説明

エレクトロルミネセンス材料の精製方法、エレクトロルミネセンス材料及びエレクトロルミネセンス素子

本発明は、Pdを効果的に除去することが可能な精製方法及びこれを用いたエレクトロルミネセンス材料及びエレクトロルミネセンス素子を提供することを目的とする。本発明は、不純物としてPdを含有するエレクトロルミネセンス材料を、リンを含有する材料で処理することにより、Pdを除去することを特徴とするエレクトロルミネセンス材料の精製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、エレクトロルミネセンス材料の精製方法、これを用いたエレクトロルミネセンス材料及びエレクトロルミネセンス素子に関するものである。
【背景技術】
エレクトロルミネセンス素子は、例えば、白熱ランプ、ガス充填ランプの代替えとして、大面積ソリッドステート光源用途に注自されている。一方で、フラットパネルディスプレイ(FPD)分野における液晶ディスプレイを置き換えることのできる最有力の自発光ディスプレイとしても注目されている。特に、素子材料が有機材料によって構成されている有機エレクトロルミネセンス(EL)素子は、低消費電力型のフルカラーFPDとして製品化が進んでいる。中でも、有機材料が高分子材料により構成されている高分子型の有機EL素子は、真空系での成膜が必要な低分子型の有機EL素子と比較して、印刷やインクジェットなどの簡易成膜が可能なため、今後の大画面有機ELディスプレイには、不可欠な素子である。
これまで、高分子型有機EL素子には、共役ポリマー、例えば、ポリ(p−フェニレン−ビニレン)(例えば、国際公開第90/13148号パンフレット参照)、および非−共役ポリマー(例えば、I.Sokolikら.,J.Appl.Phys.1993.74,3584参照)のいずれかのポリマー材料が使用されてきた。しかしながら 素子としての発光寿命が低く、フルカラーディスプレイを構築する上で、障害となっていた。
これらの問題点を解決する目的で、近年、種々のポリフルオレン型およびポリ(p−フェニレン)型の共役ポリマーを用いる高分子型有機EL素子が提案されているが、これらも安定性の面では、満足いくものは見出されていない。その原因として、ポリマー中に含まれる不純物、中でもPdの存在が挙げられる。
【発明の開示】
例えば、エレクトロルミネセンス材料として用いられる材料の、Pd触媒を用いた合成反応では、反応後、エレクトロルミネセンス材料中にPdが残存する。Pdがエレクトロルミネセンス材料中に残存していると、発光特性上の問題として、発光開始電圧の上昇、発光効率の低下、安定性の低下などの問題が発生し易くなる。これらの問題を解決するためには、エレクトロルミネセンス材料の反応後の精製が必要になってくる。一般的なエレクトロルミネセンス材料の精製方法としては、ソックスレー抽出法や再沈殿法などが知られている。しかしながら、これらの方法ではPdを除去することは困難であった。
本発明は、これらの問題点を解決するものであって、Pdを効果的に除去することが可能な精製方法及びこれを用いたエレクトロルミネセンス材料及びエレクトロルミネセンス素子を提供するものである。
即ち本発明は、不純物としてPdを含有するエレクトロルミネセンス材料を、リンを含有する材料で処理することにより、Pdを除去することを特徴とするエレクトロルミネセンス材料の精製方法に関する。
また本発明は、前記エレクトロルミネセンス材料が、Pd触媒を用いて合成されたものである前記エレクトロルミネセンス材料の精製方法に関する。
また本発明は、前記エレクトロルミネセンス材料が、ポリマー又はオリゴマーである前記エレクトロルミネセンス材料の精製方法に関する。
また本発明は、前記エレクトロルミネセンス材料が共役ポリマー又はオリゴマーである前記エレクトロルミネセンス材料の精製方法に関する。
また本発明は、前記精製方法により精製されたエレクトロルミネセンス材料に関する。
また本発明は、Pd濃度が100ppm以下である前記エレクトロルミネセンス材料に関する。
さらに本発明は、前記エレクトロルミネセンス材料を用いて得られるエレクトロルミネセンス素子に関する。
本発明の開示は、2003年6月5日に出願された特願2003−160760号及び特願2003−160761号に記載の主題と関連しており、それらの開示内容は引用によりここに援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の精製方法は、不純物としてPdを含有するエレクトロルミネセンス材料を、リンを含有する材料で処理することで、Pdを除去することを特徴とする。処理する方法は特に限定されず、本発明においては、エレクトロルミネセンス材料を含む溶液と、前記溶液に不溶のリンを含有する材料を接触させる方法、エレクトロルミネセンス材料を含む溶液(例えば、有機溶剤溶液)を、前記溶液とは混和しないリンを含有する材料を含む溶液(例えば、水溶液)で洗浄する方法等が好ましく用いられる。本発明においては、エレクトロルミネセンス材料を含む溶液と、前記溶液に不溶のリンを含有する材料を接触させる方法が好ましく用いられる。
好ましい実施態様として、先ず、Pdを不純物として含有するエレクトロルミネセンス材料を、適当な溶剤に溶解させてエレクトロルミネセンス材料溶液を得る。溶剤としては、エレクトロルミネセンス材料を溶解し、リンを含有する材料が不溶なものであれば如何なるものでも使用できるが、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、キシレン、又はこれらの混合溶媒等が好ましい。エレクトロルミネセンス材料の溶解濃度は、溶剤100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲に設定される。溶解温度は、室温(25℃)以上使用溶剤の沸点以下に設定されるのが好ましい。得られたエレクトロルミネセンス材料溶液は、必要に応じて濾過し、不溶分を除去することができる。
次いで、得られたエレクトロルミネセンス材料溶液を、リンを含有する材料で処理するが、一般には得られたエレクトロルミネセンス材料溶液に、リンを含有する材料を加える。リンを含有する材料の量は、エレクトロルミネセンス材料1重量部に対して好ましくは0.01〜100重量部、より好ましくは0.1〜20重量部の範囲に設定される。リンを含有する材料を加えたエレクトロルミネセンス材料溶液をマグネチックスターラー等で攪拌することが好ましい。撹拌温度は、10℃以上溶媒の沸点以下に設定されるのが好ましい。撹拌時間には特に制限がなく、Pd濃度の低減効果が充分に得られる程度に設定可能であり、撹拌時間は好ましくは10分以上、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは10時間以上に設定される。また、作業性等の観点から、撹拌時間は、好ましくは100時間以下に設定される。
その他の好ましい実施態様としては、エレクトロルミネセンス材料の溶液を、前記溶液に不溶のリンを含有する材料を充填剤に用いたカラムクロマトグラフィーを使用する方法等がある。
本処理において、エレクトロルミネセンス材料に含まれるPdが、リンを含有する材料に吸着するものと考えられる。
撹拌終了後、リンを含有する材料を加えたエレクトロルミネセンス材料溶液からPdを吸着したリンを含有する材料を濾過等によって取り除き、さらにエバポレーター等により溶剤を取り除くことができる。精製したエレクトロルミネセンス材料が、水飴状である場合には、減圧乾燥を行っても乾燥され難く、溶剤が残留しやすい。したがって、水飴状のエレクトロルミネセンス材料を、これを溶解する溶剤に再び溶解し、次いで得られた溶液を、エレクトロルミネセンス材料を沈殿させる溶剤中に撹拌しながら滴下し、目的とするエレクトロルミネセンス材料を繊維状に析出させることもできる。エレクトロルミネセンス材料を溶解する溶剤としては上述のものを使用することができ、また、エレクトロルミネセンス材料を沈殿させる溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる。
また、本精製方法は一回のみ行っても有効であるが、繰り返し行うことにより、さらにPdを除去することが可能である。精製するエレクトロルミネセンス材料のPd含有量にもよるが、収量、工程数や、精製後のPd濃度を勘案し、本精製方法は、好ましくは1〜20回、より好ましくは1〜10回行う。
また、本発明の精製方法は、さらに任意の他の工程を含んでいてもよい。
本発明において、用語「リンを含有する材料」とは、リン原子を含有する化合物自体、又は、前記化合物によって修飾されている材料のことをいうが、前記化合物によって修飾されている材料が好ましい。「リンを含有する材料」は、一般にエレクトロルミネセンス材料を溶解する溶媒に不溶なものが使用される。
本発明における「リン原子を含有する化合物」は、Pdへ作用し、Pdへの配位能を有する化合物であることが好ましい。リン原子を含有する化合物としては、ホスフィン(RP)、ホスフェート((RO)PO)、ホスファイト((RO)P)又はこれらの誘導体等を挙げることができるが、本発明においてはホスフィン又はその誘導体を用いることが好ましい。ホスフィンは、水素化リン(PH)、第一級ホスフィン(RPH)、第二級ホスフィン(RPH)、第三級ホスフィン(RP)のいずれも使用可能であり(Rはそれぞれ独立に置換又は非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基等を表す)、本発明においては、ジフェニルホスフィン又はその誘導体やトリフェニルホスフィン又はその誘導体、トリアルキルホスフィン又はその誘導体等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、リン原子を含有する材料は、2種以上を同時に用いてもよい。
前記化合物により修飾される材料としては、シリカゲル、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の無機系材料や、架橋ポリスチレン、ポリメタクリレート等の有機系材料を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明で用いることができるリンを含有する材料の具体例としては、SILICYCLE社(R45030B)Si−DPP、トリフェニルホスフィン修飾架橋ポリスチレンSTREM社(No.15−6730)triphenylphosphine,polymer−bound,on styrene−divinylbenzene copolymer(20% cross−linked)、novabiochem社(01−64−0308)triphenylphosphine polystyrene、ALDRICH社(93094)triphenylphosphine polymer−bound、ALDRICH社(36645−5)triphenylphosphine polymer−bound、ALDRICH社(63212−0)dicyclohexylphenylophosphine,polymer−bound、ALDRICH社(59673−6)(4−hydroxyphenyl)diphenylphosphine,polymer−bound、ALDRICH社(53264−9)poly(ethylene glycol)triphenylphosphine、ARGONAUT社(800378〜81)PS−triphenylphosphine等が挙げられる。
本発明において、エレクトロルミネセンス材料としては、Pdを不純物として含むものであれば如何なるものでも使用できるが、特に、Pd触媒を用いて合成されるエレクトロルミネセンス材料が好ましい。
Pd触媒は、Pd(0)錯体であってもよいし、Pd(II)塩であってもよい。Pd触媒の例として、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、水酸化パラジウム、硝酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム(II)塩化物水和物、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジ−μ−クロロビス(η−アリル)パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、プロピオン酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ニパラジウム、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロライド、テトラキス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム、ビス(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム、ビス(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム、テトラキス(トリエチルホスファイト)パラジウム等を挙げることができる。
Pd触媒を用いるエレクトロルミネセンス材料の合成法としては、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化ビニルと末端オレフィンとを反応させ置換オレフィンを得るHeck反応、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化アルカンと末端アセチレンとを反応させ二置換アセチレンを得る薗頭カップリング反応、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化ビニルと有機スズ化合物とを反応させるStilleカップリング反応、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化ビニルとホウ素化合物とを反応させる鈴木カップリング反応などが挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明においては、鈴木カップリング反応により合成したエレクトロルミネセンス材料が好ましく用いられる。
本発明においてエレクロトルミネセンス材料は、ポリマーまたはオリゴマーであることが好ましく、共役ポリマーまたはオリゴマーであることがさらに好ましい。また、エレクトロルミネセンス材料の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは100,000以上であり、また、溶媒に溶解した際に撹拌可能な粘度であればよく、好ましくは1,000,000以下である。
本発明において、用語「共役ポリマー」とは、完全に共役したポリマー、換言すれば、その高分子鎖の全長に亘って共役したポリマー、または、部分的に共役したポリマー、換言すれば、共役した部分と共役していない部分とをともに含んだポリマーのいずれかをいう。用語「共役オリゴマー」についても同様である。
具体的なエレクトロルミネセンス材料としては、主骨格として、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリフェナントレン、ポリピレン等のポリ(アリーレン)またはその誘導体、ポリチオフェン、ポリキノリン、ポリカルバゾール等のポリ(ヘテロアリーレン)またはその誘導体、ポリ(アリーレンビニレン)またはその誘導体、ポリ(アリーレンエチニレン)またはその誘導体を含むポリマーもしくはオリゴマーが挙げられ、また、ユニットとして(即ち、主骨格中の構造だけではなく、側鎖の構造であってもよい)、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ルブレン、ピレン、ペリレン、インデン、アズレン、アダマンタン、フルオレン、フルオレノン、ジベンゾフラン、カルバゾール、ジベンゾチオフェン、フラン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、チオフェン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、ノルボルネン、ベンゾフラン、インドール、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、クマリン、シノリン、キノキサリン、アクリジン、フェナントロリン、フェノチアジン、フラボン、トリフェニルアミン、アセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、ピコリン酸、シロール、ポルフィリン、イリジウム等の金属配位化合物等又はそれらの誘導体の構造を含むポリマーもしくはオリゴマー等が挙げられる。また、これらの骨格を有する低分子化合物であってもよい。
本発明においては、主骨格として、ポリ(アリーレン)またはその誘導体、ポリ(ヘテロアリーレン)またはその誘導体を含むポリマーもしくはオリゴマーであることが好ましい。また、ユニットとして、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、フルオレン、ジベンゾフラン、カルバゾール、ジベンゾチオフェン、フラン、チオフェン、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピリジン、トリアジン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントロリン、トリフェニルアミン、アセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、イリジウム等の金属配位化合物等またはその誘導体を含むポリマーもしくはオリゴマーであることが好ましい。
また、本発明の精製方法により精製されたエレクトロルミネセンス材料において、Pd含有量は、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。
本発明の精製方法によって得られるエレクトロルミネセンス材料を使用するエレクトロルミネセンス素子の一般構造は、特に制限はなく、例えば、米国特許第4,539,507号および米国特許第5,151,629号に記載されている。また、ポリマー含有のエレクトロルミネセンス素子については、例えば、国際公開WO第90/13148号または欧州特許公開第0 443 861号に記載されている。
これらは通常、電極の少なくとも1つが透明であるカソードとアノードとの間に、エレクトロルミネセント層(発光層)を含むものである。さらに、1つ以上の電子注入層および/または電子移動層が、エレクトロルミネセント層(発光層)とカソードとの間に挿入され得るもので、さらに、1つ以上の正孔注入層および/または正孔移動層が、エレクトロルミネセント層(発光層)とアノードとの間に挿入され得るものである。カソード材料としては、例えば、Li、Ca、Mg、Al、In、Cs、Mg/Ag、LiFなどの金属または金属合金であるのが好ましい。アノードとしては、透明基体(例えば、ガラスまたは透明ポリマー)上に、金属(例えば、Au)または金属導電率を有する他の材料、例えば、酸化物(例えば、ITO:酸化インジウム/酸化錫)を使用することもできる。
本発明の精製方法は、発光層に用いられるエレクトロルミネセンス材料に限らず、上記エレクトロルミネセンス素子が通常有する層に用いられるエレクトロルミネセンス材料にも適応することが可能である。
本発明のエレクトロルミネセンス材料の精製方法は、実施例および比較例等からも明らかなように、優れた不純物除去効果を示し、優れた発光特性、安定性等を示すエレクトロルミネセンス材料及びエレクトロルミネセンス素子の製造に好適である。
【実施例】
本発明を以下の実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
合成例1 ポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)の合成
2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(0.4mmol)、化合物(1)で表される9,9−ジオクチルフルオレンのジボロン酸エステル(0.4mmol)、Pd(0)(PPh(0.008mmol)、ジカプリルメチルアンモニウムクロリド(3%)のトルエン溶液に、2MのKCO水溶液を加え、激しく攪拌しながら、窒素下で48時間還流した。

反応混合物を室温まで冷却した後、メタノール−水中に注ぎ、固体を沈殿させた。析出した固体を吸引濾過し、メタノール−水で洗浄することにより、固体を得た。濾取した固体をトルエンに溶解した後、大量のメタノール−アセトン中に注ぎ、固体を沈殿させた。析出した固体を吸引濾過し、メタノール−アセトンで洗浄することにより、ポリフルオレンを得た。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は800ppmであった。
なお、ICP発光分析によるPdの定量法は次の通りである。
サンプル5mgを秤量して、硫酸、硝酸、過塩素酸及びフッ化水素酸を加え加熱分解し、分解物を希王水溶液にて溶解して試料とし、ICP発光分析装置としてセイコーインスツルメンツ(株)製 SPS3000を用いて測定した(以下同様)。
得られたポリマーは、エレクトロルミネセンス材料として用いられる、共役ポリマーのポリフルオレンである。
実施例1 ポリフルオレンの精製(1)
合成例1で得たポリフルオレン(100mg)をトルエン(10mL)に溶解し、2−ジフェニルホスフィノエチル修飾シリカゲル(SILICYCLE社(R45030B)Si−DPP)(20mg)を加え、15時間撹拌した。濾過して得られたポリマー溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた固体をトルエンに溶解した後、大量のメタノール−アセトン中に注ぎ、固体を沈殿させた。析出した固体を吸引濾過し、メタノール−アセトンで洗浄することにより、ポリマーを得た。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は600ppmであった。
実施例2 ポリフルオレンの精製(2)
2−ジフェニルホスフィノエチル修飾シリカゲル(20mg)を200mgとした以外は、実施例1と同様にして精製した。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は200ppmであった。
実施例3 ポリフルオレンの精製(3)
2−ジフェニルホスフィノエチル修飾シリカゲル(20mg)を1gとした以外は、実施例1と同様にして精製した。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は30ppmであった。
実施例4 ポリフルオレンの精製(4)
2−ジフェニルホスフィノエチル修飾シリカゲル(20mg)の代わりにトリフェニルホスフィン修飾架橋ポリスチレン(STREM社(No.15−6730)triphenylphosphine,polymer−bound,on styrene−divinylbenzene copolymer(20% cross−linked))(200mg)を用いた以外は、実施例1と同様にして精製した。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は20ppmであった。
比較例1 再沈殿法による精製
合成例1で得たポリフルオレンをトルエンに溶解した後、大量のメタノール−アセトン中に注ぎ、固体を沈殿させた。析出した固体を吸引濾過し、メタノール−アセトンで洗浄することにより、ポリマーを得た。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は800ppmで、Pdの除去効果はなかった。
実施例5〜8、比較例2 有機EL素子の作製・評価
実施例1〜4及び比較例1で得たポリフルオレンのそれぞれのトルエン溶液(1.0wt%)を、ITO(酸化インジウム錫)を2mm幅にパターンニングしたガラス基板上に、乾燥窒素環境下でスピン塗布してポリマー発光層(膜厚70nm)を形成した。次いで、乾燥窒素環境下でホットプレート上で80℃/5分間加熱乾燥した。得られたガラス基板を真空蒸着機中に移し、上記発光層上にLiF(膜厚10nm)、Al(膜厚100nm)の順に電極を形成した。得られたITO/ポリマー発光層/LiF/Al素子を電源に接続し、ITOを陽極、LiF/Alを陰極にして電圧を印加したところ、1cd/mの輝度が得られる発光開始電圧、及び輝度が100cd/mにおける電力効率は表1に示す結果となった。

合成例2 化合物(2)の合成
2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(0.4mmol)の代わりに、化合物(3)(0.2mmol)、化合物(4)(0.2mmol)を用いた以外は、合成例1と同様に合成し、化合物(2)を得た。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は1900ppmであった。

実施例9 化合物(2)の精製(1)
化合物(2)(100mg)をトルエン(10mL)に溶解し、トリフェニルホスフィン修飾架橋ポリスチレン(STREM社(No.15−6730)triphenylphosphine,polymer−bound,on styrene−divinylbenzene copolymer(20% cross−linked))(200mg)を加え、15時間撹拌した。濾過して得られたポリマー溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた固体をトルエンに溶解した後、大量のメタノール−アセトン中に注ぎ、固体を沈殿させた。析出した固体を吸引濾過し、メタノール−アセトンで洗浄することにより、ポリマーを得た。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は300ppmであった。
実施例10 化合物(2)の精製(2)
化合物(2)を用い、実施例9と同様の操作を2回繰り返し行い、ポリマーを得た。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は50ppmであった。
実施例11 化合物(2)の精製(3)
化合物(2)を用い、実施例9と同様の操作を4回繰り返し行い、ポリマーを得た。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は30ppmであった。
実施例12 化合物(2)の精製(4)
化合物(2)を用い、実施例9と同様の操作を6回繰り返し行い、ポリマーを得た。得られたポリマーについて、ICP発光分析を行ったところ、Pd含有量は10ppm以下であった。
実施例13〜17 化合物(2)の有機EL素子の作製・評価
ポリフルオレンの代わりに、合成例2および実施例9〜12で得られたポリマーを用いた以外は、実施例5〜8と同様に有機EL素子を作製、評価したところ、発光開始電圧、電力効率、および初期輝度100cd/mからの輝度半減寿命は、表2に示す結果となった。

実施例18〜41 エレクトロルミネセンス材料の精製、エレクトロルミネセンス素子の作製・評価
ポリフルオレンの代わりに、表3に示すエレクトロルミネセンス材料を用いた以外は、実施例9と同様の方法で精製し、実施例5〜8と同様の方法で有機EL素子の作製・評価を行ったところ、表3に示す結果が得られた。全ての有機EL素子において、精製前のエレクトロルミネセンス材料を用いた場合と比較して、それぞれ発光開始電圧の低下、電力効率の向上等が確認された。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物としてPdを含有するエレクトロルミネセンス材料を、リンを含有する材料で処理することにより、Pdを除去することを特徴とするエレクトロルミネセンス材料の精製方法。
【請求項2】
エレクトロルミネセンス材料が、Pd触媒を用いて合成されたものである請求項1記載のエレクトロルミネセンス材料の精製方法。
【請求項3】
エレクトロルミネセンス材料が、ポリマー又はオリゴマーである請求項1又は2記載のエレクトロルミネセンス材料の精製方法。
【請求項4】
エレクトロルミネセンス材料が共役ポリマー又はオリゴマーである請求項1〜3いずれか記載のエレクトロルミネセンス材料の精製方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の精製方法により精製されたエレクトロルミネセンス材料。
【請求項6】
Pd濃度が100ppm以下である請求項5記載のエレクトロルミネセンス材料。
【請求項7】
請求項5又は6記載のエレクトロルミネセンス材料を用いたエレクトロルミネセンス素子。

【国際公開番号】WO2004/113420
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507205(P2005−507205)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008154
【国際出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(598101701)マックスデム インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】