説明

エレベータのドア装置及びエレベータ

【課題】火災時に乗り場側の炎が昇降路側に移らない、安価に製造することができるエレベータのドア装置及びエレベータを提供する。
【解決手段】本実施形態のドア装置は、ドア板と、ドア板の下端に設けられ、あおりを規制するガイドシューと、横幅がドア装置の1枚の幅以下であり、縦の長さがガイドシューを覆い、乗り場と昇降路とを遮断する長さである防火板と、を備える。防火板は、乗り場側において発生した火災の炎がガイドシューに燃え移り、この炎がさらに昇降路側に燃え移ることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータのドア装置及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの設置された建物内において火災が発生した場合、炎がエレベータの昇降路に移らないようにする必要がある。従来のエレベータのドア装置は乗り場側のドアのあおりを防止するためのガイドシューは合成樹脂によって形成されており、炎がこの樹脂部分に移る可能性がある。
【0003】
この点に関し、乗り場側ドアと昇降路の間を防火シャッターによって遮断する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−267653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、防火シャッターは製造コストが高く、メインテナンスや点検の必要がある。
【0006】
従って、火災時に乗り場側の炎が昇降路側に移らない、安価に製造することができるエレベータのドア装置及びエレベータが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、一実施形態はエレベータの昇降路側に開閉可能に設置されるドア板と、ドア板の下端に設けられ、昇降路のステップ部に設けられるガイド溝に嵌め込まれ、ドア板のあおりを規制するガイドシューと、横幅がドア板の1枚の幅以下であり、縦の長さがガイドシューを覆い、乗り場と昇降路とを遮断する長さである防火板と、を備えるエレベータのドア装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エレベータの側面図である。
【図2】エレベータのドア装置下方付近の断面図である。
【図3】ドア装置のドアの1枚を昇降路側から見た図である。
【図4】防火装置の斜視図である。
【図5】第1の応用例にかかるドア装置下方付近の断面図である。
【図6】第2の応用例にかかるドア装置下方付近の断面図である。
【図7】第3の応用例にかかるドア装置下方付近の断面図である。
【図8】防火板の断面形状の応用例を示す図である。
【図9】防火板の断面形状の応用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、エレベータのドア装置及びエレベータの一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
本実施形態のエレベータのドア装置は、エレベータの昇降路側に開閉可能に設置されるドア板と、ドア板の下端に設けられ、昇降路のステップ部に設けられるガイド溝に嵌め込まれ、ドア板のあおりを規制するガイドシューと、横幅がドア板の1枚の幅以下であり、縦の長さがガイドシューを覆い、乗り場と昇降路とを遮断する長さである防火板と、を備える。
【0011】
図1は、本実施形態に係るエレベータ100の側面図である。図1に示すように、エレベータ100は、乗客や貨物を載せ、入り口ドア101Aを有し、昇降路110を昇降するカゴ室101と、カゴ室101に一端が係止され、カゴ室101を吊りあげるロープ106と、ロープ106の他端に係止される錘103と、ロープ106を巻き上げる巻き上げ機102と、昇降路110の乗り場側に設けられるドア装置104と、昇降路110のドア装置104の下方に設けられるステップ部105と、を備える。
【0012】
エレベータ100はさらに、エレベータの動作を制御する制御部と、カゴ室101内に設けられる行き先ボタンと、を備える。
【0013】
エレベータ100は、行き先ボタンが押下されると信号が制御部に入力され、制御部により巻き上げ機102が駆動し、カゴ室101を行き先階に移動させる。エレベータ100は制御部により行き先階において入り口ドア101Aを開閉させる。入り口ドア101Aはドア装置104を開閉させる開閉突起を有する。入り口ドア101Aが開閉すると開閉突起がドア装置104を入り口ドア101Aと連動させて開閉する。
【0014】
図2は、本実施形態のエレベータ100のドア装置104下方付近の断面図である。図3は、ドア装置104のドアの1枚を昇降路110側から見た図である。図4は、防火装置201の斜視図である。
【0015】
図2乃至図4に示すように、ドア装置104は、エレベータの昇降路110側に開閉可能に設置されるドア板104Bと、ドア板104Bの下端にドア板104Bのあおりを規制するガイドシュー104Aと、を有する。
【0016】
ステップ部105は、ガイドシュー104Aを嵌め込むガイド溝105Aを備える。ガイド溝105Aは、ステップ部105のドア装置104の開閉方向に沿って設けられる。ガイドシュー104Aはガイド溝105Aに嵌め込まれ、ドア装置104が開閉する際に摺動し、ドア装置104が昇降路110側及び乗り場側にあおられることを規制する。
【0017】
ドア装置104は、下端にガイドシュー104Aをカゴ室101側又は乗り場側から覆う防火板201を備える。
【0018】
防火板201の横方向の長さは1枚のドア装置104の横幅以下である。防火板201の縦方向の長さは、下端がガイド溝105Aの底部に擦らず、ガイドシュー104Aを完全に覆う長さの範囲から適宜選択できる。
【0019】
防火板201はドア装置104の下端部分、例えばガイドシュー104Aの取り付け部分にボルトなどの係止具又は溶接によって係止される。防火板201の断面は段差を有し、この段差部分によってガイドシュー104Aを覆い、乗り場側と昇降路110側とを遮断する。防火板201はドア装置104が開閉する動きに連動して動く。
【0020】
なお、防火板201は、防火板201とガイドシュー104Aとの間にスペーサを挿入し、フラットな構造とすることもできる。
【0021】
乗り場側にて火災が発生した場合、炎は防火板201によって遮られ、昇降路側に移ることはない。また、防火板201がガイドシュー104Aを覆うため、ガイドシュー104Aが火災により発火した場合にも昇降路側に炎が漏れることはない。
【0022】
図5は、第1の応用例にかかるドア装置104下方付近の断面図である。図5に示すように、ドア装置104は、エレベータの昇降路110側に開閉可能に設置されるドア板104Bと、ドア板104Bの下端にドア板104Bのあおりを規制するガイドシュー104Aと、を有する。
【0023】
ステップ部105は、ガイドシュー104Aを嵌め込むガイド溝105Aを備える。ガイド溝105Aは、ステップ部105のドア装置104の開閉方向に沿って設けられる。ガイドシュー104Aはガイド溝105Aに嵌め込まれ、ドア装置104が開閉する際に摺動し、ドア装置104が昇降路110側及び乗り場側にあおられることを規制する。
【0024】
ドア装置104は、下端にガイドシュー104Aをカゴ室101側又は乗り場側から覆う防火板202を備える。
【0025】
ステップ部105はさらに、防火板202の下端を嵌め込む摺動溝105Bを備える。摺動溝105Bは、防火板202の厚みより大きい長さの幅を有し、ガイド溝105Aに平行に設けられる。
【0026】
防火板202の横方向の長さは1枚のドア装置104の横幅以下である。防火板202の縦方向の長さは、下端が摺動溝105Bの底部に擦らず、摺動溝105Bに嵌る長さの範囲から適宜選択できる。
【0027】
防火板202はドア装置104の下端部分、例えばガイドシュー104Aの取り付け部分にボルトなどの係止具又は溶接によって係止される。防火板202の断面は段差を有し、この段差部分によってガイドシュー104Aを覆い、乗り場側と昇降路110側とを遮断する。防火板202はドア装置104が開閉する動きに連動して動く。
【0028】
なお、防火板202は、防火板201とガイドシュー104Aとの間にスペーサを挿入し、フラットな構造とすることもできる。
【0029】
乗り場側にて火災が発生した場合、炎は防火板202によって遮られ、昇降路側に移ることはない。また、防火板202がガイドシュー104Aを覆うため、ガイドシュー104Aが火災により発火した場合にも昇降路側に炎が漏れることはない。
【0030】
図6は、第2の応用例にかかるドア装置104下方付近の断面図である。図6に示すように、ドア装置104は、エレベータの昇降路110側に開閉可能に設置されるドア板104Bと、ドア板104Bの下端にドア板104Bのあおりを規制するガイドシュー104Aと、を有する。
【0031】
ステップ部105は、ガイドシュー104Aを嵌め込むガイド溝105Aを備える。ガイド溝105Aは、ステップ部105のドア装置104の開閉方向に沿って設けられる。ガイドシュー104Aはガイド溝105Aに嵌め込まれ、ドア装置104が開閉する際に摺動し、ドア装置104が昇降路110側及び乗り場側にあおられることを規制する。
【0032】
ドア装置104は、下端にガイドシュー104Aをカゴ室101側又は乗り場側から覆う防火板203を備える。
【0033】
防火板203の横方向の長さは1枚のドア装置104の横幅以下である。防火板203の縦方向の長さは、下端が下階のドア装置104にかからず、ステップ部105の昇降路側端部とカゴ室101との間の間隙106に嵌る長さの範囲から適宜選択できる。
【0034】
防火板203はドア装置104の下端部分、例えばガイドシュー104Aの取り付け部分にボルトなどの係止具又は溶接によって係止される。防火板203の断面は段差を有し、
この段差部分が間隙106に入り込むことによりガイドシュー104Aを覆い、乗り場側と昇降路110側とを遮断する。防火板203はドア装置104が開閉する動きに連動して動く。
【0035】
なお、防火板203は、防火板201とガイドシュー104Aとの間にスペーサを挿入し、フラットな構造とすることもできる。
【0036】
乗り場側にて火災が発生した場合、炎は防火板203によって遮られ、昇降路側に移ることはない。また、防火板203がガイドシュー104Aを覆うため、ガイドシュー104Aが火災により発火した場合にも昇降路側に炎が漏れることはない。
【0037】
図7は、第3の応用例にかかるドア装置104下方付近の断面図である。図7に示すように、ドア装置104は、エレベータの昇降路110側に開閉可能に設置されるドア板104Bと、ドア板104Bの下端にドア板104Bのあおりを規制するガイドシュー104Aと、を有する。
【0038】
ステップ部105は、ガイドシュー104Aを嵌め込むガイド溝105Aを備える。ガイド溝105Aは、ステップ部105のドア装置104の開閉方向に沿って設けられる。ガイドシュー104Aはガイド溝105Aに嵌め込まれ、ドア装置104が開閉する際に摺動し、ドア装置104が昇降路110側及び乗り場側にあおられることを規制する。
【0039】
ドア装置104は、下端にガイドシュー104Aをカゴ室101側又は乗り場側から覆う防火板204を備える。
【0040】
防火板204の横方向の長さは1枚のドア装置104の横幅以下である。防火板204の縦方向の長さは、下端がステップ部105を擦らず、ガイドシュー104Aを覆う長さの範囲から適宜選択できる。
【0041】
防火板204はドア装置104の下端部分、例えばガイドシュー104Aの取り付け部分にボルトなどの係止具又は溶接によって係止される。防火板204の断面は段差を有し、
この段差部分がガイドシュー104Aを覆い、乗り場側と昇降路110側とを遮断する。防火板204はドア装置104が開閉する動きに連動して動く。
【0042】
なお、防火板204は、防火板201とガイドシュー104Aとの間にスペーサを挿入し、フラットな構造とすることもできる。
【0043】
乗り場側にて火災が発生した場合、炎は防火板204によって遮られ、昇降路側に移ることはない。また、防火板203がガイドシュー104Aを覆うため、ガイドシュー104Aが火災により発火した場合にも昇降路側に炎が漏れることはない。
【0044】
図8及び図9は、防火板201、202、203、204の断面形状の応用例を示す図である。図8に示すように、防火板201、202、203、204は段差部分が傾斜していてもよい。また、図9に示すように、防火板201、202、203、204は段差部分が曲面を有していてもよい。
【0045】
防火板201、202、203、204は、不燃性の材質、例えば金属によって形成される。
【0046】
以上のべたように、本実施形態のドア装置104は、ドア板104Bと、ドア板104Bの下端に設けられ、あおりを規制するガイドシュー104Aと、横幅がドア装置104の1枚の幅以下であり、縦の長さがガイドシュー104Aを覆い、乗り場と昇降路110とを遮断する長さである防火板201、202、203、204と、を備える。
【0047】
従って、火災時に乗り場側の炎が昇降路側に移らない、安価に製造することができるエレベータのドア装置及びエレベータを製造することができるという効果がある。
【0048】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
101:カゴ室、
104:ドア装置、
104A:ガイドシュー、
104B:ドア板、
105:ステップ部、
105A:ガイド溝、
201、202、203、204:防火板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路側に開閉可能に設置されるドア板と、
前記ドア板の下端に設けられ、昇降路のステップ部に設けられるガイド溝に嵌め込まれ、前記ドア板のあおりを規制するガイドシューと、
横幅が前記ドア板の1枚の幅以下であり、縦の長さが前記ガイドシューを覆い、乗り場と前記昇降路とを遮断する長さである防火板と、
を備えるエレベータのドア装置。
【請求項2】
前記防火板は、
前記防火板の下端が前記ガイド溝に嵌め込まれ、縦の長さは前記防火板の下端が前記ガイド溝の底部に擦らず、前記ガイドシューを覆う長さの範囲から選択される請求項1記載のエレベータのドア装置。
【請求項3】
前記防火板は、
前記防火板の下端が前記ステップ部に前記ガイド溝に平行に設けられる摺動溝に嵌め込まれ、縦の長さは前記防火板の下端が前記摺動溝の底部に擦らず、前記摺動溝に嵌る長さの範囲から選択される請求項1記載のエレベータのドア装置。
【請求項4】
前記防火板は、
前記防火板の下端が前記ステップ部とカゴ室との間の間隙に嵌め込まれ、縦の長さは前記防火板の下端が下階の前記ドア装置にかからず、前記間隙に嵌る長さの範囲から選択される請求項1記載のエレベータのドア装置。
【請求項5】
前記防火板は、
前記防火板の下端が前記ステップ部を擦らず、前記ガイドシューを覆う長さの範囲から選択される請求項1記載のエレベータのドア装置。
【請求項6】
乗客や貨物を載せ、入り口ドアを有し、昇降路を昇降するカゴ室と、
前記カゴ室に一端が係止され、前記カゴ室を吊りあげるロープと、
前記ロープの他端に係止される錘と、
前記ロープを巻き上げる巻き上げ機と、
前記昇降路の乗り場側に設けられ、前記昇降路側に開閉可能に設置されるドア板と、前記ドア板の下端に設けられ、昇降路のステップ部に設けられるガイド溝に嵌め込まれ、前記ドア板のあおりを規制するガイドシューと、横幅が前記ドア板の1枚の幅以下であり、縦の長さが前記ガイドシューを覆い、乗り場と前記昇降路とを遮断する長さである防火板と、を備えるドア装置と、
を備えるエレベータ。
【請求項7】
前記防火板は、
前記防火板の下端が前記ガイド溝に嵌め込まれ、縦の長さは前記防火板の下端が前記ガイド溝の底部に擦らず、前記ガイドシューを覆う長さの範囲から選択される請求項6記載のエレベータ。
【請求項8】
前記防火板は、
前記防火板の下端が前記ステップ部に前記ガイド溝に平行に設けられる摺動溝に嵌め込まれ、縦の長さは前記防火板の下端が前記摺動溝の底部に擦らず、前記摺動溝に嵌る長さの範囲から選択される請求項6記載のエレベータ。
【請求項9】
前記防火板は、
前記防火板の下端が前記ステップ部とカゴ室との間の間隙に嵌め込まれ、縦の長さは前記防火板の下端が下階の前記ドア装置にかからず、前記間隙に嵌る長さの範囲から選択される請求項6記載のエレベータ。
【請求項10】
前記防火板は、
前記防火板の下端が前記ステップ部を擦らず、前記ガイドシューを覆う長さの範囲から選択される請求項6記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−171730(P2012−171730A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34361(P2011−34361)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】