説明

エレクトロルミネッセント・デバイスのための有機素子

カソードとアノードとを含み、そして該カソードと該アノードとの間に、式(I):


(上記式中:
Ar1、各Ar2、及びAr3〜Ar7は、独立して選択されるアリール基又はヘテロアリール基であり、該アリール基又はヘテロアリール基は追加の縮合環を含有することができ、但し2つのアリール環又はヘテロアリール環は結合されていてもよく;そして
nは1、2又は3である)
によって表される発光成分を含む発光層を有する有機エレクトロルミネッセント・デバイス。このデバイスは、特に青色又は青緑色領域において、望ましい色座標を有する良好な発光効率を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光効率が改善された有機発光ダイオード(OLED)エレクトロルミネッセント(EL)デバイスであって、特定の基を介して末端トリアリールアミノ基に結合された1,2-二置換型エチレン核を含有する所定の発光ドーパントを含む発光層を含むデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセント(EL)デバイスは20年以上前から知られてはいるものの、その性能の限界が、多くの望ましい用途を阻んでいる。最も単純な形態の場合、有機ELデバイスは、正孔注入のためのアノードと、電子注入のためのカソードと、発光をもたらす電荷再結合を支援するためにこれらの電極間にサンドイッチされた有機媒体とから成る。これらのデバイスは一般に、有機発光ダイオード、又はOLEDとも呼ばれる。初期の有機ELデバイスの代表は、1965年3月9日付けで発行された米国特許第3,172,862号明細書(Gurnee他);1965年3月9日付けで発行された米国特許第3,173,050号明細書(Gurnee他);Dresner「Double Injection Electroluminescence in Anthracene(アントラセンにおけるダブル注入エレクトロルミネッセンス)」、RCA Review、第30巻、第322-334頁、1969年;及び1973年1月9日付けで発行された米国特許第3,710,167号明細書(Dresner)である。通常の場合には多環式芳香族炭化水素から成るこれらのデバイスにおける有機層は、極めて厚かった(1 μmを著しく上回る)。その結果、作業電圧が極めて高く、しばしば100 Vを上回った。
【0003】
最近の有機ELデバイスは、アノードとカソードとの間の極めて薄い層(例えば<1.0 μm)から成る有機EL素子を含む。本明細書では、「有機EL素子」は、アノードとカソードとの間の層を含む。厚さを小さくすることにより、有機層の抵抗を低下させ、そして、著しく低い電圧で動作するデバイスを実現した。米国特許第4,356,429号明細書に最初に記載された、基本的な二層ELデバイス構造の場合、アノードに隣接するEL素子から成る一方の有機層は、正孔を輸送するように具体的に選択され、従ってこれは正孔輸送層と呼ばれ、また、他方の有機層は、電子を輸送するように具体的に選択され、電子輸送層と呼ばれる。有機EL素子内部で、注入された正孔及び電子を再結合する結果、効率的なエレクトロルミネッセンスが生じる。
【0004】
三層有機ELデバイスも提案されている。三層有機ELデバイスは、正孔輸送層と電子輸送層との間に、有機発光層(LEL)、例えばTang他(J. Applied Physics、65、第3610-3616頁、(1989))に開示されている層を含有している。発光層は一般に、ドーパントとしても知られるゲスト材料でドープされたホスト材料から成っている。さらに、米国特許第4,769,292号明細書には、四層EL素子が提案されている。この四層EL素子は、正孔注入層(HIL)と、正孔輸送層(HTL)と、発光層(LEL)と、電子輸送/注入層(ETL)とを含む。これらの構造は、デバイス効率を改善した。
【0005】
これらの初期の発明以来、とりわけ米国特許第5,061,569号、同第5,409,783号、同第5,554,450号、同第5,593,788号、同第5,683,823号、同第5,908,581号、同第5,928,802号、同第6,020,078号、及び同第6,208,077号の各明細書に開示されているように、デバイス材料をさらに改善した結果、色、安定性、発光効率、及び製造可能性などのような特性の性能が改善された。
【0006】
白色発光エレクトロルミネッセント(EL)層を使用することにより、多色デバイスを形成することができる。各画素を、カラーフィルター・アレイ(CFA)の一部としてのカラーフィルター素子とカップリングすることにより、画素化多色ディスプレイが達成される。有機EL層は全ての画素にとって共通であり、そして観察者によって知覚される最終的な色は、その画素の対応カラーフィルター素子によって決定付けられる。従って、有機EL層のいかなるパターン化も必要とすることなしに、多色デバイス又はRGBデバイスを製造することができる。白色CFA上側発光型デバイスの一例が米国特許第6,392,340号明細書に示されている。
【0007】
白色光生成OLEDデバイスは明るく、効率的であるべきであり、また一般には、国際照明委員会(Commission International d'Eclairage(CIE))色度座標が約(0.33, 0.33)であるべきである。いずれの事例においても、この開示内容によれば、白色光は、白色を有するものとして使用者によって知覚される光である。下記特許明細書及び刊行物は、正孔輸送層と、有機ルミネッセント層を含み、電極対の間に挟まれている、白色光を生成することができる有機OLEDデバイスの製造を開示している。
【0008】
Shi(米国特許第5,683,823号明細書)によって以前に報告されている白色光生成OLEDデバイスの場合、ルミネッセント層は、ホスト発光材料中に均一に分散された赤色及び青色発光材料を含む。Sato他によって日本国特許第7,142,169号明細書において開示された、白色を発光させることができるOLEDデバイスは、正孔輸送層の次に青色発光層を形成し、続いて、赤色蛍光層を含有する領域を有する緑色発光層を形成することにより製造される。
【0009】
Kido他は、Science, 267, 1332(1995)及びApplied Physics Letters, 64, 815 (1994)において、白色光生成OLEDデバイスについて報告している。このデバイスの場合、それぞれが青色、緑色、赤色を発光する、種々異なる担体輸送特性を有する3つの発光層を使用することにより、白色光を発生させる。Littman他によって米国特許第5,405,709号明細書に開示された別の白色発光デバイスは、正孔−電子再結合に応答して白色を発光することができ、そして、青みがかった緑色から赤色までの可視光範囲において蛍光を含む。より最近では、Deshpande他が、Applied Physics Letters, 75, 888 (1999)において、正孔ブロック層によって分離された赤色、青色及び緑色ルミネッセント層を使用した白色OLEDデバイスを発表した。
【0010】
これらの開発にもかかわらず、高い色純度及び長い寿命と組み合わされた高輝度効率を提供する有機ELデバイス成分、例えばドーパントと呼ばれることのある発光材料が依然として必要である。具体的には、種々の用途のために発光材料の発光波長を調節可能であることが必要である。例えば、効率的な発光青色ドーパントは依然として極めて重要である。ペリレン核を含有する発光青色ドーパント(S.A. Van Slyke, 米国特許第5,151,629号明細書)が、長年にわたって商業的に採用されている。例えば、一つにはその望ましいCIE色座標を理由として、ペリレン誘導体、(2,5,8,11)-テトラ-tert-ブチルペリレン(TBP)が商業的に使用されている(特開平09−241629号公報)。ペリレンに加えて、1つ又は2つ以上のスチルベン構造を含有する発光青色ドーパントも記載されている(米国特許第5,121,029号、欧州特許第373,582号、米国特許第2,651,237号、同第2,670,121号、同第2,774,654号、同第2,777,179号、同第2,809,473号の各明細書)。特開2004−196716号公報に記載されたスチルベン化合物は、三置換型二重結合を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決するべき課題は、特に青色又は青緑色領域において、望ましい色座標を有する良好な発光効率を示す、ELデバイスのための発光材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、 カソードとアノードとを含み、そして該カソードと該アノードとの間に、式(I):
【0013】
【化1】

【0014】
(上記式中:
Ar1〜Ar6は、独立して選択されるアリール基又はヘテロアリール基であり;
Ar7はフェニル又は縮合環アリール基又はヘテロアリール基であり;
但し2つのアリール環又はヘテロアリール環は結合されていてもよく;
nは1、2又は3である)
によって表される発光成分を含む発光層を有する有機エレクトロルミネッセント・デバイスを提供する。
【0015】
Ar1〜Ar6は独立して選択されるアリール基であり、そしてそれぞれ、フェニル基、縮合芳香環、例えばナフチル、アントラニル、及びフェナントリル、複素環式芳香環(1つ又は2つ以上の炭素原子が窒素、酸素又は硫黄によって置換されている)、及び一価結合された芳香環、例えばビフェニルを表すことができ、そしてAr1〜Ar6は置換されていないか、又は水素を担持する環位置においてさらに置換されていてよい。加えて、Ar3及びAr4は、直接に結合されるか又は追加の原子を介して結合されることにより、炭素環又は複素環を形成することができる。Ar5及びAr6は、直接に結合されるか又は追加の原子を介して結合されることにより、炭素環又は複素環を形成することができる。Ar7は、フェニル、又は縮合環芳香族炭素環基又は複素環基である。Ar7は、置換されていないか、又は、水素を担持する環位置においてさらに置換されていてもよい。
【0016】
本発明はまた、式(I)に基づく組成物、及び照明デバイス又はこのデバイスを内蔵するデバイス、並びにこのデバイスを使用した光生成方法を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明のデバイスは、特に青色又は青緑色領域において、望ましい色座標を有する良好な発光効率を示す、ELデバイスのための発光材料を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は上記に要約されている。本発明のエレクトロルミネッセント・デバイスは、カソード、アノード、電荷注入層(必要ならば)、電荷輸送層、及び発光層(LEL)を含む多層デバイスとなることができる。発光層は、ホスト及び1種以上の発光材料を含む。望ましくは、発光材料は式(I)の青色又は青緑色発光ドーパントを含む。
【0019】
【化2】

【0020】
式(Ia)において、Ar1、各Ar2、及びAr3〜Ar6は、独立して選択されるアリール基を表し、そしてそれぞれ、フェニル基、縮合芳香環、例えばナフチル、アントラニル、及びフェナントリル、複素環式芳香環(例えばピリジル)(1つ又は2つ以上の炭素原子が窒素、酸素又は硫黄によって置換されている)、及び一価結合された芳香環、例えばビフェニルを表すことができ、そしてAr1〜Ar6は、置換されていないか、又は、水素を担持する環位置においてさらに置換されていてよい。Ar1〜Ar6に対応する望ましい例が、表Aに示されている。表AにおいてR1〜R3は、同じか又は異なっていてよい1つ又は2つ以上の置換基を表し、個別に水素又は1つもしくは2つ以上の置換基を表す。例えば、置換基は、アルキル基(例えばメチル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アリール基(例えばフェニル)、ハロゲン(例えば塩素)、又はアリールオキシ基(例えばフェノキシ)であることが可能である。加えて、Ar3及びAr4は、直接に結合されるか又は追加の原子を介して結合されることにより、炭素環又は複素環を形成することができ、そしてAr5及びAr6は、直接に結合されるか又は追加の原子を介して結合されることにより、炭素環又は複素環を形成することができる。Ar7は、フェニル基、又は縮合芳香族基(例えばナフチル、アントラニル、又はフェナントリル)又は複素芳香族環(例えばピリジル)(1つ又は2つ以上の炭素原子が窒素、酸素又は硫黄によって置換されている)である。
【0021】
式(I)に示された二重結合は二置換されるだけである。この二重結合がさらに置換されると、蛍光量子収量の減少を招くことがある。このことは、OLEDデバイス内の発光材料として使用すると効率を損なうおそれがあるので望ましくない。
【0022】
望ましい一つの態様では、Ar1、各Ar2、及びAr3〜Ar7は炭化水素であり、従ってヘテロ原子を含有しない。本発明の別の好適な形態において、少なくとも1つのAr2は、二価ヘテロアリール基、例えば含窒素ヘテロアリール基を表し、含窒素ヘテロアリール基は追加の縮合環を含有していてよい。例えば、少なくとも1つのAr2は、ピリジンジイル、キノリンジイル基、ベンゾチアゾールジイル基、ベンゾオキサゾールジイル基、又はチオフェンジイル基であってよい。
【0023】
式(I)において、nは1、2又は3である。好適な一つの態様では、nは1又は2である。
【0024】
本発明の望ましい一つの態様では、発光青色又は青緑色ドーパントは、式(II)によって表される:
【0025】
【化3】

【0026】
上記式中、Ar1〜Ar6は独立して選択されるアリール基であり、そしてそれぞれ、フェニル基、縮合芳香環、例えばナフチル、アントラリル、及びフェナントリル、複素環式芳香環(1つ又は2つ以上の炭素原子が窒素、酸素又は硫黄によって置換されている)、及び一価結合された芳香環、例えばビフェニルを表すことができ、そしてAr1〜Ar7は、置換されていないか、又は、水素を担持する環位置においてさらに置換されていてよい。加えて、Ar3及びAr4は、直接に結合されるか又は追加の原子を介して結合されることにより、炭素環又は複素環を形成することができる。Ar5及びAr6は、直接に結合されるか又は追加の原子を介して結合されることにより、炭素環又は複素環を形成することができる。Ar7は、フェニル、又は縮合環芳香族炭素環基又は複素環基である。Ar7は、置換されていないか、又は、水素を担持する環位置においてさらに置換されていてよい。
【0027】
Ar1〜Ar6に対応する望ましい例が、表Aに示されている。表AにおいてR1〜R3は、1つ又は2つ以上の置換基を表し、同じであるか又は異なっていてよく、そして個別に水素、別の原子に対する結合、又は1つ又は2つ以上の置換基を表す。例えば、置換基は、アルキル基(例えばメチル基又はt-ブチル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アリール基(例えばフェニル)、ハロゲン(例えば塩素)、又はアリールオキシ基(例えばフェノキシ)であることが可能である。加えて、Ar3及びAr4は、直接に結合されるか又は追加の原子を介して結合されることにより、炭素環又は複素環を形成することができ、そしてAr5及びAr6は、直接に結合されるか又は追加の原子を介して結合されることにより、炭素環又は複素環を形成することができる。Ar7に対応する望ましい例が、表Bに示されている。表BにおいてR1〜R3は、1つ又は2つ以上の置換基を表し、同じであるか又は異なっていてよく、そして個別に水素、又は1つ又は2つ以上の置換基を表す。例えば、置換基は、アルキル基(例えばメチル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アリール基(例えばフェニル)、ハロゲン(例えば塩素)、又はアリールオキシ基(例えばフェノキシ)であることが可能である。
【0028】
表A:式(I)及び式(II)における、独立して選択されるアリール基の例
【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
上記式中、R1〜R3は、1つ又は2つ以上の置換基を表し、そして個別に水素、又は1つ又は2つ以上の置換基を表す。置換基の一例としては、アルキル基(例えばメチル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アリール基(例えばフェニル)、ハロゲン(例えば塩素)、又はアリールオキシ基(例えばフェノキシ)が挙げられる。
【0032】
表B:式(I)及び式(II)における、Ar7に対応する独立して選択されるアリール基の例
【0033】
【化6】

【0034】
上記式中、R1〜R3は、1つ又は2つ以上の置換基を表し、そして個別に水素、又は1つ又は2つ以上の置換基を表す。置換基の一例としては、アルキル基(例えばメチル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アミン基(例えばジメチルアミノ又はジフェニルアミノ)、シアノ基、アリール基 (例えばフェニル)、ハロゲン(例えばフッ素)、複素環基(例えばベンゾチアゾール)、又はアリールオキシ基(例えばフェノキシ)が挙げられる。
【0035】
一つの態様では、Ar及びR基は、昇華温度204℃未満の化合物を提供するように選択される。
【0036】
本発明の特に望ましい態様では、発光層は式(III)の青色又は青緑色ドーパントを含む。
【0037】
【化7】

【0038】
上記式中、R1〜R3は、1つ又は2つ以上の置換基を表し、そして個別に水素、又は1つ又は2つ以上の置換基、例えばアルキル基(例えばメチル基又はtert-ブチル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アミノ基(例えばジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、及びジメチルアミノ)、アリール基 (例えば置換型又は無置換型フェニル)、ハロゲン基(例えばフルオロ)、フッ素化基(例えばトリフルオロメチル)、シアノ基、複素環基(例えばベンゾチアゾール)、又はアリールオキシ基(例えばフェノキシ)を表す。
【0039】
本明細書中に使用されている青又は青緑色は、デバイス内のドーパントが、これが発光材料だけを構成する場合、1931 CIE x座標0.005〜0.21と、1931 CIE y座標0.005〜0.36とを発光することを意味する。
【0040】
本発明の発光ドーパントの特に有用な態様が、化合物(I-1)〜(I-27)に示されている。
【0041】
【化8】

【0042】
【化9】

【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
【化12】

【0046】
【化13】

【0047】
【化14】

【0048】
【化15】

【0049】
【化16】

【0050】
好適には、デバイスの発光層は、ホストと1種又は2種以上の発光材料とを含む。発光材料は、ホストの最大10wt %、より典型的には0.1〜10.0 wt%、そして望ましくは2〜6 wt%の量で存在する。1種以上の発光材料は好適には、式(1)又は式(2)によって表されたドーパントである。
【0051】
望ましいホストは、キレート型オキシノイド化合物又はアントラセン化合物に基づいたホストである。望ましい一つの態様では、ホストは式(IV)によって表される。
【0052】
【化17】

【0053】
式(IV)において、W1〜W10は独立して、水素、又は独立して選択される置換基を表し、但し、2つの隣接する置換基が結合して環を形成することができるものとする。好適な一つの態様では、W9及びW10は独立してナフチル基を表す。別の望ましい態様では、W9及びW10はナフチル基及びビフェニル基を表す。
【0054】
好適なホスト材料はまた、国際公開第2004/018587号パンフレット(不斉アントラセン)、特開2004-059535号公報(不斉アントラセン)、及び国際公開第2003/087023号パンフレットに記載されたアントラセン構造を含む。
【0055】
ホストの具体例は、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン、2-tert-ブチル-9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン、9-(4-ビフェニル)-10-(2-ナフチル)アントラセン、及び9-(4-ビフェニル)-10-(1-ナフチル)アントラセンである。好ましくは、ホストは、これがドーパントよりも短い波長の光を吸収し、そしてホストの発光スペクトルがドーパントの吸収スペクトルとオーバラップするように選択される。
【0056】
本発明において有用なドーパントの態様は、広範囲の色相を提供することができる。本発明において特に有用なドーパントの態様は、青色相又は青緑色相を有する、放射された光を提供する。別の好ましい態様では、本発明に有用なドーパントは、白色を発光するエレクトロルミネッセント・デバイスにおいて使用される。
【0057】
本発明の態様は、改善された発光効率を提供するだけでなく、CIE色座標及びスペクトル曲線の形状及び位置によって証明されるような、望ましい青色相又は青緑色相をも提供する。
【0058】
特に具体的に断りのない限り、「置換型」又は「置換基」という用語の使用は、任意の基又は水素以外の原子を意味する。加えて、「基」という用語が使用されるときには、置換基が置換可能な水素を含有する場合には、置換基の無置換形態だけでなく、本明細書に言及された任意の置換基でさらに置換されたその形態をも、その置換基がデバイス有用性に必要な特性を破壊しない限り、含むものとする。好適には、置換基はハロゲンであってよく、又は、炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、又は硫黄の原子によって分子の残りに結合することができる。置換基は例えば、ハロゲン、例えばクロロ、ブロモ又はフルオロ;ニトロ;ヒドロキシル;シアノ;カルボキシル;又はさらに置換可能な基、例えば、直鎖状又は分枝状鎖又は環状アルキルを含むアルキル、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、t-ブチル、3-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)プロピル、及びテトラデシル;アルケニル、例えばエチレン、2-ブテン;アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2-メトキシエトキシ、sec-ブトキシ、ヘキシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エトキシ、及び2-ドデシルオキシエトキシ;アリール、例えばフェニル、4-t-ブチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、ナフチル;アリールオキシ、例えばフェノキシ、2-メチルフェノキシ、アルファ-又はベータ-ナフチルオキシ、及び4-トリルオキシ;カルボンアミド、例えばアセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、アルファ-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)アセトアミド、アルファ-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、アルファ-(3-ペンタデシルフェノキシ)-ヘキサンアミド、アルファ-(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェノキシ)-テトラデカンアミド、2-オキソ-ピロリジン-1-イル、2-オキソ-5-テトラデシルピロリン-1-イル、N-メチルテトラデカンアミド、N-スクシニミド、N-フタリミド、2,5-ジオキソ-1-オキサゾリジニル、3-ドデシル-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリル、及びN-アセチル-ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4-ジ-t-ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5-(ジ-t-ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p-ドデシル-フェニルカルボニルアミノ、p-トリルカルボニルアミノ、N-メチルウレイド、N,N-ジメチルウレイド、N-メチル-N-ドデシルウレイド、N-ヘキサデシルウレイド、N,N-ジオクタデシルウレイド、N,N-ジオクチル-N'-エチルウレイド、N-フェニルウレイド、N,N-ジフェニルウレイド、N-フェニル-N-p-トリルウレイド、N-(m-ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N-(2,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-N'-エチルウレイド、及びt-ブチルカルボンアミド;スルホンアミド、例えばメチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p-トリルスルホンアミド、p-ドデシルベンゼンスルホンアミド、N-メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N-ジプロピル-スルファモイルアミノ、及びヘキサデシルスルホンアミド;スルファモイル、例えばN-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジプロピルスルファモイル、N-ヘキサデシルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N-[3-(ドデシルオキシ)プロピル]-スルファモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N-メチル-N-テトラデシルスルファモイル、及びN-ドデシルスルファモイル;カルバモイル、例えばN-メチルカルバモイル、N,N-ジブチルカルバモイル、N-オクタデシルカルバモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N-メチル-N-テトラデシルカルバモイル、及びN,N-ジオクチルカルバモイル;アシル、例えばアセチル、(2,4-ジ-t-アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p-ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3-ペンタデシルオキシカルボニル、及びドデシルオキシカルボニル;スルホニル、例えばメトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2-エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2-エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4-ノニルフェニルスルホニル、及びp-トリルスルホニル;スルホニルオキシ、例えばドデシルスルホニルオキシ、及びヘキサデシルスルホニルオキシ;スルフィニル、例えばメチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2-エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4-ノニルフェニルスルフィニル、及びp-トリルスルフィニル;チオ、例えばエチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2-ブトキシ-5-t-オクチルフェニルチオ、及びp-トリルチオ;アシルオキシ、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p-ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N-フェニルカルバモイルオキシ、N-エチルカルバモイルオキシ、及びシクロヘキシルカルボニルオキシ;アミン、例えばフェニルアニリノ、2-クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミン;イミノ、例えば1(N-フェニルイミド)エチル、N-スクシニミド又は3-ベンジルヒダントイニル;ホスフェート、例えばジメチルホスフェート及びエチルブチルホスフェート;ホスフィット、例えばジエチル及びジヘキシルホスフィット;複素環基、複素環式オキシ基又は複素環式チオ基(これらのうちのそれぞれは置換型であってよく、そして炭素原子と、酸素、窒素、及び硫黄を含む群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とから成る3〜7員複素環、例えば2-フリル、2-チエニル、2-ベンズイミダゾリルオキシ又は2-ベンゾチアゾリルを含有する);第四アンモニウム、例えばトリエチルアンモニウム;及びシリルオキシ、例えばトリメチルシリルオキシであってよい。
【0059】
所望の場合には、置換基はそれら自体、記載の置換基と1回又は2回以上置換することができる。使用される具体的な置換基は、特定用途にとって所望の特性を得るように、当業者によって選択することができ、そして、例えば電子求引基、電子供与基、及び立体基を含むことができる。分子が2つ又は3つ以上の置換基を有することができるときには、置換基は結合することにより、特に断りのない限り縮合環のような環を形成することができる。一般に、上記基及びこれらの置換基は、炭素原子数が最大48、典型的には1〜36、そして普通は24未満のものを含むことができるが、これよりも多い数も、選択された具体的な置換基いかんでは可能である。
【0060】
一般的なデバイス構成
本発明は、小分子材料、オリゴマー材料、ポリマー材料、又はこれらの組み合わせを使用する多くのELデバイス形態に採用することができる。これらは、単一のアノード及びカソードを含む極めて単純な構造から、より複雑なデバイス、例えば画素を形成するためのアノード及びカソードの直交アレイから成るパッシブマトリックス・ディスプレイ、及び各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)で個々に制御されるアクティブマトリックス・ディスプレイまでを含む。
【0061】
本発明をうまく実施することができる数多くの有機層形態がある。OLEDの必須要件は、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に配置された有機発光層とである。後でより詳しく説明するように、追加の層を採用することができる。
【0062】
小分子デバイスにとって特に有用である、本発明による典型的な構造が図1に示されており、これは基板101と、アノード103と、正孔注入層105と、正孔輸送層107と、発光層109と、電子輸送層111と、カソード113とから成っている。これらの層に関して、より詳細に以下に説明する。なお、別の態様としてカソード113に隣接して基板101を配置することもでき、或いは、基板101がアノード103又はカソード113を実際に構成することもできることに留意されたい。アノード103とカソード113との間の有機層は、便宜上有機EL素子と呼ばれる。また、有機層の総複合厚は、望ましくは500 nm未満である。デバイスが燐光発生材料を含む場合、発光層と電子輸送層との間に配置された正孔ブロック層が存在してよい。
【0063】
OLEDのアノード103及びカソード113は、電気的な導体160を介して電圧/電流源150に接続される。OLEDは、アノード103とカソード113との間に電位を加えて、アノード103がカソード113よりも正の電位であるようにすることにより動作される。正孔がアノード103から有機EL素子内に注入され、そして電子がカソード113で有機EL素子内に注入される。OLEDがACモードで動作されると、デバイス安定性を高めることができることがある。ACモードでは、ACサイクル内の所定の時間にわたって、電位バイアスが反転され、電流が流れない。AC駆動型OLEDの一例が米国特許第5,552,678号明細書に記載されている。
【0064】
基板
本発明のOLEDデバイスは、典型的には、支持基板101の上に設けられる。この場合、カソード113又はアノード103は基板と接触状態にあることが可能である。基板101と接触する電極は、便宜上、下側電極と呼ばれる。従来、下側電極はアノード103であるが、しかし本発明はそのような形態には限定されない。基板101は、所期発光方向に応じて、光透過性又は不透明であってよい。光透過性は、基板101を通してEL発光を見るのに望ましい。このような事例において、透明ガラス又はプラスチックが一般に採用される。基板101は、複数の材料層を含む複雑な構造であり得る。これは典型的には、OLED層の下側にTFTが設けられているアクティブ・マトリックス基板の場合に当てはまる。基板101は、少なくとも発光画素化領域において、概ね透明な材料、例えばガラス又はポリマーから成ることがまだ必要である。EL発光が上側電極を通して見られる用途の場合には、下側支持体の透過性は重要ではなく、従って、下側支持体は光透過性、光吸収性、又は光反射性であることが可能である。この事例に使用するための基板の一例としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミックス、及び回路基板が挙げられる。やはりこの場合にも、基板101は、アクティブ・マトリックスTFTデザインに見いだされるような複数の材料層を含む複雑な構造であってよい。これらのデバイス形態において光透明上側電極を設けることが必要である。
【0065】
アノード
エレクトロルミネセント発光(EL)がアノードを通して見られる場合、アノード103は当該発光に対して透明又は実質的に透明であるのがよい。本発明において使用される共通の透明アノード材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、及び酸化スズであるが、しかしアルミニウム又はインジウムでドープされた酸化亜鉛、酸化マグネシウムインジウム、及び酸化ニッケルタングステンを含む他の金属酸化物も働くことができる。これらの酸化物に加えて、金属窒化物、例えば窒化ガリウム、及び金属セレン化物、例えばセレン化亜鉛、及び硫化金属、例えば硫化亜鉛をアノード103として使用することができる。EL発光がカソード113を通してのみ見られる用途の場合、アノード103の透過性は重要ではなく、透明、不透明又は反射性の任意の導電性材料を使用することができる。この用途のための導体の一例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、及び白金が挙げられる。透過性又はその他の典型的なアノード材料の作業機能は4.1 eV以上である。望ましいアノード材料が、任意の好適な手段、例えば蒸発、スパッタリング、化学気相堆積、又は電気化学手段によって一般に堆積される。よく知られたフォトリソグラフィ法を用いてアノードをパターン化することができる。任意選択的に、他の層の適用前にアノードを研磨して表面粗さを低減することにより、短絡を最小限にするか又は反射率を高めることができる。
【0066】
カソード
発光がアノード103を通してのみ見られる場合、本発明において使用されるカソード113は、ほぼいずれの導電性材料からも構成することができる。望ましい材料は、下側の有機層との良好な接触を保証するための良好な膜形成特性を有し、低い電圧における電子注入を促進し、そして良好な安定性を有する。有用なカソード材料はしばしば低作業機能材料(<4.0 eV)又は金属合金を含有する。1つの有用なカソード材料は、Mg:Ag合金から成る。銀のパーセンテージは、米国特許第4,885,221号明細書に記載されているように、1〜20 %である。別の好適なクラスのカソード材料は、カソードと薄い電子注入層(EIL)とを含む二層を含む。電子注入層は、有機層(例えば電気輸送層(ETL))と接触しており、カソードは、より厚い導電性金属層でキャップされている。この場合、EILは好ましくは、低作業機能材料又は金属塩を含み、そしてもしこのようなものを含むならば、前記のより厚いキャップ層は低作業機能を有する必要はない。このような1つのカソードは、米国特許第5,677,572号明細書に記載されているように、LiF薄層と、これに続くより厚いAl層とから成る。アルカリ金属でドープされたETL材料、例えばLiドープ型Alqが他の有用なEIL例である。他の有用なカソード材料セットの一例としては、米国特許第5,059,861号;同第5,059,862号;及び同第6,140,763号の各明細書に開示されているものが挙げられる。
【0067】
発光がカソードを通して見られる場合、カソード113は透明又はほとんど透明でなければならない。このような用途の場合、金属は薄くなければならず、或いは、透明な導電性酸化物、又はこれらの材料の組み合わせを使用しなければならない。米国特許第4,885,211号、同第5,247,190号、日本国特許第3,234,963号、米国特許第5,703,436号、同第5,608,287号、同第5,837,391号、同第5,677,572号、同第5,776,622号、同第5,776,623号、同第5,714,838号、同第5,969,474号、同第5,739,545号、同第5,981,306号、同第6,137,223号、同第6,140,763号、同第6,172,459号、欧州特許第1 076 368号、米国特許第6,278,236号、及び同第6,284,3936号の各明細書に、光学的に透明なカソードがより詳細に記載されている。任意の好適な方法、例えば蒸発、スパッタリング、又は化学気相堆積によって、カソード材料が典型的には堆積される。必要な場合には、例えばスルーマスク堆積、米国特許第5,276,380号明細書及び欧州特許0 732 868号明細書に記載されたインテグラル・シャドー・マスキング、レーザー・アブレーション、及び選択的化学気相堆積を含むよく知られた多くの方法によって、パターン化を達成することができる。
【0068】
正孔注入層(HIL)
アノード103と正孔輸送層107との間に正孔注入層105を設けることがしばしば有用である。正孔注入層は、後続の有機層の膜形成特性を改善し、そして正孔輸送層107内への正孔注入を容易にするのに役立つことができる。正孔注入層105内の使用に適した材料の一例としては、米国特許第4,720,432号明細書に記載されているようなポリフィリン化合物、及び米国特許第6,208,075号明細書に記載されているようなプラズマ堆積型フルオロカーボン・ポリマー、及び何らかの芳香族アミン、例えばMTDATA(4,4',4''-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミンが挙げられる。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料が、欧州特許出願公開第0 891 121号明細書及び同第1 029 909号明細書に記載されている。本発明には、正孔注入層が好都合に使用され、正孔注入層は望ましくはプラズマ堆積型フルオロカーボン・ポリマーである。プラズマ堆積型フルオロカーボン・ポリマーを含有する正孔注入層の厚さは、0.2 nm〜15 nmであり、好適には0.3 〜1.5 nmであってよい。
【0069】
正孔輸送層(HTL)
常に必要というわけではないが、OLEDデバイス内に正孔輸送層を含むことがしばしば有用である。有機ELデバイスの正孔輸送層107は、1種以上の正孔輸送化合物、例えば芳香族第三アミンを含み、芳香族第三アミンは、炭素原子にだけ結合される少なくとも1つの三価窒素原子を含有する化合物であることが理解されている。これらの炭素原子のうちの少なくとも1つが芳香環の員である。1形態において、芳香族第三アミンはアリールアミン、例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、又は高分子アリールアミンであってよい。単量体トリアリールアミンの例が、Klupfel他によって米国特許第3,180,730号明細書に示されている。1つ又は2つ以上のビニル基で置換された、且つ/又は、少なくとも1つの活性水素含有基を含む他の好適なトリアリールアミンは、米国特許第3,567,450号明細書及び同第3,658,520号明細書においてBrantley他によって開示されている。
【0070】
芳香族第三アミンのより好ましいクラスは、米国特許第4,720,432号明細書及び同第5,061,569号明細書に記載された2種以上の芳香族第三アミン部分を含む。このような化合物は構造式(A)によって表され:
【0071】
【化18】

【0072】
上記式中、Q1及びQ2独立して選択される芳香族第三アミン部分であり、そしてGは、炭素間結合の連結基、例えばアリーレン、シクロアルキレン、又はアルキレン基である。一つの態様では、Q1及びQ2のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環構造、例えばナフタレンを含有する。Gはこれがアリール基である場合には、フェニレン、ビフェニレン又はナフタレン部分であると好都合である。
【0073】
構造式(A)を満たし、そして2つのトリアリールアミン部分を含有するトリアリールアミンの有用なクラスが、構造式(B)によって表され:
【0074】
【化19】

【0075】
上記式中:
R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子、アリール基、又はアルキル基を表し、又はR1及びR2は結合して、シクロアルキル基を完成する原子を表し;そして
R3及びR4はそれぞれ独立してアリール基を表し、アリール基は、構造式(C):
【0076】
【化20】

【0077】
によって示されているようなジアリール置換型アミノ基で置換されており、
上記式中、R5及びR6は独立して選択されるアリール基である。一つの態様では、R5又はR6のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環構造、例えばナフタレンを含有する。
【0078】
別のクラスの芳香族第三アミンはテトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンは、アリーレン基を介して結合された2つのジアリールアミノ基、例えば式(C)によって示される基を含む。有用なテトラアリールジアミンは、式(D)によって表されるものを含み
【0079】
【化21】

【0080】
上記式中、
各Areは独立して選択されるアリーレン基、例えばフェニレン部分又はアントラセン部分であり;
nは整数1〜4であり;そして
Ar、R7、R8及びR9は独立して選択されるアリール基である。
【0081】
典型的な態様では、Ar、R7、R8及びR9のうちの少なくとも1つは、多環式縮合環構造、例えばナフタレンである。
【0082】
前記構造式(A)、(B)、(C)、(D)の種々のアルキル、アルキレン、アリール及びアリーレン部分はそれぞれ置換することができる。典型的な置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、及びハロゲン、例えばフッ化物、塩化物、及び臭化物を含む。種々のアルキル部分及びアルキレン部分の典型的な炭素原子数は1〜6である。シクロアルキル部分は炭素原子数が3〜約10であることが可能であるが、しかし典型的には環炭素原子数5、6又は7であり、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチル環構造を含有する。アリール部分及びアリーレン部分は通常、フェニル部分及びフェニレン部分である。
【0083】
正孔輸送層材料は、単一の第三アミン化合物又はこのような化合物の混合物から形成することができる。具体的には、式(D)によって示されたようなテトラアリールジアミンと組み合わされた、トリアリールアミン、例えば式(B)を満たすトリアリールアミンを採用することができる。有用な芳香族第三アミンの例は下記の通りである:
【0084】
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC);
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-メチルシクロヘキサン;
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-3-フェニルプロパン(TAPPP);
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'''-ジアミノ-1,1':4',1'':4'',1'''-クアテルフェニル;
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)-フェニルメタン;
1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリ)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB);
【0085】
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4-4'-ジアミノビフェニル(TTB);
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N-フェニルカルバゾール;
【0086】
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン;
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(8-フルオルアンテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
【0087】
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン;
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4''-ジアミノ-p-テルフェニル;
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル;
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミン]フルオレン;
4,4',4''-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
【0088】
別のクラスの有用な正孔輸送材料は、欧州特許第1 009 041号明細書に記載されているような多環式芳香族化合物を含む。オリゴマー材料を含む、3つ以上のアミン基を有する第三芳香族アミンを使用することができる。加えて、高分子正孔輸送材料、例えばポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、及びコポリマー、例えばPEDOT/PSSとも呼ばれるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)を使用することもできる。正孔輸送層が、種々異なる組成物から成る2つ又は3つ以上のサブ層を含むことも可能であり、それぞれのサブ層の組成は上記の通りである。正孔輸送層の厚さは10〜約500 nm、好適には50〜300 nmであってよい。
【0089】
発光層(LEL)
本発明の発光材料に加えて、ELデバイス内に、他の蛍光材料を含む追加の発光材料を使用することもできる。青色又は青緑色ドーパント材料と同じ層内に、隣接層内に、隣接画素内に、又は任意の組み合わせで、他の蛍光材料を使用することができる。
【0090】
米国特許第4,769,292号明細書及び同第5,935,721号明細書により十分に記載されているように、有機EL素子の発光層(LEL)は、ルミネッセント材料を含み、この材料において、電子−正孔対の再結合の結果としてエレクトロルミネッセンスが生成される。発光層は、単一の材料から成ってよいが、しかし、より一般的には、ゲスト発光材料でドープされたホスト材料から成る。発光は主に発光材料から生じ、そして任意の色を有していてよい。発光層内のホスト材料は、下記に定義されたような電子−輸送材料、上記に定義されたような正孔輸送材料、又は別の材料、又は正孔−電子再結合を支援する材料の組み合わせであってよい。蛍光発光材料は典型的には、ホスト材料の0.01〜10重量%で内蔵される。
【0091】
ホスト及び発光材料は、小さな非高分子又は高分子材料、例えばポリフルオレン及びポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン)、PPV)であってよい。ポリマーの場合、小分子発光材料を高分子ホスト中に分子分散させることができ、或いは、微量成分をホスト・ポリマー中に共重合することにより発光材料を添加することもできる。ホスト材料を混ぜ合わせて、膜形成特性、電気的特性、発光効率、作業寿命、又は製造可能性を高めることができる。ホストは、良好な正孔輸送特性を有する材料と、良好な電子輸送特性を有する材料とを含むことができる。
【0092】
ゲスト発光材料として蛍光材料を選ぶための重要な関係は、ホスト及び蛍光材料の励起一重項状態エネルギーの比較である。蛍光材料の励起一重項状態エネルギーは、ホスト材料のものよりも低いことが極めて望ましい。励起一重項状態エネルギーは、発光一重項状態と基底状態との間のエネルギー差として定義される。非発光性ホストの場合、基底状態と同じ電子スピンの最低励起状態は、発光状態と考えられる。
【0093】
有用であることが知られているホスト分子及び発光材料の一例としては、米国特許第4,768,292号;同第5,141,671号;同第5,150,006号;同第5,151,629号;同第5,405,709号;同第5,484,922号;同第5,593,788号;同第5,645,948号;同第5,683,823号;同第5,755,999号;同第5,928,802号;同第5,935,720号;同第5,935,721号;及び同第6,020,078号に開示されたものが挙げられる。
【0094】
キレート型オキシノイド化合物としても知られる、8-ヒドロキシキノリンの金属錯体及び同様の誘導体(式E)が、エレクトロルミネッセンスを支援することができる有用なホスト化合物の1クラスを構成し、そして、500 nmよりも長い波長、例えば緑、黄、橙及び赤色の発光に特に適している。
【0095】
【化22】

【0096】
上記式中:
Mは金属を表し;
nは整数1〜4であり;そして
Zは独立して、出現毎に、2つ以上の縮合芳香環を有する核を完成する原子を表す。
【0097】
以上から明らかなように、金属は一価、二価、三価、又は四価金属であってよい。金属は例えば、アルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウム、又はカリウム;アルカリ土類金属、例えばマグネシウム又はカルシウム;三価金属、例えばアルミニウム又はガリウム、又は他の金属、例えば亜鉛又はジルコニウムであってよい。一般に、有用なキレート金属であることが知られている任意の一価、二価、三価、又は四価金属を採用することができる。
【0098】
Zは2つ以上の縮合芳香環を含有する複素環核を完成し、これらの縮合芳香環のうちの少なくとも1つがアゾール又はアジン環である。脂肪族環及び芳香環の両方を含む追加の環は、必要な場合には、2つの所要の環と縮合することができる。機能を改善することなしに分子の嵩を加えることを避けるために、環原子数は通常18以下に維持される。
【0099】
有用なキレート型オキシノイド化合物の例は、下記の通りである:
CO-1:アルミニウムトリソキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)];
CO-2:マグネシウムビソキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)];
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II);
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-D-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III);
CO-5:インジウムトリソキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム];
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチロキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)];
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)];
CO-8:ガリウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)ガリウム(III)];及び
CO-9:ジルコニムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニム(IV)]。
【0100】
9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体(式F)が、エレクトロルミネッセンスを支援することができる有用なホスト材料の1クラスを構成し、そして、400 nmよりも長い波長、例えば青、緑、黄、橙及び赤色の発光に特に適している。
【0101】
【化23】

【0102】
上記式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各環上の1つ又は2つ以上の置換基を表し、各置換基は下記基から個々に選択される:
群1:水素、又は炭素原子数1〜24のアルキル;
群2:炭素原子数5〜20のアリール又は置換型アリール;
群3:アントラセニル、ピレニル又はペリレニルの縮合芳香環を完成するのに必要な4〜24個の炭素原子;
群4:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル又はその他の複素環系の縮合芳香族複素環を完成するのに必要な炭素原子数5〜24のヘテロアリール又は置換型ヘテロアリール;
群5:炭素原子数1〜24のアルコキシルアミノ、アルキルアミノ、又はアリールアミノ;及び
群6:フッ素、塩素、臭素又はシアノ。
【0103】
一例としては、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン及び2-t-ブチル-9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンが挙げられる。9,10-ビス-[4-(2,2'-ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセンの誘導体を含む他のアントラセン誘導体が、ホストとして有用であり得る。
【0104】
式(I)のモノアントラセン誘導体も、エレクトロルミネセンスを支援することができる有用なホスト材料であり、そして、400 nmよりも長い波長、例えば青、緑、黄、橙及び赤色の発光に特に適している。式(I)のアントラセン誘導体は、Lelia Cosimbescu他によって2003年10月24日付けで出願された、同一譲受人による米国特許出願第10/693,121号明細書(発明の名称「Electroluminescent Device With Anthracene Derivative Host(アントラセン誘導体ホストを有するエレクトロルミネセント・デバイス)」)に記載されている。これを引用することにより本明細書に組み入れる。
【0105】
【化24】

【0106】
上記式中:
R1〜R8は、Hであり;そして
R9は、脂肪族炭素環員を有する縮合環を含有しないナフチル基であり;但し、R9及びR10は同じものではなく、そしてアミン及びイオウ化合物を有していないものとする。好適には、R9は、フェナントリル、ピレニル、フルオランテン、ペリレンを含む縮合芳香環系を形成するように、1つ又は2つ以上の更なる縮合環を有する置換型ナフチル基であるか、或いは、フッ素、シアノ基、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、複素環式オキシ基、カルボキシ、トリメチルシリル基を含む1種又は2種以上の置換基で置換されたナフチル基であるか、或いは、2つの縮合環から成る無置換型ナフチル基である。R9は、パラ位置において置換された又は置換されていない2-ナフチル、又は1-ナフチルであるのが好都合であり;そして
R10は、脂肪族炭素環員を有する縮合環を含有しないビフェニル基である。好適には、R10は、例えばナフチル、フェナントリル、ピレニルを含む縮合芳香環系を形成するような置換型ビフェニル基であるか、或いは、フッ素、シアノ基、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、複素環式オキシ基、カルボキシ、トリメチルシリル基を含む1種又は2種以上の置換基で置換されたビフェニル基であるか、或いは、無置換型ビフェニル基である。R10は、置換されていないか、又はテルフェニル環系を形成するための縮合環を有さない別のフェニル環で置換された4-ビフェニル、3-ビフェニル、又は2-ビフェニルであるのが好都合である。特に有用なのは9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンである。
【0107】
別の有用なクラスのアントラセン誘導体が、一般式(V)によって表される:
【0108】
A1−L−A2 (V)
【0109】
上記式中、A1及びA2はそれぞれ、置換型又は無置換型モノフェニルアントリル基、又は置換型又は無置換型ジフェニルアントリル基を表し、そして互いに同じか又は異なるものであってよく、そしてLは単結合、又は二価連結基を表す。
【0110】
別の有用なクラスのアントラセン誘導体が、一般式(VI)によって表される:
【0111】
A3−An−A4 (VI)
【0112】
上記式中、Anは、置換型又は無置換型二価アントラセン残基を表し、A3及びA4はそれぞれ、炭素原子数6以上の、置換型又は無置換型の一価縮合芳香環基、又は置換型又は無置換型のアリール非縮合環基を表し、そして互いに同じか又は異なるものであってよい。
【0113】
米国特許第6,465,115号明細書及び国際公開第2004/018587号パンフレットに開示された不斉アントラセン誘導体は、有用なホストであり、これらの化合物は、単独で、又は混合物中の成分として、下記一般式(VII)及び(VIII)によって表される。
【0114】
【化25】

【0115】
上記式中:
Arは、核炭素原子数10〜50の(無)置換型縮合芳香族基であり;
Ar'は、核炭素原子数6〜50の(無)置換型芳香族基であり;
Xは、核炭素原子数6〜50の(無)置換型芳香族基、核炭素原子数5〜50の(無)置換型芳香族複素環基、炭素原子数1〜50の(無)置換型アルキル基、炭素原子数1〜50の(無)置換型アルコキシ基、炭素原子数6〜50の(無)置換型アラルキル基、核炭素原子数5〜50の(無)置換型アリールオキシ基、核炭素原子数5〜50の(無)置換型アリールチオ基、炭素原子数1〜50の(無)置換型アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又はヒドロキシ基であり;
a、b及びcは、整数0〜4であり;そしてnは整数1〜3であり;
そしてnが2又は3以上の場合には、下記括弧内の式は同じか又は異なるものであってよい。
【0116】
【化26】

【0117】
さらに、本発明は、下記一般式(VIII)によって表されるアントラセン誘導体を提供する。
【0118】
【化27】

【0119】
上記式中:
Arは、核炭素原子数10〜50の(無)置換型縮合芳香族基であり;
Ar'は、核炭素原子数6〜50の(無)置換型芳香族基であり;
Xは、核炭素原子数6〜50の(無)置換型芳香族基、核炭素原子数5〜50の(無)置換型芳香族複素環基、炭素原子数1〜50の(無)置換型アルキル基、炭素原子数1〜50の(無)置換型アルコキシ基、炭素原子数6〜50の(無)置換型アラルキル基、核炭素原子数5〜50の(無)置換型アリールオキシ基、核炭素原子数5〜50の(無)置換型アリールチオ基、炭素原子数1〜50の(無)置換型アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又はヒドロキシ基であり;
a、b及びcは、整数0〜4であり;そしてnは整数1〜3であり;
そしてnが2又は3以上の場合には、下記括弧内の式は同じか又は異なるものであってよい。
【0120】
【化28】

【0121】
発光層内で使用するための有用なアントラセン材料の具体例は、
【0122】
【化29】

【0123】
【化30】

【0124】
を含む。
【0125】
ベンザゾール誘導体(式G)が、エレクトロルミネッセンスを支援することができる有用なホスト材料の別のクラスを構成し、そして、400 nmよりも長い波長、例えば青、緑、黄、橙及び赤色の発光に特に適している。
【0126】
【化31】

【0127】
上記式中:
nは整数3〜8であり;
ZはO、NR又はSであり;
R及びR'は個別に、水素;炭素原子数1〜24のアルキル、例えばプロピル、t-ブチル、及びヘプチルなど;炭素原子数5〜20のアリール又はヘテロ原子置換型アリール、例えばフェニル及びナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、及びその他の複素環系;又はハロ、例えばクロロ、フルオロ;又は縮合型芳香環を完成するのに必要な原子であり;そして
Lは、複数のベンザゾールと結合する、アルキル、アリール、置換型アルキル、又は置換型アリールから成る結合ユニットである。Lは複数のベンザゾールと共役されていてよく、又は共役されていなくてもよい。有用なベンザゾールの一例は、2,2',2''-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール]である。
【0128】
米国特許第5,121,029号明細書及び特開平08-333569号公報に記載されているようなスチリルアリーレン誘導体も、青色発光のための有用なホストである。例えば9,10-ビス-[4-(2,2'-ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセン、及び4,4'-ビス(2,2'-ジフェニルエテニル)-1,1'-ビフェニル(DPVBi)は青色発光のための有用なホストである。
【0129】
有用な蛍光発光材料の一例としては、アントラセンの誘導体、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン及びキナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム及びチアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、及びカルボスチリル化合物が挙げられる。有用な材料の一例としては、下記のものが挙げられる:
【0130】
【化32】

【0131】
【化33】

【0132】
【化34】

【0133】
本発明の発光材料に加えて、発光燐光材料をELデバイス内に使用することもできる。便宜上、燐光錯体ゲスト材料は、本明細書中では燐光発生材料と呼ぶことができる。燐光発生材料は典型的には、1つ又は2つ以上の配位子、例えば、sp2炭素又はヘテロ原子を介して金属に配位することができるモノアニオン性配位子を含む。好都合には、配位子はフェニルピリジン(ppy)又はこれらの誘導体又は類似体であってよい。いくつかの有用な燐光有機金属材料の例は、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(アセチルアセトネート)、及びビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')白金(II)を含む。多くの燐光有機金属材料は、緑色のスペクトル領域内で、すなわち510〜570 nmの範囲で最大発光を伴うように発光すると有用である。
【0134】
燐光発生材料は、同じか又は異なる層内に、単独で又は他の燐光発生材料と組み合わせて使用することができる。燐光発生材料及び好適なホストが、国際公開第00/57676号パンフレット、同第00/70655号パンフレット、同第01/41512号パンフレット、同第02/15645号パンフレット、米国特許出願公開第2003/0017361号明細書、国際公開第01/93642号パンフレット、同第01/39234号パンフレット、米国特許第6,458,475号明細書、同第02/071813号パンフレット、米国特許第6,573,651号明細書、米国特許出願公開第2002/0197511号明細書、国際公開第02/074015号パンフレット、米国特許第6,451,455号明細書、米国特許出願公開第2003/0072964号明細書、同第2003/0068528号明細書、米国特許第6,413,656号明細書、同第6,515,298号明細書、同第6,451,415号明細書、同第6,097,147号明細書、米国特許出願公開第2003/0124381号明細書、同第2003/0059646号明細書、同第2003/0054198号明細書、欧州特許出願公開第1 239 526号明細書、同第1 238 981号明細書、同第1 244 155号明細書、米国特許出願公開第2002/0100906号明細書、同第2003/0068526号明細書、同第2003/0068535号明細書、特開2003-073387号公報、同2003-073388号公報、米国特許出願公開第2003/0141809号明細書、同第2003/0040627号明細書、特開2003-059667号公報、同2003-073665号公報、米国特許出願公開第2002/0121638号明細書に記載されている。
【0135】
タイプIrL3及びIrL2L'のシクロメタル化型Ir(III)錯体、例えば緑色発光fac-トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)及びビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(アセチルアセトネート)の発光波長は、シクロメタル化性配位子L上の適切な位置で電子供与基又は求引基を置換することにより、又は、シクロメタル化性配位子Lのために種々異なる複素環を選択することにより、シフトすることができる。発光波長は、付属配位子L'を選択することによりシフトすることもできる。赤色発光体の例は、ビス(2-(2'-ベンゾチエニル)ピリジナト-N,C3')イリジウム(III)(アセチルアセトネート)、及びトリス(2-フェニルイソキノリナト-N,C)イリジウム(III)である。青色発光体の例は、ビス(2-(4,6-ジフルオロフェニル)-ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(ピコリネート)である。
【0136】
ビス(2-(2'-ベンゾ[4,5-a]チエニル)ピリジナト-N,C3)イリジウム(III)(アセチルアセトネート)[Btp2Ir(acac)]を燐光発生材料として使用した、赤色エレクトロ燐光が報告されている(C. Adachi, S. Lamansky, M. A. Baldo, R. C. Kwong, M. E. Thompson, 及びS. R. Forrest, App. Phys. Lett., 78, 1622-1624 (2001))。
【0137】
その他の重要な燐光発生材料は、シクロメタル化型Pt(II)錯体、例えばcis-ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')白金(II)、cis-ビス(2-(2'-チエニル)ピリジナト-N,C3')白金(II)、cis-ビス(2-(2'-チエニル)キノリナト-N,C5')白金(II)、又は(2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2')白金(II)(アセチルアセトネート)を含む。Pt(II)ポルフィリン錯体、例えば2,3,5,18,12,13,17,18-オクタエチル-21H、23H-ポルフィン白金(II)も有用な燐光発生材料である。
【0138】
有用な燐光発生材料のさらに他の例は、三価ランタニド、例えばTb3+及びEu3+の配位錯体を含む(J. Kido他、Appl. Phys. lett., 65, 2124(1994))。
【0139】
燐光発生材料のための好適なホスト材料は、三重項励起子の移動が、ホスト材料から燐光発生材料へ効率的に発生可能であるように、しかし燐光発生材料からホスト材料へは効率的に発生できないように選択されるべきである。従って、燐光発生材料の三重項エネルギーがホストの三重項エネルギーよりも低いことが強く望まれる。一般的に言えば、大きい三重項エネルギーは、大きい光学バンドギャップをもたらす。しかしホストのバンドギャップは、発光層内への電荷担体の注入を許容できないほどに阻み、そしてOLEDの駆動電圧を許容できないほどに高くするような大きいものが選ばれるべきではない。好適なホスト材料は、国際公開第00/70655号;同第01/39234号;同第01/93642号;同第02/074015号;同第02/15645号の各パンフレット;及び米国特許出願公開第20020117662号明細書に記載されている。好適なホストは、ある特定のアリールアミン、トリアゾール、インドール、及びカルバゾール化合物を含む。望ましいホストの例は、4,4'-ビス(カルバゾル-9-イル)ビフェニル又はCBPとしても知られている4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル;2,2'-ジメチル-4,4'-ビス(カルバゾル-9-イル)ビフェニル又はCDBPとしても知られている4,4'-N,N'-ジカルバゾール-2,2'-ジメチル-ビフェニル;1,3-ビス(カルバゾル-9-イル)ベンゼンとしても知られている1,3-ビス(N,N'-ジカルバゾール)ベンゼン、及びポリ(N-ビニルカルバゾール)、及びこれらの誘導体である。
【0140】
望ましいホスト材料は、連続膜を形成することができる。
【0141】
正孔ブロック層(HBL)
好適なホストに加えて、燐光発生材料を採用するOLEDデバイスは、少なくとも1つの正孔ブロック層をしばしば必要とする。正孔ブロック層は、電子輸送層111と発光層109との間に配置されることにより、励起子と再結合事象とを、ホストと燐光発生材料とを含む発光層に制限するのを助ける。この事例において、ホストから正孔ブロック層内への正孔移動に対してエネルギー・バリヤが存在するべきであり、これに対して、電子は正孔ブロック層から、ホストと燐光発生材料とを含む発光層内に容易に通過するべきである。第1の要件は、正孔ブロック層のイオン化電位が発光層109のイオン化電位よりも望ましくは0.2 eV以上大きいことを伴う。第2の要件は、正孔ブロック層の電子親和力が、発光層109の電子親和力を大きくは上回らず、望ましくは、発光層109の電子親和力よりも小さく、又は発光層109の電子親和力を、約0.2 eVよりも大きく上回ることがないことを伴う。
【0142】
特徴的なルミネッセンスが緑色である電子輸送層、例えば下記のようなAlq含有電子輸送層と共に使用する場合、正孔ブロック層の材料の最高被占分子軌道(HOMO)及び最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーに関する要件は、電子輸送層の波長よりも短い波長の、正孔ブロック層の特徴的なルミネッセンス、例えば青、紫又は紫外ルミネッセンスをしばしばもたらす。このように、正孔ブロック層の材料の特徴的なルミネッセンスが青、紫又は紫外であることが望ましい。正孔ブロック材料の三重項エネルギーが燐光発生材料の三重項エネルギーよりも大きいことがさらに望ましいが、しかし絶対に必要というわけではない。好適な正孔ブロック材料は、国際公開第00/70655号パンフレット及び同第01/93642号パンフレットに記載されている。有用な正孔ブロック材料の2つの例は、バソキュプロイン(BCP)及びビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)である。BCPの特徴的なルミネッセンスは紫外にあり、そしてBAlqの特徴的なルミネッセンスは青色である。BAlq以外の金属錯体は、米国特許出願公開第20030068528号明細書に記載されているように、正孔及び励起子をブロックすることも知られている。加えて、米国特許出願公開第20030175553号明細書には、これを目的として、fac-トリス(1-フェニルピラゾラト-N,C2iota)イリジウム(III)(Irppz)の使用が記載されている。
【0143】
正孔ブロック層が使用される場合、その厚さは2〜100 nm、好適には5〜10 nmであってよい。
【0144】
電子輸送層(ETL)
本発明の有機ELデバイスの電子輸送層111を形成する際に使用するための望ましい薄膜形成材料は、オキシン自体のキレート(一般には8-キノリノール又は8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)を含む、金属キレート型オキシノイド化合物である。このような化合物は電子を注入して輸送するのを助け、高い性能レベルを示し、そして薄膜形態で容易に加工される。考えられるオキシノイド化合物の例は、前述の構造式(E)を満たす化合物である。
【0145】
電子輸送層111において使用するのに適した他の電子輸送材料は、米国特許第4,356,429号明細書に開示された種々のブタジエン誘導体、及び米国特許第4,539,507号明細書に開示された種々の複素環式蛍光増白剤を含む。構造式(G)を満たすベンザゾールも、有用な電子輸送材料である。トリアジンも、有用な電子輸送材料として有用であることが知られている。
【0146】
正孔ブロック層及び電子輸送層111の両方を使用する場合、電子は正孔輸送層111から、正孔ブロック層内に容易に通過するべきである。従って、電子輸送層111の電子親和力は、正孔ブロック層の電子親和力を大きく上回るべきではない。望ましくは、電子輸送層111の電子親和力は、正孔ブロック層の電子親和力よりも小さいか、又は、正孔ブロック層の電子親和力を、約0.2 eVよりも大きく上回るべきではない。
【0147】
電子輸送層を使用する場合には、その厚さは2〜100 nm、好適には5〜20 nmであってよい。
【0148】
他の有用な有機層及びデバイス構成
いくつかの事例の場合、層109〜111は任意には、圧潰することにより単層にすることができる。単層は、発光及び電子輸送の両方を支援する機能を発揮する。正孔ブロック層(存在する場合)、及び層111も、圧潰することにより単層にすることができる。この単層は、正孔又は励起子をブロックするために機能し、そしで電子輸送を支援する。正孔輸送層107内には発光材料を含んでよいことも当業者に知られている。その場合、正孔輸送層はホストとして役立つことができる。多種の材料を1つ又は2つ以上の層に添加することにより、例えば、青色発光材料と黄色発光材料との組み合わせ、シアン発光材料と赤色発光材料との組み合わせ、又は赤色、緑色、及び青色発光材料の組み合わせによって、白色発光OLEDを形成することができる。白色発光デバイスは、例えば欧州特許第1 187 235号明細書、米国特許出願公開第20020025419号明細書、欧州特許第1 182 244号明細書、米国特許第5,683,823号明細書、同第5,503,910号明細書、同第5,405,709号明細書、及び同第5,283,182号明細書に記載されており、そして色発光を生成するための好適なフィルター装置を備えることができる。
【0149】
本発明は、例えば米国特許第5,703,436号明細書及び同第6,337,492号明細書に教示されているような、いわゆるスタック型デバイス構成において使用することができる。
【0150】
有機層の堆積
上述の有機材料は、有機材料の形態に適した任意の手段によって好適に堆積される。小分子の場合、これらは昇華又は蒸発によって好都合に堆積されるが、しかし、他の手段、例えば膜形成を改善するために任意のバインダーと一緒に溶剤から被覆することによって堆積することもできる。材料がポリマーである場合、溶剤堆積が通常は好ましい。昇華又は蒸発によって堆積されるべき材料は、例えば米国特許第6,237,529号明細書に記載されているように、しばしばタンタル材料から成る昇華器「ボート」から蒸発させることができ、或いは、先ずドナーシート上に被覆し、次いで基板により近接して昇華させることができる。材料混合物を有する層は、別個の昇華器ボートを利用することができ、或いは、これらの材料は予混合して、単一のボート又はドナーシートから被覆することもできる。パターン化された堆積は、シャドーマスク、インテグラル・シャドーマスク(米国特許第5,294,870号明細書)、空間的に画定された、ドナーシートからのサーマル色素転写(米国特許第5,688,551号明細書;同第5,851,709号明細書及び同第6,066,357号明細書)、及びインクジェット法(米国特許第6,066,357号明細書)を使用して達成することができる。
【0151】
本発明の1つの望ましい材料堆積方法は、米国特許出願公開第2004/0255857号明細書及び米国特許出願第10/945,941号明細書に記載されており、この場合、種々異なる源蒸発器を使用して、本発明の材料のそれぞれを蒸発させる。第2の望ましい方法は、フラッシュ蒸発の利用を伴う。この場合、材料が、温度制御された材料供給路に沿って測定される。このような方法は、同一譲受人による次のような特許出願明細書に記載されている:米国特許出願第10/784,585号;同第10/805,980号;同第10/945,940号;同第10/945,941号;同第11/050,924号;同第11/050,934号の各明細書。この第2の方法を用いて、種々異なる源蒸発器を使用して、各材料を蒸発させることができ、或いは、同じ源蒸発器を使用して蒸発させる前に、固形材料を混合することもできる。
【0152】
封入
大抵のOLEDデバイスは湿分又は酸素、又はその両方に対して感受性を有するので、これらのデバイスは一般に不活性雰囲気、例えば窒素又はアルゴン中で、乾燥剤、例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、又は金属ハロゲン化物及び過塩素酸塩とともに密閉される。封入法及び乾燥法の一例としては、米国特許第6,226,890号明細書に記載された方法が挙げられる。加えて、バリア層、例えばSiOx、テフロン(登録商標)及び交互の無機/高分子層が、封入分野の当業者に知られている。密閉又は封入及び乾燥のこれらの方法のいずれも、本発明に従って構成されたELデバイスと一緒に使用することができる。
【0153】
光学的最適化
本発明のOLEDデバイスは、種々のよく知られた光学効果を採用して、所望の場合にこれらの特性を増強することができる。このような増強は、最大の光透過をもたらすように層厚を最適化すること、誘電ミラー構造を設けること、反射性電極を光吸収電極と置き換えること、ディスプレイ上に眩光防止又は反射防止塗膜を設けること、ディスプレイ上に偏光媒体を設けること、又はディスプレイ上に色フィルター、減光フィルター、又は色変換フィルターを設けることを含む。ELデバイス上に又はELデバイス部分として、フィルター、偏光子、及び眩光防止又は反射防止塗膜を具体的に設けることができる。
【0154】
本発明の態様は、有利な特徴、例えばより高い発光効率、より低い駆動電圧、より高い電力効率、より大きい作業安定性、並びに電流密度に伴う色度及び/又は発光効率の変動の低減を提供することができる。また、これらの態様は、製造可能性の改善をもたらす広範囲の濃度で使用することができる。本発明において有用な化合物の態様は、広範囲の色相、特に青色及び青緑色を提供することができる。これらは白色発光(直接に又はフィルターを通して多色ディスプレイを提供する)において有用である。本発明の態様は、エリア照明デバイスを提供することもできる。
【実施例】
【0155】
本発明及びその利点は、以下の例によって、より明らかになる。
【0156】
合成例:
4-ブロモ-4'-(ジ-トリルアミノ)スチルベンの調製
ジエチル-(4-ブロモベンジル)ホスホネート(35.9 g, 0.117 mol)、4-(ジ-p-トリルアミノ)ベンズアルデヒド(32 g, 0.106 mol)及びナトリウムメトキシド(7.5 g, 0.138 mol)を200 mLの乾燥ジメチルホルムアミド中で、2時間にわたって周囲温度で、次いで2時間にわたって85℃で撹拌した。反応物を25℃まで冷却し、次いで、5% wt/wt HCl水溶液450 mL中に注いだ。析出した材料をヘキサンとともに粉砕して、黄色の固形物を生成し、これをトルエン−エタノール混合物から再結晶化することにより、28.3 gの生成物を産出した。分析データは構造と一致した。
【0157】
4-(ジ-p-トリルアミノ)フェニルボロン酸の調製
60 mLの乾燥テトラヒドロフラン中の4-ブロモ-4'-(ジ-トリルアミノ)ベンゼン(25 g, 0.071 mol)の溶液を、窒素下で-78℃まで冷却した。1.6M ヘキサン溶液として、反応物にブチルリチウム(0.078 mol)を添加した。反応物を1.5時間にわたって低温で撹拌した後、トリエチルボレート(11.4 g, 0.078 mol)を添加し、そして反応物を25℃まで温めておいた。反応物をジエチルエーテルで希釈し、そして有機層を水で洗浄し、乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。残留物をヘキサンとともに粉砕し、次いで濾過することにより、17.5 gのボロン酸を産出した。全ての分析データは構造と一致した。
【0158】
化合物(I-1)の調製
4-(ジトリルアミノ)フェニルボロン酸(3.0 mmol)と、1-ブロモ-4-(4-ジトリルアミノスチリル)ベンゼン(3.5 mmol)とを、脱気されたトルエンとジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムIIとの混合物中で合体させた。水性炭酸ナトリウム(6.0 mmol)を添加し、そして反応物を12時間にわたって100℃まで加熱した。混合物をトルエンで希釈し、そして濾過した。濾過物を水で洗浄し、そして有機層を次いで乾燥させて濃縮した。濃縮物をヘキサンとともに粉砕し、そしてその結果生じた固形物を、エタノール−ヘキサンから再結晶化することにより、黄色の固形物を生成した。全ての分析データは、指定された構造と一致した。
【0159】
【化35】

【0160】
最大発光及び輝度効率の例
下記表中の化合物の発光スペクトルは、濃度10-5〜10-6 Mの酢酸エチル溶液中で、室温で得られ、波長に対する単位波長幅当たりの単位時間当たりの量子として表された。蛍光処置は当業者によく知られている(例えばC.A. Parker及びW.T. Rees, Analyst, 85, 587(1960)参照)。発光スペクトルの最大値は、このようなスペクトルの最高点に相当する波長として定義される。その結果を下記表に示す。
【0161】
【表1】

【0162】
効率的であるために、OLEDデバイス内で使用するために考えられる発光材料が、可能な限り高い量子収量を有することが強く望まれる。上記表から明らかなように、三置換型二重結合を備えたスチリル基を有する比較化合物Gの量子収量は、二重結合上に2つしか置換基を有さない比較化合物Eよりも著しく低い。本発明の化合物I-1は、一連のものの中で最高量子収量を有する。
【0163】
比較デバイス例1
比較ELデバイスを下記のように構成した。
【0164】
1. アノードとして20 nmの酸化インジウム錫(ITO)層が被覆されたガラス基板を順次、商業的な洗剤中で超音波処理し、脱イオン水中で濯ぎ、トルエン蒸気中で脱脂し、そして約1分間にわたって酸素プラズマに当てる。
2. 米国特許第6,208,075号明細書に記載されているようなCHF3のプラズマ支援堆積により、ITO上に1 nmのフルオロカーボン(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積する。
3. 正孔輸送層(HTL)として75 nmの4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル層を真空蒸着することにより、上のように調製された基板をさらに処理した。
【0165】
4. ホストとしての20 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての3% (0.6 nm当量)の(上記化合物L47)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
5. トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(ALQ)から成る35 nm電子輸送層(ETL)を、加熱されたタンタル・ボート源を含む被覆ステーションにおいて、基板上に真空蒸着した。
6. 容積比10:1のMgとAgとから成る220 nm層を、基板上に蒸着することにより、カソード層を形成した。
【0166】
上記順序で、ELデバイスの堆積を完了する。次いでデバイスを、周囲環境から保護するために、乾燥グローブ・ボックス内で密閉パッケージングする。
【0167】
比較デバイス例2
比較ELを上記工程に従って構成した。ただし工程4は次の通りである:
4. ホストとしての20 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての3% (0.6 nm当量)の(上記化合物L2)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
【0168】
比較デバイス例3
比較ELを上記工程に従って構成した。ただし工程4は次の通りである:
4. ホストとしての20 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての3% (0.6 nm当量)の(比較化合物A)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
【0169】
比較デバイス例4
比較ELを上記工程に従って構成した。ただし工程4は次の通りである:
4. ホストとしての20 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての6% (1.2 nm当量)の(比較化合物B)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
【0170】
発明デバイス例1
本発明の要件を満たすELデバイスを、上記比較例1の工程に従って構成した。ただし工程4は次の通りである:
4. ホストとしての20 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての4% (0.8 nm当量)の(化合物I-1)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
【0171】
発明デバイス例2
本発明の要件を満たすELデバイスを、上記比較例1の工程に従って構成した。ただし工程4は次の通りである:
4. ホストとしての20 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての6% (1.2 nm当量)の(化合物I-1)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
【0172】
各デバイスの電極を横切るように、電流20 mA/cm2を印加した。発光スペクトルを測定し、表1及び2におけるデバイス特性が計算されるのを可能にした。相対発光収率は、発明例デバイスの発光収率(cd/A)を、比較例デバイスのうちの1つの発光収率(cd/A)で割算したものとして定義される。相対外部効率は、予言例デバイスの外部効率(W/A)を、比較例デバイスのうちの1つの外部効率(W/A)で割算したものとして定義される。
【0173】
【表2】

【0174】
【表3】

【0175】
表1に示されているように、本発明のドーパント材料は、比較例1に使用された基準ドーパントよりも良好な青色度を有するとともに、匹敵する外部効率を有する青色OLEDデバイスをもたらす。本発明のドーパント材料は、比較例2に使用された基準ドーパントと同様の青色度を有するとともに、著しく高い外部効率及び発光収率を有する青色OLEDデバイスをもたらす。
【0176】
表2に示されているように、本発明のドーパント材料は、比較例3及び4に使用されたドーパントと同様の青色度を有する青色デバイスをもたらす。しかし、本発明のドーパント材料は、著しく高い外部効率及び発光収率を有する青色OLEDデバイスをもたらす。
【0177】
比較デバイス例5
比較ELデバイスを下記のように構成した。
【0178】
1. アノードとして20 nmの酸化インジウム錫(ITO)層が被覆されたガラス基板を順次、商業的な洗剤中で超音波処理し、脱イオン水中で濯ぎ、トルエン蒸気中で脱脂し、そして約1分間にわたって酸素プラズマに当てる。
2. 米国特許第6,208,075号明細書に記載されているようなCHF3のプラズマ支援堆積により、ITO上に1 nmのフルオロカーボン(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積する。
3. 正孔輸送層(HTL)として95 nmの4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル層を真空蒸着することにより、上のように調製された基板をさらに処理した。
【0179】
4. ホストとしての40 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての6% (2.4 nm当量)の(上記化合物C)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
5. トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(ALQ)から成る15 nm電子輸送層(ETL)を、加熱されたグラファイト・ボート源を含む被覆ステーションにおいて、基板上に真空蒸着した。
6. 1.0 nmのフッ化リチウム層を基板上に蒸着し、続いて200 nmのアルミニウム層を蒸着することにより、カソード層を形成した。
【0180】
上記順序で、ELデバイスの堆積を完了する。次いでデバイスを、周囲環境から保護するために、乾燥グローブ・ボックス内で密閉パッケージングする。
【0181】
比較デバイス例6
本発明の要件を満たすELデバイスを上記工程に従って構成した。ただし工程4は次の通りである:
4. ホストとしての40 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての6% (2.4 nm当量)の(上記化合物D)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
【0182】
発明デバイス例3
本発明の要件を満たすELデバイスを上記比較例5の工程に従って構成した。ただし工程4は次の通りである:
4. ホストとしての40 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての3% (1.6 nm当量)の(化合物I-1)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
【0183】
各デバイスの電極を横切るように、電流20 mA/cm2を印加した。発光スペクトルを測定し、表3におけるデバイス特性が計算されるのを可能にした。相対発光収率は、発明例デバイスの発光収率(cd/A)を、比較例デバイスのうちの1つの発光収率(cd/A)で割算したものとして定義される。相対外部効率は、予言例デバイスの外部効率(W/A)を、比較例デバイスのうちの1つの外部効率(W/A)で割算したものとして定義される。下記表3は結果を示す。
【0184】
【表4】

【0185】
表3に示されているように、本発明のドーパント材料は、比較例5及び6に使用されたドーパントと同様の青色度を有する青色デバイスをもたらす。しかし、本発明のドーパント材料は、2倍の外部効率及び発光収率を有する青色OLEDデバイスをもたらす。
【0186】
比較デバイス例7
比較ELデバイスを下記のように構成した。
【0187】
1. アノードとして85 nmの酸化インジウム錫(ITO)層が被覆されたガラス基板を順次、商業的な洗剤中で超音波処理し、脱イオン水中で濯ぎ、トルエン蒸気中で脱脂し、そして約1分間にわたって酸素プラズマに当てる。
2. 米国特許第6,208,075号明細書に記載されているようなCHF3のプラズマ支援堆積により、ITO上に1 nmのフルオロカーボン(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積する。
3. 正孔輸送層(HTL)として75 nmの4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル層を真空蒸着することにより、上のように調製された基板をさらに処理した。
【0188】
4. ホストとしての40 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての4% (1.6 nm当量)の(上記化合物L2)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
4. トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(ALQ)から成る10 nm電子輸送層(ETL)を、加熱されたグラファイト・ボート源を含む被覆ステーションにおいて、基板上に真空蒸着した。
5. 1.0 nmのフッ化リチウム層を基板上に蒸着し、続いて100 nmのアルミニウム層を蒸着することにより、カソード層を形成した。
【0189】
上記順序で、ELデバイスの堆積を完了する。次いでデバイスを、周囲環境から保護するために、乾燥グローブ・ボックス内で密閉パッケージングする。
【0190】
発明デバイス例4
本発明の要件を満たすELデバイスを上記工程に従って構成した。ただし工程4は次の通りである:
4. ホストとしての40 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての4% (1.6 nm当量)の(化合物式I-1)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
【0191】
各デバイスの電極を横切るように、電流20 mA/cm2を印加した。発光スペクトルを測定し、表4におけるデバイス特性が計算されるのを可能にした。相対発光収率は、予言例デバイスの発光収率(cd/A)を、比較例7の発光収率(cd/A)で割算したものとして定義される。相対外部効率は、発明例デバイスの外部効率(W/A)を、比較例7の外部効率(W/A)で割算したものとして定義される。寿命に関しては、初期輝度1000 cd/m2からの時間の関数として、強度を監視した。相対寿命は、発明例デバイスの輝度強度が半分になるまでの時間(時間)を、比較例7の輝度強度が半分になるまでの時間(時間)で割算したものとして定義される。下記表4は結果を示す。
【0192】
【表5】

【0193】
発明例4に基づいて調製されたデバイスは、従来通りの青色ドーパントを有する比較例7の基準デバイスよりも、著しく高い発光収率及び外部効率を示した。発明例4はまた、初期輝度1000 cd/m2から、基準デバイスの2倍の寿命を示した。本発明のドーパント材料の追加の利点は、図2に示すように、結果として生じた青色デバイスの発光収率が、比較ドーパント材料を使用したデバイスほどには、電流密度とともに変化しないことである。
【0194】
比較デバイス例8
本発明の要件を満たすELデバイスを下記のように構成した。
【0195】
1. アノードとして85 nmの酸化インジウム錫(ITO)層が被覆されたガラス基板を順次、商業的な洗剤中で超音波処理し、脱イオン水中で濯ぎ、トルエン蒸気中で脱脂し、そして約1分間にわたって酸素プラズマに当てる。
2. 米国特許第6,208,075号明細書に記載されているようなCHF3のプラズマ支援堆積により、ITO上に1 nmのフルオロカーボン(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積する。
3. 正孔輸送層(HTL)として140 nmの4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル層を真空蒸着することにより、上のように調製された基板をさらに処理した。
【0196】
4. 68%(21 nm当量)の4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル、29%(9 nm当量)の9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセン、及び3%(0.9 nm当量)のL53から成る層を、上記基板上に蒸着することにより、黄色発光層(黄色EML)を形成した。
【0197】
5. 42 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、3 nmの4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニルと、青色ドーパントとしての1.1% (0.45 nm当量)のL2とから成る層を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
6. トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(ALQ)から成る10 nm電子輸送層(ETL)を、加熱されたグラファイト・ボート源を含む被覆ステーションにおいて、基板上に真空蒸着した。
7. 1.0 nmのフッ化リチウム層を基板上に蒸着し、続いて100 nmのアルミニウム層を蒸着することにより、カソード層を形成した。
【0198】
上記順序で、ELデバイスの堆積を完了する。次いでデバイスを、周囲環境から保護するために、乾燥グローブ・ボックス内で密閉パッケージングする。
【0199】
発明デバイス例5
本発明の要件を満たすELデバイスを上記工程に従って構成した。ただし工程5は次の通りである:
5. ホストとしての45 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての2% (0.9 nm当量)の(化合物式I-1)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
【0200】
発明デバイス例6
本発明の要件を満たすELデバイスを上記比較例7の工程に従って構成した。ただし工程5は次の通りである:
5. ホストとしての45 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての4% (1.8 nm当量)の(化合物式I-1)とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
【0201】
各デバイスの電極を横切るように、電流20 mA/cm2を印加した。発光スペクトルを測定し、表4におけるデバイス特性が計算されるのを可能にした。「Delta(デルタ) CIE」という用語は、デバイスの色度が、電極を横切って印加された電流とともに、どのように変化するかの尺度である。理想的には、色度は、印加電極とともに変化することはなく、「Delta CIE」はゼロとなる。「Delta CIE」という用語は下記のように定義される:
【0202】
【数1】

【0203】
表5に示されているように、本発明のドーパント材料を使用して、極めて効率的な白色OLEDデバイスを調製することができる。青色ドーパント材料の濃度を変化させることにより、白色発光の色度を変えることができる。本発明の白色OLEDデバイスの発光収率は、比較例よりも高い。本発明の青色ドーパント材料の追加の利点は、結果として形成された白色OLEDデバイスのDelta CIEが、比較例の青色ドーパント材料を内蔵するデバイスよりも小さいことである。
【0204】
【表6】

【0205】
比較デバイス例9
比較ELデバイスを下記のように構成した。
【0206】
1. アノードとして85 nmの酸化インジウム錫(ITO)層が被覆されたガラス基板を順次、商業的な洗剤中で超音波処理し、脱イオン水中で濯ぎ、トルエン蒸気中で脱脂し、そして約1分間にわたって酸素プラズマに当てる。
2. 米国特許第6,208,075号明細書に記載されているようなCHF3のプラズマ支援堆積により、ITO上に1 nmのフルオロカーボン(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積する。
【0207】
3. 正孔輸送層(HTL)として75 nmの4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル層を真空蒸着することにより、上のように調製された基板をさらに処理した。
4. ホストとしての20 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての3%の化合物L47とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
【0208】
5. トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(ALQ)から成る35 nm電子輸送層(ETL)を、加熱されたグラファイト・ボート源を含む被覆ステーションにおいて、基板上に真空蒸着した。
6. 0.5 nmのフッ化リチウム層を基板上に蒸着し、続いて100 nmのアルミニウム層を蒸着することにより、カソード層を形成した。
【0209】
上記順序で、ELデバイスの堆積を完了する。次いでデバイスを、周囲環境から保護するために、乾燥グローブ・ボックス内で密閉パッケージングする。
【0210】
発明デバイス例7
本発明の要件を満たすELデバイスを、比較例9の工程に従って構成した。ただし青色ドーパントL47の代わりに、4%のレベルのI-30を使用した。
【0211】
発明デバイス例8
本発明の要件を満たすELデバイスを、発明例7の工程に従って構成した。ただし青色ドーパントI-30を6%のレベルで使用した。
【0212】
各デバイスの電極を横切るように電流20 mA/cm2を印加することにより、比較デバイス例9と、発明デバイス7及び8とを評価した。発光スペクトルを測定し、表6におけるデバイス特性が計算されるのを可能にした。相対発光収率は、発明例デバイスの発光収率(cd/A)を、比較例9の発光収率(cd/A)で割算したものとして定義される。相対外部効率は、発明例デバイスの外部効率(W/A)を、比較例9の外部効率(W/A)で割算したものとして定義される。下記表6は結果を示す。
【0213】
【表7】

【0214】
表6に示されているように、本発明のドーパント材料は、比較例9の基準ドーパント材料を使用したデバイスよりも良好な青色度を有するとともに、同様の外部効率を有する青色OLEDデバイスをもたらす。
【0215】
比較デバイス例10
比較ELデバイスを下記のように構成した:
1. アノードとして85 nmの酸化インジウム錫(ITO)層が被覆されたガラス基板を順次、商業的な洗剤中で超音波処理し、脱イオン水中で濯ぎ、トルエン蒸気中で脱脂し、そして約1分間にわたって酸素プラズマに当てる。
【0216】
2. 米国特許第6,208,075号明細書に記載されているようなCHF3のプラズマ支援堆積により、ITO上に1 nmのフルオロカーボン(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積する。
3. 正孔輸送層(HTL)として75 nmの4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル層を真空蒸着することにより、上のように調製された基板をさらに処理した。
【0217】
4. ホストとしての20 nmの9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンと、青色ドーパントとしての3%の化合物L47とから成る被膜を、上記基板上に蒸着することにより、青色発光層(青色EML)を形成した。
5. トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(ALQ)から成る35 nm電子輸送層(ETL)を、加熱されたグラファイト・ボート源を含む被覆ステーションにおいて、基板上に真空蒸着した。
【0218】
6. 0.5 nmのフッ化リチウム層を基板上に蒸着し、続いて100 nmのアルミニウム層を蒸着することにより、カソード層を形成した。
【0219】
上記順序で、ELデバイスの堆積を完了する。次いでデバイスを、周囲環境から保護するために、乾燥グローブ・ボックス内で密閉パッケージングする。
【0220】
発明デバイス例9
本発明の要件を満たすELデバイスを、比較例10の工程に従って構成した。ただし青色ドーパントL47の代わりに、4%のレベルのI-31を使用した。
【0221】
発明デバイス例10
本発明の要件を満たすELデバイスを、発明例9の工程に従って構成した。ただし青色ドーパントI-31を6%のレベルで使用した。
【0222】
各デバイスの電極を横切るように電流20 mA/cm2を印加することにより、比較デバイス例10と、発明デバイス9及び10とを評価した。発光スペクトルを測定し、表7におけるデバイス特性が計算されるのを可能にした。相対発光収率は、発明例デバイスの発光収率(cd/A)を、比較例10の発光収率(cd/A)で割算したものとして定義される。相対外部効率は、発明例デバイスの外部効率(W/A)を、比較例10の外部効率(W/A)で割算したものとして定義される。下記表7は結果を示す。
【0223】
【表8】

【0224】
表7に示されているように、例9及び10における本発明のドーパント材料の使用は、比較例10の基準ドーパント材料を使用したデバイスよりも良好な青色度を有するとともに、同様の外部効率を有する青色OLEDデバイスをもたらす。
【0225】
本明細書中で言及された特許明細書及びその他の刊行物の内容全体を、参考のため本明細書中に引用する。特定の好ましい態様を具体的に参照しながら、本発明を詳細に説明してきたが、本発明の思想及び範囲内で、変更及び改変を加え得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】図1は、本発明を用いることができる典型的なOLEDデバイスを示す概略断面図である。
【図2】図2は、発光収率が電流密度とともに変化しないことを示す、例4の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0227】
101 基板
103 アノード
105 正孔注入層(HIL)
107 正孔輸送層(HTL)
109 発光層(LEL)
111 電子輸送層(ETL)
113 カソード
150 電源
160 導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードとアノードとを含み、そして該カソードと該アノードとの間に、式(I):
【化1】

(上記式中:
Ar1、各Ar2、及びAr3〜Ar7は、独立して選択されるアリール基又はヘテロアリール基であり、該アリール基又はヘテロアリール基は追加の縮合環を含有することができ、但し2つのアリール環又はヘテロアリール環は結合されていてもよく;そして
nは1、2又は3である)
によって表される発光成分を含む発光層を有する有機エレクトロルミネッセント・デバイス。
【請求項2】
nが1又は2である請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
Ar1〜Ar7が炭化水素である請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
少なくとも1つのAr2が、追加の縮合環を含有していてよいヘテロアリール基を表す請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
少なくとも1つのAr2が、追加の縮合環を含有していてよい含窒素ヘテロアリール基を表す請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
nが1又は2であり、Ar2のうちの少なくとも1つが、ピリジンジイル、キノリンジイル基、ベンゾチアゾールジイル基、ベンゾオキサゾールジイル基、又はチオフェンジイル基を表す請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記発光層のカソード側に更なる層を含み、当該層が、該層内の当該化合物のうちで最も低いLUMO値を有し、該層の10容積%以上且つ100容積%未満の量の第1の化合物;及び低電圧電子輸送材料であり、該第1化合物よりも高いLUMO値を示し、該層の90容積%以下且つ0容積%超の総量の少なくとも1種の第2化合物を含有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
カソードとアノードとを含み、そして該カソードと該アノードとの間に電子輸送層を有する有機エレクトロルミネッセント・デバイス。
【請求項9】
Ar1〜Ar6が独立して、フェニル、及び縮合環アリール基から成る群から選択される請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
Ar1〜Ar6が独立して、フェニル、ナフチル、アントリル、及びフェナントリル基から成る群から選択される請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
該Ar基及び該R基が、昇華温度204℃未満の化合物を提供するように選択される請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
Ar7がフェニル基である請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
Ar7が縮合環炭素環式基である請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
該基Ar3、Ar4、Ar5及びAr6のうちの少なくとも1つが、非アリール基で置換されている請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
該非アリール基がアルキル基である請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
式(I)の基が、該発光層の2〜6重量%の量で存在する請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
該発光層内に、スチリル、アントラセン、ペリレン、ナフタセン、又はフェナントレン化合物から選択される化合物が、さらに存在する請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
該追加の化合物が、アントラセン化合物である請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
該アントラセン誘導体が、一般式(V):
【化2】

(上記式中、
A1及びA2はそれぞれ独立して、置換型又は無置換型アントラセン基を表し;そしてLは、単結合又は連結基を表す)、
又は一般式(VI):
【化3】

(上記式中、
Anは置換型又は無置換型アントラセン基を表し;そして
A3及びA4はそれぞれ独立して、置換型又は無置換型の芳香族縮合環基、又は置換型又は無置換型の芳香族非縮合環基を表し;そしてAn、A3及びA4は独立して、アリール、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアミン、ニトロ、シアノ、エステル、及びハロゲン基で置換されていてよい)
によって表される請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
該アントラセン化合物が、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン、2-t-ブチル-9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン、及び9-(2-ナフチル)-10-(4-ビフェニル)アントラセンから成る群から選択される請求項18に記載のデバイス。
【請求項21】
該アントラセン材料が、該層の70〜99重量%を構成する請求項18に記載のデバイス。
【請求項22】
該発光層内に、正孔輸送材料と、電子輸送材料とが存在する請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
該追加的に存在する正孔輸送材料、又は該追加的に存在する電子輸送材料が、該デバイスの隣接層内の材料と同一である請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
該発光成分が、式(III):
【化4】

(上記式中、R1〜R4は、同じ又は異なっていてよい、独立して選択される0〜5つの置換基を表す)
によって表される請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
少なくとも1つの置換基が、アルキル、アルコキシ、アリール、又はアリールオキシ基である請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
該発光成分が、式(III):
【化5】

によって表される請求項1に記載のデバイス。
【請求項27】
白色光が、直接に又はフィルターを使用することによって生成される請求項1に記載のデバイス。
【請求項28】
該発光成分が、高分子材料である請求項1に記載のデバイス。
【請求項29】
式(I) によって表される化合物:
【化6】

(上記式中、
Ar1〜Ar6は、独立して選択されるアリール又はヘテロアリール基であり;
Ar7は、フェニル又は縮合環アリール基もしくはヘテロアリール基であり;
但し2つのアリール環又はヘテロアリール環は結合されていてもよく;
nは1、2又は3である)。
【請求項30】
式(II) によって表される化合物:
【化7】

(上記式中、
Ar1〜Ar6は、独立して選択されるアリール又はヘテロアリール基であり;
Ar7は、フェニル又は縮合環アリール基もしくはヘテロアリール基であり;
但し2つのアリール環又はヘテロアリール環は結合されていてもよい)。
【請求項31】
式(III) によって表される化合物:
【化8】

(上記式中、R1〜R4は、同じ又は異なっていてもよい、独立して選択される0〜5つの置換基を表す)。
【請求項32】
請求項1に記載のエレクトロルミネッセント・デバイスを含むディスプレイ。
【請求項33】
請求項1に記載のエレクトロルミネッセント・デバイスを含むエリア照明デバイス。
【請求項34】
請求項1に記載のデバイスに電位を印加することを含む発光方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−518479(P2008−518479A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538980(P2007−538980)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/037363
【国際公開番号】WO2006/049860
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】