説明

エレベータホールドア

【課題】製造が容易な、熱変形による変形を抑制できるエレベータの扉を提供する。
【解決手段】本実施形態にかかるエレベータホールドアによれば、エレベータ乗場側に面する表側部材と、この表側部材の裏面に取り付けられる補強部材と、前記表側部材の裏面に対向して取り付けられる、昇降路側に面する裏側部材とを有し、前記裏側部材は、前記表側部材の熱膨張係数より小さい部材で構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ乗場のエレベータ扉に関し、特に、建物内に火災等が発生した場合の熱によるエレベータ扉の変形を少なくして昇降路へのはみ出しを防止するエレベータ扉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ乗場のエレベータ扉(以下、「ホールドア」と言う。)の構造は、エレベータ乗場に面している表側部材とその表側部材を補強する補強部材により構成されている。この種の構造のホールドア100を図7に示す。図7は、ホールドア100の横断面を示した図である。ホールドア100は、エレベータ乗場に面する、平らな面を有している表側部材101と、この平らな面を補強するための補強部材102とから構成され、補強部材102は、表側部材101の裏面に接合されている。
【0003】
このようなホールドア100の場合、ビル火災が発生すると、ホールドア100は、熱により変形してエレベータ昇降路へはみ出してしまい、救出や避難などでエレベータを使用した際に走行の妨害となる恐れがある。
【0004】
この問題に対し、表側部材と裏側部材とを、アルミ製及びスチール製の2種類のリベットで締結するホールドアが提案されている(例えば、特許文献1など参照)。この提案によれば、ホールドアの熱変形が始まると、アルミ製のリベットがせん断破壊し、締結力が弱まることでホールドア本体の変形を抑えることができる。
【0005】
しかしながら、上記提案のホールドアはリベットの締結数が多く、また、2種類のリベットを使用するため、製造時の取り付け間違いが懸念事項として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−37575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み為されたものであり、その目的は、製造が容易な、熱変形による変形を抑制できるエレベータの扉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態にかかるエレベータホールドアは、エレベータ乗場に面する表側部材と、この表側部材の裏面に取り付けられる補強部材と、前記表側部材の裏面に対向して取り付けられる、昇降路に面する裏側部材とを有し、前記裏側部材は、前記表側部材の熱膨張係数より小さい部材で構成されることを特徴としている。
【0009】
また、本実施形態にかかるエレベータホールドアは、エレベータ乗場に面する表側部材と、この表側部材の裏面に取り付けられる補強部材と、前記表側部材の裏面に対向して取り付けられる、昇降路に面する断熱材からなる裏側部材と、前記表側部材に前記裏側部材を取り付けるためのブラケットを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造が容易で、熱変形による変形を抑制できるエレベータホールドアを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は、本発明の実施形態にかかるホールドアの乗場から見た正面図であり、図1(b)は、図1(a)における一点鎖線A−A’の断面図である。
【図2】本発明にかかる第1の実施形態を示すホールドアの横断面図である。
【図3】本発明にかかる第1の実施形態を示すホールドアの熱変形後の横断面図である。
【図4】本発明にかかる第2の実施形態を示すホールドアの横断面図である。
【図5】本発明にかかる第3の実施形態を示すホールドアの横断面図である。
【図6】本発明にかかる第4の実施形態を示すホールドアの横断面図である。
【図7】従来のホールドアを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図1から図6を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態のホールドア装置を示す概略構成を示した図である。図1(a)は、本実施形態のホールドア装置を乗場から見た正面図を示しており、図1(b)は、図1(a)における一点鎖線A−A’の断面図を示している。
【0014】
図1(a)及び(b)に示すように、ホールドア1(1a、1b)は三方枠2と乗降床3に囲われており、三方枠2は壁4に固定されている。乗降床3には、案内溝5を備える敷居6が固定されている。ホールドア1の上端部にはハンガーローラ7が取り付けられたハンガー8が設けられている。一方、ホールドア1の下端部には、ホールドア1が案内溝5に沿って摺動するためのガイドシュー9が取り付けられている。壁4の出入口上辺部に固定されたヘッダーケース10には、ハンガーローラ7が転動可能に係合するハンガーレール11が取り付けられている。ホールドア1は、ハンガーローラ7がハンガーレール11を転動しながら開閉する様になっている。なお、図1(b)において、ホールドア1の左側が昇降路で、右側が乗場である。
【0015】
次に、本実施形態のホールドア1の構造について、図2から図6を用いて詳細に説明する。なお、図2から図6に示す断面図は、図1における一点鎖線B−B’の横断面図を示す。また、第二の実施形態以降の説明において、第一の実施形態と共通する部分については、同符号を付し、説明を割愛する。
【0016】
図2は、本発明の第一の実施形態のホールドアの横断面図であり、図3は、第一の実施形態のホールドアの熱変形後の横断面図を示している。図2に示すように、第一の実施形態のホールドアは、エレベータ乗場に面する化粧面を構成する表側部材12と、昇降路に面する裏側部材13と、表側部材12を補強する補強部材14とから構成される。
【0017】
表側部材12は、横断面コ字形状であり、乗場に面して平らな表側部材水平部121と表側部材水平部121の端部に昇降路側に突出する表側部材突出部122とを有している。裏側部材13も表面部材12と同様に昇降路に面して平らな裏側部材水平部131と乗場側に突出する裏側部材突出部132とを有している。表側部材突出部122と裏側部材突出部132が接合することでホールドア1を形成している。補強部材14は、補強部材水平部141と補強部材突出部142からなる横断面コ字状の形状をしており、表側部材水平部121の裏側に取り付けられている。
【0018】
表側部材12及び補強部材14は、金属(鉄)製であり、裏側部材13には表側部材12よりも熱膨張係数の小さい部材が用いられる。裏側部材13に用いられる部材としては、表側部材12より熱膨張係数が小さいものであれば特に限定されず、例えば鉄‐ニッケル合金(インバー)、タングステン、セラミックス等を挙げることができる。
【0019】
このように構成したホールドア1は、例えば火災発生時のような高温条件下に置かれた場合、熱による変形を受けるが、表側部材12と裏側部材13で熱膨張係数に違いがあるため、ホールドア1の表側部材12と裏側部材13とで変形具合が異なる。表側部材12と裏側部材13は表側部材突出部122と裏側部材突出部132で接合されているため、表側部材12の熱による変形が表側部材12より熱膨張係数の小さい、即ち熱による変形の少ない、裏側部材13によって抑制され、ホールドア1全体の変形が抑制される。このように、ホールドア1全体の変形が抑制されることで、ホールドア1の昇降路への突き出しや脱落を防止することができる。
【0020】
図4は、本発明の第二の実施形態のホールドアの横断面図を示す。第二の実施形態のホールドアは、表側部材12、裏側部材として断熱材15、補強部材14及びブラケット16からなり、断熱材15が表側部材12にブランケット16を介して取り付けられた構成となっている。ブランケット16は、横断面略L字状であり、その一片が表側部材12の表側部材突出部122と接合し、他片が断熱材15と接合している。第二の実施形態のホールドアでは、裏側部材に断熱材15を用いることで、表側部材12からの熱を遮断し、裏側部材の熱による変形を抑えることができる。このような断熱材15に用いられる材料としては、例えばフェノール樹脂、ガラスエポキシ、コルク等を挙げることができる。
【0021】
図5は、本発明の第三の実施形態のホールドアの横断面図を示す。第三の実施形態のホールドアは、第一の実施形態の裏側部材13に対しても補強部材14を設けた構成となっている。裏側部材13の裏面に補強部材14を設けることで、裏側部材13の剛性をあげている。これにより、第一の実施形態のホールドアに比べて裏側部材13の熱による変形をさらに抑制することが可能となる。
【0022】
図6は、本発明の第四の実施形態のホールドアの横断面図である。第四の実施形態のホールドアは、表側部材12と裏側部材13とを弾性体17を介して接合した構成となっている。表側部材12と裏側部材13は、表側部材突出部122と裏側部材13の裏側部材突出部132との間にバネ等の弾性体17を介して接合されており、表側部材1の変形による歪みが弾性体17で緩和されることで、裏側部材13が変形を受けにくくすることができる。また、第五の実施形態のホールドアとして、弾性体17を断熱材に換えることで、表側部材12の裏側部材13への熱の伝達を低減させることができる。
【0023】
以上、説明したとおり、本実施形態のホールドアによれば、ホールドアを構成する部材が少ないため製造が容易であり、また、乗場側の部材と側昇降路側の部材に熱膨張係数の異なる部材を用いることで熱変形を抑制し、ホールドアの昇降路側への突き出しや脱落等を防止することができる。
【符号の説明】
【0024】
1a、1b… ホールドア
2… 三方枠
3… 乗降床
4… 壁
5… 案内溝
6… 敷居
7… ハンガーローラ
8… ハンガー
9… ガイドシュー
10… ヘッダーケース
11… ハンガーレール
12… 表側部材
13… 裏側部材
14… 補強部材
15… ブラケット
16… 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ乗場に面する表側部材と、
この表側部材の裏面に取り付けられる補強部材と、
前記表側部材の裏面に対向して取り付けられる、昇降路に面する裏側部材とを有し、
前記裏側部材は、前記表側部材の熱膨張係数より小さい部材で構成されることを特徴とするエレベータホールドア
【請求項2】
エレベータ乗場に面する表側部材と、
この表側部材の裏面に取り付けられる補強部材と、
前記表側部材の裏面に対向して取り付けられる、昇降路に面する断熱材からなる裏側部材と、
前記表側部材に前記裏側部材を取り付けるためのブラケットと
を有することを特徴とするエレベータホールドア。
【請求項3】
前記裏側部材の裏面に、補強部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータホールドア。
【請求項4】
前記表側部材と前記裏側部材を、弾性体を介して接合されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータホールドア。
【請求項5】
前記表側部材と前記裏側部材を、断熱材を介して接合されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータホールドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218839(P2012−218839A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83804(P2011−83804)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】