説明

エレクトロルミネセントディスプレイの制御

マルチセグメントELディスプレイ(1)と共に使用するコントローラを提供する。制御信号C1〜CNは、複数のハーフH−ブリッジHおよびHcを制御し、ハーフH−ブリッジの端子ははそれぞれグランドおよび高電圧DC電源(9)に接続される。前記ハーフH−ブリッジの1つは、コモン出力Vコモンを提供し、残りのH−ブリッジがディスプレイの各セグメントに対して駆動電圧V1〜VNを提供する。Hブリッジは、発振器(14)により駆動され、ディスプレイの各セグメントには交流電圧が選択的に印加される。電源(24)は、ディスプレイの単位面積当たりに対し所定量の電力を提供する。この動作は、セグメントデータ入力部、セグメントカウンタおよびディスプレイの各セグメントに対応する面積データを含むメモリを有する面積積算エンジン(22)によって制御される。セグメントデータ入力部からの入力に基づいて、メモリから点灯すべきセグメントの面積を得て積算し、点灯すべき総面積を提供する。これが電源(24)に供給されると、電源(24)がハーフH−ブリッジを介してディスプレイ(1)に適切な量の電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセント(以降EL)ディスプレイおよびそのコントローラに関し、特にこのようなコントローラに供給する電力の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ELディスプレイは、選択的に点灯可能な情報表示領域を有する。このようなディスプレイは、競合技術に対して大型化が可能でフレキシブルであり比較的安価であるという利点を有する。
【0003】
1950年代にはELランプが知られていたが、寿命が短く、フレキシブルEL素子が開発されたのは1980年代に入ってからであった。しかしながら、これは液晶ディスプレイ用バックライトとして使用されたものであり、実用的なELディスプレイが入手可能となったのはごく最近のことである。
【0004】
ELディスプレイは、通常硫化亜鉛粉等がドープされた蛍光体材料の層を2つの電極間に含む。少なくとも1つの電極は、通常インジウム錫酸化物(ITO)等の透明材料からなり、ポリエステルまたはポリエチレンテレフタレート(PET)膜等の透明基板上に設けられる。ディスプレイは、スクリーン印刷等により基板上に電極層および蛍光体層を堆積することにより形成され、不透明電極は例えば銀が充填された導電性インクで形成される。EL素子の例は、WO 00/72638およびWO 99/55121に記載される。
【0005】
上述の一般的なELディスプレイは、ランプの電極間に適当な周波数の交流電圧を加えて蛍光体を励起することにより点灯する。一般に、ELディスプレイで使用される蛍光体は、数百ボルトの電圧を必要とする。典型的には、このようなELディスプレイの容量は、100pF〜1μFの範囲である。
【0006】
小さな電流しか必要とされないので、このような比較的大きい駆動電圧は、公知の「フライバックコンバータ」等の回路によって低電圧DC電源から容易に発生させることができる。
【0007】
この回路は、直列に配置されたインダクタと発振スイッチとを含む。この発振スイッチと並列に、ダイオードとコンデンサとが直列に配置される。このスイッチは、開状態と閉状態との間で変動する。閉状態において、DC電源からインダクタとスイッチとに電流が流れる。スイッチが開くと、電流路が遮断されるが、インダクタに伴う磁界によって電流は流れ続ける。したがって、インダクタによりダイオードを通って電流が流れ、コンデンサを充電する。スイッチが閉じている間、ダイオードによりコンデンサの放電が阻止される。したがって、コンデンサは、DC電源電圧より高い電圧まで充電可能であり、この電圧での電流がコンデンサから得られる。
【0008】
フライバックコンバータから負荷に交流電流を供給するために、コンデンサと並列にH−ブリッジを設けてもよい。H−ブリッジは、一般的に2本の並列なリムを備え、各リムは、第2のスイッチと直列に接続された第1のスイッチを有する。第1および第2スイッチの間の各リム上にはノードがあり、リムのそれぞれのノード間に負荷を接続する。電流は、一方のリムの第1のスイッチともう一方のリムの第2のスイッチを介して、負荷を通って一方向に流れ、残りの2つのスイッチを介して他方向に流れる。H−ブリッジのスイッチは、電流が負荷を通って、まず一方向に、次に他方向に流れるように動作する。
【0009】
複数のELセグメントを設けてディスプレイを形成する場合には、点灯すべきセグメント間で選択的に切り替える定電圧の単一高電圧レールを備えることにより、各セグメントを制御する。これは、1つのハーフH−ブリッジトランジスタ構造を用いて通常前面のコモン電極を制御し、多数のハーフH−ブリッジを用いて複数のセグメントをそれぞれ制御することによって達成される。コモン電極は、数十Hzから数キロHzの領域の周波数で切り替えられる。点灯する必要のないセグメントは、有効電圧とならないようにコモン電極と同じ信号で駆動する。点灯する必要のあるセグメントは、高電圧レールの2倍のピークツーピーク値を持つ交流電圧となるようにコモン電極と同じ周波数であって逆相の信号で駆動する。このように駆動信号の位相を制御することにより、どのセグメントを点灯するかについて簡単に制御可能となる。
【0010】
全てのセグメントの輝度は、高電圧レールの電圧を変えることによっておよび/またはスイッチング周波数を変えることによって制御可能である。各セグメントの輝度は、周波数が上がるにつれて増加する。高電圧レールの定電圧は通常、その電圧をモニターして変動を除去するよう入力電力を調整する手段によって得られる。
【特許文献1】WO 00/72638
【特許文献2】WO 99/55121
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような装置は有用であるが、いくつかの重大な欠点を有する。特に、状況によってディスプレイは迅速に変化することを要求されることがあり、これによってディスプレイに供給する電力を急激に変化させる必要が生じる場合がある。例えば、大半のセグメントが点灯した状態から、殆どのセグメントまたは全てのセグメントが点灯しない状態に、ディスプレイを変化させることが必要になることがある。この場合、電圧を正確に調整する際に、問題が生じる可能性がある。さらに、従来の装置は、負荷に関係なく供給レールの定電圧を維持することに依存しているので、電力使用の能率がかなり悪くなる傾向があり、電池式の装置の場合にはこの問題は重大となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、ELディスプレイ用のコントローラが提供され、このコントローラは、要求されたディスプレイ出力を得るためにディスプレイが必要とする電力の量を求め、略その量の電力をディスプレイに供給するよう構成されている。
【0013】
したがって、本発明によれば、所定のディスプレイ出力を得るための正しい量の電力をシステムに伝達するよう電源が制御される。これによって従来技術の電圧フィードバック制御用ループを削除することが可能となる。
【0014】
本発明は、対応する方法にも関し、別の側面から見ると、所定のディスプレイ出力を得るための正しい量の電力をシステムに伝達するよう電源が制御されるELディスプレイの制御方法を提供する。
【0015】
必要な電力の量を求める方法は、用途によって変わる可能性がある。例えば、参照テーブルを設けて全ての起こり得るディスプレイの構成に対する必要な電力を示してもよい。しかしながら、多くのセグメントを有するディスプレイの場合、これは実用的ではなく、点灯すべきディスプレイセグメントの数に基づいて必要な電力を求めるのが好ましい。
【0016】
各セグメントが同様の面積を有する単純な場合には、点灯すべきセグメントの数にセグメント毎に必要な電力を掛けるだけでよい。しかしながら、様々な形状および大きさのセグメントを有するより複雑なディスプレイの場合は、点灯すべき個々のセグメントの面積に基づいて必要な電力の量をコントローラが求めるのが好ましい。全てのセグメントを同じ輝度となるように点灯するべき場合、点灯すべきセグメントの面積に単位面積当たりに必要な電力を掛ければ必要な電力が求まることがわかる。本発明の好ましい実施態様において、コントローラは、セグメントデータ入力部とセグメントカウンタとディスプレイのセグメントに対応する面積データを格納するメモリとを含む面積積算エンジンを備え、セグメントデータ入力部からの入力に基づいて、点灯すべきセグメントの面積をメモリから得て積算し、点灯すべき総面積に相当する出力を提供する(出力は、コントローラの動作を考慮した適切な形式の信号でありさえすればよく、測定上認識される単位での出力は通常ないことを理解されたい)。
【0017】
この構成はさらに、異なるレベルの輝度で各セグメントを点灯すべき場合にも有効である。特定のセグメントに加える電圧を低くすることによってセグメントの輝度を変化させる場合には、そのように低いレベルで点灯すべきセグメントの面積に、単位面積当たり、より低い電力を掛けるか、または任意の同等の調整により対応可能である。
【0018】
ただし、ディスプレイの点灯セグメントに加える信号の相対的な位相を変化させることによって、セグメントの輝度を可変とするようにコントローラを構成するのが好ましい。本発明のコントローラは、各セグメントを所望の輝度とするために、信号の位相を変えることによって発振器の全周期の内で各セグメントを選択的にオンにしたりオフにしたりすることができる。最大輝度は、セグメントを全周期オンにすることにより得られ、例えば、最大輝度の2分の1の輝度は、その時間の半分だけセグメントをオンにすることによって得られる。
【0019】
粉末ELディスプレイからの光学的エミッションは、約数十マイクロ秒という速い応答時間を有するので、この方法はディスプレイの輝度を変化させるのに有効である。この速さは人間の眼の応答よりはるかに速い。したがって、目に見えるフリッカを伴うことなく、制御された瞬時の間セグメントを点灯させることによって輝度を正確に制御することが可能である。したがって、本発明において、点灯すべきディスプレイの面積は、周期毎に求めるのが好ましい。これによって、上述のように周期毎の変化を輝度の制御に用いることを考慮することが可能となる。ゆえに、本発明のコントローラは、いかなる瞬時においても点灯セグメントの単位面積当たりに対して略一定の電力を加えるのが好ましい。
【0020】
本発明の発明者らは、ELディスプレイに単位面積あたり一定の電力を供給することがさらなる非常に重要な利点を有することを確認した。粉末ELディスプレイは、寿命が限られており、その感度は徐々に減少していく。すなわち、一定の電圧および周波数で駆動していると、ディスプレイの輝度は使用回数が増すにつれて減少していく。このような感度の低下は、ディスプレイ素子の容量の低下も伴うことがわかっている。容量負荷が消費するエネルギーは、E=CV2/2で表され、電力が一定に保たれれば、負荷にかかる電圧は、容量が減少するにつれて増加する。輝度は、印加電圧と共に増加するので、これによって感度の低下が少なくとも部分的に補償されることとなる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、ディスプレイの使用可能な寿命が大幅に増加する。
【0021】
この概念そのものが発明性を有すると考えられるので、別の側面から見ると、本発明は、ディスプレイの点灯セグメントの単位面積当たりに一定の電力を供給するよう構成されたELディスプレイ用コントローラを提供する。
【0022】
このように、このコントローラによれば、時間と共にディスプレイの容量が減少すると印加電圧が増加するので、上述のようにディスプレイの寿命を延ばすことが可能となる。さらに、製造工程上の許容誤差によるディスプレイ容量の変動を補償することもできる。
【0023】
単位面積当たりの電力を一定に維持した場合、自動的に起こる電圧の上昇によって感度の低下を完全には補償できないことがわかっており、用途によってディスプレイの輝度を維持することが重要な場合には、駆動電圧に制御された増加分を供給することにより、コントローラがディスプレイの感度の低下をさらに補償することが好ましい。ELディスプレイの経年変化特性は公知なので、例えば、典型的なコントローラにおいてタイミング信号を供給する発振器に接続されたカウンタを使用すること等によってディスプレイの耐用年数を測定することにより、このような補償が可能となる。
【0024】
なお、ディスプレイの予測性能に頼るのではなく、実際の感度の減少を測定することが好ましい。これは、既知の量のエネルギーを印加した際の、負荷の到達電圧を測定することにより行うのが好ましい。この到達電圧、印加エネルギーの量および駆動する面積の情報を用いて、ディスプレイの単位面積あたりの容量を評価することができる。この容量は、ディスプレイの経年変化に密接に関連しており、経年変化による感度の低下は、印加電力を増加することによりさらに補償することができる。これによりさらに耐用年数が増えることになる。
【0025】
このことは、本発明のさらなる側面にも関連しており、ディスプレイセグメントの感度を求め、所望のレベルの出力輝度となるような電圧で素子を駆動するよう構成されたELディスプレイ用コントローラを提供する。この出力輝度がディスプレイの有効寿命に渡って略一定に維持されるよう構成されるのが好ましい。
【0026】
マルチセグメントディスプレイの多くは、ディスプレイの各セグメントの使用履歴がそれぞれ異なるという特徴を有する。一例として時計用の7−セグメントディスプレイがあるが、各数字を構成するセグメントは、平均すると点灯時間にかなりの差がある。つまり、一番下の左側のセグメントは、時間の40%点灯しており、一番下の右側のセグメントは90%点灯する。全てのセグメントが同じように駆動されたなら、経年変化の格差によりディスプレイの寿命の終わりに近づくにつれ、これらのセグメントにおいて輝度の差が著しくなる。
【0027】
したがって、この影響を打ち消すために、各セグメントを異なる輝度で点灯させて、均一のセグメント輝度とするような機能と組み合わせて、本発明を利用してもよい。そうすれば、より長く使用されたセグメントを高い公称輝度となるように駆動可能となる。使用状況は、上述のパーセンテージ等に基づいて予測してもよく、または測定してもよい。あるいは、素子の容量を測定して、どの程度経年変化が進んでいるかを判断するのに使用してもよい。異なる輝度とするには、計算により得られた電力(および電圧)で各セグメントを駆動する、例えば短い期間各セグメントを順に駆動することによってなされる。ただし、上述のように制御信号の位相を変化させることにより、各セグメントが異なる公称輝度となるよう駆動することによって、各セグメントの輝度を均一にするのが好ましい。
【0028】
このような概念により本発明のさらなる側面がもたらされ、それぞれが格差のある経年変化を経る複数の素子を有するELディスプレイ用のコントローラであって、ディスプレイの有効寿命の間これらの素子が略等しい輝度で点灯するよう前記格差のある経年変化を補償するように各素子を駆動するようコントローラが構成される。このような補償は、例えば、異なる電圧を供給するまたは上述のように制御信号の位相を変えることにより達成可能である。
【0029】
本発明は、様々な電源システムを有するコントローラに適用可能である。先に述べたように、低電圧入力から比較的高電圧を供給するのにフライバックコンバータが通常実際に使われる。従来、フライバックコンバータの出力は、(駆動すべきディスプレイよりずっと大きい容量を有する)大型貯蔵コンデンサに供給されていた。これによって、電源の負荷が平滑化され、大きな電圧降下が防止される。このような構成では、貯蔵コンデンサと負荷との間に電力コントローラが配置されていた。
【0030】
しかしながら、本件出願人の特許出願であるWO 02/069674に記載のように大型貯蔵コンデンサを含まない電源を、コントローラが備えるのが好ましい。このような回路において、負荷の容量よりも非常に小さい容量を有するコンデンサが提供され、コントローラの出力での電圧が周期毎に「急落」し、ディスプレイセグメントが一部フライバック回路のインダクタから直接充電されることとなる。このような電源は、それ自体、所定のディスプレイ輝度を得るための消費電力が少ないので有利であるが、本発明に関して、このような電源は、フライバック回路のインダクタと連動するスイッチを制御することにより所望の電力出力を供給するよう上手く制御可能なので、本発明との特別な相乗効果を有する。
【0031】
したがって、コントローラは、フライバック回路を有する電源を備えるのが好ましく、ELディスプレイを駆動するのに十分な高電圧出力を提供するためにインダクタを流れる電流が選択的に遮断され、この電流の遮断は所望の出力電力を供給するよう制御される。先に述べたように、出力電圧が周期毎に急落するよう構成されるのが特に好ましい。
【0032】
インダクタを流れる電流の流れは、パルス信号で制御されるMOSFET等の電子スイッチにより制御するのが好ましく、このパルス幅を調整してコントローラからの出力電力を求める。
【0033】
本発明はさらに、上述のような本発明の態様に対応するELディスプレイの制御方法および/または上述のコントローラを使用する方法にも関連する。
【0034】
このようなコントローラは、ELディスプレイと組み合わせて使用するよう意図されたものであり、ゆえに別の側面から見ると、本発明は上述のようなコントローラと組み合わせたELディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、所定のディスプレイ出力を得るための正しい量の電力をシステムに伝達するよう電源が制御される。これによって従来技術の電圧フィードバック制御用ループを削除することが可能となる。
【0036】
本発明は、対応する方法にも関し、別の側面から見ると、所定のディスプレイ出力を得るための正しい量の電力をシステムに伝達するよう電源が制御されるELディスプレイの制御方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下図面を参照しながら、本発明の実施態様の幾つかを単に例示的にのみ示す。
【0038】
図1は、4−セグメントディスプレイ1に必要な出力ドライバの組み合わせを含むコントローラを示す。制御部2は、制御信号C1〜C4およびCコモンを伝達する導線によって5つのハーフH−ブリッジH1〜H5に接続される。各ハーフH−ブリッジは、MOSFETトランジスタである一対のスイッチ3a、3bとインバータ4とを備える。これらのトランジスタは、制御信号C1〜C4によって制御され、一対のスイッチのうち1つが開状態の時には他方が閉じるよう構成される。
【0039】
各ハーフH−ブリッジH1〜H4の中央部は、ディスプレイ1のセグメント6の1つの駆動電極5に導線7を介して接続される。ハーフH−ブリッジH5の中央部は、コモン電極8に接続される。コモン電極は、透明導電性材料からなり、公知の方法で各セグメントと接続される。
【0040】
さらに、これらのハーフH−ブリッジは、高電圧源9およびグランド10に接続される。
【0041】
制御信号C1〜C4およびCコモンは、ディスプレイ駆動信号(V1〜4およびVコモン)が低レベル制御信号である0Vから高レベル制御信号である高電圧(典型的には50V〜250Vの領域)まで揺動するように、各ハーフHブリッジH1〜H5の状態を制御する。
【0042】
制御信号Cコモンは、定周波数(100〜2,000Hz)の単一矩形波である。この信号がハーフH−ブリッジH5に供給され、この素子のスイッチ3a、3bが規則正しく開閉してコモン電極8がグランド(図示した状態)に接続され次に高電圧源9に接続される状態が繰り返される。
【0043】
所定のセグメントを最大輝度で点灯する場合、Cコモンに対して逆位相で駆動し、非点灯の場合は、同位相で駆動する。したがって、図1のセグメントは、図示した状態ではいずれも点灯しない(すべてにOFF制御信号が供給されている)。これらを点灯するためには、H5が図示されたような状態の時に適切な信号パルスC1〜C4を供給してスイッチ3aを閉じて3bを開く。CコモンによりH5を介してコモン電極と高電圧源9とが接続されると、H1〜H4のスイッチ3a、3bが図示された構成に戻り、これによって素子の極性が反転する。素子を点灯すべきである限り、この工程を繰り返す。セグメントが点灯される際、Cコモンの周波数でレール電圧の2倍の交流電圧によってこれらのセグメントが実質上駆動されることがわかるだろう。これらのセグメントは、Cコモンの周期毎にオンとなるが、人間の眼の限界により定常的に点灯しているように見える。
【0044】
各素子が異なる輝度レベルとなるように設定することも可能である。これは、Cコモンの周期の一部の期間のみオンとなるよう素子を駆動することによりなされる。この駆動では、特定数の周期に渡って、オンとオフの信号のパターンを繰り返して使用する。周期の数は、ディスプレイ輝度の変化の度合いが十分であって、且つ素子の駆動周波数を極端に下げないように選択する(2分の1の輝度を得るのに時間の半分のみオン信号とすることが、駆動周波数を半分にするのと同等である)。
【0045】
一例として、制御信号パターンの集合(C(0)〜C(3/3))を考えてみるが、これらは各セグメントに対して最大輝度の0、1/3、2/3および3/3の輝度レベルを生成するために印加される。各パターンがCコモン信号の3つの周期にならった繰り返しである。C(0)は、Cコモンと常に同相の信号を提供する。この結果、このセグメントはオフとなる。これに対して、C(3/3)は、Cコモンと常に逆相であり、故にこのセグメントは最大輝度で点灯される。C(1/3)は、3回の周期毎に1度Cコモンと逆相であり、3分の1の輝度が得られ、C(2/3)は、3回の周期毎に2度Cコモンと逆相であり、3分の2の輝度が得られる。輝度レベルの数は、各パターンがそれにならって繰り返すコモン電極信号Cコモンの周期の数を増やすことにより増やすことができる。M個の異なる輝度レベルを提供するには(「オフ」を1つのレベルとして含めて)、M−1周期のグループに対応する制御信号によって各繰り返しパターンを形成する。
【0046】
図2〜4において、スラッシュ記号「/」を付した接続部は、このような接続が複数並列に行われていることを示し、その数を記号の近くに示す。
【0047】
図2にNセグメントディスプレイを駆動するためのコントローラを示す。Nが4であるとすれば、このコントローラは図1で使用されるものとなる。この場合、図2のハーフH−ブリッジのアレイHは、ハーフH−ブリッジH1〜H4を表し、ハーフH−ブリッジHcが(コモン電極を駆動するための)H5を表し、ディスプレイ1が図1のディスプレイ1にセグメント6と電極5、8を加えたものに相当し、残りの要素が制御部2を形成する。
【0048】
クロック発生器14は、典型的には公知の方法で単一高周波数クロックからコントローラ用のクロック信号および制御信号を全て発生する。これらの信号の相対的なタイミングを図3および4に示す。クロック発生器14は、100〜2,000Hzのクロック周波数信号POL_CLKを供給し、この信号は分周器FD1を介してハーフH−ブリッジHcに供給され、これによりマルチセグメントディスプレイ1のコモン電極8用の駆動信号Vコモンが生成される。FD1によりPOL_CLKの周波数は2分割される。同じ信号が複数のXOR(排他的論理和)ゲート16のそれぞれの一方の入力にも供給される。XORゲート16はそれぞれ、ディスプレイの各セグメントに対応している。各XORゲートからの出力は、各ハーフH−ブリッジH1等に供給され(アレイHの一部)、対応するセグメントの駆動電極に駆動信号V1等が供給される。
【0049】
アレイHの各H−ブリッジおよびHcは、0V(グランド)レールと電源24により供給される高電圧レールとに接続される。
【0050】
各XORゲート16のもう一方の入力は、セグメントデータラッチ11に接続される。このセグメントデータラッチが各セグメントをいつ点灯すべきかを決定し、これに応じてXORゲートへの入力が設定される。制御信号C1等は、XORゲート16を用いてCコモン信号により反転される。
【0051】
コントローラは、この制御入力(すなわち、どのセグメントを点灯すべきかを示すデータ)をセグメントデータ入力部20で受け取る。この入力は、N個の並列な入力、すなわち各々がディスプレイの各セグメント用である入力を備える。セグメントに関する新しいデータは、新データラッチ21に保持され、面積積算エンジン22に(SEG_DATAとして)供給されてここで演算が行われ、セグメントデータラッチ11に供給される。この2つのラッチは、信号POL_CLKにより動作する。つまり、ラッチ入力上にあるデータはPOL_CLKの立ち上がりエッジで出力に移動する。面積積算エンジンは、POL_CLKのN倍の周波数の(図3参照)信号SEG_CLKにより駆動され、これによりディスプレイのN個のセグメントの各々を考慮した演算が可能となる。
【0052】
このような演算は、典型的にCコモン制御の2分の1の周期の時間で行われる。この2分の1周期の終わりに、ディスプレイを駆動するための適切な電力を求めるのに使用する新たな点灯面積値(AREA)が得られる。次に、この値が電源24に送られると、電源24よりハーフH−ブリッジHおよびHcに所望の電力の出力VPPが送られる。同時に(POL_CLKの立ち上がりエッジで)、新たなセグメントデータがセグメントデータラッチ11に転送されてディスプレイを点灯するのに使用される。このように、新しいセグメントデータは、一時的に新データラッチ21に保持され、一方面積積算エンジン22が、ディスプレイ上にデータが表示されるより前に、新たなディスプレイセグメントの集合を駆動するのに必要な電力を計算する。
【0053】
上述のような構成により、電源24から出力された電力は、点灯すべきディスプレイの単位面積あたりの所定レベルの電力を提供するよう設定される。これは、20で入力されるセグメントデータとディスプレイのセグメントに関する既知の面積に基づいて点灯すべきセグメントの面積を求める面積積算エンジン22によってなされる。
【0054】
面積積算エンジン22の動作について、図3を参照しながら以下に詳細に述べる。上述のように、このエンジンは、ディスプレイとの駆動極性についてのやりとりを行うのに使用される信号(POL_CLK)のN倍の周波数のクロック源(SEG_CLK)により作動する。
【0055】
面積積算エンジン22の機能は、コントローラが点灯するよう要求された各セグメントの面積を集計することである。各セグメントの面積は、セグメント面積メモリ32に各セグメントに関してPビットのバイナリ形式で格納されている。ビット数Pの選択は、面積データを格納する精度によって決まる。面積積算エンジン22は、セグメントカウンタ37を用いて各セグメントの処理を1つずつ実行していく。このセグメントカウンタの値(SEG_NO)は、マルチプレクサ31を用いてセグメントデータの対応するデータビットを選択するのに使用される。さらに、セグメントカウンタの値(SEG_NO)は、セグメント面積メモリ32をアドレス指定するのにも使用される。次に、セグメント面積メモリ32からのアドレス指定されたPビットのデータに、複数のANDゲート36を用いて選択されたデータビットのセグメントデータを掛ける。この掛け算の結果は、加算器33およびアキュムレータラッチ34により形成されるアキュムレータに渡される。あるセグメントを点灯する必要がある場合、セグメントデータの対応するデータビットは、「1」の値をとり、(それまではセグメント面積メモリ32に格納されていた)その面積をアキュムレータラッチ34の合計に加える。あるセグメントを点灯させる必要がない場合は、セグメントデータの対応するデータビットは、「0」の値をとり、アキュムレータラッチ34の値は変わらない。なお、アキュムレータを事実上クリアするために、N個のセグメントの第一番目に関して(複数のANDゲート38やSUM_CLR信号を反転することにより)アキュムレータラッチ34からの値にゼロを掛けておく。POL_CLKの周期(Cコモンの半分の周期)が終わると、全てのセグメントがチェックされ、点灯すべきセグメントの面積が集計されることとなる。この時、この新しい総面積値(AREA)は、出力ラッチ35に読み込まれる。この総数を格納するのに必要なビット数Qは、セグメント数Nおよび各面積値Pのビット数に依存する。
【0056】
このような動作の結果、アウトプットラッチ35は、点灯すべきセグメントの面積に関する値AREAを含むこととなる。この値は、Q個の並列接続を経て電源24に送られる。
【0057】
電源について、図4を参照しながら以下に詳しく述べる。AREAデータ入力を回路が受け取ると、公知の方法による演算または参照テーブルを使用して、40において点灯面積の平方根を求める。これにより、出力としてPULSE_WIDTH値(R−ビットを用いたバイナリ形式)が得られ、パルス幅変調器41に供給される。この値は、42に一般的に示すフライバックコンバータを駆動する正しいパルス幅(PULSE_WIDTH)に相当する。フライバックコンバータは、インダクタ43、ダイオード44およびMOSFET45を備える。
【0058】
フライバックコンバータからの出力によりVPPが得られ、これが上述のように各ハーフH−ブリッジに供給される。平滑化コンデンサ46は、負荷と並列に設けられる。この平滑化コンデンサは、負荷を充電するのに必要なエネルギーを大きく増加させることなく、H−ブリッジの上流での超過電位を制御できるようにするために、負荷よりも十分に低い容量を有するよう選択される。
【0059】
電源24は、高周波数クロック源PWM_CLKにより動作する。パルス幅変調器41は、Cコモンの各2分の1周期に対して10〜500の領域の多数のパルスを生成する。各パルスは、PULSE_WIDTH/2^Rのデューティーサイクルを有する。クロック信号PWM_CLKは、典型的には100kHz〜10MHzの領域の周波数を有する。パルス幅変調器を駆動するクロック信号がコントローラの残りの部分を駆動するクロック信号と同期する必要はない。ただし、実施態様によってはこの構成が有利であり、特に、クロック発生器の設計を簡素化したり、パルスの一部がフライバック回路に加わるのを防止するために有利である。
【0060】
放電回路47は、Cコモン信号を変化させる直前に負荷および平滑化コンデンサをグランドに放電するために設けられる。これにより、高電圧アレイスイッチ内の電力損が減少し、制御された放電路が生成される。Cコモンの変化の途中に負荷を放電させることも可能であるが、含まれる放電路の制御性が悪く、電流ピークが大きくなって製品回路の他の部品との電磁干渉につながる可能性がある。
【0061】
パルス幅変調器からの出力は、ANDゲート49を介してフライバックコンバータに供給される。このゲートのもう一方の入力は、DISCHARGE信号からの反転入力である。これにより、エネルギーの消耗を防止するために放電期間の間パルス幅変調器41の出力がオフとなる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明にかかるコントローラとディスプレイとの相互接続を示す概略図である。
【図2】図2は、図1のコントローラのコントローラ部の動作を示す概略図である。
【図3】図3は、コントローラの面積積算エンジンの概略図である。
【図4】図4は、コントローラの電源の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロルミネセントディスプレイ用のコントローラであって、
前記コントローラは、要求されたディスプレイ出力を得るのに前記ディスプレイが必要とする電力の量を求め、略その量の電力を前記ディスプレイに供給するよう構成されるコントローラ。
【請求項2】
前記必要とされる電力が点灯すべきディスプレイセグメントの数に基づいて求められる、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記コントローラが、点灯すべき個々のセグメントの面積に基づいて前記必要とされる電力の量を求める、請求項1または2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記コントローラが面積積算エンジンを備え、
前記面積積算エンジンは、セグメントデータ入力部と、セグメントカウンタと、前記ディスプレイの前記セグメントに対応する面積データを含むメモリとを有し、前記セグメントデータ入力部からの入力に基づいて、前記メモリから点灯すべきセグメントの面積を得て積算し、点灯すべき総面積に相当する出力を提供する、請求項1、2または3に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記コントローラが、前記ディスプレイの点灯セグメントに印加する信号の相対的な位相を変化させ、これによって前記セグメントの輝度が可変となるよう構成される、先行する請求項のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項6】
点灯させる前記ディルプレイの単位面積当たりに供給される電力が、動作中所定の値に維持される、先行する請求項のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項7】
前記ディスプレイが経年変化すると、各セグメントの容量値が経年変化と共に減少するにつれて前記各セグメントに加わる電圧が増加して、前記供給される電力が同一の前記所定の値に維持される、請求項6に記載のコントローラ。
【請求項8】
エレクトロルミネセントディスプレイ用のコントローラであって、
前記コントローラは、前記ディスプレイの点灯セグメントの単位面積あたりに一定の所定電力を提供するよう構成されるコントローラ。
【請求項9】
前記ディスプレイが経年変化すると、駆動電圧に制御された増加分を供給することにより、前記コントローラが前記ディスプレイの感度の低下を補償する、請求項1から6のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項10】
前記コントローラが、前記ディスプレイの感度を求め、所望レベルのディスプレイ輝度となるように前記求めた感度に応じて駆動電力を設定する、請求項9に記載のコントローラ。
【請求項11】
前記コントローラが、既知の量のエネルギーを印加した際の負荷の到達電圧を測定するよう構成され、前記到達電圧、前記印加エネルギーの量および駆動する面積を用いて前記ディスプレイの単位面積あたりの容量を評価し、これにより前記感度を求める、請求項9に記載のコントローラ。
【請求項12】
エレクトロルミネセントディスプレイ用のコントローラであって、
前記コントローラは、ディスプレイセグメントの感度を求め、出力輝度が前記ディスプレイの有効寿命に渡って略一定に維持されるような所望のレベルの前記出力輝度を提供する電圧で素子を駆動するよう構成される、コントローラ。
【請求項13】
前記コントローラが、貯蔵コンデンサを有する電源を備え、
前記貯蔵コンデンサは、負荷の容量より非常に小さい容量を有し、前記コントローラの出力での電圧が周期毎に「急落」するよう構成される、先行する請求項のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項14】
前記コントローラが、フライバック回路を有する電源を備え、
エレクトロルミネセントディスプレイを駆動するのに十分な高電圧出力を提供するためにインダクタを流れる電流が選択的に遮断され、この電流の遮断が所望の出力電力を供給するよう制御される、先行する請求項のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項15】
前記インダクタの電流がパルス幅変調器からの出力を用いて制御される、請求項14に記載のコントローラ。
【請求項16】
点灯すべきセグメントの面積の平方根よりパルス幅を求める、請求項15に記載のコントローラ。
【請求項17】
それぞれが格差のある経年変化を経る複数の素子を有するエレクトロルミネセントディスプレイ用のコントローラであって、
前記コントローラは、前記ディスプレイの有効寿命の間、前記各素子が略等しい輝度で点灯するよう前記格差のある経年変化を補償するように、前記各素子を駆動するよう構成されるコントローラ。
【請求項18】
先行する請求項のいずれかに記載のコントローラと組み合わせたエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項19】
先行する請求項のいずれかに記載のコントローラの使用を含む、エレクトロルミネセントディスプレイの制御方法。
【請求項20】
所定のディスプレイ出力を得るための正しい量の電力をシステムに伝達するよう、電源が制御される、エレクトロルミネセントディスプレイの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−528788(P2006−528788A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520895(P2006−520895)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003178
【国際公開番号】WO2005/013248
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(503183640)ペリコン リミテッド (16)
【Fターム(参考)】