説明

エレベータのドア安全装置

【課題】誤検出等の不要な動作を防止してエレベータの運行効率の向上を図ったエレベータのドア安全装置を提供する。
【解決手段】ドア間隙間Gおよび戸袋隙間Fの内部に袖壁側ロープ9およびドア側ロープ11を上下方向に沿ってそれぞれ張設するとともに、その両ロープ9,11が異物とともに各隙間G,Fの奥部側へ引き込まれたことを検出する検出スイッチ18,23を設ける。戸開動作中に万が一戸袋隙間Fまたはドア間隙間Gへ異物が引き込まれると、袖壁側ロープ9またはドア側ロープ11が異物とともに戸袋隙間Fまたはドア間隙間Gの奥部側に引き込まれるとともに、検出スイッチ18,23が検出作動し、戸開動作を直ちに停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は戸開動作時にエレベータの出入口を開閉するスライドドアとこのスライドドアと重合関係にあって且つ戸開動作時に該スライドドアと相対移動する壁体との間に万が一乗客の衣服や手指等の異物が引き込まれた際に、少なくとも戸開動作を減速するエレベータードアの引き込まれ防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のドア安全装置としては、例えば、戸開閉形式が二枚片開き式の出入口において、光電スイッチの投光器と受光器を互いに正対するように配置して低速スライドドアと高速スライドドアとの間の隙間の入口付近および低速スライドドアと袖壁との間の隙間の入口付近にて光電スイッチの検出域となる照射光を上下方向に通過させ、戸開動作中に上記照射光が異物に遮られて光電スイッチが検出作動したことを条件にスライドドアの戸開動作を停止させるようにした技術が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2002−265175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の技術では、その据付作業時や保守作業時における上記照射光の光軸調整が煩雑となる上に、出入口の乗客がいる空間内を上記照射光が通過するため、太陽や照明等の投光器以外の光源からの光や塵埃等の外乱の影響による誤動作を起こしやすく、エレベータ自体の運行効率が低下する恐れがある。また、特に光電スイッチの照射光として可視光を用いる場合には、その照射光が乗客の目に触れることで乗客が違和感を覚える恐れがあり、好ましくない。
【0004】
さらに、高速スライドドアと低速スライドドアの間の隙間に引き込まれる異物を検出する光電スイッチは、その投光器および受光器が低速スライドドアに固定されていることから、戸開閉時に投光器および受光器が低速スライドドアとともに移動し、ドア制御装置に信号を伝送する伝送ケーブル等の投光器および受光器に付帯するケーブル類が繰り返し屈曲させられることとなり、ドア安全装置の信頼性の面で好ましくない。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、特に戸袋内への異物の引き込まれを確実に検出してそれ以上の異物の引き込まれを防止するとともに、誤検出等の不要な動作を防止してエレベータの運行効率の向上を図ったエレベータのドア安全装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、戸開動作時に、ドア駆動装置により駆動されてかご側または乗場側の出入口を左右方向に開閉するスライドドアと、そのスライドドアと重合関係にあって且つ戸開動作時にそのスライドドアと相対移動する壁体と、の間の隙間に異物が引き込まれたときに戸開動作を少なくとも減速させるエレベータのドア安全装置であることを前提とし、上記隙間内に上下方向に沿って張設された索状体と、その索状体が異物とともに上記隙間の奥部側に引き込まれたことを検出する検出手段と、を備えていて、戸開動作時に上記索状体が異物とともに上記隙間の奥部側に引き込まれて検出手段が検出動作したことをもって、戸開動作を少なくとも減速させるようにしたことを特徴としている。
【0007】
ここで、上記壁体としては上記出入口脇の戸袋側の袖壁のほか、高速スライドドアと、出入口開閉時に高速スライドドアの変位に連動して高速スライドドアよりも低速で且つ高速スライドドアと同方向に変位する低速スライドドアと、を備えた例えば二枚片開き式あるいは四枚両開き式等の戸開閉形式の出入口においては、低速スライドドアを壁体として本発明を適用することも可能である。
【0008】
したがって、請求項1に記載の発明では、上記隙間内に上下方向に沿って上記索状体が配設されているため、戸開動作時に万が一上記隙間内に異物が引き込まれたときに、上記索状体が異物とともに上記隙間の奥部側に引き込まれることとなる。そして、その索状体の引き込まれを上記検出手段にて検出して戸開動作を少なくとも減速させ、異物のさらなる引き込まれを防止する。
【0009】
具体的には請求項2に記載のように、上記索状体に所定の張力を付与する付勢手段を備えているものとする。
【0010】
また、例えば請求項3に記載のように、上記索状体の一端を付勢手段が所定の付勢力をもって常時牽引しているとともに、上記索状体の一端がその索状体の緩み方向に変位可能となっていて、上記索状体の一端がその索状体の緩み方向に変位したことを検出する検出スイッチを上記検出手段として備えていると、上記索状体が異物とともに上記隙間の奥部側に引き込まれたときに、上記索状体の張力が増加することでその索状体の一端が上記緩み方向に変位し、検出スイッチが検出動作することとなる。
【0011】
一方、請求項4に記載のように、上記索状体に所定の付勢力をもって常時押し付けられたテンショナーが付勢手段として設けられているとともに、そのテンショナーが上記索状体の緩み方向に変位可能となっていて、テンショナーが上記索状体の緩み方向に変位したことを検出する検出スイッチを上記検出手段として備えていると、上記索状体が異物とともに上記隙間の奥部側に引き込まれたときに、上記索状体の張力が増加することでテンショナーが上記索状体とともに上記緩み方向に変位し、検出スイッチが検出動作することとなる。
【0012】
その上で、請求項5に記載のように、上記スライドドアは高速スライドドアであるとともに、上記壁体は出入口開閉時に高速スライドドアの変位に連動してその高速スライドドアよりも低速で且つその高速スライドドアと同方向に変位する低速スライドドアであって、検出スイッチが上記出入口の形成されたかご躯体または建物躯体に対して固定されていると、低速スライドドアが戸開閉動作しても検出スイッチが移動しない。
【0013】
より具体的には、請求項6に記載のように、上記出入口の上方に一対のプーリが戸開閉方向で低速スライドドアを挟んで互いに対向配置されているとともに、上記索状体の一端部が上記隙間内に上下方向に沿って張設されている一方で、上記索状体の他端部が上記両プーリ間に掛け渡されていて、戸開閉動作時に、上記索状体の一端部が低速スライドドアとともに平行移動する一方で、上記索状体の他端部が上記両プーリ間を周回移動するようになっているものとする。
【0014】
さらに具体的には、請求項7に記載のように、上記両プーリのうち少なくとも一方のプーリが他方のプーリから離間する方向に常時付勢されていて、その一方のプーリがテンショナーとして機能するようにするとよい。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、上記索状体が異物とともに上記隙間の奥部側に引き込まれることで上記検出手段が検出動作することから、上記検出手段が塵埃等の外乱の影響を受けずに安定して動作するようになり、誤検出等の不要な動作を防止してエレベータの運行効率の向上が図れる。その上、上記索状体が上記隙間内に配設されているため、ドア安全装置の存在が外観上目立たずにエレベータの意匠上好ましいものとなる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明によれば、低速スライドドアが戸開閉動作しても従来のように検出スイッチが移動しないため、ドア安全装置の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態としてエレベータのかごに設けられた出入口が全閉している状態の概略を示す図であって、図1の(a)はその出入口をかご室外側から見た正面図、図1の(b)は図1におけるA−A断面図である。また、図2の(a)は図1の(a)における出入口の戸開動作中の状態を示す図であって、図2の(b)は図2の(a)におけるB−B断面図である。
【0018】
図1の(a)および(b)に示すように、エレベータのかごに設けられた出入口1はかご室を囲う周壁のうち乗場側の垂直壁2に開口形成されていて、高速スライドドア3および低速スライドドア4により開閉される。なお、各スライドドア3,4の上部にはそれぞれドアハンガ5,6が取り付けられていて、そのドアハンガ5,6を介して各スライドドア3,4がそれぞれ図示外のドアレールに吊下げられている。
【0019】
出入口1の戸開閉形式はいわゆる二枚片開き式で、ドア制御装置7からの指令に基づいてドア駆動装置8が各スライドドア3,4を駆動し、周知のように各スライドドア3,4が互いに同方向に且つ互いに異なる速度でスライド変位して出入口1を開閉するようになっている。そして、出入口1が全開すると、各スライドドア3,4が垂直壁2のうち戸開方向側の袖壁2aのかご室外側に形成された戸袋空間内に収納されることとなる。言い換えれば、壁体たる低速スライドドア4は高速スライドドア3と重合関係にあって且つ戸開動作時に高速スライドドア3と相対変位し、壁体たる袖壁2aは低速スライドドア4と重合関係にあって且つ戸開動作時に低速スライドドア4と相対変位する。その開閉機構上、低速スライドドア4と高速スライドドア3との間に各スライドドア3,4の厚さ方向で所定量のドア間隙間Gが設けられているとともに、低速スライドドア4と袖壁2aとの間には各スライドドア3,4の厚さ方向で所定量の戸袋隙間Fが設けられている。
【0020】
戸袋隙間F内には索状体たる袖壁側ロープ9が上下方向に沿って張設されていて、袖壁側ロープ9の一端は袖壁2aのかご室外側壁面のうち出入口側であって且つ下方側の角隅部に設けられた袖壁側固定部2bに固定されている。また、袖壁側固定部2bの直上にはガイドプーリ10が設けられていて、袖壁側ロープ9がそのガイドプーリ10に巻き掛けられて曲折しているとともに、袖壁側ロープ9の他端が後述するように戸閉方向に付勢されてその袖壁側ロープ9に所定の張力が付与されている。換言すれば、袖壁側ロープ9のうち袖壁側固定部2bとガイドプーリ10との間の部位が引き込まれ検出部9aとして戸袋隙間F内に張設されている。
【0021】
他方、ドア間隙間G内には索状体たるドア側ロープ11が上下方向に沿って張設されていて、そのドア側ロープ11の一端は低速スライドドア4の裏面のうち戸閉方向側であって且つ下方側の角隅部に設けられたドア側固定部4aに固定されている。また、低速スライドドア4のドアハンガ6にガイドプーリ12が設けられているとともに、そのガイドプーリ12はドア側固定部4aの直上に位置していて、ドア側ロープ11がそのガイドプーリ12に巻き掛けられている。
【0022】
さらに、垂直壁2のうち出入口1よりも上方側にテンションプーリ13および返しプーリ14が配置されているとともに、その両プーリ13,14は戸開閉方向で低速スライドドア4を挟んで互いに対向配置されていて、その両プーリ13,14同士の間にドア側ロープ11が掛け渡されている。両プーリ13,14のうち戸開方向側に設けられたテンションプーリ13は後述するように常時戸開方向に付勢されていて、テンションプーリ13がドア側ロープ11のテンショナーたる付勢手段として機能するようになっている。
【0023】
そして、ドア側ロープ11の他端は低速スライドドア4のドアハンガ6に設けられたハンガ側固定部6aに固定されている。換言すれば、ドア側ロープ11はドア側固定部4aからガイドプーリ12、テンションプーリ13、返しプーリ14の順に巻き掛けられていて、ドア側ロープ11のうちドア側固定部4aとガイドプーリ12との間の部位が一端部たる引き込まれ検出部11aとしてドア間隙間G内に上下方向に沿って張設されている一方で、ドア側ロープ11のうちガイドプーリ12とハンガ側固定部6aとの間の部位は他端部たる従動部11bとして実質的にドアハンガ6を介していわゆる無端状をなすようになっている。
【0024】
したがって、各スライドドア3,4が戸開動作すると、図2の(a)および(b)に示すようにドア側ロープ11のうち引き込まれ検出部11aが低速スライドドア4とともに戸開方向に平行移動する一方で、ハンガ側固定部6aおよびガイドプーリ12がドアハンガ6とともに戸開方向に移動することから、ドア側ロープ11のうち従動部11bはテンションプーリ13と返しプーリ14との間で周回移動することとなる。
【0025】
なお、袖壁側ロープ9およびドア側ロープ11は伸縮性のないワイヤロープである。
【0026】
図3は図1におけるC部の拡大図であって、図3の(a)はその正面図、図3の(b)はその平面図である。
【0027】
より詳細には図3に示すように、垂直壁2のうちガイドプーリ10の戸開方向側に略L字状のスプリングブラケット16が設けられているとともに、そのスプリングブラケット16に穿設された孔16aを袖壁側ロープ9が挿通していて、袖壁側ロープ9の他端にはエンドピース15が取り付けられている。エンドピース15はそのエンドピース15とスプリングブラケット16との間に付勢手段として介装されたスプリング17によって戸開方向に常時付勢され、エンドピース15が戸閉方向、すなわち袖壁側ロープ9の緩み方向に変位可能となっている。なお、スプリング17は圧縮コイルスプリングであるとともに、スプリング17の中心を袖壁側ロープ9が挿通していて、そのスプリング17によって袖壁側ロープ9に所定の張力が付与されている。また、エンドピース15に対向して検出手段たる検出スイッチ18が略L字状のスイッチブラケット19を介して垂直壁2に固定されているとともに、その検出スイッチ18はエンドピース15に常時押圧されている。すなわち、検出スイッチ18はその押圧状態が解除されたことをもってエンドピース15の戸閉方向への変位を検出するようになっている。
【0028】
一方、テンションプーリ13はプーリブラケット20のプーリ軸20aに取り付けられていて、プーリブラケット20は略L字状のブラケット本体20bとそのブラケット本体20bから戸閉方向側に向かって突設されたロッド20cとから構成されている。ブラケット本体20bの戸閉方向側には略L字状のスプリングブラケット21が垂直壁2に固定されているとともに、そのスプリングブラケット21に穿設された孔21aをロッド20cが挿通していて、プーリブラケット20が戸閉方向、すなわちドア側ロープ11の緩み方向に変位可能となっている。
【0029】
また、プーリブラケット20のブラケット本体20bとスプリングブラケット21との間にはスプリング22が介装され、プーリブラケット20が常時戸開方向に付勢されている。なお、スプリング22は圧縮コイルスプリングであって、スプリング22の中心をロッド20cが挿通している。換言すれば、テンションプーリ13が戸開方向、すなわち返しプーリ13から離間してドア側ロープ11の張力を高める方向に付勢されてドア側ロープ11に常時押し付けられていて、これによりドア側ロープ11に所定の張力が付与されている。
【0030】
さらに、ロッド20cの先端に対向するように検出手段たる検出スイッチ23がスイッチブラケット24を介して垂直壁2に固定されていて、テンションプーリ13が戸閉方向に変位したことを検出スイッチ23が検出するようになっている。
【0031】
図4は図3におけるプーリブラケット20のガイド機構を示す図であって、図4の(a)はその平面図、図4の(b)は図4の(a)におけるD−D断面図である。
【0032】
プーリブラケット20を案内するガイド機構としては、図4の(a)および(b)に示すように、プーリブラケット20のブラケット本体20bに上下一対のガイドシュー25を設ける一方で、垂直壁2側に略偏平チャンネル状のガイドレール26を設け、そのガイドレール26上をガイドシュー25が摺動するようにするとよい。
【0033】
図5は戸開動作時におけるドア制御装置7の制御内容を示すフローチャートであって、図6の(a)および(b)はそれぞれ図4の(a)および(b)においてドア安全装置が作動した状態を示す図である。
【0034】
以上のように構成したエレベータのドア安全装置では、図5に示すように、ドア制御装置7の指令に基づいてドア駆動装置8が戸開動作を開始(ステップS1)した後、戸開動作中はドア制御装置7が検出スイッチ18,23の作動を常時監視するようになっている(ステップS2〜S4)。なお、戸開動作中には各スライドドア3,4が戸開方向に移動するが、各検出スイッチ18,23はかご躯体に対して相対変位しない。
【0035】
戸開動作中に万が一乗客の手指や衣服等の異物が戸袋隙間Fに引き込まれると、その異物が袖壁側ロープ9に当接するとともに、袖壁側ロープ9が撓むことで異物への衝撃を緩和しつつ、袖壁側ロープ9が異物に押圧されてその異物とともに戸袋隙間Fの奥部側へ引き込まれることとなる。
【0036】
このように袖壁側ロープ9が戸袋隙間Fの奥部側に引き込まれることにより、袖壁側ロープ9の張力が増加して図6に示すようにエンドピース15がスプリング17の付勢力に抗して戸閉方向に変位する。そして、検出スイッチ18の押圧状態が解除されるとともに、検出スイッチ18がドア制御装置7に異物検出信号を出力して異物の引き込まれが検出されることとなる。
【0037】
また、戸開動作中に上記異物が万が一ドア間隙間Gに引き込まれた場合には、上記異物が戸袋隙間Fに引き込まれた場合と同様に、ドア側ロープ11が上記異物とともにドア間隙間Gの奥部側へ引き込まれてドア側ロープ11の張力が増加し、図6に示すようにテンションプーリ13がプーリブラケット20とともにスプリング22の付勢力に抗して戸開方向に変位する。そして、プーリブラケット20が戸開方向に変位することで、プーリブラケット20のロッド20cが検出スイッチ23を押圧するとともに、その検出スイッチ23が異物検出信号をドア制御装置7に出力して上記異物の引き込まれが検出されることとなる。
【0038】
以上のように戸開動作中に異物検出信号がドア制御装置7に取り込まれると、ドア制御装置7は直ちにドア駆動装置8の戸開動作を停止させる(ステップS5)。または、戸開速度を減速し、乗客が上記異物を戸袋隙間Fまたはドア間隙間Gから引き離すための時間を確保することでも対応できる。
【0039】
その後、戸袋隙間Fおよびドア間隙間G内に上記異物が存在しないこと、すなわちドア制御装置7に対する異物検出信号の出力がないことを確認した上で(ステップS6〜S7)、通常の戸開速度よりも低速で戸開動作して出入口1を全開する(ステップS8〜S11)。なお、低速戸開動作中に再び異物が検出された場合には、ステップS5に戻ることとなる。
【0040】
さらに、戸開動作中以外の状態でドア制御装置7に異物検出信号が取り込まれた場合にアナウンス等で乗客に対して注意を促がす等の応用も考えられる。
【0041】
したがって、以上のように構成したエレベータのドア安全装置によれば、袖壁側ロープ9またはドア側ロープ11が上記異物とともに戸袋隙間Fまたはドア間隙間Gの奥部側に引き込まれることで検出動作するようになっているため、塵埃等の外乱の影響を受けずにドア安全装置の動作が安定し、誤検出等の不要な動作を防止してエレベータの運行効率の向上が図れる。
【0042】
その上、袖壁側ロープ9およびドア側ロープ11が戸袋隙間Fおよびドア間隙間Gの内部に配設されているため、ドア安全装置の存在が外観上目立たなくなり、エレベータの外観品質が向上するメリットがある。
【0043】
また、ドア間隙間Gへの異物の引き込まれを検出する検出スイッチ23が垂直壁2に対して固定されているため、従来のように戸開閉動作時に検出スイッチ23が移動することがなく、ドア安全装置の耐久性が向上してその信頼性が高まる。
【0044】
ここで、本実施の形態ではかごに形成された二枚片開き式の出入口1に本発明を適用するものとしたが、本発明は乗場側の出入口にも適用できるほか、戸開閉形式を問わずに適用できることは言うまでもなく、例えば二枚両開き式の出入口にも当然適用できる。
【0045】
図7は本発明の第2の実施の形態としてプーリブラケットの変形例を示す図であって、図7の(a)は平常時におけるプーリブラケットを示す図、図7の(b)は検出動作状態のプーリブラケットを示す図である。
【0046】
図7の(a)および(b)に示す第2の実施の形態では、プーリブラケット27が揺動軸27aを中心として戸閉方向に揺動変位可能となっているとともに、プーリブラケット27はスプリング28によって戸開方向に常時付勢されていて、スプリング28は垂直壁2に固定されたスプリングブラケット29によってバックアップされている。また、揺動軸27aの位置はテンションプーリ13のプーリ軸27bの位置から下方側にオフセットした位置に設定されていて、プーリブラケット27が揺動変位することでテンションプーリ13と返しプーリ14との軸間距離が変化するようになっている。すなわち、ドア側ロープ11が異物とともにドア間隙間Gの奥部側に引き込まれたときに、プーリブラケット27がスプリング28の付勢力に抗して戸閉方向、換言すればドア側ロープ11の緩み方向に揺動変位する。
【0047】
なお、この場合にはドア側ロープ11の緩み方向へのプーリブラケット27の揺動変位を検出するように検出スイッチを配置し、戸開動作時における上記異物の引き込まれを検出する。
【0048】
したがって第2の実施の形態におけるプーリブラケット27を採用した場合においても第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施の形態としてエレベータのかごに形成された出入口を示す概略図であって、同図(a)はその正面図、同図(b)は同図(a)におけるA−A断面図。
【図2】図1の(a)に示す出入口の戸開動作中の状態を示す概略図であって、同図(a)はその正面図、同図(b)は同図(a)におけるB−B断面図。
【図3】図1におけるC部の拡大図であって、同図(a)はその正面図、同図(b)はその平面図。
【図4】プーリブラケットのガイド機構を示す図であって、同図(a)はその正面図、同図(b)は同図(a)におけるD−D断面図。
【図5】戸開動作時におけるドア制御装置の制御内容を示すフローチャート。
【図6】ドア安全装置の作動状態を示す図1におけるC部の拡大図であって、同図(a)はその正面図、同図(b)はその平面図。
【図7】本発明の第2の実施の形態としてプーリブラケットの変形例を示す図であって、同図(a)は平常時におけるプーリブラケットを示す図、同図(b)は検出動作時におけるプーリブラケットを示す図。
【符号の説明】
【0050】
1…出入口
2a…袖壁(壁体)
3…高速スライドドア
4…低速スライドドア(壁体)
8…ドア駆動装置
9…袖壁側ロープ(索状体)
11…ドア側ロープ(索状体)
13…テンションプーリ(テンショナー)
14…返しプーリ
17…スプリング(付勢手段)
18…検出スイッチ(検出手段)
23…検出スイッチ(検出手段)
G…ドア間隙間
F…戸袋隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸開動作時に、ドア駆動装置により駆動されてかご側または乗場側の出入口を左右方向に開閉するスライドドアと、そのスライドドアと重合関係にあって且つ戸開動作時にそのスライドドアと相対移動する壁体と、の間の隙間に異物が引き込まれたときに戸開動作を少なくとも減速させるエレベータのドア安全装置であって、
上記隙間内に上下方向に沿って張設された索状体と、その索状体が異物とともに上記隙間の奥部側に引き込まれたことを検出する検出手段と、を備えていて、
戸開動作時に上記索状体が異物とともに上記隙間の奥部側に引き込まれて検出手段が検出動作したことをもって、戸開動作を少なくとも減速させるようにしたことを特徴とするエレベータのドア安全装置。
【請求項2】
上記索状体に所定の張力を付与する付勢手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのドア安全装置。
【請求項3】
上記索状体の一端を付勢手段が所定の付勢力をもって常時牽引しているとともに、上記索状体の一端がその索状体の緩み方向に変位可能となっていて、上記索状体の一端がその索状体の緩み方向に変位したことを検出する検出スイッチを上記検出手段として備えていることを特徴とする請求項2に記載のエレベータのドア安全装置。
【請求項4】
上記索状体に所定の付勢力をもって常時押し付けられたテンショナーが付勢手段として設けられているとともに、そのテンショナーが上記索状体の緩み方向に変位可能となっていて、テンショナーが上記索状体の緩み方向に変位したことを検出する検出スイッチを上記検出手段として備えていることを特徴とする請求項2に記載のエレベータのドア安全装置。
【請求項5】
上記スライドドアは高速スライドドアであるとともに、上記壁体は出入口開閉時に高速スライドドアの変位に連動してその高速スライドドアよりも低速で且つその高速スライドドアと同方向に変位する低速スライドドアであって、検出スイッチが上記出入口の形成されたかご躯体または建物躯体に対して固定されていることを特徴とする請求項4に記載のエレベータのドア安全装置。
【請求項6】
上記出入口の上方に一対のプーリが戸開閉方向で低速スライドドアを挟んで互いに対向配置されているとともに、上記索状体の一端部が上記隙間内に上下方向に沿って張設されている一方で、上記索状体の他端部が上記両プーリ間に掛け渡されていて、
戸開閉動作時に、上記索状体の一端部が低速スライドドアとともに平行移動する一方で、上記索状体の他端部が上記両プーリ間を周回移動するようになっていることを特徴とする請求項5に記載のエレベータのドア安全装置。
【請求項7】
上記両プーリのうち少なくとも一方のプーリが他方のプーリから離間する方向に常時付勢されていて、その一方のプーリがテンショナーとして機能するようになっていることを特徴とする請求項6に記載のエレベータのドア安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−63076(P2008−63076A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242342(P2006−242342)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】