800nmの平均反射率が15%以下である。透過型素子の場合、透過率のピーク波長が510〜600nmにあり、400〜510nmの平均透過率が15%以下、510〜600nmの平均透過率が20%以上、600〜800nmの平均透過率が35%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエレクトロクロミック(EC)素子に関し、ハロゲン光とHID(High Intensity Discharged lamp)光の双方に対し防眩性を有し、かつ防眩時の対象物の視認性を向上させたものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ミラーにおいて夜間運転時に後方からのヘッドライト光の眩しさを軽減するためにEC素子を組み込んで反射率を低下させるようにしたECミラーが従来より実用化されている。従来実用化されていたECミラーの着色時(防眩時)の反射率スペクトルを図2に示す。特性AはEC層が固体(基本構成はIr酸化物/Ta25/WO3)で構成された固体型ECミラーの反射率スペクトルであり、反射色は青色を呈する。特性BはEC層が液体(基本構成はビオロゲン+フェナジン+PC(溶媒)+PMMA(増粘剤))で構成された液体型ECミラーのスペクトルであり、反射色は緑色を呈する。なお、従来のECミラーとして下記特許文献1に記載されたものがあった。
【0003】
【特許文献1】特表2006−526176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3はハロゲン光源のスペクトルを示す。また図4はHID光源のスペクトルを示す。図2と図3、図2と図4を対比すると次のことが言える。
(a)固体型ECミラー(図2の特性A)はハロゲン光(図3)に対する防眩性が高いが、HID光(図4)に対する防眩性は十分でない。
(b)液体型ECミラー(図2の特性B)はHID光(図4)に対する防眩性が高いが、ハロゲン光(図3)に対する防眩性が十分でない。
(c)固体型ECミラー、液体型ECミラーとも、人間の目の視感度が高い領域(510〜600nm)の反射率が低く、防眩時の対象物の視認性が悪い。
【0005】
この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、ハロゲン光とHID光の双方に対し防眩性を有し、かつ防眩時の対象物の視認性を向上させたEC素子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のEC素子は反射型あるいは透過型として構成される。すなわちこの発明の反射型EC素子は透明な第1基板の一方の面に透明な第1導電膜を形成し、第2基板の一方の面に第2導電膜を形成し、該第2基板のいずれか一方の面に反射膜を形成し、これら第1基板と第2基板を前記第1、第2導電膜どうしを向かい合わせにして所定の空隙を隔てて対向配置してセルを構成し、前記第2導電膜が前記反射膜を兼用する金属反射膜で構成され、もしくは前記第2基板が透明基板で構成されかつ前記第2導電膜が透明導電膜で構成されかつ前記反射膜が前記第2基板の前記第2導電膜と反対側の面に形成され、または前記第2導電膜が透明導電膜で構成されかつ前記反射膜が前記第2基板と前記第2導電膜の間に形成され、前記セル内に、還元着色剤としてビフェニルジカルボン酸ジエチルまたはその誘導体を含みかつ酸化着色剤としてフェロセンもしくはその誘導体またはフェノチアジンもしくはその誘導体を含むEC液を注入してEC層を構成してなり、着色時に前記第1基板の表面側から入射した光が前記反射膜で反射され、該反射光が前記第1基板の表面側から出射されるときの入射光に対する出射光の反射率特性が、反射率のピーク波長が510〜600nmにあり、400〜510nmの平均反射率が10%以下、510〜600nmの平均反射率が23%以上、600〜800nmの平均反射率が15%以下であるものである。
【0007】
この発明の反射型EC素子によれば、着色時に400〜510nmの平均反射率が10%以下であるので、HID光に対して良好な防眩性が得られる。また着色時に600〜800nmの平均反射率が15%以下であるので、ハロゲン光に対して良好な防眩性が得られる。また反射率のピーク波長が人間の目の視感度が高い領域である510〜600nmにあり、510〜600nmの平均反射率が23%以上であるので着色時(防眩時)の対象物の視認性も良好である。
【0008】
この発明の反射型EC素子は例えば車両用ミラーとして構成することができる。
【0009】
この発明の透過型EC素子は透明な第1基板の一方の面に第1透明導電膜を形成し、透明な第2基板の一方の面に第2透明導電膜を形成し、これら第1基板と第2基板を前記第1、第2透明導電膜どうしを向かい合わせにして所定の空隙を隔てて対向配置してセルを構成し、前記セル内に、還元着色剤としてビフェニルジカルボン酸ジエチルまたはその誘導体を含みかつ酸化着色剤としてフェロセンもしくはその誘導体またはフェノチアジンもしくはその誘導体を含むEC液を注入してEC層を構成してなり、着色時に前記第1基板の表面側から入射した光が該第1基板、前記第1透明導電膜、前記EC層、前記第2透明導電膜、前記第2基板を透過して該第2基板の裏面側から出射されるときの入射光に対する出射光の透過率特性が、透過率のピーク波長が510〜600nmにあり、400〜510nmの平均透過率が15%以下、510〜600nmの平均透過率が20%以上、600〜800nmの平均透過率が35%以下であるものである。
【0010】
この発明の透過型EC素子によれば、着色時に400〜510nmの平均透過率が15%以下であるので、HID光に対して良好な防眩性が得られる。また着色時に600〜800nmの平均透過率が35%以下であるので、ハロゲン光に対して良好な防眩性が得られる。また透過率のピーク波長が人間の目の視感度が高い領域である510〜600nmにあり、510〜600nmの平均透過率が20%以上であるので着色時(防眩時)の対象物の視認性も良好である。
【0011】
この発明の透過型EC素子は例えばサングラスとして構成することができる。
【0012】
この発明のEC素子は前記EC液における前記還元着色剤としてのビフェニルジカルボン酸ジエチルまたはその誘導体の濃度が10〜100mmol/l好ましくは40〜60mmol/lであり、前記酸化着色剤としてのフェロセンもしくはその誘導体またはフェノチアジンもしくはその誘導体の濃度が10〜100mmol/l好ましくは40〜60mmol/lであるものとすることができる。またこの発明のEC素子は前記EC液が電解質として過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウムのいずれかを含むものとすることができる。またこの発明のEC素子は前記EC液が溶媒としてN−メチルピロリドン、ガンマブチロラクトン、ジメチルスルホシキドのいずれかを含むものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
《反射型EC素子の実施の形態1》
この発明の反射型EC素子の実施の形態を図1に模式断面図で示す。この反射型EC素子10は車両用ミラー(インナーミラー、アウターミラー)等として構成されるものである。反射型EC素子10は2枚の基板12,14を具える。基板12は透明ガラス基板で構成され、一方の面にITO(酸化インジウムスズ)等による透明導電膜16が成膜されている。基板14はガラス基板等(透明、不透明、半透明のいずれも可)で構成され、一方の面にクロム等の金属(クロム以外にシリコン、チタン、白金、ロジウム、鉄、アルミ、ニオブ等の金属またはこれら金属を主成分とする合金も使用可能である)による導電膜兼反射膜18が成膜されている。基板12と基板14とは透明導電膜16と導電膜兼反射膜18を向かい合わせにして所定長の空隙20を隔てて対向配置される。基板12,14は空隙20の外周位置に充填された封止樹脂22で相互に貼り合わされて一体化される。このとき空隙20は周囲が封止樹脂22で封止されてセル24(小室)を構成する。
【0014】
セル24内には次の組成からなるEC液が注入されてEC層26が構成される。
〈EC液の組成〉
(a)還元着色剤:ビフェニルジカルボン酸ジエチル、濃度10〜100mmol/l(好ましくは40〜60、より好ましくは50mmol/l)
(b)酸化着色剤:フェロセンまたはフェノチアジン、濃度10〜100mmol/l(好ましくは40〜60、より好ましくは50mmol/l)
(c)電解質:過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)、濃度10〜100mmol/l(好ましくは40〜60、より好ましくは50mmol/l)。その他の電解質としてテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(TBABF4)、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(TBAI)等も使用可能である。
(d)溶媒:N−メチルピロリドン。その他の溶媒としてガンマブチロラクトン(GBL)、ジメチルスルホシキド(DMSO)等も使用可能である。
【0015】
セル24はEC液を注入後に密閉される。基板12の上縁部には透明導電膜16に導通するクリップ電極28が装着されている。基板14の下縁部には導電膜兼反射膜18に導通するクリップ電極30が装着されている。クリップ電極28,30間に電圧を印加することによりEC層26は着色し、クリップ電極28,30間を短絡することによりEC層26は消色する。
【0016】
以上の構成の反射型EC素子10によれば、基板12の表面側から入射した後方映像の光32は該基板12、透明導電膜16、EC層26を透過して導電膜兼反射膜18で反射され、その反射光32’はEC層26、透明導電膜16、基板12を透過して該基板12の表面側から出射されて視認者の視点34に導かれる。
【0017】
反射型EC素子10の反射色は、酸化着色剤としてフェロセン、フェノチアジンのいずれを使用した場合も、消色時は無色に近い色調を呈し、着色時(防眩時)は黄色味がかった色を呈する。反射型EC素子10の消色時(非防眩時)の反射率スペクトルを図5に示す。特性Aは酸化着色剤としてフェロセンを用いたときの特性、特性Bは酸化着色剤としてフェノチアジンを用いたときの特性である。また反射型EC素子10の着色時(防眩時)の反射率スペクトルを図6に示す。特性Aは酸化着色剤としてフェロセンを用いたときの特性、特性Bは酸化着色剤としてフェノチアジンを用いたときの特性である。特性Cは比較のために従来の液体型ECミラーの着色時のスペクトル(図2の特性Bと同じ)を示したものである。反射膜材料はいずれもクロムである。これによれば、各特性の反射率のピーク波長および各波長領域の平均反射率は表1に示すとおりである。
【表1】

【0018】
反射型EC素子10(図6の特性A,B)によれば従来の液体型ECミラー(同特性C)に比べて着色時に次の利点がある。
(a)短波長域(400〜510nm)の平均反射率が低いのでHID光に対する防眩性が向上する。
(b)長波長域(600〜800nm)の平均反射率が低いのでハロゲン光に対する防眩性が向上する。
(c)人間の目の視感度が高い領域(510〜600nm)の平均反射率が高いので対象物の視認性が向上する。
(d)車両用ミラーとして構成した場合、昼間(消色時)の反射色は無色に近い色調であるので、意匠性を損なわない。
【0019】
《反射型EC素子の実施の形態2》
この発明の反射型EC素子の他の実施の形態を図7に模式断面図で示す。これは第2基板の裏面側に反射膜を形成したものである。図1の実施の形態と共通する部分には同一の符号を用いる。この反射型EC素子40は2枚の基板12,42を具える。基板12は透明ガラス基板で構成され、一方の面にITO等による透明導電膜16が成膜されている。基板42は透明ガラス基板で構成され、一方の面に透明導電膜44が成膜され、他方の面にクロム等の金属等による反射膜46が成膜されている。基板12と基板42とは透明導電膜16,44どうしを向かい合わせにして所定長の空隙20を隔てて対向配置される。基板12,42は空隙20の外周位置に充填された封止樹脂22で相互に貼り合わされて一体化される。このとき空隙20は周囲が封止樹脂22で封止されてセル24を構成する。セル24内には実施の形態1と同じ組成のEC液が注入される。他の構成は実施の形態1と同じである。
【0020】
以上の構成の反射型EC素子40によれば、基板12の表面側から入射した後方映像の光32は該基板12、透明導電膜16、EC層26、透明導電膜44、基板42を透過して反射膜46で反射され、その反射光32’は基板42、透明導電膜44、EC層26、透明導電膜16、基板12を透過して該基板12の表面側から出射されて視認者の視点34に導かれる。この反射型EC素子による消色時、着色時の反射光スペクトルは実施の形態1とほぼ同じ(反射膜材料が同じ場合)である。
【0021】
《反射型EC素子の実施の形態3》
この発明の反射型EC素子のさらに別の実施の形態を図8に模式断面図で示す。これは第2基板の表面側(視認者の視点に近い側)に反射膜を形成し、該反射膜の上に透明導電膜を積層形成したものである。反射膜と透明電極膜との間に必要に応じて別途透明無機質膜を形成することもできる。図1の実施の形態と共通する部分には同一の符号を用いる。この反射型EC素子50は2枚の基板12,14を具える。基板12は透明ガラス基板で構成され、一方の面にITO等による透明導電膜16が成膜されている。基板14はガラス基板等(透明、不透明、半透明のいずれも可)で構成され、一方の面にクロム等の金属等による反射膜52が成膜され、その上に透明導電膜54が積層成膜されている。基板12と基板14とは透明導電膜16,54どうしを向かい合わせにして所定長の空隙20を隔てて対向配置される。基板12,14は空隙20の外周位置に充填された封止樹脂22で相互に貼り合わされて一体化される。このとき空隙20は周囲が封止樹脂22で封止されてセル24を構成する。セル24内には実施の形態1と同じ組成のEC液が注入される。他の構成は実施の形態1と同じである。
【0022】
以上の構成の反射型EC素子50によれば、基板12の表面側から入射した後方映像の光32は該基板12、透明導電膜16、EC層26、透明導電膜54を透過して反射膜52で反射され、その反射光32’は透明導電膜54、EC層26、透明導電膜16、基板12を透過して該基板12の表面側から出射されて視認者の視点34に導かれる。この反射型EC素子による消色時、着色時の反射光スペクトルは実施の形態1とほぼ同じ(反射膜材料が同じ場合)である。
【0023】
《透過型EC素子の実施の形態》
この発明の透過型EC素子の実施の形態を図9に模式断面図で示す。この透過型EC素子60はサングラス等として構成されるものである。その構成は図7の反射型EC素子40から反射膜46を取り去ったものと同じである。図7と共通する部分には同一の符号を用いる。この透過型EC素子60は2枚の基板12,42を具える。基板12は透明ガラス基板で構成され、一方の面にITO等による透明導電膜16が成膜されている。基板42は透明ガラス基板で構成され、一方の面に透明導電膜44が成膜されている。基板12と基板42とは透明導電膜16,44どうしを向かい合わせにして所定長の空隙20を隔てて対向配置される。基板12,42は空隙20の外周位置に充填された封止樹脂22で相互に貼り合わされて一体化される。このとき空隙20は周囲が封止樹脂22で封止されてセル24を構成する。セル24内には反射型EC素子の前記各実施の形態と同じ組成のEC液が注入される。他の構成は図7の反射型EC素子40と同じである。
【0024】
以上の構成の透過型EC素子60によれば、基板12の表面側から入射した前方映像の光62は該基板12、透明導電膜16、EC層26、透明導電膜44、基板42を透過し、その透過光62’は該基板42の裏面側から出射されて視認者の視点64に導かれる。
【0025】
透過型EC素子60の透過色は、酸化着色剤としてフェロセン、フェノチアジンのいずれを使用した場合も、消色時は無色に近い色調を呈し、着色時(防眩時)は黄色味がかった色を呈する。透過型EC素子60の着色時(防眩時)の透過率スペクトルを図10に示す。特性Aは酸化着色剤としてフェロセンを用いたときの特性、特性Bは酸化着色剤としてフェノチアジンを用いたときの特性である。これによれば、各特性の透過率のピーク波長および各波長領域の平均透過率は表2に示すとおりである。
【表2】

【0026】
透過型EC素子60(図10の特性A,B)によれば次の効果が得られる。。
(a)短波長域(400〜510nm)の平均透過率が低いのでHID光に対する防眩性が高い。
(b)長波長域(600〜800nm)の平均透過率が低いのでハロゲン光に対する防眩性が高い。
(c)人間の目の視感度が高い領域(510〜600nm)の平均透過率が高いので対象物の視認性が良好である。
(d)サングラスとして構成した場合、昼間(消色時)の透過色は無色に近い色調であるので、意匠性を損なわない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の反射型EC素子の実施の形態を示す模式断面図である。
【図2】従来実用化されていたECミラーの着色時(防眩時)の反射率スペクトルを示す図である。
【図3】ハロゲン光源のスペクトルを示す図である。
【図4】HID光源のスペクトルを示す図である。
【図5】図1の反射型EC素子の消色時(非防眩時)の反射率スペクトルを示す図である。
【図6】図1の反射型EC素子の着色時(防眩時)の反射率スペクトルを示す図である。
【図7】この発明の反射型EC素子の他の実施の形態を示す模式断面図である。
【図8】この発明の反射型EC素子のさらに別の実施の形態を示す模式断面図である。
【図9】この発明の透過型EC素子の実施の形態を示す模式断面図である。
【図10】図9の透過型EC素子の着色時(防眩時)の透過率スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0028】
10,40,50…反射型エレクトロクロミック素子、12…透明な第1基板、14…第2基板、16…透明な第1導電膜、18…導電膜兼反射膜、20…空隙、24…セル、26…EC層、42…透明な第2基板、44…透明な第2導電膜、46…反射膜、52…反射膜、54…透明な第2導電膜、60…透過型エレクトロクロミック素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な第1基板の一方の面に透明な第1導電膜を形成し、
第2基板の一方の面に第2導電膜を形成し、
該第2基板のいずれか一方の面に反射膜を形成し、
これら第1基板と第2基板を前記第1、第2導電膜どうしを向かい合わせにして所定の空隙を隔てて対向配置してセルを構成し、
前記第2導電膜が前記反射膜を兼用する金属反射膜で構成され、もしくは前記第2基板が透明基板で構成されかつ前記第2導電膜が透明導電膜で構成されかつ前記反射膜が前記第2基板の前記第2導電膜と反対側の面に形成され、または前記第2導電膜が透明導電膜で構成されかつ前記反射膜が前記第2基板と前記第2導電膜の間に形成され、
前記セル内に、還元着色剤としてビフェニルジカルボン酸ジエチルまたはその誘導体を含みかつ酸化着色剤としてフェロセンもしくはその誘導体またはフェノチアジンもしくはその誘導体を含むEC液を注入してEC層を構成してなり、
着色時に前記第1基板の表面側から入射した光が前記反射膜で反射され、該反射光が前記第1基板の表面側から出射されるときの入射光に対する出射光の反射率特性が、
反射率のピーク波長が510〜600nmにあり、
400〜510nmの平均反射率が10%以下、
510〜600nmの平均反射率が23%以上、
600〜800nmの平均反射率が15%以下
である反射型エレクトロクロミック素子。
【請求項2】
車両用ミラーを構成する請求項1記載の反射型エレクトロクロミック素子。
【請求項3】
透明な第1基板の一方の面に第1透明導電膜を形成し、
透明な第2基板の一方の面に第2透明導電膜を形成し、
これら第1基板と第2基板を前記第1、第2透明導電膜どうしを向かい合わせにして所定の空隙を隔てて対向配置してセルを構成し、
前記セル内に、還元着色剤としてビフェニルジカルボン酸ジエチルまたはその誘導体を含みかつ酸化着色剤としてフェロセンもしくはその誘導体またはフェノチアジンもしくはその誘導体を含むEC液を注入してEC層を構成してなり、
着色時に前記第1基板の表面側から入射した光が該第1基板、前記第1透明導電膜、前記EC層、前記第2透明導電膜、前記第2基板を透過して該第2基板の裏面側から出射されるときの入射光に対する出射光の透過率特性が、
透過率のピーク波長が510〜600nmにあり、
400〜510nmの平均透過率が15%以下、
510〜600nmの平均透過率が20%以上、
600〜800nmの平均透過率が35%以下
である透過型エレクトロクロミック素子。
【請求項4】
サングラスを構成する請求項3記載の透過型エレクトロクロミック素子。
【請求項5】
前記EC液における前記還元着色剤としてのビフェニルジカルボン酸ジエチルまたはその誘導体の濃度が10〜100mmol/l好ましくは40〜60mmol/lであり、前記酸化着色剤としてのフェロセンもしくはその誘導体またはフェノチアジンもしくはその誘導体の濃度が10〜100mmol/l好ましくは40〜60mmol/lである請求項1から4のいずれか1つに記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項6】
前記EC液が電解質として過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウムのいずれかを含む請求項1から5のいずれか1つに記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項7】
前記EC液が溶媒としてN−メチルピロリドン、ガンマブチロラクトン、ジメチルスルホシキドのいずれかを含む請求項1から6のいずれか1つに記載のエレクトロクロミック素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−42697(P2009−42697A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210555(P2007−210555)
【出願日】平成19年8月11日(2007.8.11)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】