説明

エレベータの非接触給電システム

【課題】バッテリの充電切れによる運転の中断を防ぐ。
【解決手段】乗りかご11にバッテリ24を有し、給電装置22が設置された給電階で乗りかご11に非接触で給電を行ってバッテリ24を充電する。エレベータ制御装置19には、乗りかご11に呼び登録がなく、かつ、無人で停止している状態を待機状態として検出する機能と、待機状態が検出された場合に乗りかご11を給電階に移動させて給電を行う機能と、給電中に新たな呼びが発生した場合に、バッテリ24が一定量以上の充電量を満たすまでの間、乗りかご11を給電階に停止させておき、バッテリ24が一定量以上の充電量を満たした時点で通常運転に復帰させる機能が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの運転に必要な電力を非接触で給電するエレベータの非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速充電可能な大容量バッテリの開発が進んでおり、電気自動車を中心に非接触給電技術の導入が盛んである。非接触給電技術は主に電磁誘導の原理を利用しており、一次側コイルに発生させた交流磁束を二次側コイルに印加させて起電力を発生させることで、電力を非接触で伝送する技術である。
【0003】
現在、エレベータでは、停電時に乗りかごに設けられたバッテリの電力によって緊急動作を行っている。バッテリの充電時間の短縮化や大容量化が進めば、通常時もバッテリの電力のみでかご内機器への電力供給が可能となり、コードレス化のメリットがあるため、非接触給電の技術導入が検討されている。
【0004】
また、バッテリの残量が低下した場合に、空調、照明などを制限してバッテリの電力消費を抑える方法も考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−286635号公報
【特許文献2】特開2008−7269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したチャージ型システムでは、バッテリの残量が一定値以下に低下した場合に、乗りかごを給電装置の設置位置まで移動させて給電を行う必要がある。このため、例えば連続運転などでバッテリの電力を大きく消費すると、運転を中断して給電しなければならず、エレベータの運行効率が悪くなる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、バッテリの充電切れによる運転の中断を防ぐことのできるエレベータの非接触給電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係るエレベータの非接触給電システムは、乗りかごにバッテリを有し、給電装置が設置された給電階で上記乗りかごに非接触で給電を行って上記バッテリを充電するエレベータの非接触給電システムにおいて、上記乗りかごに呼び登録がなく、かつ、無人で停止している状態を待機状態として検出する状態検出手段と、この状態検出手段によって上記待機状態が検出された場合に上記乗りかごを上記給電階に移動させて給電を行う給電制御手段と、この給電制御手段による給電中に新たな呼びが発生した場合に、上記バッテリが一定量以上の充電量を満たすまでの間、上記乗りかごを上記給電階に停止させておき、上記バッテリが一定量以上の充電量を満たした時点で通常運転に復帰させる運転制御手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は第1の実施形態に係るエレベータの非接触給電システムの概略的な構成を示す図である。
【図2】図2は同実施形態におけるエレベータの監視非接触給電システムに用いられるエレベータ制御装置と乗りかごと乗場呼び登録装置との関係を示す図である。
【図3】図3は同実施形態におけるエレベータの非接触給電システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図4は第2の実施形態におけるエレベータの非接触給電システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は実施形態におけるオプションテーブルの設定内容の一例を示す図である。
【図6】図6は第3の実施形態に係るエレベータの監視非接触給電システムに用いられるエレベータ制御装置の充電モードの切り換えに関する構成を示すブロック図である。
【図7】図7は同実施形態における充電モードテーブルの設定内容の一例を示す図である。
【図8】図8は同実施形態における通常充電モードと急速充電モードの関係を示す図である。
【図9】図9は同実施形態におけるエレベータの非接触給電システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は第4の実施形態におけるエレベータの非接触給電システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は同実施形態における乗場にいる利用者に対して充電中である旨を通知する場合の一例を示す図である。
【図12】図12にかご内にいる利用者に対して一部動作を制限している旨を通知する場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るエレベータの非接触給電システムの概略的な構成を示す図である。
【0012】
昇降路内に設置されたエレベータの乗りかご11は、巻上機12の駆動によりロープ13を介して昇降動作する。また、各階の乗場には、乗場呼び登録装置14が設置されている。この乗場呼び登録装置14は、利用者が乗場呼びを登録するための装置であり、行先方向(上方向/下方向)を指定するための操作部15と、エレベータの運行状況などを表示するための表示部16とを有する。
【0013】
なお、「乗場呼び」とは、各階の乗場で登録された呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。これに対し、後述する「かご呼び」とは、かご室内で登録された呼びの信号のことであり、行先階の情報を含む。
【0014】
乗りかご11と各階の乗場呼び登録装置14は、伝送ケーブル17,18を介してエレベータ制御装置19に接続されている。エレベータ制御装置19は、エレベータ全体の運転制御を行うものであり、機械室あるいは昇降路内に設置されている。このエレベータ制御装置19と巻上機12に対する電力は、給電装置20から電力線21を介して供給される。
【0015】
ここで、本システムでは、エレベータの利用回数の多い階(基準階)を給電階として設定し、そこに設置された給電装置22から乗りかご11に対して非接触で給電を行う構成になっている。
【0016】
乗りかご11には受電装置23とバッテリ24が設けられている。受電装置23は、乗りかご11が給電階に停止したときに給電装置22と対向する位置に設置されている。バッテリ24は、受電装置23に接続されており、給電装置22から非接触で給電された電力を蓄える。このバッテリ24に蓄えられた電力は、かご室内の照明機器や表示器、ドアモータなどの駆動電力として使用される。
【0017】
なお、非接触給電の方式としては、例えば電磁誘導方式が用いられる。「電磁誘導方式」は、2つの隣接するコイルの一方(給電側コイル)に電流を流したときに発生する磁束を媒介として他方のコイル(受電側コイル)に送電する方式である。この他に、電流を電磁波に変換し、アンテナを介して送電する「電波方式」や、電磁界の共鳴現象を利用した「電磁界共鳴方式」などがあるが、本発明ではこれらの方式に特に限定されるものではない。
【0018】
図2はエレベータの監視非接触給電システムに用いられるエレベータ制御装置19と乗りかご11と乗場呼び登録装置14との関係を示す図である。
【0019】
乗りかご11内には、かご呼び登録装置31と表示装置33がかごドア36の近くに設置されている。かご呼び登録装置31は、乗りかご11に乗車した利用者がかご呼びとして行先階を登録するための装置である。このかご呼び登録装置31には、行先階を指定するための各階のボタンからなる操作部32が設けられている。表示装置33は、現在位置や運転方向などを含むエレベータの運行状況を表示する。
【0020】
また、この乗りかご11には、荷重検出装置34とアナウンス装置35が設置されている。荷重検出装置34は、乗りかご11の積載荷重を検出する。アナウンス装置35は、乗りかご11内の利用者に各種メッセージをアナウンスする。
【0021】
かご呼び登録装置31から発信されるかご呼びの情報(行先階)や、荷重検出装置34によって検出された荷重の情報などは伝送ケーブル17を介してエレベータ制御装置19に送られる。また、各階の乗場呼び登録装置14から発信される乗場呼びの情報(登録階と行先方向)は伝送ケーブル18を介してエレベータ制御装置19に送られる。
【0022】
エレベータ制御装置19では、かご呼びあるいは乗場呼びを受信すると、巻上機12を駆動して乗りかご11をその呼びに対応した階に応答させる。また、このエレベータ制御装置19には、本システムを実現するための機能として、状態検出部19a、給電制御部19b、運転制御部19cが備えられている。
【0023】
状態検出部19aは、呼び(乗場呼び/かご呼び)の登録がなく、かつ、乗りかご11に利用者が乗車していない状態つまり無人で停止している状態を待機状態として検出する。呼び(乗場呼び/かご呼び)の有無は、乗場呼び登録装置14やかご呼び登録装置31の登録状態から判断する。利用者が乗車していない状態は、乗りかご11に設置された荷重検出装置34によって検出される積載荷重から判断する。積載荷重がゼロであれば、乗りかご11に利用者が乗車していない状態つまり無人であると判断される。なお、かご呼び登録装置31が操作されない状態が一定時間以上継続した場合に、乗りかご11に利用者が乗車していない状態と判断することでも良い。
【0024】
給電制御部19bは、状態検出部19aによって乗りかご11の無応答状態が検出された場合に乗りかご11を給電階に移動させ、給電装置22と受電装置23とを対向させた状態で非接触給電を行う。
【0025】
運転制御部19cは、この給電制御部19bによる給電中に新たな呼び(乗場呼び/かご呼び)が発生した場合に、バッテリ24が一定量以上の充電量を満たすまでの間、乗りかご11を給電階に停止させておき、バッテリ24が一定量以上の充電量を満たした時点で通常運転に復帰させる。さらに、運転制御部19cは、通常運転中にバッテリ24の充電量が一定量以下に低下した場合に、乗りかご11が給電階に応答したときの停止時間が通常よりも長くなるようにかごドア36の駆動を制御する。
【0026】
次に、本システムの動作を説明する。
【0027】
図3は第1の実施形態におけるエレベータの非接触給電システムの動作を説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートで示される処理は、コンピュータであるエレベータ制御装置19によって実行される。
【0028】
一般にエレベータでは、停電が発生した場合に、乗りかご11が設置されたバッテリ24の電力を利用して緊急動作を行っている。これに対し、本システムでは、停電時を含めた全てのオペレーションにおいて、バッテリ24の電力を利用して、図2に示したかご呼び登録装置31、表示装置33、荷重検出装置34、アナウンス装置35などを含むかご内の各機器を動作させる。したがって、バッテリ不足となって運転が中断する前に給電を行って、バッテリ24の電力を確保する必要がある。
【0029】
そこで、エレベータ制御装置19は、まず、乗りかご11が待機状態で停止しているか否かを判断する(ステップA11)。この場合、乗場呼び登録装置14及びかご呼び登録装置31に呼びが登録されていない状態で、荷重検出装置34によって積載荷重が検出されない状態が一定時間経過すると、エレベータ制御装置19は、乗りかご11が待機状態で停止しているものと判断する。
【0030】
乗りかご11が待機状態で停止していると(ステップA11のYES)、エレベータ制御装置19は、その乗りかご11を給電階まで強制的に移動させる(ステップA12)。図1に示したように、給電階(図1の例では1F)には給電装置22が設置されている。乗りかご11が給電階に来ると、給電装置22と受電装置23との間で非接触給電が行なわれる。
【0031】
その際、一定の走行距離に必要な充電量Tcを満たすまで給電装置22から給電を行う。詳しくは、乗りかご11を最下階から最上階まで、所定回数(例えば30回)往復するために必要な電力値を予め測定しておき、その電力値を充電完了の判断値として用いて充電量Tcまで給電を行うものとする。
【0032】
ここで、充電中に乗場呼び登録装置14またはかご呼び登録装置31から呼びが発生しても(ステップA13のYES)、バッテリ24が上記充電量Tcを満たしていなければ(ステップA14のNO)、エレベータ制御装置19は、その呼びに応答せずに充電を継続する(ステップA15)。これは、充電量が少ない状態で呼びに応答すると、別の呼びが続いて発生した場合にすぐにバッテリ不足となって運転が中断する可能性が高いためである。
【0033】
なお、充電中に発生した呼びは無効とするか、あるいは、充電完了まで保留しておくものとする。上記充電量Tcまでの充電が完了すると(ステップA14のYES)、エレベータ制御装置19は、通常運転に復帰し、新たに発生した呼びあるいは保留中の呼びに応答して乗りかご11を移動させる(ステップA16)。
【0034】
この場合、一定の充電量を満たしてから通常運転を再開するので、運転途中でバッテリ切りになることはない。しかし、呼びの登録が途切れない状態、または、荷重検出が続いている場合には(ステップA11のNO)、乗りかご11を給電階へ強制移動させて充電する暇がないため、運転途中でバッテリ切りになる可能性が高い。
【0035】
そこで、通常運転中にバッテリ24の充電量が一定量以下になった場合には(ステップA17)、エレベータ制御装置19は、乗りかご11が給電階に応答したときにかごドア36の駆動を制御して、その間の給電時間を通常よりも長くする(ステップA18)。具体的には、給電階応答時にかごドア36の開閉速度を通常よりも遅くしたり(例えば通常時の1/2の速度に変更)、かごドア36の戸開時間を通常よりも長くする(例えば通常時の2倍の時間に変更)。これにより、給電時間が長くなり、その間にバッテリ24の電力を確保することができる。
【0036】
このように、乗りかご11が待機状態になったときに、こまめに給電階へ強制移動させて給電することで、バッテリ24の充電切れを防いで運転を継続することができる。また、通常運転中にバッテリ24の充電量が少なくなった場合には、給電時間を長くすることで、バッテリ24の電力を確保することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0038】
なお、基本的な構成は上記第1の実施形態と同様である。ただし、エレベータ制御装置19に設けられた運転制御部19cは、上記第1の実施形態で説明した機能に加え、通常運転中にバッテリ24の充電量が一定量以下に低下した場合に、オペレーション動作を制限して電力消費を抑える機能を備える。
【0039】
以下に、図4を参照して処理的に異なる部分についてのみ説明する。
図4は第2の実施形態におけるエレベータの非接触給電システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【0040】
上記第1の実施形態では、通常運転中にバッテリ24の充電量が一定量以下となったら、乗りかご11が給電階に応答したときの停止時間が通常よりも長くなるようにかごドア36の駆動を制御するものとした(図3のステップA16〜18参照)。
【0041】
これに対し、第2の実施形態では、オペレーション動作を制限することで、通常運転中の電力消費を抑えるようにしたものである。すなわち、エレベータには、通常の呼び応答動作の他に、客先の要望に合わせて追加された特殊なオペレーション動作がある。その1つに「強制停止機能」がある。これは、ホテルなどにおいて、ロビー階を強制停止階として設定しておくことで、呼びの有無に関係なく、エレベータ(乗りかご11)をロビー階で一旦停止させ、戸開閉を行う機能である。この機能を使うと、エレベータの起動・停止の回数が増えるため、電力消費が大きくなる。
【0042】
そこで、図4に示すように、通常運転中に充電残量が一定量以下となった状態では、エレベータ制御装置19は、上記のような特殊なオペレーション動作を制限して電力消費を抑える(ステップA19)。
【0043】
具体的には、例えば1階、5階が強制停止階として設定されている場合に、バッテリ電力が低下している状態では1階のみ停止する。あるいは、強制停止機能自体を禁止し、1階、5階の両方とも強制停止階としての設定を解除することでも良い。
【0044】
このようなオペレーション動作の制限は、図5に示すようなオプションテーブル37の設定内容を「一部」あるいは「解除」などに変更することで実現する。エレベータ制御装置19の運転制御部19cは、通常運転中にバッテリ24の充電量が一定量以下した場合に、このオプションテーブル37を参照することで該当する機能の動作を制限する。
【0045】
このように、通常運転中にバッテリ24の充電量が少なくなった場合に、オペレーション動作を制限して電力消費を抑えることで、運転途中でバッテリ切れになることを防ぐことができる。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0047】
第3の実施形態では、上記第1の実施形態の構成に加え、時間帯に応じて充電モードを切り換える構成としたものである。
【0048】
図6は第3の実施形態に係るエレベータの監視非接触給電システムに用いられるエレベータ制御装置19の充電モードの切り換えに関する構成を示すブロック図である。
【0049】
エレベータ制御装置19には記憶装置41が設けられており、この記憶装置41に充電モードテーブル42に記憶されている。充電モードテーブル42には、時間帯と充電モードとの関係が設定されている。
【0050】
図7に充電モードテーブル42の設定例を示す。この例では、「9:00〜18:00」の時間帯では急速充電モードM2、「18:00〜9:00」の時間帯では通常充電モードM1に設定されている。本実施形態において、エレベータ制御装置19の給電制御部19bは、この充電モードテーブル42を参照して充電モードを切り換える機能を備えている。
【0051】
ここで、通常充電モードM1は、通常の時間でバッテリ24に充電動作を完了するモードのことである。急速充電モードM2は、充電中の電流を多く流すことで、通常充電モードM1よりも短い時間でバッテリ24に充電動作を完了するモードのことである。
【0052】
図8は通常充電モードM1と急速充電モードM2の関係を示す図であり、横軸が充電時間(min)、縦軸が充電量(%)を表している。
【0053】
バッテリ24の充電量が100%になるまでの充電時間を比較すると、例えば通常充電モードM1は約60分、急速充電モードM2は約30分である。この充電時間の差は、バッテリに供給する電流の大きさによる。
【0054】
すなわち、急速充電モードM2では、大電流を流すことで、短時間で充電する。これに対し、通常充電モードM1は、急速充電モードM2に比べて電流値が低いので、充電時間がM2よりも遅くなる。ただし、急速充電モードM2では、大電流を流して短時間でバッテリ24を充電するため、バッテリ24の負荷が大きく、寿命が低下する欠点がある。
【0055】
また、エレベータ制御装置19には、通信ネットワーク43を介して遠隔監視装置44が接続されている。遠隔監視装置44は、遠隔監視センタ内に設置されており、各地に点在する複数のエレベータの運転状態を一元管理している。さらに、このエレベータ制御装置19には伝送ケーブル45を介してエレベータ管理装置46が接続されていると共に、伝送ケーブル47を介してメンテナンス専用装置48が接続されている。エレベータ管理装置46は、建物の管理室などに設置されており、建物内に設置されたエレベータの状態を監視している。メンテナンス専用装置48は、エレベータの保守員が保守点検のときに使用する端末装置である。
【0056】
このような構成において、上記第1の実施形態で説明したように、エレベータ制御装置19は、乗りかご11が待機状態にあるときに給電階へ移動させてバッテリ24を充電する(図3のステップA11〜A12参照)。
【0057】
ここで、バッテリ24の充電を開始した場合に、一定の走行距離に必要な充電量を満たすまで運転を再開しないため(図3のステップA13〜A15参照)、充電時間は短い方が良い。しかし、一般にバッテリ24は急速充電モードM2で充電するとバッテリ劣化が速まる問題がある。そこで、図9に示すようにエレベータの利用頻度の高い時間帯のみ急速充電モードM2で充電を行い、その他の時間帯は通常充電モードM1に切り換える。
【0058】
図9は第3の実施形態におけるエレベータの非接触給電システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【0059】
エレベータ制御装置19は、乗りかご11を給電階に異動させてバッテリ24の充電を開始する際に(ステップB11のYES)、エレベータの利用頻度の高い時間帯であるか否かを判断する(ステップB12)。エレベータの利用頻度の高い時間帯であれば(ステップB12のYES)、エレベータ制御装置19は、急速充電モードM2に切り換えてバッテリ24を充電する(ステップB13)。一方、上記時間帯以外であれば(ステップB12のNO)、エレベータ制御装置19は、通常充電モードM1に切り換えてバッテリ24を充電する(ステップB14)。
【0060】
ここで、時間帯に対する充電モードの切り換えは、充電モードテーブル42を参照して行う。すなわち、充電モードテーブル42には、図7に示したように、予め利用頻度の高い時間帯(9:00〜18:00)とそれ以外の時間帯(18:00〜9:00)が設定されていると共に、それぞれの時間帯に応じた充電モードが設定されている。エレベータ制御装置19は、この充電モードテーブル42を参照して通常充電モードM1または急速充電モードM2に切り換えてバッテリ24を充電する。
【0061】
なお、充電モードテーブル42の設定内容(時間帯と充電モード)は、図6に示した遠隔監視装置44、エレベータ管理装置46、メンテナンス専用装置48を通じて任意に変更可能である。
【0062】
このように、時間帯に応じて充電モードを切り換えるようにしたことで、昼間などのエレベータの利用頻度の高い時間帯では急速充電モードM2に切り換えてバッテリ24を早く充電することで、常にバッテリ24の電力を確保して運転を行うことができる。一方、夜間などのエレベータの利用頻度の低い時間帯では通常充電モードM1に切り換えることで、バッテリ24の劣化を防ぐことができる。
【0063】
なお、上記第3の実施形態では、通常充電モードM1と急速充電モードM2を切り換える場合について説明したが、さらに複数の充電モードを用意して、これらを時間帯に応じて適宜切り換えるような構成にしても良い。
【0064】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
【0065】
第4の実施形態では、給電階で充電しているときや、オフベレーション動作を制限しているときに利用者にその旨を通知する構成としたものである。
【0066】
基本的な構成は上記第1の実施形態と同様であるため、ここでは図10を参照して処理的に異なる部分について説明する。
【0067】
図10は第4の実施形態におけるエレベータの非接触給電システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【0068】
上記第1の実施形態で説明したように、エレベータ制御装置19は、エレベータの利用者がいないと判断すると(ステップA11のYES)、乗りかご11を給電階に移動させて給電を行う(ステップA12)。その際、呼びが発生しても(ステップA13のYES)、バッテリ24が一定の充電量を満たすまでの間(ステップA14のNO)、充電が継続される(ステップA15)。
【0069】
ここで、利用者が登録した呼びに応答せず充電を継続するため、利用者は故障と間違える可能性がある。そこで、充電中に呼びがあった場合には、エレベータ制御装置19は、充電中である旨を利用者に対して通知する(ステップA20)。なお、通知方法は、表示であっても音声であっても良いし、その両方であっても良い。
【0070】
図11に乗場にいる利用者に対して充電中である旨を通知する場合の一例を示す。乗りかご11が給電階で充電しているときに、利用者が任意の階に設置された乗場呼び登録装置14を操作して乗場呼びを登録したとする。このような場合には、例えば「充電中のため、エレベータを利用できません」といったメッセージが当該階の乗場呼び登録装置14の表示部16に表示される。なお、乗場呼び登録装置14の近くに音声装置を設置しておき、上記メッセージを音声にて出力することでも良い。
【0071】
また、通常運転中にバッテリ24の充電残量が一定量以下になった場合に(ステップA16,A17のYES)、エレベータ制御装置19は、乗りかご11が給電階に応答したときの停止時間が通常よりも長くなるようにかごドア36の駆動を制御する(ステップA18)。これにより、通常運転中での電力消費を抑えることができる。
【0072】
このような場合も、かごドア36が通常とは違う動きになるため、利用者が故障と間違える可能性がある。そこで、エレベータ制御装置19は、一部の動作を制限している旨を利用者に対して通知する(ステップA20)。なお、通知方法は、表示であっても音声であっても良いし、その両方であっても良い。
【0073】
図12にかご内にいる利用者に対して一部動作を制限している旨を通知する場合の一例を示す。通常運転中にバッテリ24の充電残量が一定量以下に低下し、かごドア36の動作を制限しているとする。このような場合には、例えば「充電残量が僅かです。一部の動作を制限します。」といったとメッセージが乗りかご11内に設置された表示装置33に表示される。なお、図2に示したアナウンス装置35を通じて上記メッセージを音声にて出力することでも良い。
【0074】
なお、上記第2の実施形態で説明した特殊なオペレーション動作を制限している場合(図4のステップA19参照)も同様であり、図12に示したような通知を行うものとする。
【0075】
このように、給電階で充電しているときや、オペレーション動作を制限しているときに利用者にその旨を通知することで、利用者に誤解を与えることなく、バッテリ24の電力を確保して通常運転を継続することができる。
【0076】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、バッテリの充電切れによる運転の中断を防ぐことのできるエレベータの非接触給電システムを提供することができる。
【0077】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
11…乗りかご、12…巻上機、13…ロープ、14…乗場呼び登録装置、15…操作部、16…表示部、17…伝送ケーブル、18…伝送ケーブル、19…エレベータ制御装置、19a…状態検出部、19b…給電制御部、19c…運転制御部、20…給電装置、21…電力線、22…給電装置、23…受電装置、24…バッテリ、31…かご呼び登録装置、32…操作部、33…表示装置、34…荷重検出装置、35…アナウンス装置、36…かごドア、37…オプションテーブル、41…記憶装置、42…充電モードテーブル、43…通信ネットワーク、44…遠隔監視装置、45…伝送ケーブル、46…エレベータ管理装置、47…伝送ケーブル、48…メンテナンス専用装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごにバッテリを有し、給電装置が設置された給電階で上記乗りかごに非接触で給電を行って上記バッテリを充電するエレベータの非接触給電システムにおいて、
上記乗りかごに呼び登録がなく、かつ、無人で停止している状態を待機状態として検出する状態検出手段と、
この状態検出手段によって上記待機状態が検出された場合に上記乗りかごを上記給電階に移動させて給電を行う給電制御手段と、
この給電制御手段による給電中に新たな呼びが発生した場合に、上記バッテリが一定量以上の充電量を満たすまでの間、上記乗りかごを上記給電階に停止させておき、上記バッテリが一定量以上の充電量を満たした時点で通常運転に復帰させる運転制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの非接触給電システム。
【請求項2】
上記運転制御手段は、
通常運転中に上記バッテリの充電量が一定量以下に低下した場合に、上記乗りかごが上記給電階に応答したときに上記乗りかごのドアの駆動を制御して、その間の給電時間を長くすることを特徴とする請求項1記載のエレベータの非接触給電システム。
【請求項3】
上記運転制御手段は、
上記乗りかごのドアの開閉速度を通常よりも遅く設定することを特徴とする請求項2記載のエレベータの非接触給電システム。
【請求項4】
上記運転制御手段は、
上記乗りかごのドアの戸開時間を通常よりも長く設定することを特徴とする請求項2記載のエレベータの非接触給電システム。
【請求項5】
上記運転制御手段は、
通常運転中に上記バッテリの充電量が一定量以下に低下した場合に、予め付加的に設定されたオペレーション動作を制限して電力消費を抑えることを特徴とする請求項1記載のエレベータの非接触給電システム。
【請求項6】
上記給電制御手段は、
少なくとも、第1の時間で充電動作を完了する第1の充電モードと上記第1の時間よりも短い第2の時間で充電動作を完了する第2の充電モードを有し、予め設定された時間帯に応じて上記第1の充電モードまたは上記第2の充電モードに切り換えて上記バッテリを充電することを特徴とする請求項1記載のエレベータの非接触給電システム。
【請求項7】
上記給電制御手段によって上記バッテリを充電しているときに、その旨を利用者に通知する通知手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータの非接触給電システム。
【請求項8】
上記運転制御手段によって通常運転中に上記乗りかごのドアの駆動を制御しているときに、その旨を利用者に通知する通知手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータの非接触給電システム。
【請求項9】
上記運転制御手段によって通常運転中に上記オペレーション動作を制限しているときに、その旨を利用者に通知する通知手段をさらに具備したことを特徴とする請求項5記載のエレベータの非接触給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−71796(P2013−71796A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210770(P2011−210770)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】