説明

エレクトロルミネッセンス装置、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法、電子機器

【課題】 基板と電極との間の全反射を抑制し、光の取り出し効率を向上させることのできるEL装置を提供する。
【解決手段】 本発明のEL装置100は、発光層5を保持する一対の電極8,9と、前記一対の電極のうちの一方の電極8が配置された基板2と、基板2において前記一方の電極8が配置された側の面に設けられた凹凸部2Aと、前記一方の電極8と基板2との間に介在し、凹凸部2Aを平坦化する平坦化絶縁膜4とを備え、平坦化絶縁膜4には、母材となる絶縁材料4Aよりも大きな屈折率を有する微粒子3が含まれており、前記微粒子3を含む前記平坦化絶縁膜4の平均の屈折率が、基板2の屈折率よりも大きくなるように調整されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス装置、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光素子であるEL(エレクトロルミネッセンス)素子を画素として用いたEL装置の開発が進められている。EL素子は、陽極と陰極との間に発光層等の機能層を挟持した構成を備えており、最近では、有機物材料を溶解した液体材料をインクジェット法によって基板上パターン配置する方法を採用した有機EL装置の開発が行われている。このような有機EL装置では、画素毎を区画する隔壁部材を基板上に設け、この隔壁部材で囲まれた領域内に上記液体材料を吐出することで、基板上に正確に有機機能層を形成することができる(例えば特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2001−76864号公報
【特許文献2】特開2004−22438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなEL装置においては、発光層から透明基板を介して光が外部に取り出される際に、透明基板と電極との界面において光の全反射が生じて光が閉じ込められ、発光層から発光する光の一部しか表示に寄与しないという問題があった。一般に、EL装置の表示側の電極にはITOが用いられ、透明基板にはガラス基板が用いられる。これらの屈折率は、ITOが2.0程度、ガラス基板が1.5程度であり、両者の間には大きな屈折率差が生じている。発光層においては全方向にわたって発光が生じるが、広角(臨界角以上)に出射した光はITO電極内で全反射を繰り返し、透明基板側に取り出すことができない。すなわち、光の取り出し効率が悪いために、発光層に所定の電流を供給してせっかく発光が生じても、そのうちの一部の光しか表示に寄与しないことになる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、基板と電極との間の全反射を抑制し、光の取り出し効率を向上させることのできるエレクトロルミネッセンス装置を提供することを目的とする。また、このようなエレクトロルミネッセンス装置の製造方法と、係るエレクトロルミネッセンス装置を備えた高輝度発光が可能な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するため、本発明のエレクトロルミネッセンス装置は、発光層を保持する一対の電極と、前記一対の電極のうちの一方の電極が配置された基板と、前記基板において前記一方の電極が配置された側の面に設けられた凹凸部と、前記一方の電極と前記基板との間に介在し、前記凹凸部を平坦化する平坦化絶縁膜とを備え、前記平坦化絶縁膜には、母材となる絶縁材料よりも大きな屈折率を有する微粒子が含まれており、前記微粒子を含む前記平坦化絶縁膜の平均の屈折率が、前記基板の屈折率よりも大きくなるように調整されていることを特徴とする。
この構成によれば、平坦化絶縁膜が高屈折率の微粒子を含むことによって、平坦化絶縁膜の平均の屈折率が大きくなるため、従来のものに比べて、電極と平坦化絶縁膜との界面の全反射条件を緩和することができる。このため、従来、電極の内部に全反射によって閉じ込められていた光を取り出すことができるようになり、光取り出し効率の向上を図ることができる。この場合、平坦化絶縁膜と基板との屈折率は従来のものよりも大きくなるが、基板には凹凸部が設けられているため、基板と平坦化絶縁膜との界面の全反射を回避することができる。
【0005】
本発明においては、前記微粒子は、前記一方の電極よりも大きな屈折率を有するものとすることができる。このような材料としては、酸化ジルコニウム(ZrO)や酸化チタン(TiO)等の無機材料を好適に用いることができる。
この構成によれば、平坦化絶縁膜の屈折率を前記一方の電極の屈折率に近づけ、或いはこれを超えるような屈折率にすることができる。このように平坦化絶縁膜の屈折率を大きくすることで、より全反射を起こりにくくすることができる。
【0006】
本発明においては、前記微粒子が含まれた部分の前記平坦化絶縁膜の平均の屈折率は、前記一方の電極の屈折率と同等かそれ以上の屈折率となるように調整されているものとすることができる。
この構成によれば、平坦化絶縁膜と前記一方の電極との界面において全反射は生じなくなる。
【0007】
本発明においては、前記一方の電極は、表示光が出射される側の電極であるものとすることができる。
この場合、前記一方の電極は、前記平坦化絶縁膜の表面に成膜されているものとすることができる。この構成は、いわゆるボトムエミッション型の構成となる。
また、前記平坦化絶縁膜には接着層が含まれており、前記接着層を介して前記一方の電極と前記基板とが接着されているものとすることができる。この構成は、いわゆるトップエミッション型の構成となる。この構成において、前記基板は封止基板として機能することになる。
【0008】
本発明においては、前記微粒子は、前記接着層中に含まれているものとすることができる。また、前記平坦化絶縁膜にはカラーフィルタ層が含まれており、該カラーフィルタ層中に前記微粒子が含まれているものとすることができる。この場合、前記微粒子は、前記カラーフィルタ層の着色材料を兼ねるものとすることができる。
【0009】
本発明においては、前記一方の電極は、表示光が出射される側とは反対側の電極であり、前記平坦化絶縁膜と前記基板との間には、前記基板側に向けて出射された光を前記発光層側に反射する反射面が設けられているものとすることができる。この構成は、いわゆるトップエミッション型の構成となる。
【0010】
本発明のエレクトロルミネッセンス装置の製造方法は、発光層を保持する一対の電極と、前記一対の電極のうちの一方の電極が配置された基板とを備えたエレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、前記基板上に凹凸部を形成する工程と、前記凹凸部の表面に、該凹凸部を平坦化する平坦化絶縁膜を形成する工程と、前記平坦化絶縁膜の表面に前記一方の電極を配置する工程とを備え、前記平坦化絶縁膜の形成工程は、母材となる絶縁材料に該絶縁材料よりも大きな屈折率を有する微粒子を含有させ、前記母材及び前記微粒子を含む前記平坦化絶縁膜の平均の屈折率が、前記基板の屈折率よりも大きな屈折率となるように調整する工程を含むことを特徴とする。
この方法によれば、平坦化絶縁膜が高屈折率の微粒子を含むことによって、平坦化絶縁膜の平均の屈折率が大きくなるため、従来のものに比べて、電極と平坦化絶縁膜との界面の全反射条件を緩和することができる。このため、従来、電極の内部に全反射によって閉じ込められていた光を取り出すことができるようになり、光取り出し効率の向上を図ることができる。この場合、平坦化絶縁膜と基板との屈折率は従来のものよりも大きくなるが、基板には凹凸部が設けられているため、基板と平坦化絶縁膜との界面の全反射を回避することができる。
【0011】
本発明においては、前記微粒子は、前記一方の電極よりも屈折率の大きな材料からなるものとすることができる。
この方法によれば、平坦化絶縁膜の屈折率を前記一方の電極の屈折率に近づけ、或いはこれを超えるような屈折率にすることができる。このように平坦化絶縁膜の屈折率を大きくすることで、より全反射を起こりにくくすることができる。
【0012】
本発明においては、前記界面部分の前記平坦化絶縁膜の平均の屈折率が、前記一方の電極の屈折率よりも大きな屈折率となるように調整するものとすることができる。
この方法によれば、平坦化絶縁膜と前記一方の電極との界面において全反射は生じなくなる。
【0013】
本発明の電子機器は、前述した本発明のエレクトロルミネッセンス装置又は前述した本発明の製造方法により製造されたエレクトロルミネッセンス装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、光取り出し効率の高いエレクトロルミネッセンス装置を備えた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の実施の形態では、EL素子を画素として基体上に配列してなるEL装置(エレクトロルミネッセンス装置)、特に、発光層を有機発光材料によって形成した有機EL装置を例示して説明する。この有機EL装置は、例えば電子機器等の表示手段として好適に用いることができるものである。
【0015】
[第1の実施の形態]
[有機EL装置]
図1は、本発明の第1実施形態の有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
本実施形態の有機EL装置100は、発光層5から発光した光(表示光)を基板2側から取り出す、いわゆるボトムエミッション型の有機EL装置である。この有機EL装置100は、基板2の上面に、発光素子である有機EL素子10を配設してなる構成を備えている。有機EL素子10は、基板2の一方面(図1の上面)側に、第1電極8と、正孔輸送層6と、発光層5と、電子輸送層7と、第2電極9とを順に積層した構成となっている。本実施形態においては、第1電極8を陽極、第2電極9を陰極とするが、これらを逆にすることもできる。この場合、基板2側から、陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、陽極を順に積層する構造となる。なお、正孔輸送層6、発光層5および電子輸送層7は、有機機能材料からなる機能層(有機機能層)11を形成している。
【0016】
図示しないが、本実施の形態の有機EL装置はアクティブマトリクス型であり、実際には複数のデータ線と複数の走査線とが格子状に配置され、これらデータ線や走査線に区画されたマトリクス状に配置された各画素毎に、スイッチングトランジスタやドライビングトランジスタ等の駆動用TFTを介して上記の有機EL素子10が接続されている。そして、データ線や走査線を介して駆動信号が供給されると電極間に電流が流れ、有機EL素子10が発光して基板2の外面側に光が出射され、その画素が点灯する。
【0017】
本実施形態の場合、表示光を基板2側から取り出す構造であるので、基板2には、ガラス等の透光性基板が用いられる。また、陽極8には、ITO(インジウム錫酸化物)等の透光性導電膜が用いられる。一方、陰極9には、良好な光反射性を具備した導電膜、例えばAl(アルミニウム)等の高反射率の金属膜を好適に用いることができる。この場合、陰極9は、発光層5で生じた光を陽極8側へ反射する機能を有するものとなる。なお、Alの他にも、Au(金)、Ag(銀)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Ca、Mg(マグネシウム)、Sr、Yb(イッテルビウム)、Er(エルビウム)、Tb(テルビウム)、Sm(サマリウム)等の金属材料、およびこれらから選択される金属材料の薄膜を複数積層した構造とすることもできる。
【0018】
発光層5を構成し得る発光材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の高分子発光材料である、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン(PDAF)、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール(PFBT)、ポリアルキルチオフェン(PAT)や、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系などを好適に用いることができる。また、これらの発光材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0019】
正孔輸送層6は、陽極8から発光層5への電荷の注入効率を高めるとともに、発光層5内を移動する電子をブロッキングする機能を奏し、発光層内での電子と正孔との再結合確率を高める作用を奏する。この正孔輸送層6には、陽極8からの注入障壁が低く、正孔移動度の高い材料が好適に用いられる。このような材料としては、例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体など、またはそれらのドーピング体などが用いられる。具体的には、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)[商品名;バイトロン−p(Bytron-p):バイエル社製]の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液などが用いられる。
なお、必要に応じて、陰極9から発光層5への電子注入効率を高めるとともに、正孔ブロッキング機能を有する電子輸送層7を形成してもよい。この電子輸送層7は、オキサジアゾール誘導体やAlqなどの有機材料で形成することが可能である。
【0020】
ここで、本実施形態においては、基板2において陽極8が配置された側の面に凹凸部2Aが設けられている。陽極8と基板2との間には、この凹凸部2Aを平坦化する平坦化絶縁膜4が設けられており、陽極8はこの平坦化絶縁膜4の表面に配置されている。凹凸部2Aは、平坦化絶縁膜4と基板2との界面での全反射を防止すべく設けられたものである。このように凹凸部2Aが存在すると、基板2と平坦化絶縁膜4との界面での全反射条件が緩和されるため、平坦化絶縁膜4内に入射された光は、略全て基板2側から取り出されるようになる。また、平坦化絶縁膜4は、表示欠陥の原因となる電極表面の凹凸を平坦にする役割も兼ねている。すなわち、有機EL素子10では、発光層5を含めた有機機能層11の厚みが非常に薄いので、陽極8の表面に凹凸が存在すると、電極間のショートや発光むらが生じる虞がある。本実施形態では、平坦化絶縁膜4によって陽極8の表面が平坦化されるので、これらの問題は生じない。
【0021】
この平坦化絶縁膜4には、少なくとも陽極8との界面の部分に、母材となる絶縁材料4Aよりも大きな屈折率を有する微粒子3が含まれており、この微粒子3が含まれた前記界面部分の平坦化絶縁膜4の平均の屈折率nが、基板2の屈折率nよりも大きくなるように調整されている。
【0022】
一般に、有機EL装置の表示側の電極(陽極)8にはITOが用いられ、基板2にはガラス基板が用いられる。これらの屈折率は、ITOが1.95(屈折率n;550nmの波長を基準とする。以下同じ)、ガラス基板が1.54(屈折率n)であり、両者の間には大きな屈折率差が生じている。このような大きな屈折率差が存在すると、陽極8と基板2との界面で全反射が生じ易くなり、せっかく発光が生じても、そのうちの一部の光しか表示に寄与することができない。そこで、本実施形態では、陽極8と基板2との間に基板2よりも屈折率の大きな層4(屈折率n;n>n)を形成し、電極界面で生じる全反射の条件を緩和するようにしている。本実施形態の場合、平坦化絶縁膜4は、アクリル樹脂4A(屈折率:1.43)中にZrO(酸化ジルコニウム)の無機微粒子3を5wt%程度含有させた構成となっており、アクリル樹脂4Aと微粒子3とを含めた平均の屈折率nは1.8に調整されている。
【0023】
なお、母材となる絶縁材料4Aには、エポキシ樹脂(屈折率:1.42)など、アクリル樹脂以外の樹脂材料を用いることもできる。また、良好な平坦性が得られる場合には、SiO(酸化シリコン)やSiN(窒化シリコン)等の無機絶縁材料を用いることも可能である。また、微粒子3としては、TiO(酸化チタン)等の他の高屈折率材料を用いることができる。屈折率比n/nは、絶縁材料4Aの含有させる微粒子3の量によって調節することができる。
【0024】
この有機EL装置100においては、発光層5から出射した光は、陽極8から直接的に、又は陰極9で反射されて間接的に、基板2側から取り出される。陽極8と平坦化絶縁膜4との屈折率比n/nは92%であるので、これらの界面では約85%の光を平坦化絶縁膜4側に取り出すことができる。また、基板2の表面には凹凸部2Aが形成されているので、平坦化絶縁膜4の内部で全反射して外部に取り出すことができない光は、凹凸で全反射条件を外すことによって、外部に取り出すことができるようになる。さらに、微粒子3によって光が散乱されるので、光が臨界角以上の角度で平坦化絶縁膜4に入射したとしても、基板2に入射する時点ではその多くが全反射条件から外れることになり、更に光量を増やすことができる。これらの作用により、光の取り出し効率が向上し、明るい表示が可能となる。
【0025】
上記の構成を採用した場合の発光光率は15cd/Aであり、高屈折率微粒子3を混入しない従来の構成(発光光率:10cd/A)に比べて、高い発光光率が得られることが確認されている。
【0026】
[有機EL装置の製造方法]
次に、有機EL装置100の製造方法について説明する。
まず、ガラス基板等の透光性の基板2を用意し、フッ酸処理等により、基板2の表面に高さ0.01μm〜0.5μmのランダムな凹凸を多数形成する。凹凸は、フッ酸処理以外の処理により形成することもできる。これらの凹凸によって、基板2の表面に凹凸部2Aが形成される。
【0027】
次に、アクリル樹脂4Aを主体とする絶縁材料を基板2の表面に塗布し、凹凸部2Aを平坦化する平坦化絶縁膜4を形成する。アクリル樹脂4Aには、予め高屈折率材料であるZrOの微粒子3を5wt%程度混入し、平坦化絶縁膜4の平均の屈折率nが基板2の屈折率nよりも大きくなるように調整しておく。この際、陽極8との屈折率比n/nが0.8以上、より好ましくは、1以上となるように調整することが望ましい。屈折率比n/nは、微粒子3の混入量によって調整することができる。なお、微粒子3としては、TiO等の他の高屈折率材料を用いることも可能である。
【0028】
次に、平坦化絶縁膜4の表面に、スパッタ等によりITO等の透光性導電膜を成膜し、これをパターニングすることにより、陽極8を形成する。
次に、陽極8の表面に、正孔輸送層6、発光層5、電子輸送層7を順に形成する。これらの層は、蒸着法やインクジェット法等により形成することができる。インクジェット法を用いる場合には、インクの濡れ広がりを防ぐために、予めバンクと呼ばれる土手構造を陽極8の周囲に形成しておくことが望ましい。正孔輸送層6、発光層5、電子輸送層7により、有機機能層11が形成される。
【0029】
次に、この有機機能層11の表面に、スパッタ等によりAl等からなる陰極9を形成する。TFTを用いたアクティブマトリクス型の有機EL装置においては、陰極9のパターニングは不要である。このような陰極9は、各陽極8に対して共通の共通電極となる。
陰極9の表面には、必要に応じて封止部材を設けることができる。封止部材で陰極全体を封止することによって、有機EL素子10の内部に、水分や酸素等が浸入することを防止することができる。
以上により、有機EL装置100が完成する。
【0030】
[実施例]
本発明者は、本発明の効果を実証するために、従来構成の有機EL装置(比較例)と本発明の有機EL装置(実施例)とで表示の明るさを比較した。表1は、上記実施形態の構成と同じ構成の有機EL装置において、陽極8の屈折率nを一定として(屈折率n:2.0)、平坦化絶縁膜4の屈折率nを変化させて光取り出し効率をシミュレーションした結果を示している。このシミュレーションにおいては、基板2をガラス基板(屈折率n:1.54)とし、平坦化絶縁膜の母材をアクリル樹脂(屈折率:1.43)としている。また、実施例に係る有機EL装置には、高屈折率微粒子3としてZrOを混入し、比較例に係る有機EL装置には、高屈折率微粒子3を混入させない構成としている。
【0031】
【表1】

【0032】
表1からわかるように、陽極8と平坦化絶縁膜4との屈折率比が0.8以上であれば、60%以上の光を平坦化絶縁膜4側に取り出すことができる。この効率は、従来の構成と比較すると2倍以上高く、同じ光量を出力する場合には、寿命が3倍以上延びることを意味する。特に、平坦化絶縁膜の平均の屈折率nが陽極8の屈折率nと同等かそれ以上の屈折率となるように調整されている場合には(n≧n)、光は、低屈折率材料である陽極8から高屈折率材料である平坦化絶縁膜4に入射することになるため、平坦化絶縁膜4との界面では全反射は生じない。したがって、陽極8を透過した光は全て平坦化絶縁膜4に入射されることになり、光の取り出し効率は1となる。
【0033】
このように、本実施形態の有機EL装置においては、平坦化絶縁膜4として、基板2よりも高い屈折率と光散乱性とを兼ね備えた絶縁膜を用いているので、光の取り出し効率が大きく向上し、明るい表示が得られるようになる。
【0034】
[第2の実施の形態]
図2は、本発明の第2実施形態の有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
本実施形態の有機EL装置200は、発光層5から発光した光(表示光)を基板2とは反対側から取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL装置である。この有機EL装置200の基本的な構成は、第1実施形態の有機EL装置100と同じである。異なるのは、陰極9を透光性導電膜とした点と、平坦化絶縁膜4と基板2との間に、基板2側に向けて出射された光を発光層5側に反射する反射膜12を設けた点のみである。このため、第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0035】
本実施形態の場合、表示光を陰極9側から取り出す構成であるので、陰極9には、ITO等の透光性導電膜が用いられる。陽極8に関しては、その基板2側に反射膜12が設けられているので、第1実施形態と同様にITO等の透光性導電膜が用いられる。基板2としては、ガラス等の透明基板のほか、不透明基板も用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
【0036】
基板2の表面には、ランダムな凹凸が多数形成された凹凸部2Aが設けられており、この凹凸部2Aの表面には、平坦化絶縁膜4が設けられている。平坦化絶縁膜4は、第1実施形態のものと同様に、母材となる絶縁材料4A中に、これよりも大きな屈折率を有する微粒子3が含まれた構成となっている。本実施形態の場合、平坦化絶縁膜4は、エポキシ樹脂4A中にTiOの無機微粒子3を3wt%含有させた構成となっており、樹脂4Aと微粒子3とを含めた平均の屈折率nは1.8に調整されている。陽極8としては、屈折率nが2.0のITO膜を用いており、陽極8と平坦化絶縁膜4との屈折率比n/nは0.9となっている。なお、絶縁材料4Aと微粒子3の材料は適宜変更することができる。
【0037】
平坦化絶縁膜4と基板2との間には、Al(アルミニウム)やAg(銀)等からなる反射膜12が設けられている。この反射膜12は、発光層5から基板2側に出射された光を陰極9側に反射する反射面を構成する。なお、基板2自体が光反射性を有する場合、例えば基板2がアルミニウム基板等からなる場合には、光反射膜12を省略することもできる。この場合、基板2自体が反射面を構成することになる。
【0038】
この有機EL装置200においては、発光層5から基板2側に出射された光は、陽極8、平坦化絶縁膜4を透過した後、反射膜12に到達し、この反射膜12で反射されて陰極9側から取り出される。陽極8と平坦化絶縁膜4の屈折率比n/nは90%であるので、これらの界面では、約80%の光を平坦化絶縁膜4側に取り出すことができる。また、基板2の表面には凹凸部2Aが形成されているので、平坦化絶縁膜4の内部で全反射して外部に取り出すことができない光は、凹凸で全反射条件を外すことによって、外部に取り出すことができるようになる。さらに、微粒子3によって光が散乱されるので、光が臨界角以上の角度で平坦化絶縁膜4に入射したとしても、基板2に入射する時点ではその多くが全反射条件から外れることになり、更に光量を増やすことができる。これらの作用により、光の取り出し効率が向上し、明るい表示が可能となる。
【0039】
上記の構成を採用した場合の発光光率は13cd/Aであり、高屈折率微粒子3を混入しない従来の構成(発光光率:8cd/A)に比べて、高い発光光率が得られることが確認されている。
なお、本実施形態では、n<nであったが、より取り出し効率を上げるには、n≧nであることが好ましい。
【0040】
[第3の実施の形態]
図3は、本発明の第3実施形態の有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
本実施形態の有機EL装置300は、発光層5から発光した光(表示光)を基板2とは反対側から取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL装置である。この有機EL装置300において、第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0041】
有機EL装置300は、基板2の上面に、有機EL素子10を配設してなる構成を備えている。有機EL素子10は、基板2の一方面(図1の上面)側に、第1電極8と、正孔輸送層6と、発光層5と、電子輸送層7と、第2電極9とを順に積層した構成となっている。本実施形態においては、第1電極8を陽極、第2電極9を陰極とするが、これらを逆にすることもできる。この場合、基板2側から、陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、陽極を順に積層する構造となる。なお、正孔輸送層6、発光層5および電子輸送層7は、有機機能材料からなる有機機能層11を形成している。
【0042】
本実施形態の場合、表示光を陰極9側から取り出す構造であるので、陰極9には、ITO等の透光性導電膜が用いられる。一方、陽極8には、良好な光反射性を具備した導電膜、例えばAl等の高反射率の金属膜を好適に用いることができる。この場合、陽極8は、発光層5で生じた光を陰極9側へ反射する機能を有するものとなる。なお、Alの他にも、Au(金)、Ag(銀)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Ca、Mg(マグネシウム)、Sr、Yb(イッテルビウム)、Er(エルビウム)、Tb(テルビウム)、Sm(サマリウム)等の金属材料、およびこれらから選択される金属材料の薄膜を複数積層した構造とすることもできる。
【0043】
基板2としては、ガラス等の透明基板のほか、不透明基板も用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる
発光層5、正孔輸送層6、電子輸送層7については、第1実施形態と同様である。
【0044】
陰極9の表面には、接着層40を介して基板13が接着されている。接着層40は表示領域全体にベタで形成されており、この接着層40及び基板13によって有機EL素子10が封止されている。
【0045】
基板13において陰極9が配置された側の面には、凹凸部13Aが設けられている。凹凸部13Aは、接着層40と基板13との界面での全反射を防止すべく設けられたものである。このように凹凸部13Aが存在すると、基板13と接着層40との界面での全反射条件が緩和されるため、接着層40内に入射された光は、略全て基板13側から取り出されるようになる。接着層40は、凹凸部13Aを埋めて基板13の表面を平坦化しており、本発明の平坦化絶縁膜として機能する。
【0046】
接着層40には、少なくとも陰極9との界面の部分に、母材となる絶縁材料40Aよりも大きな屈折率を有する微粒子30が含まれており、この微粒子30が含まれた前記界面部分の接着層40の平均の屈折率nが、基板13の屈折率nよりも大きくなるように調整されている。本実施形態の場合、接着層40は、アクリル樹脂40A中にZrOの微粒子30を5wt%程度含有させた構成となっており、アクリル樹脂40Aと微粒子30とを含めた平均の屈折率nは1.8に調整されている。陰極9としては、屈折率nが2.0のITO膜を用いており、陰極9と接着層40との屈折率比n/nは0.9となっている。
【0047】
なお、母材となる絶縁材料40Aには、エポキシ樹脂など、アクリル樹脂以外の樹脂材料を用いることもできる。また、良好な平坦性が得られる場合には、SiOやSiN等の無機絶縁材料を用いることも可能である。また、微粒子30としては、TiO等の他の高屈折率材料を用いることができる。屈折率比n/nは、絶縁材料40Aの含有させる微粒子30の量によって調節することができる。
【0048】
この有機EL装置300においては、発光層5から出射した光は、陰極9から直接的に、又は陽極8で反射されて間接的に、基板13側から取り出される。陰極9と接着層40との屈折率比n/nは90%であるので、これらの界面では約80%の光を接着層40側に取り出すことができる。また、基板13の表面には凹凸部13Aが形成されているので、接着層40の内部で全反射して外部に取り出すことができない光は、凹凸で全反射条件を外すことによって、外部に取り出すことができるようになる。さらに、微粒子30によって光が散乱されるので、光が臨界角以上の角度で接着層40に入射したとしても、基板13に入射する時点ではその多くが全反射条件から外れることになり、更に光量を増やすことができる。これらの作用により、光の取り出し効率が向上し、明るい表示が可能となる。
【0049】
上記の構成を採用した場合の発光光率は14.5cd/Aであり、高屈折率微粒子30を混入しない従来の構成(発光光率:9cd/A)に比べて、高い発光光率が得られることが確認されている。
【0050】
[有機EL装置の製造方法]
次に、有機EL装置300の製造方法について説明する。
まず、ガラス基板等の透光性の基板13を用意し、フッ酸処理等により、基板13の表面に高さ0.01μm〜0.5μmのランダムな凹凸を多数形成する。凹凸は、フッ酸処理以外の処理により形成することもできる。これらの凹凸によって、基板13の表面に凹凸部13Aが形成される。
【0051】
次に、アクリル樹脂40Aを主体とする絶縁材料を基板2の表面に塗布し、有機EL素子10が形成された基板2と接着する。有機EL素子10は、第1実施形態と同様の手順によって形成することができる。ただし、陰極9は、光透過性を有していなければならないので、ITO等の透光性導電材料によって形成される。
【0052】
接着層40は、少なくとも有機EL素子10が配置される表示領域の全面に塗布されるようにする。アクリル樹脂40Aには、予め高屈折率材料であるZrOの微粒子30を5wt%程度混入し、接着層40の平均の屈折率nが基板13の屈折率nよりも大きくなるように調整しておく。この際、陰極9との屈折率比n/nが0.8以上、より好ましくは、1以上となるように調整することが望ましい。屈折率比n/nは、微粒子30の混入量によって調整することができる。なお、微粒子30としては、TiO等の他の高屈折率材料を用いることも可能である。
【0053】
接着層40は、流動性が高いため、基板13の凹凸部13Aを埋めるように凹凸内に隙間なく配置される。また、接着の過程で、陰極9の表面全体に広がり、陰極9側の面が平坦化される。接着層40及び基板12が陰極9上に配置されたら、接着層40を熱硬化或いは紫外線硬化等により硬化する。
以上により、有機EL素子10が基板13によって封止され、有機EL装置300が完成する。
【0054】
[第4の実施の形態]
図4は、本発明の第4実施形態の有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
本実施形態の有機EL装置400は、発光層5から発光した光(表示光)を基板2とは反対側から取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL装置である。この有機EL装置500の基本的な構成は第3実施形態の有機EL装置300と同じである。異なるのは、基板13と接着層40との間にカラーフィルタ層14を設けた点のみである。このため、第3実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0055】
本実施形態の場合、基板13と陰極9との間には、カラーフィルタ層14と接着層40とが介在されており、これらが一体となって本発明の平坦化絶縁膜を構成する。図4では、基板13の凹凸部13Aがカラーフィルタ層14のみによって平坦化されているが、凹凸部13Aは、カラーフィルタ層14と接着層40の双方で平坦化されるようにしてもよい。
接着層40は表示領域全体にベタで形成されており、この接着層40と、カラーフィルタ層14を含む基板13とによって有機EL素子10が封止されている。
【0056】
接着層40には、少なくとも陰極9との界面の部分に、母材となる絶縁材料40Aよりも大きな屈折率を有する微粒子30が含まれており、この微粒子30を含む平坦化絶縁膜の平均の屈折率が、基板13の屈折率(屈折率n:1.54)よりも大きくなるように調整されている。本実施形態の場合、接着層40は、アクリル樹脂40A中にZrOの微粒子30を7wt%程度含有させた構成となっており、アクリル樹脂40Aと微粒子30とを含めた平均の屈折率nは1.85に調整されている。陰極9としては、屈折率nが2.0のITO膜を用いており、陰極9と接着層40との屈折率比n/nは0.92となっている。また、カラーフィルタ層14の平均の屈折率nは1.81であり、接着層40との屈折率比n/nは97%となっている。なお、絶縁材料40Aと微粒子30の材料は適宜変更することができる。
【0057】
なお、カラーフィルタ層14は、母材となるアクリル樹脂等の絶縁材料中に着色材料である顔料分子等が分散された構造を有しており、基本的な構造は接着層40と同じである。このため、カラーフィルタ層14の着色材料と接着層40の微粒子30の材料とを共通化し、且つカラーフィルタ層14の絶縁材料と接着層40の絶縁材料40Aとを共通化することで、これらを一体的に形成することができる。この場合、カラーフィルタ層は、着色機能と接着機能とをそれぞれ機能負担した複数の層によって形成されることになる。
【0058】
この有機EL装置400においては、発光層5から出射した光は、陰極9から直接的に、又は陽極8で反射されて間接的に、基板13側から取り出される。陰極9と接着層40との屈折率比n/nは92%であるので、これらの界面では約85%の光を接着層40側に取り出すことができる。また、接着層40とカラーフィルタ層14との屈折率比n/nは97%であるので、これらの界面では90%以上の光をカラーフィルタ層14側に取り出すことができる。また、基板13の表面には凹凸部13Aが形成されているので、カラーフィルタ層14の内部で全反射して外部に取り出すことができない光は、凹凸で全反射条件を外すことによって、外部に取り出すことができるようになる。さらに、微粒子30によって光が散乱されるので、光が臨界角以上の角度で接着層40に入射したとしても、カラーフィルタ層14に入射する時点ではその多くが全反射条件から外れることになり、更に光量を増やすことができる。これらの作用により、光の取り出し効率が向上し、明るい表示が可能となる。
【0059】
上記の構成を採用した場合の発光光率は8.1cd/Aであり、高屈折率微粒子30を混入しない従来の構成(発光光率:5cd/A)に比べて、高い発光光率が得られることが確認されている。
なお、本実施形態では、n<n<nであったが、より取り出し効率を上げるには、n≧n≧nであることが好ましい。
【0060】
[第5の実施の形態]
図5は、本発明の第5実施形態の有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
本実施形態の有機EL装置500は、発光層5から発光した光(表示光)を基板2とは反対側から取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL装置である。この有機EL装置500の基本的な構成は第4実施形態の有機EL装置400と同じである。異なるのは、カラーフィルタ層14と接着層40との間にオーバーコート層15を設けた点のみである。このため、第4実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0061】
本実施形態の場合、基板13と陰極9との間には、カラーフィルタ層14とオーバーコート層15と接着層40とが介在されており、これらが一体となって本発明の平坦化絶縁膜を構成する。図5では、基板13の凹凸部13Aがカラーフィルタ層14のみによって平坦化されているが、凹凸部13Aは、カラーフィルタ層14とオーバーコート層15の2層、或いはカラーフィルタ層14から接着層40までの3層で平坦化されるようにしてもよい。
接着層40は表示領域全体にベタで形成されており、この接着層40と、オーバーコート層15及びカラーフィルタ層14を含む基板13とによって有機EL素子10が封止されている。
【0062】
接着層40には、少なくとも陰極9との界面の部分に、母材となる絶縁材料40Aよりも大きな屈折率を有する微粒子30が含まれており、この微粒子30を含む平坦化絶縁膜の平均の屈折率が、基板13の屈折率(屈折率n:1.54)よりも大きくなるように調整されている。本実施形態の場合、接着層40は、アクリル樹脂40A中にZrOの微粒子30を7wt%程度含有させた構成となっており、アクリル樹脂40Aと微粒子30とを含めた平均の屈折率nは1.85に調整されている。陰極9としては、屈折率nが2.0のITO膜を用いており、陰極9と接着層40との屈折率比n/nは0.92となっている。オーバーコート層15の屈折率nは接着層40の屈折率nと同じであり、屈折率比n/nは1となっている。また、カラーフィルタ層14の平均の屈折率nは1.81であり、オーバーコート層15との屈折率比n/nは97%となっている。なお、絶縁材料40Aと微粒子30の材料は適宜変更することができる。
【0063】
なお、カラーフィルタ層14は、母材となるアクリル樹脂等の絶縁材料中に着色材料である顔料分子等が分散された構造を有しており、基本的な構造は接着層40と同じである。このため、カラーフィルタ層14の着色材料と接着層40の微粒子30の材料とを共通化し、且つカラーフィルタ層14の絶縁材料と接着層40の絶縁材料40Aとを共通化することで、これらを一体的に形成することができる。また、オーバーコート層15をカラーフィルタ層14と同じ母材材料で形成すれば、カラーフィルタ層14から接着層40までの3層を一体的に形成することも可能である。これらの場合、カラーフィルタ層は、着色機能、オーバーコートとしての機能、及び接着機能をそれぞれ機能負担した複数の層によって形成されることになる。
【0064】
この有機EL装置500においては、発光層5から出射した光は、陰極9から直接的に、又は陽極8で反射されて間接的に、基板13側から取り出される。陰極9と接着層40との屈折率比n/nは92%であるので、これらの界面では約85%の光を接着層40側に取り出すことができる。また、接着層40とオーバーコート層15の屈折率は同じいであり、カラーフィルタ層14との屈折率比n/nは97%であるので、これらの界面では90%以上の光をカラーフィルタ層14側に取り出すことができる。また、基板13の表面には凹凸部13Aが形成されているので、カラーフィルタ層14の内部で全反射して外部に取り出すことができない光は、凹凸で全反射条件を外すことによって、外部に取り出すことができるようになる。さらに、微粒子30によって光が散乱されるので、光が臨界角以上の角度で接着層40に入射したとしても、カラーフィルタ層14に入射する時点ではその多くが全反射条件から外れることになり、更に光量を増やすことができる。これらの作用により、光の取り出し効率が向上し、明るい表示が可能となる。
【0065】
上記の構成を採用した場合の発光光率は8.1cd/Aであり、高屈折率微粒子30を混入しない従来の構成(発光光率:5cd/A)に比べて、高い発光光率が得られることが確認されている。
なお、本実施形態では、n<n=n<nであったが、より取り出し効率を上げるには、n≧n≧n≧nであることが好ましい。
【0066】
[電子機器]
上記実施の形態の有機EL装置を備えた電子機器の例について説明する。
図6は、携帯電話の一例を示した斜視図である。同図に示す携帯電話機1300は、複数の操作ボタン1302と、受話口1303と、送話口1304と、先の実施形態の有機EL装置からなる表示部1301とを備えている。この携帯電話機1300によれば、上記実施の形態の有機EL装置を備えているので、表示品位に優れ、明るい画面の有機EL表示部を備えた電子機器を実現することができる。
なお、本発明における有機EL装置を備えた電子機器としては、上記のものに限らず、他に例えば、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、テレビ、携帯用テレビ、ビューファインダ型・モニタ直視型のビデオテープレコーダ、PDA、携帯用ゲーム機、ページャ、電子手帳、電卓、時計、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器などを挙げることができる。また、本発明における有機EL装置を備えた電子機器として、車載用オーディオ機器や自動車用計器、カーナビゲーション装置等の車載用ディスプレイを挙げることもできる。さらに、前記有機EL装置は、ラインプリンタの露光手段等、表示装置以外の電子機器にも広く適用可能である。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。また、上記の実施形態の構成は一例であり、これらの構成を必要に応じて組み合わせることも可能である。例えば、第2実施形態の構成と、第3実施形態〜第5実施形態の構成とを組み合わせることで、陽極8と陰極9の双方からの光取り出し効率が向上し、より明るい表示を実現可能となる。また、上記実施形態では、発光層に有機発光材料を用いた有機EL装置を例に挙げて説明したが、発光層を無機材料を用いた無機EL装置に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
【図5】第5実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す断面図である。
【図6】上記有機EL装置を備えた電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
2…基板、2A…凹凸部、3…微粒子、4…平坦化絶縁膜、4A…絶縁材料、5…発光層、8…陽極(第1電極)、9…陰極(第2電極)、12…反射膜、13…基板、13A…凹凸部、14…カラーフィルタ層、30…微粒子、40…接着層、40A…絶縁材料、1300…携帯電話機(電子機器)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を保持する一対の電極と、
前記一対の電極のうちの一方の電極が配置された基板と、
前記基板において前記一方の電極が配置された側の面に設けられた凹凸部と、
前記一方の電極と前記基板との間に介在し、前記凹凸部を平坦化する平坦化絶縁膜とを備え、
前記平坦化絶縁膜には、母材となる絶縁材料よりも大きな屈折率を有する微粒子が含まれており、前記微粒子を含む前記平坦化絶縁膜の平均の屈折率が、前記基板の屈折率よりも大きくなるように調整されていることを特徴とする、エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記微粒子は、前記一方の電極よりも大きな屈折率を有することを特徴とする、請求項1記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記微粒子が含まれた部分の前記平坦化絶縁膜の平均の屈折率は、前記一方の電極の屈折率と同等かそれ以上の屈折率となるように調整されていることを特徴とする、請求項2記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記一方の電極は、表示光が出射される側の電極であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
前記一方の電極は、前記平坦化絶縁膜の表面に成膜されていることを特徴とする、請求項4記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
前記平坦化絶縁膜には接着層が含まれており、前記接着層を介して前記一方の電極と前記基板とが接着されていることを特徴とする、請求項4記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
前記微粒子は、前記接着層中に含まれていることを特徴とする、請求項6記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項8】
前記平坦化絶縁膜にはカラーフィルタ層が含まれており、該カラーフィルタ層中に前記微粒子が含まれていることを特徴とする、請求項5又は6記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項9】
前記微粒子は、前記カラーフィルタ層の着色材料を兼ねることを特徴とする、請求項8記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項10】
前記一方の電極は、表示光が出射される側とは反対側の電極であり、前記平坦化絶縁膜と前記基板との間には、前記基板側に向けて出射された光を前記発光層側に反射する反射面が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項11】
発光層を保持する一対の電極と、前記一対の電極のうちの一方の電極が配置された基板とを備えたエレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、
前記基板上に凹凸部を形成する工程と、
前記凹凸部の表面に、該凹凸部を平坦化する平坦化絶縁膜を形成する工程と、
前記平坦化絶縁膜の表面に前記一方の電極を配置する工程とを備え、
前記平坦化絶縁膜の形成工程は、母材となる絶縁材料に該絶縁材料よりも大きな屈折率を有する微粒子を含有させ、前記母材及び前記微粒子を含む前記平坦化絶縁膜の平均の屈折率が、前記基板の屈折率よりも大きな屈折率となるように調整する工程を含むことを特徴とする、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項12】
前記微粒子は、前記一方の電極よりも屈折率の大きな材料からなることを特徴とする、請求項11記載のエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項13】
前記平坦化絶縁膜の平均の屈折率が、前記一方の電極の屈折率よりも大きな屈折率となるように調整することを特徴とする、請求項12記載のエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかの項に記載のエレクトロルミネッセンス装置又は請求項11〜13のいずれかの項に記載の製造方法により製造されたエレクトロルミネッセンス装置を備えたことを特徴とする、電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−294491(P2006−294491A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115509(P2005−115509)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】