説明

エレベータの設置計画装置及び方法

【課題】DCS方式のエレベータの最適な設置台数や定員を含む設置計画を作成することのできるエレベータの設置計画装置及び方法を提供する。
【解決手段】予め計画されているアップダウン方式のエレベータの基準設置計画で設定されたエレベータ台数Corg、定員Porgと、エレベータの昇降路断面積HWorgを入力し、該入力手段に入力されたエレベータ台数Corg、定員Porg及び昇降路断面積HWorgに基づいて、設置可能なエレベータの最大台数Cmax、最小定員Pminを算出し、DCS方式のエレベータに適用される交通計算式に基づいて、所定の分散乗車係数kに対して、エレベータ台数CをCorgからCmaxまで変動させると共に、各台数Cについて、定員PをPorgからPminまで変動させて、夫々の台数Cと定員Pの組み合わせを作成し、最適な台数Cと定員Pの組み合わせを選択し、DCS方式のエレベータの設置計画を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗場行先階登録システムを採用したエレベータの設置計画を行なうことのできる装置及び方法に関するものであり、より具体的には、所望条件の下で、乗場行先階登録システムを採用したエレベータの最適な設置台数や定員を含む設置計画を作成することのできるエレベータの設置計画装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建物に設置されるエレベータの乗客の輸送能力を高めるために、エレベータの乗場に利用者の目的階を予め登録させる乗場行先階登録装置を具えたエレベータシステムの採用が進められている。
乗場行先階登録システム(Destination Control System:以下適宜「DCS」と称する)を採用したエレベータは、特に欧米において普及しつつあり、今後も需要は拡大していくものと考えられている。
【0003】
DCS方式を採用したエレベータ(以下適宜「DCS方式のエレベータ」と称する)を導入し、効率よく運用を図るためには、計画されたビル等の建物に対して、どのような仕様のエレベータを何台設置する必要があるかという設置計画が必須となる。
【0004】
DCS方式を採用していない従来のエレベータ、すなわち、エレベータ乗場で乗客が「上」又は「下」の行き先方向のみを選択し、エレベータへの搭乗後に行先階を指定するエレベータ(以下「アップダウン方式」と称する)では、G. C. Barney及びS. M. dos Santosが、Elevator Traffic Analysis Design and Control(Revised Second Edition, Chapter 2, pp.11-20, Peter Peregrinus Ltd.)にて図8に示す交通計算式(「アップダウン方式の交通計算式」という)を提唱しており、このアップダウン方式の交通計算式に基づいて、最適なエレベータの台数や定員等の仕様が決定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アップダウン方式のエレベータとは異なり、DCS方式のエレベータは、その輸送能力が群管理制御方法に高く依存するため、最適な設置計画を行なうことは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、乗場行先階登録システム(DCS)を採用したエレベータの最適な設置台数や定員を含む設置計画を作成することのできるエレベータの設置計画装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のエレベータの設置計画装置は、
乗場行先階登録システムを採用したエレベータの設置計画装置であって、
予め計画されている乗場行先階登録システムを採用していないエレベータの基準設置計画で設定されたエレベータ台数Corg、定員Porgと、当該基準設置計画により必要となるエレベータの昇降路断面積HWorgを入力する入力手段と、
該入力手段に入力されたエレベータ台数Corg、定員Porg及び昇降路断面積HWorgに基づいて、設置可能なエレベータの最大台数Cmax、最小定員Pminを算出する限界演算手段と、
乗場行先階登録システムを採用したエレベータに適用される交通計算式に基づいて、所定の分散乗車係数kに対して、エレベータ台数CをCorgからCmaxまで変動させると共に、各台数Cについて、定員PをPorgからPminまで変動させて、夫々の台数Cと定員Pの組み合わせを作成し、作成された組み合わせの中から最適な台数Cと定員Pの組み合わせを選択し、乗場行先階登録システムを採用したエレベータの設置計画を作成する計画作成手段と、
を有している。
【0008】
計画作成手段は、最適な台数Cと定員Pの組み合わせを、5分間輸送能力HC、昇降路断面積HW、及び、乗客待ち時間AWTに基づいて選択することが望ましい。
【0009】
計画作成手段は、作成された設置計画から、5分間輸送能力HCが最大となる台数C及び定員Pを設置計画として選択することがより望ましい。
【0010】
また、本発明のエレベータの設置計画装置方法は、
乗場行先階登録システムを採用したエレベータの設置計画方法であって、
予め計画されている乗場行先階登録システムを採用していないエレベータの基準設置計画で設定されたエレベータ台数Corg、定員Porgと、当該基準設置計画により必要となるエレベータの昇降路断面積HWorgを入力するステップ、
該入力手段に入力されたエレベータ台数Corg、定員Porg及び昇降路断面積HWorgに基づいて、設置可能なエレベータの最大台数Cmax、最小定員Pminを算出するステップ、及び、
乗場行先階登録システムを採用したエレベータに適用される交通計算式に基づいて、所定の分散乗車係数kに対して、エレベータ台数CをCorgからCmaxまで変動させると共に、各台数Cについて、定員PをPorgからPminまで変動させて、夫々の台数Cと定員Pの組み合わせを作成し、作成された組み合わせの中から最適な台数Cと定員Pの組み合わせを選択し、乗場行先階登録システムを採用したエレベータの設置計画を作成するステップ、
を有している。
【0011】
設置計画を作成するステップは、最適な台数Cと定員Pの組み合わせを、5分間輸送能力HC、昇降路断面積HW、及び、乗客待ち時間AWTに基づいて選択することが望ましい。
【0012】
設置計画を作成するステップは、作成された設置計画から、5分間輸送能力HCが最大となる台数C及び定員Pを設置計画として選択することがより望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエレベータの設置計画装置によれば、アップダウン方式のエレベータの基準設置計画に基づいて、設置可能なエレベータの台数C及び定員Pを算出し、これらを基にDCS方式のエレベータの最適な台数と定員の組み合わせを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のエレベータの設置計画装置のブロック図である。
【図2】本発明のエレベータの設置計画方法のフローを示す図である。
【図3】DCS交通計算式を示している。
【図4】本発明のエレベータの設置計画方法のフローチャート図である。
【図5】本発明のエレベータ設置計画方法に従って求められたDCS方式のエレベータの適用可能計画案を示すグラフである。
【図6】基準設置計画を変更した場合の適用可能計画案を示すグラフである。
【図7】本発明のエレベータ設置計画方法に従って、5分間輸送能力HCが最大となるDCS方式のエレベータの設置計画を示すグラフである。
【図8】アップダウン方式の交通計算式を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、予め計画されたアップダウン方式のエレベータの設置計画(基準設置計画)に対し、その代替としてDCS方式のエレベータを採用した場合に提供し得る最適なエレベータの仕様及び台数を決定できるようにするものである。
【0016】
DCS方式のエレベータの設置計画としては、エレベータの定員を少なくして小型化し、かつ多台数を設置することを目的としている。
【0017】
図1は、本発明のDCS方式のエレベータの設置計画を行なう設置計画装置(10)のブロック図である。
設置計画装置(10)は、予め計画されたアップダウン方式のエレベータの基準設置計画の仕様を入力する入力手段(20)と、該入力手段(20)に入力された仕様に基づいて設置可能なエレベータの仕様を算出する限界演算手段(30)と、DCSを採用したエレベータに適用される交通計算式に基づいて、最適なDCS方式のエレベータの設置計画を作成する計画作成手段(40)と、作成されたDCS方式のエレベータの設置計画を表示する表示手段(50)と、を有している。
【0018】
<基準設置計画の作成>
入力手段(20)に入力されるアップダウン方式のエレベータの基準設置計画は、設置される建物の仕様等に合わせて、上述した図8に示す「アップダウン方式の交通計算式」及び図2に示すフローのS101〜S104を用いて作成することができる。
【0019】
基準設置計画の作成に際し、予めエレベータを設置する建物及び設置するエレベータの仕様が要求される。表1は、基準設置計画を作成する建物及びエレベータの仕様等の一例を示している。
【0020】
【表1】

【0021】
表1に示すとおり、本実施例にて設置計画を作成するビルは、オフィスビルであり、サービス階床数は15、ロビー階を1階とし、階床間距離は4000mmとしている。
また、設置されるエレベータの台数及び定員は夫々6台、24人であり、エレベータの仕様はインバータ制御高速エレベータ(AC-GL)、その定格速度、加速度、加加速度は表1に示すとおりである。
また、設置されるエレベータは、ランニングオープン式であり、ドア形式は2枚両引き戸、戸開閉合計時間は4.6secとしている。
【0022】
アップダウン方式のエレベータの基準設置計画は、設置される建物の仕様に合わせて、表1に示すように、エレベータ台数、速度、戸開閉時間など、ビルに設置するエレベータに所望される仕様を仮設定し(図2のステップ101参照)、仮設定された構成に対して、図8のアップダウン方式の交通計算式に基づき計算を行なう(ステップ102)。
【0023】
アップダウン方式の交通計算式では、エレベータの構成を評価する指標として、例えば、計画された5分間輸送能力HC(エレベータシステムが5分間に運び得る乗客の総数)がビル居住人口のX%以上、かつ、乗客待ち時間(AWT)(アップダウン方式のエレベータでは平均運転間隔INTと称されるエレベータが始発階に戻ってくる間隔の平均。待ち時間性能を表す指標)がY秒以下であることなどを例示することができる(ステップ103)。
なお、交通計算式では、乗り込み人数Pを定員の80%として計算している。
【0024】
計算されたエレベータの構成が上記した評価指標を満たすと、その設置計画が基準設置計画として設定される(ステップ104)。
【0025】
設定されたアップダウン方式のエレベータの基準設置計画では、表1に示すように、エレベータ台数Corgは6台、定員Porg24人と設定されたことになる。
この値に基づいて、エレベータの設置に必要な昇降路断面積HWorgも算出できる。
【0026】
算出されたエレベータ台数Corg、定員Porg及び昇降路断面積HWorgは、入力手段(20)に入力される。
【0027】
<DCS方式のエレベータの設置計画の作成>
上記で求められたアップダウン方式のエレベータの基準設置計画に基づいて、DCS方式のエレベータの設置計画が作成される。
【0028】
まず、図1に示した入力手段(20)に入力された基準設置計画を基に、限界演算手段(30)にて、基準となる昇降路断面積HWorgを超えることのない最大のエレベータの台数Cmaxと最小定員Pminを算出する。この演算は、公知の要領により行なうことができる。
算出された値は、基準設置計画と共に計画作成手段(40)に送信される。
【0029】
得られた基準設置計画と、最大のエレベータの台数Cmax、最小定員Pmin及び昇降路断面積HWorgに基づいて、計画作成手段(40)にて最適な設置計画が作成される。
【0030】
なお、DCS方式のエレベータの設置計画の作成には、例えば、図3に示す乗場行先登録方式向け交通計算(以下「DCS交通計算式」と称する)を用いることができる。
図3のDCS交通計算式は、"Hall-Call Allocation(Part2:How to Calculate Hall-Call-Allocation Handling Capacity)(G. C. Barney著: ELEVATOR WORLD April 2008, pp. 118-121)にて提案されているものである。
なお、必要に応じて、その他のDCS交通計算式を用いることができることはもちろんである。
【0031】
表1及びアップダウン方式のエレベータの基準設置計画にて求められた種々の値を図3のDCS交通計算式に代入し、所定の分散乗車係数kに基づいて、図2のステップ105〜107やフローチャート図4に示すように、エレベータの台数Cと定員Pを変動させることで、DCS方式のエレベータの適用計画案が作成される。
【0032】
フローチャート図4は、計画作成手段(40)にて行なわれる演算のフローを示している。
【0033】
計画作成手段(40)は、まず、基準設置計画(図中plan_org)にて求められたエレベータ数Corgと定員Porgに基づき、図3のDCS交通計算式から種々の指標を算出する。なお、分散乗車係数kを1とすることで、基準設置計画に基づく指標を算出することができる。
【0034】
指標として、本実施例では、上述した指標、すなわち、5分間輸送能力HC、乗客平均待ち時間AWT及び昇降路断面積HWを利用している。
【0035】
ステップ1により、基準設置計画に基づく各指標を算出した後、DCS方式のエレベータに対する上記指標を算出するために、基準設置計画のエレベータ数Corgと定員Porgを基に、分散乗車係数k=2.0以上(例えばk=3.0)とし(ステップ2)、適用可能な設置計画を作成する。
なお、kは群管理制御に依存する値であり、エレベータシミュレーションなどにより算出可能である。
【0036】
計画作成手段(40)は、計画作成に当たり、一旦定員Pの値を基準設置計画の定員Porgにリセットし(図4のステップ3)、エレベータ数Cを1台増大させて(図2のステップ105及び図4のステップ4)、演算を行なう。なお、このとき、エレベータ台数Cが、上述の限界演算手段(30)にて算出されたCmax以上となる場合には、演算を終了する(ステップ5のNo)。
エレベータの台数Cを1台増大させるのは、エレベータを多台数とする目的を達成するためであり、これにより、乗客の輸送能力を高めるためである。
【0037】
エレベータの台数Cを増やすことができる場合には(ステップ5のYes)、当該エレベータの定員Pを一人減らす(ステップ6)。
エレベータの定員Pを減らすのは、上記により多台数化されたエレベータに対し、所定の昇降路断面積HW以下を維持するために、エレベータを小型化するためである。
なお、このとき、定員Pが、上述の限界演算手段(30)にて算出されたPminを下回る場合には、ステップ3へ戻る(ステップ7のNo)。
【0038】
定員Pを減らすことが可能であった場合(ステップ7のYes)、上記の組み合わせのエレベータ台数Cと定員Pの組み合わせを、DCS方式によるエレベータの設置計画(図4中、plan_dcs_x_y)とし、図3に示すDCS交通計算手法に基づいて、5分間輸送能力HC、乗客平均待ち時間AWT及び昇降路断面積HWを算出する(図2のステップ106及び図4のステップ8)。
【0039】
算出された5分間輸送能力HC、乗客平均待ち時間AWT及び昇降路断面積HWの夫々について、図4のステップ1にて算出された基準設置計画の5分間輸送能力HC、乗客平均待ち時間AWT及び昇降路断面積HWと比較を行なう(図2のステップ107及び図4のステップ9〜ステップ11)。
【0040】
具体的には、DCSにて算出された昇降路断面積HWが、基準設置計画にて算出された昇降路断面積HWよりも小さく(ステップ9)、DCSにて算出された乗客平均待ち時間AWTが、基準設置計画にて算出された乗客平均待ち時間AWTよりも所定時間(実施例ではT=10秒)短くなっており(ステップ10)、さらに、DCSにて算出された5分間輸送能力HCが、基準設置計画にて算出された5分間輸送能力HCを上回っている場合(ステップ11)にのみ、DCS方式のエレベータの設置計画が、アップダウン方式の基準設置計画に比してすぐれているという評価を行なっている。
【0041】
昇降路断面積HW、乗客平均待ち時間AWT及び5分間輸送能力HCがすべて評価を満たす場合には(ステップ9〜ステップ11のYes)、ステップ4及びステップ6で設定されたエレベータ台数Cと定員Pの組み合わせによるDCS方式のエレベータを適用可能計画案に追加する(ステップ12)。
【0042】
昇降路断面積HW、乗客平均待ち時間AWT及び5分間輸送能力HCの何れかが、基準設置計画よりも劣る場合には(ステップ9〜ステップ11のNo)、ステップ4及びステップ6で設定されたエレベータ台数Cと定員Pの組み合わせによるDCS方式のエレベータの設置計画は、不適であるとして、適用可能計画案には追加しない(ステップ13)。
【0043】
この後、エレベータ台数を変えない状態で、定員Pをさらに一人減らして(ステップ6及びステップ7)、上記と同様の要領で適用可能計画案を満足するエレベータ台数Cと定員Pの組み合わせを算出する(ステップ8〜ステップ13)。
【0044】
ステップ7にて、さらに定員Pを減らすことができなくなると(ステップ7のNo)、エレベータ台数Cを1台増やして、上記ステップ3〜ステップ13を繰り返し、適用可能計画案を満足するエレベータ台数Cと定員Pの組み合わせを算出する。
【0045】
なお、これ以上、エレベータ台数Cを増やすことができなくなると(ステップ5のNo)、フローを終了し、適用可能計画案を満たすエレベータ台数Cと定員Pの組み合わせを設置計画として、表示手段(50)等に表示する。なお、表示手段(50)は、必須ではなく、また、出力には他の手段を用いることもできる。
【0046】
図5は、横軸を5分間輸送能力HC、縦軸を乗客平均待ち時間AWTとして、基準設置計画に基づいて設置可能なエレベータ台数C(4〜8台)、定員P(11〜24人)として、アップダウン方式のエレベータ及びDCS方式のエレベータの5分間輸送能力HCと乗客平均待ち時間AWTをプロットしたものである。各点の横に記載された文字は、夫々定員Pと昇降路断面積HWである。
夫々、アップダウン方式のエレベータの結果を実線で結び、DCS方式のエレベータの結果を破線で結んでいる。
また、アップダウン方式の基準設置計画となったエレベータは、破線矢印で示している。
【0047】
上記グラフにおいて、網掛け部分は、5分間輸送能力HCが基準設置計画(図中破線矢印で示す)よりもすぐれ、かつ、乗客平均待ち時間AWTがプラス10秒以内の領域を示しており、さらに、その中で、昇降路断面積HWが、基準設置計画よりも小さくなっている計画、すなわち、適用可能計画案を実線矢印で示している。
【0048】
図によれば、基準設置計画よりもすぐれた適用可能計画案は、エレベータ数Cが7台、定員Pが15人、昇降路断面積HWが38.64mの計画案α、エレベータ数Cが7台、定員Pが17人、昇降路断面積HWが42.00mの計画案β、エレベータ数Cが8台、定員Pが13人、昇降路断面積HWが40.48mの計画案γの3種類であることがわかる。
【0049】
従って、アップダウン方式の既存のエレベータの基準設置計画に対し、DCS方式のエレベータを採用する場合には、上記3案から選択すればよいことがわかる。
何れの計画案についても、基準設置計画よりも昇降路断面積HWを小さくしつつ、エレベータの小型化及び多台数化を達成できていることがわかる。
【0050】
なお、上記案α〜γのうち、設置者が昇降路断面積HWが最小となる設置計画を所望する場合には、計画案αを選択すればよく、5分間輸送能力HCが最大となる計画案を所望する場合には、計画案βを選択すればよい。また、乗客平均待ち時間AWTが最小となる計画案を所望する場合には、計画案γを選択すればよい。
【0051】
図6は、基準設置計画のエレベータ台数Cを6台、定員Pを20人とし、その他の条件は同じとして、上記と同様の要領で得られたDCS方式のエレベータの適用可能計画案を示している。図より、本条件にて代替可能なDCS方式のエレベータの設置計画は、図中、実線矢印にて示すエレベータ台数Cが8台、定員Pが11人の1案だけであることがわかる。
上記計画案についても、基準設置計画よりも昇降路断面積HWを小さくしつつ、エレベータの小型化及び多台数化を達成できていることがわかる。
【0052】
上述したとおり、本発明のエレベータの設置計画装置及び方法によれば、アップダウン方式のエレベータの基準設置計画に基づいて、DCS方式のエレベータの最適な設置計画を算出することができることがわかる。
【0053】
なお、フローチャート図4では、適用可能計画案を複数提案可能としているが(ステップ12及びステップ13)、フローチャート図7に示すように、算出された適用可能計画案のうち、5分間輸送能力HCが最大(HCmax)となる計画案を算出できるようにしてもよい(図7のステップ14及びステップ15)。この場合、算出の前に5分間輸送能力の最大値HCmaxの初期値はゼロとしておく(ステップ2)。
その他、昇降路断面積HWが最小となる計画案を算出するようにすることもできる。
【0054】
これにより、本発明のエレベータの設置計画装置及び方法により提案される設置計画を1つに絞ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、アップダウン方式のエレベータの基準設置計画に基づいて、DCS方式のエレベータの最適な設置台数や定員を含む設置計画を作成することのできるエレベータの設置計画装置及び方法として有用である。
【符号の説明】
【0056】
(10) 設置計画装置
(20) 入力手段
(30) 限界演算手段
(40) 計画作成手段
(50) 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場行先階登録システムを採用したエレベータの設置計画装置であって、
予め計画されている乗場行先階登録システムを採用していないエレベータの基準設置計画で設定されたエレベータ台数Corg、定員Porgと、当該基準設置計画により必要となるエレベータの昇降路断面積HWorgを入力する入力手段と、
該入力手段に入力されたエレベータ台数Corg、定員Porg及び昇降路断面積HWorgに基づいて、設置可能なエレベータの最大台数Cmax、最小定員Pminを算出する限界演算手段と、
乗場行先階登録システムを採用したエレベータに適用される交通計算式に基づいて、所定の分散乗車係数kに対して、エレベータ台数CをCorgからCmaxまで変動させると共に、各台数Cについて、定員PをPorgからPminまで変動させて、夫々の台数Cと定員Pの組み合わせを作成し、作成された組み合わせの中から最適な台数Cと定員Pの組み合わせを選択し、乗場行先階登録システムを採用したエレベータの設置計画を作成する計画作成手段と、
を有していることを特徴とする乗場行先階登録システムを採用したエレベータの設置計画装置。
【請求項2】
計画作成手段は、最適な台数Cと定員Pの組み合わせを、5分間輸送能力HC、昇降路断面積HW、及び、乗客待ち時間AWTに基づいて選択する請求項1に記載の乗場行先階登録システムを搭載したエレベータの設置計画装置。
【請求項3】
計画作成手段は、作成された設置計画から、5分間輸送能力HCが最大となる台数C及び定員Pを設置計画として選択する請求項2に記載の乗場行先階登録システムを搭載したエレベータの設置計画装置。
【請求項4】
乗場行先階登録システムを採用したエレベータの設置計画方法であって、
予め計画されている乗場行先階登録システムを採用していないエレベータの基準設置計画で設定されたエレベータ台数Corg、定員Porgと、当該基準設置計画により必要となるエレベータの昇降路断面積HWorgを入力するステップ、
該入力手段に入力されたエレベータ台数Corg、定員Porg及び昇降路断面積HWorgに基づいて、設置可能なエレベータの最大台数Cmax、最小定員Pminを算出するステップ、及び、
乗場行先階登録システムを採用したエレベータに適用される交通計算式に基づいて、所定の分散乗車係数kに対して、エレベータ台数CをCorgからCmaxまで変動させると共に、各台数Cについて、定員PをPorgからPminまで変動させて、夫々の台数Cと定員Pの組み合わせを作成し、作成された組み合わせの中から最適な台数Cと定員Pの組み合わせを選択し、乗場行先階登録システムを採用したエレベータの設置計画を作成するステップ、
を有していることを特徴とする乗場行先階登録システムを採用したエレベータの設置計画方法。
【請求項5】
計画作成を作成するステップは、最適な台数Cと定員Pの組み合わせを、5分間輸送能力HC、昇降路断面積HW、及び、乗客待ち時間AWTに基づいて選択する請求項4に記載の乗場行先階登録システムを搭載したエレベータの設置計画方法。
【請求項6】
計画作成を作成するステップは、作成された設置計画から、5分間輸送能力HCが最大となる台数C及び定員Pを設置計画として選択する請求項5に記載の乗場行先階登録システムを搭載したエレベータの設置計画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−106849(P2012−106849A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258012(P2010−258012)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000112705)フジテック株式会社 (138)
【Fターム(参考)】