説明

エレベータのドア装置

【課題】外向きの力と内向きの力との何れの力に対してもドア取付部の損傷を防止することができ、尚且つ、ドアレールの歪みを回避することができる、エレベータのドア装置の提供。
【解決手段】エレベータのドア装置1は、乗場出入口を開閉する乗場ドア3と、乗場ドアを開閉方向に移動可能に支持するレール5と、レールを支持するハンガーケース7と、乗場ドアをレールに沿って移動可能に吊り下げるドアハンガー9と、乗場出入口の周囲に配置された三方枠11と、ハンガーケースに対して一体的に設けられたガイド装置13とを備える。ガイド装置は、第1ガイド部35と、第2ガイド部37とを含む。第1ガイド部は、ハンガーケースが三方枠に対して離れる向きに移動すると、三方枠に当接し、第2ガイド部は、ハンガーケースが三方枠に対して近づく向きに移動すると、三方枠に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、構造物に形成された上下に延びる昇降路と、その中を移動可能に設けられたかごと、構造物の各階に設けられた乗場とを備えている。かごには、かごドア装置が設けられており、乗場それぞれには、乗場ドア装置が設けられていた。そして、かごが目的の乗場に停止した際、かごドア装置と乗場ドア装置との高さ位置が適正に揃った状態でかごドア及び乗場ドアの双方が開かれることで、利用者はかごと乗場との間で乗り降りすることができるように企図されていた。
【0003】
ところで、エレベータの乗場のなかには、構造物の室内ではなく外に面した場所に設けられるものもある。そのような乗場では、乗場ドアは天候如何では強風を直接受けることもあり、その場合、乗場ドアが昇降路側に向けて押し込まれる強い力を受けることとなる。また、天候以外の要因でも、利用者または荷物が接触することで、乗場ドアが昇降路側に向けた強い力を受けることもありうる。
【0004】
特許文献1には、かごドア装置において、かごドアに外力が作用した際、かごドアの取付部の破損を防止するための技術が開示されている。具体的には、かごドアのドアハンガーからかごのハンガーケースに向けてストッパーを立てておき、かごドアに外力が作用した場合でも、ストッパーがハンガーケースに当接することでドアハンガーの過大な変形を抑制するものであった。
【0005】
かかる特許文献1に開示の技術を乗場ドアに適用し、乗場ドアを前述した天候や人為的作用による変形から守ろうとすることも想定できるが、特許文献1に開示のストッパーは主に、ドアハンガーがハンガーケースに接近することを抑制するものであるので、乗場ドアが乗場外側へ向けて引き寄せられる外力(外向きの力)には対処することができても、乗場ドアが昇降路側へ向けて押し込まれる外力(内向きの力)には対処することが困難であった。また、特許文献1に開示の構成では、ストッパーがハンガーケースに当接するたびに異常音が発生する問題もある。さらに、特許文献1の構成では、ドアが受けた外力がハンガーケースを介してドアレールにまで伝わり、ドアレールが歪む恐れもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−298477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、外向きの力と内向きの力との何れの力に対してもドア取付部の損傷を防止することができ、尚且つ、ドアレールの歪みを回避することができる、エレベータのドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明のエレベータのドア装置は、乗場出入口を開閉する乗場ドアと、前記乗場ドアを開閉方向に移動可能に支持するレールと、前記レールを支持するハンガーケースと、前記乗場ドアを前記レールに沿って移動可能に吊り下げるドアハンガーと、前記乗場出入口の周囲に配置された三方枠と、前記ドアハンガーに対して一体的に設けられたガイド装置とを備え、前記ガイド装置は、第1ガイド部と、第2ガイド部とを含み、前記第1ガイド部は、前記ドアハンガーが前記三方枠に対して近づく向きに所定の距離移動すると、前記三方枠の上枠に当接するように設けられており、前記第2ガイド部は、前記ドアハンガーが前記三方枠に対して離れる向きに所定の距離移動すると、前記三方枠の上枠に当接するように設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエレベータのドア装置によれば、外向きの力と内向きの力との何れの力に対してもドア取付部の損傷を防止することができ、尚且つ、ドアレールの歪みを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置の縦断面図である。
【図2】ドア装置のガイド装置部分に関する分解図である。
【図3】図1のドア装置を乗場側から見た態様で示す斜視図である。
【図4】人による集中外力がドアに作用している比較態様を示す図である。
【図5】強風による分布外力がドアに作用している比較態様を示す図である。
【図6】実施の形態2に関する図2と同態様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るエレベータのドア装置の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベータのドア装置の縦断面図であり、図2は、ドア装置のガイド装置部分に関する分解図である。図3は、図1のドア装置を乗場側から見た態様で示す斜視図である。エレベータのドア装置1は、乗場ドア3と、レール5と、ハンガーケース7と、ドアハンガー9と、三方枠11と、ガイド装置13とを備える。
【0013】
乗場ドア3は、構造物の停止階に設けられた乗場出入口を開閉する横スライド式の扉である。乗場ドア3は、レール5によって、開閉方向に移動可能に支持されている。ドアハンガー9は、乗場ドア3をレール5に沿って移動可能な態様で吊り下げている。かかるレール5は、ハンガーケース7によって適所に配置、支持されている。
【0014】
ドアハンガー9は、乗場ドア3毎に用意され、乗場ドア3のスライド方向に延びるプレート状の部材である。また、ドアハンガー9は、その縦断面においてみて、上下方向に延びる平坦部15を上部に有すると共に、昇降路側に向けて開口したコ字状部17を下部に有する。平坦部15には、一対のハンガーローラ19と、一対のアップスラストローラ21とが回動自在に設けられている。各ドアハンガー9において、一対のハンガーローラ19、及び、一対のアップスラストローラ21はそれぞれが、レール5の延びる方向に離隔している。また、対応するハンガーローラ19とアップスラストローラ21とは、レール5を挟んで上下方向に並んで位置している。乗場ドア3は、コ字状部17の下部に設けられたボルト23によって、ドアハンガー9に固定されている。
【0015】
三方枠11は、乗場出入口の周囲に配置されており、より詳細には、出入口の上方に位置する上枠25と、出入口の左右側方に位置する一対の縦枠とを含んでいる。図1において、上枠25の上方には、構造物(建屋)の乗場壁27があり、その乗場側の表面には、乗場仕上壁29が設けられている。
【0016】
ガイド装置13は、ドアハンガー9に対して一体的に設けられており、本実施の形態では、図2に最もよく示されているように、六角穴付きボルト31によって、ドアハンガー9のコ字状部17の外側(乗場側)に固定されている。
【0017】
ガイド装置13は、取付片部33と、第1ガイド部35と、第2ガイド部37と、架橋部39とを含んでいる。取付片部33は、第1ガイド部35から上方に真直ぐ延びた部分であり、ガイド装置13は、この取付片部33においてドアハンガー9に支持されている。第1ガイド部35及び第2ガイド部37は、上下方向に延び、相互に所定の間隔でほぼ平行に配置されている。第1ガイド部35及び第2ガイド部37は、それら上端において架橋部39により接続されている。これら第1ガイド部35、第2ガイド部37及び架橋部39は、縦断面においてみて下向きに開口したコ字状をなすように構成されている。
【0018】
第1ガイド部35及び第2ガイド部37の間には、すなわち、上述したコ字状の内側には、上枠25の垂直板部25aの上端が入り込んでいる。垂直板部25aは、上枠25における昇降路側の端部から上方に立ち上がった部分である。
【0019】
また、第1ガイド部35と上枠の垂直板部25aとの間、並びに、第2ガイド部37と上枠の垂直板部25との間にはそれぞれ、摺動促進部41が設けられている。摺動促進部41は、本実施の形態では、第1ガイド部35、第2ガイド部37及び架橋部39のコ字状に関する内側面(垂直板部25aと対向する側の面)に設けられており、したがって、縦断面コ字状に形成されている。また、好適な一例として、摺動促進部41は、高分子構造の摺動促進材であり、第1ガイド部35、第2ガイド部37及び架橋部39の内側面に、貼り付けまたはモールドすることで構成されている。
【0020】
垂直板部25aが第1ガイド部35、第2ガイド部37及び架橋部39のコ字状内側に挿入されることで、第1ガイド部35及び第2ガイド部37が上枠25の垂直板部25aの相互に反対側に位置する。すなわち、第1ガイド部35は、ドアハンガー9が三方枠11に対して近づく向きに所定の距離移動すると、三方枠11の上枠25に当接する関係で設けられており、第2ガイド部37は、ドアハンガー9が三方枠11に対して離れる向きに所定の距離移動すると、上枠25に当接する関係で設けられている。厳密には、本実施の形態では、ガイド装置13と上枠25の垂直板部25aとの間には、上述したように摺動促進部41が設けられているので、ガイド装置13が直接、垂直板部25aに当接することはないが、換言するならば、第1ガイド部35及び第2ガイド部37は、ドアハンガー9が三方枠11に対して所定の距離移動すると、第1ガイド部35及び第2ガイド部37の一方が摺動促進部41を介して間接的に、上枠25の垂直板部25aと当たるように企図されている。なお、具体的一例として、摺動促進部41は、乗場ドア3に開閉動作と関係がない外力が付加されていない状態で、垂直板部25aと1mm〜3mm程度の隙間を持つように設けられている。
【0021】
以上に説明した本実施の形態に係るエレベータのドア装置によれば、乗場ドアが乗場外側へ向けて引き寄せられる外力(外向きの力)及び乗場ドアが昇降路側へ向けて押し込まれる外力(内向きの力)の何れの外力に対しても、ドア取付部の損傷を防止することができる。例えば、図4に比較態様として例示されるように、人43によって作用する集中外力45や、図5に比較態様として例示されるように、強風による分布外力47等が乗場ドア3を昇降路側へ向けて押し込むような状況では、ドアハンガー9等のドア取付部の損傷が懸念されるところであるが、本実施の形態であれば、ガイド装置13の第2ガイド部37(摺動促進部41)が上枠25の垂直板部25aに当たることで、乗場ドア3が過度に動いてしまうことが抑制され、それによって、ドアハンガー9等のドア取付部の変形等を防止することが可能となる。また、本実施の形態では、ガイド装置13が三方枠11の上枠25に引っ掛けられて支持されるので、ガイド装置13による負荷がハンガーケース等にまで伝わることはなく、すなわち、レールの歪み・変形をもたらすようなこともない。
【0022】
また、上記のように、外向きの力と内向きの力との何れの力に対してもドア取付部の損傷を防止することが可能であり、尚且つ、ドアレールの歪みを回避することが可能でありながら、ドアに余分な外力がかかっていない状態では、ガイド装置(ガイド部、摺動促進部)と上枠との間には、十分な隙間が確保されているので、ドアの開閉が重くなったり阻害されたりすることもない。さらに加えて、ドアに外力が作用する場面においても、ガイド部と上枠の垂直板部との間には、摺動促進部が設けられているので、大きな騒音が発生することが抑制されており、また、ドア開閉動作における走行抵抗の増加が極力抑えられている。なお、三方枠の上枠は、戸開閉の全長に渡ってないこともあるが、出入口幅プラス三方枠の縦枠幅程度が利用できれば、戸に掛かる外力はほぼ出入口幅以内なので問題はない。
【0023】
実施の形態2.
本発明では、摺動促進部は、ガイド装置と上枠とのうちの少なくとも一方側に設けられていればよく、本実施の形態2は、摺動促進部が上枠側に固定されている形態の一例を示す。図6に示されるように、摺動促進部141は、第1ガイド部35、第2ガイド部37及び架橋部39の全てに向き合うように、上枠25の垂直板部25aに、縦断面でみて上下逆U字状に形成されている。摺動促進部141もまた、高分子構造の摺動促進材であり、垂直板部25aに、貼り付けまたはモールドすることで構成することができる。その他の構成については、上述した実施の形態1と同様であるものとする。
【0024】
このように構成された本実施の形態2によっても、実施の形態1と同様、外向きの力と内向きの力との何れの力に対してもドア取付部の損傷を防止することができ、尚且つ、ドアレールの歪みを回避することができる。
【0025】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0026】
例えば、本発明は、第1ガイド部及び第2ガイド部と、三方枠の上枠との間に、摺動促進部が設けられていない態様として実施することもできる。かかる態様であっても、第1ガイド部及び第2ガイド部の何れかが、三方枠の上枠と当接するように構成されていることで、外向きの力と内向きの力との何れの力に対してもドア取付部の損傷を防止することができ、尚且つ、ドアレールの歪みを回避することができる。また、その意味からも、ガイド部と三方枠の上枠との当接には、ガイド部が、摺動促進部を介して間接的に上枠と当接する態様は勿論、ガイド部が、上枠と直接、当接する態様も含む。
【0027】
また、前述したように、第1ガイド部は、ドアハンガーが三方枠に対して近づく向きに所定の距離移動すると上枠に当接し、第2ガイド部は、ドアハンガーが三方枠に対して離れる向きに所定の距離移動すると、上枠に当接するように設けられているが、これら二つの所定距離は、必ずしも同じ長さの距離に設定されることに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0028】
1 エレベータのドア装置、3 乗場ドア、5 レール、7 ハンガーケース、9 ドアハンガー、11 三方枠、13 ガイド装置、25 上枠、25a 垂直板部、35 第1ガイド部、37 第2ガイド部、41,141 摺動促進部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場出入口を開閉する乗場ドアと、
前記乗場ドアを開閉方向に移動可能に支持するレールと、
前記レールを支持するハンガーケースと、
前記乗場ドアを前記レールに沿って移動可能に吊り下げるドアハンガーと、
前記乗場出入口の周囲に配置された三方枠と、
前記ドアハンガーに対して一体的に設けられたガイド装置とを備え、
前記ガイド装置は、第1ガイド部と、第2ガイド部とを含み、
前記第1ガイド部は、前記ドアハンガーが前記三方枠に対して近づく向きに所定の距離移動すると、前記三方枠の上枠に当接するように設けられており、
前記第2ガイド部は、前記ドアハンガーが前記三方枠に対して離れる向きに所定の距離移動すると、前記三方枠の上枠に当接するように設けられている
エレベータのドア装置。
【請求項2】
前記第1ガイド部と前記上枠との間、並びに、前記第2ガイド部と前記上枠との間にはそれぞれ、摺動促進部が設けられている
請求項1のエレベータのドア装置。
【請求項3】
前記摺動促進部は、高分子構造の摺動促進材を、前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部と、前記上枠とのうちの少なくとも一方側に貼り付けまたはモールドすることで構成されている
請求項2のエレベータのドア装置。
【請求項4】
前記ガイド装置は、縦断面が下向き開口のコ字状を有しており、
前記上枠は、立ち上がり部を有しており、
前記立ち上がり部が前記ガイド装置のコ字状内側に挿入されることで、前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部が前記立ち上がり部の相互に反対側に位置する
請求項1乃至3の何れか一項のエレベータのドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−254840(P2012−254840A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127861(P2011−127861)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】