説明

エレベータシステム

【課題】故障等により正常に稼動しなくなったエレベータの乗客の不安を低減させる。
【解決手段】エレベータシステムは、建屋10内に形成された昇降路12内を上下移動する乗りかご20と、乗りかご20内に設けられて建屋10の場所を含む地図情報を表示する乗りかご内表示装置40と、建屋10から遠距離にある保守センタ70と互いに通信可能な通信装置24と、を有する。保守センタ70は、保守員が所持する携帯端末90と互いに通信可能で携帯端末90の位置を把握可能である。通信装置24は、保守センタ70が把握した携帯端末90の位置情報を、受信可能である。乗りかご内表示装置40は、通信装置24で受信した位置情報に基づいて、携帯端末90の位置情報を地図上に表示することによって、建屋10および携帯端末90の互いの位置関係を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守センタと通信可能なエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の建屋それぞれに設けられたエレベータは、これらの建屋から遠隔地に設置された保守センタによって保守管理されている。それぞれのエレベータと保守センタは、通信回線網等を介して、互いに通信可能に構成されている。
【0003】
これにより、保守センタは、上記通信回線網を介してエレベータの故障情報を検知することができる。故障情報を検知した保守センタは、故障したエレベータが配置される場所(建屋)へ保守員等を派遣する。
【0004】
このようなエレベータを保守する管理方法は、特許文献1および特許文献2に開示されているように、保守員が到着するために必要な予想時間を随時更新して乗りかご内の乗客に知らせるように構成されたものなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2744112号公報
【特許文献2】特開2008−5121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1および特許文献2に開示されている例では、故障等により乗りかご内に閉じ込められたエレベータの乗客は、故障したエレベータが設置されている場所に保守員が向かっていることは把握できる。
【0007】
しかし、予想時間通りに保守員が到着できないことがあると、当該時間を乗客に知らせるだけでは、乗りかご内に閉じ込められたエレベータの乗客の不安を低減できないこともある。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、故障等により正常に稼動しなくなったエレベータの乗客の不安を低減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るエレベータシステムは、建屋内を上下に延びるように形成された昇降路内を上下移動可能に構成された乗りかごと、この乗りかご内に設けられて少なくとも前記建屋の場所情報を含む地図情報を表示可能な乗りかご内表示装置と、前記建屋に設けられて前記建屋外にある保守センタと互いに通信可能な通信装置と、を有するエレベータシステムにおいて、前記保守センタは、前記建屋の外にいる保守員が所持するGPS機能付きの携帯端末と互いに通信可能で且つ前記携帯端末のGPS機能に基づいて前記携帯端末の位置を把握可能で、前記通信装置は、前記保守センタが把握した前記携帯端末の位置情報を、受信可能に構成されて、前記乗りかご内表示装置は、前記通信装置で受信した前記位置情報に基づいて、前記携帯端末の位置情報を前記地図上に表示可能で、前記建屋および携帯端末の互いの位置関係を表示可能に構成されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、故障等により正常に稼動しなくなったエレベータの乗客の不安を低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエレベータシステムが設置された建屋、保守員が所持する携帯端末、および保守センタの位置関係を模式的に示す概略図である。
【図2】図1のエレベータシステムおよび保守センタの間で互いに通信する情報の流れを示すブロック図である。
【図3】図1の乗りかご内表示装置等を示す概略斜視図である。
【図4】図3の乗りかご内表示装置に表示される地図情報等の一例を示す図である。
【図5】図1の乗場用表示装置を示す概略正面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るエレベータシステムおよび保守センタの間で互いに通信する情報の流れを示すブロック図である。
【図7】図6の乗りかご内表示装置の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るエレベータシステムの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
本発明に係る第1の実施形態について、図1〜図5を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るエレベータシステムが設置された建屋10、保守員が所持する携帯端末90および保守センタ70の位置関係を模式的に示す概略図である。図2は、図1のエレベータシステムおよび保守センタ70の間で互いに通信する情報の流れを示すブロック図である。図3は、図1の乗りかご内表示装置40等を示す概略斜視図である。図4は、図3の乗りかご内表示装置40に表示される地図情報等の一例を示す図である。図5は、図1の乗場用表示装置50を示す概略正面図である。
【0015】
先ず、本実施形態のエレベータシステムの構成について、説明する。
【0016】
本実施形態のエレベータシステムは、建屋10内を上下に延びるように形成された昇降路12内を上下移動可能に構成された乗りかご20と、この乗りかご20を制御可能な制御装置22と、を有する。この制御装置22は、乗りかご20内に設けられた乗りかご内表示装置40と、乗りかご20に乗降可能な各フロア11に配置された乗場用表示装置50と、それぞれ互いに通信可能に構成されている。なお、図1では、乗りかご20を吊るロープやこのロープが懸架されて乗りかご20を上下移動させる巻き上げ機等の図示は省略している。
【0017】
また、このエレベータシステムは、建屋10外部と通信可能な通信装置24を有する。この通信装置24は、建屋10内に設けられて、制御装置22を介して乗りかご内表示装置40および乗場用表示装置50それぞれと互いに通信可能である。また、この通信装置24は、エレベータシステムが設けられている建屋10から遠距離に設置された保守センタ70と通信回線80を介して有線通信可能に構成されている。
【0018】
この保守センタ70は、所定のエリア内に設置された複数のエレベータシステムの保守、監視等を集中して行うことが可能な場所である。この保守センタ70は、保守、監視するエレベータシステムが設けられた各建屋10の設置場所を網羅する地図情報が格納された地図情報格納部72と、少なくとも当該地図情報格納部72に格納されたエリア内にいる保守員が所持する携帯端末90の位置を把握してこの位置情報を格納する保守員位置情報格納部74を有する。この携帯端末90は、保守センタ70と無線通信可能で、GPS(Global Positioning System)機能を備えている。
【0019】
なお、図1および図2の例では、保守センタ70と通信している複数のエレベータシステムのうちの1つを示している。
【0020】
この保守センタ70は、保守員位置情報格納部74に格納された保守員位置情報を、各エレベータシステムの通信装置24へ送信することができる。ここで、保守員位置情報とは、保守員が所持する携帯端末90の位置情報に対応するものである。また、地図情報格納部72に格納された地図情報は、各エレベータシステムそれぞれの通信装置24へ送信可能である。
【0021】
乗りかご内表示装置40は、通信装置24が保守センタ70から受信した当該地図情報を、制御装置22を介して受信して表示可能に構成されている。乗りかご内表示装置40は、図3に示すように、現在の階層(図3の例では6階)や乗りかご20の移動方向を示す上向きおよび下向きの矢印等が表示される第1表示部41と、この第1表示部41とは別の第2表示部42と、を有している。当該地図情報は、第2表示部42によって表示される。この第2表示部42は、乗りかご扉20aの上方で天井板20bの下方に設けられている。
【0022】
また、乗りかご内表示装置40の第2表示部42は、通信装置24が保守センタ70から受信した携帯端末90の位置情報、すなわち保守員位置情報を、制御装置22を介して受信して当該地図情報と共に表示可能に構成されている。すなわち、第2表示部42は、図4に示すように、エレベータシステムが設置された建屋10と、保守員が所持する携帯端末90との互いの位置関係を表示することが可能である。このとき、同じ画面上に縮尺を表示させている。この縮尺は、建屋10と保守員との距離に応じて変更可能である。
【0023】
本実施形態では、地図情報および保守員位置情報が保守センタ70で既に組み合わされた情報を通信装置24で受信して、乗りかご内表示装置40は、受信した当該情報を表示している。また、乗りかご内表示装置40は、最新の保守員位置情報を所定の時間間隔で通信装置24および制御装置22を介して受信して、第2表示部42が既に表示している地図情報に、当該最新の保守員位置情報を随時追記するように表示することも可能である。
【0024】
上記の乗場用表示装置50は、乗りかご内表示装置40と同じ情報を表示することが可能である。図5に示すように、正常に稼動しているときの乗場用表示装置50の表示部51は、現在の階層(図5の例では6階)や乗りかご20の移動方向を示す上向きおよび下向きの矢印等が表示される。故障等が発生して、上記の地図情報等を表示する必要が生じたときは、図4に示すような建屋10の位置と、保守員のいる位置、すなわち携帯端末90の位置とを表示させるとよい。
【0025】
続いて、本実施形態の作用について説明する。
【0026】
保守センタ70が管理するエレベータシステムの1つが、故障等によって乗りかご20内に乗客が閉じ込められるようなことが発生したときは、乗りかご20内に設けられた通報装置(図示せず)が、乗客の通報によって故障が発生したことを検知する。
【0027】
故障を知らせる信号は、当該通報装置から制御装置22を介して通信装置24へ送信される。通信装置24は、通信回線80等を介して故障を知らせる信号を保守センタ70へ送信する。
【0028】
管理エリア内のエレベータシステムが故障したことを検知した保守センタ70は、携帯端末90を所持した保守員を、故障したエレベータシステムが設置された建屋10へ派遣させる。このとき、保守員が所持する携帯端末90は、上記の通りGPS機能等を有するもので、保守センタ70は、携帯端末90の位置情報が常時把握している。保守センタ70が把握した情報は、保守員位置情報として保守員位置情報格納部74へ格納される。この保守員位置情報は、所定の時間間隔、例えば数秒間隔で随時更新されている。
【0029】
保守センタ70は、地図情報格納部72から、故障したエレベータシステムが設置された建屋10の場所を含む地図情報を抽出して、故障したエレベータシステムの通信装置24へ送信する。このとき、保守センタ70が把握している最新の保守員位置情報を地図情報と共に送信する。
【0030】
エレベータシステム側では、先ず通信装置24が、建屋10の場所を含む地図情報に保守員位置情報が追加された情報を受信する。この後に、制御装置22は、通信装置24が受信した当該情報を乗りかご内表示装置40へ送信する。
【0031】
当該情報を受信した乗りかご内表示装置40は、地図情報および保守員位置情報を第2表示部42で表示する。例えば図4に示すように、建屋10の位置と、保守員の所持する携帯端末90の位置とを、同じ画面上に表示させる。
【0032】
これにより、この乗りかご内表示装置40は、乗りかご20内の乗客に対して、保守員がこの建屋10からどのくらい離れた位置にいるかを視覚的に容易に把握させることが可能である。このため、あとどのくらいの時間で保守員が到着するかを当該乗客に容易に判断させることができる。
【0033】
同様に、通信装置24で受信した建屋10の場所を含む地図情報に保守員位置情報が追加された情報は、乗場用表示装置50にも送信される。このとき、乗場用表示装置50は、図5に示す表示部51で、当該情報を表示させる。これにより、乗場にいる乗客に対しても、保守員がこの建屋10からどのくらい離れた位置にいるかを視覚的に容易に把握させることが可能である。
【0034】
なお、乗場に乗客がいないときは、乗場用表示装置50は、当該情報を表示しないように制御してもよい。
【0035】
以上の説明からわかるように本実施形態によれば、故障等により正常に稼動しなくなったエレベータの乗客の不安を低減させることが可能になる。
【0036】
[第2の実施形態]
本発明に係るエレベータシステムの第2の実施形態について、図6および図7を用いて説明する。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であって、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0037】
図6は、本実施形態に係るエレベータシステムおよび保守センタ70の間で互いに通信する情報の流れを示すブロック図である。図7は、図6の乗りかご内表示装置40の概略正面図である。
【0038】
本実施形態では、図6に示すように、保守員が所持する携帯端末90と、エレベータシステムの通話装置46とが、互いに無線通信可能に構成されている。この通話装置46は、図7に示すように、音声等の音情報を出力可能なスピーカ部47と、当該音情報を取込可能なマイク部48とを有し、乗りかご内表示装置40に含まれている。
【0039】
このように構成された通話装置46は、乗りかご20内に閉じ込められた乗客と、保守員とを、互いに通話させることが可能である。これにより、第1の実施形態で得られる効果に加えて、故障したエレベータシステムに向かって移動している途中の保守員の状態を、より具体的に当該乗客に対して知らせることができ、当該乗客の不安を低減させることが可能になる。
【0040】
[その他の実施形態]
上記実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0041】
例えば、第1および第2の実施形態では、通信装置24および保守センタ70は、通信回線80によって互いに接続されているが、これに限らない。通信装置24および保守センタ70を無線通信で互いに接続してもよい。
【0042】
また、第2の実施形態では、携帯端末90を通話手段として用いているがこれに限らない。例えば、携帯端末90の位置情報を、保守センタ70を介さずに、通信装置24に直接送信してもよい。また、第2の実施形態の通話装置46を、乗場表示装置に設けてもよい。
【0043】
また、通信装置24は、建屋10の外に設けてもよいし、乗りかご内に設けてもよい。
【0044】
また、携帯端末90は、保守員が建屋10へ向かうために用いる自動車等に設置されるものでもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…建屋、11…フロア、12…昇降路、20…乗りかご、20a…乗りかご扉、20b…天井板、22…制御装置、24…通信装置、40……乗りかご内表示装置、41…第1表示部、42…第2表示部、46…通話装置、47…スピーカ部、48…マイク部、50…乗場用表示装置、51…表示部、70…保守センタ、72…地図情報格納部、74…保守員位置情報格納部、80…通信回線、90…携帯端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋内を上下に延びるように形成された昇降路内を上下移動可能に構成された乗りかごと、この乗りかご内に設けられて少なくとも前記建屋の場所情報を含む地図情報を表示可能な乗りかご内表示装置と、前記建屋に設けられて前記建屋外にある保守センタと互いに通信可能な通信装置と、を有するエレベータシステムにおいて、
前記保守センタは、前記建屋の外にいる保守員が所持するGPS機能付きの携帯端末と互いに通信可能で且つ前記携帯端末のGPS機能に基づいて前記携帯端末の位置を把握可能で、
前記通信装置は、前記保守センタが把握した前記携帯端末の位置情報を、受信可能に構成されて、
前記乗りかご内表示装置は、前記通信装置で受信した前記位置情報に基づいて、前記携帯端末の位置情報を前記地図上に表示可能で、前記建屋および携帯端末の互いの位置関係を表示可能に構成されていること、
を特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記乗りかご内表示装置は、音声を含む音情報を出力可能なスピーカ部と、音情報を取込み可能なマイク部と、を有する通話装置を含み、
前記通話装置は、前記携帯端末と互いに通話可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記通話装置は、前記携帯端末と直接通話可能に構成されていることを特徴する請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記建屋内で前記乗りかごに乗降可能な乗場には、乗場用表示装置が配置されて、
前記乗場用表示装置は、
少なくとも前記建屋の場所情報を含む地図情報を表示可能で、前記通信装置で受信した前記位置情報に基づいて、前記携帯端末の位置情報を前記地図上に表示可能で、前記建屋および携帯端末の互いの位置関係を表示可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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