説明

エレベータの非常停止装置

【課題】乗りかごなどの速度を検出する装置の高信頼性を確保することができるエレベータの非常停止装置を提供する。
【解決手段】実施形態のエレベータ1の非常停止装置11はエレベータ制御部9及び速度検出器23と非常止機構21と制御部24とを備えている。エレベータ制御部9及び速度検出器23は乗りかご2の速度に関する速度情報を検出する。非常止機構21は乗りかご2を停止する。速度検出器23は乗りかご2に設けられている。制御部24はエレベータ制御部9及び速度検出器23が検出した情報に基いて非常止機構21を動作させる。制御部24がエレベータ制御部9及び速度検出器23が検出した情報に基いてエレベータ制御部9及び速度検出器23のうちの少なくとも一つが故障していると判定すると乗りかご2の昇降動作を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの非常停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータは、昇降路内を乗りかごが移動することにより、乗りかごを任意の階床に移動させる。このようなエレベータでは、乗りかごと釣り合い錘とのうちの少なくとも乗りかごの降下速度が予め定められた設定速度に達すると、少なくとも乗りかごを停止させる非常止機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭53−159074号公報
【特許文献2】特開平9−30749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術においては、例えば、乗りかごなどの速度を検出する装置に高い信頼性が求められている。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、乗りかごなどの速度を検出する装置の高信頼性を確保することができるエレベータの非常停止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエレベータの非常停止装置は複数の速度検出部と非常止機構と制御部とを備えている。速度検出部は建造物の昇降路に昇降自在に設けられた昇降体の速度に関する速度情報を検出する。少なくとも一つの速度検出部が昇降体に設けられている。非常止機構は昇降体に設けられかつ昇降体を停止する。制御部は速度検出部が検出した昇降体の速度に関する速度情報に基いて非常止機構を動作させる。制御部は、複数の速度検出部が検出した昇降体の速度に関する速度情報に基いて、これら複数の速度検出部のうちの少なくとも一つが故障していると判定すると昇降体の昇降動作を停止する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態1に係るエレベータの全体の構成を模式的に示す正面図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、実施形態1に係るエレベータの非常停止装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、実施形態1に係る変形例のエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、実施形態2に係るエレベータの全体の構成を模式的に示す正面図である。
【図6】図6は、実施形態2に係るエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、実施形態2に係るエレベータの非常停止装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施形態2に係る変形例のエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、実施形態3に係るエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、実施形態3に係るエレベータの非常停止装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、実施形態3に係る変形例1のエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、実施形態3に係る変形例2のエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、実施形態3に係る変形例3のエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、実施形態4に係るエレベータの全体の構成を模式的に示す正面図である。
【図15】図15は、実施形態4に係るエレベータの非常停止装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【図16】図16は、実施形態5に係るエレベータの非常停止装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【図17】図17は、実施形態5に係る変形例のエレベータの非常停止装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【図18】図18は、実施形態6に係るエレベータの非常停止装置の要部の構成を示す正面図である。
【図19】図19は、図18中のXX−XX線に沿う断面図である。
【図20】図20は、実施形態7に係るエレベータの非常停止装置の要部の構成を示す正面図である。
【図21】図21は、本発明のエレベータの非常停止装置の変形例の要部の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るエレベータの全体の構成を模式的に示す正面図、図2は、実施形態1に係るエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図、図3は、実施形態1に係るエレベータの非常停止装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【0009】
図1に示す本実施形態のエレベータ1は、建造物(建築物ともいう)の昇降路内に設置されて、乗りかご2内の操作装置の各種のボタン及び各階の乗場に設けられた呼び装置の呼びボタンの操作による呼び登録に基づいて乗客などを建造物の所望の階に運搬する。勿論、昇降路は、建造物の複数の階に亘って設けられ、かつ鉛直方向に沿って直線状に延びている。また、昇降路の内部には、エレベータ停止階となる各階には、各階の所定の着床位置に乗りかご2が停止したことを検出する着床検出部としてのかご着床検出装置8(図1に示す)がそれぞれ設けられている。各かご着床検出装置8は、乗りかご2の設けられた図示しない検知板により、各階の着床位置に乗りかご2が停止したことを検出すると、着床位置検出信号をエレベータ制御部9に向かって出力する。
【0010】
エレベータ1は、図1に示すように、一対のかご用ガイドレール3と、昇降体としての乗りかご2と、昇降体としてのカウンタウェイト4と、一対のウェイト用ガイドレール5と、メインロープ6と、駆動機構7と、エレベータ制御部9と、コンペンセーション装置10と、非常停止装置11とを備えている。
【0011】
かご用ガイドレール3は、直線状に延びかつ鉛直方向と平行に設けられている。かご用ガイドレール3は、互いに間隔をあけて平行な状態で昇降路内に設けられている。かご用ガイドレール3は、互いの間に乗りかご2を位置づけているとともに、この乗りかご2を鉛直方向に昇降自在に支持している。
【0012】
乗りかご2は、昇降路内に鉛直方向に移動自在に収容されている。乗りかご2は、かご枠12と、乗客を収容するかご室13とを備えている。かご枠12は、一対のかご用ガイドレール3間に位置することのできる大きさの枠状に形成されている。かご枠12は、水平方向と平行な下梁14と、水平方向と平行でかつ下梁14の上方に設けられた上梁15と、下梁14と上梁15の両端同士を連結した一対の側梁16とを備えている。下梁14と上梁15は、水平梁をなしている。
【0013】
かご室13は、図示しない開閉ドアが設けられた箱状に形成されて、内側に乗客などを収容可能である。かご室13は、下梁14上に重ねられ、かつ一対の側梁16間に挟まれた状態で、かご枠12に取り付けられている。かご室13内には、エレベータ1の各種の操作を行うための操作装置の各種のボタンなどが設けられている。また、乗りかご2には、開閉ドアの開閉動作を検出する開閉検出センサが取り付けられている。開閉検出センサは、開閉ドアの開閉動作を検出して、検出した結果をエレベータ制御部9に向かって出力する。
【0014】
カウンタウェイト4は、昇降路内に鉛直方向に移動自在に収容されている。
【0015】
ウェイト用ガイドレール5は、直線状に延びかつ鉛直方向と平行に設けられている。ウェイト用ガイドレール5は、互いに間隔をあけて平行な状態で昇降路内に設けられている。ウェイト用ガイドレール5は、互いの間にカウンタウェイト4を位置づけているとともに、このカウンタウェイト4を鉛直方向に昇降自在に支持している。
【0016】
メインロープ6は、一端部に乗りかご2が固定され、かつ他端部にカウンタウェイト4が固定されている。メインロープ6は、駆動機構7の駆動シーブ17に掛渡されて、乗りかご2とカウンタウェイト4とが互いに上下反対方向に昇降するように設けられている。即ち、エレベータ1は、所謂、つるべ式のエレベータとなっている。このように、メインロープ6は、巻き上げ機により移動されることで、乗りかご2とカウンタウェイト4とを釣瓶式に昇降させる。
【0017】
駆動機構7は、図1に示すように、例えば、昇降路の上部に設けられた機械室又は昇降路内の上部などに設けられ、周知の巻き上げ機と、メインロープ6が掛け渡されて巻き上げ機により回転駆動される駆動シーブ17と、図示しないブレーキと、ロータリエンコーダなどを備えている。ブレーキは、例えば、電磁ブレーキであり、エレベータ制御部9により巻き上げ機を制動する制動状態あるいは巻き上げ機を開放する開放状態のいずれかに動作制御される。ブレーキは、乗りかご2が各階に着床すると制動状態となり、乗りかご2の昇降中には開放状態となる。ロータリエンコーダは、駆動シーブ17の回転を検出するものであり、乗りかご2の速度に関する速度情報としての駆動シーブ17の回転数を検出して、検出した結果をエレベータ制御部9に向かって出力する。駆動機構7は、巻き上げ機が駆動シーブ17を回転駆動することにより、メインロープ6を昇降路内で移動させて、乗りかご2とカウンタウェイト4を昇降させる。
【0018】
エレベータ制御部9は、前述した機械室又は昇降路内の上部などに設けられ、図示しないRAM、ROM、CPU、入出力ポート及び記憶装置を備えた演算装置である。エレベータ制御部9には、図1に示すように、乗りかご2に一端が取り付けられたテールコード18が接続している。テールコード18は、動力線や伝送線を束ねたコードであり、乗りかご2内の操作装置、後述する非常停止装置11の制御部24とエレベータ制御部9とを接続している。エレベータ制御部9は、乗りかご2の操作装置の各種のボタンや、各階の乗場の呼び装置の呼びボタン、駆動機構7などとも接続して、エレベータ1全体の制御をつかさどる。
【0019】
また、エレベータ制御部9は、駆動機構7から入力した駆動シーブ17の回転数に基いて乗りかご2の速度を算出して、算出した結果を非常停止装置11の後述する制御部24に向かって出力する。このように、エレベータ制御部9は、駆動シーブ17の回転数に基いて乗りかご2の速度を算出する即ち乗りかご2の速度に関する速度情報を検出する速度検出部をなしている。エレベータ制御部9は、駆動機構7のブレーキが制動状態となると、この制動状態であることを示す情報を制御部24に向かって出力する。また、エレベータ制御部9は、乗りかご2に取り付けられた開閉検出センサから入力した開閉ドアが開いたことを示す情報を、制御部24に向かって出力する。さらに、エレベータ制御部9は、かご着床検出装置8から入力した着床位置に乗りかご2が停止したことを示す情報を制御部24に向かって出力する。
【0020】
コンペンセーション装置10は、一端が乗りかご2に取り付けられ他端がカウンタウェイト4に取り付けられたコンペンロープ19と、このコンペンロープ19に掛けられたコンペンシーブ20を備えている。コンペンセーション装置10は、昇降中の乗りかご2やカウンタウェイト4の振動を抑制するとともに、乗りかご2とカウンタウェイト4が昇降路内を昇降する際のメインロープ6の重量を相殺する。
【0021】
非常停止装置11は、図1に示すように、一対の非常止機構21と、一対のソレノイドアクチュエータ22と、速度検出部としての速度検出器23と、前述したエレベータ制御部9と、制御部24とを備えている。
【0022】
非常止機構21は、乗りかご2のかご枠12の下梁14の両端部の下面に取り付けられている。即ち、非常止機構21は、かご用ガイドレール3の近傍に設けられている。非常止機構21は、内側にかご用ガイドレール3を通す通し溝が設けられかつかご枠12の下梁14の両端部に取り付けられた装置本体25と、装置本体25の通し溝内に設けられかつ鉛直方向に移動可能な一対の楔26とを備えている。楔26は、上方に向かうにしたがって薄肉に形成されている。一対の楔26は、通し溝内を上方に移動することで、互いの間にかご用ガイドレール3を挟みこんで、装置本体25即ち乗りかご2が鉛直方向にかご用ガイドレール3に対して相対的に移動することを禁止する。即ち、非常止機構21は、乗りかご2をかご用ガイドレール3に対して停止させる。本実施形態では、非常止機構21は、乗りかご2のかご枠12の下梁14に設けたが、本発明は、これに限定されることなく、乗りかご2をかご用ガイドレール3に対して停止させることができれば、この乗りかご2の適宜位置に設けても良いことは勿論である。
【0023】
ソレノイドアクチュエータ22は、非常止機構21と1対1で対応している。ソレノイドアクチュエータ22は、対応する非常止機構21の近傍に設けられている。本実施形態では、ソレノイドアクチュエータ22は、乗りかご2のかご枠12の下梁14に取り付けられている。ソレノイドアクチュエータ22は、制御部24からの命令どおりに、非常止機構21の楔26を上方に引き上げる。
【0024】
速度検出器23は、本実施形態では、一つのみ設けられている。速度検出器23は、乗りかご2のかご枠12の上梁15に取り付けられている。速度検出器23は、図2に示すように、加速度検出部としての加速度センサ27と、加速度センサ27が検出した加速度を積分する積分部28とを備えている。加速度センサ27は、乗りかご2のかご枠12の上梁15などに取り付けられている。加速度センサ27は、鉛直方向即ち乗りかご2の鉛直方向の加速度(乗りかご2の速度に関する速度情報に相当する)を検出して、検出した結果を積分部28に向かって出力する。積分部28は、図示しないRAM、ROM、CPUなどを備えた演算装置であり、加速度センサ27から入力した加速度を時間で積分して、鉛直方向即ち乗りかご2の鉛直方向の速度を算出(検出)する。積分部28は、算出して得た乗りかご2の鉛直方向の速度を制御部24に向かって出力する。こうして、速度検出器23は、乗りかご2の速度を検出して、検出して得た乗りかご2の速度を制御部24に向かって出力する。本実施形態では、速度検出器23は、乗りかご2のかご枠12の上梁15に設けたが、本発明は、これに限定されることなく、乗りかご2の鉛直方向の速度を検出できれば、この乗りかご2の適宜位置に設けても良いことは勿論である。
【0025】
制御部24は、図示しないRAM、ROM、CPU、入出力ポート及び記憶装置を備えた演算装置である。制御部24は、エレベータ制御部9と、速度検出器23と、ソレノイドアクチュエータ22と接続して、非常停止装置11全体の制御をつかさどる。制御部24は、エレベータ1の運転時には、図3に一例が示される非常止機構動作処理100のフローチャートを実行している。図3に示された非常止機構動作処理100のフローチャートのステップS1では、まず、制御部24が、エレベータ制御部9に駆動シーブ17の回転数に基いて乗りかご2の速度を算出(検出)させるとともに、乗りかご2に取り付けられた速度検出器23に乗りかご2の速度を算出(検出)させて、ステップS2に進む。
【0026】
ステップS2では、制御部24が、エレベータ制御部9が検出した乗りかご2の速度と、速度検出器23が検出した乗りかご2の速度とが等しいか否かを判定して、等しいと判定すると、ステップS3に進み、等しくないと判定すると、エレベータ制御部9と速度検出器23との少なくとも一方に異常が生じたと判定して、ステップS5に進む。なお、本発明において、検出した速度が等しいとは、検出した速度が完全に一致することと、ロータリエンコーダや速度検出器23の分解能などの特性、乗りかご2の昇降速度などに応じて、エレベータ1としての実用上等しいということができる程度に検出した速度間に差が生じていることをいう。ステップS5では、制御部24は、エレベータ制御部9に乗りかご2が最寄り階に位置するまで巻き上げ機を駆動させた後、この巻き上げ機の運転即ちエレベータ1の運転を停止させる。こうして、ステップS5では、制御部24は、速度検出部のうちの少なくとも一つが故障していると判定すると乗りかご2の昇降動作を停止する。
【0027】
こうして、制御部24は、ステップS2において、エレベータ制御部9が検出した乗りかご2の速度と速度検出器23が検出した乗りかご2の速度とが等しいか否か即ちエレベータ制御部9が検出した乗りかご2の速度の関する情報と速度検出器23が検出した乗りかご2の速度に関する速度情報に基いて、エレベータ制御部9と速度検出器23とのうち少なくとも一方が故障しているか否かを判定する。そして、制御部24は、エレベータ制御部9と速度検出器23とのうち少なくとも一方が故障していると判定すると、ステップS5において、乗りかご2を昇降動作を停止する。
【0028】
ステップS3では、制御部24は、エレベータ制御部9及び速度検出器23が検出した乗りかご2の速度が、予め定められた設定速度に達したか否かを判定して、設定速度に達していないと判定すると、ステップS2に戻り、設定速度に達したと判定すると、ステップS4に進む。なお、設定速度とは、例えば、乗りかご2が通常昇降する際の速度の1.3倍の速度である。このため、制御部24は、乗りかご2の速度が設定速度に達するまで、ステップS2及びステップS3を繰り返すこととなる。ステップS4では、制御部24は、ソレノイドアクチュエータ22に楔26を上方に引き上げさせて、楔26がかご用ガイドレール3を挟み込んで、乗りかご2のかご用ガイドレール3に対する移動が停止させる。このように、非常停止装置11は、乗りかご2が予め定められた設定速度よりも高速で降下することを防止し、乗りかご2を安全に停止させるための安全装置である。
【0029】
前述した構成のエレベータ1は、巻き上げ機がメインロープ6をその長手方向に移動させることで、乗りかご2とカウンタウェイト4とを互いに上下反対方向に昇降させて、乗りかご2を所望の階に運搬する。このとき、エレベータ1は、かご用ガイドレール3が乗りかご2の昇降方向を案内し、ウェイト用ガイドレール5がカウンタウェイト4の昇降方向を案内する。この間、エレベータ1は、例えば、乗りかご2の速度が設定速度に達すると、非常停止装置11が作動し、乗りかご2を停止させる。
【0030】
実施形態1にかかるエレベータ1の非常停止装置11によれば、エレベータ制御部9と速度検出器23を用いて乗りかご2の速度に関する速度情報を検出して非常止機構21を動作させるので、従来設けられていたガバナ、ガバナロープ、このガバナロープに張力を付与するテンショナを設ける必要がない。このために、部品点数を削減できるとともに、ガバナ、ガバナロープ、テンショナを設置するためのスペースを昇降路や機械室に設ける必要がない。よって、複雑な機構を有するガバナが必要ないのでコストの低減を図ることができるとともに、昇降路や機械室の小型化を図ることができる。さらに、ガバナロープが切断されることも全くない。また、エレベータ1の非常停止装置11は、速度検出部としてのエレベータ制御部9と速度検出器23とを設け、これらが検出した乗りかご2の速度に関する速度情報に基いて、これらのうち少なくとも一方が故障しているか否かを判断する。このために、速度検出部としてのエレベータ制御部9と速度検出器23の信頼性を高く保つことができ、非常停止装置11全体の信頼性を高く保つことができる。
【0031】
実施形態1にかかるエレベータ1の非常停止装置11によれば、エレベータ制御部9と速度検出器23などの速度検出部が二つ設けられており、これらが検出した乗りかご2の速度が異なると、速度検出部が故障していると判断するので、速度検出部即ち非常停止装置11の信頼性を向上させることができる。
【0032】
また、速度検出器23が乗りかご2に取り付けられているので、乗りかご2の速度を直接検出することができ、速度検出器23が正確に乗りかご2の速度を検出することができる。よって、乗りかご2が設定速度に達すると、非常止機構21を確実に動作させることができ、乗りかご2を停止することができる。
【0033】
さらに、速度検出器23が乗りかご2に取り付けられた加速度センサ27の検出した乗りかご2の鉛直方向の加速度を積分して速度を検出するので、乗りかご2の速度を正確に算出することができる。よって、速度検出器23の信頼性を高めることができるとともに、速度検出器23が正確に乗りかご2の速度を検出することができる。
【0034】
[変形例]
以下、実施形態1に係るエレベータ1の非常停止装置11の変形例について説明する。なお、前述した実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図4は、実施形態1に係る変形例のエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【0035】
実施形態1の変形例では、非常停止装置11は、図4に示すように、ソレノイドアクチュエータ22を一つのみ備え、この一つのソレノイドアクチュエータ22の駆動力により一対の非常止機構21の楔26を連動させて上方に引き上げるリンク機構29を備えている。この変形例によれば、前述した実施形態1と同様に、速度検出部としてのエレベータ制御部9と速度検出器23の信頼性を高く保つことができ、非常停止装置11全体の信頼性を高く保つことができる。さらに、この変形例によれば、非常停止装置11は、ソレノイドアクチュエータ22を一つのみ設けるので、非常止機構21の楔26を互いに連動させて作動することができる。
【0036】
[実施形態2]
以下、実施形態2に係るエレベータ1の非常停止装置11について説明する。なお、前述した実施形態1や変形例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図5は、実施形態2に係るエレベータの全体の構成を模式的に示す正面図、図6は、実施形態2に係るエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図、図7は、実施形態2に係るエレベータの非常停止装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【0037】
実施形態2では、非常停止装置11は、図5及び図6に示すように、速度検出器23を三つ備えて、エレベータ制御部9と合わせて、速度検出部を合計四つ備えている。実施形態2では、制御部24は、図7に一例が示される非常止機構動作処理100のステップS2aでは、エレベータ制御部9が検出した乗りかご2の速度と、三つの速度検出器23それぞれが検出した乗りかご2の速度との全てが等しいか否かを判定して、等しいと判定すると、ステップS3に進み、等しくないと判定すると、ステップS2bに進む。ステップS2bでは、制御部24は、エレベータ制御部9が検出した乗りかご2の速度と、三つの速度検出器23それぞれが検出した乗りかご2の速度との四つの速度の全てが互いに異なるか否かを判定し、全て異なると判定すると、エレベータ制御部9と三つの速度検出器23との少なくとも一つ即ち非常停止装置11が故障したと判定して、ステップS5に進み、全てが異ならないと判定すると、ステップS2cに進む。なお、本発明において、全ての速度が互いに異なるとは、ロータリエンコーダや速度検出器23の分解能などの特性、乗りかご2の昇降速度などに応じて、エレベータ1としての実用上等しいということができる程度の速度差を超えて、検出した速度間に差が生じていることをいう。
【0038】
ステップS2cでは、制御部24は、エレベータ制御部9が検出した乗りかご2の速度と、三つの速度検出器23それぞれが検出した乗りかご2の速度とが二等分されているか否かを判定して、二等分されていると判定すると、エレベータ制御部9と三つの速度検出器23との少なくとも一つ即ち非常停止装置11が故障したと判定して、ステップS5に進み、二等分されていないと判定すると、ステップS2dに進む。なお、本発明において、速度が二等分されているとは、互いに等しい所定速度がエレベータ制御部9と三つの速度検出器23とのうちの二つの速度検出部により検出され、前記所定速度と異なる互いに等しい第2の所定速度が他の二つの速度検出部により検出されたことをいう。
【0039】
ステップS2dでは、制御部24は、エレベータ制御部9と速度検出器23とを合わせた速度検出部のうちの他の速度検出部とは異なる速度を検出した速度検出部が、互いに等しい速度を検出した速度検出部の数を上回っているか否かを判定する。他の速度検出部とは異なる速度を検出した速度検出部が互いに等しい速度を検出した速度検出部の数を上回っていると判定すると、エレベータ制御部9と三つの速度検出器23との少なくとも一つ即ち非常停止装置11が故障したと判定して、ステップS5に進み、他の速度検出部とは異なる速度を検出した速度検出部が互いに等しい速度を検出した速度検出部の数を上回っていないと判定すると、ステップS3に進む。なお、他の速度検出部とは異なる速度を検出した速度検出部とは、自己を除く他の速度検出部が検出した速度と、自己の検出した速度とが異なる速度検出部をいう。例えば、本実施形態では、ステップS2dにおいて、速度検出部が合計四つ設けられているので、他の速度検出部とは異なる速度を検出した速度検出部が一つでかつ残りの三つの速度検出部が検出した速度が等しい場合と、他の速度検出部とは異なる速度を検出した速度検出部が二つでかつ残りの二つの速度検出部が検出した速度が等しい場合には、ステップS3に進む。
【0040】
実施形態2のエレベータ1の非常停止装置11によれば、前述した実施形態1と同様に、速度検出部としてのエレベータ制御部9と速度検出器23の信頼性を高く保つことができ、非常停止装置11全体の信頼性を高く保つことができる。また、実施形態2のエレベータ1の非常停止装置11によれば、速度検出部が検出した乗りかご2の速度が全て異なる場合、速度検出部が検出した乗りかご2の速度が二等分されている場合、他の速度検出部とは異なる速度を検出した速度検出部が等しい速度を検出した速度検出部の数を上回っている場合に、速度検出部即ち非常停止装置11が故障していると判定する。このように、速度検出部即ち非常停止装置11の故障を判定するので、速度検出部即ち非常停止装置11の信頼性を高めることができる。例えば、本実施形態では、エレベータ制御部9と速度検出器23を合わせた速度検出部を合計四つ備えているので、一つの速度検出部の故障確率を5%とすると、前述したように判定することで、非常停止装置11の全体の信頼性を99%以上とすることができる。なお、速度検出部が検出した乗りかご2の速度が二等分されるか否かを判定するためには、速度検出部が四つ以上の偶数設けられているのが望ましく、他の速度検出部とは異なる速度を検出した速度検出部が等しい速度を検出した速度検出部の数を上回るか否かを判定するためには、速度検出部が三つ以上設けられているのが望ましい。
【0041】
[変形例]
以下、実施形態2に係るエレベータ1の非常停止装置11の変形例について説明する。なお、前述した実施形態2と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図8は、実施形態2に係る変形例のエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【0042】
実施形態2の変形例では、非常停止装置11は、図8に示すように、ソレノイドアクチュエータ22を一つのみ備え、この一つのソレノイドアクチュエータ22の駆動力により一対の非常止機構21の楔26を連動させて上方に引き上げるリンク機構29を備えている。この変形例によれば、前述した実施形態1の変形例と同様に、速度検出部としてのエレベータ制御部9と速度検出器23の信頼性を高く保つことができ、非常停止装置11全体の信頼性を高く保つことができる。さらに、この変形例によれば、非常停止装置11は、ソレノイドアクチュエータ22を一つのみ設けるので、非常止機構21の楔26を互いに連動させて作動することができる。
【0043】
[実施形態3]
以下、実施形態3に係るエレベータ1の非常停止装置11について説明する。なお、前述した実施形態1、実施形態2や変形例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図9は、実施形態3に係るエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図、図10は、実施形態3に係るエレベータの非常停止装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【0044】
実施形態3では、非常停止装置11は、図9に示すように、速度検出器23を三つ備えて、速度検出部としてエレベータ制御部9を用いることなく、これら速度検出部を合計三つ備えている。実施形態3では、制御部24は、図10に一例が示される非常止機構動作処理100のステップS2aでは、三つの速度検出器23それぞれが検出した乗りかご2の速度の全てが等しいか否かを判定して、等しいと判定すると、ステップS3に進み、等しくないと判定すると、ステップS2bに進む。
【0045】
ステップS2bでは、制御部24は、三つの速度検出器23それぞれが検出した乗りかご2の速度の三つの速度の全てが互いに異なるか否かを判定し、全て異なると判定すると、三つの速度検出器23の少なくとも一つ即ち非常停止装置11が故障したと判定して、ステップS5に進み、全てが異ならないと判定すると、ステップS2dに進む。
【0046】
ステップS2dでは、制御部24は、三つの速度検出器23のうちの他の速度検出器23とは異なる速度を検出した速度検出器23が、互いに等しい速度を検出した速度検出器23の数を上回っているか否かを判定する。他の速度検出器23とは異なる速度を検出した速度検出器23が互いに等しい速度を検出した速度検出器23の数を上回っていると判定すると、三つの速度検出器23の少なくとも一つ即ち非常停止装置11が故障したと判定して、ステップS5に進み、他の速度検出器23とは異なる速度を検出した速度検出器23が互いに等しい速度を検出した速度検出器23の数を上回っていないと判定すると、ステップS3に進む。例えば、本実施形態では、ステップS2dにおいて、速度検出部としての速度検出器23が合計三つ設けられているので、他の速度検出部とは異なる速度を検出した速度検出部が一つでかつ残りの二つの速度検出部が検出した速度が等しい場合には、ステップS3に進む。
【0047】
実施形態3のエレベータ1の非常停止装置11によれば、前述した実施形態1及び実施形態2と同様に、速度検出部としての速度検出器23の信頼性を高く保つことができ、非常停止装置11全体の信頼性を高く保つことができる。また、実施形態3のエレベータ1の非常停止装置11によれば、速度検出部が検出した乗りかご2の速度が全て異なる場合、他の速度検出部とは異なる速度を検出した速度検出部が等しい速度を検出した速度検出部の数を上回っている場合に、速度検出部即ち非常停止装置11が故障していると判定する。このように、速度検出部即ち非常停止装置11の故障を判定するので、速度検出部即ち非常停止装置11の信頼性を高めることができる。
【0048】
実施形態3のエレベータ1の非常停止装置11によれば、前述した実施形態1及び実施形態2と同様に、速度検出部としての速度検出器23の信頼性を高く保つことができ、非常停止装置11全体の信頼性を高く保つことができる。
【0049】
[変形例1]
以下、実施形態3に係るエレベータ1の非常停止装置11の変形例1について説明する。なお、前述した実施形態3と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図11は、実施形態3に係る変形例1のエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【0050】
実施形態3の変形例1では、非常停止装置11は、図11に示すように、ソレノイドアクチュエータ22を一つのみ備え、この一つのソレノイドアクチュエータ22の駆動力により一対の非常止機構21の楔26を連動させて上方に引き上げるリンク機構29を備えている。この変形例1によれば、前述した実施形態1及び実施形態2の変形例と同様に、速度検出部としての速度検出器23の信頼性を高く保つことができ、非常停止装置11全体の信頼性を高く保つことができる。さらに、この変形例1によれば、非常停止装置11は、ソレノイドアクチュエータ22を一つのみ設けるので、非常止機構21の楔26を互いに連動させて作動することができる。
【0051】
[変形例2]
以下、実施形態3に係るエレベータ1の非常停止装置11の変形例2について説明する。なお、前述した実施形態3、変形例1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図12は、実施形態3に係る変形例2のエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【0052】
実施形態3の変形例2では、非常停止装置11は、図12に示すように、加速度センサ27を三つ備え、積分部28を一つのみ備えている。一つの積分部28が、三つの加速度センサ27それぞれが検出した加速度を積分して、制御部24に向かって出力する。この変形例2も速度検出部としての加速度センサ27の信頼性を高く保つことができ、非常停止装置11全体の信頼性を高く保つことができる。なお、実施形態3の変形例2では、加速度センサ27が、乗りかご2の速度に関する速度情報を検出する速度検出部をなしている。
【0053】
[変形例3]
以下、実施形態3に係るエレベータ1の非常停止装置11の変形例3について説明する。なお、前述した実施形態3、変形例1及び変形例2と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図13は、実施形態3に係る変形例3のエレベータの非常停止装置の構成を示すブロック図である。
【0054】
実施形態3の変形例3では、非常停止装置11は、図13に示すように、加速度センサ27を三つ備え、積分部28を一つのみ備え、ソレノイドアクチュエータ22を一つのみ備え、この一つのソレノイドアクチュエータ22の駆動力により一対の非常止機構21の楔26を連動させて上方に引き上げるリンク機構29を備えている。一つの積分部28が、三つの加速度センサ27それぞれが検出した加速度を積分して、制御部24に向かって出力する。この変形例3も速度検出部としての加速度センサ27の信頼性を高く保つことができ、非常停止装置11全体の信頼性を高く保つことができる。さらに、変形例3によれば、非常停止装置11は、ソレノイドアクチュエータ22を一つのみ設けるので、非常止機構21の楔26を互いに連動させて作動することができる。なお、実施形態3の変形例3では、加速度センサ27が、乗りかご2の速度に関する速度情報を検出する速度検出部をなしている。
【0055】
[実施形態4]
以下、実施形態4に係るエレベータ1の非常停止装置11について説明する。なお、前述した実施形態1〜実施形態3や変形例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図14は、実施形態4に係るエレベータの全体の構成を模式的に示す正面図、図15は、実施形態4に係るエレベータの非常停止装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【0056】
実施形態4では、非常停止装置11は、図14に示すように、荷重検出部としての荷重センサ30を備えている。荷重センサ30は、乗りかご2のかご室13の底面に取り付けられている。荷重センサ30は、例えば、ロードセルなどで構成されており、乗りかご2のかご室13内の乗客などの積載物による荷重を検出する。荷重センサ30は、検出した結果を制御部24に向かって出力する。
【0057】
実施形態4では、制御部24は、図15に一例が示される非常止機構動作処理100のステップS1aでは、乗りかご2の昇降中に三つの速度検出器23それぞれの加速度センサ27に乗りかご2の加速度を検出させて、ステップS1bに進む。ステップS1bでは、制御部24は、加速度センサ27に乗りかご2の加速度を検出させてからすなわち乗りかご2の昇降中に荷重センサ30が検出した荷重が変化したか否かを判定し、荷重が変化したと判定するとステップS1aに戻り、荷重が変化していないと判定するとステップS1cに進む。ステップS1cでは、制御部24は、積分部28に加速度センサ27が検出した加速度を時間で積分させて、乗りかご2の速度を算出(検出)させ、前述した実施形態1〜実施形態3と同様に、前述したステップS2,S2aに進む。なお、実施形態4では、制御部24は、ステップS2,S2a以降、前述した実施形態1〜実施形態3と同様の処理を実行する。このように、制御部24は、乗りかご2の昇降中に荷重センサ30が検出した荷重が変化すると、ステップS1bからステップS1aに戻ることで、速度検出器23の積分部28が加速度センサ27が検出した加速度を積分して乗りかご2の速度を算出(検出)することを禁止する。
【0058】
実施形態4では、前述した実施形態1〜実施形態3の効果に加えて、昇降中に乗りかご2に取り付けられた荷重センサ30が検出した荷重が変化すると、加速度センサ27が検出した加速度を積分して速度を検出することを禁止するので、乗りかご2内の乗客などが飛び跳ねるなどして生じた加速度を乗りかご2の速度を検出するために用いることがない。よって、乗りかご2の速度をより正確に検出することができ、非常止機構21の信頼性を向上することができる。
【0059】
[実施形態5]
以下、実施形態5に係るエレベータ1の非常停止装置11について説明する。なお、前述した実施形態1〜実施形態4や変形例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図16は、実施形態5に係るエレベータの非常停止装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【0060】
実施形態5では、非常停止装置11の制御部24は、前述した非常止機構動作処理100と並列して、図16に一例が示される速度リセット処理101を繰り返し実行する。速度リセット処理101のステップS10では、いずれかのかご着床検出装置8が乗りかご2が着床したことを検出しているか否かを判定し、着床したことを検出しているとステップS11に進み、着床したことを検出していないとステップS10を繰り返す。要するに、ステップS10では、制御部24は、乗りかご2が着床するまで、ステップS10を繰り返し、乗りかご2が着床するとステップS11に進む。ステップS11では、制御部24は、開閉検出センサが開閉ドアが開いたことを検出したか否かを判定し、検出していないとステップS11を繰り返し、検出しているとステップS12に進む。
【0061】
要するに、ステップS11では、制御部24は、開閉ドアが開くまで、このステップS11を繰り返す。ステップS12では、制御部24は、積分部28に速度をゼロにリセットさせて、ステップS13に進む。ステップS13では、制御部24は、開閉検出センサが開閉ドアが閉じたことを検出したか否かを判定し、検出していないとステップS13を繰り返し、検出しているとステップS14に進む。要するに、ステップS13では、制御部24は、開閉ドアが閉じるまで、このステップS13を繰り返す。ステップS14では、制御部24は、積分部28に速度をゼロにリセットさせる。こうして、非常停止装置11の制御部24は、速度リセット処理101を繰り返し実行することで、かご着床検出装置8が乗りかご2が着床したことを検出すると即ち乗りかご2が着床すると、積分部28に速度を零にリセットさせる。
【0062】
実施形態5では、前述した実施形態1〜実施形態4の効果に加えて、乗りかご2が各階に着床される即ち乗りかご2が停止すると、積分部28が積分する速度を零にリセットするので、積分部28が昇降中に乗りかご2の速度を正確に検出することができる。よって、乗りかご2の速度をより正確に検出することができ、非常停止装置11の信頼性を向上することができる。
【0063】
[変形例]
以下、実施形態5に係るエレベータ1の非常停止装置11の変形例について説明する。なお、前述した実施形態5と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図17は、実施形態5に係る変形例のエレベータの非常停止装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【0064】
実施形態5の変形例では、非常停止装置11の制御部24は、図17に一例が示される速度リセット処理101のステップS11aでは、駆動機構7のブレーキが制動状態であるか否かを判定し、制動状態ではないとステップS11aを繰り返し、制動状態であるとステップS12に進む。要するに、ステップS11aでは、制御部24は、ブレーキが制動状態となるまで、このステップS11aを繰り返す。ステップS12では、制御部24は、積分部28に速度をゼロにリセットさせて、ステップS13aに進む。ステップS13aでは、制御部24は、駆動機構7のブレーキが開放状態であるか否かを判定し、開放状態ではないとステップS13aを繰り返し、開放状態であるとステップS14に進む。要するに、ステップS13aでは、制御部24は、ブレーキが開放状態となるまで、このステップS13aを繰り返す。ステップS14では、制御部24は、積分部28に速度をゼロにリセットさせる。こうして、非常停止装置11の制御部24は、速度リセット処理101を繰り返し実行することで、かご着床検出装置8が乗りかご2が着床したことを検出すると即ち乗りかご2が着床すると、積分部28に速度を零にリセットさせる。
【0065】
実施形態5の変形例では、前述した実施形態1〜実施形態4の効果に加えて、乗りかご2が各階に着床される即ち乗りかご2が停止すると、積分部28が積分する速度を零にリセットするので、積分部28が昇降中に乗りかご2の速度を正確に検出することができる。よって、乗りかご2の速度をより正確に検出することができ、非常停止装置11の信頼性を向上することができる。
【0066】
[実施形態6]
以下、実施形態6に係るエレベータ1の非常停止装置11について説明する。なお、前述した実施形態1〜実施形態5や変形例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図18は、実施形態6に係るエレベータの非常停止装置の要部の構成を示す正面図、図19は、図18中のXX−XX線に沿う断面図である。
【0067】
実施形態6では、乗りかご2に取り付けられて、かご用ガイドレール3の長手方向に沿って、この乗りかご2をかご用ガイドレール3に移動自在に支持する移動ガイド部31に速度検出部としての速度検出装置32が設けられている。移動ガイド部31は、図18に示すように、乗りかご2の上端及び下端のそれぞれに二つずつ設けられている。移動ガイド部31は、図18及び図19に示すように、乗りかご2に固定されたガイド部本体33と、このガイド部本体33に回転自在に設けられかつかご用ガイドレール3上を転動可能なローラとしての複数のガイドローラ34とを備えている。ガイドローラ34は、ガイド部本体33に三つ設けられており、互いの間にかご用ガイドレール3を挟みこんで、かご用ガイドレール3から乗りかご2が脱落することを防止する。
【0068】
また、実施形態6では、速度検出装置32は、図19に示すように、前述したガイドローラ34と、このガイドローラ34の回転を検出するロータリエンコーダ38と、算出部39を備えている。ロータリエンコーダ38は、乗りかご2の速度に関する速度情報としてのガイドローラ34の回転を検出して、検出した結果を算出部39に向かって出力する。算出部39は、ロータリエンコーダ38からの情報に基いて乗りかご2の速度を算出して、算出した結果を制御部24に向かって出力する。
【0069】
この実施形態6では、乗りかご2に設けられかつかご用ガイドレール3上を転動するガイドローラ34の回転に基いて、乗りかご2の速度を検出するので、乗りかご2の速度をより正確に検出することができ、非常停止装置11の信頼性を向上することができる。
【0070】
[実施形態7]
以下、実施形態7に係るエレベータ1の非常停止装置11について説明する。なお、前述した実施形態1〜実施形態6や変形例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図20は、実施形態7に係るエレベータの非常停止装置の要部の構成を示す正面図である。
【0071】
実施形態7では、エレベータ1の非常停止装置11は、速度検出部として、図20に示すように、リニアエンコーダ35を備えている。リニアエンコーダ35は、昇降路の全長に亘って鉛直方向に直線状に延在したスケール36と、乗りかご2に取り付けられかつスケール36に間隔をあけて相対して設けられた検出子37と、算出部40とを備えている。検出子37は、磁力、光などにより、乗りかご2の速度に関する速度情報としてのスケール36上の位置を検出して、検出した結果を算出部40に向かって出力する。算出部40は、リニアエンコーダ35の検出子37からのスケール36上の位置を示す情報に基いて、乗りかご2の速度を算出して、算出した結果を制御部24に向かって出力する。
【0072】
この実施形態7では、昇降路に設けられたスケール36とこのスケール36に相対する検出子37とにより乗りかご2の速度を検出するので、乗りかご2の速度をより正確に検出することができ、非常停止装置11の信頼性を向上することができる。
【0073】
前述した実施形態では、非常停止装置11が昇降体としての乗りかご2を停止する例を示しているが、本発明では、図21に示すように、非常停止装置11がカウンタウェイト4をウェイト用ガイドレール5に対して停止するものであっても良い。なお、図21において、前述した実施形態1〜実施形態7と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。また、前述した実施形態では、前述した非常止機構動作処理100と速度リセット処理101を実行しているが、本発明の目的を達成できる範囲内で、制御部24が実行するフローチャートを適宜変更しても良いことは勿論である。本発明では、ソレノイドアクチュエータ22の他に油圧ジャッキなどの他の装置を用いても良い。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1 エレベータ
2 乗りかご(昇降体)
3 かご用ガイドレール(ガイドレール)
4 カウンタウェイト(昇降体)
5 ウェイト用ガイドレール(ガイドレール)
8 かご着床検出装置(着床検出部)
9 エレベータ制御部(速度検出部)
21 非常止機構
23 速度検出器(速度検出部)
24 制御部
27 加速度センサ(加速度検出部、速度検出部)
28 積分部
30 荷重センサ(荷重検出部)
32 速度検出装置(速度検出部)
34 ガイドローラ(ローラ)
35 リニアエンコーダ(速度検出部)
36 スケール
37 検出子
39 算出部
40 算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の昇降路に昇降自在に設けられた昇降体の速度に関する速度情報を検出する速度検出部と、
前記昇降体に設けられかつ前記昇降体を停止する非常止機構と、
前記速度情報に基いて前記非常止機構を動作させる制御部と、を備えたエレベータの非常停止装置において、
前記速度検出部が、複数設けられ、かつ、少なくとも一つの速度検出部が前記昇降体に設けられているとともに、
前記制御部が、前記複数の速度検出部が検出した前記速度情報に基いて、複数の速度検出部のうちの少なくとも一つが故障していると判定すると前記昇降体の昇降動作を停止することを特徴とする、
エレベータの非常停止装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の速度検出部が検出した前記速度情報の全てが互いに異なる場合と、四つ以上の偶数設けられた前記速度検出部が検出した前記速度情報が二等分されている場合と、三つ以上設けられた前記速度検出部のうちの他の速度検出部とは異なる速度情報を検出した速度検出部が、互いに等しい速度情報を検出した速度検出部の数を上回っている場合と、のうちのいずれかに該当すると、複数の速度検出部のうちの少なくとも一つが故障していると判定することを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータの非常停止装置。
【請求項3】
前記複数の速度検出部のうちの少なくとも一つの速度検出部は、前記昇降体に取り付けられてこの昇降体の加速度を検出する加速度検出部と、前記加速度検出部が検出した前記昇降体の加速度を積分して前記昇降体の速度を算出する積分部と、を備えていることを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載のエレベータの非常停止装置。
【請求項4】
前記昇降体に取り付けられかつこの昇降体の積載量の荷重を検出する荷重検出部を備え、
前記制御部は、前記昇降体の昇降中に前記荷重検出部が検出した荷重が変化すると、前記積分部が前記昇降体の速度を算出することを禁止することを特徴とする、
請求項3に記載のエレベータの非常停止装置。
【請求項5】
前記昇降路には、前記昇降体が前記建造物の各階に着床したことを検出する着床検出部が設けられており、
前記制御部が、前記着床検出部が前記昇降体が着床したことを検出すると、前記積分部に前記速度を零にリセットさせることを特徴とする、
請求項3又は請求項4に記載のエレベータの非常停止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−56750(P2013−56750A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196282(P2011−196282)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】