説明

エレベータドア装置

【課題】本発明では、簡易な構造のみでドア面に対して垂直な方向からの荷重を検知し戸開動作を行うエレベータドア装置を提供することを目的とする。
【解決手段】かごドア10と、乗場ドア11と、かご出入口の一端に設けられ、物体を検出するための検出光23を射光する射光手段24と、かご出入口の他端に設けられ、検出光23を受光する受光センサ26と、かごドア10の戸閉端部に設けられ、戸開方向への荷重またはかごドア10のドア面に対して垂直な方向からの荷重によって変位し、前記垂直方向からの荷重に対しては検出光23を遮断するように構成されるドアセフティ22と、かごドア10の戸閉動作中において、射光手段24からの検出光23が遮断され受光センサ26が受光できなかったとき、かごドア10の戸閉動作を停止し戸開動作へと反転させるドア制御部9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸開方向のみならずドア面に垂直な方向からの荷重に対しても変位が可能なドアセフティを備えるエレベータドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かごドアに取り付けられた従来のドアセフティは、戸開方向にのみ変位可能となっている。ドアの戸閉動作中に、このドアセフティに戸開方向に荷重が加わるとドアセフティは戸開方向へ変位し、ドア制御部はドアモータの回転を反転させ、戸開動作を行うことで物体の挟まれを防止している(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
しかし、このようなドアセフティでは戸開方向への荷重にのみ変位し、ドア面に垂直な方向からの荷重には変位しなかった。それによって戸閉動作時に乗客や台車等がドアセフティに対してドア面に垂直な方向から衝突した場合であっても、物体を検知できない恐れがあった。
【0004】
そこで、ドアセフティに対してドア面に垂直な方向からの荷重がかかった場合に戸開動作を行うエレベータのドア装置が提案されている(たとえば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−006580号公報
【特許文献2】特開2005―200195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記で述べたような従来のドア装置ではドア面に対して垂直な方向に変位可能でかつ、垂直荷重を検知できるプレートを設ける必要があるため、構造が複雑である。
【0007】
したがって本発明では、簡易な構造のみでドア面に対して垂直な方向からの荷重を検知し戸開動作を行うエレベータドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のエレベータドア装置は、かご出入口に開閉自在に設けられたかごドアと、前記かごドアに係合され前記かごドアの開閉動作と連動し開閉する乗場ドアと、前記かご出入口の戸開閉方向一端に設けられ、物体を検出するための検出光を射光する射光手段と、前記かご出入口の戸開閉方向他端に設けられ、前記検出光を受光する受光センサと、前記かごドアの戸閉端側に突出するように設けられ、前記かごドアの戸開方向への荷重および前記かごドアのドア面に対して垂直な方向からの荷重によって変位し、前記垂直方向からの荷重の変位に対しては前記検出光を遮断するように構成されるセフティ機構と、前記かごドアの戸閉動作中において、前記戸開方向への荷重を受けた場合および前記射光手段から射光される前記検出光が遮断され前記受光センサが前記検出光を受光できなかった場合、前記かごドアの戸閉動作を停止し戸開動作へと反転させるドア制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構造のみでドア面に対して垂直な方向からの荷重を検知し戸開動作を行うエレベータドア装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るエレベータの全体を示した構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るエレベータドア装置の構成およびアームとドアセフティとの連結構造の内部詳細を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るセフティ機構の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るエレベータドア装置の詳細を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るエレベータドア装置の構成においてドアセフティに対する乗場側からの荷重による変位を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るエレベータドア装置の構成においてドアセフティに対するかご側からの荷重による変位を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係るエレベータの全体を示す構成図である。図2は本発明の実施形態に係るエレベータドア装置の構成およびアームとドアセフティとの連結構造の内部詳細を示す図である。図3は本発明の実施形態に係るセフティ機構の構成を示す図2の拡大詳細図におけるX−X断面を示す断面図である。図4は本発明の実施形態に係るエレベータドア装置の図2におけるY−Y断面を示す断面図である。図5は本発明の実施形態に係るエレベータドア装置の構成においてドアセフティに対する乗場側からの荷重による変位を示す図2におけるY−Y断面図である。図6は本発明の実施形態に係るエレベータドア装置の構成においてドアセフティに対するかご側からの荷重による変位を示す図2におけるY−Y断面図である。
【0013】
本実施形態においては、乗場ドアの隙間からドアセフティに対して人の指先による荷重が加わる場合を考える。
【0014】
通常、ドアセフティにはドア面に対して垂直な方向からの荷重に対して変位する機構が備えられておらず、乗客や台車等がドア面に垂直な方向から衝突した場合であっても異物検知が行われない。さらに、かごドア間を複数の検出光によって異物検知を行う場合では、前述したような乗客や台車等のように検出光間の幅よりも大きく確実に検出光を遮断するものであれば、異物検知が可能であるが、検出光間の幅よりも小さい異物等が、ドア面に垂直な方向から検出光間の隙間に入ったときは、検出光では検出されない恐れがある。
【0015】
そこで、本実施形態においては戸閉直前のドア間にドア面に垂直な方向から検出光間の隙間に異物が入った場合であっても、確実に異物を検出することが可能となるエレベータドア装置の構成とする。
【0016】
まず、本発明の実施形態に係るエレベータ全体の構成について図1を用いて説明する。
【0017】
図1に示すように、機械室101には巻上機1、エレベータ制御部2およびそらせシーブ3が設けられている。機械室を有しないエレベータにおいては昇降路7頂部に設けられる図示しない頂部支持梁に上記した巻上機1、そらせシーブ3がそれぞれ設けられ、エレベータ制御部2は昇降路7壁面に設けられる。かご5はロープ6を介して巻上機1によって昇降路7内を昇降する。
【0018】
かご5を吊り下げるロープ6の他端ではカウンターウェイト8が備えられている。かご5の出入口には開閉自在なかごドア10が設けられ、乗場100にはかご5の着床時にかごドア10と係合し戸開動作を連動して行う乗場ドア11が設けられている。
【0019】
かご5上部にはドア制御部9が設けられ、ドア制御部9はかご5の着床時にかごドア10を戸開閉させ、利用客の乗り降りを可能とする。ドア制御部9はテールコード4によりエレベータ制御部2と接続され通信可能となっている。
【0020】
次に図2および図3を用いて本発明の実施形態に係るエレベータドア装置におけるセフティ機構の構成について説明する。詳細は後述するが、セフティ機構は、かごドア10に設けられるアームと、アームに固定される固定部と、固定部に固定されドアセフティの回動の中心となるシャフトと、そのシャフトを支持しドアセフティとともに回動する軸受部と、回動したドアセフティが復元力を有するようにドアセフティ内に設けられる弾性体とを有する。
【0021】
図2は乗場方向から見たエレベータドア装置正面を示している。かごドア10の戸閉端側にはドアセフティ22が後述する連結構造を介して設けられている。本実施形態におけるセフティ機構では、ドアセフティ22は戸開方向への荷重および、ドア面に対して垂直な方向からの荷重に対して変位可能に設けられている。
【0022】
またかご出入口端部の一方には、物体を検知するための検出光23を射光する射光手段24を複数有する射光部25と、他方には射光手段24に対応するように、検出光23を受光する受光センサ26を複数有する受光部27とが設けられている。なお、射光部25および受光部27は、かご支柱28に設けられている取付部材31によってかご出入口端部に固定されている。かご5出入口両端に設けられたかご支柱28には戸開時にかごドア10と重なり合うように側板32が設けられている。
【0023】
かご出入口上部にはヘッダー29が設けられ、さらにかご上部にはドア制御部9、ドアモータ30が設けられる。ドア制御部9はドアセフティ22に対して戸開方向への荷重があったと判断した場合、もしくは後述するドア面に対して垂直な方向からの荷重があったと判断した場合、ドアモータ30の回転を停止させ、そして反転させることでかごドア10を戸開させるように設定されている。
【0024】
ドアセフティ22は、連結構造によってかごドア10と連結されている。詳細には、図2の拡大詳細図に示すように、シャフト41は固定部43を介してアーム21に固定されている。さらに、ドアセフティ22に備えられる軸受部42は、ドアセフティ22とともにシャフト41に対して回動自在となるように設けられている。
【0025】
上記構成によりドアセフティ22にドア面に対して垂直な方向からの荷重が加わった場合、ドアセフティ22はシャフト41を中心として回動が可能となる。
【0026】
図3は図2におけるX−X断面における上方から見た図である。
【0027】
本実施形態におけるセフティ機構はさらに、ドア面に対して垂直な方向からの荷重により変位したドアセフティ22に復元力を持たせるため、ドアセフティ22内にばね51(弾性体)を固定部43の両側面に備える。
【0028】
ばね51の取付方法については特に限定はしないが、本実施形態においては、ばね51の一端はそれぞれ固定部43の両側面に、他端はそれよりもドアセフティ22先端部方向であってドアセフティ22内面にそれぞれ固定されており、戸開方向に対して全体として斜めとなるように設けられている。
【0029】
上記構成によりドアセフティ22が回動したとき、荷重がかかった面に設けられているばね51は伸び、荷重がかかった面と反対面に設けられているばね51は縮むため、それぞれのばね51は元の長さに戻る復元力を有する。したがって荷重がなくなったときドアセフティ22は通常の基準位置に戻る。ここでいう、通常の基準位置とは図3に示す位置状態を指す。
【0030】
次に、図4を用いて射光部25および受光部27の設置について説明する。なお、図4以降においては射光部25および射光手段24についての記載は省略してあるが、図に示す受光部27および受光センサ26の取り付けと同様である。
【0031】
図4は図2におけるY−Y断面における上方から見た図である。
【0032】
射光手段24および受光センサ26は、かごドア10に設けられたドアセフティ22と乗場ドア11との隙間を既述の検出光23が通るような箇所に設けられている。
【0033】
詳細には、射光部25および受光部27は、支柱28に設けられている取付部材31にそれぞれ対応するように取り付けられる。断面がコの字型である取付部材31の一方の外側側面を支柱28に固定し、他方の外側側面にそれぞれ射光部25および受光部27を備える。
【0034】
なお、射光手段24および受光センサ26の設置箇所については、射光された検出光23がドアセフティ22やかごドア10、アーム21によって遮断されないような箇所であれば、図2に示した箇所に限られない。たとえば検出光23がかごドア10とドアセフティ22との間を通るように射光手段24および受光センサ26を設けてもよいし、かごドア10等に直接設けるものとしてもよい。
【0035】
次に図5を用いて、本発明に係るエレベータドア装置の作用について説明する。
【0036】
本実施形態では、図5に示すように、乗場100側からドアセフティ22に対して人の指先が検出光23間を通って荷重が加わる場合を考える。既述のように、乗場100側から荷重が加えられた場合、ドアセフティ22は上述したようにシャフト41を中心に回動する。つまりこのときドアセフティ22はかご5出入口全高に亘って回動する。
【0037】
そして、回動したドアセフティ22は検出光23を遮断する。射光部25からの検出光23が遮断されたことにより受光部27が検出光23を受光できなくなったことをエレベータ制御部2が判断すると、エレベータ制御部2はドア制御部9にドアモータ30の回転を停止させ、そして反転させることでかごドア10を戸開させる。
【0038】
つまり、具体的には、乗場100側からドア面に対して垂直な方向からドアセフティ22に荷重が加わった場合、ドアセフティ22の先端がかご内側へ押されて回動する。そして、回動したことによってドアセフティ22の後尾が検出光23を遮断し、受光部27が検出光23を検出できなくなる。
【0039】
また、逆に図6に示すように、かご内からドア面に対して垂直な方向からドアセフティ22に荷重が加わった場合は、ドアセフティ22の先端が乗場100側へ押されて回動することによってドアセフティ22の先端が検出光23を遮断し、受光部27が検出光23を検出できなくなる。
【0040】
そしてエレベータ制御部2が受光部27が検出光23を検出できなくなったことを判断すると、かごドア10を反転戸開させる。
【0041】
つまり、かご内側または乗場100側からドアセフティ22がドア面に垂直な方向から荷重を受けた場合、ドアセフティ22の後尾がかごドア10に接触する前にドアセフティ22の先端が検出光23を遮断するように、またはドアセフティ22の先端がかごドア10に接触する前にドアセフティ22の後尾が検出光23を遮断するように、回動中心となるシャフト41をドアセフティ22内に設ける。
【0042】
本実施形態においては、図3ないし図6に示すようにシャフト41はドアセフティ22内の中心よりも後尾側に設けているが、それに限らずドアセフティ22内の中心や中心よりも先端側に設けてもよい。
【0043】
なお、先にも述べたが、ドアセフティ22に荷重が加わった場合、荷重がかかった面と反対面とに設けられているばね51は復元力を有しているので、荷重がなくなったときドアセフティ22は通常の基準位置に戻り、荷重を受けていない状態となる。したがって、一旦かごドア10が全開した後、再度、ドア制御部9は戸閉動作を行う。
【符号の説明】
【0044】
1…巻上機
2…エレベータ制御部
3…そらせシーブ
4…テールコード
5…かご
6…ロープ
7…昇降路
8…カウンターウェイト
9…ドア制御部
10…かごドア
11…乗場ドア
21…アーム
22…ドアセフティ
23…検出光
24…射光手段
25…射光部
26…受光センサ
27…受光部
28…支柱
29…ヘッダー
30…ドアモータ
31…取付部材
32…側板
41…シャフト
42…軸受部
43…固定部
51…ばね
100…乗場
101…機械室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご出入口に開閉自在に設けられたかごドアと、
前記かごドアに係合され前記かごドアの開閉動作と連動し開閉する乗場ドアと、
前記かご出入口の戸開閉方向一端に設けられ、物体を検出するための検出光を射光する射光手段と、
前記かご出入口の戸開閉方向他端に設けられ、前記検出光を受光する受光センサと、
前記かごドアの戸閉端側に突出するように設けられ、前記かごドアの戸開方向への荷重および前記かごドアのドア面に対して垂直な方向からの荷重によって変位し、前記垂直方向からの荷重の変位に対しては前記検出光を遮断するように構成されるセフティ機構と、
前記かごドアの戸閉動作中において、前記戸開方向への荷重を受けた場合および前記射光手段から射光される前記検出光が遮断され前記受光センサが前記検出光を受光できなかった場合、前記かごドアの戸閉動作を停止し戸開動作へと反転させるドア制御部と、
を備えることを特徴とするエレベータドア装置。
【請求項2】
前記セフティ機構は、
ドアセフティと、
前記かごドアに一端が軸支されるアームと、
前記アームの他端を軸支する固定部に固定するよう前記ドアセフティの内部に設けられ、前記かごドアの高さ方向に軸方向を有するシャフトと、
前記シャフトを支持するよう前記ドアセフティの内部に設けられ、前記かごドアのドア面に対しての垂直な方向からの荷重によって前記ドアセフティとともに回動する軸受部と、
前記回動に対して前記ドアセフティが復元力を有するように前記固定部と前記ドアセフティとの間に設けられる弾性体と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のエレベータドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−219192(P2011−219192A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87554(P2010−87554)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】